説明

ノズルプリンティング装置

【課題】スジムラの発生を抑制することが可能なノズルプリンティング装置を提供する。
【解決手段】所定の配列方向に所定の間隔をあけて配置される複数本のノズルを備えるノズルプリンティング装置であって、前記複数本のノズルは、溶媒と溶質とを含むインキを吐出する第1のノズルと、溶質を含まない液体を吐出する第2のノズルとから構成され、前記第1のノズルの本数と、第2のノズルの本数とが同じであるノズルプリンティング装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はノズルプリンティング装置およびそれを用いた薄膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定のパターンでインキを塗布するための装置として、ノズルプリンティング装置がある。たとえば図4に示すような、互いに所定の間隔をあけて第1の方向Xに延在する複数本の隔壁部材1から構成される隔壁が設けられた支持基板において、各隔壁部材1間にインキを供給する場合に、このノズルプリンティング装置が用いられる。
【0003】
図4はノズルプリンティング装置を用いてインキを塗布するときの態様を模式的に示す図である。ノズルプリンティング装置は、配列方向に所定の間隔をあけて配置される複数本のノズル2を備える。各ノズル2から所定のインキを吐出しつつ、前記第1の方向X(以下、走査方向Xと記載することがある。)の一方または他方にノズル2を走査することにより、隔壁部材1間にインキが供給され、これが固化することにより帯状の薄膜3が形成される。このノズル2の1回の走査により、当該ノズル2の本数分だけ帯状の薄膜3が形成される。
【0004】
ノズル2を走査方向の一端から他端まで走査すると、つぎに、走査方向Xとは垂直な方向(以下、塗布方向Yと記載することがある。)にノズル2を移動する。なお塗布方向Yの一方を前方(図4では下方)、塗布方向Yの他方を後方(図4では上方)と記載することがある。このノズル2の前方への移動では、ノズルの本数分の行だけノズル2を前方に移動する(図4に示す形態では5行分の距離をノズル2が移動する。)このようなノズル2の走査方向Xの移動と、塗布方向Yの前方への移動とを交互に繰り返すことにより、全ての隔壁部材1間にインキを塗布することができる。
【0005】
上記のような塗布方法において、所定の隔壁部材1間にインキが塗布された直後の状態に着目した場合、複数本のインキの塗布膜の中でも、その前方の塗布膜と後方の塗布膜とでは乾燥雰囲気が異なる。すなわち複数本のインキの塗布膜の後方はすでにインキが塗布されているため、雰囲気中のインキの溶媒濃度が高くなり、逆に前方にはインキが塗布されていないため、雰囲気中のインキの溶媒濃度が小さくなる。そのため、複数本のインキの塗布膜においてその後方の塗布膜はインキが乾燥しにくく、その前方の塗布膜はインキが乾燥しやすい状態となり、乾燥状態に違いが生じる。このように、インキの乾燥状態が前方と後方の塗布膜で異なるため、結果として乾燥後の塗布膜の性状まで異なることになり、ノズルの本数に対応する塗布膜ごとに、いわゆるスジムラが生じることになる。
【0006】
たとえば有機EL(Electro Luminescence)素子の発光層などをノズルプリンティング装置で塗布形成した場合、上記スジムラが発光状態の違いとしてあらわれ、これが視認されることとなり、表示品位が低下するという問題がある。
【0007】
このような問題を解決するために、従来の技術ではダミーのノズル2を設けている。すなわち従来の技術では、膜の形成に寄与しない溶媒のみを吐出するダミーのノズル2を、塗布方向Yの前方の一端に設けている。
【0008】
図4を参照してダミーのノズル2を備えるノズルプリンティング装置の動作を説明する。前方の一端に配置されるノズルを第Iのノズルとし、後方に配置されるノズルを順次、第II、第III、第IV、第Vのノズルと名前を付与すると、第Iのノズルがダミーのノズルである。この第Iのノズルは、溶媒のみを吐出する。第II〜第Vのノズルは、溶媒と溶質からなるインキを吐出する。
【0009】
