説明

ノズル外観検査装置、およびノズル外観検査方法

【課題】ノズル穴に生じる欠陥の種類を特定可能なノズル外観検査装置、およびノズル外観検査方法を提供すること。
【解決手段】ノズル外観検査装置100は、ノズル穴の開口部の画像を取得する画像入力手段60と、画像の二値化画像を生成する二値化手段61と、二値化画像からノズル穴の内輪郭および外輪郭を検出する輪郭検出手段62と、内輪郭の近似円である内輪郭近似円および外輪郭の近似円である外輪郭近似円を算出する近似円算出手段63と、内輪郭および外輪郭と内輪郭近似円および前記外輪郭近似円とを比較して、内輪郭および外輪郭の形状の特徴を示す特徴フラグを内輪郭および外輪郭上の各点に対して設定するフラグ設定手段64と、特徴フラグに基づいて欠陥の種類を示す欠陥フラグを設定し、欠陥の種類とその位置を検出する欠陥検出手段65と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルを撮像した画像を処理することで、ノズル穴の輪郭形状欠陥を検出するノズル外観検査装置、およびノズル外観検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノズルを有する基板として、インクジェットプリンターのインクジェットヘッドに用いられるノズルプレートが知られている。このノズルプレートにおけるノズル穴の輪郭形状に欠陥があると液状材料を液滴として吐出する際に不具合が生じるため、ノズルプレートの製造後に、ノズル穴の輪郭形状欠陥の有無を検出する処理が行われている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の方法では、基板の貫通部の撮像画像とこの撮像画像から求められる近似曲線とを比較することで、貫通部に付着しているカエリと称する金属製のバリの大きさを定量的に把握している。
【0004】
特許文献2に記載の方法では、ノズル穴形状の撮像画像と、予め記憶してあるノズル穴形状パターンとを比較することで、ノズル穴が所定の形状を有しているかどうかを検査している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−111695号公報
【特許文献2】特開平10−100415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および2に記載の方法では、欠陥の有無を抽出することはできるものの、その欠陥がどのような種類であるかを特定することはできない。ノズル穴に生じる欠陥の種類としては、カケ、チッピング、ノリ残りが挙げられ、これらのうちいずれの欠陥かを特定するためには人が目視で検査を行っており、人件費等多額の費用が必要となってしまう。また、欠陥の種類を特定するには非常に細かい作業が多く熟練された技術を要するため、人材育成も追いつかない状況である。このように、人の目視による検査では増産への対応が困難となっている。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みて、ノズル穴に生じる欠陥の種類を特定可能なノズル外観検査装置、およびノズル外観検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のノズル外観検査装置は、ノズル穴の開口部を撮像して、画像を取得する撮像手段と、取得した前記画像を、輝度閾値に対して二値化した二値化画像を生成する二値化手段と、前記二値化画像に基づいて、前記ノズル穴の内輪郭および外輪郭を検出する輪郭検出手段と、前記内輪郭の近似円である内輪郭近似円、および前記外輪郭の近似円である外輪郭近似円を算出する近似円算出手段と、前記二値化画像における前記内輪郭および前記外輪郭と前記内輪郭近似円および前記外輪郭近似円とを比較して、前記内輪郭および前記外輪郭の形状の特徴を抽出し、前記内輪郭上の各点および前記外輪郭上の各点に対して、前記特徴を示す特徴フラグを設定するフラグ設定手段と、前記特徴フラグに基づいて、前記内輪郭上の各点および前記外輪郭上の各点に対して、欠陥の種類を示す欠陥フラグを設定し、前記欠陥フラグに基づいて、欠陥の種類とその位置を検出する欠陥検出手段と、を具備することを特徴とする。
【0009】
この発明では、撮像手段によりノズル穴の開口部を撮像した画像を二値化処理して二値化画像を生成し、この二値化画像に基づいてノズル穴の内輪郭および外輪郭を検出し、検出した内輪郭と外輪郭に基づいてそれぞれの近似円を求める。フラグ設定手段は、内輪郭および外輪郭とそれらの近似円とを比較することで、検査対象となるノズル穴の輪郭形状の特徴を抽出して特徴フラグを設定する。特徴フラグは、内輪郭および外輪郭上の各点に設定される。欠陥検出手段は、設定された特徴フラグに基づいて、欠陥の種類を示す欠陥フラグを設定することで欠陥の種類を検出し、欠陥フラグが設定された点から欠陥の位置を検出する。
このように、ノズル穴の輪郭形状の特徴に応じて欠陥の種類を特定することができる。また、ノズル穴の輪郭上の各点に欠陥フラグを設定するため、その欠陥が発生している位置も特定することができる。したがって、本発明のノズル外観検査装置を用いれば人による目視の検査を必要としないため、人件費の削減および大量生産を行うことができる。
【0010】
本発明のノズル外観検査装置において、前記フラグ設定手段は、前記内輪郭上の点のうち、前記内輪郭近似円の円周から前記ノズル穴の外周側に第一距離以上離れた点に第一特徴フラグを設定し、前記内輪郭上の点のうち、前記内輪郭近似円の円周から前記ノズル穴の外周側に第一距離より大きい第二距離以上離れた点に第二特徴フラグを設定し、前記内輪郭上の点のうち、前記内輪郭近似円の円周から前記ノズル穴の内周側に第三距離以上離れた点に第三特徴フラグを設定し、前記外輪郭上の点のうち、前記外輪郭近似円の円周から前記ノズル穴の外周側に第四距離以上離れた点に第四特徴フラグを設定し、前記内輪郭近似円の中心点から仮想半直線を引き、この仮想半直線と前記内輪郭との交点を第一内輪郭点、前記仮想半直線と前記外輪郭との交点を第一外輪郭点とした際、前記第一内輪郭点と前記第一外輪郭点との距離が第五距離以上である場合に、前記第一内輪郭点および前記第一外輪郭点に第五特徴フラグを設定し、前記第一内輪郭点および前記第一内輪郭点の中点を中心とした1辺が第六距離である矩形領域内において、前記第一外輪郭点の輝度値との差の分散が第一分散閾値以上となる場合に、前記第一内輪郭点および前記第一外輪郭点に第六特徴フラグを設定し、前記第一内輪郭点および前記第一外輪郭点を結ぶ線分上の輝度の平均値を算出し、前記内輪郭上の点のうち、前記第一内輪郭点の両側に位置する所定の数の点において、前記輝度の平均値との差の分散が第二分散閾値以上となる場合に、前記第一内輪郭点および前記第一外輪郭点に第七特徴フラグを設定し、かつ、前記輝度の平均値との差の分散が第三分散閾値以上となる場合に、前記第一内輪郭点および前記第一外輪郭点に第八特徴フラグを設定し、前記欠陥検出手段は、欠陥フラグ設定手段と欠陥特定手段とを有し、前記欠陥フラグ設定手段は、前記内輪郭近似円の中心点に対して、前記特徴フラグが設定された点が連続する範囲の角度をそれぞれ取得し、前記第六特徴フラグの範囲が第一角度以上、かつ前記第八特徴フラグの範囲が第二角度以上、かつ前記第六特徴フラグの範囲および前記第八特徴フラグの範囲が重複している場合に、前記第六特徴フラグの範囲および前記第八特徴フラグの範囲が重複する範囲にカケの可能性が大きいカケ欠陥フラグを設定し、前記第六特徴フラグの範囲が第一角度以上、かつ前記第八特徴フラグの範囲が第二角度未満、かつ前記第六特徴フラグの範囲および前記第八特徴フラグの範囲が重複している場合に、前記第六特徴フラグの範囲にカケの可能性が少なからずあることを示す小カケ欠陥フラグを設定し、前記第二特徴フラグの範囲が第三角度以上、かつ前記第四特徴フラグの範囲が第四角度以上、かつ前記第二特徴フラグの範囲および前記第四特徴フラグの範囲が重複している場合に、前記第二特徴フラグの範囲および前記第四特徴フラグの範囲が重複する範囲にチッピングの可能性が大きいチッピング欠陥フラグを設定し、前記第五特徴フラグの範囲が第五角度以上である場合に、ノリ残りの可能性が大きいノリ欠陥フラグを設定し、前記第一特徴フラグの範囲が第六角度以上、かつ前記第七特徴フラグの範囲が第七角度以上、かつ前記第一特徴フラグの範囲および前記第七特徴フラグの範囲が重複している場合に、前記第一特徴フラグの範囲および前記第七特徴フラグの範囲が重複する範囲に微小欠陥の可能性が大きい微小欠陥フラグを設定し、前記第六特徴フラグの範囲が第八角度以上、かつ前記第四特徴フラグの範囲が第九角度以上、かつ前記第六特徴フラグの範囲および前記第四特徴フラグの範囲が重複している場合に、欠陥の可能性がある他欠陥フラグおよびチッピングの可能性が少なからずあることを示す小チッピング欠陥フラグを設定し、前記欠陥特定手段は、設定された前記欠陥フラグに基づいて、欠陥の種類とその位置を特定することが好ましい。
