ノンクロメート水性金属表面処理剤、表面処理鋼材及び塗装鋼材、並びに鋼材の金属表面処理方法及び塗装鋼材の製造方法
【解決手段】(A)一般式(1)
YR1mSiR23-m (1)
(R1はC1〜8の窒素原子を含まない一価炭化水素基、R2はC1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、Yは窒素含有有機基、mは0又は1。)
で表される窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物と、(B)一般式(2)
R1nR33-nSi−(CH2)a−SiR1nR33-n (2)
(R1は上記と同じ、R3はC1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、nは0又は1、aは1〜10。)
で表される加水分解性シラン又はその部分加水分解物とを加水分解して得られる有機ケイ素化合物と、水を含有するノンクロメート水性金属表面処理剤。
【効果】上記金属表面処理剤は、優れた防食性と加工性を被塗物に付与することができ、高い耐食性と加工性を有する表面処理鋼材を得ることができ、上層被膜層を塗布形成することで高品質の塗装鋼材を得ることができる。
YR1mSiR23-m (1)
(R1はC1〜8の窒素原子を含まない一価炭化水素基、R2はC1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、Yは窒素含有有機基、mは0又は1。)
で表される窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物と、(B)一般式(2)
R1nR33-nSi−(CH2)a−SiR1nR33-n (2)
(R1は上記と同じ、R3はC1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、nは0又は1、aは1〜10。)
で表される加水分解性シラン又はその部分加水分解物とを加水分解して得られる有機ケイ素化合物と、水を含有するノンクロメート水性金属表面処理剤。
【効果】上記金属表面処理剤は、優れた防食性と加工性を被塗物に付与することができ、高い耐食性と加工性を有する表面処理鋼材を得ることができ、上層被膜層を塗布形成することで高品質の塗装鋼材を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷延鋼材、熱延鋼材、ステンレススチール、電気亜鉛めっき鋼材、溶融亜鉛めっき鋼材、亜鉛−アルミニウム合金系めっき鋼材、亜鉛−鉄合金系めっき鋼材、亜鉛−マグネシウム合金系めっき鋼材、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金系めっき鋼材、アルミニウム系めっき鋼材、アルミニウム−シリコン合金系めっき鋼材、錫系めっき鋼材、鉛−錫合金系めっき鋼材、クロム系めっき鋼材等の塗装鋼材の鋼材表面処理用として好適なノンクロメート水性金属表面処理剤、これで処理された表面処理鋼材及び塗装鋼材、並びに鋼材の金属表面処理方法及び塗装鋼材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属の表面処理剤には、クロメート処理やリン酸クロメート処理等のクロム系表面処理剤が適用されてきており、現在でも広く使用されている。しかし、近年の環境規制の動向からすると、クロム系表面処理剤は、クロムの有する毒性、特に発ガン性のために将来的に使用が制限される可能性がある。そこで、クロムを含まずにクロメート処理剤と同等の金属への密着性、耐食性を有する金属表面処理剤の開発が望まれていた。
【0003】
特許文献1(特開平8−73775号公報)には、2種類のシランカップリング剤を含む酸性表面処理剤が開示されている。しかし、この系の酸性表面処理剤は、耐食性が不足しているため、金属表面を処理した後に高い耐食性と加工性が要求されるような目的では使用し難いものであった。
【0004】
また、特許文献2(特開平10−60315号公報)には、水系エマルションと反応する特定官能基を有するシランカップリング剤を含有する鋼構造物用表面処理剤が開示されているが、この場合、要求されている耐食性は、湿潤試験のように比較的マイルドな試験に対してであり、厳しい耐食性に耐えるような防錆剤とは、耐食性という点において比較にならないほど劣るものである。
【0005】
以上のことから、薄膜で耐食性と加工密着性を発現し、特に防錆処理用コーティング剤として有用なノンクロメートの金属表面処理剤の開発が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開平8−73775号公報
【特許文献2】特開平10−60315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、金属、特に金属被覆鋼材の表面処理用として好適に使用でき、クロムを含まず、塗料などのコーティングの前処理として優れた加工性と耐食性を被塗物に付与することができるノンクロメート水性金属表面処理剤、これで処理された表面処理鋼材及び塗装鋼材、並びに鋼材の金属表面処理方法及び塗装鋼材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、(A)下記一般式(1)
YR1mSiR23-m (1)
(式中、R1は炭素数1〜8の窒素原子を含まない置換又は非置換の一価炭化水素基、R2は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、Yは窒素含有有機基であり、mは0又は1である。)
で表される窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物と、(B)下記一般式(2)
R1nR33-nSi−(CH2)a−SiR1nR33-n (2)
(式中、R1は上記と同じ、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、nは0又は1、aは1〜10の整数である。)
で表される加水分解性シラン又はその部分加水分解物との混合物を、水中あるいは加水分解に必要な十分量の水を含む有機溶剤中で加水分解するという、非常にシンプルな方法により得られる有機ケイ素化合物と、水とを配合したノンクロメートの水性処理剤が、金属表面に非常に優れた防食性と加工性を被塗物に付与し得、鋼材の金属表面処理剤として好適であり、鋼材及び金属被覆鋼材、特に亜鉛系金属被覆鋼材の表面処理に最適であることを見出した。
【0009】
また、本発明の金属表面処理剤で鋼材を表面処理した後、更に上層皮膜層を塗布形成することで、耐食性及び加工性に優れた塗装鋼材を製造することができる。
【0010】
従って、本発明は、
[I](A)上記式(1)の窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物100質量部と、(B)上記式(2)の加水分解性シラン又はその部分加水分解物5〜200質量部とを加水分解することにより得られる有機ケイ素化合物、及び
[II]水
を含有してなることを特徴とするノンクロメート水性金属表面処理剤、
及び、この表面処理剤で表面処理されてなる表面処理鋼材、更に、上層被膜層が塗布形成されてなる塗装鋼材、鋼材の金属表面処理方法及び塗装鋼材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のノンクロメート水性金属表面処理剤は、防錆処理剤等として鋼材の金属表面処理に用いることにより、従来のクロメート含有防錆処理剤より優れた防食性と加工性を被塗物に付与することができ、高い耐食性と加工性を有する表面処理鋼材を得ることができ、更に、上層被膜層を塗布形成することで高品質の塗装鋼材を得ることができる。また、このノンクロメート水性金属表面処理剤は、貯蔵安定性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明のノンクロメート水性金属表面処理剤に配合される有機ケイ素化合物を得るために用いる(A)成分の窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シランは、系を水溶性にするため及び系をアルカリ性にするために用いられる成分であり、下記一般式(1)で表されるものである。
【0013】
YR1mSiR23-m (1)
(式中、R1は炭素数1〜8の窒素原子を含まない置換又は非置換の一価炭化水素基、R2は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、Yは窒素含有有機基であり、mは0又は1である。)
【0014】
ここで、R1は炭素数1〜8の窒素原子を含まない置換又は非置換の一価炭化水素基であり、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などや、これらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子などで置換した基、例えばハロゲン化アルキル基などが挙げられる。具体的には、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3、−CH(CH3)2、−CH2CH2CH2CH3、−CH(CH3)CH2CH3、−CH2CH(CH3)CH3、−C(CH3)3、−C6H5、−C6H13などが例示される。
