ノズル装置および洗浄装置
【課題】固相化表面に対する影響を抑制し、吸引ノズルの側面と反応容器の側面との間のメニスカスの形成を抑制しつつ、反応容器の隅部における液体の残留を抑制することが可能なノズル装置を提供する。
【解決手段】ノズル装置10は、抗体または抗原が底面に固相化された免疫測定用の反応容器に用いられるものであって、反応容器内の液体を反応容器に非接触で吸引する複数の吸引ノズル12−1,12−2,12−3を有し、各吸引ノズルは、反応容器に挿入された際、当該吸引ノズルの下端12aが反応容器の底面と側面との間の隅部に近接して配置され、当該吸引ノズルの側面12bが下端から上方に向かうに従って反応容器の側面から離れる傾斜を有するように構成されている。
【解決手段】ノズル装置10は、抗体または抗原が底面に固相化された免疫測定用の反応容器に用いられるものであって、反応容器内の液体を反応容器に非接触で吸引する複数の吸引ノズル12−1,12−2,12−3を有し、各吸引ノズルは、反応容器に挿入された際、当該吸引ノズルの下端12aが反応容器の底面と側面との間の隅部に近接して配置され、当該吸引ノズルの側面12bが下端から上方に向かうに従って反応容器の側面から離れる傾斜を有するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫測定用の反応容器に用いられるノズル装置および洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)など、抗原抗体反応を用いる免疫測定法(イムノアッセイ)が知られている。免疫測定法では、例えばB/F分離など、反応容器の洗浄は、正確な分析を行う上で重要である。
【0003】
例えば、サンドイッチELISAでは、抗体(または抗原)が固相化された反応容器に、測定対象となる抗原(または抗体)を含む検体を分注し、検体中の抗原等を固相化された抗体等に結合させる。その後、洗浄(B/F分離)により、未反応の抗原等を除去する。そして、酵素標識された抗体(または抗原)を含む溶液を分注し、固相化表面に結合した抗原等に酵素標識された抗体等を結合させる。その後、洗浄(B/F分離)により未反応の抗体等を除去した後、蛍光や化学発光等を検出する。上記の洗浄は、洗浄液を吐出して吸引することにより行われる。この洗浄が良好に行われないと、未反応の物質が残留し、S/Nの低下など、分析結果に悪影響を及ぼす。
【0004】
特許文献1には、抗原抗体反応を利用して試料の検査を行う際、ウェル内面に試薬がコーティングされたマイクロプレートのウェルに試料を注ぎ込んだ後、未反応試料を吸引する際、ウェル内面に形成された反応生成物に悪影響を与えることなく、未反応試料を効果的に除去するための吸引装置が記載されている。この吸引装置は、ウェル内に洗浄液を吐出する吐出ノズルと、ウェル内の液体を吸引する複数の吸引ノズルとを有し、これらのノズルの先端を、ウェル内に入れた状態で、ウェルの底面に沿って所定の経路で移動させるものである。
【0005】
また、特許文献2には、マイクロプレート上のウェルなどの容器内の液体を能率的に吸引するためのノズル装置が記載されている。このノズル装置では、容器内の液体を吸引するノズルは、先端側が屈曲可能な複数の吸引触手に分かれた刷毛状部を有する。複数の刷毛状部は容器底面に当接することにより屈曲して放射状に広がり、この状態で容器内の液体の吸引が行われる。
【0006】
また、特許文献3には、免疫反応等の生化学反応測定に使用される、反応容器内部洗浄用のノズル装置として、洗浄液を吐出するための内管と、容器中の液体を吸引するための外管とを有するものが記載されている。
【0007】
なお、特許文献4には、容器内部を洗浄する洗浄ノズルを円滑に容器内に挿入するための技術として、洗浄ノズルの容器内部への挿入を案内する挿入補助部材を容器の開口の上部に配置するものが記載されている。
【0008】
また、特許文献5には、分注ノズルの周囲に複数の管を配置し、この管内に圧縮空気を流すことで、分注ノズルの先端に付着した液体を除去する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−83939号公報
【特許文献2】特開2003−42912号公報
【特許文献3】特開平4−164256号公報
【特許文献4】特開2009−36595号公報
【特許文献5】特開2009−31174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、免疫測定用の反応容器内の洗浄液等の液体を吸引する場合、反応容器内の液体の残留は、例えばS/Nの低下など、測定に悪影響を及ぼす可能性がある。このようなことから液体を残らず吸引したいという要望があるところ、容器の底面と側面との間の隅部には液体が残りやすい。また、吸引ノズルの側面と反応容器の側面との間隔が狭いと、その間にメニスカスが形成され、液体が残りやすい。
【0011】
また、吸引ノズルを反応容器の底面に接触させて吸引する構成では、反応容器の底面の固相化表面に悪影響を及ぼしてしまう。
【0012】
そこで、本発明は、固相化表面に対する影響を抑制し、吸引ノズルの側面と反応容器の側面との間のメニスカスの形成を抑制しつつ、反応容器の隅部における液体の残留を抑制することが可能なノズル装置および洗浄装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るノズル装置は、抗体または抗原が底面に固相化された免疫測定用の反応容器に用いられるノズル装置であって、前記反応容器内の液体を前記反応容器に非接触で吸引する複数の吸引ノズルを有し、前記各吸引ノズルは、前記反応容器に挿入された際、当該吸引ノズルの下端が前記反応容器の底面と側面との間の隅部に近接して配置され、当該吸引ノズルの側面が下端から上方に向かうに従って前記反応容器の側面から離れる傾斜を有するように構成されている、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様では、前記各吸引ノズルは、垂直方向に対して傾斜した直線状の管で構成される。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記各吸引ノズルの下端の開口面は、前記反応容器の底面と略平行となるように、当該吸引ノズルの軸方向に垂直な面に対して傾斜している。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記反応容器内に洗浄液を吐出する吐出ノズルをさらに有し、前記吸引ノズルは、前記洗浄液を含む前記反応容器内の液体を吸引する。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記吐出ノズルの下端は、前記吸引ノズルの下端よりも上方に位置する。
【0018】
本発明に係る洗浄装置は、上記吐出ノズルを含むノズル装置と、前記ノズル装置を用いて前記反応容器を洗浄する制御を行う制御手段と、を有することを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様では、前記制御手段は、前記吐出ノズルにより前記反応容器内に洗浄液を吐出しながら、前記複数の吸引ノズルにより前記洗浄液を含む前記反応容器内の液体を吸引する際、吸引に使用する吸引ノズルを1つずつ順次切り替える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、固相化表面に対する影響を抑制し、吸引ノズルの側面と反応容器の側面との間のメニスカスの形成を抑制しつつ、反応容器の隅部における液体の残留を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態に係るノズル装置の構成の一例を示す斜視図である。
【図2】実施の形態に係るノズル装置の構成の一例を示す上面図である。
【図3】実施の形態に係るノズル装置の構成の一例を示す底面図である。
【図4】実施の形態に係るノズル装置の構成の一例を示す第1の側面図である。
