説明

ノイズ除去装置、電源装置、及び試験装置

【課題】入力電圧に応じた出力電圧を出力する電源において、入力電圧に重畳されたノイズを精度よく除去し、ノイズの少ない出力電圧を生成する。
【解決手段】
入力電圧に重畳されたノイズ成分を除去するノイズ除去装置であって、ドレイン端子又はソース端子のいずれか一方に入力電圧を受け取り、ドレイン端子又はソース端子の他方から、入力電圧に応じた出力電圧を出力するトランジスタと、入力電圧の直流成分と、出力電圧との差分が、一定の基準電圧となるように、入力電圧及び出力電圧に基づいて、トランジスタのゲート端子に入力する制御電圧を生成して出力するコントロール部とを備えるノイズ除去装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力電圧に重畳されたノイズ成分を除去するノイズ除去装置、当該ノイズ除去装置を備える電源装置、及び当該電源装置を備える試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源装置が出力する電圧に、当該電源装置に起因するノイズが重畳する場合があることが知られている。例えば、スイッチング電源は、所定のスイッチング周波数でスイッチを開閉して生成した信号を平滑化することにより、所望の出力電圧を生成する。しかし、当該スイッチング動作により、出力電圧にスイッチング周波数に応じたノイズが重畳してしまう。
【0003】
このため従来は、リニアレギュレータ等により、当該ノイズを除去している。リニアレギュレータは、トランジスタのソース端子又はドレイン端子に、ノイズが重畳された電圧を入力し、トランジスタが出力する電圧が一定電圧となるように、トランジスタのゲート電圧を制御する。このような構成により、リニアレギュレータが出力する電圧は、入力電圧のノイズによらず一定電圧となり、ノイズが除去される。
【0004】
現在、関連する特許文献等は認識していないので、その記載を省略する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、リニアレギュレータが出力する電圧は、入力電圧の電圧値が変動した場合であっても、一定電圧となってしまう。このため、リニアレギュレータを用いた場合、ノイズを除去した電圧を出力することができるが、その電圧値を変動させることができない。このため、所望の電圧を出力する必要がある電源には用いることが困難であった。例えば、半導体回路等を試験する試験装置に用いられる電源は、値が変化する電圧を生成する場合がある。しかし上述したように、当該電源には、リニアレギュレータを用いることができず、電源電圧のノイズを除去することが困難であった。
【0006】
このため本発明は、上述した課題を解決することのできるノイズ除去装置、電源装置、及び試験装置を提供することを目的とする。この目的は、請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1形態においては、入力電圧に重畳されたノイズ成分を除去するノイズ除去装置であって、ドレイン端子又はソース端子のいずれか一方に入力電圧を受け取り、ドレイン端子又はソース端子の他方から、入力電圧に応じた出力電圧を出力するトランジスタと、入力電圧の直流成分と、出力電圧との差分が、一定の基準電圧となるように、入力電圧及び出力電圧に基づいて、トランジスタのゲート端子に入力する制御電圧を生成して出力するコントロール部とを備えるノイズ除去装置を提供する。
【0008】
コントロール部は、入力電圧から、基準電圧を減じた電圧信号を生成する基準電圧生成部と、電圧信号から、予め定められた帯域の周波数成分を抽出するフィルタ部と、フィルタ部が出力する信号の電圧値と、出力電圧の電圧値とが略等しくなるように、制御電圧を生成する増幅回路とを有してよい。
【0009】
増幅回路は、トランジスタを能動領域で動作させる制御電圧を生成してよい。フィルタ部は、電圧信号から予め定められた帯域の周波数成分を除去する帯域除去フィルタを有してよい。
【0010】
入力電圧は、所定のスイッチング周波数でスイッチを開閉することにより、所望の電圧を出力するスイッチング電源により生成され、帯域除去フィルタは、電圧信号から、スイッチング周波数に応じた周波数成分を除去してよい。フィルタ部は、帯域除去フィルタが出力する信号から、スイッチング周波数の高調波成分を更に除去するローパスフィルタを更に有してよい。
