説明

ネブライザキットおよびネブライザ

【課題】ネブライザキットが転倒したとしても、ネブライザキット内部に貯留された液体が流出することを抑制する、ネブライザキットおよびネブライザを提供する。
【解決手段】ネブライザキット100は、ケース体110と、ケース体110の上部の開口110cを塞ぐ流路形成体130と、流路形成体130の上面における外周寄りの部分を貫通する筒状のエアロゾル排出口132とを備える。ケース体110および/または流路形成体130には、ケース体110が転倒し、エアロゾル排出口132の位置が流路形成体130の上面における鉛直方向の下側となったとき、エアロゾル排出口132の位置を鉛直方向の下側から遠ざけるようにケース体110を周方向に回転させる回転機構が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ネブライザキットおよびネブライザに関する。
【背景技術】
【0002】
ネブライザは、水や食塩水、気管支等の疾患を治療する薬液等の液体を霧化してエアロゾルを生成するための装置である。このネブライザによって生成されたエアロゾルは、使用者によって口や鼻から吸引されて体内に取り込まれる。近年、麻疹の予防のためのワクチン等をこのネブライザによってエアロゾル化し、使用者の口および鼻を介して体内に投与する試みがなされている。
【0003】
通常、ネブライザは、圧縮空気を発生させるコンプレッサを備える本体装置と、圧縮空気の導入によりエアロゾルを発生させるネブライザキットとを有している。このようなネブライザを開示する先行技術文献として、特許文献1(特開平6−285168号公報)または特許文献2(特開2009−219543号公報)が挙げられる。ネブライザキットには、使用者によって口や鼻からの吸引を吸入補助具として、マウスピースやマスクが装着される。
【0004】
ネブライザが使用される前には、ネブライザキットがテーブル等の上に載置される。ネブライザキットの蓋部が開けられ、ネブライザキットに薬液等の液体が注ぎ込まれる。その後、ネブライザの本体に接続されたチューブをネブライザキットに接続するまでの間に、不意にネブライザキットを転倒させてしまうことがある。また、吸入を一時中断してネブライザキットを載置する際に、不意にネブライザキットを転倒させてしまうこともある。ネブライザキットが転倒することによってネブライザキット内部に貯留された液体が流出する場合があるが、喘息薬などは通常高価であり、流出させるのは好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−285168号公報
【特許文献2】特開2009−219543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、ネブライザキットが転倒することによって、ネブライザキット内部に貯留された液体が流出する場合がある点にある。したがってこの発明の目的は、ネブライザキットが転倒したとしても、ネブライザキット内部に貯留された液体が流出することを抑制する、ネブライザキットおよびネブライザを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の局面に基づくネブライザキットは、上端に開口を有し、内部においてエアロゾルが生成される有底筒状のケース体と、上記開口を塞ぐように取り付けられる蓋状の流路形成体と、上記流路形成体の上面における外周寄りの部分を貫通するように設けられた筒状のエアロゾル排出口と、を備える。
【0008】
上記ケース体および/または上記流路形成体には、上記ケース体が所定の載置面上において転倒し、上記エアロゾル排出口の位置が上記流路形成体の上記上面における鉛直方向の下側となったとき、上記エアロゾル排出口の位置を鉛直方向の下側から遠ざけるように、上記ケース体を上記ケース体の外周面の周方向に回転させる回転機構が設けられる。
【0009】
本発明の第2の局面に基づくネブライザキットは、上記第1の局面に基づくネブライザキットにおいて、上記ケース体の外表面および/または上記流路形成体の外表面には、上記ケース体の筒径方向の外側に向かって延在する延設部材が設けられ、上記延設部材の先端は、平面視において上記エアロゾル排出口の内周面に最も近接する上記ケース体の外周面上に規定される接線よりも、上記ケース体の筒径方向の外側に位置し、上記回転機構は、上記延設部材を含んで構成される。
【0010】
本発明の第3の局面に基づくネブライザキットは、上記第1または上記第2の局面に基づくネブライザキットにおいて、上記ケース体および/または上記流路形成体には錘部が設けられ、平面視において、上記エアロゾル排出口の内周面に最も近接する上記ケース体の外周面の部分と、上記ケース体の外周面において上記部分の正反対側に位置する部分とを結ぶことによって直線が規定され、上記錘部は、平面視において、上記錘部の重心位置と上記直線とが重ならないように配置され、上記回転機構は、上記錘部を含んで構成される。