このノズルプリンティング装置では、まず走査方向Xの一端から他端にノズルを走査する。そうすると、前方の一端には、溶媒のみからなる塗布膜が形成されるとともに、その後方には、溶媒と溶質からなる4本の塗布膜が形成される。つぎに、ノズルを前方に移動するが、そのさいには、移動前に第Iのノズルの配置されていた位置に、第Vのノズルが重なるようにノズルを全体として移動する。その後、走査方向Xの他端から一端にノズルを走査する。そうすると、溶媒のみからなる塗布膜上に、さらに溶媒と溶質からなるインキが塗布されることになり、これによって全ての隔壁部材1間に、溶媒と溶質からなるインキが塗布されることになる。
【0010】
このように、塗布膜の前方に溶媒のみからなる塗布膜を形成することにより、複数本のインキの塗布膜において、前方と後方の乾燥雰囲気の違いを小さくしている(たとえば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−207084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記従来のダミーのノズルを備えるノズルプリンティング装置では、たしかに複数本のインキの塗布膜において、前方と後方の塗布膜の乾燥雰囲気の違いを小さくすることはできるが、インキと溶媒とがそれぞれ1度ずつ塗布される行と、インキのみが1度塗布される行とが生じる。そして、インキと溶媒とがそれぞれ1度ずつ塗布される行と、インキのみが1度塗布される行とでは、形成された薄膜の性状に違いが生じ、スジムラが生じる。前述したように、機EL素子の発光層などをノズルプリンティング装置で塗布形成した場合には、上記スジムラが発光状態の違いとしてあらわれ、これが視認されることとなり、表示品位が低下するという問題がある。
【0013】
したがって本発明の目的は、スジムラの発生を抑制することが可能なノズルプリンティング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は所定の配列方向に所定の間隔をあけて配置される複数本のノズルを備えるノズルプリンティング装置であって、
前記複数本のノズルは、溶媒と溶質とを含むインキを吐出する第1のノズルと、溶質を含まない液体を吐出する第2のノズルとから構成され、
前記第1のノズルの本数と、第2のノズルの本数とが同じであるノズルプリンティング装置に関する。
【0015】
また本発明は、前記第2のノズルは、第1の群と第2の群との2つの群に分けられ、
前記第1の群に属する第2のノズルは、前記所定の配列方向の一端に配置され、
前記第2の群に属する第2のノズルは、前記所定の配列方向の他端に配置され、
前記第1のノズルは、前記所定の配列方向において、前記第1の群に属する第2のノズルと、前記第2の群に属する第2のノズルとの間に配置される、ノズルプリンティング装置に関する。
【0016】
前記第1の群に属する第2のノズルの本数をN、前記第2の群に属する第2のノズルの本数をMとすると、
(N−M)≦1
なる関係式を満たす、ノズルプリンティング装置に関する。
【0017】
また本発明は、互いに所定の間隔をあけて第1の方向に延在する複数本の隔壁部材から構成される隔壁が設けられた支持基板において、隔壁部材間にインキを塗布する工程と、塗布されたインキを固化することにより薄膜を形成する工程とを有する薄膜形成方法であって、
前記インキを塗布する工程では、以下の(I)と(II)の工程を交互に繰り返す、薄膜形成方法。
(I)前記ノズルプリンティング装置の前記複数本のノズルをそれぞれ隔壁部材間上に配置し、前記ノズルから前記インキを吐出しつつ、前記ノズルを前記第1の方向の一方または他方に移動し、隔壁部材間にインキを供給する工程に関する。
(II)前記配列方向の中央で、前記複数のノズルを前方の群と後方の群の2つの群に区分けし、直近の前記(I)の工程における前方の群に属するノズルの軌跡に、次回の前記(I)の工程において、後方の群に属するノズルの軌跡が重なるように、支持基板上において前記第1の方向とは垂直な方向に、全てのノズルまたは前記支持基板を移動する工程。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スジムラの発生を抑制することが可能なノズルプリンティング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ノズル12の配置関係を模式的に示す図である。
