説明

ノズルホルダおよびこのノズルホルダを備えたブームスプレーヤ

【課題】 重なり合う散布ノズル同士による重複散布を防止し、散布ノズルへ供給する薬液供給路の開閉を確実にするとともに、散布開始時における薬液のボタ落ちや散布終了時における薬液の液だれを防止することができるノズルホルダおよびこのノズルホルダを備えたブームスプレーヤを提供する。
【解決手段】 薬液流通路7内の液圧が所定の圧力以下である場合に開閉用弁9を弁座8に密着させて薬液流通路7を閉鎖するとともに、液圧が所定の圧力以上になった場合に開閉用弁9を弁座8から離間させて薬液流通路7を開放する開閉制御手段10と、重なり合う散布ノズル4のうち、一方の散布ノズル4を制御する開閉制御手段10を閉鎖状態に固定して開閉用弁9を薬液の液圧にかかわらず弁座8に密着させる流通路強制閉鎖手段11とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対的に伸縮する複数のブームに取り付けられるノズルホルダおよびこのノズルホルダを備えたブームスプレーヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場等に薬液を散布するブームスプレーヤにおいて、伸縮可能なブーム機構を有するものがある。このような伸縮可能なブームは、薬液の散布時に、必要な長さに伸ばすことができるとともに、格納時や道路走行時には格納等の邪魔にならないように縮めることができるというメリットがある。一方、ブームが縮められている状態においては、各散布ノズル同士が重なる部分が生じて重複散布してしまい、薬液の散布ムラになってしまうデメリットがある。
【0003】
近年では、平成15年の農薬取締法の改正や平成18年の残留農薬に係るポジティブリスト制の導入に伴い、「食の安全」ならびに「環境の保全」への対応が社会通念となっており、薬液の散布ムラは薬液の過剰散布による残留農薬問題や環境破壊問題の要因となっている。そこで、これまでに、従来のブームスプレーヤにおける上記問題を回避するための発明が種々提案されている。
【0004】
例えば、特開2006−314976号公報では、並置された複数のノズルおよび各ノズルに通じる流通路を回転により開閉する複数の弁体を有する元杆と、ノズルの並置方向へ直線移動することが可能な移動体とを有し、前記元杆の長手方向へ摺動が可能な先杆と、各弁体の回転中心部に連動連結され、かつ弁体の回転方向へ離隔して配され、移動体に当接すべき第一および第二の当接条部を有するレバー体とを備え、移動体が第一および第二の当接条部の一方または他方に当接することによりレバー体および弁体が開位置/閉位置に回転するように構成された液散布装置において、第一および第二の当接条部は、レバー体が開位置/閉位置に停止しているとき、回転中心部から直線移動の方向と直交する方向へ垂下された垂下線より直線移動の方向の一方側にあることを特徴とする液散布装置が提案されている(特許文献1)。この特許文献1の記載によれば、部品点数を削減でき、構造を簡単に、また、小形にすることができ、さらに、移動体との位置関係を狂い難くすることができるとされている。
【0005】
また、特開2001−286801号公報では、その長さ方向に沿って相対的に伸縮する一組のブーム部材と、この一組のブーム部材のそれぞれにその長さ方向に沿って所定間隔で配設された噴霧ノズルと、一方のブーム部材側の噴霧ノズルにそれぞれ配設されたノズル開閉コックと、このノズル開閉コックを開閉操作するためのコック開閉軸と、このコック開閉軸と互いに一体的に回動する一体回動部材と、コック開閉軸から独立して回動可能な自由回動部材と、他方のブーム部材側に配設されて一組のブーム部材の相対的な伸縮作動によって自由回動部材と互いに当接するカムとを備え、自由回動部材は、カムとの相互当接が解除されることによりその自重で垂れ下がってカムとの相互当接可能領域に位置し、一体回動部材と自由回動部材との間に、カムとの相互当接による自由回動部材の回動時にコック開閉軸がコック開放角度位置とコック閉止角度位置となるように一体回動部材を回動せしめるコック開放用当接部とコック閉止用当接部とをそれぞれ対にして備えてなる、ノズルコック自動開閉装置が提案されている(特許文献2)。