【0011】
本発明の第4の局面に基づくネブライザキットは、上記第1から上記第3のいずれかの局面に基づくネブライザキットにおいて、上記ケース体の外表面には、上記ケース体の筒径方向の外側に向かって延在するグリップが設けられ、上記グリップは、上記流路形成体が上記ケース体に取り付けられた状態においては、平面視において上記エアロゾル排出口が設けられている側から周方向に向かってずれた位置に配置され、上記回転機構は、上記グリップを含んで構成される。
【0012】
本発明に基づくネブライザは、圧縮空気を送り出すコンプレッサを有する本体と、上記コンプレッサから送り出される圧縮空気が導出される圧縮空気管部と、上記圧縮空気管部の一端が連結され、エアロゾルを生成する上記第1から上記第4の局面のいずれかに基づくネブライザキットとを備える。
【発明の効果】
【0013】
この発明に基づいたネブライザおよびネブライザキットによれば、ネブライザキットが転倒したとしても、ネブライザキット内部に貯留された液体が流出することを抑制する、ネブライザキットおよびネブライザを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態におけるネブライザの外観構成を示す全体斜視図である。
【図2】実施の形態におけるネブライザキットの外観構成を示す第1全体斜視図である。
【図3】実施の形態におけるネブライザキットの外観構成を示す第2全体斜視図である。
【図4】実施の形態におけるネブライザキットの分解斜視図である。
【図5】図3中のV−V線矢視縦断面図である。
【図6】実施の形態におけるネブライザキットが転倒した状態を示す断面図である。
【図7】図6中の矢印VII方向から実施の形態におけるネブライザキットを見た様子、および実施の形態の他の形態におけるネブライザキットを示す平面図である。
【図8】実施の形態におけるネブライザキットがケース体の外周面の周方向に回転した様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明に基づいた実施の形態におけるネブライザキットおよびネブライザについて図面を参照して詳細に説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各図中、同一符号は同一または相当部分を指し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0016】
(ネブライザ1およびネブライザキット100)
以下、図1から図8を参照して、実施の形態におけるネブライザ1およびネブライザキット100について説明する。まず、図1から図5を参照して、ネブライザ1およびネブライザキット100の概略構成について説明する。
【0017】
なお、図1は、ネブライザ1の外観構成を示す全体斜視図、図2および図3は、ネブライザキット100の外観構成を示す第1および第2全体斜視図、図4は、ネブライザキット100の分解斜視図であり、図5は、図3中のV−V線矢視断面図である。
【0018】
図1を参照して、ネブライザ1は、圧縮空気を送り出すコンプレッサおよび電子部品等を内蔵する本体10と、本体10に設けられた圧縮空気送風口11に一端が連結される可撓性を有する圧縮空気管部としてのチューブ12と、チューブ12の他端が連結されるネブライザキット100と、ネブライザキット100に結合され、使用者によって口や鼻からの吸引を助ける吸入補助具としてのマウスピース200とを備えている。マウスピース200の形態には、マスク状の形態等様々なものが存在する。
【0019】
図2から図5を参照して、ネブライザキット100は、ケース体110と、霧化部形成体120(図4参照)と、流路形成体130と、キャップ体140とを有する。流路形成体130の上面には、流路形成体130の上面の一部を貫通するように筒状のエアロゾル排出口132が設けられ、このエアロゾル排出口132にマウスピース200(図1参照)等の吸入補助具が接続される。
【0020】
図3に示すように、ケース体110の外表面にはグリップ111が設けられている。グリップ111は、上記の外表面からケース体110の筒径方向の外側に向かって延在し、先端側が垂れ下がるように構成されている。
【0021】
グリップ111は、後述する流路形成体130がケース体110に取り付けられた状態においては、平面視においてエアロゾル排出口132が設けられている側とは反対側に位置している。
【0022】
グリップ111の下方のケース体110の外表面には、ケース体110の内部に収容される薬液等の液体の量を確認するための目盛110mが設けられている。この目盛110mは、ケース体110の外側から液量(目盛110mにおける表示内容)が容易に視認できるように、ケース体110の外部に面している壁面側に設けられている。また、グリップ111と目盛110mとの位置関係は、目盛110mの視認がグリップ111によって妨げられないように設定されているとよい。たとえば、グリップ111をケース体110の壁面側に向かって投影したときに、この投影により得られる投影像と目盛り110mとが重ならないように、上記の位置関係が設定されているとよい(図5参照)。キャップ体140と流路形成体130との間には、圧力調整用隙間101が複数形成されている。
