ノズル装置

【課題】エアーを効率良く吹き付けることができ、且つ走行体に薬液を高い付着率で付与することが可能なノズル装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、抄紙機101における走行体50に対して薬液Yを付与するためのノズル装置100であって、薬液Yを吐出可能な薬液用ノズル口1を有するノズル本体部2と、吐出された薬液Yを挟み込むように、ノズル本体部2の両側からエアーを吹き付け可能なエアー本体部10と、を備え、エアー本体部10が、エアーが導入されるエアー導入流路13と、該エアー導入流路13に連通する前後一対の流通流路14と、該流通流路14それぞれに連通しエアーが吐出される一対のエアー用ノズル口12と、を有し、エアー導入流路13の断面積SAと、エアー用ノズル口12の断面積SBとの関係が、
SA≧SB
となっているノズル装置100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル装置に関し、更に詳しくは、エアーを効率良く吹き付けることができ、且つ走行体に薬液を高い付着率で付与することが可能なノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙業においては、抄紙機のワイヤ、フェルト、ドライヤーロール、カンバス等の部材に対して、紙体からパルプ原料由来の異物が転移するのを防止したり、紙離れを向上させる等の目的で、湿潤紙力剤、洗浄剤、ピッチコントロール剤、汚染防止剤、離型剤等の薬剤を含む薬液の使用がされる。この薬液は、抄紙機に取り付けられたノズル装置によって付与される。
【0003】
ところが、抄紙機においては、上記紙体が、抄紙機内を高速で走行するため、紙体の表面付近には、その動きに沿って空気の流れ(以下「随伴流」という。)が発生し、ノズル装置によって紙体に向けて吐出された薬液が、随伴流により巻き上げられるという現象が生じる。
そうすると、紙体に薬液を十分に付与できないばかりか、巻き上げられた薬液がフレームやフード等に付着して抄紙機を汚染するという事態が生じる。
【0004】
こうした薬液の巻き上がりを防止するノズル装置として、本発明者は、薬液を吐出可能な吐出ノズルと、吐出ノズルの上流側に位置する第1の吹付けノズルと、吐出ノズルの下流側に位置する第2の吹付けノズルと、を備え、薬液の吐出角度、第1の吹付けノズル及び第2の吹付けノズルの吹き付け角度を規定したノズル装置を既に提案している(特許文献1参照)。
【0005】
また、ノズル本体と、第1エアー本体と、第2エアー本体と、を備え、第1エアー本体及び第2エアー本体には、内部空間が外気に開放された貫通孔が設けられているノズル装置を提案している(特許文献2参照)。かかるノズル装置によれば、第1及び第2エアー本体が固形物によって詰まるのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−18424号公報
【特許文献2】特開2008−290023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1及び2に記載のノズル装置は、随伴流に対抗して、薬液を走行体に付与することができるようになるものの、必ずしも高い付着率で薬液を付与できるとはいえない。
また、特許文献2に記載のノズル装置においては、巻き上がった薬液に基づく固形物が経時的にエアーのノズルに付着するのを抑制できるものの十分とはいえない。すなわち、エアーの吹き付けの効率が徐々に低下するという欠点がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、エアーを効率良く吹き付けることができ、且つ走行体に薬液を高い付着率で付与することが可能なノズル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、従来のノズル装置では、エアーを吹き付けた時、エアーの進行流路の周辺が負圧となり、たとえ貫通孔を設けたとしても(特許文献2参照)、エアーの進行流路の周辺にはエアーの逆流が生じていることがわかった。