この特許文献2の記載によれば、カムの移動により、ノズル開閉コックがコック開放角度位置とコック閉止角度位置とに回動せしめられた後には、自由回動部材が自重で垂れ下がってカムの移動経路内に確実に復帰するので、たとえ自由回動部材が捩り戻されたりしても、次行程で誤作動が生ずる余地がなく、作動が確実となるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−314976号公報
【特許文献2】特開2001−286801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載された発明においては、弁体やノズル開閉コックが直接的にレバー体や自由回動部材に連結されているため、レバー体や自由回動部材に少しでも衝撃を受けると、簡単に弁体やノズル開閉コックが開閉されてしまうという問題がある。
【0008】
また、特許文献1および特許文献2に記載された発明を含め、従来のブームスプレーヤの分野における散布ノズルにおいては、散布開始時の薬液の水圧が低いことに起因する薬液のボタ落ちや散布終了時の薬液の水圧が低いことに起因する薬液の液だれといった問題が指摘されている。このような薬液のボタ落ちや液だれも薬液の散布ムラの原因となっていた。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、相互に伸縮する複数のブームに設けられる複数の散布ノズルにおいて、重なり合う散布ノズル同士による重複散布を防止し、散布ノズルへ供給する薬液供給路の開閉を確実にするとともに、散布開始時における薬液のボタ落ちや散布終了時における薬液の液だれを防止することができるノズルホルダおよびこのノズルホルダを備えたブームスプレーヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るノズルホルダは、相対的に伸縮する複数のブームを備えたブームスプレーヤの前記ブームに散布ノズルを設置するためのノズルホルダであって、薬液タンクから供給される薬液を前記散布ノズルへと流通させる薬液流通路と、この薬液流通路の途中に設けられる弁座と、この弁座に密着することで前記各散布ノズルへの前記薬液流通路を閉鎖するとともに前記弁座から離間することで前記各散布ノズルへの前記薬液流通路を開放する開閉用弁と、前記開閉用弁を押圧することにより、前記薬液流通路内の液圧が所定の圧力以下である場合に前記開閉用弁を前記弁座に密着させて前記薬液流通路を閉鎖するとともに、前記液圧が所定の圧力以上になった場合に前記開閉用弁を前記弁座から離間させて前記薬液流通路を開放する開閉制御手段と、前記ブームが相対的に伸縮することにより互いに重なり合う前記散布ノズルのうち、一方の前記散布ノズルを制御する前記開閉制御手段を閉鎖状態に固定して前記開閉用弁を前記薬液の液圧にかかわらず前記弁座に密着させる流通路強制閉鎖手段とを有する。
【0011】
また、本発明に係るブームスプレーヤは、走行車両に設置される基部フレームと、この基部フレームに支持されているとともに左右方向に相対的に伸縮する複数のブームと、これらブームの長手方向に沿って所定の間隔を隔てて設置されている薬液を散布する複数の散布ノズルと、前記薬液を貯留する薬液貯留タンクと、この薬液貯留タンクから前記各散布ノズルへ前記薬液を供給する薬液供給手段と、前記各散布ノズルを前記ブームに設置するためのノズルホルダとを有しており、前記ノズルホルダは、前記薬液タンクから供給される前記薬液を前記散布ノズルへと流通させる薬液流通路と、この薬液流通路の途中に設けられる弁座と、この弁座に密着することで前記各散布ノズルへの前記薬液流通路を閉鎖するとともに前記弁座から離間することで前記各散布ノズルへの前記薬液流通路を開放する開閉用弁と、前記開閉用弁を押圧することにより、前記薬液流通路内の液圧が所定の圧力以下である場合に前記開閉用弁を前記弁座に密着させて前記薬液流通路を閉鎖するとともに、前記液圧が所定の圧力以上になった場合に前記開閉用弁を前記弁座から離間させて前記薬液流通路を開放する開閉制御手段と、前記ブームが相対的に伸縮することにより互いに重なり合う前記散布ノズルのうち、一方の前記散布ノズルを制御する前記開閉制御手段を閉鎖状態に固定して前記開閉用弁を前記薬液の液圧にかかわらず前記弁座に密着させる流通路強制閉鎖手段とを備えている。