【0015】
また、R2は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基であり、具体的には、−OCH3、−OCH2CH3、−OCH2CH2CH3、−OCH(CH3)2、−OCH2CH2CH2CH3、−OCH(CH3)CH2CH3、−OCH2CH(CH3)CH3、−OC(CH3)3、−OCOCH3、−OCOCH2CH3などが例示されるが、中でも−OCH3、−OC2H5が好ましい。
【0016】
Yは窒素含有有機基であり、例えば下記一般式(3)で示される基が挙げられる。
【化1】
(式中、R4、R5は水素原子又は炭素数1〜8の一価炭化水素基であり、R4とR5は互いに同一であっても異なっていてもよい。R6、R7はそれぞれ炭素数1〜8の二価炭化水素基であり、R6とR7は互いに同一であっても異なっていてもよい。pは0又は1〜3の整数である。)
【0017】
なお、R4、R5の炭素数1〜8の一価炭化水素基としては、R1で説明したものと同様の基を挙げることができる。R6、R7の炭素数1〜8の二価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等のアルキレン基などが挙げられる。
【0018】
Yの窒素含有有機基として具体的には、下記の基を挙げることができる。
H2NCH2−、H(CH3)NCH2−、H2NCH2CH2−、H(CH3)NCH2CH2−、H2NCH2CH2CH2−、H(CH3)NCH2CH2CH2−、(CH3)2NCH2CH2CH2−、H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2−、H(CH3)NCH2CH2HNCH2CH2CH2−、(CH3)2NCH2CH2HNCH2CH2CH2−、H2NCH2CH2HNCH2CH2HNCH2CH2CH2−、H(CH3)NCH2CH2HNCH2CH2HNCH2CH2CH2−
これらの中では、特に下記の基が好ましい。
H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2−
【0019】
上記式(1)の窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シランとしては、下記のものを例示することができる。
H2NCH2Si(OCH3)3、
H2NCH2Si(OCH2CH3)3、
H2NCH2SiCH3(OCH3)2、
H2NCH2SiCH3(OCH2CH3)2、
H2NCH2CH2Si(OCH3)3、
H2NCH2CH2Si(OCH2CH3)3、
H2NCH2CH2SiCH3(OCH3)2、
H2NCH2CH2SiCH3(OCH2CH3)2、
H2NCH2CH2CH2Si(OCH3)3、
H2NCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、
H2NCH2CH2CH2SiCH3(OCH3)2、
H2NCH2CH2CH2SiCH3(OCH2CH3)2、
H(CH3)NCH2CH2CH2Si(OCH3)3、
H(CH3)NCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、
H(CH3)NCH2CH2CH2SiCH3(OCH3)2、
H(CH3)NCH2CH2CH2SiCH3(OCH2CH3)2、
(CH3)2NCH2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3)2NCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、
H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)3、
H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、
H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2SiCH3(OCH3)2、
H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2SiCH3(OCH2CH3)2、
H2NCH2CH2HNCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)3、
H2NCH2CH2HNCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、
H2NCH2CH2HNCH2CH2HNCH2CH2CH2SiCH3(OCH3)2、
H2NCH2CH2HNCH2CH2HNCH2CH2CH2SiCH3(OCH2CH3)2
【0020】
これらの中では、特に
H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)3、
H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3
が好適である。
【0021】
上記式(1)の加水分解性シランは、その部分加水分解物を用いることもでき、目的とする有機ケイ素化合物に水溶性及びアルカリ性を付与させるために、その1種類を単独で又は2種類以上を適宜選定して用いることができる。
【0022】
一方、上記(A)成分の加水分解性シラン又はその部分加水分解物と混合して用いられる(B)成分の加水分解性シランは、防錆性に効果を発揮する成分で、下記一般式(2)で表されるものである。
【0023】
R1nR33-nSi−(CH2)a−SiR1nR33-n (2)
(式中、R1は上記と同様であり、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、nは0又は1、aは1〜10の整数である。)
【0024】
ここで、R1は上記R1で説明したものと同様である。具体的には、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3、−CH(CH3)2、−CH2CH2CH2CH3、−CH(CH3)CH2CH3、−CH2CH(CH3)CH3、−C(CH3)3、−C6H5、−C6H13などが例示される。
【0025】
また、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基であり、具体的には、−OCH3、−OCH2CH3、−OCH2CH2CH3、−OCH(CH3)2、−OCH2CH2CH2CH3、−OCH(CH3)CH2CH3、−OCH2CH(CH3)CH3、−OC(CH3)3、−OCOCH3、−OCOCH2CH3などが例示されるが、中でも−OCH3、−OC2H5が好ましい。
なお、nは0又は1、aは1〜10である。
【0026】
この式(2)の加水分解性シランとしては、下記のものを例示することができる。
(H3CO)3Si(CH2)2Si(OCH3)3、
(H3CO)2CH3Si(CH2)2SiCH3(OCH3)2、
(H3CH2CO)3Si(CH2)2Si(OCH2CH3)3、
(H3CH2CO)2CH3Si(CH2)2SiCH3(OCH2CH3)2、
(H3CO)3Si(CH2)3Si(OCH3)3、
(H3CO)2CH3Si(CH2)3SiCH3(OCH3)2、
(H3CH2CO)3Si(CH2)3Si(OCH2CH3)3、
(H3CH2CO)2CH3Si(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、
(H3CO)3Si(CH2)4Si(OCH3)3、
(H3CO)2CH3Si(CH2)4SiCH3(OCH3)2、
(H3CH2CO)3Si(CH2)4Si(OCH2CH3)3、
(H3CH2CO)2CH3Si(CH2)4SiCH3(OCH2CH3)2
【0027】
(H3CO)3Si(CH2)6Si(OCH3)3、
(H3CO)2CH3Si(CH2)6SiCH3(OCH3)2、
(H3CH2CO)3Si(CH2)6Si(OCH2CH3)3、
(H3CH2CO)2CH3Si(CH2)6SiCH3(OCH2CH3)2、
(H3CO)3Si(CH2)8Si(OCH3)3、
(H3CO)2CH3Si(CH2)8SiCH3(OCH3)2、
(H3CH2CO)3Si(CH2)8Si(OCH2CH3)3、
(H3CH2CO)2CH3Si(CH2)8SiCH3(OCH2CH3)2、
(H3CO)3Si(CH2)10Si(OCH3)3、
(H3CO)2CH3Si(CH2)10SiCH3(OCH3)2、
(H3CH2CO)3Si(CH2)10Si(OCH2CH3)3、
(H3CH2CO)2CH3Si(CH2)10SiCH3(OCH2CH3)2
【0028】
これらの中では、特に
(H3CO)3Si(CH2)2Si(OCH3)3、
(H3CH2CO)3Si(CH2)2Si(OCH2CH3)3
が好適である。
【0029】
