説明

ノズル及び槽内異物除去装置

【課題】本発明の課題は、液体を貯留した槽の底部に沿って流れる噴射流の直進性に優れ、槽の底部に堆積した異物が巻き上がらないように噴射流を形成することができるノズル及びそのノズルを提供することにある。
【解決手段】本発明のノズル1は、液体を貯留した槽9内で噴射流を形成するノズル1であって、前記槽9の底部に対して斜めに噴き付ける第1の噴射流Faを形成する第1の噴射孔5aと、前記第1の噴射流Faよりも、前記槽9の底部に対して浅い角度となる方向に第2の噴射流Fb,Fcを形成する第2の噴射孔5b,5cと、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中で使用するノズル及びそのノズルを使用した槽内異物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の車体で所定の溶接処理が施されたものは、洗浄処理、脱脂処理、表面調整処理、化成処理等からなる前処理工程を経た後に、電着塗装、中塗り及び上塗りが施される。
前処理工程では、処理液を貯留した多段の槽(ディップ槽)のそれぞれに車体が順番に浸漬されていく。その結果、鉄粉やスパッタ等の車体に付着していた異物が取り除かれると共に、処理液中で沈降した異物は各槽の底部に堆積していく。
また、前記した電着塗装は、電着塗料を含む処理液を貯留した槽に車体を浸漬することによって行われる。そして、槽の底部には電着塗料の顔料成分が沈降して堆積することがある。
【0003】
しかしながら、槽の底部に堆積した異物や顔料(以下、顔料を含めて単に「異物」ということがある)は、処理液中で車体が移動する際に巻き上げられて、又は処理液の自然対流によって巻き上げられて車体に付着することがある。そして、車体に付着した異物は塗装不良の原因となる。
そこで、槽の底部に沈降した異物を槽外に抜き出す槽内異物除去装置が考えられる。このような槽内異物除去装置としては、例えば、槽の底部に設けられて異物を捕集するホッパと、槽内に貯留された処理液中でホッパに向けて処理液を噴射することによって、異物をホッパに集める複数のノズルと、ホッパを介して槽から異物を含む処理液を抜き出すと共に処理液のみを分離してノズルに還流する循環経路と、を備えた槽内異物除去装置が考えられる。このような槽内異物除去装置によれば、槽の底部に沈降した異物を槽外へ抜き出すことができるので、槽内で異物が車体に付着することを防止することができる。
【0004】
その一方で、従来、液体中で使用するノズルとしては、エゼクタノズル(例えば、特許文献1参照)と、扇状噴射ノズル(例えば、特許文献2参照)とが知られている。
これらのエゼクタノズル及び扇状噴射ノズルは、槽内に貯留した液体を攪拌するものとして知られている。更に具体的に説明すると、エゼクタノズルは電着槽内に貯留された電着液中の電着塗料が沈降するのを防止するものであって、このエゼクタノズルによれば、そのエゼクタ作用によって電着液の噴射パターンが略円錐形状に広がるようになっている。
また、扇状噴射ノズルは、例えば金属加工等で使用済みのクーラントに含まれる研削屑(切子)を泡沫分離法で分離する際に使用するものであって、槽内に貯留されたクーラント中で気泡混合流が広範囲に形成されるように、複数の噴射孔が扇状に配列されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平3−43240号公報
【特許文献2】特開2007−144377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記した槽内異物除去装置では、槽の底部に堆積した異物が巻き上がらないようにホッパ内に集める必要がある。そのために、この槽内異物除去装置においては、液体(前記した電着液やクーラント)の攪拌を目的とした従来のノズル(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)を使用することができない。
