説明

ノズル洗浄システム

【課題】ガン本体の内部機構の複雑化を招くことなく、ノズルをより容易に、かつ、より確実に洗浄でき、生産性の向上を図ることができるノズル洗浄システムを提供する。
【解決手段】ノズル洗浄システム1は、塗料導入口31及び塗料導出口32を連通する塗料経路33を有するガン本体3と、塗料導出口32に装着され、塗料経路33に連通される塗料噴射口41を有するノズル4と、ノズル4を洗浄する洗浄手段6とを備える。ガン本体3は、洗浄液導出口36及び塗料経路33の途中を連通する洗浄液導出経路35と、塗料経路33を開放・閉鎖可能な第1ニードル34とを有し、洗浄手段6は、洗浄液供給手段61と、洗浄用ノズル64とを備える。洗浄用ノズル64をノズル4に装着するとともに、第1ニードル34により塗料経路33を閉鎖した上で、洗浄用ノズル64からノズル4の塗料噴射口41へと洗浄液を送り込むことで、塗料噴射口41が洗浄される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアレススプレーガン等におけるノズルの詰りを防止するためのノズル洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
塗装ガン(ガン本体)の先端に取付けられたノズルから噴射される塗料の噴霧パターンの変化は、被塗装物の塗装面に塗装ムラなどの塗装不良を生じさせる要因となる。従って、塗装面の品質を安定させるためには、一定の噴霧パターンを保持して塗装作業を行う必要がある。
【0003】
ところが、塗装作業が長時間に及んだりすると、ノズルの塗料噴射口の周縁に塵や塗料カスなどの異物が付着して堆積してしまったり、ゲル化した塗料が塗料噴射口に詰まってしまったりして、噴霧パターンが乱れてしまい、塗装不良を招いてしまうおそれがある。このため、塗装作業においては、作業者が噴霧パターンを監視するとともに、ノズルの洗浄を適宜行って、塗料噴射口に付着した異物を除去する必要がある。
【0004】
しかしながら、ノズルの洗浄は、ガン本体からノズルを取外した上で行われるのが一般的であるが、前記ノズルは、ノズルチップや、当該ノズルチップを固定するとともに、ガン本体に取付けられるホルダや、さらには、ガン本体とホルダ等との間をシールするためのシール部材など、多数の部品によって構成されている。従って、ノズルの取外し作業や洗浄後の組付け作業等に相当の時間、手間を要することとなってしまい、また、作業者の作業負担が非常に大きなものとなってしまうおそれがある。さらに、ノズルの洗浄作業に多大な時間・手間を要することから、製造ラインの停止を余儀なくされ、その結果、生産性が低下してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、ガン本体からノズルを取外すことなく、ノズルを洗浄可能とすべく、ノズルを90度回転可能に構成するとともに、塗装時には、塗料の供給経路とノズル内部の通路とを連通させるとともに、待機時には、ノズルを90度回転させて、塗料の循環経路とノズル内部の通路とを連通させる技術が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。当該技術によれば、ノズル内部の通路に常に塗料が流し続けられるとともに、待機時には、塗料の噴射方向とは反対側からノズル内部の通路に対して塗料が流されることとなる。そのため、ノズルの塗料噴射口に対する異物の付着を防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−31907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、当該技術においては、ノズルを回転させるための回転機構などを設ける必要があり、ガン本体の内部機構が著しく複雑化してしまう。また、ノズルから除去された異物が、塗料供給部に対して戻され得る構成となっているため、一度除去された異物が再度ノズルに付着してしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、ガン本体の内部機構の複雑化を招くことなく、ノズルをより容易に、かつ、より確実に洗浄することができ、ひいては生産性の向上を図ることができるノズル洗浄システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.塗料導入口、及び、先端に設けられた塗料導出口を連通する塗料経路を有するガン本体と、