【0011】
コントロール部は、入力電圧から、基準電圧を減じた電圧信号を生成する基準電圧生成部と、入力電圧の信号成分の周波数帯域より高く、入力電圧のノイズ成分の周波数帯域より低い動作周波数帯域を有し、電圧信号の電圧値と出力電圧の電圧値とが略等しくなるように、制御電圧を生成する増幅回路とを有してよい。
【0012】
ノイズ除去装置は、トランジスタが出力する出力電圧を伝送する出力経路と、出力経路と接地電位との間に設けられたコンデンサとを更に備えてよい。出力経路と接地電位との間に設けられた抵抗を更に備えてよい。
【0013】
ノイズ除去装置は、トランジスタを直列に複数備え、それぞれのトランジスタに対応して、コントロール部をそれぞれ備えてよい。
【0014】
本発明の第2の形態においては、所望の出力電圧を生成する電源装置であって、所定のスイッチング周波数でスイッチを開閉することにより、所望の電圧を出力するスイッチング電源と、スイッチング電源が出力する電圧に重畳されたノイズ成分を除去するノイズ除去装置とを備え、ノイズ除去装置は、ドレイン端子又はソース端子のいずれか一方に、スイッチング電源からの入力電圧を受け取り、ドレイン端子又はソース端子の他方から、入力電圧に応じた出力電圧を出力するトランジスタと、入力電圧の直流成分と、出力電圧との差分が、一定の基準電圧となるように、入力電圧及び出力電圧に基づいて、トランジスタのゲート端子に入力する制御電圧を生成して出力するコントロール部とを有する電源装置を提供する。
【0015】
本発明の第3の形態においては、被試験デバイスを試験する試験装置であって、被試験デバイスに所定の電源電圧を入力する電源装置と、電源装置から、被試験デバイスに入力される電源電流を測定する測定部と、電源電流に基づいて、被試験デバイスの良否を判定する判定部とを備え、電源装置は、電源電圧を出力する電力増幅回路と、被試験デバイスに入力すべき電源電圧の電圧値と、被試験デバイスに入力される電源電圧の電圧値とに基づいて、電力増幅回路が出力する電源電圧の電圧値を制御する制御部と、電力増幅回路に供給する駆動電圧を生成するスイッチング電源と、スイッチング電源が生成する駆動電圧に重畳されたノイズ成分を除去して電力増幅回路に供給するノイズ除去装置とを有し、ノイズ除去装置は、ドレイン端子又はソース端子のいずれか一方に駆動電圧を受け取り、ドレイン端子又はソース端子の他方から、駆動電圧に応じた出力電圧を出力するトランジスタと、駆動電圧の直流成分と、出力電圧との差分が、一定の基準電圧となるように、駆動電圧及び出力電圧に基づいて、トランジスタのゲート端子に入力する制御電圧を生成するコントロール部とを含む試験装置を提供する。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係るノイズ除去装置100の構成の一例を示す図である。ノイズ除去装置100は、接続された電源110から与えられる入力電圧Vnに重畳されたノイズ成分を除去する装置であって、トランジスタ50、及びコントロール部10を備える。本例では、トランジスタ50の一例として電界効果トランジスタを用いて説明する。
【0019】
トランジスタ50は、ドレイン端子又はソース端子のいずれか一方に入力電圧Vnを受け取り、ドレイン端子又はソース端子の他方から、入力電圧Vnに応じた出力電圧Voを出力する。トランジスタ50の出力電圧Voの電圧レベルは、ゲート端子に与えられる制御電圧によって定まる。
【0020】
コントロール部10は、トランジスタ50のゲート端子に供給する制御電圧を生成する。コントロール部10は、入力電圧Vnの直流成分と、出力電圧Voとの差分が、一定の基準電圧となるように、入力電圧Vn及び出力電圧Voに基づいて、当該制御電圧を生成して出力する。ここで、入力電圧Vnの直流成分とは、入力電圧Vnから、ノイズ成分を除去した成分である。
【0021】
本例においてコントロール部10は、基準電圧生成部12及び増幅回路14を有する。基準電圧生成部12は、入力電圧Vnから、予め定められた基準電圧を減じた電圧信号を生成する。例えば、基準電圧をVrefとすると、基準電圧生成部12は、Vn−Vrefの電圧信号を出力する。
【0022】
