説明

ノイズ低減装置およびノイズ低減方法

【課題】動画像のノイズ低減処理において空間的平滑化にともなう画質の低下を抑制する。
【解決手段】動画像のノイズを低減するノイズ低減装置400は、動画像中で動きのある動領域と動領域以外の静領域とを検出する動き検出部412と、動画像を構成する入力フレーム画像F0に空間的平滑化処理を施して空間平滑フレーム画像を生成する空間平滑化処理部と、を備えている。空間平滑化処理部による空間的平滑化処理の度合は、入力フレーム画像F0を構成する画素毎に設定可能である。そして、静領域に属する画素における空間的平滑化処理の度合は、動領域に属する画素における空間的平滑化処理の度合よりも高くなるように設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動画像のノイズを低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
動画像のノイズを低減する方法として、巡回型フィルタや非巡回型フィルタを用いて動画像を時間的に平滑化する方法や、フレーム毎に画像を空間的に平滑化する方法が用いられている。動画像に時間的平滑化処理を施すと、動画像中で動きがある部分については、残像が生じる。そのため、残像の発生を抑制するためには、フレーム毎に画像に空間的平滑化を施すことが好ましい。
【0003】
【特許文献1】特開平6−169920号公報
【特許文献2】特開平9−322020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通常、空間的平滑化を施した画像にはぼけが生じる。そのため、空間的平滑化によるノイズ低減処理を行った場合には、ぼけの発生により、ノイズ低減後の動画像の画質が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、動画像のノイズ低減処理において空間的な平滑化にともなう画質の低下を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
動画像のノイズを低減するノイズ低減装置であって、前記動画像中で動きのある動領域と、前記動領域以外の静領域と、を検出する動き検出部と、前記動画像を構成する入力フレーム画像に空間的平滑化処理を施して空間平滑フレーム画像を生成する空間平滑化処理部と、を備え、前記空間平滑化処理部は、前記入力フレーム画像を構成する画素毎に前記空間的平滑化処理の度合を設定可能に構成されており、前記静領域に属する画素における前記空間的平滑化処理の度合は、前記動領域に属する画素における前記空間的平滑化処理の度合よりも高くなるように設定されている、ノイズ低減装置。
【0008】
この適用例によれば、入力フレーム画像に空間的平滑化処理を施す空間平滑化処理部は、入力フレーム画像を構成する画素毎に空間的平滑化処理の度合を設定可能に構成されている。そして、静領域画素における空間的平滑化処理の度合は、動領域画素における空間的平滑化処理の度合よりも高くなるように設定される。そのため、ノイズの影響が小さい動領域については平滑化処理によるぼけの影響をより抑制することができ、ノイズの影響が大きい静領域についてはノイズをより良好に低減することができる。そのため、ぼけによる画質の低下を抑制するともに、ノイズの影響を良好に低減できるので、動画像全体の画質をより良好なものにすることができる。
【0009】
[適用例2]
適用例1記載のノイズ低減装置であって、前記空間平滑化処理部は、前記入力フレーム画像の空間平滑化処理を実行する空間平滑化フィルタと、前記空間平滑化フィルタを通過した平滑フレーム画像と、前記空間平滑化フィルタを通過しない非平滑フレーム画像と、を混合する混合処理部と、を備え、前記混合処理部は、画素毎に前記平滑フレーム画像と前記非平滑フレーム画像との混合比率を設定可能に構成されている、ノイズ低減装置。
【0010】
この適用例によれば、空間平滑化の度合は、空間平滑化フィルタを通過した平滑フレーム画像と、空間平滑化フィルタを通過しない非平滑フレーム画像と、の混合比率を設定することにより変更することができる。そのため、空間平滑化の度合の設定がより容易となる。
