説明

ノズルヘッド及び液体吐出装置

【課題】ノズルヘッドのメンテナンス性を適切に高める。
【解決手段】ノズル302から液滴を吐出するノズルヘッド12であって、液滴を吐出するノズル302と、ノズル302が形成されている面とは異なる面に開口する液室306とを有するチャンバ部102と、液室306の開口部を少なくとも覆うダイヤフラム202と、ダイヤフラム202を挟んで液室306の開口部と対向する圧電素子206と、圧電素子206を保持しつつ、チャンバ部102との間にダイヤフラム202を挟むダイヤフラム押さえ部材204とを備え、チャンバ部102は、ダイヤフラム押さえ部材204に対し、ダイヤフラム押さえ部材204の側からチャンバ部102に向かって挿入されるネジ106により固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルヘッド及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子の変位による圧力を利用してインク滴を吐出するインクジェットヘッドが知られている。また、従来、このようなインクジェットヘッドを構成する各部材をネジ止めにより固定する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−270743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1においては、ノズルプレート、インク室プレート、ダイヤフラム板、及びベース部材が、ノズルプレート側からベース部材に向かって挿入されるネジにより固定される。このような向きでネジが挿入されるのは、例えば、薄板状のノズルプレートと比べ、ベース部材の方が雌ネジ加工を行いやすいためである。
【0004】
しかし、このような向きでネジを挿入する場合、ノズルプレートの表面に、ネジの頭部分が露出することとなる。そのため、例えばノズルのメンテナンスのためにチャンバ部の拭き取りを行う場合に、ネジの頭にワイパがあたり、スムースな拭き取りが出来なくなるおそれがある。また、この場合、ノズルプレートのノズルから吐出されたインクが、ネジの頭部分に付着しやすくなる。特に、ベース部材に対してノズルプレートが下側になる向きでインクジェットヘッドを使用する場合、ネジの頭部分へのインクの付着が顕著になる。
【0005】
そして、ネジの頭部分に付着したインクが乾燥すると、固化したインクがネジを固定してしまい、ネジを外すことが困難になる。また、例えば、固化したインクがネジの頭の溝を覆ってしまうと、ネジを回すことができなくなってしまう。そのため、従来の構成では、インクジェットヘッドの洗浄等のためにインクジェットヘッドを分解しようとする場合に、ネジを外すことが困難になる場合がある。
【0006】
そのため、従来、インクジェットヘッドのメンテナンスが困難になる場合があった。そこで、本発明は、上記の課題を解決できるノズルヘッド及び液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)ノズルから液滴を吐出するノズルヘッドであって、液滴を吐出するノズルと、ノズルが形成されている面とは異なる面に開口する液室とを有するチャンバ部と、液室の開口部を少なくとも覆うダイヤフラムと、ダイヤフラムを挟んで液室の開口部と対向する圧電素子と、圧電素子を保持しつつ、チャンバ部との間にダイヤフラムを挟むダイヤフラム押さえ部材とを備え、チャンバ部は、ダイヤフラム押さえ部材に対し、ダイヤフラム押さえ部材の側からチャンバ部に向かって挿入されるネジにより固定される。
【0008】
このように構成した場合、ネジの頭部分は、ダイアフラム押さえ部材側に位置する。そのため、ノズルのメンテナンスのためにチャンバ部の拭き取りを行う場合に、ネジの頭にワイパがあたることはない。従って、このように構成すれば、チャンバ部の拭き取りをスムースに行うことができる。また、これにより、ノズルヘッドのメンテナンス性を適切に高めることができる。また、このように構成した場合、ネジの頭の位置がチャンバ部から遠くなる。そのため、ノズルから吐出される液体がネジの頭に付着することを防ぐことができる。また、これにより、例えば、乾燥により固化した液体がネジの頭の溝を覆うことを防ぐことができる。そのため、このように構成すれば、ノズルヘッドのメンテナンス性を更に適切に高めることができる。
【0009】
また、例えば印刷装置等の液体吐出装置にノズルヘッドが取り付けられた状態において、ダイヤフラム押さえ部材側は、チャンバ部側と比べ、空間的な余裕が大きい場合が多い。そのため、ダイヤフラム押さえ部材の側からネジを挿入する場合、液体吐出装置にノズルヘッドを取り付けたままの状態で、ネジを操作しやすくなる。そのため、例えば、液体吐出装置からノズルヘッドを取り外すことなく、ネジを一旦外し、チャンバ部をダイヤフラム押さえ部材等から分離できる。この場合、チャンバ部のみの洗浄や交換等が容易になるため、ノズルヘッドのメンテナンス性を更に適切に高めることができる。