【0011】
ここで検出可能な欠陥の種類としては、カケ、チッピング、ノリ残りである。
この発明では、内輪郭上の点に設定された特徴フラグに基づいて欠陥フラグを設定し、欠陥の種類を特定している。具体的には、角度方向の輝度変化が大きく、かつ、内輪郭上の隣接する複数の点における輝度変化が特に大きい場合はカケである。また、内輪郭、外輪郭ともに近似円より外側に特に突出し、かつ、外輪郭上の点が近似円より外側に突出している場合はチッピングである。また、内輪郭と外輪郭の間の厚みが大きい場合はノリ残りである。
このように、複数の特徴の組み合わせにより欠陥を特定するため、ノズル穴に生じる欠陥を精度よく検出することができる。
なお、第一距離から第六距離、第一角度から第九角度、第一分散閾値から第三分散閾値は、それぞれ予め定められた値であり、検査の目的や所望の精度に応じて適宜設定すればよい。
【0012】
本発明のノズル外観検査装置において、前記欠陥フラグ設定手段は、前記他欠陥フラグの範囲について、前記カケ欠陥フラグと重複する場合は、前記他欠陥フラグの範囲の前記他欠陥フラグを前記カケ欠陥フラグに置き換え、前記他欠陥フラグの範囲について、前記カケ欠陥フラグと重複せず前記チッピング欠陥フラグと重複する場合は、前記他欠陥フラグの範囲の前記他欠陥フラグを前記チッピング欠陥フラグに置き換え、前記他欠陥フラグの範囲について、前記カケ欠陥フラグおよび前記チッピング欠陥フラグと重複せず前記ノリ欠陥フラグと重複する場合は、前記他欠陥フラグの範囲の前記他欠陥フラグを前記ノリ欠陥フラグに置き換え、前記他欠陥フラグの範囲について、前記カケ欠陥フラグ、前記チッピング欠陥フラグ、および前記ノリ欠陥フラグのいずれとも重複せず、前記他欠陥フラグの範囲から第十二角度以内の位置に前記チッピング欠陥フラグ、および前記ノリ欠陥フラグのいずれかが存在している場合は、前記位置までの角度の隔たりが最も小さい欠陥フラグで前記他欠陥フラグを置き換えることが好ましい。
【0013】
この発明では、何らかの欠陥の可能性がある範囲にカケの可能性が大きい範囲が重複している場合は、何らかの欠陥の可能性がある範囲はカケの一部である可能性が大きいため、カケ欠陥フラグとして扱う。また、何らかの欠陥の可能性がある範囲にカケではなくチッピングの可能性が大きい範囲が重複している場合は、何らかの欠陥の可能性がある範囲はチッピングの一部である可能性が大きいため、チッピング欠陥フラグとして扱う。また、何らかの欠陥の可能性がある範囲にカケでもチッピングでもなくノリ残りの可能性が大きい範囲が重複している場合は、何らかの欠陥の可能性がある範囲はノリ残りの一部である可能性が大きいため、ノリ残り欠陥フラグとして扱う。
このように、特徴フラグだけでは欠陥を特定できなかった範囲の欠陥を特定することができるため、精度よく欠陥の種類を特定することができる。また、一つの欠陥フラグのみでは欠陥の特定が困難な箇所であっても、その欠陥の範囲に重複する他の欠陥の可能性により、欠陥の種類を特定できる。
【0014】
本発明のノズル外観検査装置において、前記欠陥フラグ設定手段は、前記カケ欠陥フラグが連続する第一カケ範囲について、この第一カケ範囲から第七距離以内の位置に前記カケ欠陥フラグが設定された第二カケ範囲が存在し、かつ、前記第二カケ範囲が第八距離以上の場合は、前記第一カケ範囲と前記第二カケ範囲との間の範囲に前記カケ欠陥フラグを設定し、前記第二カケ範囲が前記第八距離未満の場合は、前記第二カケ範囲に設定された前記カケ欠陥フラグを削除することが好ましい。
【0015】
この発明では、2つのカケ欠陥フラグの範囲が第七距離以内の位置に存在する場合、両方のカケ欠陥フラグの範囲が第八距離以上であれば、両方のカケ欠陥フラグ範囲の間にもカケ欠陥フラグを設定し、一方の範囲が第八距離未満、すなわち狭い場合は、その一方の範囲のカケ欠陥フラグを削除する。なお、第七距離および第八距離は予め設定された値であり、その範囲に設定された欠陥フラグを削除しても問題ない程度に狭い範囲である。
これによれば、2つのカケ欠陥フラグの範囲が第七距離以内の位置に存在し、その間の短い範囲に異なる欠陥フラグが設定されている場合は、カケ欠陥フラグの範囲を繋げて一つの範囲としたり、一方の範囲を誤検出とみなしたりするので、カケ欠陥フラグの設定範囲の境界が明確になり、カケの位置を精度よく特定することができる。
【0016】
本発明のノズル外観検査装置において、前記欠陥フラグ設定手段は、前記チッピング欠陥フラグが連続する第一チッピング範囲について、この第一チッピング範囲から第七距離以内の位置に前記チッピング欠陥フラグが設定された第二チッピング範囲が存在し、かつ、前記第二チッピング範囲が第八距離以上の場合は、前記第一チッピング範囲と前記第二チッピング範囲との間の範囲に前記チッピング欠陥フラグを設定し、前記第二チッピング範囲が第八距離未満の場合は、前記第二チッピング範囲に設定された前記チッピング欠陥フラグを削除することが好ましい。
【0017】
この発明では、2つのチッピング欠陥フラグの範囲が第七距離以内の位置に存在する場合、両方のチッピング欠陥フラグの範囲が第八距離以上であれば、両方のチッピング欠陥フラグ範囲の間にもチッピング欠陥フラグを設定し、一方の範囲が第八距離未満、すなわち狭い場合は、その一方の範囲のチッピング欠陥フラグを削除する。なお、第七距離および第八距離は予め設定された値であり、その範囲に設定された欠陥フラグを削除しても問題ない程度に狭い範囲である。
これによれば、2つのチッピング欠陥フラグの範囲が近くに存在し、その間の短い範囲に異なる欠陥フラグが設定されている場合は、チッピング欠陥フラグの範囲を繋げて一つの範囲としたり、一方の範囲を誤検出とみなしたりするので、チッピング欠陥フラグの設定範囲の境界が明確になり、チッピングの位置を精度よく特定することができる。
【0018】
本発明のノズル外観検査装置において、前記欠陥フラグ設定手段は、前記ノリ欠陥フラグが連続する第一ノリ範囲について、この第一ノリ範囲から第七距離以内の位置に前記ノリ欠陥フラグが設定された第二ノリ範囲が存在し、かつ、前記第二ノリ範囲が第八距離以上の場合は、前記第一ノリ範囲と前記第二ノリ範囲との間の範囲に前記ノリ欠陥フラグを設定し、前記第二ノリ範囲が第八距離未満の場合は、前記第二ノリ範囲に設定された前記ノリ欠陥フラグを削除することが好ましい。
【0019】
この発明では、2つのノリ残り欠陥フラグの範囲が第七距離以内の位置に存在する場合、両方のノリ残り欠陥フラグの範囲が第八距離以上であれば、両方のノリ残り欠陥フラグ範囲の間にもノリ残り欠陥フラグを設定し、一方の範囲が第八距離未満、すなわち狭い場合は、その一方の範囲のノリ残り欠陥フラグを削除する。なお、第七距離および第八距離は予め設定された値であり、その範囲に設定された欠陥フラグを削除しても問題ない程度に狭い範囲である。
これによれば、2つのノリ残り欠陥フラグの範囲が近くに存在し、その間の短い範囲に異なる欠陥フラグが設定されている場合は、ノリ残り欠陥フラグの範囲を繋げて一つの範囲としたり、一方の範囲を誤検出とみなしたりするので、ノリ残り欠陥フラグの設定範囲の境界が明確になり、ノリ残りの位置を精度よく特定することができる。
【0020】
本発明のノズル外観検査装置において、前記欠陥フラグ設定手段は、前記他欠陥フラグが連続する範囲について、前記小チッピング欠陥フラグと重複する場合は、前記他欠陥フラグが連続する範囲に設定された前記他欠陥フラグを削除することが好ましい。
【0021】
この発明では、他欠陥フラグと小チッピング欠陥フラグが重複する場合は他欠陥フラグを削除するため、欠陥の種類を精度よく検出することができる。また、他欠陥フラグと小チッピング欠陥フラグが重複する場合、欠陥である可能性が低いことを意味する。したがって、この範囲のフラグを削除することで、誤検出を防止することができる。
【0022】
本発明のノズル外観検査装置において、前記欠陥フラグ設定手段は、前記カケ欠陥フラグが連続する範囲について、前記チッピング欠陥フラグまたはノリ欠陥フラグと重複する場合は、前記カケ欠陥フラグが連続する範囲に設定された前記カケ欠陥フラグを削除することが好ましい。
【0023】
この発明では、カケ欠陥フラグの範囲であっても、チッピング欠陥フラグまたはノリ残り欠陥フラグの範囲と重複する場合は、周囲と比べて若干明るい部分を誤検出している可能性が高いため、この範囲はカケではないと判定する。これにより、カケと、チッピングまたはノリ残りと、を区別することができ、精度よく欠陥を検出することができる。
【0024】
