説明

ノズル

【課題】適切な嵌合強度で、確実に噴射口にノズルが接続でき、安定した噴射が可能な、着脱可能なノズルを提供する。
【解決手段】噴霧装置の噴射口に装着されるノズルであって、複数の突起部が形成され前記噴射口が前記複数の突起部間の空間に嵌め込まれる嵌合部と、前記噴霧装置により噴射される噴射溶液を排出する噴出部と、を有することを特徴とするノズル。前記突起部の頭部は、環状の環状孔を有してもよく、前記環状孔は、前記噴射口からの前記噴射溶液の噴射方向に設けられていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧装置の噴射口に取り付けるノズルに関し、より詳細には、スプレー缶等の噴射口へ着脱可能なノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスプレー缶等の噴霧装置の噴射口(バルブ)には、その用途により着脱可能なノズルが準備されている。そのようなノズルには、スプレー缶の噴射口(バルブ)の外径に対して等しいか若干大きくした内径の嵌合部を有しているものがある。このようなノズルの嵌合部にスプレー缶の噴出口を押し込むことにより、嵌合部の噴出口に対する接触圧によりノズルが保持される。
【0003】
通常、噴霧装置の噴射口の外径にはバラつきがある。すなわち、設計上の外径寸法よりも、噴射口の外径がコンマ数ミリのレベルで大きくなり、あるいは、小さくなる。従来のノズルにおいては、噴射口の設計上の外径寸法のみを想定してノズルの嵌合部の内径を設計してノズルを作成すると、噴射口の外径が設計寸法よりも大き目にばらつくと、嵌合に大きな力が必要となり、ノズルを適正な位置まで差し込むことが困難となるという問題があった。また、噴射口の外径が設計寸法よりも小さめにばらつくと、差し込みが緩くなり、噴射口の片寄りや噴霧口と嵌合部との間に隙間が発生し、噴射を繰り返すと噴射圧により外れてしまったり、噴射された液体がノズル嵌合部付近から漏れてしまったりするという問題があった。そのため、いずれのバラつきにも対応するには、内径が異なる複数のノズルを用意するなどの必要があった。
【0004】
また、従来のノズルにおいては、噴霧装置の噴射口から噴霧される噴射溶液の噴射圧を増幅する機構を実現するためには、ノズルの構造を複雑にする必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、適切な嵌合強度で、確実に噴射口にノズルが接続でき、安定した噴射が可能な、着脱可能なノズルを提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明においては、簡便な構造のノズルで噴射溶液の噴射圧を増幅するノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係るノズルは、噴霧装置の噴射口に装着されるノズルであって、複数の突起部が形成され前記噴射口が前記複数の突起部間の空間に嵌め込まれる嵌合部と、前記噴霧装置により噴射される噴射溶液を排出する噴出部と、を有することを特徴とする。
【0008】
前記突起部の頭部は、環状の環状孔を有してもよい。
【0009】
前記環状孔は、前記噴射口からの前記噴射溶液の噴射方向に設けられてもよい。
【0010】
前記突起部は、弾性材料で形成されてもよい。
【0011】
前記ノズルの前記複数の突起部間の空間の直径は約6mmであり、外径が6.3mm以上6.5mm以下の前記噴射口に装着されてもよい。
【0012】
前記噴出部は、壁面が放射状に広がる形状であってもよい。
【0013】
また、前記噴出部は、前記嵌合部よりも外径が小さい管形状であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るノズルによれば、1つのノズルで、噴射口の外形にバラつきが生じても、適切な嵌合強度で装着することができ、従来のノズルで発生していた不安定な接触圧、嵌合時の密着不良によるノズルの脱落及び噴射溶液の漏れ等を改善することができる。
【0015】
また、本発明に係るノズルによれば、噴霧装置の噴射口から噴射された気体の噴射圧を増幅することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るノズル及びノズルを嵌合する噴霧装置を示す概要図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るノズルの形状及びノズルの突起部の形状を示す概要図であり、(a)は、本発明の一実施形態に係るノズルの斜視図であり、(b)はその突起部の形状を示す概要図であり、(c)はそのA−Aを断面とした断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るノズルの噴出部を細く長い筒の形状とした例を示す図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る、種々のノズルの突起部の例を示す断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るノズルの突起部の例と、種々の形状の噴射口を取り付けた断面とを示す図である。
