ノズルメンテナンス装置及びそれを用いた塗布処理装置
【課題】処理液等の薬液の無駄な消費を無くし、且つ、タクトタイムを短縮し、生産性を向上する。
【解決手段】円柱状または円盤状に形成され、その周面に前記ノズル先端の長手方向に沿って平行に形成された複数の払拭部11aを有し、所定方向に臨む一の払拭部によりノズル先端3aを狭持すると共に、前記ノズル先端の長手方向に沿って移動可能に設けられた払拭体11と、前記払拭体を前記ノズル先端の長手方向に沿って移動させる払拭体移動手段13,14,15と、前記ノズル先端の側方に移動された前記払拭体を軸周りに回転させ、前記一の払拭部に代えて他の払拭部を前記所定方向に臨む状態とする払拭体回転手段17,18とを備える。
【解決手段】円柱状または円盤状に形成され、その周面に前記ノズル先端の長手方向に沿って平行に形成された複数の払拭部11aを有し、所定方向に臨む一の払拭部によりノズル先端3aを狭持すると共に、前記ノズル先端の長手方向に沿って移動可能に設けられた払拭体11と、前記払拭体を前記ノズル先端の長手方向に沿って移動させる払拭体移動手段13,14,15と、前記ノズル先端の側方に移動された前記払拭体を軸周りに回転させ、前記一の払拭部に代えて他の払拭部を前記所定方向に臨む状態とする払拭体回転手段17,18とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルメンテナンス装置及びそれを用いた塗布処理装置に関し、特に長尺状のノズルに吐出口が形成され、前記吐出口から吐出された処理液が付着するノズル先端に対し、前記処理液の払拭処理を施すノズルメンテナンス装置及びそれを用いた塗布処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、FPD(フラットパネルディスプレイ)の製造においては、いわゆるフォトリソグラフィ工程により回路パターンを形成することが行われている。
このフォトリソグラフィ工程では、ガラス基板等の被処理基板に所定の膜を成膜した後、処理液であるフォトレジスト(以下、レジストと呼ぶ)が塗布されレジスト膜(感光膜)が形成される。そして、回路パターンに対応して前記レジスト膜が露光され、これが現像処理され、パターン形成される。
【0003】
このようなフォトリソグラフィ工程において、被処理基板にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成する方法として、スリット状のノズル吐出口からレジスト液を帯状に吐出し、レジスト液を基板上に塗布する方法がある。
この方法を用いた従来のレジスト塗布装置においては、例えば図12に示すようにステージ50上に載置された基板Gに対しノズル移動手段51によりノズル52を相対的に移動させる。その際、スリット状の吐出口52aからレジスト液Rを吐出し、それにより基板G上にレジスト膜が形成される。
【0004】
ところで、前記ノズル52にあっては、スリット状の吐出口52aは、微小な隙間により形成されているため、待機中においてノズル先端のメンテナンス処理を施さなければ、レジスト液Rの乾燥等により目詰まりが生じる。
このため従来は、図示するように、ノズル先端に付着したレジスト液Rを均一化する(プライミング処理と呼ぶ)ための回転自在なプライミングローラ53を備えたプライミング処理装置54が設けられている。
【0005】
このプライミング処理装置54におけるプライミング処理では、ノズル52がノズル移動手段51によってプライミングローラ53の上方に移動され、ローラ回転制御手段55により回転駆動されるプライミングローラ53の表面に向けて、吐出口52aからレジスト液Rが吐出される。これにより、ノズル先端に付着しているレジスト液Rの状態がノズル長手方向に沿って均一化される。
【0006】
また、前記プライミング処理装置54にあっては、プライミングローラ53のローラ面に付着したレジスト液Rを除去するため、図示するような進退駆動部56により進退自在なワイパ57と、プライミングローラ53の下部を(レジストを溶解するために)洗浄液58(例えばシンナー液)に浸漬するための洗浄液58の貯留槽59等を備えている。
即ち、一回のプライミング処理が終了すると、プライミングローラ53を連続回転させ、ワイパ57をローラ面に当接させてレジスト液Rをこそげ落とし、プライミングローラ53の下部をシンナー液58に浸漬させ、ローラ面全体を洗浄するようになされている。
尚、このようなプライミング処理装置については特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−252045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記プライミング処理にあっては、回転するプライミングローラ53のローラ面に対し、大量のレジスト液Rを吐出する必要があり、レジスト液Rの(無駄な)消費量が多すぎるという課題があった。
また、前記のようにプライミング処理後のプライミングローラ53の洗浄処理にあっては、貯留槽59に貯留する洗浄液58が大量に必要となるため、コストが嵩張るという課題があった。
更には、プライミング処理及び、プライミングローラ53の洗浄にかかる時間が長く、タクトタイムが長くなり生産性が低下するという課題があった。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、被処理基板の幅方向に延びる長尺状のノズルに吐出口が形成され、前記吐出口から吐出された処理液が付着するノズル先端に対し、前記処理液の払拭処理を施すノズルメンテナンス装置において、処理液等の薬液の無駄な消費を無くし、且つ、タクトタイムを短縮し、生産性を向上することのできるノズルメンテナンス装置及びそれを用いた塗布処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するために、本発明に係るノズルメンテナンス装置は、被処理基板の幅方向に延びる長尺状のノズルに形成された吐出口から吐出された処理液が付着するノズル先端に対し、前記処理液の払拭処理を施すノズルメンテナンス装置であって、円柱状または円盤状に形成され、その周面に前記ノズル先端の長手方向に沿って平行に形成された複数の払拭部を有し、所定方向に臨む一の払拭部により前記ノズル先端を狭持すると共に、前記ノズル先端の長手方向に沿って移動可能に設けられた払拭体と、前記払拭体を前記ノズル先端の長手方向に沿って移動させる払拭体移動手段と、前記ノズル先端の側方に移動された前記払拭体を軸周りに回転させ、前記一の払拭部に代えて他の払拭部を前記所定方向に臨む状態とする払拭体回転手段とを備えることに特徴を有する。
