説明

ノズル及び材料塗布方法

【課題】被シール縁の内外に回り込むようにシール剤の塗布を行うことができるノズル及びこれを用いた材料塗布方法を提供すること。
【解決手段】シール剤Mの通路14が形成されたノズル本体15の先端側外周部に、一対の切欠部17が形成されている。これら切欠部は、ノズル本体の中心軸線に対して対称位置に設けられており、ノズル本体の先端に向かうに従って切欠幅wが大きくなる形状とされている。また、切欠部を除く領域は、先端に向かうに従って先細に形成されている。被シール縁11にシール剤を塗布するときは、切欠部内に被シール縁が受容されるように相対位置させ、この状態でシール剤を吐出しながら被シール縁に沿って相対移動させることで、被シール縁の内外に回り込むようにシール剤を塗布することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル及び当該ノズルを用いた材料塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に一定の空間を形成するように部剤相互を連結若しくは組み立てる際に、前記空間の密閉性を確保すべく樹脂等からなるシール剤を介在させる場合がある。このシール剤の塗布は、ノズルと被シール部とを相対移動させながらノズル先端側からシール剤を連続的に吐出することにより行うことができる。
【0003】
一般的なノズルは、先端に形成された開口を吐出口とするものであるが、例えば、携帯電話等に装備される小型HDDケースのトップカバーとケース本体との突き合わせ端縁のように、非常に狭い領域となる被シール縁にシール剤を塗布することは困難なものとされている。このような困難性は、HDDケースが小型化すればするほど一層顕在化する。
【0004】
ところで、前述したHDDケースを構成するトップカバーとケース本体は、頂壁(底壁)と、当該頂壁の周縁に連なる周壁とを備えた形状が一般的に知られている。このような周壁の端縁を被シール縁としてシール剤を塗布するノズルの場合には、ノズルの吐出口が当該ノズルの軸方向と直交する方向に開口したものでは、期待する部位に必要量のシール剤を精度良く塗布することが困難となる。また、他のノズルとしては、例えば、特許文献1、2に記載されたノズルが知られている。
【特許文献1】実公平5−32234号公報
【特許文献2】実公平3−53745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたノズルは、先端の吐出口形状が凹状に開口するように形成されている。そして、吐出口の凹んだ部分に被シール縁(周壁の端縁領域)を受容して材料を吐出しながらノズルと被シール縁との相対移動により、被シール縁の内外に回り込むようにシール剤の塗布が可能となっている。
しかしながら、特許文献1のノズルは、凹状に開口する吐出口の形成が困難になるばかりでなく、略鉛直面内に位置する周壁に対し、ノズルの軸線を略鉛直線上に支持してシール剤を吐出することに適合できない、という不都合がある。そのため、シール剤の塗布領域が狭い場合は、複雑な軌跡に沿ってシール剤を塗布することも困難となる。
【0006】
また、特許文献2は、ノズルの先端側外周における相対位置に、大小となる凹状の切欠部を形成し、大きい切欠部からシール剤を吐出し、小さい切欠部側を塗布方向に対して先行させることで、シール剤の塗布開始点と終了点との継ぎ目を良好に形成しようとするものである。
しかしながら、特許文献2のノズルにあっては、前記切欠部が対称形状ではなく、被シール縁を切欠部内に位置させてシール剤を塗布する構成とはなっていない。そのため、被シール縁を内外に回り込むようにシール剤の塗布を行うことができず、前述したHDDケースのシールには適合させることができない、という不都合がある。
【0007】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、切欠部を容易に形成することができるとともに、被シール縁を内外に跨ぐようにノズルを位置させてシール剤の塗布を行うことができるノズル及びこれを用いた剤料塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、所定方向に延びる被シール縁にシール剤を塗布するためのノズルであって、
前記シール剤の通路が形成された略筒状のノズル本体と、当該ノズル本体の先端側外周部に形成されて前記シール剤を前記被シール縁に沿って吐出可能とする一対の切欠部とを備え、
前記切欠部は、前記ノズル本体の中心軸線に対して対称位置に設けられる、という構成を採っている。
【0009】
前記ノズルにおける切欠部は、ノズル本体の先端に向かうに従って切欠幅が大きくなる形状とされ、当該切欠部に被シール縁が受容可能に設けられる、という構成を採ることができる。
【0010】
また、前記ノズル本体は、切欠部を除く領域を、先端に向かうに従って先細に形成することが好ましい。
【0011】