また、液体の攪拌を目的とする従来のノズルは、液体中での噴射流の直進性が弱いので、ホッパに向けて異物を効率よく移動させることができない。また、従来のノズルでは、ホッパに向けて異物を効率よく移動させようとして、ノズルへの液体の供給量を増加させると、沈降した異物の巻き上げ量が多くなるだけでなく、ノズルに液体を供給するポンプが大型化して槽内異物除去装置の製造コストが増大する問題も生じることとなる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、液体を貯留した槽の底部に沿って流れる噴射流の直進性に優れ、槽の底部に堆積した異物が巻き上がらないように噴射流を形成することができるノズル及びそのノズルを使用した槽内異物除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決した本発明のノズルは、液体を貯留した槽内で噴射流を形成するノズルであって、前記槽の底部に対して斜めに噴き付ける第1の噴射流を形成する第1の噴射孔と、前記第1の噴射流よりも、前記槽の底部に対して浅い角度となる方向に第2の噴射流を形成する第2の噴射孔と、を備えることを特徴とする。
このノズルは、第1の噴射流よりも浅い角度となる方向に第2の噴射流を形成するので、槽の底部に斜めに噴き付けられて底部で反射する第1の噴射流は、第2の噴射流によって槽の底部側に押さえ込まれる。その結果、このノズルは、第1の噴射流及び第2の噴射流が協働することによって槽の底部に沿って流れる直進性に優れた合成噴射流を形成するので、槽の底部に堆積した異物の巻き上げを抑制する。
【0009】
また、このようなノズルにおいては、前記第1の噴射孔は、直線状に延設されており、前記第2の噴射孔は、前記第1の噴射孔よりも下方で前記第1の噴射孔と並んで直線状に延びる途中で、鈍角で上方に屈曲して更に直線状に延びていると共に、第1の噴射孔の先端開口の位置は、第2の噴射孔の先端開口の位置よりも上方に形成されているように構成することができる。
【0010】
また、このようなノズルにおいては、平面視で、前記第1の噴射孔の両側に前記第2の噴射孔が並んで延びるように配置されると共に、前記第1の噴射孔及び前記第2の噴射孔は、基端側から先端側に向かって相互に開くように扇状に配置されていることが望ましい。
【0011】
また、このようなノズルによれば、液体を貯留した槽の底部に沈降した異物を除去する槽内異物除去装置であって、前記槽の底部に設けられた前記異物の捕集部と、前記槽の底部に配置されて前記捕集部に向けて前記異物を移動させる噴射流を形成するノズルと、前記捕集部を介して前記槽から抜き出した前記異物及び前記液体のうち、前記液体のみを分離して前記ノズルに送り込む循環経路と、を備え、前記ノズルは、前記槽の底部に対して斜めに噴き付ける第1の噴射流を形成する第1の噴射孔と、前記第1の噴射流よりも、前記槽の底部に対して浅い角度となる方向に第2の噴射流を形成する第2の噴射孔と、を有していることを特徴とする槽内異物除去装置を提供することができる。
【0012】
また、このような槽内異物除去装置においては、前記底部には、前記捕集部に向かって延在して一端が前記捕集部に接続される断面視で円弧状のガイド溝が形成され、前記ガイド溝の幅方向の略中央部に前記ノズルが配置されることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液体を貯留した槽の底部に沿って流れる噴射流の直進性に優れ、槽の底部に堆積した異物が巻き上がらないように噴射流を形成することができるノズル及びそのノズルを使用した槽内異物除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の槽内異物除去装置の構成説明図であって、側方から槽内異物除去装置を見た図である。
【図2】本発明の槽内異物除去装置の構成説明図であって、上方から槽内異物除去装置を見た図である。
【図3】(a)は、図2のIII−III断面に相当する模式断面図、(b)は、(a)に示す槽の底部の部分拡大図である。
【図4】本発明のノズルの斜視図である。
【図5】(a)は、図4のVa−Va断面図、(b)は、図4のVb−Vb断面図、(c)は、ノズルの裏面図、(d)は、ノズルの正面図である。
【図6】分配管に取り付けられたノズルの側部断面図であり、図2のIV−IV断面に相当する図である。
【図7】ノズルから噴射される噴射流の様子を平面視で示す模式図である。