【0011】
尚、前記払拭体は、円柱状体または円盤状体の周面に、前記ノズル先端の長手方向に沿って歯筋が平行に設けられた歯車状に形成され、前記払拭部は、隣り合う一対の歯の間に形成された溝部からなることが望ましい。
また、前記歯車状に形成された払拭体の軸方向に対し、前記溝部の底部は傾斜していることが望ましい。
【0012】
或いは、前記払拭体は、同一軸上に連なって配列された複数の歯車により構成され、前記複数の歯車の前記所定方向に臨む各溝部が、前記ノズル先端のいずれかの面を払拭することにより、前記ノズル先端の全ての面が払拭されるようにしてもよい。
或いは、前記払拭体は、可撓性を有する円柱状または円盤状に形成され、前記払拭部は、その周面により形成されるようにしてもよい。
更に、前記ノズル先端を払拭した前記払拭部に対し洗浄液を吹き付ける洗浄手段を備えることが望ましい。
【0013】
このように構成することにより、従来のようなプライミングローラを用いたプライミング処理が不要となり、処理液や洗浄液の消費量を大幅に低減することができる。また、払拭体によりノズル先端を払拭することでメンテナンス処理を完了することができ、払拭体の回転により新たな払拭部を直ぐさま次回のメンテナンス処理に用いることができるため、タクトタイムを短縮し、生産性を向上することができる。
【0014】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係る塗布処理装置は、前記ノズルメンテナンス装置を用いる塗布処理装置であって、被処理基板を載置するステージと、前記ステージの側方に設けられたノズルメンテナンス装置と、前記ステージに載置された被処理基板の上方を基板面に沿って所定方向に移動されると共に、前記基板の幅方向に延びる長尺状のノズルに形成された吐出口から前記基板面に処理液を吐出する前記ノズルと、前記ノズルを前記ステージ上と前記ノズルメンテナンス装置との間で移動させるノズル移動手段とを備えることに特徴を有する。
尚、前記ノズルメンテナンス装置は、前記ノズルの移動方向に沿って、前記ステージの両側側方にそれぞれ配置されていてもよい。
【0015】
このように構成することにより、前記したノズルメンテナンス処理に係る効果を得ることができ、被処理基板への塗布処理に係るタクトタイムを短縮し、生産性を向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被処理基板の幅方向に延びる長尺状のノズルに吐出口が形成され、前記吐出口から吐出された処理液が付着するノズル先端に対し、前記処理液の払拭処理を施すノズルメンテナンス装置において、処理液等の薬液の無駄な消費を無くし、且つ、タクトタイムを短縮し、生産性を向上することのできるノズルメンテナンス装置及びそれを用いた塗布処理装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明に係る塗布処理装置及びノズルメンテナンス装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の塗布処理装置の一部拡大図であって、塗布処理装置が備えるノズルメンテナンス装置の主要部を示す斜視図である。
【図3】図3(a)は、ノズルメンテナンス装置が備えるワイプパッドの斜視図であり、図3(b)は、ワイプパッドによりノズル先端を払拭する状態を示すワイプパッド及びノズル先端の一部拡大図である。
【図4】図4(a)は、塗布処理装置及びノズルメンテナンス装置の状態遷移を模式的に示す側面図であり、図4(b)は、図4(a)の状態に対応する模式的な正面図である。
【図5】図5(a)は、図4の状態からの塗布処理装置及びノズルメンテナンス装置の状態遷移を模式的に示す側面図であり、図5(b)は、図5(a)の状態に対応する模式的な正面図である。
【図6】図6(a)は、図5の状態からの塗布処理装置及びノズルメンテナンス装置の状態遷移を模式的に示す側面図であり、図6(b)は、図6(a)の状態に対応する模式的な正面図である。
【図7】図7(a)は、図6の状態からの塗布処理装置及びノズルメンテナンス装置の状態遷移を模式的に示す側面図であり、図7(b)は、図7(a)の状態に対応する模式的な正面図である。
【図8】図8(a)は、払拭体の他の形態を示す斜視図であり、図8(b)は、その一部拡大断面図である。
【図9】図9(a)は、払拭体の他の形態を示す斜視図であり、図9(b)は、ワイプパッドによりノズル先端を払拭する状態を示すワイプパッド及びノズル先端の一部拡大図である。
【図10】図10は、払拭体の他の形態を示す斜視図である。
【図11】図11(a)〜(c)は、図10の払拭体によりノズル先端を払拭する状態を示すワイプパッド及びノズル先端の一部拡大図である。
【図12】図12は、従来のレジスト塗布装置におけるノズルのプライミング処理を説明するための模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のノズルメンテナンス装置及びそれを用いた塗布処理装置にかかる一実施形態を、図面に基づき説明する。尚、この実施形態にあっては、被処理基板をガラス基板として、このガラス基板に処理液であるレジスト液をノズルから吐出してレジスト塗布膜を形成する塗布処理装置、及びレジスト液が付着した前記ノズルの吐出口の状態を整えるノズルメンテナンス装置に適用した場合を例にとって説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る塗布処理装置及びノズルメンテナンス装置の概略構成を示す斜視図である。図2は、図1の塗布処理装置の一部拡大図であって、塗布処理装置が備えるノズルメンテナンス装置の主要部を示している。
図1に示す塗布処理装置1は、ガラス基板Gが載置されるステージ2と、このステージ2に載置されたガラス基板Gの上を走査可能に設けられたノズル3と、ノズル3の吐出口の状態を整えるノズルメンテナンス装置10とを具備している。
【0020】
前記ノズル3の吐出口は、下方に突起し基板幅方向に長く形成されたノズル先端3aに設けられ、基板幅方向に細長いスリット状に形成されている。ノズル3は、塗布処理時において、ノズル先端3a(吐出口)とステージ2上のガラス基板Gとの間が所定距離に維持され、ノズル移動手段5によりガラス基板G上をその一端から他端まで走査されると共に、処理液供給手段6から供給されるレジスト液を基板G上に吐出するようになっている。
