説明

ノボラック型フェノール樹脂及びその製造方法、並びにそれを用いた感光性組成物

【課題】高い柔軟性を示し、且つ高耐熱性、高感度で、高い解像度が可能であると共に、さらに感光剤の溶解性及び塗布性が改良されたノボラック型フェノール樹脂及びその製造方法、並びにそれを用いた感光性組成物(特にフォトレジスト組成物)を提供する。
【解決手段】m−クレゾール及びp−クレゾールの少なくとも1以上を含有する1価フェノール成分(a)と、炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)と炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)とを含有するアルデヒド成分(b)とを縮重合反応して得られるノボラック型フェノール樹脂であって、ノボラック型フェノール樹脂のモル比[ポリアルデヒド(b1)に起因するセグメント/モノアルデヒド(b2)に起因するセグメント]が、80/20〜10/90であることを特徴とするノボラック型フェノール樹脂である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体やLCDを製造する際のリソグラフィーなどに好適に使用することができるノボラック型フェノール樹脂及びその製造方法、並びにそれを用いた感光性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポジ型フォトレジスト組成物には、ノボラック型フェノール樹脂などのアルカリ可溶性樹脂と、ナフトキノンジアジド化合物等のキノンジアジド基を有する感光剤とを含むものが用いられる。このようなポジ型フォトレジスト組成物は、アルカリ溶液による現像によって高い解像力を示す。また、ノボラック型フェノール樹脂は、露光後のドライエッチングに対し、芳香環を多く持つ構造に起因する高い耐熱性も有する。このため、ノボラック型フェノール樹脂とナフトキノンジアジド系感光剤とを含有する種々のポジ型フォトレジスト組成物が開発、実用化され、ICやLSI等の半導体製造、LCDなどの回路基材の製造に利用されている。
【0003】
携帯電話用のフレキシブルプリント配線基板では、解像度が30〜300μm程度でよいため、ネガ型ドライフィルムフォトレジストが広く使用されている。ネガ型ドライフィルムフォトレジストでは、基板表面の微細加工が困難である。一方、ポジ型フォトレジスト組成物を用いると、例えば、0.3μm程度の微細な寸法幅から、数十或いは数百μm程度の大きな寸法幅のものまで、多種多様な微細加工が可能である(例えば、特許文献1および2参照)。
【0004】
しかし、ポジ型フォトレジスト組成物は、例えばそれを用いてドライフィルムを形成しようとすると、膜質が脆くて柔軟性がないため、ロール状の製品として製造することが困難である。また、ロール状の製品として製造されても、それを使用する際に不具合が生じやすい。そのため、ポジ型フォトレジスト組成物を用いたドライフィルムは実用化に至っていない。
【0005】
これらを解決するために、特許文献3には、メチルフェノール類と、グルタルアルデヒド及びアジプアルデヒドの少なくとも一つを含有するジアルデヒド類とを縮合することにより、高い柔軟性を示し、且つ高耐熱性、高感度で、高い解像度を可能にするフォトレジスト用フェノール樹脂を得ることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−59445号公報
【特許文献2】特開平8−44053号公報
【特許文献3】国際公開第2010/050592号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載のフェノール樹脂を用いた場合、感光剤の溶解性や塗布性などが十分でないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高い柔軟性を示し、且つ高耐熱性、高感度で、高い解像度が可能であると共に、さらに感光剤の溶解性及び塗布性が改良されたノボラック型フェノール樹脂及びその製造方法、並びにそれを用いた感光性組成物(特にフォトレジスト組成物)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、以上の目的を達成するために、鋭意検討した結果、特定のフェノール成分と特定の組合せからなるアルデヒド成分とを縮重合反応して得られるノボラック型フェノール樹脂であって、ノボラック型フェノール樹脂中の前記アルデヒドに起因するセグメント同士のモル比を調整することで、高い柔軟性を示し、且つ高耐熱性、高感度で、高い解像度が可能であると共に、さらに感光剤の溶解性及び塗布性が改良されることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち本発明は、m−クレゾール及びp−クレゾールの少なくとも1以上を含有する1価フェノール成分(a)と、炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)と炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)とを含有するアルデヒド成分(b)とを縮重合反応して得られるノボラック型フェノール樹脂であって、ノボラック型フェノール樹脂の、前記脂肪族ポリアルデヒド(b1)に起因するセグメントと前記脂肪族モノアルデヒド(b2)に起因するセグメントとのモル比[ポリアルデヒド(b1)に起因するセグメント/モノアルデヒド(b2)に起因するセグメント]が、80/20〜10/90であることを特徴とするノボラック型フェノール樹脂に関する。
【0011】
また、本発明は、上記記載のノボラック型フェノール樹脂を含有することを特徴とする感光性組成物に関する。
【0012】
さらにまた、本発明は、m−クレゾール及びp−クレゾールの少なくとも1以上を含有する1価フェノール成分(a)と、炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)と炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)とを含有するアルデヒド成分(b)とを縮重合反応してノボラック型フェノール樹脂を得る製造方法であって、得られるノボラック型フェノール樹脂の、前記脂肪族ポリアルデヒド(b1)に起因するセグメントと前記脂肪族モノアルデヒド(b2)に起因するセグメントとのモル比[ポリアルデヒド(b1)に起因するセグメント/モノアルデヒド(b2)に起因するセグメント]が、80/20〜10/90であることを特徴とするノボラック型フェノール樹脂の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、高い柔軟性を示し、且つ高耐熱性、高感度で、高い解像度が可能であると共に、さらに感光剤の溶解性及び塗布性が改良されたノボラック型フェノール樹脂及びその製造方法、並びにそれを用いた感光性組成物(特にフォトレジスト組成物)を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[ノボラック型フェノール樹脂(A)]
