ノズル検査装置およびそれを搭載するスプレー成膜装置、ならびにノズル検査方法

【課題】液体と気体とを混合して噴射する二流体ノズルにおいて、ノズルの異常および劣化の程度を適切に判定する。
【解決手段】ノズル検査装置200は、計測部211,212と、判定部232とを備え、液体と気体とを混合して噴射する二流体ノズル110における異常の有無を検査する。計測部211,212は、二流体ノズル110に供給される液体の圧力および流量の少なくとも一方に関する情報を計測する。判定部232は、計測部211,212によって計測された情報について、予め定められた時間において検出された上記情報の平均値からの上記情報の各々の変動量の大きさに基づいて、二流体ノズル110における異常の有無、および劣化の程度を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル検査装置およびそれを搭載するスプレー成膜装置、ならびにノズル検査方法に関し、より特定的には、液体と気体とを混合して噴射する二流体ノズルの異常を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電膜は、透明で導電性を有するという特性から、太陽光を吸収し、電気エネルギーに変換する太陽電池や、バックライト光源からの光を透過させる液晶表示素子等の透明電極としてよく用いられる。
【0003】
この透明導電膜材料としては、酸化インジウム・スズ(以下、ITOとも称する。)、フッ素ドープ酸化スズ(以下、FTOとも称する。)、もしくはアルミニウムやガリウムをドーピングした酸化亜鉛等が用いられる。
【0004】
これらの中で、ITO膜は、比抵抗が低くエッチングが容易であり、液晶表示素子の透明電極に広く用いられる。しかし、ITO膜で用いるインジウムは資源上の制約があることから高価である。一方、FTOはITOほど比抵抗が低くはないが、耐熱性に優れ、資源的影響が小さく、太陽電池に用いられることが多い。また、アルミニウムやガリウムをドーピングした酸化亜鉛は、安価であるが、現状は比抵抗が高いという問題を有している。
【0005】
これらの透明導電膜を成膜する手段としては、たとえば減圧雰囲気を要するスパッタ法や、蒸着法、常圧で成膜可能な熱CVD法、スプレー熱分解法等がある。たとえばITO膜はスパッタ法を用いて比抵抗の小さい膜を形成しているが、減圧雰囲気を形成するスパッタ装置は概して高額であるため製造コストが高くなるという課題があり、常圧での成膜手段を確立することが望まれている。
【0006】
このような課題に対し、減圧雰囲気の必要ない、熱CVD法やスプレー熱分解法などが提案されている。
【0007】
熱CVD法は、減圧雰囲気を形成する必要はないが、透明導電膜の成膜を行なう場合、原料ガスとして毒性の強い特殊高圧ガスなどを用いることが必要とされる。このため、安全を確保するために装置コストが高額になり、製造コストが高額になるという課題がある。
【0008】
これに対し、加熱基板上に原料溶液のミストを吹き付け、溶質の熱分解・化学反応により薄膜を形成する、スプレー熱分解法という成膜方法が提案されている。このスプレー熱分解法は、常圧にて、安全な原料溶液を用いて成膜が可能であり、装置を簡素に構成できることから、特開2005−116391号公報(特許文献1)等、種々の技術が報告されている。また、特開2011−143320号公報(特許文献2)および特開平4−224065号公報(特許文献3)にて報告されているように、洗浄や冷却などにもスプレー法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−116391号公報
【特許文献2】特開2011−143320号公報
【特許文献3】特開平4−224065号公報
【特許文献4】特開平7−112254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
成膜処理は安定して処理を実行できることが望ましい。しかしながら、成膜処理中にノズルの噴霧異常が発生すると、膜厚や膜特性の均一性が損なわれてしまい、処理した基板等が無駄となったり、処理自体を中断しなければならなくなったりするおそれがある。
【0011】
このようなノズルの異常の一つであるノズルの詰まりを検知する方法として特開平7−112254号公報(特許文献4)等が知られている。特開平7−112254号公報(特許文献4)においては、液経路の流量調整弁の開度を調整することで液流量を一定に制御するスプレーノズルにおいて、ノズルに供給する液の圧力および流量調整弁の開度のそれぞれについて正常時の値を記憶しておき、測定した値と比較することでノズルの詰まりの異常を検知する方法が開示される。
【0012】