【図8】槽の底部に形成されたガイド溝において、ノズルから噴射される噴射流が流れる様子を示す概念図であり、上方から槽の底部を見た部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について図を参照しながら詳細に説明する。本発明のノズルは、後記するように、液体中で噴射方向の異なる噴射流を少なくとも2方向に同時に形成することによって噴射流の直進性を向上させたことを主な特徴とし、本発明の槽内異物除去装置は、このノズルを備えたことを主な特徴とする。ここでは槽内異物除去装置及びノズルの順番で説明する。
【0016】
(槽内異物除去装置)
図1に示すように、槽内異物除去装置20は、液体Lを貯留した槽9の底部に沈降した異物(図示省略。以下に同じ)を除去するものである。ここでの液体Lは、ワークWを浸漬して所定の処理を行うものであって、ワークWの種類及びこのワークWに施す処理に応じて適宜に変更することができる。ちなみに、本実施形態では、ワークWが自動車の車体であって、液体LがワークWの洗浄液である槽内異物除去装置20について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。したがって、本発明は、ワークWを液体Lに浸漬することで槽9の底部に異物が沈降する処理を行うものの全てに適用することができる。
【0017】
槽内異物除去装置20は、槽9の底部に設けられたホッパ11(捕集部)と、槽9の底部に複数配置された後記するノズル1(図2参照)と、ホッパ11を介して槽9から抜き出した異物及び液体Lのうち、液体Lのみを分離してノズル1に送り込む循環経路22とを備えている。
【0018】
槽9の上方には、ワークWを吊り下げた状態で搬送する搬送コンベア13が配置されている。この搬送コンベア13は、槽9の一端側から他端側に向かう搬送方向Tに沿ってワークWを移動する際に、ワークWを下降させるようになっており、下降したワークWは槽9の一端から他端に向かって液体L中を移動するようになっている。
【0019】
槽9の底部には、ホッパ11と、略水平な水平部14aと、搬送方向Tに向かって上り勾配となる傾斜部14bとが、搬送方向Tの上流側から下流側に向かって、この順番で形成されている。
【0020】
前記したホッパ11は、槽9に貯留した液体L中で沈降した異物を捕集するものである。このホッパ11は、上方に開いた漏斗形状を呈しており、その下部には循環経路22(後記する槽外配管22a)の一端が接続されている。
【0021】
図2に示すように、槽9の底部を構成する水平部14a及び傾斜部14bには、相互に平行な4つのガイド溝15が形成されている。ガイド溝15は、前記した搬送方向Tに沿って延在しており、その一端がホッパ11に接続されている。
【0022】
ガイド溝15は、図3(a)及び(b)に示すように、断面視で上に凹となる円弧状を呈しており、互いに隣接するもの同士で共有する側縁15aが上方に突出している。ちなみに、本実施形態におけるガイド溝15の断面形状は、円形状の下側部分であって深さHが円形状の半径以下の部分、又は短径方向を上下方向となるように置いた楕円形状の下側部分であって深さHが楕円形状の短径の半分以下の部分に相当するものが望ましい。なお、楕円形状は、短径に対する長径の比(長径/短径)が1を超え、8以下となるものが望ましい。なお、図3(a)中、符号9は槽であり、符号Lは槽9に貯留された液体である。
【0023】
複数のガイド溝15を有する槽9(図3(a)参照)の底部は、例えば鋼板部材16(図(b)参照)をプレス成形して得ることができる。なお、図3(b)中の符号17は、プレス成形された鋼板部材16の外郭を裏面側から補強する補強部材を示す。
【0024】
前記した循環経路22は、図1及び図2に示すように、槽外配管22aと、水平供給管22bと、傾斜供給管22cと、分配管19とを備えている。
【0025】