本発明に係るノボラック型フェノール樹脂(A)は、m−クレゾール及びp−クレゾールの少なくとも1以上を含有する1価フェノール成分(a)と、炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)と炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)とを含有するアルデヒド成分(b)とを縮重合反応して得られる。本発明に係るノボラック型フェノール樹脂(A)の、前記脂肪族ポリアルデヒド(b1)に起因するセグメントと前記脂肪族モノアルデヒド(b2)に起因するセグメントとのモル比[ポリアルデヒド(b1)に起因するセグメント/モノアルデヒド(b2)に起因するセグメント]は、80/20〜10/90であり、好ましくは60/40〜10/90であり、より好ましくは45/55〜10/90であり、特に好ましくは45/55〜20/80である。
本発明に係るノボラック型フェノール樹脂(A)は、ポリアルデヒド(b1)に起因するセグメントの含有割合を前記範囲内とすることによって、高い柔軟性を示し、且つ高耐熱性、高感度で、高い解像度を可能であると共に、さらに感光剤の溶解性及び塗布性が改良されたノボラック型フェノール樹脂を得ている。ポリアルデヒド(b1)に起因するセグメントの含有割合が前記範囲を超えると感光剤の溶解性が低下して感光剤の析出等の不具合を生じ、前記範囲を下回ると柔軟性や塗布性が劣る場合があるので、好適ではない。
【0015】
また、本発明に係るノボラック型フェノール樹脂(A)の重量平均分子量は、特に限定されないが、フォトレジスト組成物の性能や製造上のハンドリング性から、1000〜50000が好ましく、2000〜30000がより好ましく、10000〜30000が特に好ましい。重量平均分子量が1000より小さい場合は、感度が高すぎて耐熱性に劣る場合があり、50000より大きい場合は感度が低い場合がある。
【0016】
<1価フェノール成分(a)>
本発明における1価フェノール成分(a)は、m−クレゾール及びp−クレゾールの少なくとも1以上を含有する。すなわち、1価フェノール成分(a)は、m−クレゾール、p−クレゾール、又はm−クレゾールとp−クレゾールの混合物を必須成分として含有するが、その他の1価フェノール類を一部含有してもよい。その他の1価フェノール類としては、具体的には、フェノール、o−クレゾール、キシレノール、トリメチルフェノール等が挙げられる。キシレノールにおいては、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノールの各構造異性体が使用でき、トリメチルフェノールにおいても、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール等の各異性体が使用できる。その他の1価フェノール類は、単独でも2種以上であってもよい。
【0017】
本発明における1価フェノール成分(a)において、m−クレゾールとp−クレゾールの合計の含有量は、1価フェノール成分(a)100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは100質量%である。前記フェノール成分(a)中において、m−クレゾールとp−クレゾールの合計の含有量が少なすぎると、耐熱性が劣るために好ましくない。
【0018】
1価フェノール成分(a)におけるm−クレゾールとp−クレゾールの質量割合[m−クレゾール/p−クレゾール]は、好ましくは20/80〜100/0、より好ましくは50/50〜100/0である。p−クレゾールの割合が多いと感度が遅くなりすぎる場合がある。
【0019】
1価フェノール成分(a)は、m−クレゾール及びp−クレゾールの両方を含有することが好ましい。m−クレゾールとp−クレゾールの質量割合を調整することで、感度を調整することが出来る。
【0020】
<アルデヒド成分(b)>
本発明におけるアルデヒド成分(b)は、炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)と炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)とを含有する。アルデヒド成分(b)は、ノボラック型フェノール樹脂(A)を構成する1価フェノール成分(a)を縮合反応させる作用を有する成分である。本発明においては、炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)と炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)の他に、本発明の効果の範囲内で、縮合反応させる作用を有する周知のアルデヒドやケトン、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類、及び、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを用いることができる。
【0021】
アルデヒド成分(b)中の炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)と炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)との合計量は、アルデヒド成分(b)100質量%に対して、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
アルデヒド成分(b)は、水溶液として反応系中に添加することもできる。
【0022】
<炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1))>
本発明で使用される脂肪族ポリアルデヒド(b1)は、炭素数が3以上であり、炭素数が3〜10が好ましく、炭素数が3〜8がより好ましく、炭素数が4〜7が特に好ましい。本発明で使用される炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)は、分子中に2個以上のアルデヒド基を有する炭素数が3以上の脂肪族からなる化合物である。例えば、ジアルデヒド類、トリアルデヒド類等であり、好ましくはジアルデヒド類である。
【0023】
ジアルデヒド類としては、例えば、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジプアルデヒド、マレインジアルデヒド、オクタジナール、ヘプタジナールなどの脂肪族ジアルデヒド化合物が挙げられる。トリアルデヒド類としては、例えば、トリホルミルメタンなどの脂肪族トリアルデヒド化合物が挙げられる。
炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)としては、グルタルアルデヒド、アジプアルデヒドが特に好ましい。これらのポリアルデヒドは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
<炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)>
本発明で使用される脂肪族モノアルデヒド(b2)は、炭素数が2以上であり、炭素数が2〜10が好ましく、炭素数が3〜8がより好ましく、炭素数が4〜6が特に好ましい。本発明で使用される炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)としては、分子中に1個のアルデヒド基を有する炭素数が2以上の脂肪族からなる化合物である。これらの例としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ビバリンアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ヘプトアルデヒド、カプリルアルデヒド、カプリンアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒドなどを挙げることができる。これらの中では、特に好ましくはn−ブチルアルデヒドである。
【0025】
[ノボラック型フェノール樹脂(A)の製造方法]
本発明に係るノボラック型フェノール樹脂(A)の製造方法は、m−クレゾール及びp−クレゾールの少なくとも1以上を含有する1価フェノール成分(a)と、炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)と炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)とを含有するアルデヒド成分(b)とを縮重合反応する工程を含み、得られるノボラック型フェノール樹脂(A)の、前記脂肪族ポリアルデヒド(b1)に起因するセグメントと前記脂肪族モノアルデヒド(b2)に起因するセグメントとのモル比[ポリアルデヒド(b1)に起因するセグメント/モノアルデヒド(b2)に起因するセグメント]が、80/20〜10/90であることを特徴とする。
【0026】
二つのセグメントのモル比がこの割合になるように、原料の炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)と炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)の割合が調節される。上記割合は、それぞれの反応性が異なるので、それらの反応性の大きさ、更には採用する反応条件などを加味して調節されるが、当業者にとっては、その調節方法は自明であるか、簡単に見出すことができる。なお、必要に応じて予備的実験を行なうこともできる。
通常は、原料として使用する、炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)と炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)のモル比(b1/b2)は、80/20〜20/80の範囲、好ましくは70/30〜30/70の範囲である。
【0027】
また、縮重合反応は、1価フェノール成分(a)の合計1モルに対して、アルデヒド成分(b)中の炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)と炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)の合計が0.1〜1.0モル、より好ましくは0.3〜0.7モルの範囲内で行うことが好適である。さらに、m−クレゾールとp−クレゾールの合計量が、1価フェノール成分(a)に対して、50質量%以上で行うことが好適である。
【0028】
具体的な製造方法としては以下のような方法がある。
<1段法>
本発明に係るノボラック型フェノール樹脂(A)は、例えば、酸触媒の存在下、1価フェノール成分(a)と、炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)と炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)とを含有するアルデヒド成分(b)とを添加して、重縮合反応を1段で行う、1段法によって製造することができる。
【0029】
<2段法>
本発明に係るノボラック型フェノール樹脂(A)は、例えば、酸触媒の存在下、炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)と炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)との添加時期をずらして、重縮合反応を2段で行う、2段法によって製造することもできる。
2段法には、重縮合反応させる工程が、(I)m−クレゾール及びp−クレゾールの少なくとも1以上を含有する1価フェノール成分(a)と、炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)を含むアルデヒド成分(b)とを反応させ、次いで、前記反応で得られた反応混合液に炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)を含むアルデヒド成分(b)の残部を加えて更に反応させる方式と、(II)m−クレゾール及びp−クレゾールの少なくとも1以上を含有する1価フェノール成分(a)と、炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)を含むアルデヒド成分(b)とを反応させ、次いで、前記反応で得られた反応混合液に炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)を含むアルデヒド成分(b)の残部を加えて更に反応させる方式がある。
【0030】
本発明に係る製造方法においては、1段法も2段法も好適に用いることができる。いずれの方法の場合でも、重縮合反応させる工程では、1価フェノール成分(a)合計1モルに対して、炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)と炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)との合計を0.1〜1.0モル、好ましくは0.3〜0.7モルの範囲で使用することが好ましい。
【0031】
本発明におけるノボラック型フェノール樹脂(A)は、2段法で製造するのがより好ましい。その理由は、1段法に比較し、分子量のコントロールが容易となり、所望の重合体が得やすいからである。さらには、2段法の前記(II)の方式で製造するのがより好ましい。その理由は、ポリアルデヒドで重縮合されたフェノール樹脂の重合単位にブチルアルデヒドを重縮合させることにより、感度を低下させることなく、分子量の高い重合体が得られ易いからである。