【0011】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、ノイズ低減装置およびノイズ低減方法、そのノイズ低減装置および方法を適用したビデオカメラ、ビデオカメラの制御装置および制御方法、それらのノイズ低減装置および方法、ビデオカメラ、ビデオカメラ制御装置および制御方法、を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の態様で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.第3実施例:
D.変形例:
【0013】
A.第1実施例:
図1は、本発明の一実施例としてのビデオカメラ10の概略構成を示す概略構成図である。ビデオカメラ10は、撮像レンズ100と、イメージセンサ200と、前処理部300と、ノイズ低減部400と、後処理部500と、ビデオ信号生成部600と、を備えている。
【0014】
撮像レンズ100は、被写体からの光をイメージセンサ200の撮像面202に集光することにより、撮像面202に被写体の像を形成する。なお、撮像レンズ100は、通常、複数の単レンズや絞り機構を備えているが、図1では、1枚の単レンズとして描いている。
【0015】
イメージセンサ200は、カラーフィルタ210と、撮像面202側に複数のセンサ素子が設けられた撮像素子220とを備えている。カラーフィルタ210には、撮像素子220に設けられた複数のセンサ素子に対応して、RGBの原色フィルタが複数形成されている。カラーフィルタ210が有するRGB各色の原色フィルタは、市松模様状(「Bayer配列」と呼ばれる)に配置されている。撮像面202上に形成された被写体の像は、原色フィルタによりRGBの3色の色光に分解される。そして、分解された色光が、撮像素子220に設けられたセンサ素子に入射する。
【0016】
撮像素子220の各センサ素子は、そのセンサ素子に入射した光量に応じて、電荷を生成し蓄積する。各センサ素子に蓄積された電荷量を表す電気信号(画像信号)は、図示しない増幅器により増幅される。増幅された画像信号は、A−D変換器(図示しない)によりデジタルデータに変換され、画像データBD1が生成される。ビデオカメラ10においては、1画面(フレーム)分の画像データBD1が周期的に生成される。
【0017】
上述のように、各センサ素子へは、Bayer配列のカラーフィルタ210により分解された色光が入射する。そのため、撮像素子220により生成される画像データBD1は、個々のセンサ素子に対応する画素が、RGBのいずれか1色のみの色成分値を有するデータ(Bayerデータ)となっている。なお、撮像素子220としては、例えば、増幅器とA−D変換器が組み込まれたCMOSイメージセンサや、増幅器とA−D変換器(併せて、「アナログフロントエンド」と呼ばれる)が取り付けられたCCDイメージセンサを使用することができる。
【0018】
撮像素子220により生成された画像データBD1は、前処理部300に供給される。前処理部300は、撮像素子220から供給された画像データBD1にクランプ処理やホワイトバランス調整処理等の処理を施すことにより、画像データBD2を生成する。前処理部300における処理においては、RGBのそれぞれの色成分値に対して別個に処理が施される。そのため、前処理部300において生成される画像データBD2も、Bayerデータとなっている。
【0019】
前処理部300により生成された画像データBD2は、ノイズ低減部400に供給される。ノイズ低減部400は、前処理部300から供給される画像データBD2にノイズ低減処理を施すことにより、画像データBD3を生成する。ノイズ低減部400においても、RGBのそれぞれの色成分値に対して別個にノイズ低減処理が施される。そのため、ノイズ低減部400により生成される画像データBD3も、Bayerデータとなっている。なお、ノイズ低減部400の具体的な構成および機能については、後述する。
【0020】
ノイズ低減部400により生成された画像データBD3は、後処理部500に供給される。後処理部500は、補間処理を行うための補間処理部510を備えている。補間処理部510は、画像データBD3の各画素に欠落している色成分値を生成する。具体的には、画像データBD3の各画素毎に、その画素に欠落している色成分値を周囲の画素の色成分値から補間・生成する。これにより、補間処理が施された画像データは、各画素がRGBの3色の色成分値を有する画像データとなる。後処理部500は、補間処理が施された画像データに対して、色調整処理(コントラスト調整処理、色補正処理)等の処理を施して画像データIMGを生成する。なお、色調整処理の内容は、本発明に影響しないので、ここではその説明を省略する。