ノズルの噴霧異常として、固形物がノズル内に付着して液及びエアの流れを制限する詰まり以外にも噴霧が断続的になる断続噴霧がある。さらに、ノズルの液経路にエアが入り込むエアの逆流がある。これらの異常の原因としては、ノズルの腐食や摩耗が考えられる。特に、加熱雰囲気中で腐食性流体を噴霧する場合には、ノズルの腐食の進行が相対的に早いため、噴霧時の液体流量が変化してしまったり、シール部の腐食によりシールが不完全となることによって液経路に霧化用のエアが漏れだしたりする状態となる可能性がある。このような状態となると、ノズルからの噴霧が断続的になり、さらには液経路にエアが逆流してしまうおそれがある。
【0013】
また、腐食や摩耗、あるいは固形物の付着によってノズルの気液混合部や吹き出し口の形状が変化してしまうことによって、噴霧が断続的となる場合がある。しかし、従来技術ではノズルの詰まり等の大きな異常が生じるまで検知する事ができないという課題があった。また、ノズル噴霧の断続性の程度を定量評価できないという課題があった。
【0014】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、液体と気体とを混合して噴射する二流体ノズルにおいて、ノズルの劣化の程度または異常を適切に判定することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によるノズル検査装置は、計測部と、判定部とを備え、液体と気体とを混合して噴射する二流体ノズルを検査する。計測部は、二流体ノズルに供給される液体の圧力および流量の少なくとも一方に関する情報を計測する。判定部は、計測部によって計測された情報について、予め定められた時間において検出された上記情報の平均値からの各情報の変動量の大きさに基づいて、二流体ノズルの劣化の程度または異常の有無を判定する。
【0016】
好ましくは、ノズル検査装置は、予め定められた時間における変動量の大きさの平均値として定義される、噴霧の断続性を表す指標を演算するための演算部をさらに備える。
【0017】
好ましくは、判定部は、指標と基準値とを比較することによって、二流体ノズルについての劣化の程度または異常の有無を判定する。
【0018】
好ましくは、判定部は、二流体ノズルの噴霧条件を変化させたときの、各噴霧条件に対応した指標を取得する。判定部は、噴霧条件の変化に対する指標の変化パターンを、二流体ノズルに発生し得る異常の種類に対応した指標の基準パターンと比較することによって、二流体ノズルに発生している異常の種類を判定する。
【0019】
好ましくは、噴霧条件は、二流体ノズルに供給される気体の圧力である。
好ましくは、計測部は、20Hz以上の周波数で情報を計測することができるように構成される。
【0020】
本発明によるスプレー成膜装置は、二流体ノズルと、二流体ノズルに液体を供給するための液体供給部と、二流体ノズルに気体を供給するための気体供給部と、二流体ノズルを検査するためのノズル検査装置とを備える。ノズル検査装置は、二流体ノズルに供給される液体の圧力および流量の少なくとも一方に関する情報を計測する計測部と、計測部によって計測された情報について、予め定められた時間における情報において検出された情報の平均値からの各情報の変動量の大きさに基づいて、二流体ノズルの劣化の程度または異常の有無を判定するための判定部とを含む。
【0021】
好ましくは、判定部は、スプレー成膜装置において成膜処理が実行されている間に、二流体ノズルの劣化の程度または異常の有無を判定する。
【0022】
好ましくは、ノズル検査装置は、予め定められた時間における変動量の大きさの平均値として定義される、噴霧の断続性を表す指標を演算するための演算部をさらに含む。判定部は、スプレー成膜装置がオフライン状態である場合に、二流体ノズルの噴霧条件を変化させたときの、各噴霧条件に対応した指標を取得する。判定部は、噴霧条件の変化に対する指標の変化パターンを、二流体ノズルに発生し得る異常の種類に対応した指標の基準パターンと比較することによって、二流体ノズルに発生している異常の種類を判定する。
【0023】
本発明によるノズル検査方法は、液体と気体とを混合して噴射する二流体ノズルを検査するための方法である。方法は、二流体ノズルに供給される液体の圧力および流量の少なくとも一方に関する情報を計測するステップと、計測された情報について、予め定められた時間において検出された情報の平均値からの各情報の変動量の大きさに基づいて、二流体ノズルの劣化の程度または異常の有無を判定するステップとを備える。
【0024】
好ましくは、方法は、予め定められた時間における変動量の大きさの平均値として定義される、噴霧の断続性を表す指標を演算するステップをさらに備える。判定するするステップは、二流体ノズルの噴霧条件を変化させたときの、各噴霧条件に対応した指標を取得するステップと、噴霧条件の変化に対する指標の変化パターンを、二流体ノズルに発生し得る異常の種類に対応した指標の基準パターンと比較することによって、二流体ノズルに発生している異常の種類を判定するステップとを含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、液体と気体とを混合して噴射する二流体ノズルにおいて、ノズルの劣化の程度または異常を適切に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に従うノズル検査装置を備える、二流体ノズルを有するスプレー成膜装置の全体ブロック図である。