上記式(2)の加水分解性シランは、その部分加水分解物を使用してもよく、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
本発明において、上記(A)成分の窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物と(B)成分の加水分解性シラン又はその部分加水分解物との混合割合は、(A)成分の窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物100質量部に対し、(B)成分の加水分解性シラン又はその部分加水分解物を5〜200質量部、好ましくは10〜150質量部である。(B)成分の配合量が200質量部を超えると、水溶液安定性が悪化し、5質量部に満たないと防食性や密着性が不十分となることがある。
【0031】
上記(A)、(B)の加水分解性シラン又はそれらの部分加水分解物を用いて加水分解し、本発明にかかわる有機ケイ素化合物を得る場合、溶媒は主として水を使用するが、必要に応じて、水と溶解するアルコール、エステル、ケトン、グリコール類等の有機溶媒を、上記加水分解性シランの加水分解に必要な十分量の水に添加する形で用いることができる。なお、この場合、有機溶媒の添加量は、水100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましい。この量が多すぎると、経済的に不利となったり、系から有機溶媒を除くのに時間がかかることがある。
【0032】
上記有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、グリセリン、ジエチレングリコール等のグリコール類などを挙げることができる。
【0033】
溶媒の総使用量(水、又は水と有機溶媒との総量)は、原料シラン((A)、(B)の加水分解性シラン又はそれらの部分加水分解物の合計量)100質量部に対して400〜5,000質量部が好ましく、更に好ましくは1,000〜3,000質量部である。溶媒の量が400質量部より少ないと、反応が進行しすぎ、系が均一にならなかったり、液の保存安定性が悪くなる場合がある。一方、5,000質量部より多いと経済的に不利な場合が生じる。
【0034】
更に、溶媒中の水の量は、水/原料シランがモル比率で5〜50、特に10〜40となる範囲が好ましい。このモル比率が5より少ないと、加水分解が完全に進行しにくく、液の安定性が悪化する場合があり、50を超えると経済的に不利な場合が生じる。
【0035】
反応方法としては、
(1)(A)及び(B)の混合シランを水中あるいは加水分解に必要である以上の量の水を含む有機溶剤中に滴下する方法、
(2)(A)及び(B)の混合シランあるいは有機溶剤含有混合シラン中に水を滴下する方法、
(3)(B)成分の加水分解性シラン又はその部分加水分解物を、水中あるいは加水分解に必要である以上の量の水を含む有機溶剤中に滴下し、その後、(A)成分の窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物を滴下する方法、
(4)(A)成分の窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物を、水中あるいは加水分解に必要である以上の量の水を含む有機溶剤中に滴下し、その後、(B)成分の加水分解性シラン又はその部分加水分解物を滴下する方法
などが挙げられるが、有機ケイ素化合物の安定性の点から、特に(1)の反応方法が好ましい。
【0036】
上記反応終了後、有機ケイ素化合物は、水溶液の形で得られるが、必要に応じて、更に水を加えたり、除去したりして、有機ケイ素化合物100質量部に対して水が10〜2,000質量部、好ましくは10〜1,000質量部の比率になるように調製し、有機ケイ素化合物水溶液とすることが好ましい。この場合、水の量が10質量部より少ないと有機ケイ素化合物自体の保存安定性が悪化する場合があり、2,000質量部より多いと、有機ケイ素化合物の有効量を得るために、この有機ケイ素化合物水溶液の添加量が多くなってしまい、コスト的に好ましくない。
このようにして得られた有機ケイ素化合物は、水溶液中での保存安定性が非常に高いものであり、水性金属表面処理剤として使用できる。
【0037】
本発明の金属表面処理剤は、上記有機ケイ素化合物と水を必須に含有するものであるが、更に他の成分が適宜配合されていてもよい。他の任意成分としては、例えば、タンニン酸又はその塩、フィチン酸又はその塩や、水性樹脂、例えばウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、エチレンアクリル共重合体、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アルキド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を用いることができる。これらの水性樹脂は単独で使用しても、2種以上を併用してもよく、また、共重合して使用してもよい。水性樹脂を用いる時には、その造膜性を向上させ、より均一で平滑な塗膜を形成するために有機溶剤を用いてもよい。また、レベリング剤、濡れ性向上剤、消泡剤を配合してもよい。なお、これら任意成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0038】
本発明の上記表面処理剤は、冷延鋼材、熱延鋼材、ステンレススチール、電気亜鉛めっき鋼材、溶融亜鉛めっき鋼材、亜鉛−アルミニウム合金系めっき鋼材、亜鉛−鉄合金系めっき鋼材、亜鉛−マグネシウム合金系めっき鋼材、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金系めっき鋼材、アルミニウム系めっき鋼材、アルミニウム−シリコン合金系めっき鋼材、錫系めっき鋼材、鉛−錫系めっき鋼材、クロム系めっき鋼材、Ni系めっき鋼材等の金属被覆鋼材の表面処理剤として使用されるが、特に金属被覆鋼材、とりわけ亜鉛系金属被覆鋼材に対して効果が著しい。
【0039】
本発明の表面処理剤の使用方法、即ち、その表面処理方法としては、上記金属表面処理剤を被塗物に塗布し、塗布後に被塗物を乾燥させる方法であっても、あるいは、あらかじめ被塗物を加熱し、その後、本発明の金属表面処理剤を塗布し、余熱を利用して乾燥させる方法であってもよい。
【0040】
上記表面処理方法において、本発明の金属表面処理剤の塗布量は、皮膜質量が0.1mg/m2以上となる量であることが好ましい。皮膜質量が0.1mg/m2未満では防錆力が不足する場合がある。一方、付着量が多すぎると塗装用前処理剤としては不経済となる場合があり、より好ましくは皮膜質量が0.5〜5,000mg/m2であり、更に好ましくは1〜2,500mg/m2となる量である。
【0041】
上記表面処理方法において、金属表面処理剤の塗布方法は、特に限定されず、一般に使用されているロールコート、シャワーコート、スプレー、浸漬、刷毛塗り等によって塗布することができる。また、処理される対象となる鋼材は、上記の金属鋼材、特に金属被覆鋼材が好適であり、各種めっき鋼材の処理に最適である。
【0042】
乾燥条件は、上記いずれの方法の場合も、室温〜250℃で2秒〜30分とすることが好ましく、より好ましくは40〜180℃で5秒〜15分で乾燥させる。250℃を越えると密着性や耐食性が不良となる場合があり、室温より低温では乾燥に時間がかかりすぎてしまう場合がある。
【0043】
本発明においては、上記金属表面処理剤で鋼材の金属表面処理を実施し、乾燥し、次いで、上層皮膜層を前記表面処理鋼材上に塗布形成することで、塗装鋼材を得ることができる。
ここで、上層皮膜層は、ノンクロメートプライマーを塗布乾燥後、更にトップコートを塗布する塗装システムや、耐指紋性や潤滑性等の機能を持った機能コーティング等を採用して形成することができる。上記塗装鋼材の製造方法は、プレコート鋼材に限らず、ポストコート鋼材にも適用することができ、本発明において塗装鋼材とはこれらを含むものである。また、本発明において、鋼材とは鋼板を含む概念である。
【0044】
本発明で使用できる上記ノンクロメートプライマーとしては、プライマーの配合組成中にクロメート系の防錆顔料を使用しないプライマー全てが使用できる。プライマーとしては、バナジン酸系防錆顔料とリン酸系防錆顔料とを用いたプライマー(V/P顔料プライマー)又はカルシウムシリケート系防錆顔料を用いたプライマーが好ましい。
上記プライマーの塗布膜厚は、乾燥膜厚で1〜20μmであることが好ましい。1μm未満であると耐食性が低下し、一方、20μmを越えると加工密着性が低下する場合がある。
上記ノンクロメートプライマーの焼き付け乾燥条件は、例えば金属表面温度で150〜250℃、時間を10秒〜5分とすることができる。
【0045】
上記トップコートとしては、特に限定されず、通常の塗装用トップコート全てを用いることができる。
【0046】
また、機能コーティングとしては、特に限定されず、現在クロメート系前処理皮膜の上に施されているコーティング等、全て使用可能である。
【0047】
上記ノンクロメートプライマー及びトップコートや、機能コーティングの塗布方法は、特に限定されず、一般に使用されるロールコート、シャワーコート、エアースプレー、エアレススプレー、浸漬等を利用することができる。