【図2】複数本の隔壁部材11から構成される隔壁が設けられた支持基板の平面図である。
【図3】ノズルプリンティング装置の動作を説明するための図である。
【図4】ノズルプリンティング装置を用いてインキを塗布するときの態様を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のノズルプリンティング装置は、所定の配列方向に所定の間隔をあけて配置される複数本のノズルを備えるノズルプリンティング装置であって、前記複数本のノズルは、溶媒と溶質とを含むインキを吐出する第1のノズルと、前記溶質を含まない液体を吐出する第2のノズルとから構成され、前記第1のノズルの本数と、第2のノズルの本数とが同じであるノズルプリンティング装置である。
【0021】
図1はノズル12の配置関係を模式的に示す図である。ノズル12は所定の配列方向tに所定の間隔をあけて配置される。配列方向tはノズル12の配列される方向であり、通常は所定の直線に沿う方向である。なおノズル12は所定の曲線上や折れ線上に沿って配置されていてもよい。
【0022】
図1に示す実施形態では6本のノズル12が配置されており、それぞれ等しい間隔をあけて配置されている。
【0023】
本実施形態では、複数本のノズル12は、それぞれ第1のノズル12aと、第2のノズル12bとに分けられる。
【0024】
第1のノズル12aは、溶媒と溶質とを含むインキを吐出する。この第1のノズル12aから吐出されたインキは、溶媒が気化し、溶質が薄膜化する。たとえば溶質として有機EL素子の発光材料を用いた場合、このインキを塗布することにより有機EL素子の発光層が形成される。
【0025】
第2のノズル12bは、溶質を含まない液体を吐出する。なお第2のノズル12bから吐出される溶質を含まない液体は、60℃〜300℃程度の温度で気化する液体であればとくに制限はないが、第1のノズル12aから吐出されるインクの溶媒と同じ液体であることが好ましい。なお第2のノズル12bから吐出される液体は、不純物として不可避的に混入される程度の量の溶質を含んでいてもよい。
【0026】
前記第1のノズル12aの本数と、第2のノズル12bの本数とは同じである。図1に示す実施形態では、6本のノズル12が配置されているが、このうちの3本のノズル12が第1のノズル12aであり、残りの3本のノズル12が第2のノズル12bである。
【0027】
第1のノズル12aと第2のノズル12bの配置はとくに限定されない。たとえばノズルはつぎの(i)、(ii)または(iii)のように配置される。
(i)
配列方向tの一方に第1のノズル12aが配置され、配列方向tの他方に第2のノズル12bが配置される。
(ii)
配列方向tにおいて第1のノズル12aと第2のノズル12bとが交互に配置される。
(iii)
第2のノズル12bは、第1の群g1と第2の群g2との2つの群に分けられ、前記第1の群g1に属する第2のノズル12bは、前記所定の配列方向tの一端に配置され、前記第2の群g2に属する第2のノズル12bは、前記所定の配列方向tの他端に配置され、前記第1のノズル12aは、前記所定の配列方向tにおいて、前記第1の群g1に属する第2のノズル12bと、前記第2の群g2に属する第2のノズル12bとの間に配置される。
【0028】
これらの中では(iii)の配置が好ましい。さらにこの(iii)の配置のなかでも、前記第1の群に属する第2のノズルの本数をN、前記第2の群に属する第2のノズルの本数をMとすると、
(N−M)≦1
なる関係式を満たすことがより好ましい。すなわち、前記第2の群に属するノズルは、前記第1の群に属するノズルの両端に概ね均等に配置されることが好ましい。これにより、前記第1のノズルから吐出されるインクの溶媒雰囲気を均一にできるため、より効果的にスジムラを抑制できる。
【0029】
以下、この(iii)の構成について図1に則して説明する。まず第2のノズル12bの本数は3本なので、これを2つの群に分けると、1本の第2のノズル12bからなる群と2本の第2のノズル12bからなる群とに分けられる。たとえば第2のノズル12bのうちの1本の第2のノズル12bが第1の群g1に属し、残りの2本の第2のノズル12bが第2の群g2に属する。この第1の群g1に属する1本の第2のノズル12bが、配列方向tの一端に配置され、第2の群g2に属する2本の第2のノズル12bが、配列方向tの他端に配置される。そしてこれら第1の群g1の第2のノズル12bと、第2の群g2の第2のノズル12bとの間に、3本の第1のノズル12aが連続して配置される。