【0010】
(構成2)チャンバ部は、ネジを止めるための雌ネジ加工がされたネジ孔を有する。このように構成すれば、ダイヤフラム押さえ部材に対するチャンバ部の固定を、ダイヤフラム押さえ部材の側からチャンバ部に向かって挿入されるネジにより適切に行うことができる。
【0011】
尚、雌ネジ加工可能を適切に行うために、チャンバ部は、例えば1mm以上の厚さを有することが好ましい。チャンバ部の厚さは、例えば1〜5mm、望ましくは2〜3mmである。
【0012】
(構成3)チャンバ部のネジ孔は、止め孔である。ネジ孔が貫通孔である場合、チャンバ部の下面において、ネジ孔の部分は、ネジの長さが不足して凹状部となるか、ネジの足が露出して凸状部となるおそれがある。また、ネジの長さに過不足がないとしても、ネジとネジ孔の境界部が凹状部となってしまうおそれがある。
【0013】
このような場合、その部分に液体が付着して、固化するおそれがある。また、チャンバ部の下面に凹凸があると、例えば、付着した液体を拭き取り等により除去することが困難になるおそれがある。これに対し、このように構成した場合、液体が付着しやすくなる凹凸が、ネジの影響によりチャンバ部の下面にできることはない。また、下面に液体が付着した場合であっても、例えば拭き取りにより、液体を容易に除去できる。
【0014】
(構成4)ノズルは、チャンバ部においてノズルヘッドの使用時に下方を向く面である下面から液滴を吐出し、チャンバ部の下面は、ノズルの開口部以外の領域が平滑な面である。
【0015】
チャンバ部の下面からノズルが液滴を吐出する場合、チャンバ部の下面に対する液体の付着が特に生じやすくなる。しかし、このように構成すれば、吐出された液体が下面に付着した場合でも、例えば拭き取りによって容易に除去できる。そのため、ノズルヘッドのメンテナンス性を更に適切に高めることができる。また、チャンバ部の下面は、撥水処理されていることが好ましい。このように構成すれば、液体の付着を更に適切に防ぐことができる。
【0016】
(構成5)液滴を吐出する液体吐出装置であって、構成1から4のいずれかに記載のノズルヘッドと、ノズルヘッドを制御する制御部とを備える。このように構成すれば、例えば、構成1から4と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、例えば、ノズルヘッドのメンテナンス性を適切に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る液体吐出装置10の構成の一例を示す。液体吐出装置10は、液滴の一例であるインク滴を被吐出部材50に吐出する印刷装置であり、ノズルヘッド12、テーブル14、及び制御部16を備える。
【0019】
ノズルヘッド12は、制御部16の指示に応じて、被吐出部材50へインク滴を吐出する。テーブル14は、被吐出部材50を上面に保持しており、制御部16の指示に応じて移動することにより、ノズルヘッド12と被吐出部材50との相対位置関係を変化させる。制御部16は、ノズルヘッド12の吐出タイミング、及びテーブル14の位置を制御する。本例によれば、例えば、予め設定された吐出パターンに応じて、被吐出部材50へインク滴を適切に吐出できる。また、これにより、被吐出部材50へ適切に印刷を行うことができる。
【0020】
尚、液体吐出装置10は、印刷装置以外の液体吐出装置であってもよい。例えば、液体吐出装置10は、液晶カラーフィルタや、有機EL発光層等の材料を液滴として吐出してもよい。また、液体吐出装置10は、例えば接着剤や絶縁樹脂等、又は各種薬液等の液滴を吐出してもよい。
【0021】
また、被吐出部材50は、例えば紙やフィルム等の平坦な媒体に限らず、立体的形状を有する製品等であってもよい。例えば、被吐出部材50は、ICが実装された基板等であってよい。この場合、液体吐出装置10は、例えば、実装されたICの端子に絶縁樹脂を吐出してもよい。また、被吐出部材50は、薬品の反応容器等であってもよい。この場合、液体吐出装置10は、例えば、反応容器内に薬液を吐出してもよい。
【0022】