【0023】
図4を参照して、霧化部形成体120は、頂部に開口部124aが形成された円錐形状の吸液管形成部124と、開口部124aの真上に位置するバッフル122とを有している。
【0024】
ケース体110は上端に開口110cを有し、有底筒状に構成されている。このケース体110の内部に霧化部形成体120が収容・配置される。ケース体110の開口110c側の内周面には、嵌合凹部154が周方向に沿って延在するように設けられている。
【0025】
流路形成体130は蓋状に構成され、下部側の外周面には、周方向に沿って延在する突起156が設けられている。流路形成体130は、ケース体110の上端の開口110cを塞ぐようにケース体110の上部に嵌め込まれる。
【0026】
突起156と嵌合凹部154とは、流路形成体130がケース体110に嵌め込まれた状態で、流路形成体130を矢印AR1方向に回転させることによって嵌合する。この嵌合によって、流路形成体130は、ケース体110の上部に取り付けられる。キャップ体140は、流路形成体130の上面に設けられた開口部133を覆うように流路形成体130に取り付けられる。
【0027】
図5を参照して、エアロゾル排出口132は、流路形成体130の上面において外周寄り(紙面左側)に偏った位置に設けられている。エアロゾル排出口132が延びる方向(紙面上下方向)と、流路形成体130が延びる方向(紙面上下方向)とは略平行な位置関係にある。
【0028】
流路形成体130およびエアロゾル排出口132は、延びる方向同士が略平行な位置関係にあることによって、一つの方向(紙面上下方向)に金型を抜くことによって製作されることができるため、製作効率が良い。
【0029】
たとえば上記の特許文献1(特開平6−285168号公報)に開示されているネブライザキットにおいては、エアロゾル排出口がケース体の側面から突出して設けられており、延びる方向同士が交差している。同文献におけるネブライザキットは、二つの方向に金型を抜くことによって製作される必要があり、製作効率が良くない。
【0030】
図5を再び参照して、流路形成体130がケース体110に取り付けられた状態においては、エアロゾル排出口132の内周面の一部132aが、ケース体110の内周面の一部110aに平面視において内接している。この一部110a,132a同士が平面視において内接している部分は、断面視においては連続する略一直線を呈しており、後述する貯留部116が設けられている側に向かって延在している。
【0031】
この一部110a,132a同士が連続することによって略一直線を呈し、貯留部116が設けられている側に向かってこの略一直線が延在している部分においては、エアロゾル排出口132の内周面およびケース体110の内周面のいずれにも板状の部材は設けられていない。エアロゾル排出口132は、エアロゾル搬送路103(詳細は後述する)としての流路面積を十分確保しているため、エアロゾルの排出効率が良い。
【0032】
たとえば上記の特許文献2(特開2009−219543号公報)に開示されているネブライザキットにおいては、エアロゾル排出口132の内方向に突出するように板状の部材が設けられている(同文献の図3参照)。この板状の部材は、エアロゾル排出口の内周面上において突出している。この板状の部材がエアロゾル排出口の内周面に設けられていることによって、エアロゾル搬送路としての流路面積が減少している。同文献におけるネブライザキットにおいては、エアロゾルの排出効率が良くない。
【0033】
ケース体110、霧化部形成体120、流路形成体130、キャップ体140、およびチューブ12は、互いに分解および組立てが可能であり、ネブライザ1の使用後において洗浄および消毒等が容易に実施できるように構成されている。また、マウスピース200等の吸入補助具は、衛生面の観点から使用後において廃棄される、いわゆるディスポーザブルタイプである。
【0034】
図5に示すように、流路形成体130の底面には、エアロゾル排出口132の開口部に連結する外気導入管134が設けられている。ケース体110の底面には、コンプレッサから圧縮空気送風口11(図1参照)およびチューブ12を通して送り出される圧縮空気を、ケース体110の内部に導入するための圧縮空気導入管114が上下方向に延びるように設けられている。
【0035】
圧縮空気導入管114の下部先端部に上述のチューブ12が取り付けられる。また、圧縮空気導入管114の上部先端部114aは、先端開口部114bに向けて先細り形状に形成されている。
【0036】