また、本発明は、所定方向に延びる被シール縁に、先端側外周に一対の切欠部が対称位置に設けられたノズルを用いてシール剤を塗布する材料塗布方法であって、
前記被シール縁が切欠部を通過するようにノズルを位置させ、この状態でシール剤を吐出しつつ前記被シール縁に沿ってノズルを相対移動させることで、被シール縁の内外に回り込むようにシール剤が塗布される、という方法を採っている。
【0012】
前記方法において、前記被シール縁は、鋭角に尖っているものであっても適用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ノズル本体の先端側外周部に形成された切欠部が、ノズル本体の中心軸線に対して対称位置となるため、ノズル外周部分を削り取るだけで切欠部の形成を容易に行うことができるとともに、何れの切欠部を移動方向において先行させてもよいという自由度を拡大することができる。
【0014】
また、切欠幅が先端に向かうに従って大きくなる形状としていることで、被シール縁の受容動作をスムースに行うことができ、しかも、被シール縁と切欠縁との間に程良いクリアランスを形成して必要とする量のシール剤を確実に塗布することができる。
【0015】
更に、前記切欠部を除く領域が先端に向かうに従って先細に形成されているため、ノズルの中心軸線を回転中心として回転させる角度の制約を小さくすることができ、従って、被シール縁が平面内で曲がる軌跡の場合でも、当該軌跡に沿う塗布をスムースに行うことができる。
【0016】
また、本発明に係る塗布方法によれば、被シール縁の先端が尖っている場合であっても、当該先端領域を包み込むようにシール剤を塗布することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1には、図8に示す小型HDD用ケース10のトップカバー20における被シール縁11に、ノズル12を介してシール剤Mを塗布する状態の概略斜視図が示され、図2には、前記ノズル12の拡大斜視図が示されている。これらの図において、ノズル12は、UV硬化性シール剤等からなるシール剤Mの通路14が形成された略円筒状のノズル本体15と、当該ノズル本体15の先端側(図1中下端側)外周部に形成されてシール剤Mを吐出する一対の切欠部17とを備えて構成されている。このノズル12は、図示しないロボットに支持されて前記被シール縁11に対して略直交三軸方向に相対移動可能に設けられているとともに、ノズル12の中心軸線を回転中心として回転可能に設けられ、これにより、略閉ループ状の軌跡に沿う被シール縁11にシール剤Mを連続的に塗布できるように構成されている。
【0018】
前記切欠部17は、図3及び図4に示されるように、ノズル本体15の中心軸線Cに対して対称位置に設けられている。この切欠部17の形成は、図5に示されるように、素材としての円筒管50の一端側を、外側から同図中一点鎖線で示される位置まで切削することにより形成することができる。この切削は、サンドペーパーを用いて行うことができるが、他の切削手段を用いることを妨げない。このように切削を行った状態では、図3及び図4に示されるように、切欠部17は、先端に向かうに従って切欠幅wが次第に大きくなる形状とされ、当該切欠幅w内に被シール縁11を受容する状態にノズル12を位置させることができる。なお、切欠部17,17を除く領域すなわち切欠部17間におけるノズル本体15の先端側は、図4に示されるように、次第に先細形状となる。
【0019】
前記ケース10は、図1に示されるように、平面視略方形をなすトップカバー20と、このトップカバー20によって閉塞されるケース本体21(図8参照)とからなる。トップカバー20は、頂壁22と、この頂壁22の外周に連なる周壁23とを備えた皿状をなす。本実施形態では、周壁23の図1中上端縁(図8中下端縁)が被シール縁11とされている。また、ケース本体21は、図8に示されるように、前記頂壁22と略対応した形状となる底壁25と、当該底壁25の外周から起立する周壁26とからなる。本実施形態では、トップカバー20とケース本体21との突き合わせ端縁は、内方に向かうに従って端縁間距離が次第に大きくなる形状を備えたもの、すなわち、先端が鋭角に尖っているものがシール剤Mの塗布対象物とされている。なお、このように尖った形状となるのは、ステンレス等の金属板をプレス型等によって板金加工する際に生じるためである。
【0020】
前記ノズル12を用いて前記被シール縁11にシール剤Mを塗布する場合には、図6に示されるように、ノズル12の軸線を略鉛直向きとし、一対の切欠部17,17を通過するように、被シール縁11を受容する状態に保たれ、当該状態でシール剤を所定圧力で吐出しつつノズル12を被シール縁11に沿って相対移動させる。これにより、図7に示されるように、シール剤Mが被シール縁11の内外に回り込み、中央部上端が最も上方に突出する高さとなる状態でシール剤Mの塗布を行うことができる。
【0021】