本発明のノズル外観検査装置において、前記欠陥フラグ設定手段は、前記ノリ欠陥フラグが連続する範囲について、前記チッピング欠陥フラグと重複する場合は、前記ノリ欠陥フラグが連続する範囲に設定された前記ノリ欠陥フラグを削除することが好ましい。
【0025】
この発明において、チッピング欠陥フラグの範囲とノリ残り欠陥フラグの範囲とが重複するということは、内輪郭と外輪郭の間に大きな厚みがあり、かつ、内輪郭も外輪郭も外側に突出しているということである。これは、ノズル穴の内周側に膜状のものが残っている状態であり、これがノリ残りである可能性は低いため、ノリ残りの可能性を排除したものである。これによれば、チッピングとノリ残りとを区別することができ、精度よく欠陥を検出することができる。
【0026】
本発明のノズル外観検査装置において、前記欠陥フラグ設定手段は、前記カケ欠陥フラグ、前記小カケ欠陥フラグ、または前記微小欠陥フラグが連続する範囲について、前記カケ欠陥フラグの範囲の端部に前記小カケ欠陥フラグまたは前記微小欠陥フラグのうちいずれか一方のみが重複している場合は、前記カケ欠陥フラグの範囲に設定された前記カケ欠陥フラグを前記他欠陥フラグで置き換え、前記カケ欠陥フラグ、前記小カケ欠陥フラグ、または前記微小欠陥フラグが連続する範囲について、前記小カケ欠陥フラグと前記微小欠陥フラグとが重複する範囲はあるが、前記カケ欠陥フラグと重複する範囲がない場合は、前記小カケ欠陥フラグと前記微小欠陥フラグとが重複する範囲に前記他欠陥フラグを設定することが好ましい。
【0027】
この発明において、カケ欠陥フラグに小カケ欠陥フラグまたは微小欠陥フラグが重複していない場合は、チッピングの一部や小さなノリ残りをカケと誤判定している可能性があるが、実際に欠陥が存在している可能性を考慮して他欠陥フラグを設定している。また、小カケ欠陥フラグと微小欠陥フラグが重複し、カケ欠陥フラグが重複していない場合は、カケや小さなチッピングが存在している可能性を考慮して他欠陥フラグを設定している。
【0028】
本発明のノズル外観検査装置において、前記欠陥フラグ設定手段は、前記他欠陥フラグが連続する範囲について、前記第三特徴フラグが第十角度以上となる範囲と重複している場合は、前記他欠陥フラグが連続する範囲に設定された前記他欠陥フラグを前記カケ欠陥フラグで置き換え、前記他欠陥フラグが連続する範囲について、前記第五特徴フラグが第十一角度以下となる範囲と重複している場合は、前記他欠陥フラグが連続する範囲に設定された前記他欠陥フラグを前記ノリ欠陥フラグで置き換えることが好ましい。
【0029】
この発明では、他欠陥フラグの範囲において、内輪郭上の点が内側に突出している範囲と重複する場合はカケの可能性が高いため、カケ欠陥フラグを設定する。また、他欠陥フラグの範囲において、内輪郭と外輪郭との間の厚みが大きい部分の範囲が第十一角度以下の(狭い)場合は、小さなノリ残りである可能性が高い。
このように、他欠陥フラグをカケ欠陥フラグまたはノリ残り欠陥フラグに再設定することで、欠陥の種類を精度よく特定することができる。
なお、第十角度および第十一角度はそれぞれ予め定められた値であり、検査の目的や所望の精度に応じて適宜設定すればよい。
【0030】
本発明のノズル外観検査方法は、ノズル穴の開口部を撮像して、画像を取得する撮像工程と、取得した前記画像を、輝度閾値に対して二値化した二値化画像を生成する二値化工程と、前記二値化画像に基づいて、前記ノズル穴の内輪郭および外輪郭を検出する輪郭検出工程と、前記内輪郭の近似円である内輪郭近似円、および前記外輪郭の近似円である外輪郭近似円を算出する近似円算出工程と、前記二値化画像における前記内輪郭および前記外輪郭と前記内輪郭近似円および前記外輪郭近似円とを比較して、前記内輪郭および前記外輪郭の形状の特徴を抽出し、前記内輪郭上の各点および前記外輪郭上の各点に対して、前記特徴を示す特徴フラグを設定するフラグ設定工程と、前記特徴フラグに基づいて、前記内輪郭上の各点および前記外輪郭上の各点に対して、欠陥の種類を示す欠陥フラグを設定し、前記欠陥フラグに基づいて、欠陥の種類とその位置を検出する欠陥検出工程と、を実施することを特徴とする。
【0031】
この発明は、上記発明と同様に、ノズル穴に発生する欠陥の種類や位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係るノズル外観検査装置の構成を示すブロック図。
【図2】二値化画像の画像データの一例を示す図であり、(A)はカケ、(B)はチッピング、(C)はノリ残りを示す。
【図3】二値化画像に基づいて設定されるパラメーターを説明する図。
【図4】欠陥フラグを調整する方法を説明する図。
【図5】前記ノズル外観検査装置の動作を示すフローチャート。
【図6】前記ノズル外観検査装置の動作を示すフローチャート。
【図7】前記ノズル外観検査装置の動作を示すフローチャート。
【図8】前記ノズル外観検査装置の動作を示すフローチャート。
【図9】前記ノズル外観検査装置の動作を示すフローチャート。
【図10】前記画像データを画像処理した結果を示す図であり、(A)はカケ、(B)はチッピング、(C)はノリ残りを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔欠陥検出装置の構成〕
図1は本発明の一実施形態に係るノズル外観検査装置の構成を示すブロック図である。
ノズル外観検査装置100は、シリコンノズルプレートなどの被検査物1のノズル穴の輪郭形状欠陥、すなわち、ノズル穴の欠陥を検出するものであり、本実施形態では、カケ、チッピング、ノリ残りの欠陥を検出する。
そして、ノズル外観検査装置100は、XYステージ2、顕微鏡4、CCDカメラ5、制御装置6、表示装置7を備えて構成される。被検査物1は、XYステージ2上に載置され、平面的に移動可能に構成されている。
【0034】
顕微鏡4は、被検査物1を拡大してCCDカメラ5で撮影するために設けられており、被検査物1の欠陥を検出するために十分な倍率を有するものが用いられている。
CCDカメラ5は、顕微鏡4を介して被検査物1を撮影する撮像手段である。
制御装置6は、CCDカメラ5を制御し、被検査物1の欠陥を検出する画像処理手段である。
表示装置7は、制御装置6に接続された液晶ディスプレイなどの表示装置である。
【0035】
制御装置6は、例えばパーソナルコンピューターなどを用いることができ、CCDカメラ5により撮像された撮像画像を処理して、被検査物1の欠陥を検出する。そして、この制御装置6は、図1に示すように、画像入力手段60と、二値化手段61と、輪郭検出手段62と、近似円算出手段63と、フラグ設定手段64と、欠陥検出手段65と、を備えている。
ここで、制御装置6は、HDDやメモリーなどの図示しない記憶手段を備え、この記憶手段に記録されるプログラムとして上記二値化手段61と、輪郭検出手段62と、近似円算出手段63と、フラグ設定手段64と、欠陥検出手段65が記憶されている。そして、制御装置6に設けられる図示しないCPU(Central Processing Unit)により、記憶手段から適宜二値化手段61、輪郭検出手段62、近似円算出手段63、フラグ設定手段64、および欠陥検出手段65などのプログラムが読み出され、演算処理されることで、被検査物1におけるノズル穴の輪郭形状欠陥の検出処理が実行される。
なお、本実施形態では、上記のように、二値化手段61、輪郭検出手段62、近似円算出手段63、フラグ設定手段64、および欠陥検出手段65がプログラムとして記憶手段に記憶され、CPUにより適宜読み出されて処理が実行される構成を例示するが、これに限定されない。すなわち、二値化手段61、輪郭検出手段62、近似円算出手段63、フラグ設定手段64、および欠陥検出手段65は、ICチップなどの集積回路、その他ハードウェアにより構成され、画像入力手段60から入力される撮像画像の画像データを適宜信号処理することで欠陥を検出する構成としてもよい。
【0036】
画像入力手段60は、CCDカメラ5から撮像された図2に示すような撮像画像の画像データが入力され、その画像データを図示しない記憶手段に記憶する。
二値化手段61は、入力された画像データに対して、例えばメディアンフィルターを適用してノイズ成分を除去し、ノイズ成分を除去した画像に対して、所定輝度閾値で二値化処理し、二値化画像を生成する。ここで、二値化画像を図2に示す。図2(A)はAの部分にカケが生じた状態を示し、図2(B)はBの部分にチッピングが生じた状態を示し、図2(C)はCの部分にノリ残りが生じた状態を示している。
【0037】
輪郭検出手段62は、二値化画像における連結要素について画素数でふるいかけを行い、ノズル穴と思われる部分以外を削除し、その後残った連結要素について輪郭追跡を行い、ノズル穴の内輪郭と外輪郭を検出する。