ケース体110の圧縮空気導入管114が形成された部分の周囲には、貯留部116が設けられている。この貯留部116は、水や食塩水、気管支等の疾患を治癒させるための薬液、ワクチンといった液体Wを一時的に貯留する。
【0037】
圧縮空気導入管114の上部先端部114aには、霧化部形成体120の吸液管形成部124が覆い被さるように載置され、圧縮空気導入管114の先端開口部114bは、吸液管形成部124の開口部124aから露出し、霧化部形成体120のバッフル122に対向する。
【0038】
(エアロゾルの生成および排出)
次に、図5を参照して、エアロゾルの生成および排出について説明する。なお、図5の破線で示す矢印はネブライザ1の本体10(図1参照)から送り出される圧縮空気(外気)の流れを示し、白抜きで示す矢印は圧力調整用隙間101から導入される外気の流れを示し、黒塗りで示す矢印はエアロゾルの排出流れを示す。
【0039】
吸液管形成部124と圧縮空気導入管114の上部先端部114aとの間の隙間によって吸液管が構成され、後述する圧縮空気の吹き付けによる負圧の作用によって貯留部116に貯留された液体Wが後述する霧化部M近傍にまで達することになる。
【0040】
霧化部Mは、圧縮空気導入管114の上部先端部114aとバッフル122との間に形成される。この霧化部Mにおいては、ネブライザ1の本体10によって圧縮空気導入管114に導入された圧縮空気が、圧縮空気導入管114の上部先端部114aからバッフル122に向けて噴き付けられる。その際、霧化部Mにて生じる負圧の作用によって霧化部近傍にまで吸い上げられた液体Wが、上述の負圧の作用によって霧化部Mへと噴き上げられ、圧縮空気とともにバッフル122に向けて噴き付けられる。
【0041】
この作用により、液体Wはバッフル122に衝突して微細な液滴となって霧状粒子となり、この霧状粒子がケース体110の内部に導入された外気(上述のネブライザ1の本体10によって導入された外気と、使用者の呼気動作に基づいて後述する圧力調整用隙間101から導入された外気とを含む)に付与されることによって、ケース体110の内部においてエアロゾルが生成される。
【0042】
霧化部形成体120の上方には、流路形成体130およびキャップ体140が位置決めして配置されている。この流路形成体130により、ケース体110の内部の空間が仕切られ、気流が流動する流路が形成されている。また、キャップ体140は、流路形成体130の上面に設けられた開口部133に嵌め込まれ、これら流路形成体130とキャップ体140との間に設けた隙間により、ネブライザキット内の空間と外部とを連通する圧力調整用隙間101が形成されている。
【0043】
より具体的には、流路形成体130の下部に設けられた外気導入管134によってケース体110の内部の空間が中央部分と周縁部分とに区切られ、外気導入管134の内側によって外気導入路102が規定され、外気導入管134の外側とケース体110に取り囲まれた領域によってエアロゾル搬送路103が規定される。
【0044】
外気導入路102は、上述の圧力調整用隙間101から流入した外気を霧化部Mに導くための流路であり、エアロゾル搬送路103は、霧化部Mにて生成されたエアロゾルをエアロゾル排出口132に導くための流路である。なお上述のとおり、エアロゾル搬送路103上におけるエアロゾル排出口132の内周面およびケース体110の内周面のいずれにも、板状の部材は設けられていない。
【0045】
また、本実施の形態におけるケース体110は、外気導入管134を取り囲むケース体110の、霧化部Mから見てエアロゾル排出口132が設けられる側とは反対側に壁面110bを有している。
【0046】
ケース体110の霧化部Mから見てエアロゾル排出口132が設けられる側の壁面は略半円形形状に設けられ、ケース体110の霧化部Mから見てエアロゾル排出口132が設けられる側とは反対側の壁面に直線部分(立体的に見た場合には、平坦面)が設けられている。
【0047】
ケース体110に直線部を有する壁面110bを設けることで、この壁面110bが障壁となって、外気導入路102からエアロゾル排出口132から遠ざかる方向に流れ出たエアロゾルの流れを、エアロゾル排出口132側に積極的に変更させることが可能となる。
【0048】
また、霧化部Mから見てエアロゾル排出口132側の開口部面積(容量)は、霧化部Mから見てエアロゾル排出口132側とは反対側の開口部面積(容量)より大きくなる。その結果、エアロゾルの排出抵抗は、エアロゾル排出口132側の方が低く、エアロゾル排出口132側とは反対側の方が高くなる。これにより、エアロゾルは、よりエアロゾル排出口132側に向けて排出されることになる。
【0049】
(延設部材152,延設部材150)
次に、図4および図5を参照して、延設部材152および延設部材150について順に説明する。ケース体110の上端側の外表面には、延設部材152が設けられている。本実施の形態における延設部材152は、ケース体110の筒径方向の外側に向かって平板状に延在している。延設部材152は、ケース体110と一体に成型されていてもよく、ケース体110とは別体として成型され、後から取り付けられていてもよい。