【0032】
<酸触媒>
本発明に係るノボラック型フェノール樹脂(A)の製造方法においては、酸触媒を使用することができる。酸触媒としては、フェノール成分とアルデヒド又はケトンとを反応させる能力のある公知の酸触媒が、特に限定されることなく使用可能である。例えば、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機スルホン酸、塩酸、硫酸などの無機酸などを使用できる。触媒の使用量は、1価フェノール成分(a)に対して、0.01〜5質量%であるが、フォトレジスト組成物の特性の向上のためには、極力少ない方が好ましい。樹脂中に酸触媒が残存するとフォトレジストの特性に弊害を及ぼすため、アミン類または無機アルカリを使用して酸触媒を中和することが好ましい。
【0033】
前記1段法及び2段法における酸触媒の使用量は、種類によっても異なるが、シュウ酸の場合は、1価フェノール成分(a)に対して、0.3〜1.0質量%程度、硫酸の場合は0.05〜0.1質量%程度、またパラトルエンスルホン酸の場合は0.1〜0.5質量%程度使用するのがよい。酸触媒としては、硫酸又はパラトルエンスルホン酸を使用することが好ましい。
【0034】
<反応温度>
前記1段法及び2段法における反応温度は、特に限定されないが、好ましくは60〜160℃、より好ましくは80〜140℃である。60℃より低いと重合が進まず、160℃より高いと反応の制御が難しくなる場合があり、目的のノボラック型フェノール樹脂(A)を安定的に得ることが困難となる場合があるので好ましくない。
【0035】
<反応溶媒>
本発明に係る製造方法には、必要によって反応溶媒を使用することができる。
反応溶媒としては、原料の1価フェノール成分(a)やアルデヒド成分(b)などを好適に溶解することができるので、水が好適であるが、場合によっては、反応に影響を及ぼさない有機溶媒を使用することもできる。
有機溶媒としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類等が挙げられる。
反応溶媒の使用量は、通常、反応原料100質量部あたり20〜1000質量部である。
【0036】
<反応時間、反応圧力>
本発明に係る製造方法において、反応時間は、反応温度にもよるが、通常は20時間以内である。反応圧力は、通常は常圧下で行われるが、若干の加圧ないし減圧下でも行うことができる。
【0037】
<後処理>
本発明に係る製造方法において、重縮合反応終了後に、後処理として、塩基化合物を添加して酸触媒を中和し、続いて酸触媒を除去するために水を加えて水洗を実施することが好ましい。
塩基化合物としては、特に限定されることはなく、酸触媒を中和し、水に可溶となる塩を形成するものであれば使用可能である。例えば、金属水酸化物や金属炭酸塩などの無機塩基ならびにアミン及び有機アミンなどの有機塩基が挙げられる。無機塩基としては、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムや炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。アミンあるいは有機アミンの具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリブチルアミンなどが挙げられる。好ましくは有機アミンが使用される。塩基化合物の使用量は、酸触媒を中和し、反応系内のpHを4〜8の範囲にする量で使用することが好ましい。
水洗における水洗水の量と水洗の回数は、特に限定されない。酸触媒をフォトレジスト組成物としての実使用に影響ない程度の量まで除去するには、水洗回数としては通常は1〜5回程度が必要である。
水洗温度は、特に限定されないが、触媒除去の効率と作業性の観点から40〜95℃で行うのが好ましい。水洗中、樹脂と水洗水の分離が悪い場合は、樹脂の粘度を低下させる溶媒の添加や水洗温度を上昇させることが効果的である。このような溶媒としては、フェノール樹脂を溶解し、粘度を低下させるものであれば特に限定されることなく使用することができる。
【0038】
酸性触媒を中和及び水洗により除去した後で、例えば、反応系の温度を130〜230℃に上げて、20〜50torrの減圧下に、反応系内に存在する未反応原料や有機溶媒等の揮発分を留去することによって、本発明のノボラック型フェノール樹脂(A)を好適に得ることができる。
【0039】
[感光性組成物]
本発明に係るノボラック型フェノール樹脂(A)は、感光性樹脂組成物(特にフォトレジスト組成物)として好適に利用することができる。このフォトレジストは、高集積半導体を製造する際や液晶用の薄膜フィルムトランジスター(TFT)材料に使用できる。
【0040】
本発明に係る感光性組成物は、ノボラック型フェノール樹脂(A)を含有し、これを好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%含有する。
本発明に係る感光性組成物は、さらに感光剤(B)を含有することが好ましい。感光剤(B)としては、ノボラック型フェノール樹脂を含むフォトレジストの感光剤として公知のものを使用できる。感光剤(B)としては、キノンジアジド基を有するキノンジアジド化合物が好ましく、特に1,2−キノンジアジド化合物又はその誘導体が好ましい。
【0041】
感光剤(B)、好ましくはキノンジアジド化合物を用いることで、露光した部分は溶解促進効果によりアルカリ溶解速度が大きくなり、逆に露光しない部分は溶解抑制効果によりアルカリ溶解速度が小さくなり、この露光部と未露光部の溶解速度の差によって、コントラストの高い、シャープなレジストパターンを得ることが出来る。
【0042】
キノンジアジド化合物としては、従来、キノンジアジド−ノボラック系レジストで用いられている公知の化合物を用いることができる。このようなキノンジアジド基を含む化合物としては、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロライドやベンゾキノンジアジドスルホン酸クロライド等と、これらの酸クロライドと縮合反応可能な官能基を有する化合物とを反応させることによって得られた化合物が好ましい。ここで酸クロライドと縮合可能な官能基としては水酸基、アミノ基等があげられるが、特に水酸基が好適である。酸クロライドと縮合可能な水酸基を有する化合物としては、例えばハイドロキノン、レゾルシン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン等のヒドロキシベンゾフェノン類、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン等のヒドロキシフェニルアルカン類、4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタン、4,4’,2”,3”,4”−ペンタヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタン等のヒドロキシトリフェニルメタン類などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、また2種以上を組合せて用いてもよい。