前記ガン本体の塗料導出口に装着され、前記塗料経路に連通される塗料噴射口を有するノズルと、
前記ノズルの塗料噴射口を洗浄する洗浄手段とを備えたノズル洗浄システムにおいて、
前記ガン本体は、
外部へと露出する洗浄液導出口、及び、前記塗料経路の途中を連通する洗浄液導出経路と、
前記塗料経路を開放・閉鎖可能な開閉手段とを有するとともに、
前記洗浄手段は、
洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、
前記ノズルに装着される洗浄用ノズルと、
前記洗浄液供給手段及び前記洗浄用ノズルを結ぶ洗浄液供給管とを備え、
前記洗浄用ノズルを前記ノズルに装着するとともに、前記開閉手段により前記塗料経路を閉鎖した上で、前記洗浄用ノズルから前記ノズルの塗料噴射口へと洗浄液を送り込むことにより、前記ノズルの塗料噴射口内を洗浄可能としたことを特徴とするノズル洗浄システム。
【0011】
上記手段1によれば、ノズル洗浄システムは洗浄手段を備えており、ノズルの塗料噴射口を洗浄するにあたっては、当該ノズルに対して前記洗浄手段の洗浄用ノズルを装着した上で、洗浄用ノズルから塗料噴射口へと洗浄液を送り込むことにより、前記塗料噴射口を洗浄することができる。従って、洗浄に際して、ノズルをガン本体から取外す必要がなく、ノズルを容易に洗浄することができるとともに、ノズルの洗浄に要する時間を短縮することができる。その結果、製造ラインの停止をより確実に防止することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0012】
また、塗料を噴射する方向とは反対側からノズルに対して洗浄液が送りこまれるため、塗料噴射口に付着した異物をより確実に除去することができる。さらに、除去された異物は、洗浄液導出経路を通って洗浄液導出口から排出されるため、除去された異物がノズルに対して再度付着してしまうことがない。従って、上記手段1によれば、ノズルをより確実に洗浄することができる。
【0013】
加えて、上記特許文献1に記載の技術と比較して、ガン本体の内部に回転機構等の複雑な機構を設ける必要がない。そのため、ガン本体の内部機構の複雑化をより確実に防止することができる。
【0014】
手段2.前記洗浄液供給管内における洗浄液の圧力を検知可能な圧力検知手段を設け、
前記圧力検知手段により検知された圧力に基づいて、前記ノズルの洗浄状態を確認可能としたことを特徴とする手段1に記載のノズル洗浄システム。
【0015】
ノズルの塗料噴射口に異物が付着している場合には、洗浄液供給管内における洗浄液の圧力が比較的高いものとなる。一方で、ノズルの塗料噴射口から異物が除去された場合には、洗浄液供給管内における洗浄液の圧力が比較的低いものとなる。
【0016】
この点を利用して、上記手段2によれば、圧力検知手段により検知された圧力に基づいて、ノズルの洗浄状態が確認できるように構成されている。従って、洗浄状態の確認にあたって、作業者が、洗浄用ノズルをノズルから取外して確認するといった面倒な作業が不要となり、生産性のより一層の向上を図ることができる。また、作業者が目視により洗浄状態を確認する場合と比べて、より正確に洗浄状態を把握することができる。そのため、洗浄作業後においてノズルに異物が残存してしまうといった事態をより確実に防止することができる。
【0017】
手段3.前記圧力検知手段により検知された圧力が、予め設定された所定の圧力下限値を下回ったときに、前記ノズルの洗浄を終了することを特徴とする手段2に記載のノズル洗浄システム。
【0018】