【0021】
後処理部500により生成された画像データIMGは、ビデオ信号生成部600に供給される。ビデオ信号生成部600は、後処理部500から供給される画像データIMGから、モニタ装置が受け取り可能な所定の形式のビデオ信号VSGを生成する。生成されたビデオ信号VSGがビデオカメラ10に接続されたモニタ装置に供給されることにより、モニタ装置には被写体の画像が表示される。
【0022】
図2は、第1実施例におけるノイズ低減部400の機能的な構成を示すブロック図である。ノイズ低減部400は、フレーム蓄積部410と、画像混合部420と、空間平滑化フィルタ430と、を備えている。
【0023】
フレーム蓄積部410は、動き検出部412と、フレームメモリ414とを有している。フレームメモリ414は、画像データBD2の1フレーム分の画像(フレーム画像)をそれぞれ格納する2つの格納エリアを有している。ノイズ低減部400に入力されるフレーム画像F1は、フレーム毎に、フレームメモリ414の2つの格納エリアに交互に書き込まれる。そして、フレームメモリ414に格納された直前のフレーム画像F0は、2つの格納エリアのうちフレーム画像F1が書き込みが行われていない格納エリアから読み出される。
【0024】
なお、フレームメモリ414にフレーム画像を格納する2つの格納エリアを設け、読み出しと書き込みとを互いに異なるエリアに対して交互に行うことにより、ノイズ低減部400が生成する画像データBD3の1秒あたりのフレーム数(フレームレート)を、ノイズ低減部400に供給される画像データBD2のフレームレートと異なるものとすることができる。フレームレートを変換する必要がない場合は、フレームメモリ414は、1つのフレーム画像を格納できればよい。
【0025】
動き検出部412は、画像データBD2の各画素について、被写体中で動きがある部分に相当する画像領域(動領域)の画素であるか、被写体中で動きがない部分に相当する画像領域(静領域)の画素であるかを判断する。そして、各画素が、動領域に属する画素(動領域画素)と、静領域に属する画素(静領域画素)とのいずれであるかの判断結果を表す動き検出結果MDを画像混合部420に供給する。
【0026】
具体的には、動き検出部412は、判定対象となる画素(対象画素)について、フレームメモリ414に書き込まれるフレーム画像F1での色成分値(以下、「画素値」とも呼ぶ)と、フレームメモリ414から読み出されるフレーム画像F0での色成分値の差分Δを算出する。差分Δは、例えば、2つのフレーム画像F1,F0のそれぞれの対象画素の画素値p1,p0を用いて、以下の式(1)で算出することができる。
【0027】
Δ=|p1−p0| …(1)
【0028】
ここで、式(1)の右辺は、フレーム画像F1の画素値p1から、フレーム画像F0の画素値p0を引いた差の絶対値を表している。
【0029】
動領域画素の画素値は、通常、被写体中での動きに伴って時間とともに変動するので、2つのフレーム画像F1,F0間の画素値の差分Δは大きくなる。これに対し、静領域画素の画素値は、通常、時間的変動が小さいため、2つのフレーム画像F1,F0間の画素値の差分Δは小さくなる。そこで、動き検出部412は、上記の式(1)で算出した差分Δと予め設定された閾値Δcと比較し、差分Δが閾値Δcよりも大きい(Δ>Δc)場合、対象画素が動領域画素であると判断する。一方、差分Δが閾値Δc以下である(Δ≦Δc)場合、対象画素が静領域画素であると判断する。なお、閾値Δcは、動領域画素の画素値の変動幅と、静領域画素の画素値の変動幅と、を実験的に求め、得られた変動幅に基づいて決定することができる。例えば、画素値が8ビットの数値(0〜255)で表される場合には、閾値Δcは150に設定される。
【0030】
フレームメモリ414から読み出されたフレーム画像F0は、直接、あるいは、空間平滑化フィルタ430を介して、画像混合部420に供給される。空間平滑化フィルタ430は、フレーム画像F0に空間平滑化処理を施して、フレーム画像F0’を生成する。フレーム画像F0の平滑化は、例えば、フレーム画像F0にガウシアンフィルタやメディアンフィルタ等の空間平滑化フィルタをかけることにより行うことができる。平滑化を施すことにより、空間周波数におけるフレーム画像F0の高周波成分が低減され、平滑化されたフレーム画像F0’の空間周波数成分は低周波成分が相対的に高くなる。そのため、空間平滑化フィルタ430は、「空間ローパスフィルタ(空間LPF)」とも呼ばれる。