【図5】実施の形態に係るノズル装置の構成の一例を示す第2の側面図である。
【図6】ノズル装置を反応容器に挿入した様子を示す側面図である。
【図7】ノズル装置を反応容器に挿入した様子を示す底面図である。
【図8】実施の形態に係るノズル装置を含む自動分析装置の構成の一例を示す概略図である。
【図9】実施の形態に係るノズル装置を含む自動分析装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【図10】自動分析装置の全体の動作の一例を示すフローチャートである。
【図11】自動分析装置の洗浄に関する動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0023】
図1、2、3、4、5は、それぞれ本実施の形態に係るノズル装置10の構成の一例を示す斜視図、上面図、底面図、第1の側面図、第2の側面図である。このノズル装置10は、抗体または抗原が底面に固相化された免疫測定用の反応容器に用いられるものである。具体的には、ノズル装置10は、反応容器内の液体を吸引するためのものであり、より具体的には反応容器を洗浄するためのものである。図6、7は、それぞれノズル装置10を免疫測定用の反応容器20に挿入した様子を示す側面図、底面図である。
【0024】
まず、反応容器20について説明すると、反応容器20は、ELISAなど、抗原抗体反応を用いる免疫測定法(イムノアッセイ)に用いられるものである。
【0025】
図1に示されるように、反応容器20は、底壁部21と、当該底壁部21の周縁から上方に延びる側壁部22とを有し、底壁部21および側壁部22により液体を収容する液体収容部23が形成されている。反応容器20は、例えばウェルである。
【0026】
一つの態様では、底壁部21の表面は平面状であり、側壁部22の表面は底壁部21の表面に対して略垂直に設けられる。底壁部21および側壁部22は、例えば円柱状の液体収容部23を形成する。また、反応の効率化等の観点より、一つの態様では、反応容器20は、比較的底面積が広く浅い容器である。反応容器20の寸法は適宜に決められればよいが、例えば、内径8mm、深さ3mm、容積150μLである。
【0027】
反応容器20の底面(具体的には底壁部21の表面)には、抗体または抗原が固相化される。例えば、サンドイッチELISAにおいて、反応容器20の底面には、一次抗体が固相化される。反応容器20の側面(具体的には側壁部22の表面)にも、抗体または抗原が固相化されてもよい。
【0028】
ノズル装置10は、吐出ノズル11と、複数の吸引ノズル12−1,12−2,12−3と、ノズル保持部材13とを有する。
【0029】
吐出ノズル11は、反応容器20内に洗浄液を吐出する。構成の簡易化等の観点より、吐出ノズル11は、直線状の管で構成される。また、洗浄を均一に行う等の観点より、吐出ノズル11は、反応容器20の底面に対して垂直に設けられる。
【0030】
吸引ノズル12−1,12−2,12−3(以下、適宜「吸引ノズル12」と総称する)は、反応容器20内の液体を反応容器20に非接触で吸引する。具体的には、吸引ノズル12は、吐出ノズル11から吐出された洗浄液を含む反応容器20内の液体(廃液と言える)を吸引する。
【0031】
反応容器20の隅部における液体の残留を抑制する観点より、各吸引ノズル12は、反応容器20に挿入された際、当該吸引ノズル12の下端12aが反応容器20の底面と側面との間の隅部に近接して配置されるように構成されている。ここで、反応容器20の底面と側面との間の隅部は、具体的には、反応容器20の底壁部21と側壁部22との間に形成される隅部である。
【0032】
また、吸引ノズル12の側面と反応容器20の側面との間のメニスカスの形成を抑制する観点より、各吸引ノズル12は、反応容器20に挿入された際、当該吸引ノズル12の側面12bが下端から上方に向かうに従って反応容器20の側面から離れる傾斜を有するように構成されている。具体的には、各吸引ノズル12は、当該吸引ノズル12の側面12bが下端から上方に向かうにつれて反応容器20の側面から離れるように垂直方向に対して傾斜するように構成されている。また、吸引ノズル12は、吸引ノズル12の側面12bと反応容器20の側面との間隔が所定以上(例えば0.5mm以上)となるように配置される。
【0033】
また、構成の簡易化等の観点より、一つの態様では、各吸引ノズル12は、垂直方向に対して傾斜した直線状の管で構成される。例えば、各吸引ノズル12は、垂直方向に対して10°程度の傾斜を有する。ただし、吸引ノズル12は、直線状以外の形状であってもよく、例えば、垂直方向に延びる上側部分と垂直方向に対して傾斜した下側部分とを有する屈曲形状の管(例えば垂直方向に延びる管の下端部分だけを屈曲させたもの)であってもよい。
【0034】
また、一つの態様では、反応容器20内の液体を良好に吸引する等の観点より、各吸引ノズル12の下端の開口面12cは、反応容器20の底面と略平行となるように、当該吸引ノズル12の軸方向に垂直な面に対して傾斜している。例えば、吸引ノズル12の下端は、10°程度の傾斜でカットされている。
【0035】
また、残液量を少なくする等の観点より、一つの態様では、吸引ノズル12の下端12aは反応容器20の底面に比較的近づけて配置される。一方、吐出ノズル11の汚染を少なくする等の観点より、吐出ノズル11の下端11aは、反応容器20の底面から比較的離して配置され、吸引ノズル12の下端12aよりも上方に位置する。例えば、吸引ノズル12の下端12aは反応容器20の底面から0.5mm程度まで近づけられ、吐出ノズル11の下端11aは反応容器20の底面から2mm程度離される。
【0036】
また、ノズル間のメニスカスの形成を抑制する観点より、一つの態様では、吸引ノズル12同士の間および吐出ノズル11と吸引ノズル12との間は、所定間隔以上(例えば0.5mm以上)離される。
【0037】
また、洗浄を均一に行う等の観点より、一つの態様では、中央に吐出ノズル11が配置され、その周囲に複数の吸引ノズル12が配置される。複数の吸引ノズル12は、例えば均等間隔で配置される。
【0038】
吐出ノズル11および吸引ノズル12の寸法は、適宜設定されればよいが、例えば、外径1.8mm、開口径1.5mmである。
【0039】
ノズル保持部材13は、吐出ノズル11および複数の吸引ノズル12を保持する。ノズル保持部材13は、反応容器20に対して吐出ノズル11および複数の吸引ノズル12の位置を位置決めするための位置決め部材を有する。この位置決め部材は、上述の吐出ノズル11および吸引ノズル12の反応容器20に対する配置を実現する。図1〜5の例では、ノズル保持部材13は、吐出ノズル11および吸引ノズル12を保持する本体部13aと、当該本体部13aに接続された3つの位置決めガイド13bとを有する。本体部13aは吐出ノズル11および吸引ノズル12の中間部分を保持し、本体部13aの外周面の3箇所には、等間隔で、下方に延びる3つの位置決めガイド13bが取り付けられている。これらの位置決めガイド13bが反応容器20の外縁部24に接触させられることでノズルの位置決めが行われる。
【0040】
ノズル保持部材13は、ノズル装置10を駆動機構に取り付けるための部材を含んでもよい。図1〜5の例では、ノズル保持部材13の本体部13aの外周面には、ノズル装置10を駆動機構に取り付けるための取り付けブロック13cが設けられている。図1〜5の例では、取り付けブロック13cは、位置決めガイド13bの一つを兼ねる形で設けられている。
【0041】
なお、ノズル装置10の構成は、上記に限られず、適宜変更されてもよい。例えば、吸引ノズル12の本数は3本に限られず、2本であっても4本以上であってもよい。また、吐出ノズル11も2本以上であってもよい。また、例えば反応容器20内の液体を吸引する機能だけでよい場合には、吐出ノズル11は省略されてもよい。
【0042】