近似円算出手段63は、二値化画像のノズル穴の内輪郭と外輪郭について、それぞれ内輪郭近似円ICと外輪郭近似円OCとを求め(図3参照)、各近似円の半径と中心座標を求める。
【0038】
フラグ設定手段64は、内輪郭上の各点および外輪郭上の各点に対して、以下の表1に示す特徴フラグを設定する。
具体的には、図3に示すように、内輪郭近似円ICまたは外輪郭近似円OCの円周からの距離に基づいた特徴フラグを設定する。図3には、内輪郭近似円ICと、内輪郭近似円ICより半径がdIOT(第一距離)長い円IOTと、内輪郭近似円ICより半径がdIO(第二距離)長い円IOと、内輪郭近似円ICより半径がdIU(第三距離)短い円IUと、外輪郭近似円OCと、外輪郭近似円OCより半径がdOO(第四距離)長い円OOと、が同心円状に描かれている。図3に示す図と二値化画像とを照合し、ノズル穴の内輪郭上の各点について、内輪郭近似円ICから外側にdIOT以上離れている点にFIOT(第一特徴フラグ)を設定し、内輪郭近似円ICから外側にdIO以上離れている点にFIO(第二特徴フラグ)を設定する。ここで、dIOT>dIOである。また、内輪郭近似円ICから内側にdIU以上離れている点にFIU(第三特徴フラグ)を設定する。さらに、外輪郭近似円OCから外側にdOO以上離れている点にFOO(第四特徴フラグ)を設定する。なお、dIOT、dIO、dIU、およびdOOは予め決められた値であり、検査の目的や所望の精度に応じて適宜設定すればよい。ここで、チッピングやノリ残りの場合は内輪郭が内輪郭近似円から外側に突出していることが多く、カケの場合は内輪郭が内側に突出していることが多いため、上記の特徴フラグにより、欠陥のおおよその範囲を推定することができる。
【0039】
また、ノズル穴の内輪郭上の点を点P(第一内輪郭点)とすると、内輪郭近似円の中心Oを始点とした半直線OPと交わる外輪郭上の点Q(第一外輪郭点)を求め、線分PQの中点をRとする。説明のために、図3の内輪郭近似円IC上に点Pを図示し、外輪郭近似円OC上に点Qを図示して説明するが、実際の点Pおよび点Qは内輪郭および外輪郭上の点である。線分PQの長さがL(第五距離)以上であれば、点PにF(第五特徴フラグ)を設定する。なお、Lは、予め設定された値であり、例えば、良品なノズル穴の内輪郭と外輪郭との間の厚みとすることができる。ここで、カケやノリ残りの場合は内輪郭と外輪郭の間の厚みが大きいことが多く、特にノリ残りではこの特徴が顕著である。
【0040】
また、二値化画像における点Rを中心とした1辺Lピクセルの矩形領域RE内の画素について、点Qとの輝度の差の分散がV(第一分散閾値)以上であれば、点PにF(第六特徴フラグ)を設定する。なお、LおよびVは予め決められた値であり、検査の目的や所望の精度に応じて適宜設定すればよい。ここで、カケのある部分は輝度の変化が大きいため、Fによりカケのおおよその範囲を推定することができる。
【0041】
また、線分PQ上の輝度の平均を求め、内輪郭上の点について、点Pから両側にN点分の輝度をそれぞれ求め、求めた輝度と線分PQ上の輝度の平均との差の分散を求める。すなわち、内輪郭の角度方向に隣接する画素の輝度の分散がVRT(第二分散閾値)以上であれば、点PにFRT(第七特徴フラグ)を設定する。さらに、分散がV(第三分散閾値)以上であれば、点PにF(第八特徴フラグ)も設定する。このとき、V>VRTである。なお、VRTおよびVは予め決められた値であり、検査の目的や所望の精度に応じて適宜設定すればよい。ここで、中点Rを中心とする矩形領域RE内での輝度の変化は、カケのある部分で大きくなると上述したが、チッピングやノリ残りでも大きくなる可能性はある。しかしながら、カケは、内輪郭の角度方向に隣接する画素の輝度の変化も大きくなるため、Fにより、カケとそれ以外の欠陥を区別することができる。
【0042】
【表1】

【0043】
欠陥検出手段65は、内輪郭上の各点および外輪郭上の各点に対して設定された特徴フラグに基づいて、欠陥フラグを設定する欠陥フラグ設定部651と、設定された欠陥フラグに基づいて欠陥の種類および位置を特定する欠陥特定部652と、を備えている。
欠陥フラグ設定部651は、内輪郭上の各点および外輪郭上の各点に対して設定された特徴フラグに基づいて、内輪郭上の各点および外輪郭上の各点に対して以下の表2に示す欠陥フラグを設定する。具体的には、内輪郭上の各点および外輪郭上の各点について、内輪郭近似円ICの中心を原点とした角度を求め、以下の条件に応じて欠陥フラグを設定する。
【0044】
特徴フラグFが設定された点が連続する範囲の角度がθ(第一角度)以上、かつ特徴フラグFが設定された点が連続する範囲の角度がθ(第二角度)以上であり、これらの範囲が重複している場合、特徴フラグFが設定された点が連続する範囲および特徴フラグFが設定された点が連続する範囲の各点にDkake(カケの可能性大)を設定する。また、特徴フラグFが設定された点が連続する角度の範囲がθ以上ではあるが、特徴フラグFが設定された点が連続する角度の範囲がθ以上でない場合、Fが連続して設定された点にD(カケの可能性小)を設定する。なお、θおよびθは予め決められた値であり、検査の目的や所望の精度に応じて適宜設定すればよい。すなわち、角度方向の輝度変化が大きく、局所領域内の輝度変化も大きい場合はカケの可能性が大きく、角度方向の輝度変化が大きく、局所領域内の輝度変化が小さい場合はカケの可能性が少なからずある。
【0045】
特徴フラグFIOが設定された点が連続する範囲の角度がθIO(第三角度)以上、かつ特徴フラグFOOが設定された点が連続する範囲の角度がθOO(第四角度)以上であり、これらの範囲が重複している場合、特徴フラグFIOが設定された点が連続する範囲および特徴フラグFOOが設定された点が連続する範囲の各点にDchip(チッピングの可能性大)を設定する。なお、θIOおよびθOOは予め決められた値であり、検査の目的や所望の精度に応じて適宜設定すればよい。すなわち、内輪郭と外輪郭がともに外側に突出している場合はチッピングの可能性が大きい。
特徴フラグFが設定された点が連続する範囲の角度がθ(第五角度)以上である場合、Fが設定された点にDnori(ノリ残りの可能性大)を設定する。なお、θは予め決められた値であり、検査の目的や所望の精度に応じて適宜設定すればよい。
【0046】
特徴フラグFIOTが設定された点が連続する範囲の角度がθIOT(第六角度)以上、かつ特徴フラグFRTが設定された点が連続する範囲の角度がθRT(第七角度)以上であり、これらの範囲が重複している場合、この重複した範囲の各点にD(微小欠陥の可能性あり)を設定する。なお、θIOTおよびθRTは予め決められた値であり、検査の目的や所望の精度に応じて適宜設定すればよい。すなわち、内輪郭が外側に若干突出し、多少の輝度変化もある場合には、何らかの微小な欠陥が存在する可能性がある。
【0047】
特徴フラグFIOTが設定された点が連続する範囲の角度がθIOT(第八角度)以上、かつ特徴フラグFOOが設定された点が連続する範囲の角度がθOO(第九角度)以上であり、これらの範囲が重複している場合、この重複した範囲の各点にD(欠陥の可能性あり)とD(チッピングの可能性小)を設定する。すなわち、内輪郭が外側に若干突出し、外輪郭が外側に大きく突出している場合は何らかの欠陥(主にチッピング)が存在する可能性がある。
【0048】
【表2】

【0049】
また、欠陥フラグ設定部651は、上述のようにして設定された欠陥フラグを調整し、再設定する。
具体的には、欠陥フラグDが設定された点が連続する範囲について、Dkakeと重複する場合はDをDkakeで置き換え、Dkakeと重複せずDchipと重複する場合はDをDchipで置き換え、DkakeおよびDchipと重複せずDnoriと重複する場合はDをDnoriで置き換える。また、DがDkake、Dchip、Dnoriのいずれとも重複しない場合は、Dが設定された点が連続する範囲からθ以内の角度だけ離れた位置にDkake、Dchip、Dnoriのいずれかが存在していれば、角度の隔たりが最も小さいフラグでDを置き換える。ここで、θは、Dの範囲とDkake、Dchip、Dnoriのいずれかの範囲との間を削除しても問題ない程度の小さい角度である。すなわち、欠陥の可能性がある範囲(D)と欠陥の可能性が大きい範囲(Dkake、Dchip、Dnori)が重複している場合、または、欠陥の可能性がある範囲(D)の近くに欠陥の可能性が大きい範囲(Dkake、Dchip、Dnori)がある場合は、可能性が大きい欠陥として扱う。
【0050】