また、各基板Gへの塗布処理が終了する度、ノズル3は、ノズル移動手段5によりノズルメンテナンス装置10の上方(ノズル待機位置とする)に移動され、ノズル先端3a(吐出口)のメンテナンス処理が施されるようになっている。
【0021】
ノズルメンテナンス装置10は、上方(ノズル待機位置)に配置されたノズル3のノズル先端3aに対し、その一端から他端までを基板幅方向に沿って走査するワイプパッド11(払拭体)を有する。このワイプパッド11によりノズル先端3aに付着するレジスト液を払拭するようになっている(この処理をメンテナンス処理と呼ぶ)。
前記ワイプパッド11は、図3(a)に示すように円柱状体または円盤状体の周面に、複数の歯12が設けられた歯車状の形状であって、ノズル先端3aの長手方向に沿って平行に歯筋(複数の溝部11a)が形成されている。
このワイプパッド11において、所定方向に臨むよう配置された一の溝部11a(払拭部)にノズル先端3aが嵌められ、対向する一対の歯12の側面12aにノズル先端3aが狭持された状態で、ワイプパッド11が基板幅方向に移動される。これにより、ノズル先端3aに付着しているレジスト液が払拭されるようになっている。尚、ワイプパッド11の材質は、特に限定されないが、レジスト液を払拭し易いように、好ましくは硬質ゴムなどの合成樹脂により形成される。
【0022】
また、ノズル待機位置に配置されたノズル3の下方には、ノズル先端3aを収容するように基板幅方向に延設されると共に、洗浄液(例えばレジスト液の溶媒であるシンナー液)を貯留する洗浄液槽25が設けられている。この洗浄液槽25により、ノズル先端3aはレジスト液の溶媒雰囲気に曝されて、吐出口の乾燥が防止されると共に、ワイプパッド11により拭き取られたレジスト液が槽内に落とされ、洗浄液に溶解するようになされている。
【0023】
また、前記ワイプパッド11は、ノズル吐出口3aのメンテナンス処理のための動作期間を除き、図1、図2に示すようにノズル側方の待機位置に配置されている。ワイプパッド11は、ノズル前後方向に延びる走査アーム13の先端に回転自在に支持され、走査アーム13は、その後端がスライダ14に接続されている。また、スライダ14は、ステージ2の後方において基板幅方向に延びるレール15に沿って、基板幅方向に往復移動可能に設けられている。即ち、走査アーム13に支持されたワイプパッド11は、スライダ14がレール15に沿って移動することにより待機位置から基板幅方向に沿って往復移動可能となされている。尚、前記走査アーム13、スライダ14、レール15により払拭体移動手段が構成される。
【0024】
また、ワイプパッド11がノズル3のメンテナンス処理を終えて待機位置に戻ると、その歯筋面の一部が、同様に歯車状に形成された回転ギア17に係合する状態となされている。回転ギア17は、サーボモータ18により回転制御され、例えば、回転ギア17が所定の回転角度だけ回転することにより、ワイプパッド11の歯筋面を前記所定の回転角度だけ所定方向に送り出す(回転させる)ようになされている。これによりワイプパッド11においてノズル先端3aの払拭によりレジスト液が付着した一の溝部11aは、所定の位置(例えばワイプパッド11の側部)に移動される。また、レジスト液の付着していない他の溝部11aが次のメンテナンス処理に用いられるように、所定方向に臨む位置(例えばワイプパッド11の上部)に移動するようになっている。尚、回転ギア17、サーボモータ18により払拭体回転手段が構成される。
【0025】
また、待機位置のワイプパッド11及び回転ギア17の側方には、洗浄ノズル20が設けられ、メンテナンス処理によりレジスト液が付着したワイプパッド11の溝部11aに対し、前記洗浄ノズル20から洗浄液が吹き付けられるようになっている。洗浄ノズル20には、洗浄液供給源21からシンナー液などのレジスト液の溶媒が供給される。これにより、レジスト液が付着したワイプパッド11の溝部11aが洗浄されるようになっている。尚、洗浄ノズル20、洗浄液供給源21により洗浄手段が構成される。
【0026】
続いて、このように構成された塗布処理装置1及びノズルメンテナンス装置10の一連の動作について、図4乃至図7を用いて説明する。尚、図4(a)、図5(a)、図6(a)、図7(a)は、塗布処理装置1及びノズルメンテナンス装置10の状態遷移を模式的に示す側面図である。また、図4(b)、図5(b)、図6(b)、図7(b)は、それぞれ図4(a)、図5(a)、図6(a)、図7(a)の状態に対応する模式的な正面図である。
【0027】
先ず、図4(a)、図4(b)に示すようにステージ2上に基板Gが載置されると、ノズル3はノズル移動手段5によりステージ2の一端側に移動され、図5(a)、図5(b)に示すようにレジスト液Rを吐出しながら基板G上を走査される。これにより、基板G上にレジスト液Rの塗布膜が形成される。
塗布処理が終了すると、ノズル3は図6(a)、図6(b)に示すようにノズル待機位置に移動され、ワイプパッド11の一溝部11aがノズル先端3aを狭持した状態で基板幅方向に走査されることによりノズル先端3aのレジスト液Rが払拭される(ノズル3のメンテナンス処理が行われる)。
【0028】
ノズル3のメンテナンス処理が終了すると、図7(a)、図7(b)に示すようにワイプパッド11は回転ギア17の下部に係合するように待機位置に戻り、回転ギア17の回転により所定角度だけ回転される。これにより、レジスト液17が付着した溝部11aが例えばワイプパッド11の側部に移動し、その溝部11aに対し洗浄ノズル20から洗浄液が吹き付けられ、ワイプパッド11の洗浄が行われる。また、レジスト液Rの付着していない他の溝部11aが次のメンテナンス処理に用いられるようにワイプパッド11の上部に移動する。
また、ステージ2からはレジスト膜が形成された基板Gが搬出されて新たな基板Gが搬入され、その基板Gへの塗布処理終了後、ワイプパッド11は、レジスト液の付着していない溝部11aによりノズル先端3aの払拭処理を行うことになる。
【0029】
以上のように、本発明に係る実施の形態によれば、基板幅方向に延びるスリット状の吐出口を有するノズル先端3aを、歯車状のワイプパッド11で狭持すると共に、このワイプパッド11を吐出口の長手方向に沿って走査することによりノズル先端3aに付着するレジスト液が除去される。