図8、9は、それぞれ本実施の形態に係るノズル装置10を含む自動分析装置100の構成の一例を示す概略図、機能ブロック図である。この自動分析装置100は、ELISAなどの免疫測定法を実行するものである。自動分析装置100は、ノズル装置10を用いて反応容器20を洗浄する洗浄装置としての機能を有し、図8、9には、自動分析装置100のうち、主として洗浄装置に関する部分が示されている。
【0043】
図8、9に示されるように、自動分析装置100は、ノズル装置10、ノズル駆動機構30、位置決め用センサ40、ノズル吐出吸引機構50、および制御装置60を含む。
【0044】
ノズル駆動機構30は、ノズル装置10を駆動して移動させる。具体的には、ノズル駆動機構30は、ノズル装置10を三次元方向に移動させる。図9では、ノズル駆動機構30は、ノズル装置10を水平方向に駆動するノズル水平駆動部31と、ノズル装置10を垂直方向に駆動するノズル垂直駆動部32とを含む。ノズル駆動機構30は、例えばノズル装置10の取り付けブロック13cに接続される。
【0045】
位置決め用センサ40は、反応容器20に対してノズル装置10を位置決めするためのセンサであり、例えば、位置決めガイド13bの反応容器20に対する接触を検知するジャミングセンサである。
【0046】
ノズル吐出吸引機構50は、吐出ノズル11および吸引ノズル12に接続され、吐出ノズル11に洗浄液の吐出を行わせ、吸引ノズル12に廃液の吸引を行わせる機構である。図8、9では、ノズル吐出吸引機構50は、吐出ノズル11に接続される洗浄液吐出用ポンプ51と、それぞれ対応する吸引ノズル12−1,12−2,12−3に接続される複数の廃液吸引用ポンプ52−1,52−2,52−3(以下、適宜「廃液吸引用ポンプ52」と総称する)とを含む。
【0047】
洗浄液吐出用ポンプ51は、洗浄液タンク71に貯蔵されている洗浄液を吐出ノズル11に供給して、吐出ノズル11から洗浄液を吐出させる。この洗浄液吐出用ポンプ51としては、例えばソレノイドポンプが用いられる。ソレノイドポンプはワンショット当たりの送液量が決まっているので、パルス信号入力で送液量がコントロールされる。
【0048】
廃液吸引用ポンプ52は、反応容器20内の液体(廃液)を吸引ノズル12により吸引して廃液タンク72に排出する。この廃液吸引用ポンプ52としては、例えば、ソレノイドポンプか、これより流量の大きいダイアフラムポンプ(100mL/min程度)が用いられる。一つの態様では、洗浄時に反応容器20内の液体を攪拌するために、廃液吸引用ポンプ52のうち少なくとも1つは、液体の吸引および吐出を細かく繰り返すことができるように構成される。この攪拌用の廃液吸引用ポンプとしては、例えばシリンジポンプが用いられる。図8、9では、廃液吸引用ポンプ52−3が攪拌用のシリンジポンプであり、この廃液吸引用ポンプ52−3は、攪拌および廃液のために流路を切り替えるための電磁弁53を介して吸引ノズル12−3および廃液タンク72に接続されている。
【0049】
制御装置60は、自動分析装置100の動作を制御する。具体的には、制御装置60は、ノズル装置10を用いて反応容器20を洗浄する制御を行う。
【0050】
制御装置60は、ノズル駆動機構30を制御してノズル装置10の位置を制御する。具体的には、制御装置60は、ノズル水平駆動部31およびノズル垂直駆動部32を制御して、ノズル装置10を水平方向および垂直方向に移動させ、位置合わせ用センサ40の出力に基づき、ノズル装置10を反応容器20に対して位置合わせする。
【0051】
また、制御装置60は、ノズル装置10の位置合わせ後、ノズル吐出吸引機構50を制御してノズル装置10による洗浄液の吐出および廃液の吸引を制御する。具体的には、制御装置60は、洗浄液吐出用ポンプ51を制御して吐出ノズル11から反応容器20に洗浄液を吐出させる。このとき、制御装置60は、反応容器20から液が溢れたり飛び散ったりすることがないように、送液量を制御する。また、制御装置60は、廃液吸引用ポンプ52を制御して複数の吸引ノズル12により反応容器20内の廃液を吸引して排出する。
【0052】
一つの態様では、制御装置60は、洗浄液を均等に流す等の観点より、吐出ノズル11により反応容器20内に洗浄液を吐出しながら、複数の吸引ノズル12により洗浄液を含む反応容器20内の液体を吸引する際、吸引に使用する吸引ノズル12を1つずつ順次切り替える。
【0053】
また、反応容器20内の未反応の物質を良好に洗い流す等の観点より、一つの態様では、制御装置60は、反応容器20内に洗浄液を溜めた後、少なくとも1つの吸引ノズル12により吸引および吐出を繰り返して反応容器20内の液体を攪拌する制御を行う。
【0054】
制御装置60は、一つの態様では、ハードウェア資源とソフトウェアとの協働により実現される。ただし、制御装置60は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。また、制御装置60は、物理的に1つの装置により実現されてもよいし、物理的に複数の装置により実現されてもよい。
【0055】
図9の例では、制御装置60は、制御部61、演算部62、記憶部63、表示部64、入力部65、および出力部66を有する。
【0056】
制御部61は、自動分析装置100の各種の駆動機構等の動作を制御する。具体的には、制御部61は、ノズル水平駆動部31およびノズル垂直駆動部32を制御して、ノズル装置10を移動させ、位置合わせ用センサ40の出力に基づき、ノズル装置10を位置合わせする。また、制御部61は、洗浄液吐出用ポンプ51および廃液吸引用ポンプ52−1,52−2,52−3を制御して、洗浄液の吐出および吸引を制御する。制御部61は、例えば、CPU(Central Processing Unit)や、CPUと通信する制御回路によって実現される。
【0057】
演算部62は、自動分析装置100の各部の動作を制御するための演算や、自動分析装置100により得られた情報を処理するための演算などを行う。演算部62は、例えばCPUにより実現される。
【0058】
記憶部63は、制御部61や演算部62に実行されるプログラムや、制御部61や演算部62で取得された情報などの各種の情報を記憶する。記憶部63は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク等の外部記憶装置を含む。
【0059】
表示部64は、自動分析装置100を操作するための情報や、自動分析装置100で得られた測定結果など、各種の情報を表示するものであり、例えば液晶ディスプレイなどである。
【0060】
入力部65は、自動分析装置100に対する指示などの各種の情報を利用者や他の装置から受け付けるものであり、例えば、キーボード、マウス、通信インタフェースなどである。
【0061】
出力部66は、自動分析装置100で得られた測定結果などの情報を外部のコンピュータなどの装置に出力するものであり、例えば通信インタフェースなどである。
【0062】
図10は、自動分析装置100の全体の動作の一例を示すフローチャートである。以下、図10を参照して、自動分析装置100の全体の動作の一例を説明する。ここでは、サンドイッチELISA法(酵素免疫測定法)を例にとって説明する。
【0063】
まず、一次抗体が固相化された反応容器20に、測定対象となる抗原を含む検体(例えば血清や尿)を分注し(S10)、数分間インキュベートして一次反応させ、一次抗体に抗原を結合させる(S20)。
【0064】
次に、一次洗浄(B/F分離)を行って、未反応の抗原などを除去する(S30)。
【0065】
次に、酵素標識された二次抗体の溶液を反応容器20に分注し(S40)、数分間インキュベートして二次反応させ、抗原に二次抗体を結合させる(S50)。これにより、一次抗体/目的とする抗原/二次抗体複合体が生成される。
【0066】
次に、二次洗浄(B/F分離)を行って、未反応の二次抗体などを除去する(S60)。次に、発光基質を反応容器20に分注し(S70)、数分間インキュベートして、酵素と発光基質を反応させる(S80)。
【0067】
そして、光電子増倍管などの光検出器によって、反応容器20内の液体の発光量を測定する(S90)。
【0068】
