説明

ノズル洗浄装置および該ノズル洗浄装置を備えた塗布装置

【課題】 ノズルを十分清浄に洗浄でき、かつ、そのメンテナンスが容易なノズル洗浄装置および該ノズル洗浄装置を備えた塗布装置を提供する。
【解決手段】 洗浄機構60は、超音波振動子15を収納するとともに、この超音波振動子15を冷却するための冷却水13を貯留する冷却水貯留部11を備える。また、洗浄機構60は、冷却水貯留部11に貯留された冷却水13中にその下面が浸漬された状態で配設され、その内部に溶液14を貯留する溶液貯留部12を備える。スリットノズル41を溶液14中に浸漬した状態で超音波振動子15が超音波振動を発振した場合には、この超音波振動は、冷却水13および溶液貯留部12を介して溶液14に伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノズルの下端部に形成された塗布液の吐出口を洗浄するためのノズル洗浄装置および該ノズル洗浄装置を備えた塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置用ガラス基板、液晶表示装置用ガラス基板、太陽電池用パネル基板、PDP用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板、半導体ウエハ等の基板に対して塗布液を塗布する塗布装置においては、長尺のスリットノズルの下端部に形成されたスリット状の吐出口から塗布液を吐出することにより、基板の表面に塗布液を塗布している。この塗布装置においては、塗布液の塗布により汚染したノズルを、ノズル洗浄装置により洗浄する構成となっている。
【0003】
このようなノズル洗浄装置としては、スリットノズルの下端部に対して洗浄液を供給するとともに、スリットノズルの下端部をブラシにより洗浄し、しかる後、スリットノズルの下端部に向けて不活性ガスを噴出することにより、スリットノズルの下端部から洗浄液を除去する構成を採用している(特許文献1参照)。
【0004】
また、スリットノズルの下端部を液体中に浸漬し、この液体に対して超音波振動を付与することにより、スリットノズルを洗浄する塗布装置も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2008−290031号公報
【特許文献2】特願2005−205329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
塗布液として、例えば、フォトレジスト等が使用される場合においては、特許文献1に記載されたように、スリットノズルの下端部にフォトレジストの溶剤からなる洗浄液を供給した後、ブラシで洗浄を行うことで、スリットノズルを十分清浄に洗浄することが可能となる。しかしながら、例えば、太陽電池用パネル基板に塗料としてのナノメタルインクを塗布する場合においては、このナノメタルインクが吐出口で乾燥、固着した場合、容易に溶解しないことから、十分な洗浄が行い得ないという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2に記載されたように、スリットノズルに対して超音波振動を付与した場合には、ナノメタルインク等の塗料を除去することは可能である。しかしながら、特許文献2に記載されたように、スリットノズルの下端部を洗浄槽に貯留された液体中に浸漬し、この液体に対して超音波振動を付与することにより、スリットノズルを洗浄する構成を採用した場合には、塗布液から析出し、スリットノズルから除去された塗料の固形物が、超音波振動子を備えた洗浄槽内に堆積することになり、洗浄槽のメンテナンスに時間がかかるという問題が生ずる。
【0008】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、ノズルを十分清浄に洗浄でき、かつ、そのメンテナンスが容易なノズル洗浄装置および該ノズル洗浄装置を備えた塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、ノズルの下端部に形成された塗布液の吐出口を洗浄するためのノズル洗浄装置であって、液体を貯留するとともに、この液体中に浸漬された超音波振動子を収納する液体貯留部と、前記液体貯留部に貯留された液体中に浸漬された状態で配設され、塗布液を溶解する溶液を内部に貯留するとともに、前記ノズルの下端部を前記溶液中に浸漬可能とする上部開口部を備え、前記液体を介して付与される前記超音波振動子による超音波振動を、前記溶液に伝達する溶液貯留部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記溶液貯留部の底部には傾斜面が形成され、前記塗布液から析出した固形物を回収するための凹部が形成されるとともに、当該凹部付近には、前記溶液貯留部より溶液を排出するための溶液排出部が形成される。