【0012】
さらに、本発明における一態様として、前記開閉制御手段は、所定のバネ係数を備えた付勢部材と、この付勢部材の付勢力により前記開閉用弁を押圧する状態に保持されている押圧部材とを有しており、前記流通路強制閉鎖手段は、前記押圧部材に当接して動作を拘束する拘束位置と前記押圧部材から待避して動作を自由にする待避位置とに移動可能な拘束部材と、前記拘束部材に係合して拘束位置に固定する流通閉鎖位置と前記拘束部材に係合せずに拘束を解除させる流通開放位置との間で揺動する拘束制御揺動部材と、前記ブームを縮めて重なり合う前記散布ノズルにおける前記拘束制御揺動部材を前記流通開放位置から前記流通閉鎖位置まで揺動させるとともに、前記ブームを伸ばして重ならなくなる前記散布ノズルにおける前記拘束制御揺動部材を前記流通閉鎖位置から前記流通開放位置まで揺動させる開閉制御作動片とを有していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、相互に伸縮する複数のブームに設けられる複数の散布ノズルにおいて、重なり合う散布ノズル同士による重複散布を防止し、散布ノズルへ供給する薬液供給路の開閉を確実にするとともに、散布開始時における薬液のボタ落ちや散布終了時における薬液の液だれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るブームスプレーヤの一実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】本実施形態の中央側ブームと先端側ブームとの連結部分を示す一部拡大図である。
【図3】本実施形態のノズルホルダを示す組立図である。
【図4】本実施形態のノズルホルダにおいて薬液流通路が閉鎖された状態を示す平面図である。
【図5】本実施形態のノズルホルダにおいて薬液流通路が閉鎖された状態を示す正面図である。
【図6】本実施形態のノズルホルダにおいて薬液流通路が開放された状態を示す平面図である。
【図7】本実施形態のノズルホルダにおいて薬液流通路が開放された状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るノズルホルダおよびこのノズルホルダを備えたブームスプレーヤの一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態のブームスプレーヤ1を示す全体斜視図である。
【0016】
本実施形態におけるブームスプレーヤ1は、図1に示すように、主として、基部フレーム2と、この基部フレーム2に支持されているとともに左右方向に相対的に伸縮する複数のブーム3と、これらブーム3の長手方向に沿って所定の間隔を隔てて設置される散布ノズル4と、薬液を貯留する薬液貯留タンク(図示しない)と、この薬液貯留タンクから散布ノズルへ薬液を供給する薬液供給手段5と、散布ノズル4をブーム3に設置するためのノズルホルダ6とを有している。
【0017】
基部フレーム2は、トラクターや牽引車等からなる走行車両(図示しない)に設置されて、ブーム3の基部となるものである。
【0018】
ブーム3は、複数のアーム状構造体からなり、相対的に伸縮する機能を有する。本実施形態では、基部フレーム2に対して左右対称に設けられており、基部フレーム2側の中央側ブーム31と、この中央側ブーム31に対して長手方向に伸縮可能な先端側ブーム32とを有している。なお、本実施形態におけるブーム3は左右対称であるため、図1において、左側のブームは省略している。
【0019】