図11は、自動分析装置100の洗浄に関する動作の一例を示すフローチャートである。以下、図11を参照して、自動分析装置100の洗浄に関する動作の一例を説明する。この洗浄に関する動作は、具体的には、図10の一次洗浄および二次洗浄の両方または一方で行われるものである。
【0069】
まず、ノズル駆動機構30を用いて、ノズル装置10を反応容器20の上方の位置に移動させた後、下降させる(S1)。
【0070】
位置決めガイド13bが反応容器20の外縁部24に接触し、位置決め用センサ40の出力がオンになると、ノズル装置10の下降を停止させる(S2)。
【0071】
次に、洗浄液吐出用ポンプ51による吐出ノズル11から反応容器20への洗浄液の吐出を開始させる(S3a)。
【0072】
そして、洗浄液を吐出しながら、吸引ノズル12−1,12−2,12−3から廃液を廃液吸引用ポンプ52−1,52−2,52−3で吸引する(S3b,S3c,S3d)。このとき、洗浄液を均等に流すために、吸引する吸引ノズルを1本ずつ順番に切り替える。具体的には、吸引ノズル12−1による吸引(S3b)、吸引ノズル12−2による吸引(S3c)、および吸引ノズル12−3による吸引(S3d)を順番に行う。
【0073】
所定の繰り返し条件が満たされるか否かを判断し(S3e)、満たされると判断される場合には(S3e:YES)、ステップS3bに処理を戻して吸引を繰り返し行う。したがって、例えば、所定時間が経過するまでや、所定量の洗浄液が吐出されるまで、吸引が繰り返し行われる。
【0074】
所定の繰り返し条件が満たされないと判断されると(S3e:NO)、吐出ノズル11からの洗浄液の吐出を終了させる(S3f)。
【0075】
次に、洗浄液吐出ポンプ51により反応容器20に洗浄液を溜めた後、洗浄液吐出ポンプ51の動作を停止させる(S4a)。
【0076】
そして、廃液吸引用ポンプ52−3(シリンジポンプ)で高速かつ少量で吸引および吐出を繰り返す、攪拌動作を行う(S4b)。
【0077】
所定の繰り返し条件が満たされるか否かを判断し(S4c)、満たされると判断される場合には(S4c:YES)、廃液吸引用ポンプ52−1,52−2で反応容器20内の廃液を吸引して排出した後(S4d)、ステップS4aに処理を戻し、洗浄液を溜めて攪拌する動作を繰り返し行う。
【0078】
所定の繰り返し条件が満たされないと判断されると(S4c:NO)、反応容器20内の廃液を吸い取る(S5)。具体的には、ノズル側面への液の付着を少なくするため、廃液吸引用ポンプ52−3により低速で廃液を吸引する。
【0079】
次に、廃液吸引用ポンプ52−1,52−2(ソレノイドポンプまたはダイアフラムポンプ)で反応容器20の隅部の残液を吸い取り、洗浄が完了する(S6)。
【0080】
次に、ノズルの液だれ防止のため、洗浄液吐出用ポンプ51および廃液吸引用ポンプ52−1,52−2,52−3により少量のエア吸引を行う(S7)。
【0081】
次に、ノズル駆動機構30を用いて、ノズル装置10をノズル洗浄セルへ移動させ(S8a)、ノズル洗浄セルに洗浄液を溜め、ノズル装置10のノズルの洗浄を行う(S8b)。このとき、超音波洗浄機構で洗浄を行ってもよい。この洗浄の完了後には、ノズル洗浄セル内の残液が吸い取られる。
【0082】
以上説明した本実施の形態によれば、以下の効果が得られ得る。
【0083】
(1)本実施の形態では、ノズル装置は、反応容器内の液体を反応容器に非接触で吸引する複数の吸引ノズルを有し、各吸引ノズルは、反応容器に挿入された際、当該吸引ノズルの下端が反応容器の底面と側面との間の隅部に近接して配置され、当該吸引ノズルの側面が下端から上方に向かうに従って反応容器の側面から離れる傾斜を有するように構成されている。このため、本実施の形態によれば、固相化表面に対する影響を抑制し、吸引ノズルの側面と反応容器の側面との間のメニスカスの形成を抑制しつつ、反応容器の隅部における液体の残留を抑制することが可能となる。
【0084】
(2)各吸引ノズルは、垂直方向に対して傾斜した直線状の管で構成される。これにより、構成を簡易化することができる。
【0085】
(3)各吸引ノズルの下端の開口面は、反応容器の底面と略平行となるように、当該吸引ノズルの軸方向に垂直な面に対して傾斜している。これにより、反応容器の液体を良好に吸引することができる。
【0086】
(4)ノズル装置は反応容器内に洗浄液を吐出する吐出ノズルをさらに有し、吸引ノズルは洗浄液を含む反応容器内の液体を吸引する。これにより、反応容器を洗浄液で洗浄することができる。また、このときの洗浄液の残留を抑制することができる。
【0087】
(5)吐出ノズルの下端は、吸引ノズルの下端よりも上方に位置する。これにより、反応容器内の液による吐出ノズルの汚染を回避または軽減することができる。
【0088】
(6)吐出ノズルにより反応容器内に洗浄液を吐出しながら、複数の吸引ノズルにより洗浄液を含む反応容器内の液体を吸引する際、吸引に使用する吸引ノズルを1つずつ順次切り替える。これにより、洗浄液を均等に流すことができる。
【0089】
(7)吐出ノズルが中央に配置され、その周囲に複数の吸引ノズルが均等に配置される。これにより、均一な洗浄が可能になる。
【0090】
(8)ノズル間は所定間隔以上離される。これにより、ノズル間の隙間に液が入り込むことを抑制することができ、例えばキャリーオーバを回避または軽減することが可能となる。
【0091】
(9)ノズル装置は、当該ノズル装置を反応容器に対して位置決めするための部材を有する。これにより、吸引ノズルの下端と反応容器の底面との距離を一定に位置決めでき、残液なく液を吸引することが可能となる。
【符号の説明】
【0092】
10 ノズル装置、11 吐出ノズル、12(12−1,12−2,12−3) 吸引ノズル、12a 下端、12b 側面、12c 開口面、13 ノズル保持部材、13a 本体部、13b 位置決めガイド、13c 取り付けブロック、20 反応容器、21 底壁部、22 側壁部、23 液体収容部、24 外縁部、30 ノズル駆動機構、31 ノズル水平駆動部、32 ノズル垂直駆動部、40 位置決め用センサ、50 ノズル吐出吸引機構、51 洗浄液吐出用ポンプ、52(52−1,52−2,52−3) 廃液吸引用ポンプ、53 電磁弁、60 制御装置、61 制御部、62 演算部、63 記憶部、64 表示部、65 入力部、66 出力部、71 洗浄液タンク、72 廃液タンク、100 自動分析装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫測定用の反応容器に用いられるノズル装置および洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)など、抗原抗体反応を用いる免疫測定法(イムノアッセイ)が知られている。免疫測定法では、例えばB/F分離など、反応容器の洗浄は、正確な分析を行う上で重要である。
【0003】
例えば、サンドイッチELISAでは、抗体(または抗原)が固相化された反応容器に、測定対象となる抗原(または抗体)を含む検体を分注し、検体中の抗原等を固相化された抗体等に結合させる。その後、洗浄(B/F分離)により、未反応の抗原等を除去する。そして、酵素標識された抗体(または抗原)を含む溶液を分注し、固相化表面に結合した抗原等に酵素標識された抗体等を結合させる。その後、洗浄(B/F分離)により未反応の抗体等を除去した後、蛍光や化学発光等を検出する。上記の洗浄は、洗浄液を吐出して吸引することにより行われる。この洗浄が良好に行われないと、未反応の物質が残留し、S/Nの低下など、分析結果に悪影響を及ぼす。
【0004】
特許文献1には、抗原抗体反応を利用して試料の検査を行う際、ウェル内面に試薬がコーティングされたマイクロプレートのウェルに試料を注ぎ込んだ後、未反応試料を吸引する際、ウェル内面に形成された反応生成物に悪影響を与えることなく、未反応試料を効果的に除去するための吸引装置が記載されている。この吸引装置は、ウェル内に洗浄液を吐出する吐出ノズルと、ウェル内の液体を吸引する複数の吸引ノズルとを有し、これらのノズルの先端を、ウェル内に入れた状態で、ウェルの底面に沿って所定の経路で移動させるものである。