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記ノズルは、下端部に形成された吐出口がスリット状のスリットノズルであり、前記溶液貯留部の底部は、前記スリット状の吐出口の長手方向に向けて傾斜する傾斜面および前記スリット状の吐出口の長手方向と直交する方向に向けて傾斜する傾斜面を備え、これらの傾斜面の下端部付近に前記溶液排出部が形成される。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記傾斜面の上端部付近には、前記溶液貯留部内に溶液を供給するための溶液供給部が配設される。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記溶液排出部と前記溶液供給部とを接続する溶液の循環路を備える。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項3から請求項5のいずれかに記載の発明において、前記溶液貯留部の上方において、前記スリットノズルの下端部に形成されたスリット状の塗布液の吐出口に向けて溶液を吐出する溶液吐出部を有するノズル洗浄ブロックをさらに備える。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記ノズル洗浄ブロックは、前記スリットノズルの下端部に形成されたスリット状の吐出口に向けて気体を噴出する気体噴出部を備える。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記ノズル洗浄ブロックを、前記スリットノズルにおけるスリット状の塗布液の吐出口に沿って往復移動させる移動機構を備える。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項8のいずれかに記載のノズル洗浄装置を備えた塗布装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、溶液貯留部により超音波振動子と溶液とを分離するとともに、超音波振動を液体を介してノズルに付与する構成であることから、ノズルを十分清浄に洗浄でき、かつ、そのメンテナンスを容易なものとすることが可能となる。
【0019】
請求項2および請求項3に記載の発明によれば、塗布液から析出し、ノズルから除去された塗布液の固形物を傾斜面に沿って凹部に回収し、溶液排出部から外部に排出することが可能となる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、傾斜面に沿って溶液の流れを形成することにより、塗布液から析出し、スリットノズルから除去された塗布液の固形物を傾斜面に沿って回収することが可能となる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、溶液の循環路を利用して傾斜面に沿った溶液の流れを連続的に形成することにより、塗布液から析出し、スリットノズルから除去された塗布液の固形物の滞留を防止して、これを回収することが可能となる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、超音波を利用した洗浄後のスリットノズルを、溶液吐出部から供給される溶液によりさらに清浄に洗浄することが可能となる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、気体噴出部から噴出される気体の作用により、スリットノズルを清浄な状態に維持したままで、スリットノズルから溶液を除去することが可能となる。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、ノズル洗浄ブロックのスリットノズルに沿った移動に伴って、スリット状の塗布液の吐出口を洗浄することが可能となる。
【0025】
請求項9に記載の発明によれば、ノズルに形成された塗布液の吐出口を十分清浄に洗浄することができることから、塗布液の吐出を安定させることができ、これにより、塗布液を正確に塗布することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明に係るノズル洗浄装置6を適用する塗布装置の斜視図である。
【図2】この発明に係るノズル洗浄装置6を適用する塗布装置の側面図である。
【図3】スリットノズル41による塗布液の供給動作を模式的に示す説明図である。