【図2】複数のノズルを有するスプレー成膜装置の一例を示す図である。
【図3】ノズルAを用いて噴霧したときの、液圧の時間変化の一例を示す図である。
【図4】ノズルBを用いて噴霧したときの、液圧の時間変化の一例を示す図である。
【図5】ノズルCを用いて噴霧したときの、液圧の時間変化の一例を示す図である。
【図6】ノズルA〜Cにおける、液圧の変動量を用いたパラメータの比較を示す図である。
【図7】ノズル検査装置における、異常判定制御を説明するための機能ブロック図である。
【図8】実施の形態1において、ノズル検査装置で実行される異常判定処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図9】供給空気圧を変化させた場合の、ノズルDについての指標Pの変動パターンの一例を示す図である。
【図10】供給空気圧を変化させた場合の、ノズルEについての指標Pの変動パターンの一例を示す図である。
【図11】実施の形態2において、ノズル検査装置で実行される異常要因判定処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0028】
[スプレー成膜装置の構成]
図1は、本発明の実施の形態に従うノズル検査装置200を備える、二流体ノズルを有するスプレー成膜装置(以下、単に「成膜装置」とも称する。)100の全体ブロック図である。
【0029】
図1を参照して、成膜装置100は、二流体ノズル110と、ノズル検査装置200と、液体供給部300と、気体供給部400とを備える。
【0030】
二流体ノズル110は、液体と気体とを混合させて霧化して噴射させるノズルである。液体を霧化するノズルの種類としては主に、加圧した液体のみをノズルに供給する一流体ノズル、液体と加圧した気体をノズルに供給する二流体ノズル、および、超音波によって霧化する超音波ノズルなどがある。その中で電気を必要とせず簡便な構造であり、微細なミストが生成可能な二流体ノズルは、液体の気化熱による基板温度の低下を平均化するのに適している。本実施の形態においては、このような二流体ノズルの一例として、いけうち製二流体ノズルのBIMV8002Sを用いた場合を例として説明する。
【0031】
二流体ノズル110には、液体供給部300から噴霧すべき液体が供給されるとともに、気体供給部400から圧縮空気のような気体が供給される。二流体ノズル110は、供給された液体と気体とを混合して噴霧する。
【0032】
なお、図1においては、二流体ノズルが1つだけ示される構成が示されているが、たとえば大型の太陽電池パネルのような広い範囲への噴霧が必要となる場合は、図2に示されるように、一列または千鳥配置状などに並べられた複数個の二流体ノズル(図2においては、110A〜110D)が一般的に用いられる。
【0033】
そして、成膜処理がされるべき対象物である、たとえば基板130に成膜用の液体が噴霧される。このとき、成膜処理がなされる基板130は、搬送用ローラ120により搬送されて、基板130の全面にわたって均一に成膜処理が行なわれる。
【0034】
再び図1を参照して、気体供給部400は、図示しない空気供給源からの圧縮空気を二流体ノズル110へ供給する。気体供給部400は、圧力計410と、流量計420と、レギュレータ430と、空気供給弁440とを含む。
【0035】
空気供給弁440は、空気供給源からの空気の供給および停止とを切換える。レギュレータ430は、空気供給源から供給された空気の圧力を所望の圧力(たとえば、0.1〜0.6MPa)に調整する。
【0036】
圧力計410および流量計420は、レギュレータ430から二流体ノズル110への空気供給経路に設けられる。圧力計410および流量計420は、二流体ノズル110に供給される空気の圧力および流量をそれぞれ検出し、その検出値を図示しない制御装置または記録装置へ出力する。
【0037】
液体供給部300は、圧力調整タンク320に蓄えられた液体(たとえば、本実施の形態においては純水)340を、液体供給弁333を介して二流体ノズル110へ供給する。液体供給弁333は、二流体ノズル110への液体340の供給と停止とを切換える。
【0038】
二流体ノズル110へ供給される液体340の圧力は、二流体ノズル110と圧力調整タンク320内の液体340の液面高さとの差である水頭差、および圧力調整タンク320内の気体の圧力によって決定される。
【0039】
圧力調整タンク320には、液体340を補充するための液体補充弁321、液面確認用の液面確認チューブ323、および圧力計322が設けられる。液面確認チューブ323により液面を確認しながら、液体補充弁321により液体340を補充することにより所望の水頭差になるように調整される。
【0040】