【0050】
延設部材152の先端側は平面視半円弧状に構成されている。延設部材152の両端は、ケース体110の外周面上の当該両端に対応する部分における接線(図7における接線LN1および接線LN2参照)方向に沿って延在するように構成されている。
【0051】
延設部材152は、流路形成体130がケース体110に取り付けられた状態においては、平面視においてエアロゾル排出口132が設けられている側に位置している。
【0052】
また、流路形成体130の下端側の外表面には、延設部材150が設けられている。本実施の形態における延設部材150は、ケース体110の筒径方向の外側に向かって平板状に延在している。延設部材150は、流路形成体130と一体に成型されていてもよく、流路形成体130とは別体として成型され、後から取り付けられていてもよい。
【0053】
延設部材150の先端側は平面視半円弧状に構成されている。延設部材150の両端は、流路形成体130の外周面上の当該両端に対応する部分における接線方向に沿って延在するように構成されている(図7における接線LN1および接線LN2参照)。
【0054】
延設部材150は、流路形成体130がケース体110に取り付けられた状態においては、平面視においてエアロゾル排出口132が設けられている側に位置している。
【0055】
本実施の形態における延設部材150および延設部材152は、略同一の形状を有しており、流路形成体130がケース体110に取り付けられた状態においては平面視において相互に重なり合っている。
【0056】
上述のとおり、流路形成体130は、ケース体110に嵌め込まれた状態で、矢印AR1(図4参照)方向に回転させられる。嵌合凹部154(図4参照)と突起156(図4参照)とが嵌合したとき、延設部材150および延設部材152とが相互に重なり合うように構成することによって、使用者に視覚的な安定感を与えることができる。また使用者は、延設部材150および延設部材152が回転によって相互に重なり合うということを認識することによって、予め位置決めした上で流路形成体130をケース体110に容易に嵌め込むことが可能となる。
【0057】
また、延設部材150,152がケース体110の筒径方向の外側に向かって延在している。使用者は、延設部材150,152に、手指を引っ掛けることが可能となる。使用者は、延設部材150,152を活用して、流路形成体130をケース体110に対して矢印AR1(図4参照)方向に容易に回転させることが可能となる。
【0058】
(ネブライザキット100の転倒時の動作)
次に、図6〜図8を参照して、ネブライザキット100の転倒時の動作について説明する。図6は、テーブル等の載置面300上に載置されたネブライザキット100が、平面視においてエアロゾル排出口132が設けられている側に転倒した状態を示す断面図である。図7は、図6中のネブライザキット100を矢印VII方向から見た様子を示す平面図である。図8は、ネブライザキット100がケース体110の外周面の周方向に回転した様子を示す平面図である。
【0059】
図6および図7に示すように、ネブライザキット100が平面視においてエアロゾル排出口132が設けられている側に転倒した状態においては、貯留部116に貯留された液体Wがエアロゾル排出口132から流出し易くなっている。
【0060】
この状態においては、ケース体110は鉛直方向(載置面300に対して直交する方向)から大きく傾斜し、且つエアロゾル排出口132の上端は、流路形成体130の上面上において鉛直方向の下側(図7紙面下側)に位置している。
【0061】
本実施の形態におけるネブライザキット100は、回転機構として延設部材152および延設部材150を有している。ネブライザキット100が上記のように転倒したときには、延設部材150および延設部材152の先端(図7における部分P3)付近が載置面300に接触する。
【0062】
仮に、この状態でネブライザキット100が(周方向に回転することなく)静止したとすると、液体Wの容量によっては、液体Wはエアロゾル排出口132から流出する。本実施の形態における延設部材150,152は、回転機構として、ケース体110を周方向に回転させる。
【0063】
図8を参照して、具体的に説明する。本実施の形態における延設部材150,152は、上述のとおり、先端側が平面視半円弧状に構成されている。延設部材152,150の両端は、上述のとおり、ケース体110の外周面上の当該両端に対応する部分における接線(接線LN1,LN2)方向に沿って延在するように構成されている。
【0064】