また、欠陥フラグDkakeが設定された点が連続する第一範囲について、この第一範囲から第一所定角度(第七角度)だけ離れた位置にDkakeが設定された第二範囲が存在する場合、第一範囲と第二範囲との間の各点にDkakeを設定する。ただし、第二範囲が第二所定角度(第八角度)より小さい(非常に狭い)場合は、第二範囲の各点に設定されたDkakeを削除する。同様に、欠陥フラグDchipが設定された点が連続する第三範囲について、この第三範囲から第一所定角度だけ離れた位置にDchipが設定された第四範囲が存在する場合、第三範囲と第四位置との間の各点にDchipを設定する。ただし、第四範囲が第二所定角度より小さい(非常に狭い)場合は、第四範囲の各点に設定されたDchipを削除する。同様に、欠陥フラグDnoriが設定された点が連続する第五範囲について、この第五範囲から第一所定角度だけ離れた近い位置にDnoriが設定された第六範囲が存在する場合、第五範囲と第六範囲との間の各点にDnoriを設定する。ただし、第六範囲が第二所定角度より小さい(非常に狭い)場合は、第六範囲の各点に設定されたDnoriを削除する。ここで、第一所定角度は、第一範囲(または第三範囲、第五範囲)および第二範囲(または第四範囲、第六範囲)の間に設定された欠陥フラグを無視できる程度に十分小さい角度である。また、第二所定角度は、第二範囲に設定された欠陥フラグを無視できる程度に十分に小さい角度である。すなわち、同じ種類の欠陥が近くに存在する場合、その範囲の間もその欠陥の一部として扱う。ただし、欠陥の範囲が非常に狭い場合は誤検出として削除する。
【0051】
また、欠陥フラグDが設定された点が連続する範囲について、Dと重複する場合は、当該範囲の各点に設定されたDを削除する。すなわち、欠陥の可能性がある範囲に、チッピングの可能性が小さい範囲が重複する場合、その範囲に欠陥が存在する可能性はかなり低い。なお、欠陥フラグ設定部651による上述の処理において、D(欠陥の可能性あり)とD(チッピングの可能性小)を設定したが、チッピングの可能性が小さい場合は何らかの欠陥、特にチッピングやカケに隣接していることが多い。チッピングの可能性が小さい範囲と欠陥の可能性がある範囲とが重複する範囲が実際に欠陥である場合には、隣接する欠陥と統合される可能性が非常に高い。したがって、欠陥の可能性がそのまま残っているということは、近くに欠陥は存在しないということになる。
【0052】
また、欠陥フラグDkakeが設定された点が連続する範囲について、DchipまたはDnoriと重複する場合は、Dkakeを削除する。すなわち、カケの可能性が大きくても、チッピングの可能性が大きい、またはノリ残りの可能性が大きい場合は、周囲と比べて明るかったり暗かったりする部分を誤検出している可能性が高い。
また、欠陥フラグDnoriが設定された点が連続する範囲について、Dchipと重複する場合は、Dnoriを削除する。すなわち、内輪郭と外輪郭との間の厚みが大きく、内輪郭も外輪郭も外側に突出している場合は、ノズル穴の内側に膜状のものが残ってはいるものの、ノリ残りである可能性は非常に低い。
【0053】
また、欠陥フラグDkake、D、Dの範囲について、Dkakeの範囲の端部にD、Dのうちいずれか一方のみが重複している場合、すなわち図4(A)に示すような場合は、DkakeをDで置き換える。すなわち、カケの可能性の大きい範囲の近くにカケの可能性が小さい部分と微小欠陥の可能性がある部分の両方がない場合、チッピングの一部や小さなノリ残りをカケと誤判定している可能性があるが、実際に欠陥が存在している可能性もある。
また、欠陥フラグDkake、D、Dの範囲について、DとDとが重複する範囲があるが、Dkakeと重複する範囲がない場合、すなわち図4(B)に示すような場合は、DとDとが重複する範囲にDを設定する。すなわち、カケの可能性が大きくはないが、カケの可能性が多少あり、微小欠陥の可能性がある場合、カケや小さなチッピングの可能性がある。しかしながら、この段階では判断できないため、欠陥の可能性があるものとして扱う。
なお、図4(C)に示すように、Dkakeの範囲の一方の端部にDが重複し、他方の端部にDが重複する場合は、そのDkakeの範囲はカケと判断することができる。
【0054】
また、欠陥フラグDが設定された点が連続する範囲について、特徴フラグFIUが設定された点が連続する角度の範囲がθSIU以上である範囲と重複している場合は、DをDkakeで置き換える。また、欠陥フラグDが設定された点が連続する範囲について、特徴フラグFが設定された点が連続する角度の範囲がθST以下である範囲と重複している場合は、DをDnoriで置き換える。すなわち、欠陥の可能性がある範囲で内輪郭が内側に突出している場合、カケの可能性が高い。また、内輪郭と外輪郭の間の厚みが大きい部分の範囲が狭い場合は小さなノリ残りである可能性があるが、これまでの処理で何らかの誤判定として削除されている場合が多い。しかしながら、欠陥の可能性がある場合は実際にノリ残りである可能性が高い。
【0055】
欠陥特定部652は、以上の処理により設定された欠陥フラグに基づいて、欠陥の生じている位置および欠陥の種類を特定する。すなわち、Dkakeが設定されている範囲をカケと特定し、Dchipが設定されている範囲をチッピングと特定し、Dnoriが設定されている範囲をノリ残りと特定する。
【0056】
〔ノズル外観検査装置の動作〕
次に、本実施形態のノズル外観検査装置によるノズル外観検査方法について、フローチャートを用いて説明する。図5から図9は、本実施形態のノズル外観検査装置100の動作を説明するためのフローチャートである。
【0057】
まず、被検査物1がXYステージ2にセットされると、制御装置6の画像入力手段60は、被検査物1の画像をCCDカメラ5で撮影し、その撮影画像の画像データを取得する画像取得工程(撮像工程)を行う(ST1)。このとき撮影画像は、図示しないA/D変換器により、例えば、256階調(8ビット)のデジタルデータとして、制御装置6に取り込まれる。
【0058】
次に、二値化手段61は、取得された画像データに対して所定輝度閾値で二値化処理し、図2に示すような二値化画像を生成する(ST2)。
次に、輪郭検出手段62は、生成された二値化画像からノズル穴を抽出し、輪郭追跡を行ってノズル穴の内輪郭と外輪郭を検出する(ST3)。
そして、近似円算出手段63は、検出された内輪郭と外輪郭について、図3に示すような内輪郭近似円ICおよび外輪郭近似円OCをそれぞれ求め、その半径と中心座標を求める(ST4)。
【0059】
フラグ設定手段64は、二値化画像から検出された内輪郭および外輪郭と、求められた内輪郭近似円ICおよび外輪郭近似円OCとに基づいて、内輪郭上の点および外輪郭上の点にノズル穴の特徴を示す特徴フラグ(表1参照)を設定する工程(設定工程)と、一度設定した欠陥フラグを調整して再設定する工程(再設定工程)を実施する。設定工程は、以下のST5〜ST22の処理により実施され、再設定工程は、以下のST35〜ST56の処理により実施される。
【0060】
フラグ設定手段64は、まず、ノズル穴の内輪郭上の点が内輪郭近似円ICの円周からdIOT以上外側に位置しているか否かを判定する(ST5)。dIOT以上外側に位置している場合(ST5:Yes)は、その点に特徴フラグFIOTを設定する(ST6)。さらに、その点が内輪郭近似円ICの円周からdIO以上外側に位置しているか否かを判定する(ST7)。dIO以上外側に位置している場合(ST7:Yes)は、その点に特徴フラグFIOを設定する(ST8)。
一方、dIOT以上外側に位置していない場合(ST5:No)は、その点が内輪郭近似円ICの円周からdIU以上内側に位置しているか否かを判定する(ST9)。dIU以上内側に位置している場合(ST9:Yes)は、その点に特徴フラグFIUを設定する(ST10)。
なお、内輪郭上の点が内輪郭近似円ICの円周からdIO以上外側に位置していない場合(ST7:No)および内輪郭上の点が内輪郭近似円ICの円周からdIU以上内側に位置していない場合(ST9:No)は、次のステップST11へ進む。
【0061】
次に、フラグ設定手段64は、外輪郭上の点が外輪郭近似円OCの円周からdOO以上外側に位置しているか否かを判定する(ST11)。dOO以上外側に位置している場合(ST11:Yes)は、その点に特徴フラグFOOを設定する(ST12)。一方、dOO以上外側に位置していない場合(ST11:No)は、次のステップST13へ進む。
【0062】
次に、フラグ設定手段64は、図6に示すように、内輪郭上の点をPとし、内輪郭近似円ICの中心Oを始点とする半直線OPと交わる外輪郭上の点Qを求め、線分PQの中点Rを求める(ST13)。
次に、フラグ設定手段64は、求めた線分PQの長さが、L以上であるか否かを判定する(ST14)。L以上であれば(ST14:Yes)、点Pに特徴フラグFを設定する(ST15)。一方、L以上でなければ(ST14:No)、次のステップST16へ進む。