【実施例】
【0048】
以下、合成例及び実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記合成例、実施例に制限されるものではない。
【0049】
[合成例1]
水197g(10.9mol)を撹拌機、温度計及び冷却器を備えた500mlの反応器に入れ、撹拌した。ここに、H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)350.0g(0.225mol)及び(H3CO)3Si(CH2)2Si(OCH3)330.4g(0.113mol)を混合したものを室温で10分間かけて滴下したところ、25℃から50℃に内温が上昇した。更に、オイルバスにて60〜70℃に加熱し、そのまま1時間撹拌を行った。次に、エステルアダプターを取り付け、内温99℃まで上げ、副生したメタノールを除去することにより、有機ケイ素化合物−1を158g得た。このものの不揮発分(105℃/3時間)は33.1%であった。
【0050】
[合成例2]
水182g(10.1mol)を撹拌機、温度計及び冷却器を備えた500mlの反応器に入れ、撹拌した。ここに、H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)350.0g(0.225mol)及び(H3CO)3Si(CH2)2Si(OCH3)315.2g(0.056mol)を混合したものを室温で10分間かけて滴下したところ、27℃から51℃に内温が上昇した。更に、オイルバスにて60〜70℃に加熱し、そのまま1時間撹拌を行った。次に、エステルアダプターを取り付け、内温99℃まで上げ、副生したメタノールを除去することにより、有機ケイ素化合物−2を170g得た。このものの不揮発分(105℃/3時間)は26.1%であった。
【0051】
[合成例3]
水197g(10.9mol)を撹拌機、温度計及び冷却器を備えた500mlの反応器に入れ、撹拌した。ここに、H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)350.0g(0.225mol)及び(H3CH2CO)3Si(CH2)2Si(OCH2CH3)341.5g(0.113mol)を混合したものを室温で10分間かけて滴下したところ、25℃から44℃に内温が上昇した。更に、オイルバスにて60〜70℃に加熱し、そのまま1時間撹拌を行った。次に、エステルアダプターを取り付け、内温99℃まで上げ、副生したメタノール、エタノールを除去することにより、有機ケイ素化合物−3を160g得た。このものの不揮発分(105℃/3時間)は33.0%であった。
【0052】
[実施例1]
合成例1で得られた有機ケイ素化合物−1を水で希釈したもの(固形分20%)をノンクロメート水性金属表面処理剤−1とした。
市販の電気亜鉛メッキ鋼板であるEG−MO材(日本テストパネル社製、70mm×150mm×0.8mm)を市販のアルカリ脱脂剤である「サーフクリーナー53S」(日本ペイント社製)を用いて60℃で2分間スプレー処理して脱脂し、水洗、乾燥後に上記ノンクロメート水性金属表面処理剤−1をスプレーにて1g/m2になるように塗布し、試験板到達温度が150℃になるまで焼き付け乾燥した。
このノンクロメート水性金属表面処理剤−1を塗布して得られた塗装下地処理鋼板についての一次防錆及び上塗り塗装密着性を評価するとともに、ノンクロメート水性金属表面処理剤の貯蔵安定性を評価した。評価は、下記の評価方法で行った。その結果を表1に示す。
【0053】
[実施例2]
有機ケイ素化合物−1の代わりに有機ケイ素化合物−2を用いた以外は、実施例1と同様にしてノンクロメート水性金属表面処理剤−2を得、塗装下地処理鋼板を得た。得られた塗装下地処理鋼板及びノンクロメート水性金属表面処理剤の評価を実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0054】
[実施例3]
有機ケイ素化合物−1の代わりに有機ケイ素化合物−3を用いた以外は、実施例1と同様にしてノンクロメート水性金属表面処理剤−3を得、塗装下地処理鋼板を得た。得られた塗装下地処理鋼板及びノンクロメート水性金属表面処理剤の評価を実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0055】
[比較例1]
乾燥後のクロメート付着量が50mg/m2となるように、市販の電気亜鉛メッキ鋼板であるEG−MO材を「サーフジンク1000」(日本ペイント社製、反応型クロメート処理液)に60℃で10秒間浸漬し、ロール絞りをした後、70℃で20秒間乾燥させ、塗装下地処理鋼板を得た。得られた塗装下地処理鋼板についての一次防錆及び上塗り塗装密着性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0056】
[比較例2]
市販の電気亜鉛メッキ鋼板であるEG−MO材(日本テストパネル社製、70mm×150mm×0.8mm)を市販のアルカリ脱脂剤である「サーフクリーナー53S」(日本ペイント社製)を用いて60℃で2分間スプレー処理して脱脂し、水洗、乾燥後に、何も塗布せずに、塗装下地処理鋼板についての一次防錆及び上塗り塗装密着性を実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0057】
[比較例3]
γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン4.4質量%、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン4.1質量%(グリシジル基とアミノ基のモル比=0.5:1)、及びメタノール10質量%を脱イオン水に溶解した後、H2ZrF6にてpH6.0に調整した表面処理液を調製した。
市販の電気亜鉛メッキ鋼板であるEG−MO材(日本テストパネル社製、70mm×150mm×0.8mm)を市販のアルカリ脱脂剤である「サーフクリーナー53S」(日本ペイント社製)を用いて60℃で2分間スプレー処理して脱脂し、水洗、乾燥後に上記表面処理液をスプレーにて1g/m2になるように塗布し、試験板到達温度が150℃になるまで焼き付け乾燥した。得られた塗装下地処理鋼板についての一次防錆及び上塗り塗装密着性、ノンクロメート水性金属表面処理剤の貯蔵安定性を実施例1と同様に下記方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0058】
[比較例4]
攪拌装置、還流冷却器、温度計及び2個の滴下ロートを備えた2L容フラスコに脱イオン水372g及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル20gを入れ、撹拌下80〜85℃に昇温した。次いで、ブチルアクリレート376g及びアクリル酸4gからなる単量体混合物を片方の滴下ロートから、また過硫酸アンモニウム8g及び脱イオン水220gからなる重合触媒溶液を他方の滴下ロートから、同時に、共に2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に80〜85℃で2時間保持して反応を完結した。得られた水系樹脂エマルジョンは樹脂濃度38.0質量%でpH1.5の均一安定な水系樹脂エマルジョンであった。
【0059】
この水系樹脂エマルジョン157.9gにγ−アミノプロピルトリエトキシシラン3.0g及び脱イオン水600.0gを加えて攪拌し、これに脱イオン水100.0gに硝酸亜鉛1.70gを溶解した水溶液を加えた。更に、脱イオン水を加えて1Lとし、樹脂固形分60g/L、亜鉛イオン0.6g/Lの表面処理剤を調製した。
【0060】
市販の電気亜鉛メッキ鋼板であるEG−MO材(日本テストパネル社製、70mm×150mm×0.8mm)を市販のアルカリ脱脂剤である「サーフクリーナー53S」(日本ペイント社製)を用いて60℃で2分間スプレー処理して脱脂し、水洗、乾燥後に上記表面処理液をスプレーにて1g/m2になるように塗布し、試験板到達温度が150℃になるまで焼き付け乾燥した。得られた塗装下地処理鋼板についての一次防錆及び上塗り塗装密着性、ノンクロメート水性金属表面処理剤の貯蔵安定性を実施例1と同様に下記方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0061】
評価方法
上記実施例及び比較例において、一次防錆性、上塗り密着性及び貯蔵安定性の評価は以下の方法及び評価基準に基づいて行った。
〔一次防錆性〕
5%の食塩水を35℃で被塗物の表面に噴霧し、120時間後の白錆の程度を10点満点で評価する耐塩水噴霧試験を用いて行った。評価は、平面部とエリクセン(Er)7mm押し出し加工部との両方について行った。評価基準は下記のものとした。
10点:異常なし
9点:僅かに白錆発生
8〜6点:9点と5点の間
5点:面積の半分に白錆発生
4〜2点:5点と1点の間
1点:全面に白錆発生
【0062】
〔上塗り塗装密着性〕