【図6】本発明の実施例1に用いたノズル、噴霧装置、計測機器を示す概要図である。
【図7】(a)は本発明の実施例1及び2に用いたノズルの嵌合部の形状及び寸法を示す図であり、(b)は本発明の実施例1及び2に用いたノズルの寸法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係るノズルとノズルを嵌合する噴霧装置とを説明する。本発明の一実施形態に係るノズル100は、嵌合部110と、噴出部130とを有する。ノズル100を嵌合する噴霧装置200は、噴射口210を有する。
【0018】
噴霧装置200は、例えばスプレー缶であり、噴射口210は、噴霧装置200よりパイプ状になって突出している。図1において、噴射口210は、噴霧装置の上方に設けられたボタン下部より突出しており、ボタンを指などにより押下すると、噴射口210の先端から、噴霧溶液が噴霧される。
【0019】
嵌合部110は、噴霧装置200の噴射口210と嵌合可能となっている。具体的には、嵌合部110は筒の形状となっており、筒の内壁面に複数の突起部120が成形されている。各突起部120は、略同一の突起形状であってもよいし、異なる突起形状となっていてもよい。突起部120の筒に接続していない端部を突起部120の頭部ということにすると、複数の突起部120の頭部が、所定の大きさ、形状を有するパイプ形状の物体を保持可能となるように、特数の突起部120が配置されている。言い換えると、複数の突起部120の頭部の間の空間に、噴射口210が嵌めこまれる、あるいは、挿入可能となっている。
【0020】
突起部120が突起形状であることにより、ノズル100と噴射口210との接触面積を小さくすることができる。これにより、突起部120の頭部における面積あたりの接触力が増大し摩擦力が大きくなり、ノズル100と噴射口210との密着強度を小さくしても、突起形状を設けない場合と比べ、大きな嵌合強度を得ることができる。また、突起部120が柔軟性を持っている場合には、取り外す際には、突起形状を設けない場合と比べて小さな力で外すことができるようになる。
【0021】
図2に示されるように、突起部120の頭部に環状孔140が形成されていることにより、嵌合時と取り外し時に環状孔140が潰れるので、適切な嵌合強度が得られ、取り外しも容易とすることができる。また、噴射口210の外径のバラつきを、この環状孔140が潰れることにより、吸収することができる。
【0022】
また、突起部120を設けることにより、嵌合後に噴射口と突起部との間に空洞150が存在し、ノズル100が噴射口210に嵌合している際にも、空気等の気体が空洞150を通過可能である。さらに、突起部120の頭部に、噴射口210からの噴霧方向の環状孔140を設けることにより、ノズル100が噴射口210に嵌合している際にも、空気等の気体が環状孔140及び嵌合部110の空洞150を通過可能とすることができる。噴射口210からの気体等の噴射時には、ノズル100内部に負圧が発生し、噴射圧が減少する。しかし、環状孔140及び空洞150の存在により、環状孔140及び嵌合後に噴射口210と突起部との間に存在する空洞150とを外気引き込み口160として空気が噴射口210からの噴霧方向に流入し、ノズルで噴霧装置からの気体等の噴射の噴射圧を増幅することができる。
【0023】
上述したように複数の突起部120には、柔軟性のある材料が用いることが好ましい。例えば、POM、ナイロン、エストラマなどが用いられる。なお、ノズル100全体に柔軟性のある材料を用いてもよいし、突起部120のみに柔軟性のある材料を用いてもよい。
【0024】
柔軟性のある材料から成る略同一の形状の複数の突起部120を設けることにより、噴射口210は、ノズル100との嵌合時、各突起部に対して均一な接触圧で嵌合される。これにより、噴射口と210とノズル100とを嵌合した際に、センターずれが発生しづらくなる。
【0025】