中央側ブーム31は、その基端部が前記基部フレーム2に対して略水平方向に回動可能に接続されており、格納時や道路走行時に前方へ回動される。また、先端側ブーム32は、図1および図2に示すように、複数のローラ33を介して中央側ブーム31に連結されており、相対的に伸縮可能に構成されている。
【0020】
なお、伸縮可能なブーム3の構成は、中央側ブーム31および先端側ブーム32の2本のブームからなる構成に限定されるものではなく、3本以上のブーム3から構成されていてもよい。
【0021】
散布ノズル4は、圧送される薬液を液状、滴状または霧状であって、かつ直線状や円錐状、または扇状の軌跡を描くように散布するものである。本実施形態では、散布ノズル4が中央側ブーム31および先端側ブーム32のそれぞれに略等間隔に配置されており、中央側ブーム31に配置される散布ノズル4は後述するノズルホルダ6により固定されている。
【0022】
薬液貯留タンクは、散布ノズル4に供給する薬液を貯留しておくためのタンクである。本実施形態における薬液貯留タンクは、ポリエチレン等からなる合成樹脂やステンレス等の鋼板により形成されており、走行車両の後方側に設置されている。なお、薬液貯留タンクの設置場所は特に限定されるものではなく、基部フレーム2等に設置することができる。
【0023】
薬液供給手段5は、薬液貯留タンクから各散布ノズル4へ薬液を圧送するためのものでり、薬液供給ポンプ(図示しない)、この薬液供給ポンプと各散布ノズル4とを流通可能に接続する薬液圧送管51および中央側ブーム31毎または先端側ブーム32毎に薬液圧送管51の開閉制御を行うバルブユニット(図示しない)を有する。
【0024】
ノズルホルダ6は、散布ノズル4を前記ブーム3に固定するためのものであるとともに、散布ノズル4に供給される薬液を流通させる通路の開閉を行うためのものである。本実施形態のノズルホルダ6は、中央側ブーム31の散布ノズル4を固定するために用いられており、図3および図4に示すように、主として、薬液を流通させる薬液流通路7と、この薬液流通路7の途中に設けられる弁座8と、この弁座8に密着して薬液流通路7の開閉を行う開閉用弁9と、この開閉用弁9を押さえ付けることにより薬液流通路7の開閉制御する開閉制御手段10と、薬液流通路7を閉鎖状態に固定して開閉用弁9を液圧にかかわらず弁座8に密着させて前記薬液流通路7を強制的に閉鎖する流通路強制閉鎖手段11とを有している。
【0025】
薬液流通路7は、薬液供給手段5により供給された薬液を散布ノズル4へと流通させるための流路であり、その途中には開閉用弁9と密着することでこの薬液流通路7を閉鎖する弁座8が設けられている。本実施形態における薬液流通路7は、図4に示すように、外側管71と内側管72とからなる略二重管構造を有しており、各管71,72の一端部が略同一面上に構成されている。また、図示しないが、外側管71の他端部は薬液供給手段5の薬液圧送管51と流通可能に連通されており、内側管72の他端部は散布ノズル4と流通可能に連通されている。
【0026】
弁座8は、上述のとおり薬液流通路7の途中に設けられており、本実施形態では、図4および図6に示すように、薬液流通路7の内側管72の端部により構成されている。
【0027】
開閉用弁9は、薬液流通路7に設けられた弁座8に密着することにより薬液流通路7を閉鎖するものである。本実施形態における開閉用弁9は、図4に示すように、薄膜状の可延性部材により形成されたダイヤフラムからなり、前記弁座8も含めて外側管71の端部を覆うように配置されている。なお、開閉用弁9は、ダイヤフラムによるものに限定されず、例えば、球体や円錐等に形成された弁体を用いてもよい。
【0028】
開閉制御手段10は、薬液流通路7内の液圧が所定の圧力以下である場合に、開閉用弁9を弁座8に密着させて薬液流通路7を閉鎖し、前記薬液流通路7内の液圧が所定の圧力以上になった場合に、開閉用弁9を弁座8から離間させて薬液流通路7を開放するものである。本実施形態における開閉制御手段10は、付勢部材101と、押圧部材102と、これら付勢部材101と押圧部材102とを収納する収納ケース103とを有している。