【0030】
つぎに、上述のノズル12を備えるノズルプリンティング装置の動作について説明する。本実施形態では、互いに所定の間隔をあけて第1の方向Xに延在する複数本の隔壁部材11から構成される隔壁が設けられた支持基板に、インキを塗布する形態について説明する。
【0031】
図2は複数本の隔壁部材11から構成される隔壁が設けられた支持基板の平面図である。図3はノズルプリンティング装置の動作を説明するための図である。図2に示すように、隔壁は、第1の方向Xに延在する複数本の隔壁部材11から構成される。なお以下では第1の方向Xを走査方向Xと記載することがある。
【0032】
本実施形態では隔壁部材11は、第2の方向Yに等しい間隔をあけて配置される。なお第2の方向Yは、第1の方向Xに垂直な方向であって、かつ支持基板の厚み方向にも垂直な方向である。以下では第2の方向Yを塗布方向Yと記載することがある。本実施形態ではノズルプリンティング装置を用いて、塗布方向Yに隣り合う全ての隔壁部材11と隔壁部材11との間にインキを供給する。
【0033】
以下、塗布方向Yに隣り合う隔壁部材11と隔壁部材11との間隔を、隔壁部材11のピッチpと記載することがある。なお塗布方向Yに隣り合う隔壁部材11と隔壁部材11との間隔pとは、隔壁部材11の塗布方向Yの中心間の距離pをあらわす。
【0034】
ノズル12の間隔は、隔壁部材11のピッチpに対応させて決定される。なおノズル12の配列方向tは、かならずしも塗布方向Yに一致させる必要はない。ノズル12の間隔は、その塗布方向Yの間隔が、隔壁部材11のピッチと一致するように設定される。たとえばノズル12の配列方向tを塗布方向Yに一致させる場合には、ノズル12の配列方向tの間隔を隔壁部材11のピッチpに合わせればよい(図3参照)。またたとえばノズル12の間隔が固定されている場合には、その配列方向tを塗布方向Yから傾かせることによって、ノズル12の塗布方向Yの間隔を調整することができる。このようにして、塗布方向Yの間隔を隔壁部材11のピッチpに合わせてもよい。
【0035】
まずノズル12の塗布方向Yの間隔が、隔壁部材11のピッチと一致するようにノズル12の間隔を調整する。図3に示す本実施形態ではノズル12の配列方向tを塗布方向Yに一致させるため、ノズル12の配列方向tの間隔を隔壁部材11のピッチpに合わせる。
【0036】
つぎに、以下の(I)、(II)の工程を繰り返す。
(I)ノズルプリンティング装置の前記複数本のノズルをそれぞれ隔壁部材間上に配置し、前記ノズルから前記インキを吐出しつつ、前記ノズルを前記第1の方向の一方または他方に移動し、隔壁部材間にインキを供給する工程。
(II)前記配列方向の中央で、前記複数のノズルを前方の群と後方の群の2つの群に区分けし、直近の前記(I)の工程における前方の群に属するノズルの軌跡に、次回の前記(I)の工程において、後方の群に属するノズルの軌跡が重なるように、支持基板上において前記第1の方向とは垂直な方向に、全てのノズルまたは前記支持基板を移動する工程。
【0037】
(I)の工程では、まずノズル12を走査方向Xに走査したときに、各ノズル12が、支持基板の厚み方向において、隔壁部材11と隔壁部材11との間の鉛直方向の上方を通過するようにノズル12を配置する。そして、前記ノズルから前記インキを吐出しつつ、前記ノズル12を前記第1の方向(本実施形態では走査方向X)の一方または他方に移動し、隔壁部材間にインキを供給する。
【0038】
この(I)の工程において、ノズル12を走査方向の一方に移動する場合には、ノズル12を走査方向の他端から一端まで移動する。これを工程(I−I)と記載する。
【0039】
(I)の工程において、ノズル12を走査方向の他方に移動する場合には、ノズル12を走査方向の一端から他端まで移動する。これを工程(I−II)と記載する。
【0040】
本実施形態では、(I−I)、(II)、(I−II)、(II)の工程をこの順で繰り返すことにより、全ての隔壁部材11間にインキを供給する。
【0041】