槽外配管22aは、図1に示すように、その一端がホッパ11の下部に接続されると共に、他端は二股に分かれて傾斜供給管22cと水平供給管22bとに連通するようにそれぞれ接続されている。この槽外配管22aには、フィルタ23と、循環ポンプ21とが配置されている。フィルタ23は、ホッパ11を介して槽9から抜き出された異物及び液体Lのうち液体Lのみを分離する(通過させる)と共に、異物を所定の経路で廃棄するようになっている。循環ポンプ21は、ホッパ11を介して槽9から異物及び液体Lを抜き出し、且つフィルタ23で分離した液体Lを、槽外配管22aを介して傾斜供給管22cと水平供給管22bとに送り出すようになっている。
【0026】
図2に示すように、水平供給管22bは水平部14aの幅方向の側部に沿うように配置されており、傾斜供給管22cは傾斜部14bの幅方向の側部に沿うように配置されている。ちなみに、水平供給管22bの両端及び傾斜供給管22cの両端はそれぞれ封止されている。
【0027】
分配管19は、図2に示すように、槽9の底部で幅方向(ガイド溝15の幅方向)に延びるように複数配置されており、分配管19の一端は傾斜供給管22c又は水平供給管22bと連通するように接続されると共に、他端は封止されている。なお、本実施形態における傾斜供給管22cには2本の分配管19がガイド溝15の延在方向に所定の間隔をあけて配置されており、水平供給管22bには5本の分配管19がガイド溝15の延在方向に所定の間隔をあけて配置されている。ちなみに、各分配管19は、図3(a)に示すように、ガイド溝15の側縁15aの突出部に当接するように配設されている。図3(b)中、分配管19の図示は省略している。
【0028】
このような各分配管19には、図2に示すように、複数のノズル1が配置されている。本実施形態での分配管19には、ガイド溝15の数に対応して分配管19ごとに4つずつ配置されている。更に具体的に説明すると、ノズル1は、図2及び図3(a)に示すように、各ガイド溝15の幅方向の中央部の上方に位置する部位に取り付けられている。そして、ノズル1は、後記するように、ホッパ11側に向けて噴射流を形成するように配置されている。
【0029】
(ノズル)
図4に示すように、ノズル1は、分配管19(図2参照)に取り付けられる後半体1aと、噴射孔5が形成される前半体1bとを備えている。なお、以下の説明での前後上下方向は、分配管19に取り付けた状態でホッパ11(図2参照)側を前方とし、槽9(図3(a)参照)の液体Lの表面(液面)側を上方とした図6の前後上下方向を基準としている。
【0030】
ノズル1の後半体1aは円筒形状となっており、その後部には分配管19に取り付けるための、ねじ1cが形成されている。この後半体1aの内側には、分配管19(図2参照)を介して供給される液体L(図2参照)が流通する流通孔3が形成されている。
【0031】
前半体1bは、図5(a)に示すように、平面視で、前方に向かうにつれて後半体1aよりもその幅が広がる略扇形状を呈している。そして、図5(b)に示すように、側面視での前半体1bは、後半体1aの外径と略同じ厚さで前方に延びるように形成されている。
【0032】
前半体1bには、前記したように、3つの噴射孔5が形成されており、具体的には、特許請求の範囲にいう「第1の噴射孔」に相当する噴射孔5aと、「第2の噴射孔」に相当する噴射孔5b及び噴射孔5cとが形成されている。
【0033】
これらの噴射孔5a,5b,5cは、図5(a)、(b)及び(c)に示すように、後半体1aに形成された流通孔3の前端から分岐するとともに、図5(a)、(b)及び(d)に示すように、前半体1bを貫通して、その前端面S1に先端開口Ma,Mb,Mcを形成している。なお、流通孔3から噴射孔5a,5b,5cに分岐する境界面S2(図5(b)及び(c)参照)は、ノズル1の前方に向かって凸となる球面で構成されている。
【0034】
次に、噴射孔5a,5b,5cについて更に詳しく説明する。
噴射孔5a,5b,5cは、図5(a)に示すように、平面視で、噴射孔5aの両側に噴射孔5b及び噴射孔5cが並んで延びるように配置されると共に、前半体1bの後側から前側に向かって、言い換えれば、噴射孔5a,5b,5cの基端側から先端側に向かって、相互に開くように扇状に配置されている。
【0035】