上記手段3によれば、圧力検知手段により検知された圧力が所定の圧力下限値を下回ったときに、ノズルの洗浄が終了される。従って、洗浄終了のタイミングをより確実に把握することができ、例えば、異物が除去されているにも関わらず、洗浄作業が続けられてしまうといった事態、つまり、無駄な洗浄をより確実に防止することができる。その結果、洗浄コストの増大を防止でき、生産性の更なる向上を図ることができる。
【0019】
手段4.前記圧力検知手段により検知された圧力が、予め設定された所定の圧力上限値を上回ったときに、前記洗浄液供給手段からの洗浄液の供給を停止、又は、前記洗浄液供給手段からの洗浄液の供給圧力を低減させることを特徴とする手段2又は3に記載のノズル洗浄システム。
【0020】
ノズルの洗浄に際しては、洗浄用ノズルがノズルに対して装着されることとなるが、ノズルの塗料噴射口に対して異物が強固に付着してしまった場合には、洗浄液供給管内における洗浄液の圧力が極めて高くなってしまう。そのため、ノズルから洗浄用ノズルが外れてしまったり、高圧の洗浄液によりノズルに損傷が生じてしまったりするおそれがある。
【0021】
この点、上記手段4によれば、圧力検知手段により検知された圧力が、所定の圧力上限値を上回ったときに、洗浄液の供給が停止、或いは、洗浄液の供給圧力が低減される。これにより、洗浄液供給管内における洗浄液の圧力が過度に増大してしまうことを防止でき、洗浄用ノズルの脱落やノズルの損傷といった不具合の発生をより確実に抑制することができる。
【0022】
手段5.前記洗浄液供給手段からの洗浄液の供給圧力を、高圧力状態と、高圧力状態における圧力よりも低圧力の低圧力状態とで交互に変更することを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載のノズル洗浄システム。
【0023】
上記手段5によれば、洗浄液の供給圧力が、例えばパルス波形のように、高圧力状態と低圧力状態とで交互に変更されつつ、洗浄液が供給される。そのため、ノズルに付着した異物を一層確実に除去することができる。
【0024】
尚、高圧力状態における洗浄液の供給圧力は、特に限定されるものではないが、塗料の噴射圧力以上(例えば、塗料供給手段からの塗料の供給圧力以上)とすることが好ましい。すなわち、塗料の噴射圧力は、塗料噴射口に向かって異物を押し付ける力に相当するところ、塗料の噴射方向とは逆方向から加えられる洗浄液の供給圧力(つまり、塗料噴射口から異物を取り除く方向に向かって加えられる圧力)を塗料の噴射圧力以上とすることで、塗料噴射口から異物をより一層確実に除去することができる。また、低圧力状態における洗浄液の供給圧力については、高圧力状態における洗浄液の供給圧力よりも低いものであればよく、その値は特に限定されるものではない。従って、低圧力状態においては、洗浄液を供給しないこととしてもよい。
【0025】
手段6.前記洗浄液導出経路内の洗浄液を排出する排出用ポンプを設けたことを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載のノズル洗浄システム。
【0026】
上記手段6によれば、排出用ポンプにより、洗浄液導出経路内の洗浄液をよりスムーズに外部へと排出することができる。その結果、ノズルに付着した異物をより確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】塗装時におけるノズル洗浄システムの概略を示す説明図である。
【図2】ノズルの構成を示す断面模式図である。
【図3】洗浄時におけるノズル洗浄システムの概略を示す説明図である。
【図4】洗浄ノズルの構成等を示す断面模式図である。
【図5】洗浄液の供給圧力の遷移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。ノズル洗浄システム1は、図1に示すように、ガン本体3と、当該ガン本体3に装着されるノズル4とからなる塗装手段2を備える。
【0029】