延設部材150,152が上記のように構成されていることによって、転倒したケース体110には、(ケース体110を静止させることなく)ケース体110を周方向に積極的に回転させようとする推進力が作用する。この推進力によって、ネブライザキット100(ケース体110)は、延設部材150,152の周縁と載置面300とを接触させながら滑らかに且つ迅速に矢印AR2方向(周方向)に回転し、エアロゾル排出口132の位置を、流路形成体130の上面上における鉛直方向の下側から遠ざける。
【0065】
エアロゾル排出口132の位置が流路形成体130の上面上における鉛直方向の下側から遠ざかることによって、エアロゾル排出口132の先端の開口部の位置が高くなり、ネブライザキット100内部に貯留された液体Wと、エアロゾル排出口132の先端の開口部との位置も遠ざかる。結果として、エアロゾル排出口132の先端の開口部から液体Wが流出することは抑制される。
【0066】
グリップ111がケース体110の外表面に設けられていることによって、グリップ111は使用者のネブライザ1の使用時における利便性を向上させるだけでなく、ネブライザキット100の上記の回転時におけるストッパとして機能することができる。グリップ111は、転倒したネブライザキット100が(たとえば周方向に約180°)回転することによって、載置面300に接触する。この接触によって、グリップ111は、ネブライザキット100が周方向にさらに回転することを防止する。
【0067】
グリップ111は、上述のとおり、平面視においてエアロゾル排出口132が設けられている側とは反対側に位置しているとよい。グリップ111は、この位置の他にも、平面視においてエアロゾル排出口132が設けられている側から周方向に向かってずれた位置に設けられていても、ストッパとして機能することができる。ネブライザキット100内部に貯留された液体Wが流出することを抑制するという観点からは、グリップ111は、平面視においてエアロゾル排出口132に近い位置に設けられていてもよい。グリップ111が、本来のグリップとしての機能と、液体Wの流出を抑制するという機能とを最も効果的に発揮するためには、グリップ111は、平面視においてエアロゾル排出口132から最も離れた位置に設けられていることが好ましい。ネブライザキット100がグリップ111を有している場合、回転機構は、延設部材150,152およびグリップ111を含んで構成される。
【0068】
(錘部160)
図7および図8に示すように、ネブライザキット100は錘部160を有していてもよい。なお、錘部160は、図1〜図6においては記載していない。この場合、錘部160は、ケース体110および流路形成体130の一方に設けられていてもよく、双方に設けられていてもよい。
【0069】
本実施の形態における錘部160は図7紙面垂直方向に延在する平板状に構成され、ケース体110の外周面に取り付けられている。錘部160の重心160aの位置は、平面視においてエアロゾル排出口132が設けられている側に位置する部分P1(詳細は後述する)から見て周方向(図7における矢印AR3方向)に向かってずれている。さらに、錘部160の重心160aの位置は、平面視においてエアロゾル排出口132が設けられている側に正対する(換言すると、部分P1の正反対に位置する)部分P2から見て周方向(図7における矢印AR4方向)に向かってずれている。
【0070】
錘部160が上記のように構成されていることによって、転倒したケース体110には、ケース体110を周方向に積極的に回転させようとする推進力が作用する。ネブライザキット100(ケース体110)は、延設部材150,152の周縁と載置面300とを接触させながら滑らかに且つより迅速に矢印AR2(図8参照)方向に回転し、エアロゾル排出口132の位置を流路形成体130の上面上における鉛直方向の下側から遠ざける。
【0071】
エアロゾル排出口132の位置が流路形成体130の上面上における鉛直方向の下側から遠ざかることによって、エアロゾル排出口132の先端の開口部の位置が高くなり、ネブライザキット100内部に貯留された液体Wと、エアロゾル排出口132の先端の開口部との位置も遠ざかる。結果として、エアロゾル排出口132の先端の開口部から液体Wが流出することは抑制される。
【0072】
錘部160は、上記の推進力を発生させるという観点からは、上記の位置とは異なる他の位置に設けられていてもよい。錘部160は、たとえば、ケース体110の内周面上、流路形成体130の内周面上、および流路形成体130の外周面上のうちいずれか1つに設けられてもよく、これらのうち複数に設けられていてもよい。
【0073】
錘部160は、ケース体110の底面に設けられていてもよい。錘部160は、流路形成体130の上面に設けられていてもよく、グリップ111に取り付けられていてもよい。錘部160は、インサート成型などによって、ケース体110、流路形成体130またはグリップ111などを構成する部材内部に埋め込まれるように設けられていてもよい。
【0074】