そして、貫通孔を設けず、エアーのノズル口及び流路における断面積をある一定の関係とすることにより、意外にも、エアーの逆流を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、(1)抄紙機における走行体に対して薬液を付与するためのノズル装置であって、薬液を吐出可能な薬液用ノズル口を有するノズル本体部と、吐出された薬液を挟み込むように、ノズル本体部の両側からエアーを吹き付け可能なエアー本体部と、を備え、エアー本体部が、エアーが導入されるエアー導入流路と、該エアー導入流路に連通する前後一対の流通流路と、該流通流路それぞれに連通しエアーが吐出される一対のエアー用ノズル口と、を有し、エアー導入流路の断面積SAと、エアー用ノズル口の断面積SBとの関係が、
SA≧SB
となっているノズル装置に存する。
【0011】
本発明は、(2)エアー導入流路の断面積SAと、流通流路における最小の断面積STと、エアー用ノズル口の断面積SBとの関係が、
SA≧ST≧SB
となっている上記(1)記載のノズル装置に存する。
【0012】
本発明は、(3)流通流路には、エアーを溜めるための径大部が設けられている上記(1)又は(2)に記載のノズル装置に存する。
【0013】
本発明は、(4)エアー導入流路の断面積SAと、流通流路における最小の断面積STと、流通流路における径大部の断面積SDと、エアー用ノズル口の断面積SBとの関係が、
SD≧SA≧ST≧SB
となっている上記(3)記載のノズル装置に存する。
【0014】
本発明は、(5)薬液用ノズル口及び一対のエアー用ノズル口が走行体の走行方向に沿って配列されており、薬液用ノズル口が円形状であり、エアー用ノズル口がスリット状である上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のノズル装置に存する。
【0015】
本発明は、(6)エアー導入流路に導入されるエアーのエアー圧が0.02〜0.3MPaである上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載のノズル装置に存する。
【0016】
本発明は、(7)走行体が紙体、カンバス、ドライヤーロール、カレンダーロール又はカンバスロールであり、薬液が湿潤紙力剤、洗浄剤、ピッチコントロール剤、汚染防止剤又は離型剤を含むものである上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載のノズル装置に存する。
【0017】
本発明は、(8)抄紙機には走査手段が取り付けられており、該走査手段により往復走査される上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載のノズル装置に存する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のノズル装置においては、薬液用ノズル口から薬液が吐出されると同時に、薬液用ノズル口の両側のエアー用ノズル口からエアーが吹き付けられるので、随伴流による薬液の飛散が抑制される。したがって、上記ノズル装置によれば、走行体への薬液を確実に付与することが可能となる。
【0019】
上記ノズル装置においては、エアー導入流路の断面積SAと、エアー用ノズル口の断面積SBとの関係を、
SA≧SB
とすることにより、エアーの勢いを維持したまま、エアー用ノズル口全体から吹き付けることが可能となる。これにより、エアーの逆流が確実に防止され、その結果、エアーを効率良く吹き付けることができると共に、走行体に薬液を高い付着率で付与することが可能となる。
【0020】
また、エアー導入流路の断面積SAと、流通流路における最小の断面積STと、エアー用ノズル口の断面積SBとの関係が、
SA≧ST≧SB
となっていると、エアーをより効率良く吹き付けることができる。
【0021】
本発明のノズル装置において、流通流路に、エアーを溜めるための径大部が設けられている場合、走行体に薬液をより高い付着率で付与することが可能となる。このとき、エアー導入流路の断面積SAと、流通流路における最小の断面積STと、流通流路における径大部の断面積SDと、エアー用ノズル口の断面積SBとの関係が、