前記ガン本体3は、自身の内部に、塗料導入口31と、ガン本体3の先端に設けられた塗料導出口32とを連通する塗料経路33を備えている。また、前記塗料導入口31は、所定の塗料供給管を介して、塗料供給手段5に接続されている。そして、塗料供給手段5から供給される塗料が、塗料導入口31から塗料経路33へと流入するように構成されている。
【0030】
加えて、ガン本体3の内部には、棒状(針状)の第1ニードル34(「開閉手段」に相当する)が設けられている。当該第1ニードル34は、その先端部が前記塗料経路33に臨むようにして配置されており、バネ部材(図示せず)によりその長手方向先端側へと付勢されている。また、ガン本体3内部にはエアバルブ(図示せず)が設けられており、ガン本体3に設けられたトリガ(図示せず)を操作することにより、前記エアバルブを作動させることができるようになっている。すなわち、塗装時においては、前記トリガを引くことにより、前記エアバルブが作動し、第1ニードル34の先端部が塗料経路33から引っ込む。その結果、塗料供給手段5から塗料経路33を経てノズル4へと塗料が供給されることとなり、ノズル4の後述する塗料噴射口41から塗料が噴射されるようになっている。一方で、塗装作業を停止するときには、前記トリガを元の位置に戻すことで、ニードル34の先端部により塗料経路33が閉鎖され、その結果、塗料の噴射が停止される。
【0031】
ノズル4は、前記塗料導出口32に対して装着されている。また、当該ノズル4は、ノズルチップや、当該ノズルチップを保持するとともに、ガン本体3に対して取付けられるホルダや、当該ホルダ等とガン本体3との間をシールするためのシール部材等(いずれも図示せず)を備えている。さらに、図2に示すように、ノズル4の先端中央部分には、塗料経路33よりも小径の塗料噴射口41が設けられており、上述の通り、塗料経路33を経て供給された塗料が、当該塗料噴射口41から噴射されるようになっている。
【0032】
次に、本実施形態の特徴部分についてそれぞれ説明する。ノズル洗浄システム1は、図3に示すように、ガン本体3の内部に設けられた洗浄液導出経路35と、前記ノズル4の塗料噴射口41を洗浄するための洗浄手段6とを備えている。
【0033】
前記洗浄液導出経路35は、ガン本体3の外部に露出して設けられた洗浄液導出口36と、前記塗料経路33の途中との間を連通するものである。また、洗浄液導出口36には、排出用ポンプ7が接続されており、当該排出ポンプ7により洗浄液導出経路35内の液体を洗浄液導出口36側へと吸引できるようになっている。尚、排出ポンプ7の吸引圧力は、一定の圧力とされている。
【0034】
また、ガン本体3の内部には、洗浄液導出経路35を開放・閉鎖可能な第2ニードル37が設けられている。当該第2ニードル37は、その先端部が前記洗浄液導出経路35に臨むようにして配置されており、バネ部材(図示せず)によりその長手方向先端側へと付勢されている。そして、少なくとも塗装時においては、第2ニードル37により洗浄液導出経路35が閉鎖されることとなっており、その結果、塗料が洗浄液導出口36から流出してしまうことが防止されるようになっている。一方で、後述するノズル4の洗浄時においては、第2ニードル37の先端部が洗浄液導出経路35から引っ込み、その結果、洗浄液導出経路35内を洗浄液が流通可能とされる。
【0035】
加えて、前記洗浄手段6は、ノズル4を洗浄するために用いられるものであり、洗浄液供給手段61と、洗浄液供給管62と、制御手段63と、洗浄用ノズル64と、圧力検知手段65とを備えている。
【0036】
前記洗浄液供給手段61は、所定の洗浄液を洗浄液供給管62を介して洗浄用ノズル64へと供給するものであり、洗浄液の供給圧力を変更可能に構成されている。尚、洗浄液の供給圧力や供給の開始・停止は、制御手段63から出力される信号に応じて制御可能とされている。
【0037】
前記洗浄用ノズル64は、図4に示すように、筒状をなしており、ノズル4を洗浄する際に、自身の内周部分にノズル4が嵌入されることで、ノズル4に対して装着されるものである。尚、洗浄用ノズル64は、可撓性材料(例えば、ゴムや軟質樹脂等)により構成されており、ノズル4に装着された際には、内周面がノズル4の外周面に対して密着するようになっている。