増幅回路14は、基準電圧生成部12が出力する電圧信号の電圧値と、出力電圧Voの電圧値とが略等しくなるように制御電圧を生成し、トランジスタ50のゲート端子に供給する。例えば、増幅回路14は、正入力端子に電圧信号を受け取り、負入力端子に出力電圧Voを受け取り、出力端子がトランジスタ50のゲート端子に接続される差動増幅回路であってよい。このような構成により、トランジスタ50の出力電圧の電圧値は、Vn−Vrefとなり、トランジスタ50のドレイン−ソース間には、基準電圧Vrefが常時印加されることになる。これにより、トランジスタ50は、高いノイズ除去効果を発揮する。また、トランジスタ50における電力消費は、トランジスタ50が出力する出力電流に基準電圧Vrefを乗じたものとなり、電力消費量を小さくすることができる。
【0023】
しかし、増幅回路14に入力される電圧信号にノイズが重畳されている場合、当該ノイズを制御電圧に伝達してしまうと、出力電圧Voに、当該ノイズに応じた成分が重畳されてしまう。このため、コントロール部10は、電圧信号から、予め定められた帯域の周波数成分を抽出し、ノイズ成分を除去するフィルタ部を有する。
【0024】
本例では、増幅回路14の動作周波数帯域を、入力電圧Vnの信号成分(直流成分)の周波数帯域より高く、入力電圧Vnのノイズ成分の周波数帯域より低い動作周波数帯域とすることにより、当該ノイズ成分を除去した制御電圧を生成する。例えば、電源110がスイッチング電源である場合、ノイズ成分の周波数帯域は、スイッチング周波数に応じた帯域となるので、当該スイッチング周波数に基づいて、増幅回路14の動作周波数帯域を容易に定めることができる。
【0025】
つまり、増幅回路14を、ノイズ成分の周波数帯域では動作させないように設計することにより、増幅回路14を上述したフィルタ部として更に機能させる。このような構成により、ノイズ成分を除去した出力電圧Voを生成することができる。また、入力電圧Vnの電圧値に応じて電圧値が変動する出力電圧Voを生成することができる。
【0026】
また、増幅回路14は、トランジスタ50を能動領域で動作させる制御電圧を生成することが好ましい。ここで、能動領域とは、トランジスタにおいて、ゲート電圧の増加に応じて、ドレイン出力が増加する領域をいう。
【0027】
図2は、ノイズ除去装置100の詳細な構成の一例を示す図である。本例におけるノイズ除去装置100は、トランジスタ50、コントロール部10、入力経路56、出力経路58、コンデンサ52、及び抵抗54を備える。トランジスタ50は、図1において説明したトランジスタ50と同一であるので、その説明を省略する。また、入力経路56は、電源110とトランジスタ50を接続する伝送経路であり、出力経路58は、トランジスタ50が出力する出力電圧Voを外部に伝送する伝送経路である。
【0028】
コントロール部10は、基準電圧生成部12、フィルタ部20、増幅回路14、及び位相補償部40を有する。基準電圧生成部12は、上述したように入力電圧Vnから基準電圧Vrefを減じた電圧信号を生成する。
【0029】
本例における基準電圧生成部12は、抵抗16及び定電流源18を有する。抵抗16は、入力経路56と接地電位との間に設けられ、定電流源18は、抵抗16と接地電位との間に設けられる。また、抵抗16と定電流源18との接続点は、フィルタ部20に接続される。このような構成により、抵抗16の抵抗値、及び定電流源18が生成する電流の電流値に応じた基準電圧を生成し、入力電圧Vnから当該基準電圧を減じた電圧信号を生成することができる。
【0030】
フィルタ部20は、基準電圧生成部12から与えられる電圧信号から、ノイズ成分を除去する。フィルタ部20は、例えば低域通過フィルタ、帯域通過フィルタ、帯域除去フィルタ、又はこれらの組み合わせであってよい。フィルタ部20の構成例は、図4において後述する。
【0031】
増幅回路14は、フィルタ部20によりノイズが除去された電圧信号と、トランジスタ50が出力する出力電圧Voとを受け取る。そして、電圧信号の電圧値と、出力電圧Voの電圧値が略一致するように、トランジスタ50のゲート端子に供給する制御電圧を制御する。電圧信号は、入力電圧Vnから基準電圧Vrefを減じた電圧であるので、出力電圧Voも、入力電圧Vnから基準電圧Vrefを減じた電圧となる。
【0032】
位相補償部40は、トランジスタ50の出力端子と、増幅回路14との間に設けられ、増幅回路14にフィードバックされる出力電圧Voの位相と、電圧信号の位相とを略一致させることにより、制御電圧が発振することを防ぐ。本例において位相補償部40は、コンデンサ42及び抵抗44を有する。