【0043】
酸クロライドであるナフトキノンジアジドスルホン酸クロライドやベンゾキノンジアジドスルホン酸クロライドの具体例としては、例えば、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルフォニルクロライド、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルフォニルクロライドなどが好ましいものとして挙げられる。
【0044】
感光剤(B)の配合量は、ノボラック型フェノール樹脂(A)100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、2〜20質量部がより好ましい。感光剤(B)の配合量が1質量部よりも少ないと、感光性成物として十分な感度が得られないことがあり、また、50質量部よりも多いと成分の析出の問題が起こることがあるので好ましくない。
【0045】
本発明に係る感光性組成物は、ノボラック型フェノール樹脂(A)及び感光剤(B)の他に、感光性組成物、特にフォトレジスト組成物の慣用成分である、酸化防止剤等の安定剤、可塑剤、界面活性剤、密着性向上剤、溶解促進剤、溶解阻害剤などの公知の成分を好適に含有することができる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
実施例1〜6及び比較例1〜7のノボラック型フェノール樹脂を、以下のとおり調製した。得られたノボラック型フェノール樹脂の構造を分析し重量平均分子量(Mw)、アルデヒド成分(b)に起因するセグメント全体(100mol%)に対するモノアルデヒド(b2)に起因するセグメントの含有率(mol%)、ポリアルデヒド(b1)に起因するセグメントとモノアルデヒド(b2)に起因するセグメントとのモル比、また樹脂としての特性としてアルカリ溶解速度(オングストローム/s)、貯蔵弾性率(E’、MPa)、tanδ立ち上がり温度(℃)を評価した。
さらに、得られたノボラック型フェノール樹脂について、それぞれを用いて感光性組成物(フォトレジスト組成物)を調製して、その感光剤溶解性、塗布性、柔軟性、残膜率(%)、及び解像度を評価した。
【0048】
ノボラック型フェノール樹脂の構造の分析方法や特性の評価方法は以下の通りである。
(1)重量平均分子量(GPC測定方法)
型式:HLC−8220 東ソー(株)製
カラム:TSK−GEL Hタイプ G2000H×L 4本
G3000H×L 1本
G4000H×L 1本
測定条件:カラム圧力 13.5MPa
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)フローレート 1ml/min
温度:40℃
検出器:スペクトロフォトメーター(UV−8020)RANGE 2.56
WAVE LENGTH:254nm、及びRI
インジェクション量:100μmL
試料濃度:5mg/mL
【0049】
(2)アルカリ溶解速度の評価方法
ノボラック型フェノール樹脂3gをPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)9gに溶解し、樹脂溶液を調合した。これらを0.2ミクロンメンブレンフィルターで濾過した。これを4インチシリコンウェハー上に乾燥後の厚みが約1.5μmの厚みになるようにスピンコーターで塗布し、110℃で60秒間ホットプレート上で乾燥させた。次いで現像液(2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液)を用い、完全に膜が消失するまでの時間を計測した。初期膜厚(単位:オングストローム)を溶解するまでの時間(単位:秒)で割った値を溶解速度とした。
膜厚の測定方法に関しては、ホットプレートで乾燥後、光学式膜厚系(VM−1000;大日本スクリーン製造製)を用いて、ウェハーの5箇所について測定後、測定値の平均値を膜厚とした。
【0050】
(3)フェノ−ル樹脂の貯蔵弾性率およびtanδの立ち上がり温度
ノボラック型フェノール樹脂を溶融し、長さ10mm×直径10mmの円柱状の試験片を作成した後、粘弾性スペクトロメータ EXSTAR DMS6100(セイコーインスツルメンツ(株)製)を用い、振動周波数1Hz、昇温速度3℃/分、30〜140℃の温度範囲で長さ方向について圧縮モードで貯蔵弾性率(E’)及びtanδを測定した。得られた貯蔵弾性率−温度曲線の中から70℃における貯蔵弾性率の値(Pa)を、フェノ−ル樹脂の貯蔵弾性率とした。なお、貯蔵弾性率(E’)が低い方が柔軟性が良いことを示している。tanδについては、得られたtanδ−温度曲線の中から立ち上がりの温度(℃)を耐熱性の指標とした。なお、数値が高い方が耐熱性が高いことを示している。
【0051】
(4)ノボラック型フェノール樹脂中のモノアルデヒド(b2)に起因するセグメントの含有率(13C−NMR)
以下の13C−NMR装置及び条件で測定を行い、ノボラック型フェノール樹脂中のモノアルデヒド(b2)に起因するセグメントの含有率(mol%)は、以下の式より求めた。
型式:JEOL AL−400 日本電子(株)製
測定条件:13C−NMR、積算回数20,000
溶媒:重メタノール
【0052】
【数1】

【0053】
ノボラック型フェノール樹脂を用いた感光性組成物(フォトレジスト組成物)の調製方法、得られた組成物の感光剤溶解性、塗布性、柔軟性、残膜率(%)、及び解像度の評価方法は以下のとおりである。
(5)フォトレジスト組成物の調製
ノボラック型フェノール樹脂10gとナフトキノン1,2−ジアジド−5−スルホン酸の2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンエステル2.5gとをPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)37.5gに溶解し、フォトレジスト組成物とした。
【0054】
(6)感光剤溶解性の評価方法
前記フォトレジスト組成物を室温25℃に保ち、2日間かけて振盪機を用いて溶解させ、下記基準で評価した。
○:感光剤の完全溶解(透明)
×:感光剤の不溶部あり(濁りあり)
【0055】
(7)フォトレジスト組成物の塗布性および柔軟性評価
前記フォトレジスト組成物を0.2ミクロンメンブレンフィルターで濾過し、これを厚さ50μmのポリイミドフィルム上に約5.0μmの厚みになるように塗布し、110℃で90秒間ホットプレート上で乾燥させた。
乾燥後、レジスト表面の状態を観察しハジキの有無で塗布性を評価した。
次いで、現像液(2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液)を用い、60秒間浸漬した。リンス、乾燥させた後、180度に折り曲げて、折り曲げ箇所の状態を下記基準で目視により評価した。