(a)上記実施例及び比較例で作成した塗装下地処理鋼板に「スーパーラック100」(日本ペイント社製;アクリルメラミン塗料)を乾燥膜厚20μmとなるようにバーコーダー32番で塗布した後、150℃で20分間乾燥させて上塗り密着試験板を作成した。
【0063】
(b)一次密着試験:
碁盤目:
試験板の1mmの碁盤目100個のカットを入れた部分にテープを貼り、これを剥がすことによりテープ剥離性を下記の基準で10点満点で評価した。
エリクセン7mm:
試験板のエリクセンで7mmまで押し出し加工した部分にテープを貼り、テープ剥離性を同様に評価した。
碁盤目+エリクセン7mm:
試験板の1mmの碁盤目100個のカットを入れた部分をエリクセンで7mmまで押し出し加工し、加工部分にテープを貼り、テープ剥離性を同様に評価した。評価基準は下記のものとした。
【0064】
10点:剥離なし
9点:塗膜残存率が90%以上100%未満
8点:塗膜残存率が80%以上90%未満
7点:塗膜残存率が70%以上80%未満
6点:塗膜残存率が60%以上70%未満
5点:塗膜残存率が50%以上60%未満
4点:塗膜残存率が40%以上50%未満
3点:塗膜残存率が30%以上40%未満
2点:塗膜残存率が20%以上30%未満
1点:塗膜残存率が10%以上20%未満
0点:塗膜残存率が0以上10%未満
【0065】
(c)二次密着試験
上塗り密着試験板を沸騰水中に30分浸漬した後、先の一次試験と同様の試験及び評価を実施した。
【0066】
〔貯蔵安定性〕
ノンクロメート水性金属表面処理剤を40℃の恒温装置内に3ヶ月貯蔵した後のゲル化、沈殿の状態を観察し、次の基準に従って評価した。
○:ゲル化及び沈殿が認められない。
×:ゲル化又は沈殿が認められる。
【0067】
【表1】
Er;エリクセン
【0068】
表1の結果から、本発明のノンクロメート水性金属表面処理剤は、処理した金属に優れた耐食性を付与することができ、上塗り密着性に優れ、防食性と加工性に優れた表面処理鋼材及び塗装鋼材を得ることができ、しかも、貯蔵安定性に優れていることがわかった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷延鋼材、熱延鋼材、ステンレススチール、電気亜鉛めっき鋼材、溶融亜鉛めっき鋼材、亜鉛−アルミニウム合金系めっき鋼材、亜鉛−鉄合金系めっき鋼材、亜鉛−マグネシウム合金系めっき鋼材、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金系めっき鋼材、アルミニウム系めっき鋼材、アルミニウム−シリコン合金系めっき鋼材、錫系めっき鋼材、鉛−錫合金系めっき鋼材、クロム系めっき鋼材等の塗装鋼材の鋼材表面処理用として好適なノンクロメート水性金属表面処理剤、これで処理された表面処理鋼材及び塗装鋼材、並びに鋼材の金属表面処理方法及び塗装鋼材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属の表面処理剤には、クロメート処理やリン酸クロメート処理等のクロム系表面処理剤が適用されてきており、現在でも広く使用されている。しかし、近年の環境規制の動向からすると、クロム系表面処理剤は、クロムの有する毒性、特に発ガン性のために将来的に使用が制限される可能性がある。そこで、クロムを含まずにクロメート処理剤と同等の金属への密着性、耐食性を有する金属表面処理剤の開発が望まれていた。
【0003】
特許文献1(特開平8−73775号公報)には、2種類のシランカップリング剤を含む酸性表面処理剤が開示されている。しかし、この系の酸性表面処理剤は、耐食性が不足しているため、金属表面を処理した後に高い耐食性と加工性が要求されるような目的では使用し難いものであった。
【0004】
また、特許文献2(特開平10−60315号公報)には、水系エマルションと反応する特定官能基を有するシランカップリング剤を含有する鋼構造物用表面処理剤が開示されているが、この場合、要求されている耐食性は、湿潤試験のように比較的マイルドな試験に対してであり、厳しい耐食性に耐えるような防錆剤とは、耐食性という点において比較にならないほど劣るものである。
【0005】
以上のことから、薄膜で耐食性と加工密着性を発現し、特に防錆処理用コーティング剤として有用なノンクロメートの金属表面処理剤の開発が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開平8−73775号公報
【特許文献2】特開平10−60315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、金属、特に金属被覆鋼材の表面処理用として好適に使用でき、クロムを含まず、塗料などのコーティングの前処理として優れた加工性と耐食性を被塗物に付与することができるノンクロメート水性金属表面処理剤、これで処理された表面処理鋼材及び塗装鋼材、並びに鋼材の金属表面処理方法及び塗装鋼材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、(A)下記一般式(1)
YR1mSiR23-m (1)
(式中、R1は炭素数1〜8の窒素原子を含まない置換又は非置換の一価炭化水素基、R2は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、Yは窒素含有有機基であり、mは0又は1である。)
で表される窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物と、(B)下記一般式(2)
R1nR33-nSi−(CH2)a−SiR1nR33-n (2)
(式中、R1は上記と同じ、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、nは0又は1、aは1〜10の整数である。)
で表される加水分解性シラン又はその部分加水分解物との混合物を、水中あるいは加水分解に必要な十分量の水を含む有機溶剤中で加水分解するという、非常にシンプルな方法により得られる有機ケイ素化合物と、水とを配合したノンクロメートの水性処理剤が、金属表面に非常に優れた防食性と加工性を被塗物に付与し得、鋼材の金属表面処理剤として好適であり、鋼材及び金属被覆鋼材、特に亜鉛系金属被覆鋼材の表面処理に最適であることを見出した。
【0009】
また、本発明の金属表面処理剤で鋼材を表面処理した後、更に上層皮膜層を塗布形成することで、耐食性及び加工性に優れた塗装鋼材を製造することができる。
【0010】
従って、本発明は、
[I](A)上記式(1)の窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物100質量部と、(B)上記式(2)の加水分解性シラン又はその部分加水分解物5〜200質量部とを加水分解することにより得られる有機ケイ素化合物、及び
[II]水
を含有してなることを特徴とするノンクロメート水性金属表面処理剤、
及び、この表面処理剤で表面処理されてなる表面処理鋼材、更に、上層被膜層が塗布形成されてなる塗装鋼材、鋼材の金属表面処理方法及び塗装鋼材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のノンクロメート水性金属表面処理剤は、防錆処理剤等として鋼材の金属表面処理に用いることにより、従来のクロメート含有防錆処理剤より優れた防食性と加工性を被塗物に付与することができ、高い耐食性と加工性を有する表面処理鋼材を得ることができ、更に、上層被膜層を塗布形成することで高品質の塗装鋼材を得ることができる。また、このノンクロメート水性金属表面処理剤は、貯蔵安定性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明のノンクロメート水性金属表面処理剤に配合される有機ケイ素化合物を得るために用いる(A)成分の窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シランは、系を水溶性にするため及び系をアルカリ性にするために用いられる成分であり、下記一般式(1)で表されるものである。
【0013】
YR1mSiR23-m (1)
(式中、R1は炭素数1〜8の窒素原子を含まない置換又は非置換の一価炭化水素基、R2は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、Yは窒素含有有機基であり、mは0又は1である。)
【0014】
ここで、R1は炭素数1〜8の窒素原子を含まない置換又は非置換の一価炭化水素基であり、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などや、これらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子などで置換した基、例えばハロゲン化アルキル基などが挙げられる。具体的には、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3、−CH(CH3)2、−CH2CH2CH2CH3、−CH(CH3)CH2CH3、−CH2CH(CH3)CH3、−C(CH3)3、−C6H5、−C6H13などが例示される。
【0015】