この構成により、従来のようなプライミングローラを用いたプライミング処理が不要となり、レジスト液や洗浄液等の薬液の消費量を大幅に低減することができる。また、ワイプパッド11によりノズル先端3aを払拭することでメンテナンス処理を完了することができ、ワイプパッド11の回転により新たな払拭部(溝部11a)を直ぐさま次回のメンテナンス処理に用いることができるため、タクトタイムを短縮し、生産性を向上することができる。
【0030】
尚、前記実施の形態においては、図3に示すようにワイプパッド11の溝部11aは、その幅方向の深さ寸法が一定のものとしたが、それに限定されるものではない。
例えば、図8(a)の斜視図、図8(b)の断面図に示すように溝部11aの底部に、軸方向に対して傾斜を持たせ、ワイプパッド11の軸方向に溝部11aの深さが変化するよう形成してもよい。このように形成することにより、ノズル先端3aに対する払拭処理の後、溝部11aに溜まったレジスト液を流し落としやすくすることができる。
或いは、図9(a)の斜視図に示すように、ワイプパッド11の周面に歯12が設けられない円柱形状または円盤形状に形成してもよい。その場合、図9(b)に示すようにワイプパッド11の周面11b(払拭部)に対しノズル先端3aを押しつけることによって周面11bによりノズル先端3aを狭持するようにすればよい。
【0031】
また、前記実施の形態においては、1つのワイプパッド11によりノズル先端3aを払拭する構成としたが、複数のワイプパッド11により1つの払拭体を構成してもよい。
例えば、図10の斜視図には、3つのワイプパッド11A,11B、11Cにより1つの払拭体を構成した例を示している。
この場合、ノズル先端3aを払拭する際、例えば、図11(a)に示すようにワイプパッド11Aによりノズル先端3aの一側面が払拭され、図11(b)に示すようにワイプパッド11Bによりノズル先端3aの他側面が払拭される。そして、最後に図11(c)に示すようにワイプパッド11Cによりノズル先端3aの先端面が払拭される。このように構成することで、より効果的にノズル先端3aに付着したレジスト液を払拭することができる。
【0032】
また、前記実施の形態においては、ステージ2の一側方に1つのノズル3を待機させ、1つのノズルメンテナンス装置10を配備した構成としたが、他側方にも同様にノズルメンテナンス装置10を配備してもよい。
その場合、ステージ2の一端から他端に向けてレジスト液を吐出した後、前記他端側の側方のノズルメンテナンス装置10によりノズル先端3aのメンテナンス処理を行い、続いて、ステージ2の前記他端側から一端側に戻る際に、次の基板Gへの塗布処理を行うことができる。即ち、複数の基板Gに対し連続的に塗布処理を行う際のタクトタイムを短縮し、生産性を向上することができる。
【0033】
また、前記実施の形態においては、ガラス基板Gに処理液としてレジスト液を塗布する場合を例に説明したが、本発明にあっては、その形態に限定されるものではない。即ち、被処理基板はガラス基板G以外の基板でもよく、また、処理液はレジスト液以外のものでもよい。
また、前記実施の形態においては、スリット状の吐出口を有するノズル3を用いて説明したが、本発明はスリット状の吐出口を有するノズル3に限定されるものでない。例えば、ガラス板Gの幅方向に延びる長尺状のノズルであって、吐出口がスリット状でなく、吐出口として複数の微細孔が所定の間隔で一列に、または複数列に列設されたノズルにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 塗布処理装置
2 ステージ
3 ノズル
3a ノズル先端
5 ノズル移動手段
6 処理液供給源
10 ノズルメンテナンス装置
11 ワイプパッド(払拭体)
11a 溝部(払拭部)
11b 周面(払拭部)
12 歯
13 走査アーム(払拭体移動手段)
14 スライダ(払拭体移動手段)
15 レール(払拭体移動手段)
17 回転ギア(払拭体回転手段)
18 サーボモータ(払拭体回転手段)
20 洗浄ノズル(洗浄手段)
21 洗浄液供給源(洗浄手段)
G ガラス基板(被処理基板)
R レジスト液(処理液)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルメンテナンス装置及びそれを用いた塗布処理装置に関し、特に長尺状のノズルに吐出口が形成され、前記吐出口から吐出された処理液が付着するノズル先端に対し、前記処理液の払拭処理を施すノズルメンテナンス装置及びそれを用いた塗布処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、FPD(フラットパネルディスプレイ)の製造においては、いわゆるフォトリソグラフィ工程により回路パターンを形成することが行われている。
このフォトリソグラフィ工程では、ガラス基板等の被処理基板に所定の膜を成膜した後、処理液であるフォトレジスト(以下、レジストと呼ぶ)が塗布されレジスト膜(感光膜)が形成される。そして、回路パターンに対応して前記レジスト膜が露光され、これが現像処理され、パターン形成される。
【0003】
このようなフォトリソグラフィ工程において、被処理基板にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成する方法として、スリット状のノズル吐出口からレジスト液を帯状に吐出し、レジスト液を基板上に塗布する方法がある。
この方法を用いた従来のレジスト塗布装置においては、例えば図12に示すようにステージ50上に載置された基板Gに対しノズル移動手段51によりノズル52を相対的に移動させる。その際、スリット状の吐出口52aからレジスト液Rを吐出し、それにより基板G上にレジスト膜が形成される。
【0004】
ところで、前記ノズル52にあっては、スリット状の吐出口52aは、微小な隙間により形成されているため、待機中においてノズル先端のメンテナンス処理を施さなければ、レジスト液Rの乾燥等により目詰まりが生じる。
このため従来は、図示するように、ノズル先端に付着したレジスト液Rを均一化する(プライミング処理と呼ぶ)ための回転自在なプライミングローラ53を備えたプライミング処理装置54が設けられている。
【0005】
このプライミング処理装置54におけるプライミング処理では、ノズル52がノズル移動手段51によってプライミングローラ53の上方に移動され、ローラ回転制御手段55により回転駆動されるプライミングローラ53の表面に向けて、吐出口52aからレジスト液Rが吐出される。これにより、ノズル先端に付着しているレジスト液Rの状態がノズル長手方向に沿って均一化される。
【0006】