【0038】
さらに、洗浄用ノズル64内には、前記圧力検知手段65が設けられている。当該圧力検知手段65は、前記洗浄液供給管62内を流れる洗浄液の圧力を検知するものである。また、圧力検知手段65と前記制御手段63とは所定の通信ケーブル66(図3参照)を介して通信可能に構成されており、圧力検知手段65により検知された圧力情報が制御手段63に対して伝送されるようになっている。
【0039】
図3に戻り、前記制御手段63は、例えば、CPU等を備えるマイコンにより構成されており、所定の通信ケーブル67を介して送信する信号により、洗浄液供給手段61の動作を制御するものである。本実施形態において、制御手段63は、図5に示すように、ノズル4を洗浄する際に洗浄液供給手段61から供給される洗浄液の供給圧力を、高圧力状態(例えば、10MPa)と低圧力状態(例えば、1MPa)とでパルス波形状に交互に変更するように構成されている。尚、本実施形態では、高圧力状態における洗浄液の圧力は、塗料供給手段5から供給される塗料の供給圧力とほぼ等しいものとされている。
【0040】
また、制御手段63は、圧力検知手段65から伝送される圧力情報に基づいて、洗浄液供給手段61からの洗浄液の供給を停止、或いは、洗浄液の供給圧力を低減するようになっている。すなわち、ノズル4の洗浄時において、高圧力状態の洗浄液を供給した際に、圧力検知手段65により検知された圧力が予め設定された所定の圧力下限値を下回った場合には、制御手段63は、洗浄液供給手段61からの洗浄液の供給を停止し、ノズル4の洗浄を終了するようになっている。一方で、ノズル4の洗浄時において、高圧力状態の洗浄液を供給した際に、圧力検知手段65により検知された圧力が予め設定された所定の圧力上限値を上回った場合には、制御手段63は、洗浄液供給手段61からの洗浄液の供給を緊急停止、或いは、洗浄液の供給圧力を低減するようになっている。尚、ノズル4の洗浄の終了時や洗浄液供給の緊急停止時などには、所定の表示装置(図示せず)により作業者等に洗浄が終了した旨などを報知するように構成することとしてもよい。
【0041】
次いで、上述したノズル洗浄システム1の動作について、塗装作業時とノズル洗浄時とに場合分けして、図1及び図3を参照しつつ説明する。
【0042】
まず、塗装作業時においては、図1に示すように、第2ニードル37により洗浄液導出経路35が閉鎖された状態とされる。そして、被塗装物に対して塗料を噴射する際には、前記トリガが引かれることにより、塗料経路33が開放され、塗料噴射口41から塗料が噴射される。
【0043】
これに対して、ノズル4の洗浄時においては、図3に示すように、第1ニードル34により塗料経路33を閉鎖した状態とする。そして、洗浄用ノズル64をノズル4に装着した上で、洗浄用ノズル64からノズル4の塗料噴射口41へと洗浄液が送り込まれる。このとき、洗浄液の供給圧力は、上述の通り、制御手段63により高圧力状態と低圧力状態との二段階で交互に変更される。また、洗浄液は、塗料噴射口41及び洗浄液導出経路35を通って、前記排出ポンプ7により積極的に排出される。
【0044】
さらに、ノズル4の洗浄時には、圧力検知手段65により洗浄液供給管62内における洗浄液の圧力情報が制御手段63に対して随時伝送される。そして、高圧力状態の洗浄液が供給された際に、圧力検知手段65から伝送された圧力が前記所定の圧力下限値を下回ったときに、制御手段63は、洗浄液供給手段61からの洗浄液の供給を停止し、洗浄作業が終了とされる。一方で、高圧力状態の洗浄液が供給された際に、圧力検知手段65から伝送された圧力が前記所定の圧力上限値を上回ったときには、洗浄液供給手段61からの洗浄液の供給が緊急停止、或いは、洗浄液の供給圧力が低減される。
【0045】