【0063】
次に、フラグ設定手段64は、点Rを中心とした矩形領域RE内の画素について、点Qにおける画素との輝度差を求め、輝度差の分散がV以上であるか否かを判定する(ST16)。輝度差の分散がV以上である場合(ST16:Yes)、点Pに特徴フラグFを設定する(ST17)。一方、輝度差の分散がV以上でない場合(ST16:No)は、次のステップST18へ進む。
次に、フラグ設定手段64は、線分PQ上の画素の輝度の平均を求め(ST18)、内輪郭上の点について、点Pから両側にN点分の輝度をそれぞれ求め、求めた輝度と輝度の平均との差の分散がVRT以上であるか否かを判定する(ST19)。VRT以上である場合(ST19:Yes)は、点Pに特徴フラグFRTを設定する(ST20)。さらに、内輪郭上の点について、点Pから両側にN点分の輝度と輝度の平均との差の分散がV以上であるか否かを判定する(ST21)。V以上である場合(ST21:Yes)は、点Pに特徴フラグFを設定する(ST22)。
一方、点Pから両側にN点分の輝度と輝度の平均との差の分散がVRT以上でない場合(ST19:No)および点Pから両側にN点分の輝度と輝度の平均との差の分散がV以上でない場合(ST21:No)は、次のステップST23へ進む。
【0064】
欠陥検出手段65は、設定された特徴フラグに基づいて欠陥の可能性を示す欠陥フラグを設定する工程と、設定された欠陥フラグを調整して再設定する工程と、再設定された欠陥フラグに基づいて欠陥を判定する工程と、を実施する。
まず、欠陥フラグ設定部651は欠陥の可能性を示す欠陥フラグを設定する工程を実施する。この工程は、以下のST23〜34の処理により実施される。
【0065】
すなわち、欠陥フラグ設定部651は、まず、図7に示すように、内輪郭上の各点および外輪郭上の各点について、内輪郭近似円ICの中心を原点とした角度を求める(ST23)。
次に、欠陥フラグ設定部651は、特徴フラグFが設定されている点が連続する範囲が角度θ以上である範囲(範囲1)と、特徴フラグFが設定されている点が連続する範囲が角度θ以上であるという範囲(範囲2)と、について、以下の条件を満たすか否かを判定する(ST24)。範囲1および範囲2が重複しない場合、または範囲1の条件のみ満たしている場合は、範囲1に属する各点に対して欠陥フラグDを設定する(ST25)。また、範囲1および範囲2が重複する場合は、範囲1と範囲2に属する各点に対して欠陥フラグDKakeを設定する(ST26)。また、いずれの条件も満たさない場合は、次のステップST27へ進む。
【0066】
次に、欠陥フラグ設定部651は、特徴フラグFIOが設定されている点が連続する範囲が角度θIO以上、かつ、特徴フラグFOOが設定されている点が連続する範囲が角度θOO以上、かつ、これらの範囲が重複しているか否かを判定する(ST27)。この条件を満たす場合(ST27:Yes)は、特徴フラグFIOが設定されている点が連続する範囲および特徴フラグFOOが設定されている点が連続する範囲の各点に対して欠陥フラグDchipを設定する(ST28)。一方、条件を満たさない場合(ST27:No)は、次のステップST29へ進む。
【0067】
次に、欠陥フラグ設定部651は、特徴フラグFが設定されている点が連続する範囲が角度θ以上であるか否かを判定する(ST29)。角度θ以上である場合(ST29:Yes)は、特徴フラグFが設定されている点が連続する範囲に欠陥フラグDnoriを設定する(ST30)。一方、角度θ以上でない場合(ST29:No)は、次のステップST31へ進む。
【0068】
次に、欠陥フラグ設定部651は、特徴フラグFIOTが設定されている点が連続する範囲が角度θIOT以上、かつ、特徴フラグFRTが設定されている点が連続する範囲が角度θRT以上、かつ、これらの範囲が重複しているか否かを判定する(ST31)。この条件を満たす場合(ST31:Yes)は、重複する範囲の各点に対して欠陥フラグDを設定する(ST32)。一方、条件を満たさない場合(ST31:No)は、次のステップST33へ進む。
【0069】
次に、欠陥フラグ設定部651は、図8に示すように、特徴フラグFIOTが設定されている点が連続する範囲が角度θIOT以上、かつ、特徴フラグFOOが設定されている点が連続する範囲が角度θOO以上、かつ、これらの範囲が重複しているか否かを判定する(ST33)。この条件を満たす場合(ST33:Yes)は、重複する範囲の各点に対して欠陥フラグDおよびDを設定する(ST34)。一方、条件を満たさない場合(ST33:No)は、次のステップST35へ進む。
【0070】
次に、欠陥フラグ設定部651は、再設定工程を実施する。
欠陥フラグ設定部651は、まず、欠陥フラグDが設定された点が連続する範囲について、Dkake、Dchip、Dnoriのいずれのフラグと重複するかを判定する(ST35)。Dkakeと重複する場合は、その範囲のDをDkakeで置き換える(ST36)。また、Dkakeと重複せず、Dchipと重複する場合は、その範囲のDをDchipで置き換える(ST37)。また、DkakeともDchipとも重複せず、Dnoriと重複する場合は、DをDnoriで置き換える(ST38)。そして、これらの条件をいずれも満たさない場合は、次のステップS39へ進む。
【0071】
次に、欠陥フラグ設定部651は、欠陥フラグDが設定された点が連続する範囲の近くの点に設定されているDkake、Dchip、Dnoriのうち、最も近くに位置する点に設定されたフラグでDを置き換える(ST39)。
【0072】
次に、欠陥フラグ設定部651は、欠陥フラグDkakeが設定された点が連続する範囲の近くの点に別のDkakeの範囲が存在するか否かを判定する(ST40)。別のDkakeの範囲が存在する(ST40:Yes)場合、別のDkakeの範囲が狭いか否かを判定し(ST41)、狭い場合(ST41:Yes)は、別のDkakeの範囲のDkakeを削除する(ST42)。一方、別のDkakeの範囲が狭くない場合(ST41:No)は、Dkakeの範囲間に存在する各点に対して、欠陥フラグDkakeを設定する(ST43)。なお、欠陥フラグDkakeが設定された点が連続する範囲の近くの点に別のDkakeの範囲が存在しない場合(ST40:No)は、次のステップST44へ進む。
ここで、別のDkakeの範囲が狭いとする基準は特に限定されず、誤検出とする範囲を適宜設定し、その範囲より狭いか否かで判定すればよい。
【0073】
次に、欠陥フラグ設定部651は、欠陥フラグDchip、Dnoriが設定された点が連続する範囲について、上述したST40〜ST43と同様の動作を実施する(ST44)。
すなわち、欠陥フラグDchipが設定された点が連続する範囲の近くの点に別のDchipの範囲が存在するか否かを判定し、別のDchipの範囲が存在する場合は、別のDchipの範囲が狭いか否かを判定する。狭い場合は、別のDchipの範囲のDchipを削除し、狭くない場合は、Dchipの範囲間に存在する各点に対して、欠陥フラグDchipを設定する。また、欠陥フラグDnoriが設定された点が連続する範囲の近くの点に別のDnoriの範囲が存在するか否かを判定し、別のDnoriの範囲が存在する場合は、別のDnoriの範囲が狭いか否かを判定する。狭い場合は、別のDnoriの範囲のDnoriを削除し、狭くない場合は、Dnoriの範囲間に存在する各点に対して、欠陥フラグDnoriを設定する。
【0074】
次に、欠陥フラグ設定部651は、図9に示すように、欠陥フラグDが設定された点が連続する範囲について、Dが設定された点の範囲と重複するか否かを判定する(ST45)。重複する場合(ST45:Yes)は、重複する範囲の各点に設定されたDを削除する(ST46)。一方、重複しない場合(ST45:No)は、次のステップST47へ進む。
【0075】
次に、欠陥フラグ設定部651は、欠陥フラグDkakeが設定された点が連続する範囲について、Dchipが設定された点の範囲、またはDnoriが設定された点の範囲と重複するか否かを判定する(ST47)。重複する場合(ST47:Yes)は、重複する範囲の各点に設定されたDkakeを削除する(ST48)。一方、重複しない場合(ST47:No)は、次のステップST49へ進む。
【0076】
次に、欠陥フラグ設定部651は、欠陥フラグDchipが設定された点が連続する範囲と、Dnoriが設定された点の範囲とが重複するか否かを判定する(ST49)。重複する場合(ST49:Yes)は、重複する範囲の各点に設定されたDnoriを削除する(ST50)。一方、重複しない場合(ST49:No)は、次のステップST51へ進む。