また、前記プライミング処理装置54にあっては、プライミングローラ53のローラ面に付着したレジスト液Rを除去するため、図示するような進退駆動部56により進退自在なワイパ57と、プライミングローラ53の下部を(レジストを溶解するために)洗浄液58(例えばシンナー液)に浸漬するための洗浄液58の貯留槽59等を備えている。
即ち、一回のプライミング処理が終了すると、プライミングローラ53を連続回転させ、ワイパ57をローラ面に当接させてレジスト液Rをこそげ落とし、プライミングローラ53の下部をシンナー液58に浸漬させ、ローラ面全体を洗浄するようになされている。
尚、このようなプライミング処理装置については特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−252045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記プライミング処理にあっては、回転するプライミングローラ53のローラ面に対し、大量のレジスト液Rを吐出する必要があり、レジスト液Rの(無駄な)消費量が多すぎるという課題があった。
また、前記のようにプライミング処理後のプライミングローラ53の洗浄処理にあっては、貯留槽59に貯留する洗浄液58が大量に必要となるため、コストが嵩張るという課題があった。
更には、プライミング処理及び、プライミングローラ53の洗浄にかかる時間が長く、タクトタイムが長くなり生産性が低下するという課題があった。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、被処理基板の幅方向に延びる長尺状のノズルに吐出口が形成され、前記吐出口から吐出された処理液が付着するノズル先端に対し、前記処理液の払拭処理を施すノズルメンテナンス装置において、処理液等の薬液の無駄な消費を無くし、且つ、タクトタイムを短縮し、生産性を向上することのできるノズルメンテナンス装置及びそれを用いた塗布処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するために、本発明に係るノズルメンテナンス装置は、被処理基板の幅方向に延びる長尺状のノズルに形成された吐出口から吐出された処理液が付着するノズル先端に対し、前記処理液の払拭処理を施すノズルメンテナンス装置であって、円柱状または円盤状に形成され、その周面に前記ノズル先端の長手方向に沿って平行に形成された複数の払拭部を有し、所定方向に臨む一の払拭部により前記ノズル先端を狭持すると共に、前記ノズル先端の長手方向に沿って移動可能に設けられた払拭体と、前記払拭体を前記ノズル先端の長手方向に沿って移動させる払拭体移動手段と、前記ノズル先端の側方に移動された前記払拭体を軸周りに回転させ、前記一の払拭部に代えて他の払拭部を前記所定方向に臨む状態とする払拭体回転手段とを備えることに特徴を有する。
【0011】
尚、前記払拭体は、円柱状体または円盤状体の周面に、前記ノズル先端の長手方向に沿って歯筋が平行に設けられた歯車状に形成され、前記払拭部は、隣り合う一対の歯の間に形成された溝部からなることが望ましい。
また、前記歯車状に形成された払拭体の軸方向に対し、前記溝部の底部は傾斜していることが望ましい。
【0012】
或いは、前記払拭体は、同一軸上に連なって配列された複数の歯車により構成され、前記複数の歯車の前記所定方向に臨む各溝部が、前記ノズル先端のいずれかの面を払拭することにより、前記ノズル先端の全ての面が払拭されるようにしてもよい。
或いは、前記払拭体は、可撓性を有する円柱状または円盤状に形成され、前記払拭部は、その周面により形成されるようにしてもよい。
更に、前記ノズル先端を払拭した前記払拭部に対し洗浄液を吹き付ける洗浄手段を備えることが望ましい。
【0013】
このように構成することにより、従来のようなプライミングローラを用いたプライミング処理が不要となり、処理液や洗浄液の消費量を大幅に低減することができる。また、払拭体によりノズル先端を払拭することでメンテナンス処理を完了することができ、払拭体の回転により新たな払拭部を直ぐさま次回のメンテナンス処理に用いることができるため、タクトタイムを短縮し、生産性を向上することができる。
【0014】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係る塗布処理装置は、前記ノズルメンテナンス装置を用いる塗布処理装置であって、被処理基板を載置するステージと、前記ステージの側方に設けられたノズルメンテナンス装置と、前記ステージに載置された被処理基板の上方を基板面に沿って所定方向に移動されると共に、前記基板の幅方向に延びる長尺状のノズルに形成された吐出口から前記基板面に処理液を吐出する前記ノズルと、前記ノズルを前記ステージ上と前記ノズルメンテナンス装置との間で移動させるノズル移動手段とを備えることに特徴を有する。
尚、前記ノズルメンテナンス装置は、前記ノズルの移動方向に沿って、前記ステージの両側側方にそれぞれ配置されていてもよい。
【0015】
このように構成することにより、前記したノズルメンテナンス処理に係る効果を得ることができ、被処理基板への塗布処理に係るタクトタイムを短縮し、生産性を向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被処理基板の幅方向に延びる長尺状のノズルに吐出口が形成され、前記吐出口から吐出された処理液が付着するノズル先端に対し、前記処理液の払拭処理を施すノズルメンテナンス装置において、処理液等の薬液の無駄な消費を無くし、且つ、タクトタイムを短縮し、生産性を向上することのできるノズルメンテナンス装置及びそれを用いた塗布処理装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明に係る塗布処理装置及びノズルメンテナンス装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の塗布処理装置の一部拡大図であって、塗布処理装置が備えるノズルメンテナンス装置の主要部を示す斜視図である。
【図3】図3(a)は、ノズルメンテナンス装置が備えるワイプパッドの斜視図であり、図3(b)は、ワイプパッドによりノズル先端を払拭する状態を示すワイプパッド及びノズル先端の一部拡大図である。
【図4】図4(a)は、塗布処理装置及びノズルメンテナンス装置の状態遷移を模式的に示す側面図であり、図4(b)は、図4(a)の状態に対応する模式的な正面図である。