【図4】スリットノズル41を一部破断して示す正面図である。
【図5】洗浄機構60をスリットノズル41とともに示す正面概要図である。
【図6】洗浄機構60をスリットノズル41とともに示す側面概要図である。
【図7】洗浄ブロック61の移動機構を、待機ポッド62およびスリットノズル41とともに示す正面図である。
【図8】洗浄ブロック61の平面図である。
【図9】洗浄ブロック61を分解して示す斜視図である。
【図10】洗浄ブロック61による仕上げ洗浄を実行するときのスリットノズル41と、洗浄ブロック61と、洗浄機構60との配置を示す側面概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はこの発明に係るノズル洗浄装置6を適用する塗布装置の斜視図であり、図2はその側面図である。なお、図1においては、プリディスペンス機構2およびノズル洗浄装置6等の図示を省略している。また、図2においては、キャリッジ4等の図示を省略している。
【0028】
この塗布装置は、矩形状をなす太陽電池用パネル基板(以下「基板」という)Sに対して、例えば、ナノメタルインクからなる塗料を塗布液として塗布するためのものである。
【0029】
この塗布装置は、基板Sを保持するためのステージ3を備える。このステージ3は、直方体形状を有する石製であり、その上面は水平面とされており、基板Sの保持面30となっている。保持面30には図示しない多数の真空吸着口が分布して形成されており、塗布装置において基板Sを吸着保持する構成となっている。また、図示は省略するが、保持面30には、上下に昇降自在な複数のリフトピンが、適宜の間隔をおいて設けられている。このリフトピンは、基板Sの搬入、搬出時に、基板Sをその下方より支持して、ステージ3の表面より上方に上昇させる。
【0030】
ステージ3の上方には、このステージ3の両側部分から略水平に掛け渡されたキャリッジ4が設けられている。このキャリッジ4は、スリットノズル41を支持するためのノズル支持部40と、このノズル支持部40の両端を支持する左右一対の昇降機構43とを備える。また、ステージ3の両端部には、略水平方向に平行に伸びる一対の走行レール31が配設される。これらの走行レール31は、キャリッジ4の両端部をガイドすることにより、キャリッジ4を、図1に示すX方向に往復移動させる。
【0031】
ステージ3およびキャリッジ4の両側部分には、ステージ3の両側の縁側に沿って、それぞれ固定子(ステータ)50aと移動子50bを備える一対のACコアレスリニアモータ(以下、単に、「リニアモータ」と略する。)50が固設される。また、ステージ3およびキャリッジ4の両側部分には、それぞれスケール部と検出子とを備えた一対のリニアエンコーダ52が固設される。リニアエンコーダ52は、キャリッジ4の位置を検出する。
【0032】
図2に示すように、ステージ3における保持面30の側方には、プリディスペンス機構2が配設されている。このプリディスペンス機構2は、貯留槽21内に貯留された洗浄液中にその一部を浸漬したプリディスペンスローラ22と、ドクターブレード23とを備える。プリディスペンスローラ22とドクターブレード23とは、Y方向に対して、スリットノズル41と同等以上の長さを有する。また、プリディスペンスローラ22は、図示しないモータの駆動により回転する。
【0033】
この塗布装置においては、処理動作を実行する前に、プリディスペンスローラ22の上方に移動したスリットノズル41から少量の塗布液を吐出することにより、後述するノズル洗浄工程において塗布液を溶解するための溶液を含有した塗布液をスリットノズル41内から除去する工程を実行するようにしている。
【0034】
図2に示すように、ステージ3における保持面30の側方には、この発明に係るノズル洗浄装置6が配設されている。なお、このノズル洗浄装置6の構成については、後述する。
【0035】
図3はスリットノズル41による塗布液の供給動作を模式的に示す説明図であり、図4はスリットノズル41を一部破断して示す正面図である。
【0036】
本実施形態においては、このスリットノズル41は、その長手方向(図3における紙面に垂直な方向/図4における左右方向)に延びるスリット状の吐出口44を有する。この吐出口44の長手方向の長さは、例えば、基板Sにおける矩形状の素子形成部分の短辺の長さ以上の長さである。なお、短辺の長さ未満でもよい。塗布液供給配管46により供給された塗布液45は、図3に示すように、このスリット状の吐出口44を介して基板Sの表面に供給される。
【0037】