噴射孔5aは、図5(a)及び(b)に示すように、直線状に形成されている。更に詳しく説明すると、後半体1aに形成された流通孔3の延在方向と同じ方向に向かって直線状に延在している。ちなみに、図5(c)に示すように、流通孔3から噴射孔5a,5b,5cが分岐する境界面S2においては、噴射孔5a,5b,5cの各基端は、ノズル1の後側から境界面S2を見た場合に、互いに正三角形を形成する頂点の位置に設けられている。そして、互いに水平に並ぶ噴射孔5bの基端,及び噴射孔5cの基端に対して、噴射孔5aの基端は上方の頂点に位置している。
【0036】
噴射孔5b及び噴射孔5cは、図5(a)及び(b)に示すように、噴射孔5aよりも下方で噴射孔5aと並んで直線状に延びる途中で、鈍角で上方に屈曲して更に直線状に延びている。この屈曲角度θは、90度<θ<180度を満足する角度であればよいが、170度以上、172度以下が望ましく、171度が特に望ましい。
【0037】
そして、図5(d)に示すように、本実施形態における噴射孔5aの先端開口Maは、噴射孔5b,5cの先端開口Mb,Mcよりも上方に位置している。
【0038】
このようなノズル1は、図6に示すように、噴射孔5aが槽9の底部に対して斜めに噴き付ける第1の噴射流Faを形成するように、底部に対して所定の角度αをなすように傾けて分配管19(図2参照)に取り付けられる。この角度αは、20度から25度が望ましい。
つまり、以上説明したノズル1は、噴射孔5aが槽9の底部に対して斜めに噴き付ける第1の噴射流Faを形成すると共に、噴射孔5b,5cが第1の噴射流Faよりも、槽9の底部に対して浅い角度となる方向に第2の噴射流Fb,Fcを形成するようになっている。
【0039】
次に、本実施形態に係るノズル1を使用した槽内異物除去装置20の動作について説明する。
図1に示すように、ワークWが液体Lに浸漬されて移動する際にワークWに所定の処理(洗浄等)が施される。この際、ワークWに付着した鉄粉、スパッタ等の異物は槽9の底部に沈降していく。
【0040】
図1に示す循環ポンプ21を起動すると、ホッパ11内にある異物は液体Lと一緒になってホッパ11の下部から槽外配管22aに導き入れられる。そして、フィルタ23で異物と分離された液体Lは、槽外配管22aを介して水平供給管22b及び傾斜供給管22cに供給される。水平供給管22b及び傾斜供給管22cに液体Lが供給されると、図2に示す各分配管19を介して各ノズル1から液体L(図2中、省略)が噴射される。
【0041】
この際、図7に示すように、ノズル1の噴射孔5a,5b,5cは、平面視で相互に開くように扇状に配置されているので、前記した液体L(図7中、省略)の噴射方向Da,Db,Dcも平面視で扇状に開くこととなる。そして、各噴射方向Da,Db,Dcに噴射された液体Lは、主に周囲の液体Lを巻き込む誘引流を形成する。そのため、噴射孔5aは、その噴射孔5aの先端開口Ma(図5(d)参照)よりも拡径した第1の噴射流Faを形成し、噴射孔5b,5cは、その噴射孔5b,5cの先端開口Mb,Mc(図5(d)参照)よりも拡径した第2の噴射流Fb,Fcをそれぞれ形成する。
【0042】
その一方で、ノズル1は、図6を参照して前記したように、第1の噴射流Faよりも浅い角度となる方向に第2の噴射流Fb,Fcを形成するので、槽9の底部に斜めに噴き付けられて底部で反射する第1の噴射流Faは、第2の噴射流Fb,Fcによって槽9の底部側に押さえ込まれる。その結果、このノズル1は、第1の噴射流Fa及び第2の噴射流Fb,Fcが協働することによって槽9の底部に沿って流れる直進性に優れた合成噴射流Fxを形成するので、槽9の底部に堆積した異物の巻き上げを抑制する。この合成噴射流Fxは、図7に示すように、第1の噴射流Faに対して第2の噴射流Fb,Fcがオーバーラップする領域であって、且つ第1の噴射流Faが槽9の底部に噴き付けられた後に反射する位置P(図6を併せて参照)よりも前方に形成されることとなる。
【0043】
そして。図8に示すように、ノズル1がガイド溝15の幅方向の略中央に配置された槽内異物除去装置20では、直進性に優れた合成噴射流Fxが円弧状のガイド溝15の底部に沿って前方に、つまりホッパ11(図2参照)側に向かって流れる。
その一方で、第1の噴射流Faに干渉しなかった第2の噴射流Fb,Fcは、それぞれガイド溝15の幅方向の外側に向かって広がりながら前方に流れて、一旦ガイド溝15の底部に噴射される。その後、底部で反射した第2の噴射流Fb,Fcは、ガイド溝15の円弧状の断面形状に沿うように更に幅方向の外側に向かって流れて、上方に突出したガイド溝15の側縁15aに案内されることで、この側縁15aに沿って前方に向かって流れることとなる。