【0031】
画像混合部420は、混合比率決定部422と、混合処理部424と、を備えている。混合比率決定部422は、動き検出部412から供給される動き検出結果MDに基づいて、混合処理部424において混合される2つの画像の混合比率A(0≦A≦1)を決定する。なお、動き検出結果MDに基づく混合比率Aの決定方法については、後述する。
【0032】
混合処理部424は、フレームメモリ414から直接供給されるフレーム画像F0と、空間平滑化フィルタ430により平滑化されたフレーム画像F0’と、を混合比率決定部422で決定された混合比率Aに基づいて画素毎に混合する。具体的には、2つのフレーム画像F0,F0’の画素値p,p’から、出力する画像データBD3の画素値qを次の式(2)に基づいて算出する。
【0033】
q=A×p+(1−A)×p’ …(2)
【0034】
上記の式(2)から明らかなように、混合比率Aが0に近づくに従って、画像データBD3の画素値qのうち、平滑化されたフレーム画像F0’の画素値p’が占める割合が大きくなる。一方、混合比率Aが1に近づくに従って、画像データBD3の画素値qのうち、平滑化されていないフレーム画像F0の画素値pが占める割合が大きくなる。このように、混合比率Aを変化させることにより、出力される画像データBD3における平滑化の度合を変化させることができる。
【0035】
混合比率決定部422は、動き検出部412から供給される動き検出結果MDに基づいて、動領域画素については平滑化の度合いを下げ、静領域画素については平滑化の度合を高めるように、混合比率Aを決定する。混合比率決定部422は、例えば、以下のように混合比率Aを決定する。
(a)動領域画素については、混合比率A=27/32(約0.84)
(b)静領域画素については、混合比率A=16/32(0.5)
【0036】
このように、混合比率決定部422は、動領域画素に対しては、混合比率Aを大きな値に設定する。一方、静領域画素に対しては、混合比率Aを小さい値に設定する。そのため、ノイズ低減部400が出力する画像データBD3のうち、動領域では空間平滑化の度合いが低くなり、静領域では空間平滑化の度合が高くなる。以上の説明から明らかなように、空間平滑化フィルタ430と画像混合部420とにより構成される空間平滑化処理部は、画素毎に空間平滑化の度合を設定することができる。
【0037】
一般に、空間平滑化を行うことにより、被写体の画像にはぼけが生じる。そのため、画質に対するノイズの影響が少ない場合には、空間平滑化の度合を少なくすることが好ましい。通常、被写体中で動きがある部分の画像は、ノイズが目立ちにくい。そのため、動領域に対して空間平滑化の度合を低くすることにより、ぼけによる動領域の画質が低下することを抑制することができる。これに対し、被写体中で動きのない部分の画像は、ノイズが目立ちやすい。そのため、静領域に対して空間平滑化の度合いを高くすることにより、ノイズによる静領域の画質の低下を抑制することができる。
【0038】
このように、第1実施例によれば、ノイズが目立ちにくい動領域に対しては空間平滑化の度合を低くして、動領域の画像のぼけが抑制される。一方、ノイズが目立ちやすい静領域に対しては空間平滑化の度合いを高くすることにより、静領域のノイズをより低減する。これにより、画像全体に対するノイズの影響を低減するとともに、動きがある部分のぼけによる画質の低下を抑制することができる。
【0039】
なお、第1実施例では、画素毎に空間平滑化の度合を設定するため、画素毎に2つのフレーム画像F0,F0’の混合比率Aを決定しているが、空間平滑化の度合の設定は他の方法により行うこともできる。例えば、動き検出部412からの動き検出結果MDに基づいて、空間平滑化フィルタ430における平滑化パラメータを画素毎に設定することも可能である。この場合、画像混合部420を省略することもできる。但し、空間平滑化フィルタ430の構成がより簡単になる点で、第1実施例のように、空間平滑化が施されていない非平滑フレーム画像F0と、空間平滑化が施された平滑フレーム画像F0’と、の混合比率Aを設定することにより空間平滑化の度合を設定するのが好ましい。
【0040】
B.第2実施例:
図3は、第2実施例におけるノイズ低減部400aの機能的な構成を示すブロック図である。第2実施例は、ノイズ低減部400aの構成が第1実施例のノイズ低減部400(図2)と異なっている点で、第1実施例と異なっている。他の点は、第1実施例と同じである。