○:レジスト膜のヒビ割れがない
×:レジスト膜のヒビ割れがある
【0056】
(8)フォトレジスト組成物の残膜率・解像度の評価方法
前記フォトレジスト組成物を0.2ミクロンメンブレンフィルターで濾過し、これを4インチシリコンウェハー上に約1.5μの厚みになるようにスピンコーターで塗布し、110℃、60秒間ホットプレート上で乾燥させた。その後、縮小投影露光装置を用い、露光時間を段階的に変えて露光した。次いで現像液(2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液)を用い、60秒間現像し、リンス、乾燥を行なった。
残膜率とは、現像後の感光性樹脂の膜厚と現像前の感光性樹脂の膜厚の比であり、下記式により表される値である。
【0057】
【数2】

【0058】
また、解像度は、テストチャートマスクを用い、下記基準で評価した。
○:4.0μライン&スペースが解像できる。
×:4.0μライン&スペースが解像できない。
【0059】
〔実施例1〕
温度計、仕込み・留出口および攪拌機を備えたガラス製三口フラスコに、m−クレゾール100g(0.93モル)、99%ブチルアルデヒド11.4g(0.14モル)及びp−トルエンスルホン酸0.2gを入れ、96℃で20時間反応させた。その後、50%グルタルアルデヒド水溶液55.6g(0.28モル)を入れ、96℃で20時間反応させた。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン0.2gを添加し、イオン交換水100gを添加して攪拌、静置した。静置することにより分離した水層のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を2回行った。その後、185℃まで昇温して脱水した後、30torrで2時間減圧蒸留を行い、実施例1に係るノボラック型フェノール樹脂107gを得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂について、構造の分析、溶解速度の評価を行い、結果を表1に示す。また、このノボラック型フェノール樹脂を用いた感光性組成物について、感光剤溶解性、塗布性の評価を行い、結果を表3に示す。
【0060】
〔実施例2〕
99%ブチルアルデヒドを19.0g(0.23モル)に変えたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2に係るノボラック型フェノール樹脂を得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂について、構造の分析、溶解速度の評価を行い、結果を表1に示す。また、弾性率、tanδの立ち上がり温度の評価を行い、結果を表2に示す。さらに、このノボラック型フェノール樹脂を用いた感光性組成物について、感光剤溶解性、塗布性の評価を行い、結果を表3に示す。また、柔軟性、残膜率及び解像度の評価を行い、結果を表4に示す。
【0061】
〔実施例3〕
温度計、仕込み・留出口および攪拌機を備えたガラス製三口フラスコに、m−クレゾール100g(0.93モル)、50%グルタルアルデヒド水溶液55.6g(0.28モル)及びp−トルエンスルホン酸0.2gを入れ、96℃で20時間反応させた。その後、99%ブチルアルデヒド16.7g(0.20モル)を入れ、96℃で20時間反応させた。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン0.2gを添加し、イオン交換水100gを添加して攪拌、静置した。静置することにより分離した水層のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を2回行った。その後、185℃まで昇温して脱水した後、30torrで2時間減圧蒸留を行い、実施例3に係るノボラック型フェノール樹脂100gを得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂について、構造の分析、溶解速度の評価を行い、結果を表1に示す。また、弾性率、tanδの立ち上がり温度の評価を行い、結果を表2に示す。さらに、このノボラック型フェノール樹脂を用いた感光性組成物について、感光剤溶解性、塗布性の評価を行い、結果を表3に示す。また、柔軟性、残膜率及び解像度の評価を行い、結果を表4に示す。
【0062】
〔実施例4〕
99%ブチルアルデヒドを22.8g(0.28モル)に変えたこと以外は実施例3と同様にして、実施例4に係るノボラック型フェノール樹脂109gを得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂について、構造の分析、溶解速度の評価を行い、結果を表1に示す。また、弾性率、tanδの立ち上がり温度の評価を行い、結果を表2に示す。さらに、このノボラック型フェノール樹脂を用いた感光性組成物について、感光剤溶解性、塗布性の評価を行い、結果を表3に示す。また、柔軟性、残膜率及び解像度の評価を行い、結果を表4に示す。
【0063】
〔実施例5〕
温度計、仕込み・留出口および攪拌機を備えたガラス製三口フラスコに、m−クレゾール50g(0.46モル)、p−クレゾール50g(0.46モル)、50%グルタルアルデヒド水溶液55.6g(0.28モル)及びp−トルエンスルホン酸0.2gを入れ、96℃で20時間反応させた。その後、99%ブチルアルデヒド11.4g(0.14モル)を入れ、96℃で20時間反応させた。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン0.2gを添加し、イオン交換水100gを添加して攪拌、静置した。静置することにより分離した水層のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を2回行った。その後、185℃まで昇温して脱水した後、30torrで2時間減圧蒸留を行い、実施例5に係るノボラック型フェノール樹脂103gを得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂について、構造の分析、溶解速度の評価を行い、結果を表1に示す。さらに、このノボラック型フェノール樹脂を用いた感光性組成物について、感光剤溶解性、塗布性の評価を行い、結果を表3に示す。また、柔軟性、残膜率及び解像度の評価を行い、結果を表4に示す。
【0064】
〔実施例6〕
99%ブチルアルデヒドを12.1g(0.15モル)に変えたこと以外は実施例5と同様にして、実施例6に係るノボラック型フェノール樹脂108gを得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂について、構造の分析、溶解速度の評価を行い、結果を表1に示す。また、弾性率、tanδの立ち上がり温度の評価を行い、結果を表2に示す。さらに、このノボラック型フェノール樹脂を用いた感光性組成物について、感光剤溶解性、塗布性の評価を行い、結果を表3に示す。また、柔軟性、残膜率及び解像度の評価を行い、結果を表4に示す。