【図5】図5(a)は、図4の状態からの塗布処理装置及びノズルメンテナンス装置の状態遷移を模式的に示す側面図であり、図5(b)は、図5(a)の状態に対応する模式的な正面図である。
【図6】図6(a)は、図5の状態からの塗布処理装置及びノズルメンテナンス装置の状態遷移を模式的に示す側面図であり、図6(b)は、図6(a)の状態に対応する模式的な正面図である。
【図7】図7(a)は、図6の状態からの塗布処理装置及びノズルメンテナンス装置の状態遷移を模式的に示す側面図であり、図7(b)は、図7(a)の状態に対応する模式的な正面図である。
【図8】図8(a)は、払拭体の他の形態を示す斜視図であり、図8(b)は、その一部拡大断面図である。
【図9】図9(a)は、払拭体の他の形態を示す斜視図であり、図9(b)は、ワイプパッドによりノズル先端を払拭する状態を示すワイプパッド及びノズル先端の一部拡大図である。
【図10】図10は、払拭体の他の形態を示す斜視図である。
【図11】図11(a)〜(c)は、図10の払拭体によりノズル先端を払拭する状態を示すワイプパッド及びノズル先端の一部拡大図である。
【図12】図12は、従来のレジスト塗布装置におけるノズルのプライミング処理を説明するための模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のノズルメンテナンス装置及びそれを用いた塗布処理装置にかかる一実施形態を、図面に基づき説明する。尚、この実施形態にあっては、被処理基板をガラス基板として、このガラス基板に処理液であるレジスト液をノズルから吐出してレジスト塗布膜を形成する塗布処理装置、及びレジスト液が付着した前記ノズルの吐出口の状態を整えるノズルメンテナンス装置に適用した場合を例にとって説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る塗布処理装置及びノズルメンテナンス装置の概略構成を示す斜視図である。図2は、図1の塗布処理装置の一部拡大図であって、塗布処理装置が備えるノズルメンテナンス装置の主要部を示している。
図1に示す塗布処理装置1は、ガラス基板Gが載置されるステージ2と、このステージ2に載置されたガラス基板Gの上を走査可能に設けられたノズル3と、ノズル3の吐出口の状態を整えるノズルメンテナンス装置10とを具備している。
【0020】
前記ノズル3の吐出口は、下方に突起し基板幅方向に長く形成されたノズル先端3aに設けられ、基板幅方向に細長いスリット状に形成されている。ノズル3は、塗布処理時において、ノズル先端3a(吐出口)とステージ2上のガラス基板Gとの間が所定距離に維持され、ノズル移動手段5によりガラス基板G上をその一端から他端まで走査されると共に、処理液供給手段6から供給されるレジスト液を基板G上に吐出するようになっている。
また、各基板Gへの塗布処理が終了する度、ノズル3は、ノズル移動手段5によりノズルメンテナンス装置10の上方(ノズル待機位置とする)に移動され、ノズル先端3a(吐出口)のメンテナンス処理が施されるようになっている。
【0021】
ノズルメンテナンス装置10は、上方(ノズル待機位置)に配置されたノズル3のノズル先端3aに対し、その一端から他端までを基板幅方向に沿って走査するワイプパッド11(払拭体)を有する。このワイプパッド11によりノズル先端3aに付着するレジスト液を払拭するようになっている(この処理をメンテナンス処理と呼ぶ)。
前記ワイプパッド11は、図3(a)に示すように円柱状体または円盤状体の周面に、複数の歯12が設けられた歯車状の形状であって、ノズル先端3aの長手方向に沿って平行に歯筋(複数の溝部11a)が形成されている。
このワイプパッド11において、所定方向に臨むよう配置された一の溝部11a(払拭部)にノズル先端3aが嵌められ、対向する一対の歯12の側面12aにノズル先端3aが狭持された状態で、ワイプパッド11が基板幅方向に移動される。これにより、ノズル先端3aに付着しているレジスト液が払拭されるようになっている。尚、ワイプパッド11の材質は、特に限定されないが、レジスト液を払拭し易いように、好ましくは硬質ゴムなどの合成樹脂により形成される。
【0022】
また、ノズル待機位置に配置されたノズル3の下方には、ノズル先端3aを収容するように基板幅方向に延設されると共に、洗浄液(例えばレジスト液の溶媒であるシンナー液)を貯留する洗浄液槽25が設けられている。この洗浄液槽25により、ノズル先端3aはレジスト液の溶媒雰囲気に曝されて、吐出口の乾燥が防止されると共に、ワイプパッド11により拭き取られたレジスト液が槽内に落とされ、洗浄液に溶解するようになされている。
【0023】
また、前記ワイプパッド11は、ノズル吐出口3aのメンテナンス処理のための動作期間を除き、図1、図2に示すようにノズル側方の待機位置に配置されている。ワイプパッド11は、ノズル前後方向に延びる走査アーム13の先端に回転自在に支持され、走査アーム13は、その後端がスライダ14に接続されている。また、スライダ14は、ステージ2の後方において基板幅方向に延びるレール15に沿って、基板幅方向に往復移動可能に設けられている。即ち、走査アーム13に支持されたワイプパッド11は、スライダ14がレール15に沿って移動することにより待機位置から基板幅方向に沿って往復移動可能となされている。尚、前記走査アーム13、スライダ14、レール15により払拭体移動手段が構成される。
【0024】
また、ワイプパッド11がノズル3のメンテナンス処理を終えて待機位置に戻ると、その歯筋面の一部が、同様に歯車状に形成された回転ギア17に係合する状態となされている。回転ギア17は、サーボモータ18により回転制御され、例えば、回転ギア17が所定の回転角度だけ回転することにより、ワイプパッド11の歯筋面を前記所定の回転角度だけ所定方向に送り出す(回転させる)ようになされている。これによりワイプパッド11においてノズル先端3aの払拭によりレジスト液が付着した一の溝部11aは、所定の位置(例えばワイプパッド11の側部)に移動される。また、レジスト液の付着していない他の溝部11aが次のメンテナンス処理に用いられるように、所定方向に臨む位置(例えばワイプパッド11の上部)に移動するようになっている。尚、回転ギア17、サーボモータ18により払拭体回転手段が構成される。
【0025】
また、待機位置のワイプパッド11及び回転ギア17の側方には、洗浄ノズル20が設けられ、メンテナンス処理によりレジスト液が付着したワイプパッド11の溝部11aに対し、前記洗浄ノズル20から洗浄液が吹き付けられるようになっている。洗浄ノズル20には、洗浄液供給源21からシンナー液などのレジスト液の溶媒が供給される。これにより、レジスト液が付着したワイプパッド11の溝部11aが洗浄されるようになっている。尚、洗浄ノズル20、洗浄液供給源21により洗浄手段が構成される。