錘部160は、上記の位置に限られず、さらに他の位置に設けられていてもよい。平面視において、エアロゾル排出口132の内周面に最も近接するケース体110の外周面の部分P1と、ケース体110の外周面において部分P1の正反対側に位置する部分P2とを結ぶことによって直線HS(立体的に見れば、平面)が規定される。錘部160は、平面視において、錘部160の重心160aの位置と上記の直線HSとが重ならないように(錘部160の重心160aの位置が、上記の直線HS上に含まれないように)配置されていればよい。
【0075】
錘部160の重心160aの位置が上記のように配置されていることによって、転倒したケース体110には、ケース体110を周方向に積極的に回転させようとする推進力が作用する。ネブライザキット100が錘部160を有している場合、回転機構は錘部160を含んで構成される。
【0076】
ネブライザキット100は、延設部材150、延設部材152、錘部160のすべてを有していてもよく、これらのうち少なくとも1つのみを有していてもよい。換言すると、ネブライザキット100は、回転機構としては延設部材150,152を含まずに、錘部160のみを含んで構成されてもよい。回転機構は、延設部材150のみを含んで構成されてもよく、延設部材152のみを含んで構成されてもよく、錘部160のみを含んで構成されてもよい。回転機構は、延設部材150、延設部材152、錘部160のうちいずれか一つまたは複数と、グリップ111とを含んで構成されてもよい。さらに、回転機構は、グリップ111のみを含んで構成されていてもよい。回転機構がグリップ111のみを含んで構成される場合、たとえばグリップ111の重心位置を、上記の錘部160における重心160aと同様に、ケース体110に対して周方向に積極的に回転させようとする推進力が作用するように配置するとよい。なお、ネブライザキット100は、グリップ111を有していなくてもよい。
【0077】
(作用・効果)
図5および図6を参照して、ネブライザ1およびネブライザキット100によれば、ネブライザキット100が転倒したとしても、回転機構がネブライザキット100(ケース体110)を周方向に回転させる。結果として、ネブライザキット100の内部に貯留された液体Wが流出することは抑制される。
【0078】
ネブライザ1およびネブライザキット100によれば、エアロゾル搬送路103上において、エアロゾル排出口132の内周面およびケース体110の内周面のいずれにも、板状の部材が設けられていない。たとえば上記の特許文献2(特開2009−219543号公報の図3)に開示されているネブライザキットに比べて、エアロゾル排出口132はエアロゾル搬送路103としての流路面積を十分確保しているため、エアロゾルの排出効率が良い。
【0079】
ネブライザ1およびネブライザキット100によれば、ケース体110に直線部を有する壁面110bを設けることで、この壁面110bが障壁となって、外気導入路102からエアロゾル排出口132から遠ざかる方向に流れ出たエアロゾルの流れを、エアロゾル排出口132側に積極的に変更させることが可能となる。エアロゾルは、よりエアロゾル排出口132側に向けて排出されることになる。
【0080】
(実施の形態の他の構成)
図4および図5を参照して、上述の実施の形態における延設部材150,152の先端側は、平面視半円弧状に構成されている。延設部材150,152は、延在している先端側に頂部を持つ平面視三角形の平板状に構成されていてもよい。延設部材150,152は、延在している先端の頂部が丸みを帯びた平面視略三角形の平板状に構成されていてもよい。
【0081】
延設部材150,152は平板状に限られず、筒径方向の外側に向かって棒状に延在するように構成されていてもよく、筒径方向の外側に向かってドーム状に突出するように構成されていてもよい。延設部材150,152は、平面視において左右対称に構成されていても、平面視において左右非対称に構成されていてもよい。
【0082】
上述の実施の形態における延設部材150,152は、流路形成体130がケース体110に取り付けられた状態においては、平面視においてエアロゾル排出口132が設けられている側に位置している。
【0083】
図7を参照して、平面視におけるケース体110の外周面上には、上述のとおり、エアロゾル排出口132の内周面に最も近接するケース体110の外周面の部分P1が規定される。この部分P1において、ケース体110の外周縁上には接線LN3(立体的に見た場合には、平面)が規定される。また、延設部材150,152の(紙面下方向に)延在する先端には、部分P3が規定される。
【0084】
ネブライザキット100の転倒時に、ネブライザキット100内部に貯留された液体Wが流出することを抑制するという観点からは、上記の部分P3が、上記の接線LN3よりも、ケース体110の筒径方向の外側(図7紙面下側)に位置していればよい。
【0085】