また、被吐出部材50が立体的な形状を有する場合、液体吐出装置10は、例えば平坦な媒体に液体を吐出する場合と比べて、より吐出距離の大きなノズルヘッド12を備えることが好ましい。このように構成すれば、例えば、ノズルヘッド12と被吐出部材50との間の距離を大きく保つことにより、被吐出部材50の表面に凹凸がある場合にも、適切に液体を目標位置へ吐出できる。この場合、ノズルヘッド12と被吐出部材50との間の距離は、10mm以上、例えば10〜30mmとすることが好ましい。また、ノズルヘッド12と被吐出部材50との間の距離をこのように大きくする場合、ノズルヘッド12の一回あたりの液滴の吐出量を、平坦な媒体に液体を吐出する場合と比べて大きくすることが好ましい。例えば、一回あたりの液滴の吐出量は、100pリットル以上、例えば100〜2000pリットルとすることが好ましい。
【0023】
図2は、ノズルヘッド12の詳細な構成の第1の例を示す分解斜視図である。本例において、ノズルヘッド12は、チャンバ部102、駆動部104、及び複数のネジ106を備える。
【0024】
チャンバ部102は、液滴を吐出する複数のノズル302と、ノズル302へ液体を供給するための流路304とが形成されたノズルプレートである。尚、本例において、液滴とは、インク滴である。また、ノズル302へ供給される液体とは、インクである。
【0025】
複数のノズル302は、ノズルヘッド12の使用時に下方を向く面であるチャンバ部102の下面にエッチング等により形成された孔であり、例えば0.5〜3mm、望ましくは1〜2mmの間隔で並べて形成される。これにより、チャンバ部102は、ノズル302から、下面方向へ液滴を吐出する。チャンバ部102において、ノズル302が液滴を吐出する面は、撥水処理されていることが好ましい。また、この面は、ノズル302の開口部以外の領域が平滑な面になっていることが好ましい。尚、本例のチャンバ部102において、駆動部104と対向する面は、ノズルヘッド12の使用時に上方を向く上面である。また、駆動部104と対向する面と反対側の面は、チャンバ部102の下面である。
【0026】
流路304は、外部から供給される液体をノズル302まで導くための溝であり、その一部に、複数の導入口308及び複数の液室306を有する。導入口308は、ノズル302に供給される液体を外部から導入する開口部であり、チャンバ部102における駆動部104と対向する面に開口している。本例において、導入口308は、複数のノズル302に対して共通に、チャンバ部102の長手方向へ延伸するように形成されており、それぞれのノズル302に対応する液室306に液体を供給する。
【0027】
液室306は、ノズル302の前段において液体を貯えるために幅広になっている領域であり、複数の導入口308に挟まれる領域において、チャンバ部102における駆動部104と対向する面にそれぞれ開口している。また、本例においては、複数のノズル302に対応して、複数の液室306が形成されている。流路304において、導入口308と液室306との間は、液室306のノズル302側の出口と同程度、又はこれよりも狭い溝で結ばれる。そして、導入口308及びこの溝を介して、液室306には、ノズル302に供給される液体が注入される。
【0028】
また、チャンバ部102における駆動部104と対向する面には、駆動部104をチャンバ部102にネジ止めするための複数のネジ孔420が更に形成されている。各ネジ孔420は、チャンバ部102を貫通しない止め孔であり、各ネジ106を締結可能なように、雌ネジ加工されている。
【0029】
尚、本例において、チャンバ部102は、例えばチタン又はステンレス等の金属で形成される。このように構成すれば、例えば、ネジ孔420の雌ネジ加工が容易になる。また、チャンバ部102の厚さは、1mm以上、例えば1〜5mm、望ましくは2〜3mmであることが好ましい。このように構成すれば、ネジ孔420の雌ネジ加工をより適切に行うことができる。
【0030】
ここで、例えば、ネジ孔420が止め孔ではなく、貫通孔であると、ネジ106の長さの過不足等により、チャンバ部102の下面におけるネジ孔420の部分が凹状又は凸状になってしまうおそれがある。しかし、チャンバ部102の下面には、ノズル302から吐出される液体が付着しやすい。そのため、ネジ孔420が貫通孔であると、下面における孔の箇所に液体が強固に付着してしまうおそれがある。また、チャンバ部102の下面に凹凸があると、例えば拭き取りによって下面の汚れを除去することが困難になり、ノズルヘッド12を清浄に保つことが困難になるおそれもある。
【0031】
これに対し、ネジ孔420を止め孔にした場合、チャンバ部102の下面を凹凸のない平滑面にできるため、液体が付着しにくくなる。また、平滑面であれば、拭き取り等が容易になる。そのため、本例によれば、ノズルヘッド12のメンテナンス性を高めることができる。
【0032】
