説明

ネブライザキットおよびネブライザ

【課題】霧化部形成体と外気導入管との上下方向における相対位置を可変とすることが可能なネブライザキットを提供する。
【解決手段】ネブライザキットは、開口110cを有するケース体110、開口110cを塞ぐように取り付けられる流路形成体130、流路形成体130から垂設された外気導入管134、ケース体110内部の下方側に立設された圧縮空気導入管114、バッフル部122を有する霧化部形成体120、および、雌ネジ部119と雄ネジ部139とからなる昇降機構を備えている。昇降機構は、ケース体110と流路形成体130との上下方向における相対位置を変更可能となっている。昇降機構がケース体110と流路形成体130との上下方向における相対位置を変更することによって、バッフル部122と外気導入管134との上下方向における相対位置が変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ネブライザキットおよびネブライザに関する。
【背景技術】
【0002】
ネブライザは、水、食塩水、または気管支等の疾患を治療する薬液等の液体を霧化することによってエアロゾルを生成する。通常、ネブライザはエアロゾルを生成するネブライザキットを有している。ネブライザキットを開示する文献としては、たとえば下記の特許文献1(特開平6−285168号公報)が挙げられる。
【0003】
図13を参照して、一般的なネブライザキット1000について説明する。ネブライザキット1000においては、ケース体210の内部に、霧化部形成体220が収容および配置されている。霧化部形成体220は、頂部に開口部224aが形成された吸液管形成部224と、開口部224aの真上に位置するバッフル部222と、吸液管形成部224の外表面からバッフル部222の側部に向かって延在するバッフル支持部223とを有している。
【0004】
ケース体210の上部に取り付けられる流路形成体230の底面には、エアロゾル排出口232の開口部に連通する外気導入管234が設けられている。霧化部Mは、バッフル部222と、圧縮空気導入管214の上部先端部214aとの間に形成される。霧化部Mにおいて、圧縮空気導入管214に導入された圧縮空気は、圧縮空気導入管214の上部先端部214aからバッフル部222に向けて噴き付けられる。
【0005】
その際、霧化部Mにて生じる負圧の作用によって貯留部216から霧化部M近傍にまで吸い上げられた液体(図示せず)は、上述の負圧の作用によって霧化部Mへと噴き上げられ、圧縮空気とともにバッフル部222に向けて噴き付けられる。液体はバッフル部222に衝突して霧状粒子(微細な液滴)(図示せず)に変化する。ケース体210の内部に導入された外気に霧状粒子が付与され、ケース体210の内部においてエアロゾルが生成される。エアロゾルは、エアロゾル排出口232を通して外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−285168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のようなネブライザキット1000において、霧化部形成体220および流路形成体230は、ケース体210に組み付けられる。霧化部形成体220(バッフル部222)と外気導入管234との上下方向における相対位置は固定されている。このため、エアロゾルとして噴霧される霧状粒子の粒子径も一定(不変)となっている。用途に応じて異なる粒子径を有する霧状粒子を噴霧させたい場合には、別のネブライザキットを容易する必要があった。
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、霧化部形成体と外気導入管との上下方向における相対位置が固定されている点にある。この発明の目的は、霧化部形成体と外気導入管との上下方向における相対位置を可変とすることによって、エアロゾルとして噴霧される霧状粒子の粒子径を変化させることが可能なネブライザキットおよびネブライザを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の局面に基づくネブライザキットは、上端に開口を有し、内部においてエアロゾルが生成される有底略筒状のケース体と、上記開口を塞ぐように取り付けられる蓋状の流路形成体と、上記流路形成体の底面から垂れ下がるように設けられた外気導入管と、上記ケース体の上記内部の下方側に設けられ、上記流路形成体が上記ケース体に取り付けられた状態においては、上部先端部が上記外気導入管の内部に向かって延在する圧縮空気導入管と、頂部に開口部が形成された吸液管形成部、および上記開口部の上方において上記開口部に対向するように配設されたバッフル部を有する霧化部形成体と、上記ケース体と上記流路形成体との高さ方向における相対位置を変更可能な昇降機構と、を備える。