SD≧SA≧ST≧SB
となっていることがより好ましい。
【0022】
本発明のノズル装置において、エアー用ノズル口がスリット状であると、エアーがカーテン状に吹き付けられる。このとき、薬液用ノズル口が円形状であると、エアー用ノズル口から吹き付けられるカーテン状のエアーが、薬液用ノズル口から吐出される薬液を、両側から挟み込むことができる。このため、走行体に薬液をより高い付着率で付与することが可能となる。
【0023】
本発明のノズル装置は、該走査手段により往復走査されるようになっている場合、ノズル装置の数が1つであっても確実に薬液を走行体に付与できる。なお、ノズル装置の数が1つであると、メンテナンスが容易であり、コスト面でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1の(a)は、本実施形態に係るノズル装置を示す上面図であり、図1の(b)は、本実施形態に係るノズル装置を示す側面図である。
【図2】図2は、本実施形態に係るノズル装置から走行体に薬液及びエアーを吹き付けた状態を示す概略図である。
【図3】図3は、図1の(a)に示すノズル装置のA−A線断面図である。
【図4】図4は、図1の(b)に示すノズル装置のB−B線断面図である。
【図5】図5の(a)は、本発明のノズル装置のように断面積が大きい流路から断面積が小さい流路にエアーが流通した場合のエアーの吹き付け状態を説明するための説明図であり、図5の(b)は、断面積が小さい流路から断面積が大きい流路にエアーが流通した場合のエアーの吹き付け状態を説明するための説明図である。
【図6】図6は、本実施形態に係るノズル装置を抄紙機に用いた例を模式的に示す斜視図である。
【図7】図7は、本実施形態に係るノズル装置を抄紙機に用いた他の例を概略的に示す斜視図である。
【図8】図8は、本実施形態に係るノズル装置を抄紙機に用いた他の例を概略的に示す上面図である。
【図9】図9は、実施例及び比較例における付着率の試験方法を説明するための図である。
【図10】図10は、評価2における実施例3のノズル装置のうちのノズル本体部の写真である。
【図11】図11は、評価2における比較例1のノズル装置のうちのノズル本体部の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0026】
図1の(a)は、本実施形態に係るノズル装置を示す上面図であり、(b)は、本実施形態に係るノズル装置を示す側面図である。
図1の(a)及び図1の(b)に示すように、本実施形態に係るノズル装置100は、薬液を吐出可能な薬液用ノズル口1を有するノズル本体部2と、吐出された薬液を挟み込むように、ノズル本体部2の両側からエアーを吹き付け可能なエアー用ノズル口12を有するエアー本体部10と、エアー本体部10に接続され、エアー導入流路にエアーを導入するためのチューブ7と、を備える。
【0027】
ノズル装置100においては、薬液用ノズル口1から薬液が吐出されると同時に、薬液用ノズル口1の両側のエアー用ノズル口12からエアーが吹き付けられるので、随伴流による薬液の飛散が抑制される。
【0028】
ここで、薬液用ノズル口1は、円形状となっており、エアー用ノズル口12は、スリット状となっている。これにより、吹き付けられるエアーは、カーテン状となり、薬液用ノズル口から吐出される薬液を、両側から挟み込むようになる。
【0029】
図2は、本実施形態に係るノズル装置から走行体に薬液及びエアーを吹き付けた状態を示す概略図である。
図2に示すように、ノズル装置100は、随伴流Rによる薬液の飛散を抑制するために、走行体50の走る方向に対して鋭角に配置される。すなわち、ノズル装置100は、走行体50の下流側に向かって薬液を吐出するようになっている。
【0030】
ノズル装置100は、薬液用ノズル口1及び一対のエアー用ノズル口12が走行体50の走行方向Pに沿って一列に配列されている。すなわち、走行体50の上流側から、エアー用ノズル口(以下便宜的に「上流側エアー用ノズル口」ともいう。)12a、薬液用ノズル口1、エアー用ノズル口(以下便宜的に「下流側エアー用ノズル口」ともいう。)12b、の順で配列されている。なお、上流側エアー用ノズル口12aと下流側エアー用ノズル口12bとは同様な構造となっている。