ネブライザキット100の転倒時に、ネブライザキット100が(周方向に回転することなく)静止することをより抑制するという観点からは、上記の部分P3が上記の接線LN3よりもケース体110の筒径方向の外側(図7紙面下側)に位置し、且つ上記の部分P3は平面視半円弧状または平面視放物線状に形成されているとよい。
【0086】
図4を参照して、上述の実施の形態における延設部材152は、ケース体110の外表面の(紙面上下方向における)上端側に設けられている。延設部材152は、ケース体110の外表面の中央部、またはケース体110の外表面の下端側に設けられていてもよい。上述の実施の形態における延設部材150は、流路形成体130の外表面の(紙面上下方向における)下端側に設けられている。延設部材150は、流路形成体130の外表面の中央部、または流路形成体130の外表面の上端側に設けられていてもよい。
【0087】
回転機構としての延設部材150,152または錘部160は、形状および設けられる位置に応じて、転倒したケース体110を周方向により積極的に回転させることが可能になるよう設計されるとよい。
【0088】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
1 ネブライザ、10 本体、11 圧縮空気送風口、12 チューブ、100 ネブライザキット、101 圧力調整用隙間、102 外気導入路、103 エアロゾル搬送路、110 ケース体、110a,132a 一部、110b 壁面、110c 開口、110m 目盛、111 グリップ、114 圧縮空気導入管、114a 上部先端部、114b 先端開口部、116 貯留部、120 霧化部形成体、122 バッフル、124 吸液管形成部、124a,133 開口部、130 流路形成体、132 エアロゾル排出口、134 外気導入管、140 キャップ体、150,152 延設部材、154 嵌合凹部、156 突起、160 錘部、160a 重心、200 マウスピース、300 載置面、AR1〜AR4 矢印、HS 直線、LN1〜LN3 接線、M 霧化部、P1〜P3 部分、W 液体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に開口を有し、内部においてエアロゾルが生成される有底筒状のケース体と、
前記開口を塞ぐように取り付けられる蓋状の流路形成体と、
前記流路形成体の上面における外周寄りの部分を貫通するように設けられた筒状のエアロゾル排出口と、を備え、
前記ケース体および/または前記流路形成体には、前記ケース体が所定の載置面上において転倒し、前記エアロゾル排出口の位置が前記流路形成体の前記上面における鉛直方向の下側となったとき、前記エアロゾル排出口の位置を鉛直方向の下側から遠ざけるように、前記ケース体を前記ケース体の外周面の周方向に回転させる回転機構が設けられる、ネブライザキット。
【請求項2】
前記ケース体の外表面および/または前記流路形成体の外表面には、前記ケース体の筒径方向の外側に向かって延在する延設部材が設けられ、
前記延設部材の先端は、平面視において前記エアロゾル排出口の内周面に最も近接する前記ケース体の外周面上に規定される接線よりも、前記ケース体の筒径方向の外側に位置し、
前記回転機構は、前記延設部材を含んで構成される、
請求項1に記載のネブライザキット。
【請求項3】
前記ケース体および/または前記流路形成体には錘部が設けられ、
平面視において、前記エアロゾル排出口の内周面に最も近接する前記ケース体の外周面の部分と、前記ケース体の外周面において前記部分の正反対側に位置する部分とを結ぶことによって直線が規定され、
前記錘部は、平面視において、前記錘部の重心位置と前記直線とが重ならないように配置され、
前記回転機構は、前記錘部を含んで構成される、
請求項1または2に記載のネブライザキット。
【請求項4】
前記ケース体の外表面には、前記ケース体の筒径方向の外側に向かって延在するグリップが設けられ、
前記グリップは、前記流路形成体が前記ケース体に取り付けられた状態においては、平面視において前記エアロゾル排出口が設けられている側から周方向に向かってずれた位置に配置され、
前記回転機構は、前記グリップを含んで構成される、
請求項1から3のいずれかに記載のネブライザキット。
【請求項5】
圧縮空気を送り出すコンプレッサを有する本体と、
前記コンプレッサから送り出される圧縮空気が導出される圧縮空気管部と、
前記圧縮空気管部の一端が連結され、エアロゾルを生成する請求項1〜4のいずれかに記載のネブライザキットと、を備える、
ネブライザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−229709(P2011−229709A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103125(P2010−103125)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)