【0010】
上記昇降機構が上記ケース体と上記流路形成体との高さ方向における相対位置を変更することによって、上記バッフル部と上記外気導入管との高さ方向における相対位置が変更される。
【0011】
本発明の第2の局面に基づくネブライザキットは、上記第1の局面に基づくネブライザキットにおいて、上記流路形成体が上記ケース体に取り付けられることによって上記吸液管形成部が上記上部先端部に覆いかぶさるように配置された状態において、上記霧化部形成体と上記圧縮空気導入管との高さ方向における相対位置を固定する固定手段をさらに備える。
【0012】
本発明の第3の局面に基づくネブライザキットは、上記第2の局面に基づくネブライザキットにおいて、上記固定手段は、上記流路形成体の上記底面または上記外気導入管の管壁から垂れ下がるように設けられ、長手方向における長さが短くなるように変形可能な付勢部材であり、上記バッフル部と上記外気導入管との高さ方向における相対位置が変更されることに伴って、上記付勢部材は、上記霧化部形成体と上記圧縮空気導入管との高さ方向における相対位置が変わらないように上記霧化部形成体を上記圧縮空気導入管に向かって付勢する。
【0013】
本発明の第4の局面に基づくネブライザキットは、上記第1から上記第3のいずれかの局面に基づくネブライザキットにおいて、上記昇降機構は、上記ケース体の上記開口を構成する内周面に設けられた雌ネジ部と、上記開口を塞ぐ上記流路形成体の外周面に設けられた雄ネジ部とを含み、上記流路形成体が上記ケース体に対して周方向に相対的に回転することによって、上記バッフル部と上記外気導入管との高さ方向における相対位置が変更される。
【0014】
本発明の第5の局面に基づくネブライザキットは、上記第1から上記第4のいずれかの局面に基づくネブライザキットにおいて、上記ケース体の外表面およびまたは上記流路形成体の外表面には、上記バッフル部と上記外気導入管との高さ方向における相対位置を示す目盛部が設けられている。
【0015】
本発明に基づくネブライザは、圧縮空気を送り出すコンプレッサを有する本体と、上記コンプレッサから送り出される圧縮空気が導出される圧縮空気管部と、上記圧縮空気管部の一端が連結され、エアロゾルを生成する上記第1から上記第5のいずれかの局面に基づくネブライザキットと、を備える。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、霧化部形成体と外気導入管との上下方向における相対位置を可変とすることによって、エアロゾルとして噴霧される霧状粒子の粒子径を変化させることが可能なネブライザキットおよびネブライザを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態におけるネブライザの外観構成を示す全体斜視図である。
【図2】実施の形態におけるネブライザキットの外観構成を示す第1側面図である。
【図3】実施の形態におけるネブライザキットの外観構成を示す第2側面図である。
【図4】実施の形態におけるネブライザキットを示す分解斜視図である。
【図5】図4におけるV−V線に関する矢視縦断面図である。
【図6】実施の形態におけるネブライザキットの第1の状態を示す断面図である。
【図7】実施の形態におけるネブライザキットの第2の状態を示す断面図である。
【図8】実施の形態におけるネブライザキットの第3の状態を示す断面図である。
【図9】図3におけるIX−IX線に関する矢視縦断面図である。
【図10】実施の形態の他の構成におけるネブライザキットの一部を示す縦断面図である。
【図11】実施の形態のさらに他の構成におけるネブライザキットを示す分解斜視図である。
【図12】実施の形態のさらに他の構成におけるネブライザキットを示す断面図である。
【図13】一般的なネブライザキットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明に基づいた実施の形態におけるネブライザキットおよびネブライザについて図面を参照して詳細に説明する。実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各図中、同一符号は同一または相当部分を指し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0019】