【0031】
ノズル装置100においては、上流側エアー用ノズル口12aから吹き付けられるエアーA1が、薬液Yの上流側(走行体50の走行に基づいて発生する随伴流R側)に吹き付けられることにより、随伴流Rの一部を遮断する。
また、下流側エアー用ノズル口12bから吹き付けられるエアーA2が、薬液Yの下流側に吹き付けられることにより、随伴流Rによる薬液Yの巻き上げを抑制する。
これにより、走行体50が高速で走行する場合であっても、随伴流Rに対抗して、薬液Yを走行体50に確実に付与することが可能となる。
【0032】
図1の(a)及び図1の(b)に戻り、ノズル装置100において、ノズル本体部2は、直方体状であり、上面の略中央に薬液用ノズル口1が設けられている。
ノズル本体部2は、両端にノズル本体部2を固定するためのアーム部5a,5bが接続されている。かかるアーム部5a,5bの内部にはノズル本体部2及び薬液用ノズル口1に薬液を送流するための供給管が設けられている。なお、かかる供給管については後述する。
【0033】
ノズル装置100において、エアー本体部10は、断面Uの字状の形態を有しており、ノズル本体部2を挟み込むようにして、ノズル本体部2の下方から取り付けられるようになっている。すなわち、ノズル本体部2は着脱可能となっている。
また、エアー本体部10をノズル本体部2に組み付けることにより、上流側エアー用ノズル口12a及び下流側エアー用ノズル口12bが形成されるようになっており、エアー導入流路からエアーを供給することにより、上流側エアー用ノズル口12a及び下流側エアー用ノズル口12bから同程度の強さのエアーが吹き付けられるようになっている。
【0034】
図3は、図1の(a)に示すノズル装置のA−A線断面図である。
図3に示すように、ノズル装置100のノズル本体部2において、アーム部5aにはノズル本体部2に薬液を供給するための薬液供給管8aが接続されており、アーム部5bには上記薬液を吐出させるエアーを供給するための吐出エアー供給管8bが接続されている。
そして、アーム部5aの内部には、薬液流路Taが形成されており、アーム部5bの内部には、吐出エアー流路Tbが形成されている。
【0035】
ノズル装置100においては、薬液供給管8aから供給された薬液は薬液供給管8aの内部を流通し、薬液供給管8aに連通した薬液流路Taに送流される。そして、薬液は薬液流路Taからノズル本体部2に送流される。
一方、吐出エアー供給管8bから供給されたエアーは吐出エアー供給管8bの内部を流通し、吐出エアー供給管8bに連通した吐出エアー流路Tbに送流される。そして、エアーは吐出エアー流路Tbからノズル本体部2に送流される。
【0036】
そして、ノズル本体部2に送流された薬液とエアーとが混合された混合物が、薬液用ノズル口1から吐出される。換言すると、ノズル装置100においては、薬液用ノズル口1に薬液が供給されると同時にエアーが供給されることにより、薬液がエアーと共に吐出される。このとき、吐出された薬液は吐出されるエアーの勢いによって加速される。
【0037】
図4は、図1の(b)に示すノズル装置のB−B線断面図である。
図4に示すように、ノズル装置100において、エアー本体部10は、エアーが導入されるエアー導入流路13と、該エアー導入流路13に連通する前後一対の流通流路14と、該流通流路14それぞれに連通しエアーが吐出される一対のエアー用ノズル口12と、を有する。
また、流通流路14は、エアー導入流路13に対して屈曲して連通する径大部14aと、該径大部14aに対して屈曲して連通する径小部14bとからなる。なお、径小部14bは、流通流路14における最小の断面積となっている。
【0038】
ノズル装置100においては、エアーがチューブ7からエアー導入流路13に導入される。
そして、導入されたエアーは、エアー本体部10の内部において、上流側と下流側に分岐され、それぞれの径大部14a及び径小部14bを通過して、エアー用ノズル口12から走行体に吹き付けられることになる。
【0039】
ノズル装置100においては、エアー導入流路13の断面積SAと、エアー用ノズル口12の断面積SBとの関係が、