また、R2は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基であり、具体的には、−OCH3、−OCH2CH3、−OCH2CH2CH3、−OCH(CH3)2、−OCH2CH2CH2CH3、−OCH(CH3)CH2CH3、−OCH2CH(CH3)CH3、−OC(CH3)3、−OCOCH3、−OCOCH2CH3などが例示されるが、中でも−OCH3、−OC2H5が好ましい。
【0016】
Yは窒素含有有機基であり、例えば下記一般式(3)で示される基が挙げられる。
【化1】
(式中、R4、R5は水素原子又は炭素数1〜8の一価炭化水素基であり、R4とR5は互いに同一であっても異なっていてもよい。R6、R7はそれぞれ炭素数1〜8の二価炭化水素基であり、R6とR7は互いに同一であっても異なっていてもよい。pは0又は1〜3の整数である。)
【0017】
なお、R4、R5の炭素数1〜8の一価炭化水素基としては、R1で説明したものと同様の基を挙げることができる。R6、R7の炭素数1〜8の二価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等のアルキレン基などが挙げられる。
【0018】
Yの窒素含有有機基として具体的には、下記の基を挙げることができる。
H2NCH2−、H(CH3)NCH2−、H2NCH2CH2−、H(CH3)NCH2CH2−、H2NCH2CH2CH2−、H(CH3)NCH2CH2CH2−、(CH3)2NCH2CH2CH2−、H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2−、H(CH3)NCH2CH2HNCH2CH2CH2−、(CH3)2NCH2CH2HNCH2CH2CH2−、H2NCH2CH2HNCH2CH2HNCH2CH2CH2−、H(CH3)NCH2CH2HNCH2CH2HNCH2CH2CH2−
これらの中では、特に下記の基が好ましい。
H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2−
【0019】
上記式(1)の窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シランとしては、下記のものを例示することができる。
H2NCH2Si(OCH3)3、
H2NCH2Si(OCH2CH3)3、
H2NCH2SiCH3(OCH3)2、
H2NCH2SiCH3(OCH2CH3)2、
H2NCH2CH2Si(OCH3)3、
H2NCH2CH2Si(OCH2CH3)3、
H2NCH2CH2SiCH3(OCH3)2、
H2NCH2CH2SiCH3(OCH2CH3)2、
H2NCH2CH2CH2Si(OCH3)3、
H2NCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、
H2NCH2CH2CH2SiCH3(OCH3)2、
H2NCH2CH2CH2SiCH3(OCH2CH3)2、
H(CH3)NCH2CH2CH2Si(OCH3)3、
H(CH3)NCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、
H(CH3)NCH2CH2CH2SiCH3(OCH3)2、
H(CH3)NCH2CH2CH2SiCH3(OCH2CH3)2、
(CH3)2NCH2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3)2NCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、
H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)3、
H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、
H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2SiCH3(OCH3)2、
H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2SiCH3(OCH2CH3)2、
H2NCH2CH2HNCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)3、
H2NCH2CH2HNCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、
H2NCH2CH2HNCH2CH2HNCH2CH2CH2SiCH3(OCH3)2、
H2NCH2CH2HNCH2CH2HNCH2CH2CH2SiCH3(OCH2CH3)2
【0020】
これらの中では、特に
H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)3、
H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3
が好適である。
【0021】
上記式(1)の加水分解性シランは、その部分加水分解物を用いることもでき、目的とする有機ケイ素化合物に水溶性及びアルカリ性を付与させるために、その1種類を単独で又は2種類以上を適宜選定して用いることができる。
【0022】
一方、上記(A)成分の加水分解性シラン又はその部分加水分解物と混合して用いられる(B)成分の加水分解性シランは、防錆性に効果を発揮する成分で、下記一般式(2)で表されるものである。
【0023】
R1nR33-nSi−(CH2)a−SiR1nR33-n (2)
(式中、R1は上記と同様であり、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、nは0又は1、aは1〜10の整数である。)
【0024】
ここで、R1は上記R1で説明したものと同様である。具体的には、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3、−CH(CH3)2、−CH2CH2CH2CH3、−CH(CH3)CH2CH3、−CH2CH(CH3)CH3、−C(CH3)3、−C6H5、−C6H13などが例示される。
【0025】
また、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基であり、具体的には、−OCH3、−OCH2CH3、−OCH2CH2CH3、−OCH(CH3)2、−OCH2CH2CH2CH3、−OCH(CH3)CH2CH3、−OCH2CH(CH3)CH3、−OC(CH3)3、−OCOCH3、−OCOCH2CH3などが例示されるが、中でも−OCH3、−OC2H5が好ましい。
なお、nは0又は1、aは1〜10である。
【0026】
この式(2)の加水分解性シランとしては、下記のものを例示することができる。
(H3CO)3Si(CH2)2Si(OCH3)3、
(H3CO)2CH3Si(CH2)2SiCH3(OCH3)2、
(H3CH2CO)3Si(CH2)2Si(OCH2CH3)3、
(H3CH2CO)2CH3Si(CH2)2SiCH3(OCH2CH3)2、
(H3CO)3Si(CH2)3Si(OCH3)3、
(H3CO)2CH3Si(CH2)3SiCH3(OCH3)2、
(H3CH2CO)3Si(CH2)3Si(OCH2CH3)3、
(H3CH2CO)2CH3Si(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、
(H3CO)3Si(CH2)4Si(OCH3)3、
(H3CO)2CH3Si(CH2)4SiCH3(OCH3)2、
(H3CH2CO)3Si(CH2)4Si(OCH2CH3)3、
(H3CH2CO)2CH3Si(CH2)4SiCH3(OCH2CH3)2
【0027】
(H3CO)3Si(CH2)6Si(OCH3)3、
(H3CO)2CH3Si(CH2)6SiCH3(OCH3)2、
(H3CH2CO)3Si(CH2)6Si(OCH2CH3)3、
(H3CH2CO)2CH3Si(CH2)6SiCH3(OCH2CH3)2、
(H3CO)3Si(CH2)8Si(OCH3)3、
(H3CO)2CH3Si(CH2)8SiCH3(OCH3)2、
(H3CH2CO)3Si(CH2)8Si(OCH2CH3)3、
(H3CH2CO)2CH3Si(CH2)8SiCH3(OCH2CH3)2、
(H3CO)3Si(CH2)10Si(OCH3)3、
(H3CO)2CH3Si(CH2)10SiCH3(OCH3)2、
(H3CH2CO)3Si(CH2)10Si(OCH2CH3)3、
(H3CH2CO)2CH3Si(CH2)10SiCH3(OCH2CH3)2
【0028】
これらの中では、特に
(H3CO)3Si(CH2)2Si(OCH3)3、
(H3CH2CO)3Si(CH2)2Si(OCH2CH3)3
が好適である。
【0029】
上記式(2)の加水分解性シランは、その部分加水分解物を使用してもよく、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