駆動部104は、ダイヤフラム202、ダイヤフラム押さえ部材(ドライブホルダ)204、複数のコマ210、複数の圧電素子206、複数のバックピース212、及び固定部材208を有する。ダイヤフラム202は、チャンバ部102における駆動部104と対向する面上において少なくとも液室306の開口部を覆う隔膜であり、各圧電素子206の発生する圧力を各液室306に伝達する。本例において、ダイヤフラム202は、チャンバ部102の複数の液室306のそれぞれとそれぞれ対向する複数の領域416において各コマ210と接触しており、各コマ210を介して各圧電素子206の圧力を受け取る。そして、各領域416に受ける圧力を、各液室306に伝達する。
【0033】
また、ダイヤフラム202には、複数の貫通孔418及び複数の貫通孔414が形成されており、これらが形成されている以外の領域において、チャンバ部102における駆動部104と対向する面の全体を覆う。ダイヤフラム202は、例えばアルミ又はステンレス等の金属で形成されることが好ましい。また、ダイヤフラム202の厚さは、例えば10〜50μm、望ましくは10〜30μm、更に望ましくは15〜25μmとすることが好ましい。
【0034】
尚、このようなダイヤフラム202は、例えば、強い圧力を発生する圧電素子206と共に用いることができる。そのため、例えば、ノズルヘッド12と被吐出部材50(図1参照)との間の距離を10mm以上とするノズルヘッド12において、特に好適に用いることができる。また、例えば接着剤や絶縁樹脂等の、インクと比べて比重や粘度の大きな液体を吐出する場合にも、特に好適に用いることができる。
【0035】
複数の貫通孔418は、チャンバ部102の導入口308に供給される液体通す孔であり、導入口308の少なくとも一部と重なる位置にそれぞれ形成される。複数の貫通孔414は、ネジ106を通すための孔である。貫通孔414は、雌ネジ加工されていない孔であり、貫通孔414の直径は、ネジ106の直径よりも大きい。ダイヤフラム202は、貫通孔414を通るネジ106によって、ダイヤフラム押さえ部材204と共にチャンバ部102に固定される。
【0036】
ダイヤフラム押さえ部材204は、金属又はセラミック等で形成されたベース部材であり、チャンバ部102と対向する面にダイヤフラム202を接合させて、ダイヤフラム202を押さえる。本例において、ダイヤフラム押さえ部材204は、接着剤により、ダイヤフラム202と一体に貼り合わされている。
【0037】
また、ダイヤフラム押さえ部材204には、ダイヤフラム202との接合面と垂直な方向へダイヤフラム押さえ部材204をそれぞれ貫通する貫通孔406、複数の導入孔408、及び複数の貫通孔410が形成されている。貫通孔406は、ダイヤフラム202を挟んでチャンバ部102における複数の液室306の開口部と対向する位置に形成されており、複数の液室306に対応する複数のコマ210及び複数の圧電素子206を内部に収容する。これにより、ダイヤフラム押さえ部材204は、複数の圧電素子206を保持しつつ、チャンバ部102との間にダイヤフラム202を挟む。
【0038】
複数の導入孔408は、ダイヤフラム202の各貫通孔418をそれぞれ介してチャンバ部102の導入口308とつながる孔であり、チャンバ部102へ液体を導入するための開口部となる。複数の貫通孔410は、ネジ106を通過させるための孔である。貫通孔410は、雌ネジ加工されていない孔であり、貫通孔410の直径は、ネジ106の直径よりも大きい。
【0039】
複数のコマ210は、一方の面でダイヤフラム202と接触し、他方の面で各圧電素子206とそれぞれ接触するように、貫通孔406内に保持される。これにより、コマ210は、圧電素子206が発生する圧力を、ダイヤフラム202に伝達する。
【0040】
複数の圧電素子206は、例えばピエゾアクチュエータであり、貫通孔406にそれぞれ収容されることにより、各コマ210及びダイヤフラム202を挟んでチャンバ部102の各液室306の開口部と対向してそれぞれ保持される。そして、各圧電素子206は、外部から受け取る電圧に応じて圧力を発生させ、各コマ210及びダイヤフラム202を介して各液室306に圧力を加える。これにより、圧電素子206は、液室306の液体をノズル302へ押しだし、ノズル302から液滴を吐出させる。バックピース212は、圧電素子206を安定に保持するための治具であり、各圧電素子206と固定部材208との間に挟まれる。固定部材208は、貫通孔406を塞ぐ蓋状部材(ピエゾ固定板)であり、貫通孔406におけるダイヤフラム202と反対側の開口部からバックピース212を介して圧電素子206を押さえることにより、貫通孔406内に圧電素子206及びコマ210を固定する。
【0041】
複数のネジ106は、例えば十字穴付きのなべ型の小ネジであり、ダイヤフラム押さえ部材204からチャンバ部102に向かって、ダイヤフラム押さえ部材204の貫通孔410、及びダイヤフラム202の貫通孔414を介してチャンバ部102のネジ孔420に挿入され、締結される。これにより、チャンバ部102は、駆動部104に対して、取り外し可能に固定される。