SA≧SB
となっている。このため、ノズル装置100においては、エアー圧が減衰されず、エアー導入流路13におけるエアー圧を維持したまま、エアー用ノズル口12全体から吹き付けることが可能となる。
これにより、エアーの進行流路の周辺が負圧となることがないので、エアーの逆流が確実に防止され、その結果、エアーを効率良く吹き付けることができると共に、走行体50に薬液Yを高い付着率で付与することが可能となる。
【0040】
また、エアー導入流路13の断面積SAと、流通流路14における最小の断面積(径小部14bの断面積)STと、エアー用ノズル口12の断面積SBとの関係が、
SA≧ST≧SB
となっていることが好ましい。この場合、エアーの勢いが抑制されないので、エアーをより効率良く吹き付けることが可能となる。
【0041】
ここで、ノズル装置100においては、流通流路14が径大部14aを備えるので、エアーを十分に溜めるためことができる。そうすると、吐出されるエアーの量が増大し、走行体に薬液をより高い付着率で付与することが可能となる。
このとき、エアー導入流路13の断面積SAと、流通流路14における最小の断面積STと、流通流路14における径大部14aの断面積SDと、エアー用ノズル口12の断面積SBとの関係は、
SD≧SA≧ST≧SB
となっていることがより好ましい。
すなわち、ノズル装置100においては、エアーの流路全体において、下流側に行くほど断面積が小さくなるようにし、流通流路14にのみ径大部14aを設けることが好ましい。
【0042】
ここで、断面積が大きい流路から断面積が小さい流路にエアーが流通した場合のエアーの進行流路の周辺が負圧となるメカニズムについて説明する。
図5の(a)は、本発明のノズル装置のように断面積が大きい流路から断面積が小さい流路にエアーが流通した場合のエアーの吹き付け状態を説明するための説明図であり、(b)は、断面積が小さい流路から断面積が大きい流路にエアーが流通した場合のエアーの吹き付け状態を説明するための説明図である。
図5の(b)に示すように、断面積が小さい流路から断面積が大きい流路にエアーが流通した場合は、エアーの進行流路の周辺にはエアー圧がかからず、逆に、ベンチュリ効果により、エアーの進行流路の周辺が負圧となる。そうすると、エアーの進行流路の周辺において、エアーの逆流が生じ、例えば、巻き上がった薬液に基づく固形物が経時的にエアーのノズルに付着してしまうことになる。
【0043】
それに対し、図5の(a)に示すように、断面積が大きい流路から断面積が小さい流路にエアーが流通した場合は、流路内全体に渡ってエアーが進行するため、エアーの進行流路の周辺が負圧となることがない。このため、エアーの逆流が確実に防止され、その結果、ノズル装置100においては、エアーを効率良く吹き付けることができると共に、走行体50に薬液Yを高い付着率で付与することが可能となる。
【0044】
本実施形態に係るノズル装置100において、吐出エアー供給管8bを流通するエアーのエアー圧は、0.04〜0.15MPaであることが好ましい。この場合、効率良く確実に薬液を吐出することが可能となる。
【0045】
また、エアー導入流路13に導入されるエアーのエアー圧は、0.02〜0.3MPaであることが好ましい。
エアー導入流路13に導入されるエアー圧が0.02MPa未満であると、エアー導入流路13に導入されるエアー圧が上記範囲内にある場合と比較して、随伴流を十分に遮断できず、巻き上がった薬液を十分に押さえつけることができない。
一方、エアー導入流路13に導入されるエアー圧が0.3MPaを超えると、エアー導入流路13に導入されるエアー圧が上記範囲内にある場合と比較して、吹き付けられるエアー自体が乱流となり、薬液の走行体50への付着を阻害する傾向がある。
【0046】
ノズル装置100において、薬液用ノズル口1の先端から、薬液Yの吐出方向と走行体50との交点までの距離が30〜120mmであることが好ましい。この場合、超高速の抄紙機においても走行体50に対して薬液を確実に付与することができ、薬液の飛散も十分に抑制できる。
【0047】
本実施形態に係るノズル装置100は、抄紙機における走行体50に対して薬液Yを付与するために用いられる。