【0029】
付勢部材101は、その付勢力により押圧部材102を押し付けて前記開閉用弁9と前記弁座8とを密着させるためのものである。本実施形態における付勢部材101は、所定のバネ係数を備えたコイルバネからなり、図3および図4に示すように、押圧部材102の後端側に巻きつけられている。
【0030】
押圧部材102は、上述のとおり、付勢部材101の付勢力により前記開閉用弁9と前記弁座8に密着させるためのものであり、その先端側には前記開閉用弁9と前記弁座8とが確実に密着するように弁座と略等しい大きさの押圧面104を有している。
【0031】
収納ケース103は、付勢部材101および押圧部材102を収納するケースであり、付勢部材101および押圧部材102を内部に収納した状態で押圧部材102に付勢力が加えられるようになっている。また、収納ケース103の頭部には孔が開いており、後述する流通路強制閉鎖手段11の拘束部材111により押圧部材102を強制的に拘束できるようになっている。
【0032】
また、本実施形態において、前記開閉用弁9および前記開閉制御手段10は、図3および図4に示すように、外側管71および内側管72の一端部に設置するためのカバー部材105で覆われている。
【0033】
流通路強制閉鎖手段11は、ブーム3が相対的に伸縮することにより互いに重なり合う散布ノズル4のうち、一方の散布ノズル4に接続されている薬液流通路7を強制的に閉鎖するものである。本実施形態における流通路強制閉鎖手段11は、図2ないし図7に示すように、主として、拘束部材12と、拘束制御揺動部材13と、開閉制御作動片14とを有している。
【0034】
拘束部材12は、図4および図5に示すように、押圧部材102に当接してその押圧部材102の動作を拘束する拘束位置と、図6および図7に示すように、前記押圧部材102から待避して前記押圧部材102の動作を自由にする待避位置とを移動可能に構成されている。
【0035】
本実施形態における拘束部材12は、揺動自在に設けられたレバー構造体121として構成されており、このレバー構造体121には、拘束制御揺動部材13に係合されることで拘束部材12を拘束位置に固定する係合部122と、拘束部材12が拘束位置にある場合に押止部材102に当接することで前記押圧部材102の動作を拘束する当接部123とが設けられている。
【0036】
レバー構造体121は、拘束位置と待避位置とを移動可能にするため、外側管71の端部近傍で、かつ先端側ブーム32が設けられた位置とは反対側の位置に設けられたレバー回転軸125により揺動自在に軸支されている。また、本実施形態におけるレバー構造体121は、図3に示すように、前記カバー部材105の形状に合わせて形成された2つのアーチ状部材を基端部分において略直角に組み合わせた構造を有しいる。
【0037】
係合部122は、先端側のアーチ状部材により構成されており、その先端位置に拘束制御揺動部材13との摩擦を低減させるための微小回転体124が取り付けられている。
【0038】
また、当接部123は、図4および図6に示すように、基端側のアーチ状部材の押圧部材側に凸状に形成されており、図4に示すような拘束位置において、収納ケース103の頭部に設けられた孔を通して押圧部材102に当接するようになっている。
【0039】
拘束制御揺動部材13は、拘束部材12と係合することで拘束部材12の揺動を拘束するものである。本実施形態においては、図3ないし図7に示すように、板状に形成されており、拘束制御揺動部材13の係合位置において拘束部材12の係合部122と係合し易くするための傾斜部131と、開閉制御作動片14と係合する切欠部132とを有している。そして、前記拘束制御揺動部材13は、図4および図5に示すように、拘束部材12に係合してこれを拘束位置に固定する流通路閉鎖位置と、図6および図7に示すように、拘束部材12に係合せずにこれの拘束を解除する流通路開放位置との間で揺動するようになっている。また、図3、図5および図7に示すように、本実施形態におけるバルブ本体側には、拘束制御揺動部材13を流通路開放位置よりも揺動しないための揺動部材ストッパ133が設けられている。