(ネブライザ1およびネブライザキット100)
図1を参照して、実施の形態におけるネブライザ1は、本体10、チューブ12(圧縮空気管部)、ネブライザキット100、およびマウスピース200(吸入補助具)を備えている。本体10は、圧縮空気を送り出すコンプレッサおよび電子部品等を内蔵している。チューブ12は可撓性を有し、本体10に設けられた圧縮空気送風口11に一端が連結され、ネブライザキット100に他端が連結されている。
【0020】
マウスピース200は、ネブライザキット100に取り付けられ、使用者による鼻または口へのエアロゾルの吸引に供される。マウスピース200の形態はたとえばマスク状である。マウスピース200はディスポーザブルタイプとし、衛生面の観点から使用後に廃棄するようにしてもよい。
【0021】
図2および図3を参照して、本実施の形態におけるネブライザキット100は、ケース体110、霧化部形成体120(図4参照)、流路形成体130、外気導入管134(図4参照)、キャップ体140、および、ケース体110と流路形成体130との高さ方向(上下方向)における相対位置を変更可能な昇降機構(詳細は後述する)を有している。
【0022】
図4を参照して、ケース体110は上端に開口110cを有し、有底筒状に構成されている。開口110c付近のケース体110の内周面には、雌ネジ部119が設けられている。流路形成体130は蓋状に構成され、流路形成体130の下部外周には、ケース体110の雌ネジ部119に螺合可能な雄ネジ部139が設けられている。雌ネジ部119および雄ネジ部139によって、昇降機構が構成されている。
【0023】
流路形成体130はケース体110の上端の開口110cを塞ぐようにケース体110の上部に嵌め込まれる。雌ネジ部119および雄ネジ部139は、流路形成体130がケース体110に嵌め込まれた状態で、流路形成体130を周方向に回転させることによって相互に螺合する。この螺合によって、流路形成体130はケース体110の上部に取り付けられる。雌ネジ部119と雄ネジ部139とが相対的に回転することによって、ケース体110と流路形成体130との高さ方向における相対位置を変更可能となっている。
【0024】
ケース体110と流路形成体130との高さ方向における相対位置を外部から視認し易いように、ケース体110の外周面には周方向に沿って複数の目盛部118が並んで設けられているとよい。流路形成体130の外周面にも目盛部118に向かい合うように目盛部111が設けられているとよい。
【0025】
流路形成体130の外周面に一定間隔毎に凸部を設け、ケース体110の内周面にこの凸部に対応するように凹部を設けてもよい。流路形成体130をケース体110に対して回転させる際に、この一定間隔毎に生じる凸部と凹部とによる抵抗の変化によって、回転量を使用者に感じさせることが可能となる。
【0026】
流路形成体130の上面には、流路形成体130の上面の一部を貫通するように筒状のエアロゾル排出口132が設けられている。エアロゾル排出口132にマウスピース200(図1参照)が接続される。流路形成体130の底面130aには、外気導入管134が底面130aから垂れ下がるように設けられている。外気導入管134は、エアロゾル排出口132に連通している。
【0027】
キャップ体140の外周面141には、凹部142が設けられている。キャップ体140は、流路形成体130の上面に設けられた開口部133を覆うように流路形成体130に取り付けられる。凹部142の下部は、開口部133の内周面と対面するように配置される。キャップ体140の外周面141と、開口部133の内周面との間の隙間により、圧力調整用隙間101(図2および図3参照)が複数構成される。
【0028】
図5を参照して、霧化部形成体120は、吸液管形成部124、バッフル部122、バッフル支持部123、突起125、および腕部126を有している。吸液管形成部124は円錐形状に形成され、その頂部には開口部124aが設けられている。バッフル部122は開口部124aの真上に位置している。バッフル部122の中央下部に設けられた突起125は、開口部124aに対向している。バッフル支持部123は、バッフル部122と吸液管形成部124の外表面(腕部126)とを接続している。