走行体50としては、紙体、ワイヤ、フェルト、カンバス、ドライヤーロール、カレンダーロール又はカンバスロール等が挙げられる。
これらの中でも、ノズル装置100は、紙体、カンバス、ドライヤーロール、カレンダーロール又はカンバスロールに用いられることが好ましい。一般に、抄紙機における紙体、カンバス、ドライヤーロール、カレンダーロール又はカンバスロールは高速で走行し、汚れ、ピッチ、紙のほつれ等が生じやすいことから、これらを効果的に防止できる。
【0048】
薬液Yとしては、湿潤紙力剤、洗浄剤、ピッチコントロール剤、汚染防止剤又は離型剤等が挙げられる。
ノズル装置100は、薬液Yを走行体50に確実に付与することができるので、薬液Yが付与された走行体50は、付与される薬液Yに基づく機能を確実に発揮することができる。
【0049】
なお、薬液Yの粘度は、500cps以下であることが好ましく、1〜200cpsであることがより好ましい。この場合、薬液Yを確実に走行体50に付与することができると共に、薬液の飛散も十分に抑制できる。
【0050】
本実施形態に係るノズル装置100において、薬液Y及びエアーは、図示しないポンプユニットから供給される。なお、ポンプユニットからエアーが供給されるパイプの断面積は、チューブ7の断面積SC以上とすることが好ましい。
【0051】
次に、本実施形態に係るノズル装置100を用いる薬液の付与方法について説明する。
図6は、本実施形態に係るノズル装置を抄紙機に用いた例を模式的に示す斜視図である。
図6に示すように、抄紙機101は、回動可能なドラム45を有し、当該ドラム45には走行体50が配置されている。そして、上記ドラム45の回動に基づいて、走行体50が走行方向Pに向かって走行するようになっている。
【0052】
抄紙機101において、ドラム45の上方には走査手段30が取り付けられている。この走査手段30には、該走査手段30の長さ方向に向かって往復走査する駆動装置43が取り付けられており、かかる駆動装置43にはノズル装置100が走行体50に向かって薬液が吐出できるように取り付けられている。なお、このときノズル装置100は、吐出される薬液Yが走行体50に十分に付与されるように走行体50の走行方向Pと薬液Yの吐出方向との角度を調整して取り付けられている。
【0053】
そして、走行体50を走行方向Pに向かって走行させながら、駆動装置43と共にノズル装置100を往復走査させ、ノズル装置100から薬液を走行体50に向かって吐出させることにより、走行体50に薬液Yが付与される。
このとき、ノズル装置100の薬液用ノズル口1から薬液が付与されると共に、エアー用ノズル口12からエアーが吹き付けられる。
【0054】
上記薬液の付与方法においては、ノズル装置100を用いるので、エアー用ノズル口12が固形物によって詰まるのを抑制できる。
また、薬液用ノズル口1から薬液Yが付与されると同時に、エアー用ノズル口12からエアーが吹き付けられるので、超高速の抄紙機101においても走行体50に対して薬液Yを確実に付与することができると共に、薬液Yの飛散も十分に抑制できる。
【0055】
また、上記薬液の付与方法は、抄紙機101に走査手段30が取り付けられており、ノズル装置100が走査手段30により往復走査されるので、ノズル装置100の数が1つであっても確実に薬液Yを走行体50に付与できる。なお、ノズル装置100の数が1つであると、メンテナンスが容易であり、コスト面でも有利である。
【0056】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0057】
本実施形態におけるノズル装置100においては、薬液用ノズル口1が円形状となっているが、スリット状、リング状等であってもよい。
【0058】
本実施形態におけるノズル装置100においては、薬液用ノズル口1と、エアー用ノズル口12とが走行方向Pに対して一列に配置されているが、必ずしも一列である必要はない。
【0059】
本実施形態におけるノズル装置100は、ノズル本体部2と、エアー本体部10とが別体となっているが、一体となっていてもよい。
【0060】