【0026】
続いて、このように構成された塗布処理装置1及びノズルメンテナンス装置10の一連の動作について、図4乃至図7を用いて説明する。尚、図4(a)、図5(a)、図6(a)、図7(a)は、塗布処理装置1及びノズルメンテナンス装置10の状態遷移を模式的に示す側面図である。また、図4(b)、図5(b)、図6(b)、図7(b)は、それぞれ図4(a)、図5(a)、図6(a)、図7(a)の状態に対応する模式的な正面図である。
【0027】
先ず、図4(a)、図4(b)に示すようにステージ2上に基板Gが載置されると、ノズル3はノズル移動手段5によりステージ2の一端側に移動され、図5(a)、図5(b)に示すようにレジスト液Rを吐出しながら基板G上を走査される。これにより、基板G上にレジスト液Rの塗布膜が形成される。
塗布処理が終了すると、ノズル3は図6(a)、図6(b)に示すようにノズル待機位置に移動され、ワイプパッド11の一溝部11aがノズル先端3aを狭持した状態で基板幅方向に走査されることによりノズル先端3aのレジスト液Rが払拭される(ノズル3のメンテナンス処理が行われる)。
【0028】
ノズル3のメンテナンス処理が終了すると、図7(a)、図7(b)に示すようにワイプパッド11は回転ギア17の下部に係合するように待機位置に戻り、回転ギア17の回転により所定角度だけ回転される。これにより、レジスト液17が付着した溝部11aが例えばワイプパッド11の側部に移動し、その溝部11aに対し洗浄ノズル20から洗浄液が吹き付けられ、ワイプパッド11の洗浄が行われる。また、レジスト液Rの付着していない他の溝部11aが次のメンテナンス処理に用いられるようにワイプパッド11の上部に移動する。
また、ステージ2からはレジスト膜が形成された基板Gが搬出されて新たな基板Gが搬入され、その基板Gへの塗布処理終了後、ワイプパッド11は、レジスト液の付着していない溝部11aによりノズル先端3aの払拭処理を行うことになる。
【0029】
以上のように、本発明に係る実施の形態によれば、基板幅方向に延びるスリット状の吐出口を有するノズル先端3aを、歯車状のワイプパッド11で狭持すると共に、このワイプパッド11を吐出口の長手方向に沿って走査することによりノズル先端3aに付着するレジスト液が除去される。
この構成により、従来のようなプライミングローラを用いたプライミング処理が不要となり、レジスト液や洗浄液等の薬液の消費量を大幅に低減することができる。また、ワイプパッド11によりノズル先端3aを払拭することでメンテナンス処理を完了することができ、ワイプパッド11の回転により新たな払拭部(溝部11a)を直ぐさま次回のメンテナンス処理に用いることができるため、タクトタイムを短縮し、生産性を向上することができる。
【0030】
尚、前記実施の形態においては、図3に示すようにワイプパッド11の溝部11aは、その幅方向の深さ寸法が一定のものとしたが、それに限定されるものではない。
例えば、図8(a)の斜視図、図8(b)の断面図に示すように溝部11aの底部に、軸方向に対して傾斜を持たせ、ワイプパッド11の軸方向に溝部11aの深さが変化するよう形成してもよい。このように形成することにより、ノズル先端3aに対する払拭処理の後、溝部11aに溜まったレジスト液を流し落としやすくすることができる。
或いは、図9(a)の斜視図に示すように、ワイプパッド11の周面に歯12が設けられない円柱形状または円盤形状に形成してもよい。その場合、図9(b)に示すようにワイプパッド11の周面11b(払拭部)に対しノズル先端3aを押しつけることによって周面11bによりノズル先端3aを狭持するようにすればよい。
【0031】
また、前記実施の形態においては、1つのワイプパッド11によりノズル先端3aを払拭する構成としたが、複数のワイプパッド11により1つの払拭体を構成してもよい。
例えば、図10の斜視図には、3つのワイプパッド11A,11B、11Cにより1つの払拭体を構成した例を示している。
この場合、ノズル先端3aを払拭する際、例えば、図11(a)に示すようにワイプパッド11Aによりノズル先端3aの一側面が払拭され、図11(b)に示すようにワイプパッド11Bによりノズル先端3aの他側面が払拭される。そして、最後に図11(c)に示すようにワイプパッド11Cによりノズル先端3aの先端面が払拭される。このように構成することで、より効果的にノズル先端3aに付着したレジスト液を払拭することができる。
【0032】
また、前記実施の形態においては、ステージ2の一側方に1つのノズル3を待機させ、1つのノズルメンテナンス装置10を配備した構成としたが、他側方にも同様にノズルメンテナンス装置10を配備してもよい。
その場合、ステージ2の一端から他端に向けてレジスト液を吐出した後、前記他端側の側方のノズルメンテナンス装置10によりノズル先端3aのメンテナンス処理を行い、続いて、ステージ2の前記他端側から一端側に戻る際に、次の基板Gへの塗布処理を行うことができる。即ち、複数の基板Gに対し連続的に塗布処理を行う際のタクトタイムを短縮し、生産性を向上することができる。
【0033】
また、前記実施の形態においては、ガラス基板Gに処理液としてレジスト液を塗布する場合を例に説明したが、本発明にあっては、その形態に限定されるものではない。即ち、被処理基板はガラス基板G以外の基板でもよく、また、処理液はレジスト液以外のものでもよい。
また、前記実施の形態においては、スリット状の吐出口を有するノズル3を用いて説明したが、本発明はスリット状の吐出口を有するノズル3に限定されるものでない。例えば、ガラス板Gの幅方向に延びる長尺状のノズルであって、吐出口がスリット状でなく、吐出口として複数の微細孔が所定の間隔で一列に、または複数列に列設されたノズルにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 塗布処理装置
2 ステージ
3 ノズル
3a ノズル先端
5 ノズル移動手段
6 処理液供給源
10 ノズルメンテナンス装置
11 ワイプパッド(払拭体)
11a 溝部(払拭部)
11b 周面(払拭部)
12 歯
13 走査アーム(払拭体移動手段)
14 スライダ(払拭体移動手段)
15 レール(払拭体移動手段)
17 回転ギア(払拭体回転手段)
18 サーボモータ(払拭体回転手段)