【0042】
このように構成した場合、ネジ106の頭部分は、ダイヤフラム押さえ部材204側に位置する。そのため、ノズル302のメンテナンスのためにチャンバ部102の拭き取りを行う場合に、ネジ106の頭にワイパがあたることはない。従って、本例によれば、チャンバ部102の拭き取りをスムースに行うことができる。また、ネジ106の頭の位置がチャンバ部102から遠くなるため、ノズル302から吐出される液体がネジ106の頭に付着することを適切に防ぐことができる。これにより、例えば、吐出された液体が乾燥により固化して、ネジ106の頭の溝を覆うことを防ぐことができる。そのため、本例によれば、ノズルヘッド12のメンテナンス性を適切に高めることができる。更には、本例において、ネジ106の頭の位置は、ノズル302よりも上方になる。そのため、本例において、ノズル302から吐出される液体がネジ106の頭に付着することを更に適切に防ぐことができる。
【0043】
また、ダイヤフラム押さえ部材204の側からネジ106を挿入する場合、液体吐出装置10にノズルヘッド12を取り付けたままの状態で、ネジ106を操作しやすくなる。特に、本例のように、ノズルヘッド12の上側からネジ106を挿入する場合、作業者はノズルヘッド12の上側からアクセスしてネジ106を回せばよいため、更にネジ106を操作しやすくなる。これにより、例えば、液体吐出装置10からノズルヘッド12を取り外すことなく、ネジ106を一旦外し、チャンバ部102を駆動部104から分離できる。そのため、例えばチャンバ部102の流路304に異物が混入した場合や、流路304内等で、インク等の液体が乾燥により固化した場合に、チャンバ部102のみの洗浄や交換等が容易になる。従って、本例によれば、ノズルヘッド12のメンテナンス性を更に適切に高めることができる。
【0044】
ここで、ダイヤフラム押さえ部材204及びチャンバ部102の一方及び他方には、位置合わせ用の凸部及び凹部が形成されていてもよい。この凸部は、例えばダイヤフラム押さえ部材204におけるチャンバ部102側の面に、例えばピン又はビーズ等を埋設することにより形成される。この場合、チャンバ部102には、例えば、この凸部と係合する孔状の凹部が形成される。このように構成すれば、例えば洗浄後のチャンバ部102を再度取り付ける場合や、チャンバ部102を交換する場合等に、高い精度で位置決めを行うことができる。
【0045】
また、本例において、ダイヤフラム押さえ部材204やダイヤフラム202には、ネジを通す孔として、雌ネジ加工されていない貫通孔410、414が形成される。そのため、ダイヤフラム押さえ部材204やダイヤフラム202における貫通孔410、414に液体が付着した場合でも、例えばメンテナンス時の拭き取り等により、容易に除去できる。拭き取り等による液体の除去をより容易にするためには、例えば、ダイヤフラム202においてチャンバ部102と対向する面を、平滑面とすることが好ましい。
【0046】
尚、液体吐出装置10が印刷装置以外の液体吐出装置である場合、本例のように、ノズルヘッド12の上側からネジ106を挿入する構成が特に好ましい。これは、液滴として、例えば接着剤や各種樹脂等を吐出する場合、吐出した液滴が固化してしまうと、特に除去が困難になるおそれがあるためである。
【0047】
図3は、ノズルヘッド12の詳細な構成の第2の例を示す。尚、以下に説明する点、及び図から違いがわかる特徴等を除き、図3において、図2と同じ符号を付した構成は、図2における構成と同一又は同様のものである。
【0048】
本例において、チャンバ部102には、1個のノズル302が形成される。ノズル302は、チャンバ部102において駆動部104と対向する面と垂直な側面にエッチング等により形成される。また、ノズルヘッド12は、ノズル302の吐出方向が下向きになる状態で、液体吐出装置10(図1参照)に取り付けられる。また、本例において、コマ210は、圧電素子206側の面がダイヤフラム202側の面よりも狭くなっているメサ形状の部材であり、圧電素子206との接触面よりも広い面積で、ダイヤフラム202と接触して、圧電素子206が発生する圧力を、ダイヤフラム202に伝達する。
【0049】
ノズルヘッド12は、チャンバ部102、駆動部104、及び複数のネジ106を組み合わせた構成を、複数組備えてもよい。この場合、これらの構成は、例えば、並べて配置されて、それぞれのチャンバ部102のノズルから液体を吐出する。また、この場合、複数のチャンバ部102は、ノズル間の間隔が例えば0.5〜3mm、望ましくは1〜2mmとなるように並べて配置されることが好ましい。
【0050】