圧力調整タンク320内の圧力は、図示しない空気供給源からの圧縮空気を圧力調整タンク320内に供給することによって調整される。具体的には、タンクを加圧する場合には、加圧弁313を開放し、供給する空気の圧力を、レギュレータ312を用いて調整しながら、空気を圧力調整タンク320内に供給する。
【0041】
一方、タンクを減圧する場合は、レギュレータ311で調整された圧縮空気を、エジェクタ310を通して大気へ放出することにより真空状態を発生し、放出する空気の圧力を、レギュレータ315を用いて調整しながら減圧弁314を開放する。これによって、タンク内の空気が放出されて減圧が行なわれる。なお、エジェクタに代えて、真空ポンプを用いて減圧してもよい。
【0042】
圧力調整タンク320内の圧力は、圧力調整タンク320に設けられた圧力計322の指示を確認しながら上述のような加圧もしくは減圧操作を行なうことにより、たとえば−80kPaから+0.5MPaの範囲内で所望の圧力に調整される。
【0043】
また、本実施の形態においては、液体の所定時間の平均流量を測定するために、追加的に、液体340を満たした液体ボトル330を電子天秤331上に配置した構成が設けられる。この液体ボトル330は、圧力調整タンク320と液体供給弁333とを結ぶ液体供給経路に、切換弁332を介して結合される。
【0044】
平均流量を測定する場合には、液体ボトル330内の液体が二流体ノズル110へ供給されるように切換弁332が切換えられる。そして、液体ボトル330への液体340の量により水頭差が調整され、レギュレータ430によって供給される空気圧が調整された後に、二流体ノズルによって所定時間液体を噴霧する。このときに液体ボトル330から放出された液体340の量を、噴霧前後の電子天秤331の指示値によって測定する。これによって、所定時間に噴霧される液体の平均流量を精度良く測定することができる。
【0045】
なお、この平均流量を測定するための追加の構成は必須ではなくオプションであり、これらの機器がなくても液体供給部としての機能を発揮することができる。
【0046】
このような成膜装置においては、成膜処理を継続していると、ノズルへの異物の付着、および、ノズルの腐食や摩耗に起因する空気の漏れや逆流によって、連続的な噴霧が行なわれずに断続的な噴霧状態となる場合がある。そうすると、成膜処理が行なわれる対象物において、生成される膜圧が不均一となってしまい、品質の悪化や機能不全につながるおそれがある。そのため、このようなノズルの異常を適切に検査および判定することが望まれる。
【0047】
そのため、図1に示された実施の形態の成膜装置100は、使用される二流体ノズル110の異常を判定するためのノズル検査装置200をさらに備える。
【0048】
ノズル検査装置200は、流量計211と、圧力計212と、記録計220と、信号処理部(たとえば、パソコン)230とを含む。
【0049】
流量計211および圧力計212は、液体供給部300から二流体ノズル110への液体供給経路に直列に設けられる。流量計211および圧力計212は、液体供給部300から二流体ノズル110へ供給される液体340の流量および圧力をそれぞれ検出する。そして、流量計211および圧力計212は、その検出値を記録計220および信号処理部230へ出力する。
【0050】
なお、図2に示されるような複数のノズルを有する成膜装置においては、これらの流量計211および圧力計212は、各ノズルに設けられることがより望ましい。しかしながら、製造コストおよび設置スペース等の制限から、特定の数のノズル毎(たとえば、ノズル3個ごとに各1台)に設けられてもよい。
【0051】
また、液体供給部300に、流量計211および圧力計212に相当する検出器が設けられる場合には、液体供給部300内の検出器からの流量および圧力に関する信号を受信できるようにして、流量計211および圧力計212を省略してもよい。
【0052】
記録計220は、流量計211および圧力計212で検出された信号を受信し、記録紙または表示画面に、二流体ノズル110に供給される液体の流量および圧力を表示する。さらに、これらの検出値をデジタルデータとして記憶するようにしてもよい。
【0053】
二流体ノズルの一般的な液圧および流量の変動は、1Hz〜数十Hzであるので、流量計211、圧力計212および記録計220は少なくとも20Hz以上の応答性を有することが望ましい。
【0054】
図1に示したノズル検査装置200においては、流量計211および圧力計212で検出された信号は、記録計220を経由して信号処理部230へ出力される構成となっているが、これらの検出値は記録計220と信号処理部230とへ並列に出力されてもよい。
【0055】
信号処理部230の詳細な機能は、図9を用いて後述するが、概略的には、所定時間の間に流量計211および圧力計212で計測された信号について、計測値の平均値からの各計測値の変動量の大きさ(絶対値)を算出し、その変動量の大きさを表わすパラメータを予め定められた基準と比較することによって、使用している二流体ノズル110における劣化の程度または異常の有無を判定する。そして、その判定結果を表示して異常の発生をユーザに通知する。