塗布装置により基板Sに塗布液45を塗布する塗布動作について説明する。塗布液45の塗布動作を実行する前の状態においては、スリットノズル41は、この発明に係るノズル洗浄装置6と対向する位置に配置されている。この状態において、塗布液45の塗布動作を開始するときには、ノズル洗浄装置6の上方にスリットノズル41を待機させた状態から、リニアモータ50の駆動により、スリットノズル41をプリディスペンス機構2の上部まで移動させ、プリディスペンス動作を実行させる。
【0038】
次に、スリットノズル41を基板Sの一端上方まで水平移動させた後、左右一対の昇降機構により、スリットノズル41を基板Sへの塗布位置に配置する。このとき基板Sの表面とスリットノズル41の吐出口44との間隔は、塗布液45の塗布に適した所定の値となっている。
【0039】
この状態において、スリットノズル41におけるスリット状の吐出口44から塗布液45を吐出させるとともに、リニアモータ50の駆動により、スリットノズル41を基板Sの表面に沿って水平移動させる。この状態においては、図3に示すように、スリットノズル41におけるスリット状の吐出口44から吐出された塗布液45が基板Sの表面に薄膜状に塗布される。
【0040】
スリットノズル41におけるスリット状の吐出口44が基板Sの他端部と対向する位置まで移動すれば、スリットノズル41におけるスリット状の吐出口44からの塗布液45の吐出を停止させ、スリットノズル41をノズル洗浄装置6の上方にまで移動させる。しかる後、ノズル洗浄装置6によりスリットノズル41における吐出口44を洗浄する。
【0041】
次に、この発明に係るノズル洗浄装置6について説明する。この発明に係るノズル洗浄装置6は、超音波振動を利用してスリットノズル41を洗浄する洗浄機構60と、この洗浄機構60により洗浄されたスリットノズル41に対して、直接、溶液と不活性ガスを供給することにより、スリットノズル41を仕上げ洗浄する洗浄ブロック61と、洗浄ブロック61により仕上げ洗浄されたスリットノズル41を収納する待機ポッド62とを備える。
【0042】
最初に、超音波振動を利用してスリットノズル41を洗浄する洗浄機構60の構成について説明する。図5は、洗浄機構60をスリットノズル41とともに示す正面概要図であり、図6は、その側面概要図である。
【0043】
この洗浄機構60は、超音波振動子15(図6参照)を収納するとともに、この超音波振動子15を冷却するための冷却水13を貯留する冷却水貯留部11を備える。この冷却水貯留部11は、有底箱状の形状を有する。この冷却水貯留部11の底部には、図5に示すように、冷却水貯留部11内の冷却水を排出可能な管路92aが配設されている。この管路92aは、管路92bと管路92cとに分岐している。管路92bは、開閉弁96を介して図示しないドレインと接続されている。一方、管路92cは、冷却水13を冷却するための冷却器97と、ポンプ95とを介して、冷却水貯留部11に至る冷却水13の循環路を構成している。また、冷却水貯留部11内には、冷却水13の液位を一定に維持するための、管路92aに接続されたオーバフロー管18が配設されており、冷却水貯留部11の側方には、冷却水13の液位を検出するためのセンサ99が配設されている。
【0044】
また、この洗浄機構60は、冷却水貯留部11に貯留された冷却水13中にその下面が浸漬された状態で配設され、その内部に溶液14を貯留する溶液貯留部12を備える。この溶液14は、塗布液45を溶解可能な液体である。塗布液45として、ナノメタルインクからなる塗料が使用される場合には、この溶液14としては、例えば、水または溶剤が使用される。
【0045】
この溶液貯留部12は、金属または樹脂製の薄板から構成される。この溶液貯留部12は、冷却水13を介して付与される超音波振動子15による超音波振動を、溶液14に伝達する機能を有する。このため、この溶液貯留部12の材質や厚みは、超音波振動の伝達に適したものとなるように選択される。また、この溶液貯留部12の内側の表面、つまり、溶液14に接触する面は、塗布液から析出した固形分の付着を防止するため、フッ素樹脂によるコーティングが施されている。
【0046】
この溶液貯留部12には、スリットノズル41の下端部を溶液14中に浸漬可能とする上部開口部19が形成される。一方、この溶液貯留部12の底部は、図6に示すように、スリットノズル41におけるスリット状の吐出口44の長手方向と直交する方向に向けて、互いに異なる傾斜角度で傾斜する二つの傾斜面12a、12bが形成された谷状の形状を有する。また、谷状に形成された溶液貯留部12の底に位置する部分には、図5に示すように、スリットノズル41におけるスリット状の吐出口44の長手方向に向けて傾斜する傾斜面12cが形成されている。そして、溶液貯留部12を構成するこれらの傾斜面の下端部には、図5に示すように、溶液貯留部12内の溶液14を排出可能な管路91aが配設されている。また、溶液貯留部12を構成するこれらの傾斜面の上端部付近には、溶液貯留部12内に溶液14を供給するための溶液供給管16が配設されている。この溶液供給管16は、パイプ状部材に対して一定ピッチで溶液14の吐出口が穿設された構成を有する。