本発明において、上記(A)成分の窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物と(B)成分の加水分解性シラン又はその部分加水分解物との混合割合は、(A)成分の窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物100質量部に対し、(B)成分の加水分解性シラン又はその部分加水分解物を5〜200質量部、好ましくは10〜150質量部である。(B)成分の配合量が200質量部を超えると、水溶液安定性が悪化し、5質量部に満たないと防食性や密着性が不十分となることがある。
【0031】
上記(A)、(B)の加水分解性シラン又はそれらの部分加水分解物を用いて加水分解し、本発明にかかわる有機ケイ素化合物を得る場合、溶媒は主として水を使用するが、必要に応じて、水と溶解するアルコール、エステル、ケトン、グリコール類等の有機溶媒を、上記加水分解性シランの加水分解に必要な十分量の水に添加する形で用いることができる。なお、この場合、有機溶媒の添加量は、水100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましい。この量が多すぎると、経済的に不利となったり、系から有機溶媒を除くのに時間がかかることがある。
【0032】
上記有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、グリセリン、ジエチレングリコール等のグリコール類などを挙げることができる。
【0033】
溶媒の総使用量(水、又は水と有機溶媒との総量)は、原料シラン((A)、(B)の加水分解性シラン又はそれらの部分加水分解物の合計量)100質量部に対して400〜5,000質量部が好ましく、更に好ましくは1,000〜3,000質量部である。溶媒の量が400質量部より少ないと、反応が進行しすぎ、系が均一にならなかったり、液の保存安定性が悪くなる場合がある。一方、5,000質量部より多いと経済的に不利な場合が生じる。
【0034】
更に、溶媒中の水の量は、水/原料シランがモル比率で5〜50、特に10〜40となる範囲が好ましい。このモル比率が5より少ないと、加水分解が完全に進行しにくく、液の安定性が悪化する場合があり、50を超えると経済的に不利な場合が生じる。
【0035】
反応方法としては、
(1)(A)及び(B)の混合シランを水中あるいは加水分解に必要である以上の量の水を含む有機溶剤中に滴下する方法、
(2)(A)及び(B)の混合シランあるいは有機溶剤含有混合シラン中に水を滴下する方法、
(3)(B)成分の加水分解性シラン又はその部分加水分解物を、水中あるいは加水分解に必要である以上の量の水を含む有機溶剤中に滴下し、その後、(A)成分の窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物を滴下する方法、
(4)(A)成分の窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物を、水中あるいは加水分解に必要である以上の量の水を含む有機溶剤中に滴下し、その後、(B)成分の加水分解性シラン又はその部分加水分解物を滴下する方法
などが挙げられるが、有機ケイ素化合物の安定性の点から、特に(1)の反応方法が好ましい。
【0036】
上記反応終了後、有機ケイ素化合物は、水溶液の形で得られるが、必要に応じて、更に水を加えたり、除去したりして、有機ケイ素化合物100質量部に対して水が10〜2,000質量部、好ましくは10〜1,000質量部の比率になるように調製し、有機ケイ素化合物水溶液とすることが好ましい。この場合、水の量が10質量部より少ないと有機ケイ素化合物自体の保存安定性が悪化する場合があり、2,000質量部より多いと、有機ケイ素化合物の有効量を得るために、この有機ケイ素化合物水溶液の添加量が多くなってしまい、コスト的に好ましくない。
このようにして得られた有機ケイ素化合物は、水溶液中での保存安定性が非常に高いものであり、水性金属表面処理剤として使用できる。
【0037】
本発明の金属表面処理剤は、上記有機ケイ素化合物と水を必須に含有するものであるが、更に他の成分が適宜配合されていてもよい。他の任意成分としては、例えば、タンニン酸又はその塩、フィチン酸又はその塩や、水性樹脂、例えばウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、エチレンアクリル共重合体、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アルキド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を用いることができる。これらの水性樹脂は単独で使用しても、2種以上を併用してもよく、また、共重合して使用してもよい。水性樹脂を用いる時には、その造膜性を向上させ、より均一で平滑な塗膜を形成するために有機溶剤を用いてもよい。また、レベリング剤、濡れ性向上剤、消泡剤を配合してもよい。なお、これら任意成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0038】
本発明の上記表面処理剤は、冷延鋼材、熱延鋼材、ステンレススチール、電気亜鉛めっき鋼材、溶融亜鉛めっき鋼材、亜鉛−アルミニウム合金系めっき鋼材、亜鉛−鉄合金系めっき鋼材、亜鉛−マグネシウム合金系めっき鋼材、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金系めっき鋼材、アルミニウム系めっき鋼材、アルミニウム−シリコン合金系めっき鋼材、錫系めっき鋼材、鉛−錫系めっき鋼材、クロム系めっき鋼材、Ni系めっき鋼材等の金属被覆鋼材の表面処理剤として使用されるが、特に金属被覆鋼材、とりわけ亜鉛系金属被覆鋼材に対して効果が著しい。
【0039】
本発明の表面処理剤の使用方法、即ち、その表面処理方法としては、上記金属表面処理剤を被塗物に塗布し、塗布後に被塗物を乾燥させる方法であっても、あるいは、あらかじめ被塗物を加熱し、その後、本発明の金属表面処理剤を塗布し、余熱を利用して乾燥させる方法であってもよい。
【0040】
上記表面処理方法において、本発明の金属表面処理剤の塗布量は、皮膜質量が0.1mg/m2以上となる量であることが好ましい。皮膜質量が0.1mg/m2未満では防錆力が不足する場合がある。一方、付着量が多すぎると塗装用前処理剤としては不経済となる場合があり、より好ましくは皮膜質量が0.5〜5,000mg/m2であり、更に好ましくは1〜2,500mg/m2となる量である。
【0041】
上記表面処理方法において、金属表面処理剤の塗布方法は、特に限定されず、一般に使用されているロールコート、シャワーコート、スプレー、浸漬、刷毛塗り等によって塗布することができる。また、処理される対象となる鋼材は、上記の金属鋼材、特に金属被覆鋼材が好適であり、各種めっき鋼材の処理に最適である。
【0042】
乾燥条件は、上記いずれの方法の場合も、室温〜250℃で2秒〜30分とすることが好ましく、より好ましくは40〜180℃で5秒〜15分で乾燥させる。250℃を越えると密着性や耐食性が不良となる場合があり、室温より低温では乾燥に時間がかかりすぎてしまう場合がある。
【0043】
本発明においては、上記金属表面処理剤で鋼材の金属表面処理を実施し、乾燥し、次いで、上層皮膜層を前記表面処理鋼材上に塗布形成することで、塗装鋼材を得ることができる。
ここで、上層皮膜層は、ノンクロメートプライマーを塗布乾燥後、更にトップコートを塗布する塗装システムや、耐指紋性や潤滑性等の機能を持った機能コーティング等を採用して形成することができる。上記塗装鋼材の製造方法は、プレコート鋼材に限らず、ポストコート鋼材にも適用することができ、本発明において塗装鋼材とはこれらを含むものである。また、本発明において、鋼材とは鋼板を含む概念である。
【0044】
本発明で使用できる上記ノンクロメートプライマーとしては、プライマーの配合組成中にクロメート系の防錆顔料を使用しないプライマー全てが使用できる。プライマーとしては、バナジン酸系防錆顔料とリン酸系防錆顔料とを用いたプライマー(V/P顔料プライマー)又はカルシウムシリケート系防錆顔料を用いたプライマーが好ましい。
上記プライマーの塗布膜厚は、乾燥膜厚で1〜20μmであることが好ましい。1μm未満であると耐食性が低下し、一方、20μmを越えると加工密着性が低下する場合がある。
上記ノンクロメートプライマーの焼き付け乾燥条件は、例えば金属表面温度で150〜250℃、時間を10秒〜5分とすることができる。
【0045】
上記トップコートとしては、特に限定されず、通常の塗装用トップコート全てを用いることができる。
【0046】
また、機能コーティングとしては、特に限定されず、現在クロメート系前処理皮膜の上に施されているコーティング等、全て使用可能である。
【0047】
上記ノンクロメートプライマー及びトップコートや、機能コーティングの塗布方法は、特に限定されず、一般に使用されるロールコート、シャワーコート、エアースプレー、エアレススプレー、浸漬等を利用することができる。
【実施例】
【0048】
以下、合成例及び実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記合成例、実施例に制限されるものではない。
【0049】
[合成例1]