【0029】
ケース体110の底面には、上下方向に延びるように圧縮空気導入管114が設けられている。圧縮空気導入管114は略円錐形状であり、圧縮空気導入管114の上部先端部114aは、先端開口部114bに向けて先細り形状に形成されている。圧縮空気導入管114の下部先端部にチューブ12(図1参照)が取り付けられる。圧縮空気導入管114は、コンプレッサから圧縮空気送風口11(図1参照)およびチューブ12を通して送り出される圧縮空気を、ケース体110の内部に導入する。
【0030】
ケース体110の圧縮空気導入管114が形成された部分の周囲には、貯留部116が設けられている。この貯留部116は、水や食塩水、気管支等の疾患を治癒させるための薬液、ワクチン、アレルギー治療薬といった液体(図示せず)を一時的に貯留する。
【0031】
圧縮空気導入管114の上部先端部114aには、霧化部形成体120の吸液管形成部124が覆い被さるように載置される。圧縮空気導入管114の先端開口部114bは、吸液管形成部124の開口部124aから露出し、霧化部形成体120のバッフル部122における突起125に対向する。この状態で、流路形成体130はケース体110に取り付けられる。
【0032】
(固定手段)
流路形成体130には、流路形成体130の底面130a側から垂れ下がるように、固定手段としての付勢部材150が設けられている。付勢部材150は、たとえば板ばね状に形成され、長手方向における長さが短くなるように変形可能となっている。付勢部材150は、外気導入管134の管壁134bの表面または外気導入管134の下端134aから、吸液管形成部124の外表面(腕部126)に向かって垂れ下がるように設けられていてもよい。
【0033】
なお固定手段としては、付勢部材150を設ける代わりに、バネまたはエラストマー等の弾性部材が、付勢部材150と同様に垂れ下がるように取り付けられていてもよい。付勢部材150を設ける代わりに、付勢部材150を霧化部形成体120の吸液管形成部124を圧縮空気導入管114側に嵌着若しくは圧着させるように構成してもよい。
【0034】
(付勢部材150の動作)
図5〜図8を参照して、流路形成体130がケース体110に取り付けられる際の付勢部材150の動作について説明する。図5における付勢部材150は、流路形成体130がケース体110に取り付けられる前の状態である。この状態においては、付勢部材150は長手方向における長さが短くなるように変形していない。付勢部材150は、その長さが最も長い状態となっている。
【0035】
上述のとおり、霧化部形成体120は、吸液管形成部124が上部先端部114aに覆い被さるように載置される。雄ネジ部139と雌ネジ部119とを相互に螺合させつつ、流路形成体130はケース体110に対して徐々に嵌めこまれる。
【0036】
付勢部材150は、流路形成体130がケース体110の中に入り込むように移動することに伴って、霧化部形成体120の腕部126に近づくように下方向に徐々に移動する。流路形成体130がケース体110にさらに深くはめ込まれることによって、付勢部材150と腕部126とが当接する。付勢部材150と腕部126とが当接しやすいように、付勢部材150は所定の幅(太さ)を有しているとよい。付勢部材150は徐々に撓み始め、長手方向における長さが短くなるように変形する。
【0037】
なお付勢部材150が細径である場合には、付勢部材150が下方向に変位した際に付勢部材150と腕部126とが当接し易いように、外気導入管134と霧化部形成体120との回転方向における相対位置を予め位置決め可能なように構成するとよい(具体的には、後述の実施の形態の他の構成において例示する)。
【0038】
図6における付勢部材150は、流路形成体130がケース体110に対して最も深くはめ込まれた状態(第1の状態)を示している。付勢部材150は霧化部形成体120を圧縮空気導入管114に対して付勢している(押し付けている)。バッフル部122(突起125)と外気導入管134の下端134aとの間の距離は、寸法L1となっている。この状態において、霧化部Mにおいて霧状粒子が生成される(詳細は後述する)。生成される霧状粒子の粒子径は、図6に示している第1の状態の方が、次述する図7および図8に示す状態よりも小さい。
【0039】