【0047】
このように、溶液貯留部12を構成するこれらの傾斜面の下端部に溶液14を排出する管路91aを設け、これらの傾斜面の上端部付近に溶液14を供給するための溶液供給管16を設けた構成とすることで、溶液貯留部12において、上端部から下端部への溶液14の流れを形成し、スリットノズル41から除去された塗布液の固形物の滞留を防止することができる。
【0048】
上述した管路91aは、管路91bと管路91cとに分岐している。管路91bは、開閉弁94を介して図示しないドレインと接続されている。一方、管路91cは、ポンプ93とを介して溶液供給管16に至る溶液14の循環路を構成している。このように、循環路を設けることで、溶液14の使用量を削減することができる。また、溶液貯留部12内には、溶液14の液位を一定に維持するための、管路91aに接続されたオーバフロー管17が配設されており、溶液貯留部12の側方には、溶液14の液位を検出するためのセンサ98が配設されている。
【0049】
次に、洗浄ブロック61および待機ポッド62の構成について説明する。図7は、洗浄ブロック61の移動機構を、待機ポッド62およびスリットノズル41とともに示す正面図である。
【0050】
このノズル洗浄装置6は、上述したスリットノズル41と平行に配設されたレール63に沿って移動可能なブラケット64と、このブラケット64と連結された同期ベルト65を往復回転させることによりブラケット64をスリットノズル41と平行に往復移動させるモータ66と、ブラケット64の上方に配設された洗浄ブロック61とを備える。この洗浄ブロック61は、スリットノズル41におけるスリット状の吐出口44付近を仕上げ洗浄するためのものである。この洗浄ブロック61は、モータ66の駆動により、上述した洗浄機構60の上方において、図7において実線で示す位置と二点鎖線で示す位置との間を往復移動する。
【0051】
ここで、図7において実線で示す位置は、後述する下面洗浄ブラシ82、右側面洗浄ブラシ83および左側面洗浄ブラシ81がスリットノズル41から離隔した待機位置である。また、図7におけるこの待機位置の右側の位置は、下面洗浄ブラシ82、右側面洗浄ブラシ83および左側面洗浄ブラシ81によりスリットノズル41の下端部を洗浄する洗浄領域である。なお、待機位置に移動した洗浄ブロック61の上方には、飛散防止カバー71が配設されている。
【0052】
一方、待機ポッド62は、塗布液を塗布しない状態において、スリットノズル41におけるスリット状の吐出口44付近の塗布液が乾燥して変質することを防止するためのものである。この待機ポッド62の内部には、例えば、塗布液を溶解する溶液等が貯留されている。この待機ポッド62は、エアシリンダ67の駆動により、図7において二点鎖線で示すその上端の開口部がスリットノズル41におけるスリット状の吐出口44と対向する上昇位置と、実線で示す下降位置との間を昇降可能な構成となっている。このため、スリットノズル41をノズル洗浄装置6の上方に待機させた状態で待機ポッド62が上昇位置をとると、スリットノズル41の吐出口44は待機ポッド62内の溶液中に浸漬され、吐出口44付近の塗布液が乾燥することが防止される。
【0053】
次に、上述した洗浄ブロック61の構成について説明する。図8は、洗浄ブロック61の平面図である。また、図9は、この洗浄ブロック61を分解して示す斜視図である。なお、図9においては、仕切板74の図示を省略している。
【0054】
この洗浄ブロック61は、一対の飛散防止板73と、不活性ガス噴出用スリット77、78を備えた4個の不活性ガス噴出用ブロック75と、仕切板74と、下面洗浄ブラシ82、右側面洗浄ブラシ83および左側面洗浄ブラシ81と、第1ノズル87、第2ノズル84および第3ノズル85、86を支持する一対のノズル用ブロック76とを備える。
【0055】
下面洗浄ブラシ82は、洗浄ブロック61が洗浄領域に配置されたときに、スリットノズル41の下端部下面、すなわち、図3に示す吐出口44が形成された領域に当接可能となっている。また、右側面洗浄ブラシ83は、洗浄ブロック61が洗浄領域に配置されたときに、スリットノズル41の長手方向(洗浄ブロック61の進行方向)に向かって下端部右側面に当接可能となっている。さらに、左側面洗浄ブラシ81は、洗浄ブロック61が洗浄領域に配置されたときに、スリットノズル41の長手方向に向かって下端部左側面に当接可能となっている。
