説明

ノック式筆記具

【課題】軸筒の後方部に設けた金属からなる円環部材より突出させた金属からなるノック体をノック操作した時における、金属同士の接触による不快な接触音を防止することができる構造のノック式筆記具とする。
【解決手段】軸筒2の後方部に設けた金属からなる円環部材5より突出させた金属からなる円柱形状のノック体6をノック操作することにより、軸筒2の先端から筆記体4または筆記芯を繰り出す構造のノック式筆記具1であって、円環部材5の内方に潤滑塗膜8aを内面に有する内筒8を固設し、内筒8の内方にノック体6を摺動可能に配設させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒の後方部に設けた金属からなる円環部材より突出させた金属からなる円柱形状のノック体をノック操作することにより、軸筒の先端から筆記体または筆記芯を繰り出す構造のノック式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノック式ボールペンやノック式シャープペンシルなど、ノック体をノック操作して使用状態とする筆記具は一般的であるが、ノック式筆記具の中でも、特開2003−63192号公報に記載されているように、ノック体の形状が全長に渡り略同径の円柱形状であり軸筒の内面との隙間が小さいものでは、ノック体をノック操作した際に、ノック体が軸筒の内部で振れることによって、軸筒の内面にノック体が接して音がする問題が生じやすい。また、高価格のノック式筆記具では金属で成形した部材を使用することが多く、ノック操作した時における金属同士の接触による不快な接触音が問題視されていた。
【0003】
このようなことから、金属部材を使用した場合の摺接音に対する対策法が考えられており、特開2011−110701号公報では、ノック体の外面に滑り性の良い潤滑皮膜を設けており、軸筒に対するノック体の摺動性を向上させたノック式筆記具が記載されているが、デザイン的にノック体の表面をメッキ処理したい場合には、ノック体に潤滑皮膜を設けることができなかった。また、ノック体の外側面に形成した溝部にOリングを装着して、軸筒とノック体との摺接音を防止する構造も考えられており、実際に市場にも存在しているが、ノック体の内部に消しゴムを収容させる構造のシャープペンシルにおいては、ノック体の内部に消しゴムを収容させるスペースを形成する必要があるため、細身の軸筒にする場合には、ノック体の外側面にOリングを装着させるための溝部を形成することができず、Oリングで対応することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−63192号公報
【特許文献2】特開2011−110701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、軸筒の後方部に設けた金属からなる円環部材より突出させた金属からなるノック体をノック操作した時における金属同士の接触による不快な接触音を防止することができる構造のノック式筆記具とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
「軸筒の後方部に設けた金属からなる円環部材より突出させた金属からなる円柱形状のノック体をノック操作することにより、前記軸筒の先端から筆記体または筆記芯を繰り出す構造のノック式筆記具であって、前記円環部材の内方に潤滑塗膜を内面に有する内筒を装着し、当該内筒の内方に前記ノック体を摺動可能に配設させたノック式筆記具。」である。
【0007】
本発明では、内筒を、円環部材から露出しない状態で装着させることで、内筒の全面に潤滑塗膜を設けることができ、例えば外部に露出するノック体と円環部材とをメッキ処理した場合においても、それと異なる表面(潤滑塗膜)を有する内筒がデザインの妨げにならない構造となる。潤滑塗膜は、フッ素やシリコンを含有した塗料を塗布することで設けることが可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のノック式筆記具は前述したような構造なので、ノック操作時にノック体が振れた場合においても、ノック体が、潤滑塗膜を設けた内筒に滑らかに摺接するので、金属同士の接触による不快な接触音を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、ノック操作を行っていない状態における要部断面図である。
【図2】図2は、ノック操作を行っている状態における要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
軸筒の後方部に設けた金属からなる円環部材より突出させた金属からなる円柱形状のノック体をノック操作した際に、接触音の発生を防止することができるノック式筆記具を実現した。
【実施例】
【0011】
次に図面を参照しながら本実施例の説明を行う。図中の同じ部材、同じ部品については、同じ符号としてある。本実施例ではノック式ボールペンを例にあげて述べるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0012】
図1に示すようにノック式ボールペン1は、軸筒2の内部にコイルスプリング3で後方へ弾発したボールペンレフィル4を配し、軸筒2の後方に配設した金属からなる円環部材5の開口部5aから突出させた円柱形状の金属からなるノック体6をノック操作することによって、軸筒2の内部に配設した前記ボールペンレフィル4の筆記先端部4aを、軸筒2の前方に螺合した口金7の開口部7aから突出した状態と没入した状態とで維持できるノック式ボールペン構造である。
【0013】
円環部材5の内方には、サンエス潤滑株式会社製の潤滑塗料(FR#3B0)を塗装して内面に潤滑塗膜8aを設けた内筒8を螺合してある。内筒8は前方に前方雄螺子部8bを形成し、後方に後方雄螺子部8cを形成してあり、前方雄螺子部8bを軸筒2の後方に形成した雌螺子部2aに螺合させ、後方雄螺子部8cを円環部材5の内面に形成した雌螺子部5bに螺合させてある。したがって本実施例の内筒8は、軸筒2と円環部材5とを連接させることから、強度および薄さが必要であり金属で形成してある。
【0014】
次にノック式ボールペン1のノック操作について説明を行う。図2に示すようにノック体6を押圧することで、ボールペンレフィル4の筆記先端部4aを口金7の開口部7aから突出させることができ、ノック操作の際に、ノック体6が軸筒2の内部で振れても、ノック体6が内筒8に設けた潤滑塗膜8aに摺接することで、金属同士の接触による不快な接触音を防止することができた。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明のノック式筆記具は、インキやペン先の種類、出没機構に限定されるものではないので、ノック式シャープペンシルやノック式マーカーペンあるいはノック式万年筆などノック式筆記具として広く利用可能である。
【符号の説明】
【0016】
1…ノック式ボールペン、2…軸筒、3…コイルスプリング、
4…ボールペンレフィル、4a…筆記先端部、
5…円環部材、5a…開口部、5b…雌螺子部、
6…ノック体、
7…口金、7a…開口部、
8…円環部材、8a…潤滑塗膜、8b…前方雌螺子部、8c…後方雌螺子部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒の後方部に設けた金属からなる円環部材より突出させた金属からなる円柱形状のノック体をノック操作することにより、前記軸筒の先端から筆記体または筆記芯を繰り出す構造のノック式筆記具であって、前記円環部材の内方に潤滑塗膜を内面に有する内筒を固設し、当該内筒の内方に前記ノック体を摺動可能に配設させたノック式筆記具。

【図1】
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【図2】
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