以上詳述したように、上記実施形態によれば、ノズル4の塗料噴射口41を洗浄するにあたっては、ノズル4に対して洗浄用ノズル64を装着した上で、洗浄用ノズル64から塗料噴射口41へと洗浄液を送り込むことにより、塗料噴射口41を洗浄することができる。従って、洗浄に際して、ノズル4をガン本体3から取外す必要がなく、ノズル4を容易に洗浄することができるとともに、ノズル4の洗浄に要する時間を短縮することができる。その結果、製造ラインの停止をより確実に防止することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0046】
また、塗料を噴射する方向とは反対側からノズル4に対して洗浄液が送りこまれるため、塗料噴射口41に付着した異物をより確実に除去することができる。さらに、除去された異物は、洗浄液導出経路35を通って洗浄液導出口36から排出されるため、除去された異物がノズル4に対して再度付着してしまうことがない。そのため、ノズル4をより確実に洗浄することができる。
【0047】
さらに、ガン本体3の内部に回転機構等の複雑な機構を設ける必要がないため、ガン本体3の内部機構の複雑化をより確実に防止することができる。
【0048】
加えて、圧力検知手段65により検知された圧力が所定の圧力下限値を下回ったときに、ノズル4の洗浄が終了される。従って、洗浄終了のタイミングをより確実に把握することができ、例えば、異物が除去されているにも関わらず、洗浄作業が続けられてしまうといった事態をより確実に防止することができる。そのため、生産性の更なる向上を図ることができる。
【0049】
また、圧力検知手段65により検知された圧力が、所定の圧力上限値を上回ったときに、洗浄液の供給が停止、或いは、洗浄液の供給圧力が低減される。これにより、洗浄液供給管62内における洗浄液の圧力が過度に増大してしまうことを防止でき、洗浄用ノズル64の脱落やノズル4の損傷といった不具合の発生をより確実に抑制することができる。
【0050】
併せて、洗浄液の供給圧力が、高圧力状態と低圧力状態とで交互に変更されつつ、洗浄液が供給されるようになっている。そのため、ノズル4に付着した異物を一層確実に除去することができる。
【0051】
さらに、排出用ポンプ7により、洗浄液導出経路35内の洗浄液をよりスムーズに外部へと排出することができるため、ノズル4に付着した異物をより一層確実に除去することができる。
【0052】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0053】
(a)上記実施形態では、洗浄液供給手段61から供給される洗浄液の供給圧力について、高圧力状態における洗浄液の圧力として10MPa、低圧力状態における洗浄液の圧力として1MPaを例示しているが、洗浄液の供給圧力はこれに限定されるものではない。従って、高圧力状態における洗浄液の供給圧力を、塗料供給手段5から供給される塗料の最大圧力に応じて(例えば、塗料の供給圧力の1.2倍以上に)設定することとしてもよい。また、低圧力状態においては、洗浄液を供給しないこととしてもよい。すなわち、洗浄液の供給と停止とを交互に繰り返すように構成することとしてもよい。また、上記実施形態では、ノズル4の洗浄時において、洗浄液供給手段61から供給される洗浄液の供給圧力を変更することとしているが、洗浄液の供給圧力を一定としてもよい。
【0054】
(b)上記実施形態では、塗料経路33を開放・閉鎖する開閉手段として第1ニードル34が設けられているが、当該第1ニードル34に加えて、別途の開閉手段を設けることとしてもよい。従って、例えば、塗料経路33のうち、塗装時には塗料が流通する一方で、洗浄時には洗浄液が流通する経路の直前に開閉手段を設けることとしてもよい。この場合には、洗浄時において、塗料経路33のうち第1ニードル34側への洗浄液の流入を防止することができ、ノズル4から除去された異物がガン本体3の内部に残存してしまうことをより一層確実に防止することができる。
【0055】
(c)上記実施形態においては、第2ニードル37により洗浄液導出経路35の途中が開放・閉鎖可能に構成されているが、洗浄液導出経路35のうち塗料経路33に接続される箇所の直前を開放・閉鎖可能に構成することとしてもよい。
【0056】