【0056】
[実施の形態1]
次に、ノズルの異常判定手法について説明する。
【0057】
まず、使用時間の異なる3つのノズルA〜Cを用いて、ある所定時間の間、実験的に噴霧を行なった場合の、液圧(液圧力とも称する。)の変化の一例を図3〜図5に示す。
【0058】
ここで、ノズルAは未使用ノズル、ノズルBは成膜処理に短期間使用した後のノズル、およびノズルCは成膜処理に長期間使用した後のノズルである。ノズルB,Cについては、成膜処理において噴霧に使用した液体は、SnCl4と、NH4Fと、HClとを含む腐食性の水溶液である。また、ノズルの材質は、耐腐食性を有するハステロイを使用した。
【0059】
実験においては、噴霧する液体として純水を用い、水頭差−500mm、液体ボトルは大気開放、空気圧力は0.3MPaとし、記録計のサンプリング周期は10msとした。
【0060】
図3を参照して、未使用ノズルであるノズルAを使用した噴霧においては、目視においては噴霧の断続は見られず良好な噴霧状態であった。しかしながら、図3に示されるように、数Hz程度の微小な液圧の変動が確認された。
【0061】
次に図4を参照して、ノズルBについては、図示していないが、従来技術による流量を用いた評価では未使用のノズルAとの有意差は見出せなかったが、目視による噴霧状態の確認においては、微小な噴霧の断続が確認された。そして、図4に示されるように、噴霧時の液圧は、変動の振幅の大きさ自体はノズルAとあまり変化はしていないが、変動の周期が十数Hz程度に短くなっていることが確認された。
【0062】
なお、実験後に、このノズルBを用いて成膜処理を行なったところ、生成された膜厚および膜の特性は、新品の未使用ノズルを用いて成膜した場合と有意な変化が見られないことが確認された。
【0063】
図5を参照して、長期間成膜処理に使用したノズルCについては、従来技術による流量を用いた評価では、未使用ノズルAと比較して2割ほど流量が低減していた。さらに、実際の成膜処理で生成された膜厚は、正常なノズルを用いた場合よりも薄くなっており、成膜にはもはや使用できない状態であった。
【0064】
液圧についても、図5に示されるように、ノズルA,Bと比較して平均値からの変動の振幅が大きくなっており、また、変動の周期も正常なノズルAよりも短くなっていた。
【0065】
なお、図には示さないが、液体の圧力に代えて液体の流量について、図3〜図5と同様の時間変化を測定したところ、液圧と同様の変化を示すことが確認された。
【0066】
このように、一定の噴霧条件のもとで、所定の時間継続して噴霧させた状態における液圧、液流量の変動(振幅,周期)を考慮することによって、使用不可能なレベルまで劣化が進行したノズルだけでなく、ノズルBのように目視では発見できない程度の劣化状態を有するノズルについても、その異常状態を判定することができることが確認された。
【0067】
図6に、これらのノズルA〜Cについて、上記の実験において約30秒間連続して噴霧を行なった場合の、液圧の最大値、最小値、最大値と最小値との差、および以下で説明する指標Pの値の一例を示す。
【0068】
指標Pは、所定時間の測定値の平均値を算出し、各測定時刻における測定値とこの平均値との差について、さらに平均をとったものである。すなわち、単位時間当たりの測定した波形と変動の中心線(平均値)との間の面積を意味し、以下の式で表わされる。
【0069】
【数1】

【0070】
ここで、nは測定された総データ数を表わし、Sxはx番目の測定値を表わす。
図6に示されるように、測定例においては、最大値の比較ではこれらのノズルの違いが表わされていない。また、最小値、および最大値と最小値との差については、全体的な数値の変化の傾向は見出せるものの、ノズルAとノズルBとの間の有意差がノズルA,BとノズルCとの間の有意差ほどの顕著性が見られていない。
【0071】
これらに対して、指標Pで評価した場合には、各ノズル間の差が、使用頻度(劣化度合)に対して比較的直線的に変化しており、これらのパラメータの中では最も劣化の程度を適切に表現できているものと認められる。
【0072】
したがって、本実施の形態においては、この指標Pを噴霧の断続性を示す指標として用いて、ノズルの異常の有無、および劣化の程度を判定する。
【0073】
図7は、図1で示したノズル検査装置200における、異常判定制御を説明するための機能ブロック図である。
【0074】
図1および図7を参照して、ノズル検査装置200は、図1で示したような流量計211および圧力計212で構成される計測部210と、代表的に記録計220で表わされる入力部と、信号処理部230とを含んで構成される。信号処理部230は、演算部231と、判定部232と、表示出力部233と、記憶部234とを含む。なお、信号処理部230に含まれる各機能ブロックは、ハードウェア的あるいはソフトウェア的な処理によって実現される。
【0075】