次に、本発明に係るノズルを用いてシール剤を塗布した実施例について、更に詳細に説明する。
【実施例】
【0022】
シール剤Mが塗布される対象物として、1インチ以下の小型HDDケース用のトップカバーを用いた。このトップカバーの周壁の厚みすなわち被シール縁の厚みは、0.1〜0.3mmであり、被シール縁の全長は112mmである。
ノズルは、直径0.57mm、内径(通路径)0.31mm、切欠部の長さL(図3参照)が0.5mm、切欠部の最大幅wが0.33mmのものが用いられた。
シール剤としては、UV硬化性シール剤が用いられた。
シール剤の塗布圧は、0.12MPaであり、ノズルと被シール縁との相対移動速度は、10mm/sec、タクトタイムは13s(タクトタイムはシール剤を被シール縁に一周塗布するに要する時間である)、シール剤の塗布量は、0.0130〜0.0150gとした。
図1に示されるようなトップカバーを4個サンプルとし、それぞれシール剤を被シール縁に沿って全周塗布した。そして、UV硬化後、図1中丸付き数字の1〜9で示す位置を測定点としてシール高さ及び幅をそれぞれ測定した。
得られた結果を表1及び表2に示す。なお、シール高さとは、被シール縁の高さからシール剤の頂点までの高さの差h(図7参照)であり、シール幅は、最大幅を示す。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
表1及び表2から明らかなように、本発明によれば、被シール縁の内外に回り込む状態で、被シール縁をカバーするシール幅と、一定の高さを有するシール剤の塗布が実現できることが実証される。
【0026】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、形状、剤料、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、剤料などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、剤料などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部剤の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態を説明するための概略斜視図。
【図2】ノズルの概略斜視図。
【図3】ノズルの平面図。
【図4】ノズルの正面図。
【図5】ノズルの先端側に切欠部を形成する方法を説明するための断面図。
【図6】シール剤を被シール縁に沿って塗布する際の相対位置を示す説明図。
【図7】被シール縁にシール剤が塗布された状態を示す断面図。
【図8】トップカバーをケース本体に突き合わせた際のシール剤の形状を示す断面図。
【符号の説明】
【0028】
10 ケース
11 被シール縁
12 ノズル
14 通路
15 ノズル本体
17 切欠部
C 中心軸線
M シール剤
w 切欠幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延びる被シール縁にシール剤を塗布するためのノズルであって、
前記シール剤の通路が形成された略筒状のノズル本体と、当該ノズル本体の先端側外周部に形成されて前記シール剤を前記被シール縁に沿って吐出可能とする一対の切欠部とを備え、
前記切欠部は、前記ノズル本体の中心軸線に対して対称位置に設けられていることを特徴とするノズル。
【請求項2】
前記切欠部はノズル本体の先端に向かうに従って切欠幅が大きくなる形状とされ、当該切欠部に被シール縁が受容可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載のノズル。
【請求項3】
前記ノズル本体は、切欠部を除く領域が、先端に向かうに従って先細に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のノズル。
【請求項4】
所定方向に延びる被シール縁に、先端側外周に一対の切欠部が対称位置に設けられたノズルを用いてシール剤を塗布する材料塗布方法であって、
前記被シール縁が切欠部を通過するようにノズルを位置させ、この状態でシール剤を吐出しつつ前記被シール縁に沿ってノズルを相対移動させることで、被シール縁の内外に回り込むようにシール剤が塗布されることを特徴とする材料塗布方法。
【請求項5】
前記被シール縁は、鋭角に尖っていることを特徴とする請求項4記載の材料塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−173561(P2008−173561A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8640(P2007−8640)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000132404)株式会社スリーボンド (140)
【Fターム(参考)】