20 洗浄ノズル(洗浄手段)
21 洗浄液供給源(洗浄手段)
G ガラス基板(被処理基板)
R レジスト液(処理液)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板の幅方向に延びる長尺状のノズルに形成された吐出口から吐出された処理液が付着するノズル先端に対し、前記処理液の払拭処理を施すノズルメンテナンス装置であって、
円柱状または円盤状に形成され、その周面に前記ノズル先端の長手方向に沿って平行に形成された複数の払拭部を有し、所定方向に臨む一の払拭部により前記ノズル先端を狭持すると共に、前記ノズル先端の長手方向に沿って移動可能に設けられた払拭体と、
前記払拭体を前記ノズル先端の長手方向に沿って移動させる払拭体移動手段と、
前記ノズル先端の側方に移動された前記払拭体を軸周りに回転させ、前記一の払拭部に代えて他の払拭部を前記所定方向に臨む状態とする払拭体回転手段とを備えることを特徴とするノズルメンテナンス装置。
【請求項2】
前記払拭体は、円柱状体または円盤状体の周面に、前記ノズル先端の長手方向に沿って歯筋が平行に設けられた歯車状に形成され、
前記払拭部は、隣り合う一対の歯の間に形成された溝部からなることを特徴とする請求項1に記載されたノズルメンテナンス装置。
【請求項3】
前記歯車状に形成された払拭体の軸方向に対し、前記溝部の底部は傾斜していることを特徴とする請求項2に記載されたノズルメンテナンス装置。
【請求項4】
前記払拭体は、同一軸上に連なって配列された複数の歯車により構成され、
前記複数の歯車の前記所定方向に臨む各溝部が、前記ノズル先端のいずれかの面を払拭することにより、前記ノズル先端の全ての面が払拭されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載されたノズルメンテナンス装置。
【請求項5】
前記払拭体は、可撓性を有する円柱状に形成され、
前記払拭部は、その周面により形成されることを特徴とする請求項1に記載されたノズルメンテナンス装置。
【請求項6】
前記ノズル先端を払拭した前記払拭部に対し洗浄液を吹き付ける洗浄手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載されたノズルメンテナンス装置。
【請求項7】
前記請求項1乃至請求項6のいずれかに記載されたノズルメンテナンス装置を用いる塗布処理装置であって、
被処理基板を載置するステージと、
前記ステージの側方に設けられたノズルメンテナンス装置と、
前記ステージに載置された被処理基板の上方を基板面に沿って所定方向に移動されると共に、前記基板の幅方向に延びる長尺状のノズルに形成された吐出口から前記基板面に処理液を吐出する前記ノズルと、
前記ノズルを前記ステージ上と前記ノズルメンテナンス装置との間で移動させるノズル移動手段とを備えることを特徴とする塗布処理装置。
【請求項8】
前記ノズルメンテナンス装置は、前記ノズルの移動方向に沿って、前記ステージの両側側方にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項7に記載された塗布処理装置。
【請求項1】
被処理基板の幅方向に延びる長尺状のノズルに形成された吐出口から吐出された処理液が付着するノズル先端に対し、前記処理液の払拭処理を施すノズルメンテナンス装置であって、
円柱状または円盤状に形成され、その周面に前記ノズル先端の長手方向に沿って平行に形成された複数の払拭部を有し、所定方向に臨む一の払拭部により前記ノズル先端を狭持すると共に、前記ノズル先端の長手方向に沿って移動可能に設けられた払拭体と、
前記払拭体を前記ノズル先端の長手方向に沿って移動させる払拭体移動手段と、
前記ノズル先端の側方に移動された前記払拭体を軸周りに回転させ、前記一の払拭部に代えて他の払拭部を前記所定方向に臨む状態とする払拭体回転手段とを備えることを特徴とするノズルメンテナンス装置。
【請求項2】
前記払拭体は、円柱状体または円盤状体の周面に、前記ノズル先端の長手方向に沿って歯筋が平行に設けられた歯車状に形成され、
前記払拭部は、隣り合う一対の歯の間に形成された溝部からなることを特徴とする請求項1に記載されたノズルメンテナンス装置。
【請求項3】
前記歯車状に形成された払拭体の軸方向に対し、前記溝部の底部は傾斜していることを特徴とする請求項2に記載されたノズルメンテナンス装置。
【請求項4】
前記払拭体は、同一軸上に連なって配列された複数の歯車により構成され、
前記複数の歯車の前記所定方向に臨む各溝部が、前記ノズル先端のいずれかの面を払拭することにより、前記ノズル先端の全ての面が払拭されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載されたノズルメンテナンス装置。
【請求項5】
前記払拭体は、可撓性を有する円柱状に形成され、
前記払拭部は、その周面により形成されることを特徴とする請求項1に記載されたノズルメンテナンス装置。
【請求項6】
前記ノズル先端を払拭した前記払拭部に対し洗浄液を吹き付ける洗浄手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載されたノズルメンテナンス装置。
【請求項7】
前記請求項1乃至請求項6のいずれかに記載されたノズルメンテナンス装置を用いる塗布処理装置であって、
被処理基板を載置するステージと、
前記ステージの側方に設けられたノズルメンテナンス装置と、
前記ステージに載置された被処理基板の上方を基板面に沿って所定方向に移動されると共に、前記基板の幅方向に延びる長尺状のノズルに形成された吐出口から前記基板面に処理液を吐出する前記ノズルと、
前記ノズルを前記ステージ上と前記ノズルメンテナンス装置との間で移動させるノズル移動手段とを備えることを特徴とする塗布処理装置。
【請求項8】
前記ノズルメンテナンス装置は、前記ノズルの移動方向に沿って、前記ステージの両側側方にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項7に記載された塗布処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−94685(P2013−94685A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236649(P2011−236649)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]