【0077】
次に、欠陥フラグ設定部651は、欠陥フラグDkake、D、またはDが設定された点が連続する範囲について、以下の条件を満たすか否かを判定する(ST51)。一つ目の条件は、Dkakeの範囲の端部にD、Dのうちいずれか一方のみが重複していることである(図4(A)参照)。二つ目の条件は、DとDとが重複する範囲があるが、Dkakeと重複する範囲がないことである(図4(B)参照)。一つ目の条件(条件1)を満たす場合は、DkakeをDで置き換える(ST53)。二つ目の条件(条件2)を満たす場合は、重複する範囲の各点に対してDを設定する(ST52)。また、条件1と条件2のいずれも満たさない場合は、次のステップST54へ進む。
【0078】
次に、欠陥フラグ設定部651は、欠陥フラグDが設定された点が連続する範囲について、角度がθSIU以上となる範囲に設定された特徴フラグFIUと重複するか否か、または欠陥フラグDが設定された点が連続する範囲について、角度がθST以下となる範囲に設定された特徴フラグFと重複するか否かを判定する(ST54)。FIUと重複する場合は、当該範囲の各点に設定されたDをDkakeで置き換える(ST56)。また、Fと重複する場合は、当該範囲の各点に設定されたDをDnoriで置き換える(ST55)。
【0079】
以上の工程を経た結果、図2に示す二値化画像は、図10に示すように、欠陥の発生している範囲を特定した画像を得ることができる。すなわち、図10(A)では、範囲Aにカケが発生し、図10(B)では、範囲Bにチッピングが発生し、図10(C)では、範囲Cにノリ残りが発生していることがわかる。
欠陥特定部652は、内輪郭上の各点に設定された欠陥フラグに基づいて欠陥の種類とその位置を特定する工程を実施する(ST57)。
すなわち、Dkakeが設定されている範囲をカケと特定し、Dchipが設定されている範囲をチッピングと特定し、Dnoriが設定されている範囲をノリ残りと特定する。
【0080】
〔実施形態の作用効果〕
上述したように、上記実施形態のノズル外観検査装置100では、二値化手段61により被検査物1のノズル穴の撮像画像から二値化画像を生成し、輪郭検出手段62により二値化画像に基づいてノズル穴の内輪郭と外輪郭とを検出するとともに、近似円算出手段63により内輪郭近似円および外輪郭近似円を求める。そして、フラグ設定手段64は、内輪郭と内輪郭近似円とを比較し、外輪郭と外輪郭近似円とを比較することで、ノズル穴の形状の特徴を検出し、ノズル穴の輪郭上の各点に対してその特徴を示す特徴フラグを設定する。そして、欠陥検出手段65は、特徴フラグに基づいて、ノズル穴の輪郭上の各点における欠陥フラグを設定し、さらに各点に設定された欠陥フラグに基づいて、欠陥フラグを再設定し、再設定された欠陥フラグに基づいて欠陥の種類とその位置を特定する。
【0081】
以上のような構成により各工程が実施されることで、ノズル穴の輪郭に発生したカケ、チッピング、ノリ残りのそれぞれの特徴を示す形状の範囲を検出し、この特徴に基づいて欠陥の種類を特定することができる。これにより、人による目視の検査ではなく、ノズル外観検査装置100により自動的に欠陥の種類を特定できるため、人件費の削減および大量生産を行うことができる。
【0082】
また、欠陥検出手段65は、欠陥フラグ設定部651により特徴フラグに基づいて欠陥フラグを大まかに設定した後、さらに設定された欠陥フラグの調整を行って再設定した後で、欠陥特定部652が欠陥の種類を特定している。フラグ設定手段64により設定された特徴フラグは、ノズル穴の輪郭上の各点における特徴を示すものであるため、特徴フラグだけで、欠の種類を特定可能な部分もあれば、特定が難しい部分もあるが、本実施形態のように2段階の処理で欠陥フラグを特定することで、誤検出を防止することができ、欠陥の種類を精度よく特定することができる。
【0083】
〔他の実施形態〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上記実施形態では、ST3の輪郭検出工程において、輪郭検出手段62は、生成された二値化画像において、輝度差がある画素を抽出して輪郭追跡により内輪郭および外輪郭を検出する構成および手法を採ったが、これに限定されない。例えば、輪郭検出手段62は、撮像画像に対して1次微分フィルターやラプラシアンフィルターを適用するなど、微分フィルターによる輪郭抽出処理を実施してもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、撮像画像に対してメディアンフィルターを適用した後に二値化画像を生成することで、ノイズを除去した二値化画像を生成したが、ノイズ除去方法としては、これに限定されない。例えば、輪郭検出手段62による内輪郭および外輪郭の検出の際に、注目画素の周囲に配置される8画素内の、形状形成領域を構成する画素数を計測し、この画素数が3個以下である場合に前記注目画素をノイズとして検出し、内輪郭および外輪郭から外す処理を実施してもよい。
【0085】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【符号の説明】
【0086】
100…ノズル外観検査装置、60…画像入力手段、61…二値化手段、62…輪郭検出手段、63…近似円算出手段、64…フラグ設定手段、65…欠陥検出手段、651…欠陥フラグ設定部、652…欠陥フラグ特定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル穴の開口部を撮像して、画像を取得する撮像手段と、
取得した前記画像を、輝度閾値に対して二値化した二値化画像を生成する二値化手段と、
前記二値化画像に基づいて、前記ノズル穴の内輪郭および外輪郭を検出する輪郭検出手段と、
前記内輪郭の近似円である内輪郭近似円、および前記外輪郭の近似円である外輪郭近似円を算出する近似円算出手段と、
前記二値化画像における前記内輪郭および前記外輪郭と前記内輪郭近似円および前記外輪郭近似円とを比較して、前記内輪郭および前記外輪郭の形状の特徴を抽出し、前記内輪郭上の各点および前記外輪郭上の各点に対して、前記特徴を示す特徴フラグを設定するフラグ設定手段と、
前記特徴フラグに基づいて、前記内輪郭上の各点および前記外輪郭上の各点に対して、欠陥の種類を示す欠陥フラグを設定し、前記欠陥フラグに基づいて、欠陥の種類とその位置を検出する欠陥検出手段と、を具備する
ことを特徴とするノズル外観検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のノズル外観検査装置において、
前記フラグ設定手段は、
前記内輪郭上の点のうち、前記内輪郭近似円の円周から前記ノズル穴の外周側に第一距離以上離れた点に第一特徴フラグを設定し、
前記内輪郭上の点のうち、前記内輪郭近似円の円周から前記ノズル穴の外周側に第一距離より大きい第二距離以上離れた点に第二特徴フラグを設定し、
前記内輪郭上の点のうち、前記内輪郭近似円の円周から前記ノズル穴の内周側に第三距離以上離れた点に第三特徴フラグを設定し、
前記外輪郭上の点のうち、前記外輪郭近似円の円周から前記ノズル穴の外周側に第四距離以上離れた点に第四特徴フラグを設定し、
前記内輪郭近似円の中心点から仮想半直線を引き、この仮想半直線と前記内輪郭との交点を第一内輪郭点、前記仮想半直線と前記外輪郭との交点を第一外輪郭点とした際、前記第一内輪郭点と前記第一外輪郭点との距離が第五距離以上である場合に、前記第一内輪郭点および前記第一外輪郭点に第五特徴フラグを設定し、
前記第一内輪郭点および前記第一内輪郭点の中点を中心とした1辺が第六距離である矩形領域内において、前記第一外輪郭点の輝度値との差の分散が第一分散閾値以上となる場合に、前記第一内輪郭点および前記第一外輪郭点に第六特徴フラグを設定し、
前記第一内輪郭点および前記第一外輪郭点を結ぶ線分上の輝度の平均値を算出し、前記内輪郭上の点のうち、前記第一内輪郭点の両側に位置する所定の数の点において、前記輝度の平均値との差の分散が第二分散閾値以上となる場合に、前記第一内輪郭点および前記第一外輪郭点に第七特徴フラグを設定し、かつ、前記輝度の平均値との差の分散が第三分散閾値以上となる場合に、前記第一内輪郭点および前記第一外輪郭点に第八特徴フラグを設定し、
前記欠陥検出手段は、欠陥フラグ設定手段と欠陥特定手段とを有し、
前記欠陥フラグ設定手段は、
前記内輪郭近似円の中心点に対して、前記特徴フラグが設定された点が連続する範囲の角度をそれぞれ取得し、
前記第六特徴フラグの範囲が第一角度以上、かつ前記第八特徴フラグの範囲が第二角度以上、かつ前記第六特徴フラグの範囲および前記第八特徴フラグの範囲が重複している場合に、前記第六特徴フラグの範囲および前記第八特徴フラグの範囲が重複する範囲にカケの可能性が大きいカケ欠陥フラグを設定し、