【0056】
第1ノズル87は、洗浄ブロック61が洗浄領域に配置されたときに、スリットノズル41を挟んで右側面洗浄ブラシ83と対向する位置に配設されている。また、第2ノズル84は、洗浄ブロック61が洗浄領域に配置されたときに、スリットノズル41を挟んで左側面洗浄ブラシ81と対向する位置に配設されている。さらに、第3ノズル85、86は、下面洗浄ブラシ82と対向する位置に配置されている。図8に示すように、第1、第2、第3ノズル87、84、85、86は、スリットノズル41の仕上げの洗浄に使用する溶液を貯留した溶液供給部100と接続されている。
【0057】
不活性ガス噴出用ブロック75に形成された不活性ガス噴出用スリット77、78は、第1、第2、第3ノズル87、84、85、86から供給されスリットノズル41の下端部に残存する塗布液を、窒素ガスにより吹き飛ばすためのものである。洗浄ブロック61が図8に示す(+)Y方向に移動するときには、不活性ガス噴出用スリット77、78のうち右側面用ブラシ83と左側面用ブラシ81の移動方向の後ろ側に位置する不活性ガス噴出用スリット77、78(図8における(−)Y側の不活性ガス噴出用スリット77、78)のみが使用され、洗浄ブロック61が図8に示す(−)Y方向に移動するときには、不活性ガス噴出用スリット77、78のうち右側面用ブラシ83と左側面用ブラシ81の移動方向の後ろ側に位置する不活性ガス噴出用スリット77、78(図8における(+)Y側の不活性ガス噴出用スリット77、78)のみが使用される。
【0058】
次に、この発明に係るノズル洗浄装置6によるスリットノズル41の洗浄動作について説明する。なお、上述したノズル洗浄装置6によるスリットノズル41の洗浄時には、洗浄機構60による超音波振動を利用した洗浄と、洗浄ブロック61による仕上げ洗浄とが、この順で実行される。
【0059】
洗浄機構60による超音波振動を利用した洗浄を開始するときには、リニアモータ50の駆動により、スリットノズル41を洗浄機構60における溶液貯留部12の上部まで移動させる。そして、昇降機構43の作用によりスリットノズル41を下降させ、図5および図6に示すように、スリットノズル41の下端部を溶液貯留部12に貯留された溶液14中に浸漬する。この状態においては、スリットノズル41におけるスリット状の吐出口44は、溶液14中に配置されることになる。
【0060】
この状態において、超音波振動子15により超音波振動を発生される。この超音波振動は、冷却水13および溶液貯留部12を介して、溶液貯留部12内に貯留された溶液14に伝達され、溶液14に超音波振動が付与される。このため、塗布液から析出し、スリットノズル41におけるスリット状の吐出口44付近に固着した塗布液の固形物は、超音波が付与された溶液14の作用により、スリットノズル41から除去される。
【0061】
このときには、溶液貯留部12内の溶液14は、ポンプ93の作用により、溶液貯留部12から管路91a、91cを介して溶液供給管16に至る循環路を常に循環している。このため、スリットノズル41から除去された塗布液の固形分は、溶液供給管16から吐出された溶液14の流れに沿って、溶液貯留部12の傾斜面に沿って移動する。このため、塗布液の固形分が貯留部12内に停留することを軽減できる。
【0062】
また、このときには、冷却水貯留部11内の冷却水13は、ポンプ95の作用により、冷却水貯留部11から管路92a、92cおよび冷却器97を介して冷却水貯留部11に戻る循環路を常に循環している。このため、超音波振動子15が冷却水13に超音波振動を付与することにより冷却水13の温度が上昇する現象を、未然に防止することが可能となる。
【0063】
スリットノズル41におけるスリット状の吐出口44付近が、溶液14により所定の時間超音波振動を付与されて洗浄されれば、昇降機構43の作用によりスリットノズル41を上昇させ、スリットノズル41を洗浄ブロック61による仕上げ洗浄を実行可能な位置に配置する。
【0064】
なお、溶液貯留部12内の溶液14は、一定時間ごとに廃棄され、新しい液と交換される。この場合には、管路91bに配設された開閉弁94が開放され、溶液貯留部12内の溶液14が図示しないドレインに排出される。このときには、溶液貯留部12内の塗布液の固形分は、溶液14の流れとともに、管路91bに向けて移動する。このため、溶液貯留部12内の塗布液の固形分を好適に回収してドレインに排出することが可能となる。
【0065】