【0033】
抵抗44は、一端が出力経路58に接続され、他端が増幅回路14の負入力端子及び出力端子に接続される。また、コンデンサ42は、増幅回路14の出力端子と抵抗44との間に設けられる。このような構成により、入力電圧Vnの電圧値に応じて電圧値が変動し、且つノイズ成分を除去した出力電圧Voを生成することができる。
【0034】
また、コンデンサ52は、出力経路58と接地電位との間に設けられる。これにより、ノイズ除去能力を更に向上させることができる。また、抵抗54は、出力経路58と接地電位との間に設けられる。これにより、抵抗54が負荷として機能し、トランジスタ50及び増幅回路14の動作を補助することができる。
【0035】
図3は、図2に示したノイズ除去装置100の動作の一例を示す図である。図3(a)は、ノイズ除去装置100がコンデンサ52を備えない場合の、入力電圧Vn及び出力電圧Voの波形の一例を示す。この場合、出力電圧Voは、入力電圧Vnの直流成分に対して一定電圧差を有する波形となる。
【0036】
図3(b)は、ノイズ除去装置100がコンデンサ52を備える場合の、入力電圧Vn及び出力電圧Voの波形の一例を示す。この場合、入力電圧Vnの立ち上がり時には、トランジスタ50が出力する出力電流が入力電圧Vnに応じて増加する。そして、当該出力電流によりコンデンサ52が充電されることにより、出力電圧Voは、入力電圧Vnに対して一定電圧差を保ちつつ変動する。
【0037】
また、トランジスタ50のソース・ドレイン間には、等価的にダイオードが形成される。当該ダイオードは、順方向電圧が所定の電圧Vf以上となった場合に、コンデンサ52を放電させる電流を生成する。このため、入力電圧の立ち下がり時には、入力電圧Vnが、出力電圧Voより、ダイオードの閾電圧Vf以上小さくなった場合に、当該電流によりコンデンサ52は放電する。このため、出力電圧Voは、入力電圧Vnに対して一定電圧差を保ちつつ変動する。
【0038】
そして、図3(b)の時間T1に示すように、入力電圧Vnが立ち下がった後は、抵抗54に放電電流が流れ、Vo=Vn−Vrefとなるまで、出力電圧Voは減少し、出力電圧Voは、入力電圧Vnに対して一定電圧差を有することになる。
【0039】
図4(a)は、フィルタ部20の構成の一例を示す図である。本例におけるフィルタ部20は、与えられる電圧信号から予め定められた帯域の周波数成分を除去する帯域除去フィルタである。フィルタ部20は、複数の抵抗(22、24、32)及び複数のコンデンサ(26、28、30)を有する。
【0040】
抵抗22及び抵抗24は、フィルタ部20の入力端と出力端との間に直列に設けられる。また、コンデンサ28及びコンデンサ30も同様に、フィルタ部20の入力端と出力端との間に直列に設けられる。
【0041】
コンデンサ26は、抵抗22及び抵抗24の接続点と、接地電位との間に設けられる。また、抵抗32は、コンデンサ28及びコンデンサ30の接続点と、接地電位との間に設けられる。それぞれのコンデンサ及び抵抗の特性を調整することにより、電圧信号から、ノイズ成分の基本周波数成分を急峻に除去することができる。
【0042】
図4(b)は、フィルタ部20の構成の他の例を示す図である。本例におけるフィルタ部20は、帯域除去フィルタ60及びローパスフィルタ70を有する。帯域除去フィルタ60は、図4(a)に示したフィルタ部20と同一である。ローパスフィルタ70は、帯域除去フィルタ60の後段に設けられ、帯域除去フィルタ60が出力する信号から、ノイズ成分の高調波を除去する。
【0043】
ローパスフィルタ70は、抵抗34、抵抗38、コンデンサ36、及びコンデンサ39を有する。抵抗34及び抵抗38は、帯域除去フィルタ60と増幅回路14との間に直列に設けられる。コンデンサ36は、抵抗34及び抵抗38の接続点と、増幅回路14の出力端との間に設けられる。コンデンサ39は、抵抗38及び増幅回路14の接続点と、接地電位との間に設けられる。
【0044】