【0040】
開閉制御作動片14は、ブーム3を縮めた場合に重なり合う散布ノズル4における拘束制御揺動部材13を前記流通路開放位置から前記流通路閉鎖位置まで揺動させるとともに、前記ブーム3を伸ばした場合に重ならなくなる散布ノズル4における拘束制御揺動部材13を流通路閉鎖位置から流通路開放位置まで揺動させるものである。本実施形態では、図2に示すように、先端側ブーム32の下方であって、かつ拘束制御揺動部材13の切欠部132と係合する高さの位置に、中央側ブーム31に向けて突出するように設けられている。
【0041】
次に、本実施形態のノズルホルダ6およびこのノズルホルダ6を備えたブームスプレーヤ1における各構成の作用について説明する。
【0042】
まず、ブーム3が伸びた状態であって、各散布ノズル4が重なり合っていない場合について説明する。
【0043】
ブーム3が伸びた状態における拘束制御揺動部材13は、図2、図6および図7に示すように、流通路開放位置にあり、拘束部材12には係合していない。よって、拘束部材12は待避位置に揺動できる状態になっている。
【0044】
この状態で、薬液供給手段5が散布ノズル4に薬液を供給すると、薬液流通路7のうち外側管71内の液圧が上昇する。
【0045】
外側管71内の液圧が所定の圧力以下である場合、開閉制御手段10における押圧部材102の押圧面104が付勢部材101の付勢力により開閉用弁9を押動し、弁座8に密着させる。そして、開閉用弁9が弁座8と密着すると薬液流通路7が閉鎖して散布ノズル4への薬液の供給が遮断される。
【0046】
一方、外側管71内の液圧が所定の圧力以上である場合、すなわち、押圧部材102が開閉用弁9を弁座8に押し付ける付勢力よりも液圧により押圧部材102が液圧により受ける力が強くなった場合、押圧部材102は、その液圧により押される。このとき、上述のとおり、拘束部材12は待避位置に揺動できる状態にあるため、押圧部材102は、拘束部材12を揺動させて、収納ケース103内を摺動することができる。
【0047】
また、開閉用弁9は、図6に示すように、押圧部材102とともに撓み、弁座8との間に隙間が形成されて外側管71と内側管72が連通される。よって、薬液供給手段5により供給された薬液は、前記隙間を介して内側管72へと流れ込み、散布ノズル4に供給される。
【0048】
散布ノズル4は、圧送された薬液をノズル形状に応じて液状、滴状または霧状で任意の軌跡を描くように圃場等へ散布する。
【0049】
薬液供給手段5が供給を停止すると、薬液流通路7のうち外側管71内の液圧が下降し、外側管71内の液圧が所定の圧力以下となる。これにより、押圧部材102は、再び付勢部材101の付勢力によって開閉用弁9を弁座8に押し付け、前記開閉用弁9は弁座と密着8して薬液流通路7を閉鎖する。
【0050】
よって、開閉制御手段10は、供給される薬液の液圧が所定の圧力以下の場合には、散布ノズル4への薬液の供給を遮断するため、散布ノズル4から散布される薬液は所定の液圧以上の勢いのよい薬液に限られ、前記薬液のボタ落ちや液だれを防止することができる。
【0051】
次に、先端側ブーム32が伸びた状態から中央側ブーム31と重なるように縮み、複数の散布ノズル4が重なり合う場合について説明する。
【0052】
ブーム3を伸びた状態から縮めると、図2に示すように、中央側ブーム31に設けられた散布ノズル4と、先端側ブーム32に設けられた散布ノズル4とが重なり合う。
【0053】
本実施形態では、開閉制御作動片14が、重なり合う散布ノズル4における拘束制御揺動部材13の切欠部132と係合し、ブーム3の縮む動作に連動して拘束制御揺動部材13を流通路開放位置から流通路閉鎖位置まで揺動させる。
【0054】
拘束制御揺動部材13が、流通路閉鎖位置に揺動されると拘束部材12に係合し、この拘束部材12の揺動を拘束する。また、本実施形態における拘束制御揺動部材13は、その傾斜部131に拘束部材12の係合部122に設けられた微小回転体124を摺接させながら流通路閉鎖位置になるまで揺動し、拘束部材12と係合する。そのため、拘束制御揺動部材13は、拘束部材12を確実に係合させることができる。