上述のように流量計211および圧力計212は、液体供給部300から二流体ノズル110に供給される液体の流量および圧力をそれぞれ計測し、その計測値(検出値)FL,PRを記録計220へ出力する。
【0076】
記録計220は、流量計211および圧力計212から受けた計測値を記録または表示するとともに、信号処理部230の演算部231へ、計測値FL,PRを出力する。
【0077】
演算部231は、予め定められた時間の間の計測値に基づいて、上記の式によって求められる指標Pを演算し、その演算結果を判定部232へ出力する。
【0078】
判定部232は、演算部231で演算された指標Pを受け、これを予め実験等によって算出されて記憶部234に記憶されている基準値(または基準マップ)REFと比較する。そして、判定部232は、その比較に基づいて、二流体ノズルにおける異常の有無、および劣化度合を判定する。そして、その判定結果を示す異常情報ABNを表示出力部233へ出力する。
【0079】
表示出力部233は、判定部232からの異常情報ABNを受け、その異常情報ABNに基づいて、表示出力部233に含まれる表示装置(図示せず)に異常内容を表示する。また、図7には示さないが、信号処理部230の外部の表示装置に当該異常内容を表示してもよいし、さらなる処理のために他の制御装置へ異常に関する情報を出力するようにしてもよい。
【0080】
図8は、実施の形態1において、ノズル検査装置200によって実行される異常判定処理の詳細を説明するためのフローチャートである。図8および後述する図11に示される各ステップは、ノズル検査装置200において、ハードウェア的あるいはソフトウェア的な処理によって実現される。
【0081】
図1および図8を参照して、ノズル検査装置200は、ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、予め定められた所定条件のもとで、二流体ノズル110により噴霧が行われているか否かを判定する。この判定は、たとえば、ユーザによる検査開始の操作が行なわれたことに基づいて行なってもよい。あるいは、図示しないが、成膜装置100における動作モードや各種設定パラメータ等に基づいて、自動で判定するようにしてもよい。
【0082】
所定条件において噴霧が実行されていない場合(S100にてNO)は、当該異常判定を行なう必要がないので、ノズル検査装置200は、以降のステップをスキップして処理を終了する。
【0083】
所定条件において噴霧が実行されている場合(S100にてNO)は、処理がS110に進められて、ノズル検査装置200は、流量計211および圧力計212を用いて、液体供給部300から二流体ノズル110に供給される液体の流量および圧力をそれぞれ計測する。なお、流量および圧力の双方が計測されることは必須ではなく、いずれか一方のみが測定される場合であってもよい。
【0084】
次に、ノズル検査装置200は、S120にて、計測値に基づいて、噴霧の断続性を表わす指標Pを演算により求める。そして、ノズル検査装置200は、S130にて、演算された指標Pが予め定められた基準値よりも小さいか否かを判定する。
【0085】
指標Pが基準値よりも小さい場合(S130にてYES)は、処理がS140に進められて、ノズル検査装置200は、使用している二流体ノズル110の状態が良好であると判定する。その後、処理がS150に進められる。
【0086】
一方、指標Pが基準値以上の場合(S130にてNO)は、S145に処理が進められて、ノズル検査装置200は、使用している二流体ノズル110の状態が異常であると判定する。そして、処理がS150に進められる。
【0087】
S150においては、S140またはS145での判定に基づいて、異常の有無および指標Pのような劣化の程度を表示装置に表示する。また、これに加えて、異常アラームのような聴覚的な警報を出力するようにしてもよい。
【0088】
以上のような処理に従って制御を行なうことによって、二流体ノズルにおける劣化の程度および異常を定量的に判定することができる。このような検査を、定期的なメンテナンスの際に実行することによって、ノズルの劣化の進行具合を評価および管理できるとともに、ノズル交換等のメンテナンスを適切な時期に行なうことができる。これにより、成膜処理においてノズルの劣化に伴う噴霧異常を事前に防止することが、品質不良や機能不全による歩留まり低下を防止することができる。
【0089】
また、図8のフローチャートのステップS100における所定条件として、成膜処理実行中の条件を選択することによって、装置がオフライン状態となるメンテナンスのタイミングだけでなく、装置が稼動中のオンライン状態において異常の有無を判定することも可能である。
【0090】
[実施の形態2]
上述した実施の形態1においては、ある特定の条件において噴霧が実行されているときの指標Pを演算することによって、異常の有無を判定する構成について説明した。
【0091】