図7を参照して、流路形成体130をケース体110に対して周方向(流路形成体130をケース体110から取り外す方向)に回転させることによって、流路形成体130とケース体110とは相互に離間する方向に移動する(第2の状態)。なお、霧化部形成体120は、付勢部材150によって圧縮空気導入管114に対して付勢されている。
【0040】
バッフル部122(突起125)と外気導入管134の下端134aとの間の距離が小さくなり、その距離は寸法L2(寸法L1>寸法L2)となる。霧化部Mにおいて生成される霧状粒子の粒子径は、上述の第1の状態(図6に示す状態)よりも、第2の状態(図7に示す状態)の方が大きい。
【0041】
仮に、霧化部形成体120が圧縮空気導入管114に対して付勢されていないとすると、霧化部Mにおいて噴き上げられる霧状粒子の圧力によっては、霧化部形成体120が押し上げられてしまう場合がある。付勢部材150が設けられていることによって、霧化部形成体120は霧状粒子によって噴き上げられてしまうことが防止可能となっている。
【0042】
図8を参照して、流路形成体130をケース体110に対して周方向(流路形成体130をケース体110から取り外す方向)にさらに回転させることによって、流路形成体130とケース体110とは相互に離間する方向にさらに移動する(第3の状態)。
【0043】
バッフル部122(突起125)と外気導入管134の下端134aとの間の距離がさらに小さくなり、その距離は寸法L3(寸法L2>寸法L3)となる。霧化部Mにおいて生成される霧状粒子の粒子径は、上述の第2の状態(図7に示す状態)よりも、第3の状態(図8に示す状態)の方が大きい。
【0044】
上述の第2の状態(図7参照)と同様に、霧化部形成体120は、付勢部材150によって圧縮空気導入管114に対して付勢されている。付勢部材150が設けられていることによって、霧化部形成体120は霧状粒子によって噴き上げられてしまうことが防止可能となっている。
【0045】
(エアロゾルの生成および排出)
図9を参照して、上述の図6〜図8のように流路形成体130がケース体110に取り付けられたネブライザキット100において、エアロゾルが生成および排出される様子について説明する。エアロゾルが生成および排出される様子については、上記第1〜上記第3の状態においてほぼ共通している。
【0046】
図9の破線で示す矢印はネブライザ1(図1参照)の本体10から送り出される圧縮空気(外気)の流れを示し、白抜きで示す矢印は圧力調整用隙間101から導入される外気の流れを示し、黒塗りで示す矢印はエアロゾルの排出流れを示す。
【0047】
吸液管形成部124と圧縮空気導入管114の上部先端部114aとの間の隙間によって吸液管が構成される。後述する圧縮空気の吹き付けによる負圧の作用によって、貯留部116に貯留された液体Wは霧化部M近傍にまで吸い上げられる。
【0048】
霧化部Mは、圧縮空気導入管114の上部先端部114aとバッフル部122(突起125)との間に形成される。霧化部Mにおいては、ネブライザ1の本体10によって圧縮空気導入管114に導入された圧縮空気が、圧縮空気導入管114の上部先端部114aからバッフル部122(突起125)に向けて噴き付けられる。その際、霧化部Mにて生じる負圧の作用によって霧化部近傍にまで吸い上げられた液体Wが、上述の負圧の作用によって霧化部Mへと噴き上げられ、圧縮空気とともにバッフル部122(突起125)に向けて噴き付けられる。
【0049】
この作用により、液体Wはバッフル部122の突起125に衝突して微細な液滴となって霧状粒子となり、この霧状粒子がケース体110の内部に導入された外気(上述のネブライザ1の本体10によって導入された外気と、使用者の呼気動作に基づいて後述する圧力調整用隙間101から導入された外気とを含む)に付与されることによって、ケース体110の内部においてエアロゾルが生成される。
【0050】
霧化部形成体120の上方には、流路形成体130およびキャップ体140が位置決めして配置されている。この流路形成体130により、ケース体110の内部の空間が仕切られ、気流が流動する流路が形成されている。流路形成体130とキャップ体140との間に設けた隙間により、ネブライザキット内の空間と外部とを連通する圧力調整用隙間101が形成されている。
【0051】
流路形成体130の下部に設けられた外気導入管134によって、ケース体110の内部の空間が中央部分と周縁部分とに区切られ、外気導入管134の内側によって外気導入路102が規定され、外気導入管134の外側とケース体110に取り囲まれた領域によってエアロゾル搬送路103が規定される。