【0005】
また、特許文献2には、マイクロプレート上のウェルなどの容器内の液体を能率的に吸引するためのノズル装置が記載されている。このノズル装置では、容器内の液体を吸引するノズルは、先端側が屈曲可能な複数の吸引触手に分かれた刷毛状部を有する。複数の刷毛状部は容器底面に当接することにより屈曲して放射状に広がり、この状態で容器内の液体の吸引が行われる。
【0006】
また、特許文献3には、免疫反応等の生化学反応測定に使用される、反応容器内部洗浄用のノズル装置として、洗浄液を吐出するための内管と、容器中の液体を吸引するための外管とを有するものが記載されている。
【0007】
なお、特許文献4には、容器内部を洗浄する洗浄ノズルを円滑に容器内に挿入するための技術として、洗浄ノズルの容器内部への挿入を案内する挿入補助部材を容器の開口の上部に配置するものが記載されている。
【0008】
また、特許文献5には、分注ノズルの周囲に複数の管を配置し、この管内に圧縮空気を流すことで、分注ノズルの先端に付着した液体を除去する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−83939号公報
【特許文献2】特開2003−42912号公報
【特許文献3】特開平4−164256号公報
【特許文献4】特開2009−36595号公報
【特許文献5】特開2009−31174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、免疫測定用の反応容器内の洗浄液等の液体を吸引する場合、反応容器内の液体の残留は、例えばS/Nの低下など、測定に悪影響を及ぼす可能性がある。このようなことから液体を残らず吸引したいという要望があるところ、容器の底面と側面との間の隅部には液体が残りやすい。また、吸引ノズルの側面と反応容器の側面との間隔が狭いと、その間にメニスカスが形成され、液体が残りやすい。
【0011】
また、吸引ノズルを反応容器の底面に接触させて吸引する構成では、反応容器の底面の固相化表面に悪影響を及ぼしてしまう。
【0012】
そこで、本発明は、固相化表面に対する影響を抑制し、吸引ノズルの側面と反応容器の側面との間のメニスカスの形成を抑制しつつ、反応容器の隅部における液体の残留を抑制することが可能なノズル装置および洗浄装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るノズル装置は、抗体または抗原が底面に固相化された免疫測定用の反応容器に用いられるノズル装置であって、前記反応容器内の液体を前記反応容器に非接触で吸引する複数の吸引ノズルを有し、前記各吸引ノズルは、前記反応容器に挿入された際、当該吸引ノズルの下端が前記反応容器の底面と側面との間の隅部に近接して配置され、当該吸引ノズルの側面が下端から上方に向かうに従って前記反応容器の側面から離れる傾斜を有するように構成されている、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様では、前記各吸引ノズルは、垂直方向に対して傾斜した直線状の管で構成される。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記各吸引ノズルの下端の開口面は、前記反応容器の底面と略平行となるように、当該吸引ノズルの軸方向に垂直な面に対して傾斜している。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記反応容器内に洗浄液を吐出する吐出ノズルをさらに有し、前記吸引ノズルは、前記洗浄液を含む前記反応容器内の液体を吸引する。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記吐出ノズルの下端は、前記吸引ノズルの下端よりも上方に位置する。
【0018】
本発明に係る洗浄装置は、上記吐出ノズルを含むノズル装置と、前記ノズル装置を用いて前記反応容器を洗浄する制御を行う制御手段と、を有することを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様では、前記制御手段は、前記吐出ノズルにより前記反応容器内に洗浄液を吐出しながら、前記複数の吸引ノズルにより前記洗浄液を含む前記反応容器内の液体を吸引する際、吸引に使用する吸引ノズルを1つずつ順次切り替える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、固相化表面に対する影響を抑制し、吸引ノズルの側面と反応容器の側面との間のメニスカスの形成を抑制しつつ、反応容器の隅部における液体の残留を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態に係るノズル装置の構成の一例を示す斜視図である。
【図2】実施の形態に係るノズル装置の構成の一例を示す上面図である。
【図3】実施の形態に係るノズル装置の構成の一例を示す底面図である。
【図4】実施の形態に係るノズル装置の構成の一例を示す第1の側面図である。
【図5】実施の形態に係るノズル装置の構成の一例を示す第2の側面図である。
【図6】ノズル装置を反応容器に挿入した様子を示す側面図である。
【図7】ノズル装置を反応容器に挿入した様子を示す底面図である。
【図8】実施の形態に係るノズル装置を含む自動分析装置の構成の一例を示す概略図である。
【図9】実施の形態に係るノズル装置を含む自動分析装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【図10】自動分析装置の全体の動作の一例を示すフローチャートである。
【図11】自動分析装置の洗浄に関する動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0023】
図1、2、3、4、5は、それぞれ本実施の形態に係るノズル装置10の構成の一例を示す斜視図、上面図、底面図、第1の側面図、第2の側面図である。このノズル装置10は、抗体または抗原が底面に固相化された免疫測定用の反応容器に用いられるものである。具体的には、ノズル装置10は、反応容器内の液体を吸引するためのものであり、より具体的には反応容器を洗浄するためのものである。図6、7は、それぞれノズル装置10を免疫測定用の反応容器20に挿入した様子を示す側面図、底面図である。
【0024】
まず、反応容器20について説明すると、反応容器20は、ELISAなど、抗原抗体反応を用いる免疫測定法(イムノアッセイ)に用いられるものである。
【0025】
図1に示されるように、反応容器20は、底壁部21と、当該底壁部21の周縁から上方に延びる側壁部22とを有し、底壁部21および側壁部22により液体を収容する液体収容部23が形成されている。反応容器20は、例えばウェルである。
【0026】
一つの態様では、底壁部21の表面は平面状であり、側壁部22の表面は底壁部21の表面に対して略垂直に設けられる。底壁部21および側壁部22は、例えば円柱状の液体収容部23を形成する。また、反応の効率化等の観点より、一つの態様では、反応容器20は、比較的底面積が広く浅い容器である。反応容器20の寸法は適宜に決められればよいが、例えば、内径8mm、深さ3mm、容積150μLである。
【0027】
反応容器20の底面(具体的には底壁部21の表面)には、抗体または抗原が固相化される。例えば、サンドイッチELISAにおいて、反応容器20の底面には、一次抗体が固相化される。反応容器20の側面(具体的には側壁部22の表面)にも、抗体または抗原が固相化されてもよい。
【0028】
ノズル装置10は、吐出ノズル11と、複数の吸引ノズル12−1,12−2,12−3と、ノズル保持部材13とを有する。
【0029】
吐出ノズル11は、反応容器20内に洗浄液を吐出する。構成の簡易化等の観点より、吐出ノズル11は、直線状の管で構成される。また、洗浄を均一に行う等の観点より、吐出ノズル11は、反応容器20の底面に対して垂直に設けられる。
【0030】