以下に説明される実施の形態2においては、所定の噴霧条件において、気体供給部400から供給される空気の圧力を変化させ、その空気の圧力を変化させたときの指標Pの変動パターンに基づいて、ノズルに生じている異常の種類を特定する構成について説明する。
【0092】
なお、この判定処理については、供給される空気の圧力を変化させるために噴霧状態がしてしまうので、実施の形態1のように装置がオンラインの状態においての判定は困難であり、オフライン状態での判定となり得る。
【0093】
図9および図10は、実施の形態2における異常要因判定処理の概要を説明するための図であり、ノズルDおよびノズルEについて、供給空気圧(噴霧空気圧)を変化させた場合の、液圧および液流量についての指標Pをプロットしたものである。ノズルDは、ノズルの組立不良が生じている場合の例であり、ノズルEはエアリークが生じている場合の例である。
【0094】
図9および図10に示されるように、ノズルの異常の種類に応じて、供給空気圧の変化に対する特有の液圧および液流量の指標P(断続性)が認められる。そして、特定の異常に対応した指標Pの変動パターンを実験等により基準パターンとして予め求めておき、検査装置によって計測された指標Pの変動パターンをこの基準パターンと比較することによって、ノズルに生じている異常の種類を特定することができる。
【0095】
図11は、実施の形態2において、ノズル検査装置200で実行される異常要因判定処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0096】
図1および図11を参照して、ノズル検査装置200は、S200にて、二流体ノズル110における噴霧条件、具体的には、たとえば気体供給部400から供給される供給空気圧を初期化する。ここで、初期化とは、たとえば供給空気圧の調整可能範囲における最小値に設定することを意味する。
【0097】
そして、ノズル検査装置200は、設定された噴霧条件において噴霧を開始し(S210)、圧力計212および流量計211を用いて、噴霧中における所定時間内の液圧および液流量をそれぞれ計測する(S220)。
【0098】
ノズル検査装置200は、S230にて、液圧および液流量の各々について、計測値に基づいて断続性を表わす指標Pを演算する。そして、ノズル検査装置200は、噴霧を停止して(S240)、演算された指標Pを記憶する(S250)。
【0099】
その後、ノズル検査装置200は、S260にて、噴霧条件が変更可能か否かを判定する。具体的には、供給空気圧が調整可能範囲の最大値に達しているか否かを判定する。
【0100】
噴霧条件が変更可能である場合(S260にてYES)は、処理がS290に進められ、ノズル検査装置200は、噴霧条件である供給空気圧を所定のインクリメント(たとえば、0.1MPa)だけ変更する。そして、処理がS210に戻されて、ノズル検査装置200は、変更された噴霧条件でS210〜S250の処理を実行する。
【0101】
このように噴霧条件を変更しながらS210〜S250の処理が繰り返され、噴霧条件が調整可能範囲の最大値に達して変更できなくなった場合(S260にてNO)は、処理がS270に進められる。そして、ノズル検査装置200は、記憶された指標Pを用いて、図9および図10のような、噴霧条件の変化に対する指標Pの変動パターンを生成する。ノズル検査装置200は、得られた指標Pの変動パターンを、各異常の種類に対応する指標Pの基準パターンと比較することによって、二流体ノズル110における異常の有無、および異常がある場合にはその異常の種類を特定する。
【0102】
その後、ノズル検査装置200は、S280にて、判定結果を表示して、ユーザに二流体ノズル110の異常(劣化)に関する情報を通知する。
【0103】
以上のような処理に従って制御を行なうことによって、二流体ノズルにおける異常を定量的に判定することができるとともに、その異常の種類を特定することが可能となる。
【0104】
なお、上記においては、噴霧条件として気体供給部から供給される空気圧をパラメータとして変更させたが、たとえば供給空気の流量のようなその他の条件をパラメータとして変更するようにしてもよい。
【0105】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明におけるノズル検査装置およびノズル検査方法は、スプレー成膜装置のような、二流体ノズルを用いる機器についてのメンテナンス用の機器として利用可能である。
【符号の説明】
【0107】
100 成膜装置、110,110A〜D 二流体ノズル、120 搬送用ローラ、130 基板、200 ノズル検査装置、210 計測部、211,420 流量計、212,322,410 圧力計、220 記録計、230 信号処理部、231 演算部、232 判定部、233 表示出力部、234 記憶部、300 液体供給部、310 エジェクタ、311,312,315,430 レギュレータ、313 加圧弁、314 減圧弁、320 圧力調整タンク、321 液体補充弁、323 液面確認チューブ、330 液体ボトル、331 電子天秤、332 切換弁、333 液体供給弁、340 液体、400 気体供給部、440 空気供給弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と気体とを混合して噴射する二流体ノズルを検査するためのノズル検査装置であって、