【0052】
外気導入路102は、圧力調整用隙間101から流入した外気を霧化部Mに導くための流路であり、エアロゾル搬送路103は、霧化部Mにて生成されたエアロゾルをエアロゾル排出口132に導くための流路である。当該構成により、外気導入路102からエアロゾル排出口132に向かって、エアロゾルが排出されることになる。
【0053】
(作用・効果)
ネブライザキット100によれば、使用する薬剤の種類や性質(粘度など)、患者の症状や患部の位置、または患者の年齢など、用途および望まれる効能に応じて、噴霧される粒子の径を変更することが可能となる。所望の粒子径に応じて複数のネブライザキットを用意する必要が無く、1つのネブライザキットによって所望の大きさを有する霧状粒子(エアロゾル)を噴出することができるため、製造費用を安くすることが可能となる。
【0054】
ネブライザキット100によれば、適切な粒子径を選択することによって、患者に対して薬液を最適な状態(最も効能が期待できる状態)で投与することが可能となる。たとえば、喘息等に対しては比較的小さい粒子径のエアロゾルが噴霧されることが望ましい。去痰や喉への投与に対しては比較的中くらいの粒子径のエアロゾルが噴霧されることが望ましい。鼻の洗浄などの用途に対しては、比較的大きな粒子径のエアロゾルが噴霧されることが望ましい。また、ネブライザキット100によれば、新たな疾病やさまざまな新薬に対して柔軟かつ迅速に対応することも可能となる。
【0055】
冒頭に説明した特許文献1(特開平6−285168号公報)は、ネブライザキットの構成部品の一部が一体的に成型されるという態様を開示している。しかしながら同公報におけるネブライザキットは、霧状粒子が生成される霧化部と、外気導入管との相対的な位置関係が固定されているため、霧状粒子の粒子径を変化させることができない。霧化部と外気導入管とが離間しているため噴霧効率も良くない上に、生成される粒子の径も大きい。また、霧化部および外気導入管を洗浄することも困難となっている。
【0056】
これに対し、本実施の形態におけるネブライザキット100によれば、昇降機構を備えていることによって霧状粒子の粒子径を変化させることが可能である。霧化部と外気導入管とを近づけることによって噴霧効率を向上させることができる。分解することによって霧化部および外気導入管を洗浄することも可能となっている。
【0057】
霧化部形成体120を圧縮空気導入管114に対して付勢するための固定手段としての付勢部材150の強度(剛性)については、開口部124aから噴出される霧状粒子によって、霧化部形成体120が浮き上がらない程度に設計されるとよい。なお、開口部124aから噴出される霧状粒子の圧力(水圧または風圧)が微弱であることによって、霧化部形成体120が浮き上がらない場合もある。このような使用態様の場合には、固定手段を積極的に設けなくてもよいこともある。
【0058】
[実施の形態の他の構成]
上述のとおり、流路形成体130がケース体110の中に入り込むように移動することに伴って、付勢部材150は霧化部形成体120の腕部126に近づくように下方向に徐々に移動する。付勢部材150が細径である場合には、付勢部材150が下方向に変位した際に付勢部材150と腕部126とが当接するように、外気導入管134と霧化部形成体120との回転方向における相対位置を予め位置決め可能なように構成するとよい。
【0059】
図10を参照して、たとえば外気導入管134の内周面136に長手方向に延在する長溝137を設ける。この長溝137にバッフル支持部123を嵌め込んだ際に、付勢部材150と腕部126とが対向するように構成する。外気導入管134と霧化部形成体120との回転方向における相対移動は、この長溝137とバッフル支持部123との嵌合によって規制される。
【0060】
流路形成体130をケース体110に取り付ける際、流路形成体130と霧化部形成体120とは共に回転する。付勢部材150と腕部126との回転方向における相対位置は変化しない。付勢部材150が下方向に変位した際に、付勢部材150と腕部126とを容易に当接させることが可能となる。
【0061】