それぞれのコンデンサ及び抵抗の特性を調整することにより、帯域除去フィルタ60が出力する信号から、ノイズ成分の高調波を除去することができる。ローパスフィルタの遮断特性は緩やかであるので、電源110が出力する入力電圧Vnにおいて、信号成分の周波数と、ノイズ成分の周波数との差が小さい場合、ローパスフィルタを用いてノイズ成分のみを除去することは困難である。しかし、本例におけるフィルタ部20のように、所定の周波数成分を急峻に除去できるノッチフィルタ等の帯域除去フィルタ60により、ノイズの基本周波数成分を除去し、且つローパスフィルタ70によりノイズの高調波成分を除去することにより、ノイズ成分を精度よく除去することができる。
【0045】
図5は、フィルタ部20の遮断特性の一例を示す図である。図5において横軸は周波数を示し、縦軸はフィルタ部20に入力される信号に対する、フィルタ部20が出力する信号のゲインを示す。また、入力電圧Vnの信号成分の基本周波数をfs、ノイズ成分の基本周波数をfnとする。
【0046】
図5(a)は、図1において説明した、増幅回路14の動作周波数帯域を制御することにより、増幅回路14をフィルタ部として機能させた場合の遮断特性の一例を示す。図5(a)に示すように、増幅回路14の利得帯域幅積GBWを、周波数fsより大きく、周波数fnより小さくすることにより、電圧信号からノイズ成分を除去することができる。
【0047】
図5(b)は、図4(a)において説明したフィルタ部20の遮断特性の一例を示す図である。この場合、フィルタ部20は、予め定められた周波数の成分を急峻に除去する。このため、当該周波数として、周波数fnを設定することにより、フィルタ部20は、電圧信号からノイズの基本周波数成分を急峻に除去することができる。
【0048】
図5(c)は、図4(b)において説明したフィルタ部20の遮断特性の一例を示す図である。この場合、フィルタ部20は、帯域除去フィルタ60及びローパスフィルタ70を有する。帯域除去フィルタ60の遮断特性は、図5(b)に示した特性と同一である。ローパスフィルタ70の遮断周波数は、信号成分の特性に影響を与えない程度に、周波数fsより十分大きくし、且つノイズの高調波成分を除去できる程度に、ノイズ成分の2次高調波の周波数より十分小さくすることにより、電圧信号からノイズ成分を精度よく除去することができる。
【0049】
図6(a)は、ノイズ除去装置100の構成の他の例を示す図である。図1から図5においては、電源110が、正電圧の入力電圧Vnを生成する場合におけるノイズ除去装置100の構成を説明した。この場合、図1に示すように、トランジスタ50はNチャネルのトランジスタであり、ドレイン端子に入力電圧Vnが与えられ、ソース端子から出力電圧Voを出力する。また、基準電圧生成部12は、入力電圧Vnから正の基準電圧Vrefを減算する。また、増幅回路14の正入力端子に電圧信号が与えられ、負入力端子に出力電圧Voが与えられる。
【0050】
これに対し、本例においては、電源110が負電圧の入力電圧Vnを生成する場合における、ノイズ除去装置100の構成を説明する。この場合、トランジスタ50はNチャネルのトランジスタであり、ソース端子に入力電圧Vnが与えられ、ドレイン端子から出力電圧Voを出力する。また、基準電圧生成部12は、入力電圧Vnから負の基準電圧Vrefを減算する。また、増幅回路14の負入力端子に電圧信号が与えられ、正入力端子に出力電圧Voが与えられる。このような構成により、ノイズ成分を除去した出力電圧Voを生成することができる。
【0051】
図6(b)は、ノイズ除去装置100の構成の更なる他の例を示す図である。本例におけるノイズ除去装置100は、電源110が正電圧の入力電圧Vnを生成した場合において、トランジスタ50としてPチャネルのトランジスタを用いた場合を説明する。この場合、トランジスタ50のドレイン端子に入力電圧Vnが与えられ、ソース端子から出力電圧Voを出力する。また、基準電圧生成部12は、入力電圧Vnから正の基準電圧Vrefを減算する。また、増幅回路14の負入力端子に電圧信号が与えられ、正入力端子に出力電圧Voが与えられる。このような構成によっても、ノイズ成分を除去した出力電圧Voを生成することができる。
【0052】
図7は、半導体回路等の被試験デバイス300を試験する試験装置200の構成の一例を示す図である。本例における試験装置200は、被試験デバイス300の駆動時又は静止時に入力される電源電流を測定することにより、被試験デバイス300の良否を判定する。試験装置200は、電源装置400、測定部140、及び判定部150を備える。
【0053】