この場合において、超音波振動子15は冷却水貯留部11内の冷却水13中に浸漬されており、溶液14と超音波振動子15を浸漬した冷却水13とは、溶液貯留部12により分離されている。このため、塗布液の固形分の除去をより容易に実行することができ、ノズル洗浄装置6のメンテナンスをより容易に実行することが可能となる。
【0066】
次に、洗浄ブロック61による仕上げ洗浄を実行する。図10は、洗浄ブロック61による仕上げ洗浄をを実行するときのスリットノズル41と、洗浄ブロック61と、洗浄機構60との配置を示す側面概要図である。
【0067】
洗浄機構60による超音波振動を利用した洗浄に引き続き、洗浄ブロック61による仕上げ洗浄を開始するときには、洗浄ブロック61は図7において実線で示す待機位置に配置されている。また、このときには、スリットノズル41は、昇降機構43の作用により、その下端部が下面洗浄ブラシ82、右側面洗浄ブラシ83および左側面洗浄ブラシ81の上端より上方となる位置に配置されている。
【0068】
この状態において、第1、第2、第3ノズル87、84、85、86から溶液を吐出させる。そして、昇降機構43の作用によりスリットノズル41を下降させ、スリットノズル41の下端部と下面洗浄ブラシ82、右側面洗浄ブラシ83および左側面洗浄ブラシ81とを当接させる。この状態において、洗浄ブロック61を図7に示す右方向(例えば図8における(+)Y方向)に移動させる。この状態においては、スリットノズル41の下端部は、第1、第2、第3ノズル87、84、85、86から吐出した溶液と下面洗浄ブラシ82、右側面洗浄ブラシ83および左側面洗浄ブラシ81との作用により洗浄される。
【0069】
洗浄ブロック61が洗浄領域の端部まで移動すれば、洗浄ブロック61の移動を停止させる。そして、昇降機構43の作用によりスリットノズル41を上昇させ、スリットノズル41の下端部と下面洗浄ブラシ82、右側面洗浄ブラシ83および左側面洗浄ブラシ81とを離隔させる。しかる後、洗浄ブロック61を上記とは逆方向(図8における(−)Y方向)に移動させる。このときにも、第1、第2、第3ノズル87、84、85、86からの溶液の吐出は継続している。これにより、スリットノズル41の下端部は、第1、第2、第3ノズル87、84、85、86から吐出した新しい溶液により、その仕上げの洗浄が実行される。
【0070】
このときには、不活性ガス噴出用スリット77、78のうち右側面用ブラシ83と左側面用ブラシ81の移動方向の後ろ側に位置する不活性ガス噴出用スリット77、78から不活性ガスを噴出する。これにより、スリットノズル41における吐出口44付近に残存する溶液が吹き飛ばされ、スリットノズル41から除去される。
【0071】
洗浄ブロック61が図7において実線で示す待機位置に復帰すれば、第1、第2、第3ノズル87、84、85、86からの溶液の吐出と、不活性ガス噴出用スリット77、78からの不活性ガスの噴出とを停止する。
【0072】
以上によりスリットノズル41の洗浄動作が完了すれば、次に、下面洗浄ブラシ82、右側面洗浄ブラシ83および左側面洗浄ブラシ81の洗浄を実行する。洗浄ブロック61が図7において実線で示す待機位置に復帰した状態においては、図7に示すように、洗浄ブロック61の上方には飛散防止カバー71が配置されている。この状態において、再度、第1、第2、第3ノズル87、84、85、86からの溶液を吐出する。これにより、下面洗浄ブラシ82、右側面洗浄ブラシ83および左側面洗浄ブラシ81は、第1、第2、第3ノズル87、84、85、86から吐出した溶液により洗浄される。
【0073】
ここで、図10に示すように、洗浄ブロック61は、洗浄機構60の上方に配置されている。このため、上述した洗浄ブロック61による仕上げ洗浄時において洗浄に供された溶液は、洗浄ブロック61から洗浄機構60における溶液貯留部12内に滴下する。このため、溶液が外部に飛散することが防止されるとともに、仕上げ洗浄に使用した溶液を洗浄機構60による洗浄に再利用することが可能となる。
【0074】
なお、上述した実施形態においては、洗浄機構60において、溶液貯留部12内の溶液14を溶液貯留部12から管路91a、91cを介して溶液供給管16に至る循環路を常に循環させている。しかしながら、溶液供給管16から常に新しい溶液14を供給し、洗浄に使用した溶液14を管路91bからドレインに排出するようにしてもよい。
【0075】
また、上述した実施形態においては、洗浄ブロック61において、スリットノズル41に対して不活性ガスとしての窒素ガスを噴出しているが、不活性ガスに代えて空気を噴出してもよい。また不活性ガスや空気等の気体を噴出するかわりに、可撓性のブレード等によりスリットノズル41に付着した溶液を除去する構成としてもよい。