【0044】
その結果、ガイド溝15の底部に沈降した異物は、ホッパ11に向かって移動する。そして、ホッパ11に捕集された異物は、液体Lと一緒になってホッパ11の下部から槽外配管22aに導き入れられると共に、分離された液体Lは、前記したと同様に、循環経路22を介してノズル1に還流される。そして、異物は前記したようにフィルタ23から所定の経路で廃棄される。
【0045】
以上のようなノズル1によれば、槽9の底部に対して第1の噴射流Faが斜めに噴射されることによって、底部に沈降した異物は第1の噴射流Faの流れる方向に移動する。そして、槽9の底部で反射した第1の噴射流Faは、この第1の噴射流Faよりも浅い角度となる方向に噴射される第2の噴射流Fb,Fcによって押さえ込まれる。その結果、底部で反射した第1の噴射流Faとこれを押さえ込む第2の噴射流Fb,Fcとの協働で形成された合成噴射流Fxは、直進性に優れる。そして、この合成噴射流Fxは、槽9の底部に沿うように流れるので、底部に堆積した異物が巻き上がることを防止する。
【0046】
また、このノズル1によれば、噴射孔5aの先端開口Maが、噴射孔5b,5cの先端開口Mb,Mcよりも上方に位置しているので、例えば、先端開口Maが、先端開口Mb,Mcとが横一列に並んだものと比較して、上下に厚い合成噴射流Fxを形成することができる。したがって、この合成噴射流Fxは異物を効率よくホッパ11に移動することができる。
【0047】
また、このノズル1によれば、噴射孔5a,5b,5cが平面視で扇状に開いているので、平行に並ぶ噴射孔5a,5b,5cよりも横方向に広い合成噴射流Fxを形成することができる。したがって、この合成噴射流Fxは異物を効率よくホッパ11に移動することができる。
【0048】
また、このノズル1では、噴射孔5b,5cを、延びる途中で鈍角に屈曲させることによって、第2の噴射流Fb,Fcの噴射方向を変えているので、例えば基端より前端まで直線状であって流路の延びる方向で噴射方向を変えたものと比較して、流路長さが同じであっても、より急角度な噴射方向に設定することができる。その結果、このノズル1によれば、噴射角度の設定幅が広がるので、レイアウトの自由度が広がる。
【0049】
また、このノズル1によれば、噴射孔5b,5cが屈曲しているので、噴射孔5b,5c内の屈曲部分の外側では液体Lの流通経路が長くなっており流通する液体Lの速度を速めることができる。
【0050】
以上のようなノズル1を備えた槽内異物除去装置20によれば、ホッパ11に異物を移動させる噴射流(合成噴射流Fx)の直進性に優れ、しかも噴射流(合成噴射流Fx)が異物を巻き上げることを防止するので、従来のノズル(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)を備えた槽内異物除去装置と比較して、槽9内から異物を効率よく除去することができる。
【0051】
また、この槽内異物除去装置20によれば、ノズル1の形成する噴射流(合成噴射流Fx)が上下に厚く、横方向に広いので、槽9内から異物を一段と効率よく除去することができる。
【0052】
また、この槽内異物除去装置20では、ホッパ11に向かって延在する断面視で円弧状のガイド溝15を槽9の底部に備えると共に、このガイド溝15の幅方向の略中央部にノズル1が配置されているので、ノズル1から噴射される第1の噴射流Fa、第2の噴射流Fb,Fc、及び合成噴射流Fxを、より効率的にホッパ11に導くことができる。したがって、この槽内異物除去装置20によれば、槽9内から異物を一段と効率よく除去することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記実施形態では、4つのガイド溝15を有する槽内異物除去装置20について説明したが、ガイド溝15は3つ以下、又は5つ以上であってもよい。また、ガイド溝15を有するものが望ましいが、本発明は槽9の底部にガイド溝15を有しない、例えば平坦な底部を有する槽内異物除去装置20であってもよい。