つぎに(II)の工程では、前記配列方向の中央で、前記複数のノズルを前方の群と後方の群の2つの群に区分けする。ここで前方とは、当該(II)の工程においてノズルが塗布方向に移動する向き(図3では下方)に対応し、後方とは、当該(II)の工程においてノズルが塗布方向に移動する向きにとは反対の向き(図3では上方)に対応する。
【0042】
たとえば図1に示す実施形態では、配列方向tの中央で、6本のノズル12を、3本のノズルからなる前方の群gfと、3本のノズルからなる後方の群gbとに区分けする。すなわち前方の群gfは中央よりも右側に配置される3本のノズル12からなる群に対応し、後方の群gbは中央よりも左側に配置される3本のノズル12からなる群に対応する。
【0043】
つぎにノズル12を塗布方向Yに移動する。このさい、ノズル12を塗布方向Yに移動するのではなく、支持基板を塗布方向Yに移動させてもよい。以下ではノズル12を移動する形態について説明する。
【0044】
ノズル12を塗布方向Yに移動するさいには、直近の前記(I)の工程における前方の群に属するノズルの軌跡に、次回の前記(I)の工程において、後方の群に属するノズルの軌跡が重なるように、支持基板上において前記第1の方向とは垂直な方向(本実施形態では塗布方向Y)に移動する。
【0045】
すなわち、(I)の工程が終了した時点のノズル12の配置から、塗布方向Yの一方にノズル12を移動する。このさい、隔壁部材11間の間隔をpとし、ノズルの全本数を2×n(記号「n」は自然数をあらわす。)とすると、p×nだけノズルを塗布方向Yに移動する。このように移動することにより、直近の前記(I)の工程における前方の群gfに属するノズルの軌跡に、次回の前記(I)の工程において、後方の群gbに属するノズルの軌跡が重なる。
【0046】
図3に示す本実施形態では、3×pだけ、ノズル12を塗布方向Yに移動するため、前方の群gfに属するノズルの位置に、後方の群gbに属するノズルが重なる。
【0047】
以上の動作を図3に則して説明すると、ノズル12は、まず工程(I−I)において、ノズルが右端に配置され、これが左端にまで移動し、工程(II)において、3×pだけノズル12を下方に移動し、つぎに工程(I−II)において、ノズル12が左端から右端まで移動する。これらの工程を繰り返すことにより、すべての隔壁部材11間において、第1のノズル12aから吐出されるインキと、第2のノズル12bから吐出される溶質を含まない液体とが重ねて塗られることになる。
【0048】
その後、塗布されたインキが固化することにより、薄膜13が形成される。なおインキの固化は、自然乾燥、加熱乾燥などによっておこなわれる。
【0049】
従来の技術では、インキと溶媒とがそれぞれ1度ずつ塗布される行と、インキのみが1度塗布される行とが生じているが、上述のように本実施形態では、第1のノズル12aと第2のノズル12bの本数を同じにすることにより、すべての隔壁部材11間において、第1のノズル12aから吐出されるインキと、第2のノズル12bから吐出される溶質を含まない液体とが重ねて塗られることになる。これによって、インキが固化したときに、形成された薄膜の性状に違いが生じることを防ぐことができ、従来の装置で形成された薄膜において生じていたスジムラが解消される。
【0050】
以上のノズルプリンティング装置を用いて、有機EL素子を画素の光源として用いる表示装置を作製することができる。
【0051】
たとえば表示装置は、各隔壁部材11間において、走査方向Xに所定の間隔をあけて有機EL素子を配置されて構成される。各有機EL素子は、一対の電極と、当該電極間に設けられる発光層とを含んで構成される。なお一対の電極間には、発光層だけでなく、たとえば正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層などが設けられる。これら一対の電極間に設けられる層のうち、塗布法で形成することが可能な層を、上述のノズルプリンティング装置によって形成することができる。各層の材料には公知の材料が用いられる。
【0052】
前述したように、発光材料を溶質として用いた場合には、発光層がノズルプリンティング装置によって形成される。
【0053】