前記二流体ノズルに供給される前記液体の圧力および流量の少なくとも一方に関する情報を計測する計測部と、
前記計測部によって計測された前記情報について、予め定められた時間において検出された前記情報の平均値からの各前記情報の変動量の大きさに基づいて、前記二流体ノズルの劣化の程度または異常の有無を判定するための判定部とを備える、ノズル検査装置。
【請求項2】
前記予め定められた時間における前記変動量の大きさの平均値として定義される、噴霧の断続性を表す指標を演算するための演算部をさらに備える、請求項1に記載のノズル検査装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記指標と基準値とを比較することによって、前記二流体ノズルについての劣化の程度または異常の有無を判定する、請求項2に記載のノズル検査装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記二流体ノズルの噴霧条件を変化させたときの、各噴霧条件に対応した前記指標を取得し、
前記判定部は、前記噴霧条件の変化に対する前記指標の変化パターンを、前記二流体ノズルに発生し得る異常の種類に対応した前記指標の基準パターンと比較することによって、前記二流体ノズルに発生している異常の種類を判定する、請求項2に記載のノズル検査装置。
【請求項5】
前記噴霧条件は、前記二流体ノズルに供給される前記気体の圧力である、請求項4に記載のノズル検査装置。
【請求項6】
前記計測部は、20Hz以上の周波数で前記情報を計測することができるように構成される、請求項1に記載のノズル検査装置。
【請求項7】
二流体ノズルと、
前記二流体ノズルに液体を供給するための液体供給部と、
前記二流体ノズルに気体を供給するための気体供給部と、
前記二流体ノズルを検査するためのノズル検査装置とを備え、
前記ノズル検査装置は、
前記二流体ノズルに供給される前記液体の圧力および流量の少なくとも一方に関する情報を計測する計測部と、
前記計測部によって計測された前記情報について、予め定められた時間における前記情報において検出された前記情報の平均値からの各前記情報の変動量の大きさに基づいて、前記二流体ノズルの劣化の程度または異常の有無を判定するための判定部とを含む、スプレー成膜装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記スプレー成膜装置において成膜処理が実行されている間に、前記二流体ノズルの劣化の程度または異常の有無を判定する、請求項7に記載のスプレー成膜装置。
【請求項9】
前記ノズル検査装置は、
前記予め定められた時間における前記変動量の大きさの平均値として定義される、噴霧の断続性を表す指標を演算するための演算部をさらに含み、
前記判定部は、前記スプレー成膜装置がオフライン状態である場合に、前記二流体ノズルの噴霧条件を変化させたときの、各噴霧条件に対応した前記指標を取得し、
前記判定部は、前記噴霧条件の変化に対する前記指標の変化パターンを、前記二流体ノズルに発生し得る異常の種類に対応した前記指標の基準パターンと比較することによって、前記二流体ノズルに発生している異常の種類を判定する、請求項7に記載のスプレー成膜装置。
【請求項10】
液体と気体とを混合して噴射する二流体ノズルを検査するための方法であって、
前記二流体ノズルに供給される前記液体の圧力および流量の少なくとも一方に関する情報を計測するステップと、
計測された情報について、予め定められた時間において検出された前記情報の平均値からの各前記情報の変動量の大きさに基づいて、前記二流体ノズルの劣化の程度または異常の有無を判定するステップとを備える、方法。
【請求項11】
前記予め定められた時間における前記変動量の大きさの平均値として定義される、噴霧の断続性を表す指標を演算するステップをさらに備え、
前記判定するするステップは、
前記二流体ノズルの噴霧条件を変化させたときの、各噴霧条件に対応した前記指標を取得するステップと、
前記噴霧条件の変化に対する前記指標の変化パターンを、前記二流体ノズルに発生し得る異常の種類に対応した前記指標の基準パターンと比較することによって、前記二流体ノズルに発生している異常の種類を判定するステップとを含む、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−111513(P2013−111513A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258817(P2011−258817)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】