ノズル100は、噴霧装置200と着脱を繰り返し行うから、突起部120は、噴射口210との間で褶動を繰り返すこととなる。そこで、突起部120には、柔軟性があるだけでなく、摩耗に強い材料や、摩耗しても弾性力により接触圧を保つことのできる程度に弾性力のある材料を用いることが好ましい。例えば、POM、ナイロン、エストラマ及びウレタンなどである。弾性力のある材料を用いると、突起部120の弾性作用で、接続の相手先である噴射口210の径にバラつきがあったり、形状が変形したりしても、嵌合強度を維持し、安定させることができる。また、ノズル100を繰り返し着脱し、接触面が摩耗した場合でも、嵌合強度の劣化に対しても柔軟性のある突起による接触圧は均等に得られる。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態に係るノズルの形状及びノズルの突起部の形状を示す概要図である。(a)は、本発明の一実施形態に係るノズルの斜視図であり、(b)はその突起部の形状を示す概要図であり、(c)はそのA−Aを断面とした断面図である。
【0027】
ノズル100は、全体として略筒形状であり、長さは噴霧する溶液の種類や、噴霧の目的に応じて自由に設計可能である。また、略筒形状の内径は、嵌合部110の内壁面に、噴射口210と嵌合可能な複数の突起部120を形成可能な程度以上に大きければよい。
【0028】
噴出部130は、放射状に広がる形状を有する。これにより、噴霧溶液を拡散して所望の範囲に噴射することが可能である。また、噴射口にチューブを取り付け、噴霧時にチューブが激しく動くことによって所定の範囲に均一に噴霧を行うような場合には、チューブの動く範囲を制限することも可能である。
【0029】
また、本発明の他の実施形態に係るノズル100は、図3に示すように、細長い筒の形状をし、噴出部130を細く長くした形状を有してもよい。
ノズル100の噴出部130を細く長く形成したことにより、噴霧する溶液等を所定のポイントに集中して吹き付けることができる。噴出部130の長さ、ノズル全体の長さ、噴出部130の長さ、内径は、噴霧する溶液の種類や、ノズルの用途に応じて設計可能である。
嵌合部110の内壁面に、噴射口210と嵌合可能な複数の突起部120を持たせたこと、突起部120の特徴等は、前述した実施形態と同様である。
【0030】
図4は、本発明の他の実施形態に係る、種々のノズルの突起部の例を示す断面図である。
【0031】
図4に示すように、本発明の実施形態に係るノズル100は、種々の形状の突起部120を有する。例えば、突起部は複数形成されていればよく、例えば2つでも、4つでも、5つでも任意の個数が形成されていてもかまわない。突起部の形状、突起部の環状孔の形状及び突起部の材質を種々に変更することにより、ノズル100と噴射口210との嵌合強度や、噴射圧の増幅量をコントロールすることができる。
【0032】
図5は、本発明の他の実施形態に係るノズルの突起部の例と、それらの突起部に種々の形状の噴射口210を取り付けた際の断面を示す。
【0033】
図5に示すように、本発明の実施形態に係るノズル100の突起部は、噴射口210の断面の形状が噴射口210のような円形の場合だけでなく、噴射口211のような三角形、または噴射口212のような四角形、噴射口213のような五角形、噴射口214のような六角形の場合においても接触面が柔軟に適応し接続することができる。これにより、1つのノズルで、種々の形状の噴射口に嵌合可能である。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
本発明の一実施形態に係るノズルと、嵌合部の外気の引き込み口160を塞いだノズルとを用いて、それぞれの噴射圧を比較した。図6は、本実施例に用いたノズル、噴霧装置、計測機器を示す概要図である。(外気導入のための穴部を遮蔽する遮断部材を用いて密閉しました。)
【0035】
本実施例においては、図7に示す3個の突起部が設けられたノズルを用いた。噴射口の外径寸法は6.1mmであり、図7(a)に示すように、ノズルの突起部により形成される内径A(バルブ取付径)は、6mmである。突起部は、Xの長さが8.4mmであり、Y部の肉厚は1.1mm、Z部の肉厚は1.8mmである。図7(b)に示すように、ノズルの長さは55mmであり、嵌合部の外径寸法は18mmである。ノズルは、突起部を含め、POMを材料として形成した。
【0036】
比較例として、実施例と同様の寸法の3個の突起部が設けられたノズルを用いた。噴射口の外径寸法は6.1mmであり、図7(a)に示すように、ノズルの突起部により形成される内径Aは、6mmである。図7(b)に示すように、ノズルの長さは55mmであり、嵌合部の外径寸法は18mmである。比較例においては、外気の引き込み口160を、外気遮断部材により塞ぎ、外気の引き込み口160からの外気の導入を遮断した。