吸引ノズル12−1,12−2,12−3(以下、適宜「吸引ノズル12」と総称する)は、反応容器20内の液体を反応容器20に非接触で吸引する。具体的には、吸引ノズル12は、吐出ノズル11から吐出された洗浄液を含む反応容器20内の液体(廃液と言える)を吸引する。
【0031】
反応容器20の隅部における液体の残留を抑制する観点より、各吸引ノズル12は、反応容器20に挿入された際、当該吸引ノズル12の下端12aが反応容器20の底面と側面との間の隅部に近接して配置されるように構成されている。ここで、反応容器20の底面と側面との間の隅部は、具体的には、反応容器20の底壁部21と側壁部22との間に形成される隅部である。
【0032】
また、吸引ノズル12の側面と反応容器20の側面との間のメニスカスの形成を抑制する観点より、各吸引ノズル12は、反応容器20に挿入された際、当該吸引ノズル12の側面12bが下端から上方に向かうに従って反応容器20の側面から離れる傾斜を有するように構成されている。具体的には、各吸引ノズル12は、当該吸引ノズル12の側面12bが下端から上方に向かうにつれて反応容器20の側面から離れるように垂直方向に対して傾斜するように構成されている。また、吸引ノズル12は、吸引ノズル12の側面12bと反応容器20の側面との間隔が所定以上(例えば0.5mm以上)となるように配置される。
【0033】
また、構成の簡易化等の観点より、一つの態様では、各吸引ノズル12は、垂直方向に対して傾斜した直線状の管で構成される。例えば、各吸引ノズル12は、垂直方向に対して10°程度の傾斜を有する。ただし、吸引ノズル12は、直線状以外の形状であってもよく、例えば、垂直方向に延びる上側部分と垂直方向に対して傾斜した下側部分とを有する屈曲形状の管(例えば垂直方向に延びる管の下端部分だけを屈曲させたもの)であってもよい。
【0034】
また、一つの態様では、反応容器20内の液体を良好に吸引する等の観点より、各吸引ノズル12の下端の開口面12cは、反応容器20の底面と略平行となるように、当該吸引ノズル12の軸方向に垂直な面に対して傾斜している。例えば、吸引ノズル12の下端は、10°程度の傾斜でカットされている。
【0035】
また、残液量を少なくする等の観点より、一つの態様では、吸引ノズル12の下端12aは反応容器20の底面に比較的近づけて配置される。一方、吐出ノズル11の汚染を少なくする等の観点より、吐出ノズル11の下端11aは、反応容器20の底面から比較的離して配置され、吸引ノズル12の下端12aよりも上方に位置する。例えば、吸引ノズル12の下端12aは反応容器20の底面から0.5mm程度まで近づけられ、吐出ノズル11の下端11aは反応容器20の底面から2mm程度離される。
【0036】
また、ノズル間のメニスカスの形成を抑制する観点より、一つの態様では、吸引ノズル12同士の間および吐出ノズル11と吸引ノズル12との間は、所定間隔以上(例えば0.5mm以上)離される。
【0037】
また、洗浄を均一に行う等の観点より、一つの態様では、中央に吐出ノズル11が配置され、その周囲に複数の吸引ノズル12が配置される。複数の吸引ノズル12は、例えば均等間隔で配置される。
【0038】
吐出ノズル11および吸引ノズル12の寸法は、適宜設定されればよいが、例えば、外径1.8mm、開口径1.5mmである。
【0039】
ノズル保持部材13は、吐出ノズル11および複数の吸引ノズル12を保持する。ノズル保持部材13は、反応容器20に対して吐出ノズル11および複数の吸引ノズル12の位置を位置決めするための位置決め部材を有する。この位置決め部材は、上述の吐出ノズル11および吸引ノズル12の反応容器20に対する配置を実現する。図1〜5の例では、ノズル保持部材13は、吐出ノズル11および吸引ノズル12を保持する本体部13aと、当該本体部13aに接続された3つの位置決めガイド13bとを有する。本体部13aは吐出ノズル11および吸引ノズル12の中間部分を保持し、本体部13aの外周面の3箇所には、等間隔で、下方に延びる3つの位置決めガイド13bが取り付けられている。これらの位置決めガイド13bが反応容器20の外縁部24に接触させられることでノズルの位置決めが行われる。
【0040】
ノズル保持部材13は、ノズル装置10を駆動機構に取り付けるための部材を含んでもよい。図1〜5の例では、ノズル保持部材13の本体部13aの外周面には、ノズル装置10を駆動機構に取り付けるための取り付けブロック13cが設けられている。図1〜5の例では、取り付けブロック13cは、位置決めガイド13bの一つを兼ねる形で設けられている。
【0041】
なお、ノズル装置10の構成は、上記に限られず、適宜変更されてもよい。例えば、吸引ノズル12の本数は3本に限られず、2本であっても4本以上であってもよい。また、吐出ノズル11も2本以上であってもよい。また、例えば反応容器20内の液体を吸引する機能だけでよい場合には、吐出ノズル11は省略されてもよい。
【0042】
図8、9は、それぞれ本実施の形態に係るノズル装置10を含む自動分析装置100の構成の一例を示す概略図、機能ブロック図である。この自動分析装置100は、ELISAなどの免疫測定法を実行するものである。自動分析装置100は、ノズル装置10を用いて反応容器20を洗浄する洗浄装置としての機能を有し、図8、9には、自動分析装置100のうち、主として洗浄装置に関する部分が示されている。
【0043】
図8、9に示されるように、自動分析装置100は、ノズル装置10、ノズル駆動機構30、位置決め用センサ40、ノズル吐出吸引機構50、および制御装置60を含む。
【0044】
ノズル駆動機構30は、ノズル装置10を駆動して移動させる。具体的には、ノズル駆動機構30は、ノズル装置10を三次元方向に移動させる。図9では、ノズル駆動機構30は、ノズル装置10を水平方向に駆動するノズル水平駆動部31と、ノズル装置10を垂直方向に駆動するノズル垂直駆動部32とを含む。ノズル駆動機構30は、例えばノズル装置10の取り付けブロック13cに接続される。
【0045】
位置決め用センサ40は、反応容器20に対してノズル装置10を位置決めするためのセンサであり、例えば、位置決めガイド13bの反応容器20に対する接触を検知するジャミングセンサである。
【0046】
ノズル吐出吸引機構50は、吐出ノズル11および吸引ノズル12に接続され、吐出ノズル11に洗浄液の吐出を行わせ、吸引ノズル12に廃液の吸引を行わせる機構である。図8、9では、ノズル吐出吸引機構50は、吐出ノズル11に接続される洗浄液吐出用ポンプ51と、それぞれ対応する吸引ノズル12−1,12−2,12−3に接続される複数の廃液吸引用ポンプ52−1,52−2,52−3(以下、適宜「廃液吸引用ポンプ52」と総称する)とを含む。
【0047】
洗浄液吐出用ポンプ51は、洗浄液タンク71に貯蔵されている洗浄液を吐出ノズル11に供給して、吐出ノズル11から洗浄液を吐出させる。この洗浄液吐出用ポンプ51としては、例えばソレノイドポンプが用いられる。ソレノイドポンプはワンショット当たりの送液量が決まっているので、パルス信号入力で送液量がコントロールされる。
【0048】
廃液吸引用ポンプ52は、反応容器20内の液体(廃液)を吸引ノズル12により吸引して廃液タンク72に排出する。この廃液吸引用ポンプ52としては、例えば、ソレノイドポンプか、これより流量の大きいダイアフラムポンプ(100mL/min程度)が用いられる。一つの態様では、洗浄時に反応容器20内の液体を攪拌するために、廃液吸引用ポンプ52のうち少なくとも1つは、液体の吸引および吐出を細かく繰り返すことができるように構成される。この攪拌用の廃液吸引用ポンプとしては、例えばシリンジポンプが用いられる。図8、9では、廃液吸引用ポンプ52−3が攪拌用のシリンジポンプであり、この廃液吸引用ポンプ52−3は、攪拌および廃液のために流路を切り替えるための電磁弁53を介して吸引ノズル12−3および廃液タンク72に接続されている。
【0049】
制御装置60は、自動分析装置100の動作を制御する。具体的には、制御装置60は、ノズル装置10を用いて反応容器20を洗浄する制御を行う。