電源装置400は、被試験デバイス300に所定の電源電圧を入力する。例えば、電源装置400は、被試験デバイス300に所定の定格電圧を入力してよい。電源装置400は、電源110、ノイズ除去装置100、デジタルアナログコンバータ120(以下、DAC120と称する)、制御部122、電力増幅回路124、及び測定抵抗126を有する。
【0054】
DAC120には、被試験デバイス300に入力すべき電源電圧の電圧値が与えられ、当該電圧値に応じた電圧を出力する。電力増幅回路124は、DAC120が出力する電圧に応じて、被試験デバイス300に入力すべき電源電圧を出力する。
【0055】
制御部122は、被試験デバイス300に入力すべき電源電圧の電圧値と、被試験デバイス300に入力される電源電圧の電圧値とに基づいて、電力増幅回路124が出力する電源電圧の電圧値を制御する。本例において制御部122は、DAC120が出力する電圧と、被試験デバイス300の近傍からフィードバックされた電源電圧とが略同一となるように、電力増幅回路124が出力する電圧を制御する。
【0056】
また、電源110は例えばスイッチング電源であって、電力増幅回路124に供給する駆動電圧を生成する。電力増幅回路124は、電源110が生成した電力から、被試験デバイス300に入力すべき電源電圧を生成する。また、ノイズ除去装置100は、電源110が生成する駆動電圧に重畳されたノイズ成分を除去して、電力増幅回路124に供給する。ノイズ除去装置100は、図1から図6において説明したノイズ除去装置100である。このような構成により、電力増幅回路124は、ノイズの少ない電源電圧を生成することができる。また、測定抵抗126は、電力増幅回路124と被試験デバイス300との間に設けられる。
【0057】
測定部140は、電源装置400から被試験デバイス300に入力される電源電流を測定する。本例において測定部140は、測定抵抗126の両端における電位差に基づいて、当該電源電流を測定する。測定部140は、差動増幅回路130及びアナログデジタルコンバータ128(以下ADC128と称する)を有する。
【0058】
差動増幅回路130は、測定抵抗126の両端における電位差に応じた電圧を出力する。ADC128は、差動増幅回路130が出力する電圧の電圧値に応じたデジタル値を出力する。
【0059】
判定部150は、測定部140が測定した電源電流の電流値に基づいて、被試験デバイス300の良否を判定する。例えば、判定部150は、当該電流値が予め定められた範囲内にあるか否かに基づいて、被試験デバイス300の良否を判定してよい。
【0060】
本例における試験装置200によれば、被試験デバイス300にノイズの少ない電源電圧を供給することができる。このため、被試験デバイス300に入力される電源電流を精度よく測定することができ、被試験デバイス300の良否を精度よく判定することができる。
【0061】
また、被試験デバイス300の駆動時における電源電流を測定する場合、試験装置200は、被試験デバイス300に入力するパターン信号を生成するパターン発生部を更に備えることが好ましい。試験装置200は、被試験デバイス300にパターン信号を印加した状態における電源電流に基づいて、被試験デバイス300の良否を判定してよい。
【0062】
また、電源装置400は、電源110と電力増幅回路124との間に、複数のノイズ除去装置100を直列に設けてもよい。本例におけるノイズ除去装置100は、トランジスタ50のドレインソース間電圧が一定に保たれる。このため、ノイズ除去装置100における電力消費が小さく、複数のノイズ除去装置100を直列に接続しても消費電力を小さく抑えることができる。これにより、更にノイズを低減した電圧を生成することができる。
【0063】
図8は、電源110の構成の一例を示す図である。上述したように、電源110はスイッチング電源であって、誘導成分112、スイッチ114、ダイオード116、及びコンデンサ118を有する。電源110には、予め定められた電圧Vppが入力端子に与えられる。
【0064】
誘導成分112は、入力端子とダイオード116との間に設けられる。また、ダイオード116は、誘導成分112と出力端子との間に設けられる。スイッチ114は、誘導成分及びダイオード116の接続点と、接地電位との間に設けられる。また、コンデンサ118は、ダイオード116及び出力端子の接続点と、接地電位との間に設けられる。