【0065】
〔比較例1〕
温度計、仕込み・留出口および攪拌機を備えたガラス製三口フラスコに、m−クレゾール80g(0.74モル)、p−クレゾール120g(1.11モル)、42%ホルマリン81.3g(1.14モル)及び蓚酸0.8gを三つ口フラスコに入れ、100℃で10時間反応させた後、180℃まで昇温して脱水した後、30torrで2時間減圧蒸留を行い、比較例1に係るノボラック型フェノール樹脂150gを得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂について、構造の分析、溶解速度の評価を行い、結果を表1に示す。また、弾性率、tanδの立ち上がり温度の評価を行い、結果を表2に示す。さらに、このノボラック型フェノール樹脂を用いた感光性組成物について、感光剤溶解性、塗布性の評価を行い、結果を表3に示す。また、柔軟性、残膜率及び解像度の評価を行い、結果を表4に示す。
【0066】
〔比較例2〕
温度計、仕込み・留出口および攪拌機を備えたガラス製三口フラスコに、m−クレゾール100g(0.93モル)、99%ブチルアルデヒド22.8g(0.28モル)及びp−トルエンスルホン酸0.2gを入れ、96℃で20時間反応させた。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン0.2gを添加し、イオン交換水100gを添加して攪拌、静置した。静置することにより分離した水層のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を2回行った。その後、185℃まで昇温して脱水した後、30torrで2時間減圧蒸留を行い、比較例2に係るノボラック型フェノール樹脂54gを得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂について、構造の分析、溶解速度の評価を行い、結果を表1に示す。また、このノボラック型フェノール樹脂を用いた感光性組成物について、感光剤溶解性、塗布性の評価を行い、結果を表3に示す。
【0067】
〔比較例3〕
99%ブチルアルデヒドを45.6g(0.56モル)に変えたこと以外は比較例2と同様にして、比較例3に係るノボラック型フェノール樹脂115gを得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂について、構造の分析、溶解速度の評価を行い、結果を表1に示す。また、このノボラック型フェノール樹脂を用いた感光性組成物について、感光剤溶解性、塗布性の評価を行い、結果を表3に示す。
【0068】
〔比較例4〕
温度計、仕込み・留出口および攪拌機を備えたガラス製三口フラスコに、m−クレゾール100g(0.93モル)、99%ブチルアルデヒド22.8g(0.28モル)及びp−トルエンスルホン酸0.2gを入れ、96℃で20時間反応させた。その後、42%ホルムアルデヒド水溶液19.8g(0.28モル)を入れ、96℃で4時間反応させた。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン0.2gを添加し、イオン交換水100gを添加して攪拌、静置した。静置することにより分離した水層のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を2回行った。その後、185℃まで昇温して脱水した後、30torrで2時間減圧蒸留を行い、比較例4に係るノボラック型フェノール樹脂82gを得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂について、構造の分析、溶解速度の評価を行い、結果を表1に示す。また、このノボラック型フェノール樹脂を用いた感光性組成物について、感光剤溶解性、塗布性の評価を行い、結果を表3に示す。
【0069】
〔比較例5〕
温度計、仕込み・留出口および攪拌機を備えたガラス製三口フラスコに、m−クレゾール100g(0.93モル)、50%グルタルアルデヒド水溶液42.6g(0.21モル)及びp−トルエンスルホン酸0.2gを入れ、96℃で20時間反応させた。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン0.2gを添加し、イオン交換水100gを添加して攪拌、静置した。静置することにより分離した水層のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を2回行った。その後、185℃まで昇温して脱水した後、30torrで2時間減圧蒸留を行い、比較例5に係るノボラック型フェノール樹脂82gを得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂について、構造の分析、溶解速度の評価を行い、結果を表1に示す。また、弾性率、tanδの立ち上がり温度の評価を行い、結果を表2に示す。さらに、このノボラック型フェノール樹脂を用いた感光性組成物について、感光剤溶解性、塗布性の評価を行い、結果を表3に示す。また、柔軟性、残膜率及び解像度の評価を行い、結果を表4に示す。
【0070】
〔比較例6〕
温度計、仕込み・留出口および攪拌機を備えたガラス製三口フラスコに、m−クレゾール50g(0.46モル)、p−クレゾール50g(0.46モル)、50%グルタルアルデヒド水溶液37.0g(0.19モル)及びp−トルエンスルホン酸0.2gを入れ、96℃で20時間反応させた。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン0.2gを添加し、イオン交換水100gを添加して攪拌、静置した。静置することにより分離した水層のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を2回行った。その後、185℃まで昇温して脱水した後、30torrで2時間減圧蒸留を行い、比較例6に係るノボラック型フェノール樹脂64gを得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂について、構造の分析、溶解速度の評価を行い、結果を表1に示す。また、弾性率、tanδの立ち上がり温度の評価を行い、結果を表2に示す。さらに、このノボラック型フェノール樹脂を用いた感光性組成物について、感光剤溶解性、塗布性の評価を行い、結果を表3に示す。また、柔軟性、残膜率及び解像度の評価を行い、結果を表4に示す。
【0071】
〔比較例7〕