なおモノクロの表示装置では、すべての発光層が、同じ色の光を出射するため、全ての隔壁部材11間に同じインキを塗布すればよいが、カラー表示装置の場合には、たとえば3種類の発光層が設けられるため、隔壁部材11間ごとにインキを塗り分ける必要がある。
【0054】
このような塗り分けをおこなうためには、たとえば図1に示す実施形態では、3本の第1のノズル12aを用いているが、各第1のノズル12aから吐出されるインキの種類をそれぞれ異ならせればよい。具体的には、3本の第1のノズル12aのうちの1本は、赤色の光を発する発光材料を含むインキを吐出し、1本は、緑色の光を発する発光材料を含むインキを吐出し、1本は、青色の光を発する発光材料を含むインキを吐出するようにすればよい。このように3種類のインキを吐出することにより、赤色の光を発する発光層、緑色の光を発する発光層、青色の光を発する発光層を、塗布方向Yに沿って順次形成することができる。
【0055】
なお上記では複数種類のインキを一度に塗布する形態について説明したが、複数種類のインキを、複数回に分けて塗布してもよい。この場合、各回の塗布では、1種類のインキが塗布される。たとえば3種類のインキを3回に分けて塗布する場合、各回では、3×pの間隔毎にインキを塗布し、これを3回おこなうことにより、全ての隔壁部材11間に、インキを塗り分けて塗布することができる。なおインキを塗布するさいには、ノズル12の塗布方向Yの間隔を、3×pあける必要がある。
【符号の説明】
【0056】
1 隔壁部材
2 ノズル
3 薄膜
11 隔壁部材
12 ノズル
13 薄膜
21 装置
g1 第1の群
g2 第2の群
gf 前方の群
gb 後方の群
12a 第1のノズル
12b 第2のノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配列方向に所定の間隔をあけて配置される複数本のノズルを備えるノズルプリンティング装置であって、
前記複数本のノズルは、溶媒と溶質とを含むインキを吐出する第1のノズルと、溶質を含まない液体を吐出する第2のノズルとから構成され、
前記第1のノズルの本数と、第2のノズルの本数とが同じであるノズルプリンティング装置。
【請求項2】
前記第2のノズルは、第1の群と第2の群との2つの群に分けられ、
前記第1の群に属する第2のノズルは、前記所定の配列方向の一端に配置され、
前記第2の群に属する第2のノズルは、前記所定の配列方向の他端に配置され、
前記第1のノズルは、前記所定の配列方向において、前記第1の群に属する第2のノズルと、前記第2の群に属する第2のノズルとの間に配置される、請求項1記載のノズルプリンティング装置。
【請求項3】
前記第1の群に属する第2のノズルの本数をN、前記第2の群に属する第2のノズルの本数をMとすると、
(N−M)≦1
なる関係式を満たす、請求項2記載のノズルプリンティング装置。
【請求項4】
互いに所定の間隔をあけて第1の方向に延在する複数本の隔壁部材から構成される隔壁が設けられた支持基板において、隔壁部材間にインキを塗布する工程と、塗布されたインキを固化することにより薄膜を形成する工程とを有する薄膜形成方法であって、
前記インキを塗布する工程では、以下の(I)と(II)の工程を交互に繰り返す、薄膜形成方法。
(I)請求項1から3記載のいずれかに記載のノズルプリンティング装置の前記複数本のノズルをそれぞれ隔壁部材間上に配置し、前記ノズルから前記インキを吐出しつつ、前記ノズルを前記第1の方向の一方または他方に移動し、隔壁部材間にインキを供給する工程。
(II)前記配列方向の中央で、前記複数のノズルを前方の群と後方の群の2つの群に区分けし、直近の前記(I)の工程における前方の群に属するノズルの軌跡に、次回の前記(I)の工程において、後方の群に属するノズルの軌跡が重なるように、支持基板上において前記第1の方向とは垂直な方向に、全てのノズルまたは前記支持基板を移動する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−52351(P2013−52351A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192484(P2011−192484)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】