【0055】
また、拘束制御揺動部材13に係合された拘束部材12は拘束位置に拘束される。よって、拘束部材12の当接部123が収納ケース103の頭部に設けられた孔を通して押圧部材102に当接してこの押圧部材102の摺動を拘束する。
【0056】
したがって、開閉用弁9は、外側管71内の液圧にかかわらず弁座8に強制的に密着されており、中央側ブーム31に設けられた散布ノズル4には、薬液が供給されない。
【0057】
一方、ブーム3が縮んだ状態から伸びた場合、すなわち、重なり合っていた散布ノズル4が重ならなくなった場合、開閉制御作動片14が、拘束制御揺動部材13を流通路閉鎖位置から流通路開放位置まで揺動させる。
【0058】
よって、拘束部材12は、再び揺動できる状態になり、散布ノズル4に対する薬液の供給は、薬液流通路7の液圧に応じて制御されるようになる。
【0059】
なお、揺動部材ストッパ133は、流通路開放位置よりも回転しようとした場合、図5に示すように拘束制御揺動部材13を掛止することにより、拘束制御揺動部材13の揺動する範囲を制限している。
【0060】
以上のような本実施形態のノズルホルダ6およびこのノズルホルダ6を備えたブームスプレーヤによれば、以下の効果を得ることができる。
1.ブーム3の短縮によって重なり合う各散布ノズル4による重複した散布を防止することができる。
2.拘束制御揺動部材13が衝撃を受けて若干回転しても拘束部材12に係合している限り確実に散布ノズル4への薬液の供給を閉鎖することができる。
3.散布開始時における薬液のボタ落ちや散布終了時における薬液の液だれを防止することができる。
【0061】
なお、本発明に係るノズルホルダおよびこのノズルホルダを備えたブームスプレーヤは、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0062】
例えば、基部フレームは、走行車両に対して昇降可能な機構を備えていてもよい。
【0063】
また、拘束部材12は、本実施形態のようなレバー構造体121によるものに限定されるものではなく、例えば、リンク機構を用いたり、圧縮空気、油圧、ソレノイドまたはモータにより、押圧部材102の摺動を拘束するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 ブームスプレーヤ
2 基部フレーム
3 ブーム
4 散布ノズル
5 薬液供給手段
6 ノズルホルダ
7 薬液流通路
8 弁座
9 開閉用弁
10 開閉制御手段
11 流通路強制閉鎖手段
12 拘束部材
13 拘束制御揺動部材
14 開閉制御作動片
31 中央側ブーム
32 先端側ブーム
33 ローラ
51 薬液圧送管
71 外側管
72 内側管
101 付勢部材
102 押圧部材
103 収納ケース
104 押圧面
105 カバー部材
121 レバー構造体
122 係合部
123 当接部
124 微小回転体
125 レバー回転軸
124 微小回転体
131 傾斜部
132 切欠部
133 揺動部材ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に伸縮する複数のブームを備えたブームスプレーヤの前記ブームに散布ノズルを設置するためのノズルホルダであって、
薬液タンクから供給される薬液を前記散布ノズルへと流通させる薬液流通路と、
この薬液流通路の途中に設けられる弁座と、
この弁座に密着することで前記各散布ノズルへの前記薬液流通路を閉鎖するとともに前記弁座から離間することで前記各散布ノズルへの前記薬液流通路を開放する開閉用弁と、
前記開閉用弁を押圧することにより、前記薬液流通路内の液圧が所定の圧力以下である場合に前記開閉用弁を前記弁座に密着させて前記薬液流通路を閉鎖するとともに、前記液圧が所定の圧力以上になった場合に前記開閉用弁を前記弁座から離間させて前記薬液流通路を開放する開閉制御手段と、