本実施形態に係るノズル装置100は、抄紙機以外にも、食品加工や繊維加工等に用いることができる。
【0061】
上述した本実施形態に係るノズル装置100を抄紙機101に用いた例においては、ノズル装置100が1つ抄紙機101に取り付けられているが、ノズル装置100が抄紙機に複数取り付けられていてもよい。
【0062】
図7は、本実施形態に係るノズル装置を抄紙機に用いた他の例を概略的に示す斜視図である。
図7に示すように、抄紙機には、走査手段30に当該走査手段30の長さ方向に向かって往復走査する駆動装置43が複数取り付けられており、それぞれの駆動装置43にノズル装置100が走行体50に向かって薬液が吐出されるように取り付けられていてもよい。
【0063】
図8は、本実施形態に係るノズル装置を抄紙機に用いた他の例を概略的に示す上面図である。
図8に示すように、複数のノズル装置100が所定の本体70に取り付けられていてもよい。すなわち、これを抄紙機に用いた場合、本体70に取り付けられた複数のノズル装置100から同時に薬液が吐出されるため、ノズル装置100の往復走査は不要である。
なお、本体70には、図示しないチューブ、薬液供給管、及び吐出空気供給管が内蔵されている。また、図示しない走行体は走行方向Pに向かって走行する(走行方向)。
【実施例】
【0064】
以下、本発明のノズル装置を使った実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
(実施例1〜10及び比較例1)
図4に示すエアー導入流路の断面積SAと、流通経路の径大部の断面積SDと、流通経路の径小部の断面積STと、エアー用ノズル口の断面積SBとを表1に示す値に調整したノズル装置を準備した。なお、実施例8〜10は、径大部の断面積を径小部の断面積より小さくしている。すなわち、径大部に径小部の働きをさせ、径小部に径大部の働きをさせている。
【0066】
(表1)

【0067】
(評価1)
図9に示すように、実施例1〜10及び比較例1で得られたノズル装置をエアー用ノズル口が所定の角度θを有するように下に向けて配置し、ノズル装置との散布距離Lが10cmとなるように下方にSUS板81及び該SUS板81の下に秤80を配置した。
そして、薬液としてダスクリーンR409S(離型剤、粘度3cps、株式会社メンテック社製)を用い、随伴流Rの代わりに3.0m/sの風を側面から吹き付け、吐出エアー供給管8bを流通するエアーのエアー圧が0.1MPaとなるようにして1分間薬液を吹き付け、同時に、エアーのエアー圧が0.3MPaとなるようにして1分間エアーを吹き付けた。
SUS板81に付着された薬液の量、及び、吐出された薬液の量から、付着率(SUS板81に付着された薬液の量×100/吐出された薬液の量)を測定した。
得られた結果を表2に示す。
【0068】
(表2)

【0069】
表2の結果より、本発明に係るノズル装置を用いた実施例1〜10は、本発明によらない比較例1と比較して、十分に高い付着率で薬液を走行体に付着できることが確認された。特に、
SD≧SA≧ST≧SB
を満たす実施例1,2,3及び8は、極めて優れた付着率を示した。
【0070】
(評価2)
実施例3及び比較例1のノズル装置を用い、薬液としてダスクリーンR409S(離型剤、粘度3cps、株式会社メンテック社製)を用い、随伴流Rの代わりに3.0m/sの風を側面から吹き付け、吐出エアー供給管8bを流通するエアーのエアー圧が0.1MPaとなるようにして2週間薬液を吹き付け、同時に、エアーのエアー圧が0.3MPaとなるようにして2週間エアーを吹き付けた。
2週間後のノズル装置の写真を図10及び図11に示す。なお、図10は、評価2における実施例3のノズル装置のうちのノズル本体部の写真である。また、図11は、評価2における比較例1のノズル装置のうちのノズル本体部の写真である。
【0071】
図10及び図11より、本発明に係るノズル装置を用いた実施例3は、本発明によらない比較例1と比較して、ノズル本体部への固形物の付着が少ないことから、エアーの吹き付け力が格段に向上しており、エアーを効率良く吹き付けることができているといえる。
【0072】