前記第六特徴フラグの範囲が第一角度以上、かつ前記第八特徴フラグの範囲が第二角度未満、かつ前記第六特徴フラグの範囲および前記第八特徴フラグの範囲が重複している場合に、前記第六特徴フラグの範囲にカケの可能性が少なからずあることを示す小カケ欠陥フラグを設定し、
前記第二特徴フラグの範囲が第三角度以上、かつ前記第四特徴フラグの範囲が第四角度以上、かつ前記第二特徴フラグの範囲および前記第四特徴フラグの範囲が重複している場合に、前記第二特徴フラグの範囲および前記第四特徴フラグの範囲が重複する範囲にチッピングの可能性が大きいチッピング欠陥フラグを設定し、
前記第五特徴フラグの範囲が第五角度以上である場合に、ノリ残りの可能性が大きいノリ欠陥フラグを設定し、
前記第一特徴フラグの範囲が第六角度以上、かつ前記第七特徴フラグの範囲が第七角度以上、かつ前記第一特徴フラグの範囲および前記第七特徴フラグの範囲が重複している場合に、前記第一特徴フラグの範囲および前記第七特徴フラグの範囲が重複する範囲に微小欠陥の可能性が大きい微小欠陥フラグを設定し、
前記第六特徴フラグの範囲が第八角度以上、かつ前記第四特徴フラグの範囲が第九角度以上、かつ前記第六特徴フラグの範囲および前記第四特徴フラグの範囲が重複している場合に、欠陥の可能性がある他欠陥フラグおよびチッピングの可能性が少なからずあることを示す小チッピング欠陥フラグを設定し、
前記欠陥特定手段は、
設定された前記欠陥フラグに基づいて、欠陥の種類とその位置を特定する
ことを特徴とするノズル外観検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載のノズル外観検査装置において、
前記欠陥フラグ設定手段は、
前記他欠陥フラグの範囲について、前記カケ欠陥フラグと重複する場合は、前記他欠陥フラグの範囲の前記他欠陥フラグを前記カケ欠陥フラグに置き換え、
前記他欠陥フラグの範囲について、前記カケ欠陥フラグと重複せず前記チッピング欠陥フラグと重複する場合は、前記他欠陥フラグの範囲の前記他欠陥フラグを前記チッピング欠陥フラグに置き換え、
前記他欠陥フラグの範囲について、前記カケ欠陥フラグおよび前記チッピング欠陥フラグと重複せず前記ノリ欠陥フラグと重複する場合は、前記他欠陥フラグの範囲の前記他欠陥フラグを前記ノリ欠陥フラグに置き換え、
前記他欠陥フラグの範囲について、前記カケ欠陥フラグ、前記チッピング欠陥フラグ、および前記ノリ欠陥フラグのいずれとも重複せず、前記他欠陥フラグの範囲から第十二角度以内の位置に前記チッピング欠陥フラグ、および前記ノリ欠陥フラグのいずれかが存在している場合は、前記位置までの角度の隔たりが最も小さい欠陥フラグで前記他欠陥フラグを置き換える
ことを特徴とするノズル外観検査装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のノズル外観検査装置において、
前記欠陥フラグ設定手段は、
前記カケ欠陥フラグが連続する第一カケ範囲について、この第一カケ範囲から第七距離以内の位置に前記カケ欠陥フラグが設定された第二カケ範囲が存在し、かつ、前記第二カケ範囲が第八距離以上の場合は、前記第一カケ範囲と前記第二カケ範囲との間の範囲に前記カケ欠陥フラグを設定し、前記第二カケ範囲が前記第八距離未満の場合は、前記第二カケ範囲に設定された前記カケ欠陥フラグを削除する
ことを特徴とするノズル外観検査装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載のノズル外観検査装置において、
前記欠陥フラグ設定手段は、
前記チッピング欠陥フラグが連続する第一チッピング範囲について、この第一チッピング範囲から第七距離以内の位置に前記チッピング欠陥フラグが設定された第二チッピング範囲が存在し、かつ、前記第二チッピング範囲が第八距離以上の場合は、前記第一チッピング範囲と前記第二チッピング範囲との間の範囲に前記チッピング欠陥フラグを設定し、前記第二チッピング範囲が第八距離未満の場合は、前記第二チッピング範囲に設定された前記チッピング欠陥フラグを削除する
ことを特徴とするノズル外観検査装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれかに記載のノズル外観検査装置において、
前記欠陥フラグ設定手段は、
前記ノリ欠陥フラグが連続する第一ノリ範囲について、この第一ノリ範囲から第七距離以内の位置に前記ノリ欠陥フラグが設定された第二ノリ範囲が存在し、かつ、前記第二ノリ範囲が第八距離以上の場合は、前記第一ノリ範囲と前記第二ノリ範囲との間の範囲に前記ノリ欠陥フラグを設定し、前記第二ノリ範囲が第八距離未満の場合は、前記第二ノリ範囲に設定された前記ノリ欠陥フラグを削除する
ことを特徴とするノズル外観検査装置。
【請求項7】
請求項2から請求項6のいずれかに記載のノズル外観検査装置において、
前記欠陥フラグ設定手段は、
前記他欠陥フラグが連続する範囲について、前記小チッピング欠陥フラグと重複する場合は、前記他欠陥フラグが連続する範囲に設定された前記他欠陥フラグを削除する
ことを特徴とするノズル外観検査装置。
【請求項8】
請求項2から請求項7のいずれかに記載のノズル外観検査装置において、
前記欠陥フラグ設定手段は、
前記カケ欠陥フラグが連続する範囲について、前記チッピング欠陥フラグまたはノリ欠陥フラグと重複する場合は、前記カケ欠陥フラグが連続する範囲に設定された前記カケ欠陥フラグを削除する
ことを特徴とするノズル外観検査装置。
【請求項9】
請求項2から請求項8のいずれかに記載のノズル外観検査装置において、
前記欠陥フラグ設定手段は、
前記ノリ欠陥フラグが連続する範囲について、前記チッピング欠陥フラグと重複する場合は、前記ノリ欠陥フラグが連続する範囲に設定された前記ノリ欠陥フラグを削除する
ことを特徴とするノズル外観検査装置。
【請求項10】
請求項2から請求項9のいずれかに記載のノズル外観検査装置において、
前記欠陥フラグ設定手段は、
前記カケ欠陥フラグ、前記小カケ欠陥フラグ、または前記微小欠陥フラグが連続する範囲について、前記カケ欠陥フラグの範囲の端部に前記小カケ欠陥フラグまたは前記微小欠陥フラグのうちいずれか一方のみが重複している場合は、前記カケ欠陥フラグの範囲に設定された前記カケ欠陥フラグを前記他欠陥フラグで置き換え、
前記カケ欠陥フラグ、前記小カケ欠陥フラグ、または前記微小欠陥フラグが連続する範囲について、前記小カケ欠陥フラグと前記微小欠陥フラグとが重複する範囲はあるが、前記カケ欠陥フラグと重複する範囲がない場合は、前記小カケ欠陥フラグと前記微小欠陥フラグとが重複する範囲に前記他欠陥フラグを設定する
ことを特徴とするノズル外観検査装置。
【請求項11】
請求項2から請求項10のいずれかに記載のノズル外観検査装置において、
前記欠陥フラグ設定手段は、
前記他欠陥フラグが連続する範囲について、前記第三特徴フラグが第十角度以上となる範囲と重複している場合は、前記他欠陥フラグが連続する範囲に設定された前記他欠陥フラグを前記カケ欠陥フラグで置き換え、
前記他欠陥フラグが連続する範囲について、前記第五特徴フラグが第十一角度以下となる範囲と重複している場合は、前記他欠陥フラグが連続する範囲に設定された前記他欠陥フラグを前記ノリ欠陥フラグで置き換える
ことを特徴とするノズル外観検査装置。
【請求項12】
ノズル穴の開口部を撮像して、画像を取得する撮像工程と、
取得した前記画像を、輝度閾値に対して二値化した二値化画像を生成する二値化工程と、
前記二値化画像に基づいて、前記ノズル穴の内輪郭および外輪郭を検出する輪郭検出工程と、
前記内輪郭の近似円である内輪郭近似円、および前記外輪郭の近似円である外輪郭近似円を算出する近似円算出工程と、
前記二値化画像における前記内輪郭および前記外輪郭と前記内輪郭近似円および前記外輪郭近似円とを比較して、前記内輪郭および前記外輪郭の形状の特徴を抽出し、前記内輪郭上の各点および前記外輪郭上の各点に対して、前記特徴を示す特徴フラグを設定するフラグ設定工程と、
前記特徴フラグに基づいて、前記内輪郭上の各点および前記外輪郭上の各点に対して、欠陥の種類を示す欠陥フラグを設定し、前記欠陥フラグに基づいて、欠陥の種類とその位置を検出する欠陥検出工程と、を実施する
ことを特徴とするノズル外観検査方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−198025(P2012−198025A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60443(P2011−60443)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】