【0054】
また、本発明は、ガイド溝15の断面形状が円弧状のものが望ましいが、ガイド溝15の断面形状は多角形であってもよい。
【0055】
前記実施形態におけるノズル1の噴射孔5b,5cは、延びる途中で鈍角に屈曲することによって噴射方向を変えているが、本発明は噴射孔5b,5cが延びる途中で湾曲することによって噴射方向を変えたものであってもよい。また、本発明は、基端より前端まで直線状の噴射孔5b,5cであって流路の延びる方向で噴射方向を変えたものであってもよい。
【0056】
また、前記実施形態では、噴射孔5a(第1の噴射孔)と、噴射孔5b,5c(第2の噴射孔)とを有するノズル1について説明したが、本発明は少なくとも第1の噴射孔と、これに隣接するように配置された第2の噴射孔とを有していれば、その数に制限はなく、例えば、噴射孔5aと、噴射孔5b及び噴射孔5cのいずれか一方を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 ノズル
1a 後半体
1b 前半体
5 噴射孔
5a 噴射孔
5b 噴射孔
5c 噴射孔
9 槽
11 ホッパ(捕集部)
14a 水平部
14b 傾斜部
15 ガイド溝
15a 側縁
19 分配管
20 槽内異物除去装置
22 循環経路
22a 槽外配管
22b 水平供給管
22c 傾斜供給管
S1 前端面
S2 境界面
Fa 第1の噴射流
Fb 第2の噴射流
Fc 第2の噴射流
Fx 合成噴射流
L 液体
Ma 先端開口
Mb 先端開口
Mc 先端開口
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留した槽内で噴射流を形成するノズルであって、
前記槽の底部に対して斜めに噴き付ける第1の噴射流を形成する第1の噴射孔と、
前記第1の噴射流よりも、前記槽の底部に対して浅い角度となる方向に第2の噴射流を形成する第2の噴射孔と、
を備えることを特徴とするノズル。
【請求項2】
前記第1の噴射孔は、直線状に延設されており、
前記第2の噴射孔は、前記第1の噴射孔よりも下方で前記第1の噴射孔と並んで直線状に延びる途中で、鈍角で上方に屈曲して更に直線状に延びていると共に、第1の噴射孔の先端開口の位置は、第2の噴射孔の先端開口の位置よりも上方に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
平面視で、前記第1の噴射孔の両側に前記第2の噴射孔が並んで延びるように配置されると共に、前記第1の噴射孔及び前記第2の噴射孔は、基端側から先端側に向かって相互に開くように扇状に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のノズル。
【請求項4】
液体を貯留した槽の底部に沈降した異物を除去する槽内異物除去装置であって、
前記槽の底部に設けられた前記異物の捕集部と、
前記槽の底部に配置されて前記捕集部に向けて前記異物を移動させる噴射流を形成するノズルと、
前記捕集部を介して前記槽から抜き出した前記異物及び前記液体のうち、前記液体のみを分離して前記ノズルに送り込む循環経路と、
を備え、
前記ノズルは、前記槽の底部に対して斜めに噴き付ける第1の噴射流を形成する第1の噴射孔と、
前記第1の噴射流よりも、前記槽の底部に対して浅い角度となる方向に第2の噴射流を形成する第2の噴射孔と、
を有していることを特徴とする槽内異物除去装置。
【請求項5】
前記底部には、前記捕集部に向かって延在して一端が前記捕集部に接続される断面視で円弧状のガイド溝が形成され、前記ガイド溝の幅方向の略中央部に前記ノズルが配置されることを特徴とする請求項4に記載の槽内異物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−184207(P2010−184207A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30609(P2009−30609)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(501141769)株式会社industria (29)
【Fターム(参考)】