【0050】
制御装置60は、ノズル駆動機構30を制御してノズル装置10の位置を制御する。具体的には、制御装置60は、ノズル水平駆動部31およびノズル垂直駆動部32を制御して、ノズル装置10を水平方向および垂直方向に移動させ、位置合わせ用センサ40の出力に基づき、ノズル装置10を反応容器20に対して位置合わせする。
【0051】
また、制御装置60は、ノズル装置10の位置合わせ後、ノズル吐出吸引機構50を制御してノズル装置10による洗浄液の吐出および廃液の吸引を制御する。具体的には、制御装置60は、洗浄液吐出用ポンプ51を制御して吐出ノズル11から反応容器20に洗浄液を吐出させる。このとき、制御装置60は、反応容器20から液が溢れたり飛び散ったりすることがないように、送液量を制御する。また、制御装置60は、廃液吸引用ポンプ52を制御して複数の吸引ノズル12により反応容器20内の廃液を吸引して排出する。
【0052】
一つの態様では、制御装置60は、洗浄液を均等に流す等の観点より、吐出ノズル11により反応容器20内に洗浄液を吐出しながら、複数の吸引ノズル12により洗浄液を含む反応容器20内の液体を吸引する際、吸引に使用する吸引ノズル12を1つずつ順次切り替える。
【0053】
また、反応容器20内の未反応の物質を良好に洗い流す等の観点より、一つの態様では、制御装置60は、反応容器20内に洗浄液を溜めた後、少なくとも1つの吸引ノズル12により吸引および吐出を繰り返して反応容器20内の液体を攪拌する制御を行う。
【0054】
制御装置60は、一つの態様では、ハードウェア資源とソフトウェアとの協働により実現される。ただし、制御装置60は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。また、制御装置60は、物理的に1つの装置により実現されてもよいし、物理的に複数の装置により実現されてもよい。
【0055】
図9の例では、制御装置60は、制御部61、演算部62、記憶部63、表示部64、入力部65、および出力部66を有する。
【0056】
制御部61は、自動分析装置100の各種の駆動機構等の動作を制御する。具体的には、制御部61は、ノズル水平駆動部31およびノズル垂直駆動部32を制御して、ノズル装置10を移動させ、位置合わせ用センサ40の出力に基づき、ノズル装置10を位置合わせする。また、制御部61は、洗浄液吐出用ポンプ51および廃液吸引用ポンプ52−1,52−2,52−3を制御して、洗浄液の吐出および吸引を制御する。制御部61は、例えば、CPU(Central Processing Unit)や、CPUと通信する制御回路によって実現される。
【0057】
演算部62は、自動分析装置100の各部の動作を制御するための演算や、自動分析装置100により得られた情報を処理するための演算などを行う。演算部62は、例えばCPUにより実現される。
【0058】
記憶部63は、制御部61や演算部62に実行されるプログラムや、制御部61や演算部62で取得された情報などの各種の情報を記憶する。記憶部63は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク等の外部記憶装置を含む。
【0059】
表示部64は、自動分析装置100を操作するための情報や、自動分析装置100で得られた測定結果など、各種の情報を表示するものであり、例えば液晶ディスプレイなどである。
【0060】
入力部65は、自動分析装置100に対する指示などの各種の情報を利用者や他の装置から受け付けるものであり、例えば、キーボード、マウス、通信インタフェースなどである。
【0061】
出力部66は、自動分析装置100で得られた測定結果などの情報を外部のコンピュータなどの装置に出力するものであり、例えば通信インタフェースなどである。
【0062】
図10は、自動分析装置100の全体の動作の一例を示すフローチャートである。以下、図10を参照して、自動分析装置100の全体の動作の一例を説明する。ここでは、サンドイッチELISA法(酵素免疫測定法)を例にとって説明する。
【0063】
まず、一次抗体が固相化された反応容器20に、測定対象となる抗原を含む検体(例えば血清や尿)を分注し(S10)、数分間インキュベートして一次反応させ、一次抗体に抗原を結合させる(S20)。
【0064】
次に、一次洗浄(B/F分離)を行って、未反応の抗原などを除去する(S30)。
【0065】
次に、酵素標識された二次抗体の溶液を反応容器20に分注し(S40)、数分間インキュベートして二次反応させ、抗原に二次抗体を結合させる(S50)。これにより、一次抗体/目的とする抗原/二次抗体複合体が生成される。
【0066】
次に、二次洗浄(B/F分離)を行って、未反応の二次抗体などを除去する(S60)。次に、発光基質を反応容器20に分注し(S70)、数分間インキュベートして、酵素と発光基質を反応させる(S80)。
【0067】
そして、光電子増倍管などの光検出器によって、反応容器20内の液体の発光量を測定する(S90)。
【0068】
図11は、自動分析装置100の洗浄に関する動作の一例を示すフローチャートである。以下、図11を参照して、自動分析装置100の洗浄に関する動作の一例を説明する。この洗浄に関する動作は、具体的には、図10の一次洗浄および二次洗浄の両方または一方で行われるものである。
【0069】
まず、ノズル駆動機構30を用いて、ノズル装置10を反応容器20の上方の位置に移動させた後、下降させる(S1)。
【0070】
位置決めガイド13bが反応容器20の外縁部24に接触し、位置決め用センサ40の出力がオンになると、ノズル装置10の下降を停止させる(S2)。
【0071】
次に、洗浄液吐出用ポンプ51による吐出ノズル11から反応容器20への洗浄液の吐出を開始させる(S3a)。
【0072】
そして、洗浄液を吐出しながら、吸引ノズル12−1,12−2,12−3から廃液を廃液吸引用ポンプ52−1,52−2,52−3で吸引する(S3b,S3c,S3d)。このとき、洗浄液を均等に流すために、吸引する吸引ノズルを1本ずつ順番に切り替える。具体的には、吸引ノズル12−1による吸引(S3b)、吸引ノズル12−2による吸引(S3c)、および吸引ノズル12−3による吸引(S3d)を順番に行う。
【0073】
所定の繰り返し条件が満たされるか否かを判断し(S3e)、満たされると判断される場合には(S3e:YES)、ステップS3bに処理を戻して吸引を繰り返し行う。したがって、例えば、所定時間が経過するまでや、所定量の洗浄液が吐出されるまで、吸引が繰り返し行われる。
【0074】
所定の繰り返し条件が満たされないと判断されると(S3e:NO)、吐出ノズル11からの洗浄液の吐出を終了させる(S3f)。
【0075】
次に、洗浄液吐出ポンプ51により反応容器20に洗浄液を溜めた後、洗浄液吐出ポンプ51の動作を停止させる(S4a)。
【0076】
そして、廃液吸引用ポンプ52−3(シリンジポンプ)で高速かつ少量で吸引および吐出を繰り返す、攪拌動作を行う(S4b)。
【0077】
所定の繰り返し条件が満たされるか否かを判断し(S4c)、満たされると判断される場合には(S4c:YES)、廃液吸引用ポンプ52−1,52−2で反応容器20内の廃液を吸引して排出した後(S4d)、ステップS4aに処理を戻し、洗浄液を溜めて攪拌する動作を繰り返し行う。
【0078】
所定の繰り返し条件が満たされないと判断されると(S4c:NO)、反応容器20内の廃液を吸い取る(S5)。具体的には、ノズル側面への液の付着を少なくするため、廃液吸引用ポンプ52−3により低速で廃液を吸引する。
【0079】
次に、廃液吸引用ポンプ52−1,52−2(ソレノイドポンプまたはダイアフラムポンプ)で反応容器20の隅部の残液を吸い取り、洗浄が完了する(S6)。
【0080】
次に、ノズルの液だれ防止のため、洗浄液吐出用ポンプ51および廃液吸引用ポンプ52−1,52−2,52−3により少量のエア吸引を行う(S7)。
【0081】