【0037】
図6に示すように、噴霧装置200としてエアーコンプレッサーを用いて、安定したエアーを噴射する装置とした。噴射口の外径は6.1mm、噴射口の長さは10.4mmである。
【0038】
実施例と比較例とにおいて、噴射圧の比較試験を行った。エアー圧0.2MPaで噴霧装置から噴射を行った際にノズルの噴出部から約30mm離れた距離に設置されたエアー受けに当たった時の圧力をプッシュプルゲージ(荷重計測器)で計測した。
【0039】
計測の結果、比較例においては、圧力が0.14Nであったところ、本実施例のノズルにおいては、0.36Nであった。本試験状況において、実施例のノズルは、比較例のノズルと比較して、約2.5倍の圧力を荷重として得ることができ、本発明に係る突起部に環状孔を形成されたノズルは、簡易な機構で、噴射圧を良好に増幅できることが確認された。
【0040】
(実施例2)
噴射口のバラつきをどの程度吸収できるかを確認するため、噴射口の径を変化させ、嵌合強度を確認した。噴射口の代わりに直径が6.1mmから6.5mmのピンゲージを用い、プッシュプルゲージ(荷重計測器)に固定し、噴射口に見立て、ノズルを嵌合し、嵌合したノズルを引き抜くのに必要な強度を測定した。本実施例に係るノズルとして、実施例1と同じく、図7に示す3個の突起部が設けられたノズルを用いた。図7(a)に示すように、ノズルの突起部により形成される内径Aは、6mmである。突起部は、Xの長さが8.4mmであり、Y部の肉厚は1.1mm、Z部の肉厚は1.8mmである。図7(b)に示すように、ノズルの長さは55mmであり、嵌合部の外径寸法は18mmである。ノズルは、突起部を含め、POMを材料として形成した。
【0041】
本実施例に係るノズルとして、2つのノズルをサンプルとして用い、それぞれサンプル1、サンプル2とした。
以下の表1に実験結果を示す。
【表1】

【0042】
サンプル1、サンプル2のいずれにおいてもピンゲージの直径が6.2mm〜6.5mmの範囲で、良好な嵌合強度を得ることができた。この結果、本発明の実施例に係るノズルは、噴射口の外径のバラつきを吸収することができることが確認された。
【0043】
なお、突起部に用いる材料として、例えばエストラマやナイロンを用いて本実施例のようなPOMを用いた場合よりも柔軟性を上げることにより、更に広い範囲での嵌合強度を確保することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
100 ノズル
110 嵌合部
120 突起部
130 噴出部
140 環状孔
150 空洞
160 外気引き込み口
200 噴霧装置
210 噴射口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧装置の噴射口に装着されるノズルであって、
複数の突起部が形成され前記噴射口が前記複数の突起部間の空間に嵌め込まれる嵌合部と、
前記噴霧装置により噴射される噴射溶液を排出する噴出部と、
を有することを特徴とするノズル。
【請求項2】
前記突起部の頭部は、環状の環状孔を有することを特徴とする請求項1記載のノズル。
【請求項3】
前記環状孔は、前記噴射口からの前記噴射溶液の噴射方向に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のノズル。
【請求項4】
前記突起部は、弾性材料で形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のノズル。
【請求項5】
前記複数の突起部間の空間の直径が約6mmであり、外径が6.3mm以上6.5mm以下の前記噴射口に装着することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のノズル。
【請求項6】
前記噴出部は、壁面が放射状に広がる形状であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のノズル。
【請求項7】
前記噴出部は、前記嵌合部よりも外径が小さい管形状であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−71282(P2012−71282A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219980(P2010−219980)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(592245432)スタッフ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】