【0041】
第2実施例のノイズ低減部400aは、画像重畳部440と、フレーム蓄積部410aと、を備えている。フレーム蓄積部410aは、フレームメモリ414が重畳フレームメモリ416に置き換えられている点で、第1実施例のフレーム蓄積部410(図2)と異なっている。他の点は、第1実施例のフレーム蓄積部410と同じである。
【0042】
重畳フレームメモリ416は、書き込まれるフレーム画像が画像重畳部440から供給されるフレーム画像G1に変更されている点と、書き込まれるフレーム画像の変更に伴って読み出される直前のフレーム画像G0に変更されている点とで、第1実施例のフレームメモリ414(図2)と異なっている。ただし、重畳フレームメモリ416の構成および動作は、第1実施例のフレームメモリ414と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0043】
画像重畳部440は、重畳比率決定部442と重畳処理部444とを備えている。重畳比率決定部442は、動き検出部412から供給される動き検出結果MDに基づいて、重畳処理部444における処理に使用される重畳比率B(0≦B≦1)を決定する。なお、動き検出結果MDに基づく重畳比率Bの決定方法については、後述する。
【0044】
重畳処理部444は、ノイズ低減部400aに供給されたフレーム画像F1と、重畳フレームメモリ416から読み出されたフレーム画像G0と、を重畳比率決定部442により決定された重畳比率Bに基づいて画素毎に混合して、フレーム画像G1を生成する。具体的には、2つのフレーム画像F1,G0の画素値p,rから、フレーム画像G1の画素値sを次の式(3)に基づいて算出する。
【0045】
s=(1−B)×p+B×r …(3)
【0046】
生成されたフレーム画像G1は、重畳フレームメモリ416に供給され、重畳フレームメモリ416に書き込まれる。そして、重畳フレームメモリ416に格納された直前のフレーム画像G0が読み出され、画像重畳部440においてフレーム画像F1と混合される。
【0047】
図4(a)および図4(b)は、重畳フレームメモリ416に格納されるフレーム画像G0の画素値に対して、ノイズ低減部400aに順次入力されるフレーム画像F1の画素値が反映される割合(フレーム比率)の時間的変化を示す説明図である。図4(a)は、重畳比率Bが16/32(=0.5)の場合におけるフレーム比率の時間変化を示しており、図4(b)は、重畳比率Bが5/32(≒0.16)の場合におけるフレーム比率の時間変化を示している。
【0048】
ビデオカメラ10の起動直後(第1フレーム)では、ノイズ低減部400aに入力されたフレーム画像(#1)がそのまま重畳フレームメモリ416に格納される。そして、次の第2フレームにおいて、第1フレームで入力されたフレーム画像(#1)と第2フレームで入力されたフレーム画像(#2)とが、重畳比率Bに従って混合され、混合された画像が重畳フレームメモリ416に格納される。そのため、図4(a)の例では、2つのフレーム画像(#1,#2)のフレーム比率はいずれも50%となる。一方、図4(b)の例では、第2フレームで入力されたフレーム画像(#2)のフレーム比率が約84%、第1フレームで入力されたフレーム画像のフレーム比率が約16%となり、フレーム画像(#1)の影響が図4(a)の場合と比べて低くなる。
【0049】
同様に、次の第3フレームにおいて、図4(a)の例では、2つのフレーム画像(#1,#2)のフレーム比率はいずれも25%となり、第3フレームで入力されたフレーム画像(#3)のフレーム比率が50%となる。これに対して、図4(b)の例では、第1フレームで入力されたフレーム画像(#1)のフレーム比率は約2%にまで低下する。
【0050】
このように、重畳比率Bがより高い図4(a)の例では、先のフレーム画像の画素値がより長い期間反映される。そのため、重畳フレームメモリ416(図3)に格納されたフレーム画像G0は、より長い時間にわたって平均化されるので、ノイズ低減部400aから出力されるフレーム画像G0のノイズの低減の度合いが高くなる。その一方、動領域画素においては、先のフレーム画像の画素値がより長い期間反映されるため、ノイズ低減部400aから出力されるフレーム画像G0の動領域には残像が発生する。これに対し、重畳比率Bがより低い図4(b)の例では、先のフレーム画像の画素値が反映される期間が短くなることにより、フレーム画像G0のノイズの低減度合いが低くなる一方、フレーム画像G0に残像が発生することを抑制することができる。