【0065】
スイッチ114は、所定のスイッチング周波数で制御され、開放又は短絡を繰り返す。また、ダイオード116及びコンデンサ118により、スイッチ114の制御に応じた出力電圧が平滑化される。
【0066】
このような構成及び制御により、電源110から所望の電圧値の電圧が出力される。しかし、スイッチ114のスイッチング動作により、当該電圧にはスイッチング周波数に応じたノイズ成分が重畳される。
【0067】
図1から図7に関連して説明したノイズ除去装置100は、電源110のスイッチング周波数に基づいて、入力電圧Vnからノイズ成分を除去してよい。つまり、図5に関連して説明したように、フィルタ部20が除去するノイズ成分の周波数fnとして、当該スイッチング周波数を用いてよい。
【0068】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上から明らかなように、本発明によれば、入力電圧に応じた出力電圧を出力する電源において、入力電圧に重畳されたノイズを精度よく除去し、ノイズの少ない出力電圧を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態に係るノイズ除去装置100の構成の一例を示す図である。
【図2】ノイズ除去装置100の詳細な構成の一例を示す図である。
【図3】図2に示したノイズ除去装置100の動作の一例を示す図である。図3(a)は、ノイズ除去装置100がコンデンサ52を備えない場合の、入力電圧Vn及び出力電圧Voの波形の一例を示す。図3(b)は、ノイズ除去装置100がコンデンサ52を備える場合の、入力電圧Vn及び出力電圧Voの波形の一例を示す。
【図4】図4(a)及び図4(b)は、フィルタ部20の構成例を示す図である。
【図5】図5(a)は、図1において説明した、増幅回路14の動作周波数帯域を制御することにより、増幅回路14をフィルタ部として機能させた場合の遮断特性の一例を示す。図5(b)は、図4(a)において説明したフィルタ部20の遮断特性の一例を示す。図5(c)は、図4(b)において説明したフィルタ部20の遮断特性の一例を示す。
【図6】図6(a)及び図6(b)は、ノイズ除去装置100の構成例を示す図である。
【図7】半導体回路等の被試験デバイス300を試験する試験装置200の構成の一例を示す図である。
【図8】電源110の構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
10・・・コントロール部、12・・・基準電圧生成部、14・・・増幅回路、16・・・抵抗、18・・・定電流源、20・・・フィルタ部、22、24、32、34、38、44、54・・・抵抗、26、28、30、36、39、42、52、118・・・コンデンサ、40・・・位相補償部、50・・・トランジスタ、56・・・入力経路、58・・・出力経路、60・・・帯域除去フィルタ、70・・・ローパスフィルタ、100・・・ノイズ除去装置、110・・・電源、112・・・誘導成分、114・・・スイッチ、116・・・ダイオード、120・・・デジタルアナログコンバータ、122・・・制御部、124・・・電力増幅回路、126・・・測定抵抗、128・・・アナログデジタルコンバータ、130・・・差動増幅回路、140・・・測定部、150・・・判定部、200・・・試験装置、300・・・被試験デバイス、400・・・電源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧に重畳されたノイズ成分を除去するノイズ除去装置であって、
ドレイン端子又はソース端子のいずれか一方に前記入力電圧を受け取り、前記ドレイン端子又は前記ソース端子の他方から、前記入力電圧に応じた出力電圧を出力するトランジスタと、
前記入力電圧の直流成分と、前記出力電圧との差分が、一定の基準電圧となるように、前記入力電圧及び前記出力電圧に基づいて、前記トランジスタのゲート端子に入力する制御電圧を生成して出力するコントロール部と
を備えるノイズ除去装置。
【請求項2】
前記コントロール部は、
前記入力電圧から、前記基準電圧を減じた電圧信号を生成する基準電圧生成部と、
前記電圧信号から、予め定められた帯域の周波数成分を抽出するフィルタ部と、
前記フィルタ部が出力する信号の電圧値と、前記出力電圧の電圧値とが略等しくなるように、前記制御電圧を生成する増幅回路と