温度計、仕込み・留出口および攪拌機を備えたガラス製三口フラスコに、m−クレゾール40g(0.37モル)、p−クレゾール60g(0.56モル)、50%グルタルアルデヒド水溶液37.0g(0.19モル)及びp−トルエンスルホン酸0.2gを入れ、96℃で20時間反応させた。その後、42%ホルムアルデヒド水溶液13.2g(0.18モル)を入れ、96℃で4時間反応させた。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン0.2gを添加し、イオン交換水100gを添加して攪拌、静置した。静置することにより分離した水層のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を2回行った。その後、185℃まで昇温して脱水した後、30torrで2時間減圧蒸留を行い、比較例7に係るノボラック型フェノール樹脂94gを得た。
得られたノボラック型フェノール樹脂について、構造の分析、溶解速度の評価を行い、結果を表1に示す。さらに、このノボラック型フェノール樹脂を用いた感光性組成物について、感光剤溶解性、塗布性の評価を行い、結果を表3に示す。また、柔軟性、残膜率及び解像度の評価を行い、結果を表4に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
表1乃至表4に示すとおり、実施例1〜6のノボラック型フェノール樹脂は、比較例1と比較し弾性率が低く、耐熱性は同程度もしくは優れていた。
さらに、実施例1〜6で得られたノボラック型フェノール樹脂を用いて調製したフォトレジスト組成物は、比較例1〜7で得られたノボラック型フェノール樹脂を用いて調製したフォトレジスト組成物に比べ、感光剤溶解性、塗布性、柔軟性、残膜率、解像度のすべての性能をバランスよく満足した。
実施例4で得られたノボラック型フェノール樹脂は、ポリアルデヒド(b1)に起因するセグメント/モノアルデヒド(b2)に起因するセグメントが45/55〜20/80の特に好ましい範囲にあり、且つ重量平均分子量が10000〜30000の特に好ましい範囲にあるために、弾性率が低く、より高い柔軟性を有し、また、それを用いて調製したフォトレジスト組成物は、感光剤溶解性、塗布性、柔軟性、解像度が良好であって、残膜率が特に良好であるなどレジスト特性が特に優れていた。
比較例5〜7のノボラック型フェノール樹脂は、フォトレジスト組成物を得るための感光剤の溶解性が十分ではなく、所定の感光剤を得ることができず、塗布性、柔軟性、残膜率、解像度が測定できなかった。比較例1〜4のノボラック型フェノール樹脂は、感光剤の溶解性は良好であったが、得られたフォトレジスト組成物の柔軟性が劣った。また、比較例2〜4のフォトレジスト組成物については、塗布性も十分ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によって、高い柔軟性を示し、且つ高耐熱性、高感度で、高い解像度が可能であると共に、さらに感光剤の溶解性及び塗布性が改良されたノボラック型フェノール樹脂及びその製造方法、並びにそれを用いた感光性組成物(特にフォトレジスト組成物)を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
m−クレゾール及びp−クレゾールの少なくとも1以上を含有する1価フェノール成分(a)と、炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)と炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)とを含有するアルデヒド成分(b)とを縮重合反応して得られるノボラック型フェノール樹脂であって、
ノボラック型フェノール樹脂の、前記脂肪族ポリアルデヒド(b1)に起因するセグメントと前記脂肪族モノアルデヒド(b2)に起因するセグメントとのモル比[ポリアルデヒド(b1)に起因するセグメント/モノアルデヒド(b2)に起因するセグメント]が、80/20〜10/90であることを特徴とするノボラック型フェノール樹脂。
【請求項2】
脂肪族ポリアルデヒド(b1)の炭素数が3〜10であることを特徴とする請求項1記載のノボラック型フェノール樹脂。
【請求項3】
脂肪族モノアルデヒド(b2)の炭素数が2〜10であることを特徴とする請求項1又は2記載のノボラック型フェノール樹脂。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか記載のノボラック型フェノール樹脂を含有することを特徴とする感光性組成物。
【請求項5】
さらに感光剤を含有することを特徴とする請求項4記載の感光性組成物。
【請求項6】
感光剤がキノンジアジド基を含む化合物であることを特徴とする請求項5記載の感光性組成物。
【請求項7】
m−クレゾール及びp−クレゾールの少なくとも1以上を含有する1価フェノール成分(a)と、炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)と炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)とを含有するアルデヒド成分(b)とを縮重合反応してノボラック型フェノール樹脂を得る製造方法であって、
得られるノボラック型フェノール樹脂の、前記脂肪族ポリアルデヒド(b1)に起因するセグメントと前記脂肪族モノアルデヒド(b2)に起因するセグメントとのモル比[ポリアルデヒド(b1)に起因するセグメント/モノアルデヒド(b2)に起因するセグメント]が、80/20〜10/90であることを特徴とするノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項8】
重縮合反応させる工程が、m−クレゾール及びp−クレゾールの少なくとも1以上を含有する1価フェノール成分(a)と、炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)を含むアルデヒド成分(b)とを反応させ、次いで、前記反応で得られた反応混合液に炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)を含むアルデヒド成分(b)の残部を加えて更に反応させることを特徴とする請求項7記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項9】
重縮合反応させる工程が、m−クレゾール及びp−クレゾールの少なくとも1以上を含有する1価フェノール成分(a)と、炭素数が3以上の脂肪族ポリアルデヒド(b1)を含むアルデヒド成分(b)とを反応させ、次いで、前記反応で得られた反応混合液に炭素数が2以上の脂肪族モノアルデヒド(b2)を含むアルデヒド成分(b)の残部を加えて更に反応させることを特徴とする請求項7記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法。


【公開番号】特開2013−57028(P2013−57028A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197036(P2011−197036)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(591018707)明和化成株式会社 (12)
【Fターム(参考)】