【0051】
図4(a)および図4(b)から解るように、ノイズ低減部400a(図3)に入力されたフレーム画像F1と、重畳フレームメモリ416に格納された前のフレーム画像G0と、を混合して重畳フレーム画像G1を生成し、生成されたフレーム画像G1を重畳フレームメモリ416に格納する処理によれば、画素値は時間的に平滑化される。このように、時間的平滑化を行うフィルタは、「巡回型フィルタ」あるいは「IIRフィルタ」とも呼ばれる。従って、重畳処理部444と重畳フレームメモリ416とは、併せて巡回型フィルタを構成しているといえる。また、重畳比率Bは、巡回型フィルタにおける時間的平滑化の度合を指定するパラメータともいうことができる。
【0052】
重畳比率決定部442は、動き検出部412から供給される動き検出結果MDに基づいて、動領域については残像の発生を抑制し、残像が発生しない静領域についてはノイズをより低減するように重畳比率Bを決定する。重畳比率決定部は、例えば、以下のように重畳比率Bを決定する。
(a)動領域画素については、B=5/32(約0.16)
(b)静領域画素については、B=16/32(0.5)
【0053】
このように、重畳比率決定部442は、動領域画素に対しては、重畳比率Bを小さな値に設定する。一方、静領域画素に対しては、重畳比率Bを大きい値に設定する。そのため、ノイズ低減部400aが出力する画像データBD3のうち、動領域では残像の発生が抑制されるとともに、静領域ではノイズが良好に低減される。
【0054】
なお、第2実施例は、フレーム画像の時間平滑化によりノイズを低減しているため、空間平滑化処理によるぼけの発生を抑制できる点で、第1実施例よりも好ましい。一方、第1実施例は、フレーム画像の時間平滑化による残像の発生を抑制できる点で第2実施例よりも好ましい。
【0055】
C.第3実施例:
図5は、第3実施例におけるノイズ低減部400bの機能的な構成を示すブロック図である。第3実施例は、ノイズ低減部400bの構成が第2実施例のノイズ低減部400a(図3)と異なっている点で、第2実施例と異なっている。他の点は、第2実施例と同じである。
【0056】
第3実施例のノイズ低減部400bは、タイミング調整部450と空間平滑化フィルタ430と画像混合部420bとが付加されている点と、フレーム蓄積部410bに非重畳フレームメモリ418が付加されている点とで、図3に示す第2実施例のノイズ低減部400aと異なっている。他の点は、第2実施例のノイズ低減部400aと同じである。
【0057】
空間平滑化フィルタ430および画像混合部420bの混合処理部424は、それぞれ、第1実施例のノイズ低減部400に設けられた、空間平滑化フィルタ430および混合処理部424と同じである。画像混合部420bの混合比率決定部422bは、混合比率Aの決定方法(後述する)が異なっている点で、第1実施例の混合比率決定部422と異なっている。
【0058】
第3実施例のノイズ低減部400bでは、入力されるフレーム画像F1は、画像重畳部440とタイミング調整部450との双方に供給される。画像重畳部440に供給されたフレーム画像F1は、第2実施例と同様に時間平滑化が施されることによりノイズが低減される。そして、重畳フレームメモリ416から出力されるフレーム画像G0は、混合処理部424に直接供給される。
【0059】
一方、タイミング調整部450は、フレーム画像F1に、重畳処理部444による2つのフレーム画像F1,G0の混合処理に要する処理時間分の遅延をかけ、遅延されたフレーム画像F1’を生成する。遅延フレーム画像F1’は、非重畳フレームメモリ418に格納される。非重畳フレームメモリ418に格納された前フレーム画像F0は、重畳フレームメモリ416がフレーム画像G0を出力するタイミングに同期して、空間平滑化フィルタ430に供給される。空間平滑化フィルタ430により空間的に平滑化されたフレーム画像F0’は、混合処理部424に供給される。
【0060】
混合処理部424は、重畳フレームメモリ416から供給される時間的に平滑化されたフレーム画像G0と、空間平滑化フィルタにより空間的に平滑化されたフレーム画像F0’とを混合する。
【0061】