を有する請求項1に記載のノイズ除去装置。
【請求項3】
前記増幅回路は、前記トランジスタを能動領域で動作させる前記制御電圧を生成する
請求項2に記載のノイズ除去装置。
【請求項4】
前記フィルタ部は、前記電圧信号から予め定められた帯域の周波数成分を除去する帯域除去フィルタを有する
請求項2に記載のノイズ除去装置。
【請求項5】
前記入力電圧は、所定のスイッチング周波数でスイッチを開閉することにより、所望の電圧を出力するスイッチング電源により生成され、
前記帯域除去フィルタは、前記電圧信号から、前記スイッチング周波数に応じた周波数成分を除去する
請求項4に記載のノイズ除去装置。
【請求項6】
前記フィルタ部は、前記帯域除去フィルタが出力する信号から、前記スイッチング周波数の高調波成分を更に除去するローパスフィルタを更に有する
請求項5に記載のノイズ除去装置。
【請求項7】
前記コントロール部は、
前記入力電圧から、前記基準電圧を減じた電圧信号を生成する基準電圧生成部と、
前記入力電圧の信号成分の周波数帯域より高く、前記入力電圧のノイズ成分の周波数帯域より低い動作周波数帯域を有し、前記電圧信号の電圧値と前記出力電圧の電圧値とが略等しくなるように、前記制御電圧を生成する増幅回路と
を有する請求項1に記載のノイズ除去装置。
【請求項8】
前記トランジスタが出力する前記出力電圧を伝送する出力経路と、
前記出力経路と接地電位との間に設けられたコンデンサと
を更に備える請求項1に記載のノイズ除去装置。
【請求項9】
前記出力経路と接地電位との間に設けられた抵抗を更に備える請求項8に記載のノイズ除去装置。
【請求項10】
前記トランジスタを直列に複数備え、
それぞれの前記トランジスタに対応して、前記コントロール部をそれぞれ備える
請求項1に記載のノイズ除去装置。
【請求項11】
所望の出力電圧を生成する電源装置であって、
所定のスイッチング周波数でスイッチを開閉することにより、所望の電圧を出力するスイッチング電源と、
前記スイッチング電源が出力する電圧に重畳されたノイズ成分を除去するノイズ除去装置と
を備え、
前記ノイズ除去装置は、
ドレイン端子又はソース端子のいずれか一方に、前記スイッチング電源からの入力電圧を受け取り、前記ドレイン端子又は前記ソース端子の他方から、前記入力電圧に応じた出力電圧を出力するトランジスタと、
前記入力電圧の直流成分と、前記出力電圧との差分が、一定の基準電圧となるように、前記入力電圧及び前記出力電圧に基づいて、前記トランジスタのゲート端子に入力する制御電圧を生成して出力するコントロール部と
を有する電源装置。
【請求項12】
被試験デバイスを試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスに所定の電源電圧を入力する電源装置と、
前記電源装置から、前記被試験デバイスに入力される電源電流を測定する測定部と、
前記電源電流に基づいて、前記被試験デバイスの良否を判定する判定部と
を備え、
前記電源装置は、
前記電源電圧を出力する電力増幅回路と、
前記被試験デバイスに入力すべき前記電源電圧の電圧値と、前記被試験デバイスに入力される前記電源電圧の電圧値とに基づいて、前記電力増幅回路が出力する前記電源電圧の電圧値を制御する制御部と、
前記電力増幅回路に供給する駆動電圧を生成するスイッチング電源と、
前記スイッチング電源が生成する前記駆動電圧に重畳されたノイズ成分を除去して前記電力増幅回路に供給するノイズ除去装置と
を有し、
前記ノイズ除去装置は、
ドレイン端子又はソース端子のいずれか一方に前記駆動電圧を受け取り、前記ドレイン端子又は前記ソース端子の他方から、前記駆動電圧に応じた出力電圧を出力するトランジスタと、
前記駆動電圧の直流成分と、前記出力電圧との差分が、一定の基準電圧となるように、前記駆動電圧及び前記出力電圧に基づいて、前記トランジスタのゲート端子に入力する制御電圧を生成するコントロール部と
を含む試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−195310(P2007−195310A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10210(P2006−10210)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】