【0076】
また、上述した実施形態においては、洗浄ブロック61において下面洗浄ブラシ82、右側面洗浄ブラシ83および左側面洗浄ブラシ81を使用してスリットノズル41を洗浄しているが、洗浄ブロック61による仕上げ洗浄時には、溶液の吐出と不活性ガス等の噴出のみで仕上げ洗浄を行うようにしてもよい。
【0077】
さらに、上述した実施形態においては、ノズルとして吐出口がスリット状のスリットノズル41を用いているが、塗布液を吐出するノズルであれば、他の形態を有するノズルを用いてもよい。例えば、ポンプ等から圧送された高圧の塗布液を噴霧状に吐出するインジェクションノズル等を用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
6 ノズル洗浄装置
11 冷却水貯留部
12 溶液貯留部
12a 傾斜面
12b 傾斜面
12c 傾斜面
13 冷却水
14 溶液
15 超音波振動子
16 溶液供給管
19 上部開口部
41 スリットノズル
44 吐出口
60 洗浄機構
61 洗浄ブロック
62 待機ポッド
71 飛散防止カバー
73 飛散防止板
74 仕切板
81 左側面洗浄ブラシ
82 下面洗浄ブラシ
83 右側面洗浄ブラシ
84 第2ノズル
85 第3ノズル
86 第3ノズル
87 第1ノズル
92 管路
95 ポンプ
96 開閉弁
97 冷却器
100 溶液供給部
S 基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルの下端部に形成された塗布液の吐出口を洗浄するためのノズル洗浄装置であって、
液体を貯留するとともに、この液体中に浸漬された超音波振動子を収納する液体貯留部と、
前記液体貯留部に貯留された液体中に浸漬された状態で配設され、塗布液を溶解する溶液を内部に貯留するとともに、前記ノズルの下端部を前記溶液中に浸漬可能とする上部開口部を備え、前記液体を介して付与される前記超音波振動子による超音波振動を、前記溶液に伝達する溶液貯留部と、
を備えたことを特徴とするノズル洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載のノズル洗浄装置において、
前記溶液貯留部の底部には傾斜面が形成され、前記塗布液から析出した固形物を回収するための凹部が形成されるとともに、当該凹部付近には、前記溶液貯留部より溶液を排出するための溶液排出部が形成されるノズル洗浄装置。
【請求項3】
請求項2に記載のノズル洗浄装置において、
前記ノズルは、下端部に形成された吐出口がスリット状のスリットノズルであり、
前記溶液貯留部の底部は、前記スリット状の吐出口の長手方向に向けて傾斜する傾斜面および前記スリット状の吐出口の長手方向と直交する方向に向けて傾斜する傾斜面を備え、これらの傾斜面の下端部付近に前記溶液排出部が形成されるノズル洗浄装置。
【請求項4】
請求項3に記載のノズル洗浄装置において、
前記傾斜面の上端部付近には、前記溶液貯留部内に溶液を供給するための溶液供給部が配設されるノズル洗浄装置。
【請求項5】
請求項4に記載のノズル洗浄装置において、
前記溶液排出部と前記溶液供給部とを接続する溶液の循環路を備えるノズル洗浄装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれかに記載のノズル洗浄装置において、
前記溶液貯留部の上方において、前記スリットノズルの下端部に形成されたスリット状の塗布液の吐出口に向けて溶液を吐出する溶液吐出部を有するノズル洗浄ブロックをさらに備えるノズル洗浄装置。
【請求項7】
請求項6に記載のノズル洗浄装置において、
前記ノズル洗浄ブロックは、前記スリットノズルの下端部に形成されたスリット状の吐出口に向けて気体を噴出する気体噴出部を備えるノズル洗浄装置。
【請求項8】
請求項6に記載のノズル洗浄装置において、
前記ノズル洗浄ブロックを、前記スリットノズルにおけるスリット状の塗布液の吐出口に沿って往復移動させる移動機構を備えるノズル洗浄装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載のノズル洗浄装置を備えた塗布装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−71033(P2013−71033A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210499(P2011−210499)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】