混合比率決定部422bは、重畳比率Bが低い動領域画素については、空間的に平滑化されたフレーム画像F0’の画素値を、時間的に平滑化されたフレーム画像G0の画素値よりも高い割合で反映するように混合比率Aを決定する。一方、重畳比率が低い静領域画素については、時間的に平滑化されたフレーム画像G0の画素値を、空間的に平滑化されたフレーム画像F0’の画素値よりも高い割合で反映するように混合比率Aを決定する。混合比率決定部422bは、具体的には、以下のように混合比率Aを決定する。
(a)動領域画素については、混合比率A=16/32(0.5)
(b)静領域画素については、混合比率A=27/32(約0.84)
【0062】
このように、動領域画素に対して、重畳比率Bがより小さな値に設定されることにより、ノイズ低減部400bが出力する画像データBD3の動領域では残像の発生が抑制される。また、動領域画素に対して、混合比率Aがより小さな値に設定されることにより、空間的に平滑化されたフレーム画像F0’の画素値がより強く反映されるので、動領域画素のノイズが空間平滑化により低減される。
【0063】
一方、静領域画素に対しては、混合比率Aがより大きな値に設定されることにより、ノイズ低減部400bが出力する画像データBD3の静領域では、時間的に平滑化されたフレーム画像G0の画素値がより強く反映される。そのため、静領域においては、空間平滑化の度合いが低減するので、静領域の画像のぼけが抑制される。そして、静領域画素に対して、重畳比率Bがより大きな値に設定されることにより、残像の問題が少ない静領域のノイズは時間的平滑化により良好に低減される。
【0064】
このように、第3実施例によれば、動領域画素に対して混合比率Aと重畳比率Bとをいずれもより小さな値に設定することにより、残像の発生を抑制するとともにノイズが良好に低減される。一方、静領域画素に対して、混合比率Aと重畳比率Bとをいずれもより大きな値に設定する、空間平滑化に伴うぼけの発生を抑制することができる。そのため、第3実施例によれば、残像の発生を抑制するとともに、画像全体のノイズを低減することができる。
【0065】
なお、第3実施例では、重畳比率決定部442が、動き検出部412から供給される動き検出結果MDに基づいて重畳比率Bを決定しているが、重畳比率決定部442を省略することも可能である。このようにしても、混合処理部424における混合比率Aをより小さい値に設定して、空間平滑化されたフレーム画像F0’の画素値をより強く反映させることにより、残像の発生を抑制することができる。但し、重畳比率Bを低減することによりより残像の発生をより良好に抑制することができる点で、重畳比率Bを動き検出結果MDに基づいて決定するのがより好ましい。
【0066】
第3実施例は、ノイズ低減部400bにおいて、静領域と動領域とのいずれの領域におけるノイズも低減することで、画像全体のノイズが低減できるる点で、第1および第2実施例よりも好ましい。一方、第1および第2実施例は、ノイズ低減部400(図2),400a(図3)の構成がより簡単となる点で、第3実施例よりも好ましい。
【0067】
D.変形例:
なお、この発明は上記実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0068】
D1.変形例1:
上記各実施例では、ノイズ低減部400(図1)は、補間処理部510を有する後処理部500の前に配置され、ノイズ低減処理は補間処理前のBayerデータに対して施されるが、ノイズ低減処理を補間処理後のデータに対して施すものとしてもよい。但し、RGBのいずれか1色の色成分値毎にノイズ低減処理を施すことによりノイズ低減処理に要する演算処理量を低減することができる点で、ノイズ低減処理をBayerデータに対して施すことがより好ましい。
【0069】
D2.変形例2:
上記第2ないし第3実施例では、時間的な平滑化処理は巡回型フィルタによって行われているが、一般に、複数のフレーム画像を用いて時間的に平滑化されたフレーム画像が生成可能であれば、任意の時間的平滑化処理方法を用いることができる。時間的な平滑化処理は、例えば、非巡回型フィルタを用いて行うことも可能である。但し、フレーム画像を格納するフレームメモリの容量をより低減することができる点で、巡回型フィルタを用いて時間的平滑化処理を行うのが好ましい。
【0070】
D3.変形例3:
上記各実施例では、動き検出部は、フレームメモリに格納されたフレーム画像の画素値と、フレームメモリに入力されるフレーム画像の画素値との差分に基づいて、各画素が動領域と静領域とのいずれに属するかを決定しているが、他の方法により各画素が動領域と静領域とのいずれに属するかを決定することも可能である。例えば、フレーム画像を複数のブロックに分割し、ブロック毎にその変化を検出することも可能である。また、複数のフレーム画像から移動体の位置と動きベクトルを検出し、移動体の位置と動きベクトルとに基づいて各画素が動領域と静領域とのいずれに属するかを決定することも可能である。
【0071】
D4.変形例4:
上記各実施例では、本発明をビデオカメラに適用しているが、本発明は動画像の入出力を行う装置であれば任意の装置に適用することができる。本発明は、例えば、ビデオレコーダやビデオディスク等の動画記録装置および動画再生装置、テレビやプロジェクタ等の動画表示装置に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施例としてのビデオカメラ10の概略構成を示す概略構成図。
【図2】第1実施例におけるノイズ低減部400の機能的な構成を示すブロック図。
【図3】第2実施例におけるノイズ低減部400aの機能的な構成を示すブロック図。
【図4】フレーム比率の時間的変化を示す説明図。
【図5】第3実施例におけるノイズ低減部400bの機能的な構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0073】
10…ビデオカメラ
100…撮像レンズ
200…イメージセンサ
202…撮像面
210…カラーフィルタ
220…撮像素子
300…前処理部
400,400a,400b…ノイズ低減部
410,410a,410b…フレーム蓄積部
412…動き検出部
414…フレームメモリ
416…重畳フレームメモリ
418…非重畳フレームメモリ
420,420b…画像混合部
422,422b…混合比率決定部
424…混合処理部
430…空間平滑化フィルタ
440…画像重畳部
442…重畳比率決定部
444…重畳処理部
450…タイミング調整部
500…後処理部
510…補間処理部
600…ビデオ信号生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画像のノイズを低減するノイズ低減装置であって、
前記動画像中で動きのある動領域と、前記動領域以外の静領域と、を検出する動き検出部と、
前記動画像を構成する入力フレーム画像に空間的平滑化処理を施して空間平滑フレーム画像を生成する空間平滑化処理部と、
を備え、
前記空間平滑化処理部は、前記入力フレーム画像を構成する画素毎に前記空間的平滑化処理の度合を設定可能に構成されており、
前記静領域に属する画素における前記空間的平滑化処理の度合は、前記動領域に属する画素における前記空間的平滑化処理の度合よりも高くなるように設定されている、
ノイズ低減装置。
【請求項2】
請求項1記載のノイズ低減装置であって、
前記空間平滑化処理部は、
前記入力フレーム画像の空間平滑化処理を実行する空間平滑化フィルタと、
前記空間平滑化フィルタを通過した平滑フレーム画像と、前記空間平滑化フィルタを通過しない非平滑フレーム画像と、を混合する混合処理部と、
を備え、
前記混合処理部は、画素毎に前記平滑フレーム画像と前記非平滑フレーム画像との混合比率を設定可能に構成されている、
ノイズ低減装置。
【請求項3】
動画像のノイズを低減するノイズ低減方法であって、
(a)前記動画像中で動きのある動領域と、前記動領域以外の静領域と、を検出する工程と、
(b)前記入力フレーム画像を構成する画素毎に設定された空間的平滑化処理の度合に応じて、前記入力フレーム画像に空間的平滑化処理を施して空間平滑フレーム画像を生成する工程と、
(c)前記静領域に属する画素における前記空間的平滑化処理の度合を、前記動領域に属する画素における前記空間的平滑化処理の度合よりも高くなるように設定する工程と、
を備える、
ノイズ低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−27608(P2009−27608A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190863(P2007−190863)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000000424)株式会社エルモ社 (104)
【Fターム(参考)】