(d)上記実施形態では、排出ポンプ7の吸引圧力は、一定の圧力とされているが、吸引圧力を変更可能に構成することとしてもよい。従って、例えば、排出ポンプ7の吸引圧力を、洗浄液供給手段61からの洗浄液の供給圧力に応じて増減させることとしてもよい。また、排出ポンプ7を省略することとしてもよい。
【0057】
(e)上記実施形態では特に記載していないが、前記圧力検知手段65により検知された圧力を表示する表示装置を設けるとともに、当該表示装置に表示される圧力値などに基づいて、ノズル4の洗浄状態を確認できるように構成することとしてもよい。この場合には、洗浄状態の確認にあたって、作業者が、洗浄用ノズル64をノズル4から取外して確認するといった面倒な作業が不要となり、生産性のより一層の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0058】
1…ノズル洗浄システム、3…ガン本体、4…ノズル、5…塗料供給手段、6…洗浄手段、7…排出ポンプ、31…塗料導入口、32…塗料導出口、33…塗料経路、34…第1ニードル(開閉手段)、35…洗浄液導出経路、36…洗浄液導出口、41…塗料噴射口、61…洗浄液供給手段、62…洗浄液供給管、64…洗浄用ノズル、65…圧力検知手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料導入口、及び、先端に設けられた塗料導出口を連通する塗料経路を有するガン本体と、
前記ガン本体の塗料導出口に装着され、前記塗料経路に連通される塗料噴射口を有するノズルと、
前記ノズルの塗料噴射口を洗浄する洗浄手段とを備えたノズル洗浄システムにおいて、
前記ガン本体は、
外部へと露出する洗浄液導出口、及び、前記塗料経路の途中を連通する洗浄液導出経路と、
前記塗料経路を開放・閉鎖可能な開閉手段とを有するとともに、
前記洗浄手段は、
洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、
前記ノズルに装着される洗浄用ノズルと、
前記洗浄液供給手段及び前記洗浄用ノズルを結ぶ洗浄液供給管とを備え、
前記洗浄用ノズルを前記ノズルに装着するとともに、前記開閉手段により前記塗料経路を閉鎖した上で、前記洗浄用ノズルから前記ノズルの塗料噴射口へと洗浄液を送り込むことにより、前記ノズルの塗料噴射口内を洗浄可能としたことを特徴とするノズル洗浄システム。
【請求項2】
前記洗浄液供給管内における洗浄液の圧力を検知可能な圧力検知手段を設け、
前記圧力検知手段により検知された圧力に基づいて、前記ノズルの洗浄状態を確認可能としたことを特徴とする請求項1に記載のノズル洗浄システム。
【請求項3】
前記圧力検知手段により検知された圧力が、予め設定された所定の圧力下限値を下回ったときに、前記ノズルの洗浄を終了することを特徴とする請求項2に記載のノズル洗浄システム。
【請求項4】
前記圧力検知手段により検知された圧力が、予め設定された所定の圧力上限値を上回ったときに、前記洗浄液供給手段からの洗浄液の供給を停止、又は、前記洗浄液供給手段からの洗浄液の供給圧力を低減させることを特徴とする請求項2又は3に記載のノズル洗浄システム。
【請求項5】
前記洗浄液供給手段からの洗浄液の供給圧力を、高圧力状態と、高圧力状態における圧力よりも低圧力の低圧力状態とで交互に変更することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のノズル洗浄システム。
【請求項6】
前記洗浄液導出経路内の洗浄液を排出する排出用ポンプを設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のノズル洗浄システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−101854(P2011−101854A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258019(P2009−258019)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】