前記ブームが相対的に伸縮することにより互いに重なり合う前記散布ノズルのうち、一方の前記散布ノズルを制御する前記開閉制御手段を閉鎖状態に固定して前記開閉用弁を前記薬液の液圧にかかわらず前記弁座に密着させる流通路強制閉鎖手段と
を有するノズルホルダ。
【請求項2】
前記開閉制御手段は、所定のバネ係数を備えた付勢部材と、この付勢部材の付勢力により前記開閉用弁を押圧する状態に保持されている押圧部材とを有しており、
前記流通路強制閉鎖手段は、前記押圧部材に当接して動作を拘束する拘束位置と前記押圧部材から待避して動作を自由にする待避位置とに移動可能な拘束部材と、
前記拘束部材に係合して拘束位置に固定する流通閉鎖位置と前記拘束部材に係合せずに拘束を解除させる流通開放位置との間で揺動する拘束制御揺動部材と、
前記ブームを縮めて重なり合う前記散布ノズルにおける前記拘束制御揺動部材を前記流通開放位置から前記流通閉鎖位置まで揺動させるとともに、前記ブームを伸ばして重ならなくなる前記散布ノズルにおける前記拘束制御揺動部材を前記流通閉鎖位置から前記流通開放位置まで揺動させる開閉制御作動片と
を有する請求項1に記載のノズルホルダ。
【請求項3】
走行車両に設置される基部フレームと、この基部フレームに支持されているとともに左右方向に相対的に伸縮する複数のブームと、これらブームの長手方向に沿って所定の間隔を隔てて設置されている薬液を散布する複数の散布ノズルと、前記薬液を貯留する薬液貯留タンクと、この薬液貯留タンクから前記各散布ノズルへ前記薬液を供給する薬液供給手段と、前記各散布ノズルを前記ブームに設置するためのノズルホルダとを有しており、
前記ノズルホルダは、
前記薬液タンクから供給される前記薬液を前記散布ノズルへと流通させる薬液流通路と、
この薬液流通路の途中に設けられる弁座と、
この弁座に密着することで前記各散布ノズルへの前記薬液流通路を閉鎖するとともに前記弁座から離間することで前記各散布ノズルへの前記薬液流通路を開放する開閉用弁と、
前記開閉用弁を押圧することにより、前記薬液流通路内の液圧が所定の圧力以下である場合に前記開閉用弁を前記弁座に密着させて前記薬液流通路を閉鎖するとともに、前記液圧が所定の圧力以上になった場合に前記開閉用弁を前記弁座から離間させて前記薬液流通路を開放する開閉制御手段と、
前記ブームが相対的に伸縮することにより互いに重なり合う前記散布ノズルのうち、一方の前記散布ノズルを制御する前記開閉制御手段を閉鎖状態に固定して前記開閉用弁を前記薬液の液圧にかかわらず前記弁座に密着させる流通路強制閉鎖手段と
を備えているブームスプレーヤ。
【請求項4】
前記開閉制御手段は、所定のバネ係数を備えた付勢部材と、この付勢部材の付勢力により前記開閉用弁を押圧する状態に保持されている押圧部材とを有しており、
前記流通路強制閉鎖手段は、前記押圧部材に当接して動作を拘束する拘束位置と前記押圧部材から待避して動作を自由にする待避位置とに移動可能な拘束部材と、
前記拘束部材に係合して拘束位置に固定する流通閉鎖位置と前記拘束部材に係合せずに拘束を解除させる流通開放位置との間で揺動する拘束制御揺動部材と、
前記ブームに設置されており、前記ブームを縮めて重なり合う前記散布ノズルにおける前記拘束制御揺動部材を前記流通開放位置から前記流通閉鎖位置まで揺動させるとともに、前記ブームを伸ばして重ならなくなる前記散布ノズルにおける前記拘束制御揺動部材を前記流通閉鎖位置から前記流通開放位置まで揺動させる開閉制御作動片と
を有する請求項3に記載のブームスプレーヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−90587(P2013−90587A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234051(P2011−234051)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000222978)東洋農機株式会社 (27)
【Fターム(参考)】