外気導入管134の内周面136に長溝137を設ける代わりに、たとえば外気導入管134の内径よりも霧化部形成体120のバッフル支持部123における外径を若干大きくするよう構成してもよい。当該構成により、外気導入管134は霧化部形成体120に圧入される。この圧入の際、付勢部材150と腕部126とが対向するように構成する。外気導入管134の内周面136とバッフル支持部123との間に生じる摩擦力によって、外気導入管134と霧化部形成体120との回転方向における相対移動が規制される。
【0062】
流路形成体130をケース体110に取り付ける際、流路形成体130と霧化部形成体120とは共に回転する。付勢部材150と腕部126との回転方向における相対位置が変化しない。付勢部材150が下方向に変位した際に、付勢部材150と腕部126とを容易に当接させることが可能となる。
【0063】
[実施の形態のさらに他の構成]
昇降機構としては、雌ネジ部119および雄ネジ部139からなる上記の実施の形態の態様に限られない。図11を参照して、昇降機構は、流路形成体130の下部外周面に周方向に沿うように延設された嵌合凸部156、およびケース体110の開口110cを構成する内周面に周方向に沿うように延設された嵌合凹部154によって構成されていてもよい。嵌合凹部154は上下方向に複数並んで設けられており、各嵌合凹部154に対して、嵌合凸部156は選択的に嵌合可能となっている。
【0064】
流路形成体130は、ケース体110の上端の開口110cを塞ぐようにケース体110の上部に嵌め込まれる。流路形成体130がケース体110に嵌め込まれた状態で、流路形成体130を矢印AR1方向に回転させる。嵌合凸部156を複数(図11中では例示として2つ)あるうちのいずれかの嵌合凹部154に嵌合させる。この嵌合によって、流路形成体130は、ケース体110の上部に取り付けられる。
【0065】
霧化部形成体120(図11において図示せず)のバッフル部122と外気導入管134との上下方向における相対位置は、嵌合凸部156が上側に位置する嵌合凹部154に嵌合する場合と、嵌合凸部156が下側に位置する嵌合凹部154に嵌合する場合とで異なる。嵌合凹部154を複数設け、嵌合凸部156を嵌合凹部154に対して選択的に嵌合させることによって、霧化部形成体120と外気導入管134との上下方向における相対位置は可変となる。エアロゾルとして噴霧される霧状粒子の粒子径を変化させることが可能となる。
【0066】
また、昇降機構としては、雄ネジ部139および雌ネジ部119(図4参照)や、嵌合凹部154および嵌合凸部156(図11参照)のように、ケース体110の開口110cと流路形成体130との接合部に設けられる態様に限られない。
【0067】
図12に示すネブライザキット100aのように、流路形成体130の底面から垂れ下がるように筒状の垂下部135を設ける。流路形成体130および垂下部135とは別体に、筒状の外気導入管134を成型する。上下方向に摺動可能なように、垂下部135に外気導入管134を差し込むように取り付ける。垂下部135の外周面と外気導入管134の内周面との摩擦によって、上下方向の位置を固定するとよい。昇降機構をこのように構成することによって、霧化部形成体120と外気導入管134の下端134aとの相対位置が可変となることによって、エアロゾルとして噴霧される霧状粒子の粒子径を変化させることが可能となる。
【0068】
また、昇降機構としては、流路形成体130と外気導入管134とを別体として成型し、外気導入管134を流路形成体130に対してネジ固定(図示せず)するような態様であってもよい。たとえば、流路形成体130の底面から垂れ下がるように平板状の部材(図示せず)を設ける。この部材に上下方向に延びる長穴を設ける。長穴に対して外気導入管134を上下方向の所望の位置にネジ止め可能とする。外気導入管134の固定位置によって、霧化部形成体120と外気導入管134との上下方向における相対位置は可変となる。エアロゾルとして噴霧される霧状粒子の粒子径を変化させることが可能となる。
【0069】