次に、ノズル駆動機構30を用いて、ノズル装置10をノズル洗浄セルへ移動させ(S8a)、ノズル洗浄セルに洗浄液を溜め、ノズル装置10のノズルの洗浄を行う(S8b)。このとき、超音波洗浄機構で洗浄を行ってもよい。この洗浄の完了後には、ノズル洗浄セル内の残液が吸い取られる。
【0082】
以上説明した本実施の形態によれば、以下の効果が得られ得る。
【0083】
(1)本実施の形態では、ノズル装置は、反応容器内の液体を反応容器に非接触で吸引する複数の吸引ノズルを有し、各吸引ノズルは、反応容器に挿入された際、当該吸引ノズルの下端が反応容器の底面と側面との間の隅部に近接して配置され、当該吸引ノズルの側面が下端から上方に向かうに従って反応容器の側面から離れる傾斜を有するように構成されている。このため、本実施の形態によれば、固相化表面に対する影響を抑制し、吸引ノズルの側面と反応容器の側面との間のメニスカスの形成を抑制しつつ、反応容器の隅部における液体の残留を抑制することが可能となる。
【0084】
(2)各吸引ノズルは、垂直方向に対して傾斜した直線状の管で構成される。これにより、構成を簡易化することができる。
【0085】
(3)各吸引ノズルの下端の開口面は、反応容器の底面と略平行となるように、当該吸引ノズルの軸方向に垂直な面に対して傾斜している。これにより、反応容器の液体を良好に吸引することができる。
【0086】
(4)ノズル装置は反応容器内に洗浄液を吐出する吐出ノズルをさらに有し、吸引ノズルは洗浄液を含む反応容器内の液体を吸引する。これにより、反応容器を洗浄液で洗浄することができる。また、このときの洗浄液の残留を抑制することができる。
【0087】
(5)吐出ノズルの下端は、吸引ノズルの下端よりも上方に位置する。これにより、反応容器内の液による吐出ノズルの汚染を回避または軽減することができる。
【0088】
(6)吐出ノズルにより反応容器内に洗浄液を吐出しながら、複数の吸引ノズルにより洗浄液を含む反応容器内の液体を吸引する際、吸引に使用する吸引ノズルを1つずつ順次切り替える。これにより、洗浄液を均等に流すことができる。
【0089】
(7)吐出ノズルが中央に配置され、その周囲に複数の吸引ノズルが均等に配置される。これにより、均一な洗浄が可能になる。
【0090】
(8)ノズル間は所定間隔以上離される。これにより、ノズル間の隙間に液が入り込むことを抑制することができ、例えばキャリーオーバを回避または軽減することが可能となる。
【0091】
(9)ノズル装置は、当該ノズル装置を反応容器に対して位置決めするための部材を有する。これにより、吸引ノズルの下端と反応容器の底面との距離を一定に位置決めでき、残液なく液を吸引することが可能となる。
【符号の説明】
【0092】
10 ノズル装置、11 吐出ノズル、12(12−1,12−2,12−3) 吸引ノズル、12a 下端、12b 側面、12c 開口面、13 ノズル保持部材、13a 本体部、13b 位置決めガイド、13c 取り付けブロック、20 反応容器、21 底壁部、22 側壁部、23 液体収容部、24 外縁部、30 ノズル駆動機構、31 ノズル水平駆動部、32 ノズル垂直駆動部、40 位置決め用センサ、50 ノズル吐出吸引機構、51 洗浄液吐出用ポンプ、52(52−1,52−2,52−3) 廃液吸引用ポンプ、53 電磁弁、60 制御装置、61 制御部、62 演算部、63 記憶部、64 表示部、65 入力部、66 出力部、71 洗浄液タンク、72 廃液タンク、100 自動分析装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体または抗原が底面に固相化された免疫測定用の反応容器に用いられるノズル装置であって、
前記反応容器内の液体を前記反応容器に非接触で吸引する複数の吸引ノズルを有し、
前記各吸引ノズルは、前記反応容器に挿入された際、当該吸引ノズルの下端が前記反応容器の底面と側面との間の隅部に近接して配置され、当該吸引ノズルの側面が下端から上方に向かうに従って前記反応容器の側面から離れる傾斜を有するように構成されている、
ことを特徴とするノズル装置。
【請求項2】
請求項1に記載のノズル装置であって、
前記各吸引ノズルは、垂直方向に対して傾斜した直線状の管で構成されることを特徴とするノズル装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のノズル装置であって、
前記各吸引ノズルの下端の開口面は、前記反応容器の底面と略平行となるように、当該吸引ノズルの軸方向に垂直な面に対して傾斜していることを特徴とするノズル装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のノズル装置であって、
前記反応容器内に洗浄液を吐出する吐出ノズルをさらに有し、
前記吸引ノズルは、前記洗浄液を含む前記反応容器内の液体を吸引する、
ことを特徴とするノズル装置。
【請求項5】
請求項4に記載のノズル装置であって、
前記吐出ノズルの下端は、前記吸引ノズルの下端よりも上方に位置することを特徴とするノズル装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のノズル装置と、
前記ノズル装置を用いて前記反応容器を洗浄する制御を行う制御手段と、
を有することを特徴とする洗浄装置。
【請求項7】
請求項6に記載の洗浄装置であって、
前記制御手段は、前記吐出ノズルにより前記反応容器内に洗浄液を吐出しながら、前記複数の吸引ノズルにより前記洗浄液を含む前記反応容器内の液体を吸引する際、吸引に使用する吸引ノズルを1つずつ順次切り替えることを特徴とする洗浄装置。
【請求項1】
抗体または抗原が底面に固相化された免疫測定用の反応容器に用いられるノズル装置であって、
前記反応容器内の液体を前記反応容器に非接触で吸引する複数の吸引ノズルを有し、
前記各吸引ノズルは、前記反応容器に挿入された際、当該吸引ノズルの下端が前記反応容器の底面と側面との間の隅部に近接して配置され、当該吸引ノズルの側面が下端から上方に向かうに従って前記反応容器の側面から離れる傾斜を有するように構成されている、
ことを特徴とするノズル装置。
【請求項2】
請求項1に記載のノズル装置であって、
前記各吸引ノズルは、垂直方向に対して傾斜した直線状の管で構成されることを特徴とするノズル装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のノズル装置であって、
前記各吸引ノズルの下端の開口面は、前記反応容器の底面と略平行となるように、当該吸引ノズルの軸方向に垂直な面に対して傾斜していることを特徴とするノズル装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のノズル装置であって、
前記反応容器内に洗浄液を吐出する吐出ノズルをさらに有し、
前記吸引ノズルは、前記洗浄液を含む前記反応容器内の液体を吸引する、
ことを特徴とするノズル装置。
【請求項5】
請求項4に記載のノズル装置であって、
前記吐出ノズルの下端は、前記吸引ノズルの下端よりも上方に位置することを特徴とするノズル装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のノズル装置と、
前記ノズル装置を用いて前記反応容器を洗浄する制御を行う制御手段と、
を有することを特徴とする洗浄装置。
【請求項7】
請求項6に記載の洗浄装置であって、
前記制御手段は、前記吐出ノズルにより前記反応容器内に洗浄液を吐出しながら、前記複数の吸引ノズルにより前記洗浄液を含む前記反応容器内の液体を吸引する際、吸引に使用する吸引ノズルを1つずつ順次切り替えることを特徴とする洗浄装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−58902(P2011−58902A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207753(P2009−207753)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]