本例においても、図2を用いて説明した構成と同様に、ネジ106の頭部分は、ダイヤフラム押さえ部材204側に位置する。そのため、ノズル302のメンテナンスのためにチャンバ部102の拭き取りを行う場合に、ネジ106の頭にワイパがあたることはない。従って、本例においても、チャンバ部102の拭き取りをスムースに行うことができる。また、ネジ106の頭の位置がチャンバ部102から遠くなるため、ノズル302から吐出される液体がネジ106の頭に付着することを適切に防ぐことができる。更には、液体吐出装置10にノズルヘッド12を取り付けたままの状態で、ネジ106を操作しやすくなる。そのため、本例においても、ノズルヘッド12のメンテナンス性を適切に高めることができる。
【0051】
尚、本例においては、ノズルヘッド12を液体吐出装置10に取り付けた状態で、ネジ106の足は、水平方向を向く。この場合、ネジ106の足がチャンバ部102から露出したとしても、液体の付着は生じにくい。そのため、本例において、ネジ孔420は、止め孔になっていない貫通孔であってもよい。
【0052】
また、ノズル302が形成されているチャンバ部102の側面、及びこの側面から続くダイヤフラム202及びダイヤフラム押さえ部材204の側面は、チャンバ部102からダイヤフラム押さえ部材204に渡って、ノズル302の開口部を除いて平滑であることが望ましい。このように構成すれば、チャンバ部102の拭き取りをスムースに行うことができる。
【0053】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、例えばノズルヘッドに好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出装置10の構成の一例を示す図である。
【図2】ノズルヘッド12の詳細な構成の第1の例を示す分解斜視図である。
【図3】ノズルヘッド12の詳細な構成の第2の例を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
10・・・液体吐出装置、12・・・ノズルヘッド、14・・・テーブル、16・・・制御部、50・・・被吐出部材、102・・・チャンバ部、104・・・駆動部、106・・・ネジ、202・・・ダイヤフラム、204・・・ダイヤフラム押さえ部材、206・・・圧電素子、208・・・固定部材、210・・・コマ、212・・・バックピース、302・・・ノズル、304・・・流路、306・・・液室、308・・・導入口、406・・・貫通孔、408・・・導入孔、410・・・貫通孔、412・・・貫通孔、414・・・貫通孔、416・・・領域、418・・・貫通孔、420・・・ネジ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液滴を吐出するノズルヘッドであって、
液滴を吐出する前記ノズルと、前記ノズルが形成されている面とは異なる面に開口する液室とを有するチャンバ部と、
前記液室の開口部を少なくとも覆うダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムを挟んで前記液室の開口部と対向する圧電素子と、
前記圧電素子を保持しつつ、前記チャンバ部との間に前記ダイヤフラムを挟むダイヤフラム押さえ部材と
を備え、
前記チャンバ部は、前記ダイヤフラム押さえ部材に対し、前記ダイヤフラム押さえ部材の側から前記チャンバ部に向かって挿入されるネジにより固定されることを特徴とするノズルヘッド。
【請求項2】
前記チャンバ部は、前記ネジを止めるための雌ネジ加工がされたネジ孔を有することを特徴とする請求項1に記載のノズルヘッド。
【請求項3】
前記チャンバ部の前記ネジ孔は、止め孔であることを特徴とする請求項2に記載のノズルヘッド。
【請求項4】
前記ノズルは、前記チャンバ部において前記ノズルヘッドの使用時に下方を向く面である下面から液滴を吐出し、
前記チャンバ部の前記下面は、前記ノズルの開口部以外の領域が平滑な面であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のノズルヘッド。
【請求項5】
液滴を吐出する液体吐出装置であって、
請求項1から4のいずれかに記載のノズルヘッドと、
前記ノズルヘッドを制御する制御部と
を備えることを特徴とする液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−168269(P2008−168269A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6048(P2007−6048)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】