また、昇降機構としては、ケース体110の開口110cに流路形成体130が嵌め込まれ、ケース体110の開口110cと流路形成体130の外周面とが上下方向に摺動することによって構成されていてもよい。摺動によって決定される流路形成体130とケース体110との相対位置によって、エアロゾルとして噴霧される霧状粒子の粒子径を変化させることが可能となる。この態様において付勢部材150を設ける場合、流路形成体130と霧化部形成体120とは相対的に回転移動しないため、容易に付勢部材150と腕部126とを当接させることが可能となる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1 ネブライザ、10 本体、11 圧縮空気送風口、12 チューブ、100,100a ネブライザキット、101 圧力調整用隙間、102 外気導入路、103 エアロゾル搬送路、110,210 ケース体、110c 開口、111,118 目盛部、114,214 圧縮空気導入管、114a,214a 上部先端部、114b 先端開口部、116,216 貯留部、119 雌ネジ部、120,220 霧化部形成体、122,222 バッフル部、123,223 バッフル支持部、124,224 吸液管形成部、124b 外表面、124a,133,224a 開口部、125 突起、126 腕部、130a 底面、130,230 流路形成体、132,232 エアロゾル排出口、134a 下端、134,234 外気導入管、134b 管壁、135 垂下部、136 内周面、137 長溝、139 雄ネジ部、140 キャップ体、141 外周面、142 凹部、150 付勢部材、154 嵌合凹部、156 嵌合凸部、200 マウスピース、1000 ネブライザキット、AR1 矢印、L1〜L3 寸法、M 霧化部、W 液体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に開口を有し、内部においてエアロゾルが生成される有底略筒状のケース体と、
前記開口を塞ぐように取り付けられる蓋状の流路形成体と、
前記流路形成体の底面から垂れ下がるように設けられた外気導入管と、
前記ケース体の前記内部の下方側に設けられ、前記流路形成体が前記ケース体に取り付けられた状態においては、上部先端部が前記外気導入管の内部に向かって延在する圧縮空気導入管と、
頂部に開口部が形成された吸液管形成部、および前記開口部の上方において前記開口部に対向するように配設されたバッフル部を有する霧化部形成体と、
前記ケース体と前記流路形成体との高さ方向における相対位置を変更可能な昇降機構と、
を備え、
前記昇降機構が前記ケース体と前記流路形成体との高さ方向における相対位置を変更することによって、前記バッフル部と前記外気導入管との高さ方向における相対位置が変更される、
ネブライザキット。
【請求項2】
前記流路形成体が前記ケース体に取り付けられることによって前記吸液管形成部が前記上部先端部に覆いかぶさるように配置された状態において、前記霧化部形成体と前記圧縮空気導入管との高さ方向における相対位置を固定する固定手段をさらに備える、
請求項1に記載のネブライザキット。
【請求項3】
前記固定手段は、前記流路形成体の前記底面または前記外気導入管の管壁から垂れ下がるように設けられ、長手方向における長さが短くなるように変形可能な付勢部材であり、
前記バッフル部と前記外気導入管との高さ方向における相対位置が変更されることに伴って、前記付勢部材は、前記霧化部形成体と前記圧縮空気導入管との高さ方向における相対位置が変わらないように前記霧化部形成体を前記圧縮空気導入管に向かって付勢する、
請求項2に記載のネブライザキット。
【請求項4】
前記昇降機構は、前記ケース体の前記開口を構成する内周面に設けられた雌ネジ部と、前記開口を塞ぐ前記流路形成体の外周面に設けられた雄ネジ部とを含み、
前記流路形成体が前記ケース体に対して周方向に相対的に回転することによって、前記バッフル部と前記外気導入管との高さ方向における相対位置が変更される、
請求項1から3のいずれかに記載のネブライザキット。
【請求項5】
前記ケース体の外表面およびまたは前記流路形成体の外表面には、前記バッフル部と前記外気導入管との高さ方向における相対位置を示す目盛部が設けられている、
請求項1から4のいずれかに記載のネブライザキット。
【請求項6】
圧縮空気を送り出すコンプレッサを有する本体と、
前記コンプレッサから送り出される圧縮空気が導出される圧縮空気管部と、
前記圧縮空気管部の一端が連結され、エアロゾルを生成する請求項1〜5のいずれかに記載のネブライザキットと、を備える、
ネブライザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−145(P2012−145A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135266(P2010−135266)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)