以上の結果より、本発明のノズル装置によれば、エアーを効率良く吹き付けることができ、且つ走行体に薬液を高い付着率で付与することができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のノ72ズル装置は、抄紙機における走行体に対して薬液を付与するための装置として好適に用いられる。本発明のノズル装置によれば、エアーを効率良く吹き付けることができ、且つ走行体に薬液を高い付着率で付与することができる。
【符号の説明】
【0074】
1・・・薬液用ノズル口
2・・・ノズル本体部
5a,5b・・・アーム部
7・・・チューブ
8a・・・薬液供給管
8b・・・吐出エアー供給管
10・・・エアー本体部
12・・・エアー用ノズル口
12a・・・上流側エアー用ノズル口(エアー用ノズル口)
12b・・・下流側エアー用ノズル口(エアー用ノズル口)
13・・・エアー導入流路
14・・・流通流路
14a・・・径大部
14b・・・径小部
30・・・走査手段
43・・・駆動装置
45・・・ドラム
50・・・走行体
70・・・本体
80・・・秤
81・・・SUS板
100・・・ノズル装置
101・・・抄紙機
A1,A2・・・エアー
L・・・散布距離
P・・・走行方向
R・・・随伴流
SD・・・径大部の断面積
ST・・・径小部の断面積
SA・・・エアー導入流路の断面積
SB・・・エアー用ノズル口の断面積
SC・・・チューブの断面積
Ta・・・薬液流路
Tb・・・吐出エアー流路
Y・・・薬液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機における走行体に対して薬液を付与するためのノズル装置であって、
前記薬液を吐出可能な薬液用ノズル口を有するノズル本体部と、
吐出された前記薬液を挟み込むように、前記ノズル本体部の両側からエアーを吹き付け可能なエアー本体部と、
を備え、
前記エアー本体部が、エアーが導入されるエアー導入流路と、該エアー導入流路に連通する前後一対の流通流路と、該流通流路それぞれに連通しエアーが吐出される一対のエアー用ノズル口と、を有し、
前記エアー導入流路の断面積SAと、前記エアー用ノズル口の断面積SBとの関係が、
SA≧SB
となっているノズル装置。
【請求項2】
前記エアー導入流路の断面積SAと、前記流通流路における最小の断面積STと、前記エアー用ノズル口の断面積SBとの関係が、
SA≧ST≧SB
となっている請求項1記載のノズル装置。
【請求項3】
前記流通流路には、エアーを溜めるための径大部が設けられている請求項1又は2に記載のノズル装置。
【請求項4】
前記エアー導入流路の断面積SAと、前記流通流路における最小の断面積STと、前記流通流路における前記径大部の断面積SDと、前記エアー用ノズル口の断面積SBとの関係が、
SD≧SA≧ST≧SB
となっている請求項3記載のノズル装置。
【請求項5】
前記薬液用ノズル口及び一対の前記エアー用ノズル口が前記走行体の走行方向に沿って配列されており、
前記薬液用ノズル口が円形状であり、前記エアー用ノズル口がスリット状である請求項1〜4のいずれか1項に記載のノズル装置。
【請求項6】
前記エアー導入流路に導入されるエアーのエアー圧が0.02〜0.3MPaである請求項1〜5のいずれか1項に記載のノズル装置。
【請求項7】
前記走行体が紙体、カンバス、ドライヤーロール、カレンダーロール又はカンバスロールであり、
前記薬液が湿潤紙力剤、洗浄剤、ピッチコントロール剤、汚染防止剤又は離型剤を含むものである請求項1〜6のいずれか1項に記載のノズル装置。
【請求項8】
前記抄紙機には走査手段が取り付けられており、
該走査手段により往復走査される請求項1〜7のいずれか1項に記載のノズル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−40432(P2013−40432A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180000(P2011−180000)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(594020802)株式会社メンテック (7)
【Fターム(参考)】