水197g(10.9mol)を撹拌機、温度計及び冷却器を備えた500mlの反応器に入れ、撹拌した。ここに、H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)350.0g(0.225mol)及び(H3CO)3Si(CH2)2Si(OCH3)330.4g(0.113mol)を混合したものを室温で10分間かけて滴下したところ、25℃から50℃に内温が上昇した。更に、オイルバスにて60〜70℃に加熱し、そのまま1時間撹拌を行った。次に、エステルアダプターを取り付け、内温99℃まで上げ、副生したメタノールを除去することにより、有機ケイ素化合物−1を158g得た。このものの不揮発分(105℃/3時間)は33.1%であった。
【0050】
[合成例2]
水182g(10.1mol)を撹拌機、温度計及び冷却器を備えた500mlの反応器に入れ、撹拌した。ここに、H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)350.0g(0.225mol)及び(H3CO)3Si(CH2)2Si(OCH3)315.2g(0.056mol)を混合したものを室温で10分間かけて滴下したところ、27℃から51℃に内温が上昇した。更に、オイルバスにて60〜70℃に加熱し、そのまま1時間撹拌を行った。次に、エステルアダプターを取り付け、内温99℃まで上げ、副生したメタノールを除去することにより、有機ケイ素化合物−2を170g得た。このものの不揮発分(105℃/3時間)は26.1%であった。
【0051】
[合成例3]
水197g(10.9mol)を撹拌機、温度計及び冷却器を備えた500mlの反応器に入れ、撹拌した。ここに、H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)350.0g(0.225mol)及び(H3CH2CO)3Si(CH2)2Si(OCH2CH3)341.5g(0.113mol)を混合したものを室温で10分間かけて滴下したところ、25℃から44℃に内温が上昇した。更に、オイルバスにて60〜70℃に加熱し、そのまま1時間撹拌を行った。次に、エステルアダプターを取り付け、内温99℃まで上げ、副生したメタノール、エタノールを除去することにより、有機ケイ素化合物−3を160g得た。このものの不揮発分(105℃/3時間)は33.0%であった。
【0052】
[実施例1]
合成例1で得られた有機ケイ素化合物−1を水で希釈したもの(固形分20%)をノンクロメート水性金属表面処理剤−1とした。
市販の電気亜鉛メッキ鋼板であるEG−MO材(日本テストパネル社製、70mm×150mm×0.8mm)を市販のアルカリ脱脂剤である「サーフクリーナー53S」(日本ペイント社製)を用いて60℃で2分間スプレー処理して脱脂し、水洗、乾燥後に上記ノンクロメート水性金属表面処理剤−1をスプレーにて1g/m2になるように塗布し、試験板到達温度が150℃になるまで焼き付け乾燥した。
このノンクロメート水性金属表面処理剤−1を塗布して得られた塗装下地処理鋼板についての一次防錆及び上塗り塗装密着性を評価するとともに、ノンクロメート水性金属表面処理剤の貯蔵安定性を評価した。評価は、下記の評価方法で行った。その結果を表1に示す。
【0053】
[実施例2]
有機ケイ素化合物−1の代わりに有機ケイ素化合物−2を用いた以外は、実施例1と同様にしてノンクロメート水性金属表面処理剤−2を得、塗装下地処理鋼板を得た。得られた塗装下地処理鋼板及びノンクロメート水性金属表面処理剤の評価を実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0054】
[実施例3]
有機ケイ素化合物−1の代わりに有機ケイ素化合物−3を用いた以外は、実施例1と同様にしてノンクロメート水性金属表面処理剤−3を得、塗装下地処理鋼板を得た。得られた塗装下地処理鋼板及びノンクロメート水性金属表面処理剤の評価を実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0055】
[比較例1]
乾燥後のクロメート付着量が50mg/m2となるように、市販の電気亜鉛メッキ鋼板であるEG−MO材を「サーフジンク1000」(日本ペイント社製、反応型クロメート処理液)に60℃で10秒間浸漬し、ロール絞りをした後、70℃で20秒間乾燥させ、塗装下地処理鋼板を得た。得られた塗装下地処理鋼板についての一次防錆及び上塗り塗装密着性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0056】
[比較例2]
市販の電気亜鉛メッキ鋼板であるEG−MO材(日本テストパネル社製、70mm×150mm×0.8mm)を市販のアルカリ脱脂剤である「サーフクリーナー53S」(日本ペイント社製)を用いて60℃で2分間スプレー処理して脱脂し、水洗、乾燥後に、何も塗布せずに、塗装下地処理鋼板についての一次防錆及び上塗り塗装密着性を実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0057】
[比較例3]
γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン4.4質量%、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン4.1質量%(グリシジル基とアミノ基のモル比=0.5:1)、及びメタノール10質量%を脱イオン水に溶解した後、H2ZrF6にてpH6.0に調整した表面処理液を調製した。
市販の電気亜鉛メッキ鋼板であるEG−MO材(日本テストパネル社製、70mm×150mm×0.8mm)を市販のアルカリ脱脂剤である「サーフクリーナー53S」(日本ペイント社製)を用いて60℃で2分間スプレー処理して脱脂し、水洗、乾燥後に上記表面処理液をスプレーにて1g/m2になるように塗布し、試験板到達温度が150℃になるまで焼き付け乾燥した。得られた塗装下地処理鋼板についての一次防錆及び上塗り塗装密着性、ノンクロメート水性金属表面処理剤の貯蔵安定性を実施例1と同様に下記方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0058】
[比較例4]
攪拌装置、還流冷却器、温度計及び2個の滴下ロートを備えた2L容フラスコに脱イオン水372g及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル20gを入れ、撹拌下80〜85℃に昇温した。次いで、ブチルアクリレート376g及びアクリル酸4gからなる単量体混合物を片方の滴下ロートから、また過硫酸アンモニウム8g及び脱イオン水220gからなる重合触媒溶液を他方の滴下ロートから、同時に、共に2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に80〜85℃で2時間保持して反応を完結した。得られた水系樹脂エマルジョンは樹脂濃度38.0質量%でpH1.5の均一安定な水系樹脂エマルジョンであった。
【0059】
この水系樹脂エマルジョン157.9gにγ−アミノプロピルトリエトキシシラン3.0g及び脱イオン水600.0gを加えて攪拌し、これに脱イオン水100.0gに硝酸亜鉛1.70gを溶解した水溶液を加えた。更に、脱イオン水を加えて1Lとし、樹脂固形分60g/L、亜鉛イオン0.6g/Lの表面処理剤を調製した。
【0060】
市販の電気亜鉛メッキ鋼板であるEG−MO材(日本テストパネル社製、70mm×150mm×0.8mm)を市販のアルカリ脱脂剤である「サーフクリーナー53S」(日本ペイント社製)を用いて60℃で2分間スプレー処理して脱脂し、水洗、乾燥後に上記表面処理液をスプレーにて1g/m2になるように塗布し、試験板到達温度が150℃になるまで焼き付け乾燥した。得られた塗装下地処理鋼板についての一次防錆及び上塗り塗装密着性、ノンクロメート水性金属表面処理剤の貯蔵安定性を実施例1と同様に下記方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0061】
評価方法
上記実施例及び比較例において、一次防錆性、上塗り密着性及び貯蔵安定性の評価は以下の方法及び評価基準に基づいて行った。
〔一次防錆性〕
5%の食塩水を35℃で被塗物の表面に噴霧し、120時間後の白錆の程度を10点満点で評価する耐塩水噴霧試験を用いて行った。評価は、平面部とエリクセン(Er)7mm押し出し加工部との両方について行った。評価基準は下記のものとした。
10点:異常なし
9点:僅かに白錆発生
8〜6点:9点と5点の間
5点:面積の半分に白錆発生
4〜2点:5点と1点の間
1点:全面に白錆発生
【0062】
〔上塗り塗装密着性〕
(a)上記実施例及び比較例で作成した塗装下地処理鋼板に「スーパーラック100」(日本ペイント社製;アクリルメラミン塗料)を乾燥膜厚20μmとなるようにバーコーダー32番で塗布した後、150℃で20分間乾燥させて上塗り密着試験板を作成した。
【0063】
(b)一次密着試験:
碁盤目:
試験板の1mmの碁盤目100個のカットを入れた部分にテープを貼り、これを剥がすことによりテープ剥離性を下記の基準で10点満点で評価した。
エリクセン7mm:
試験板のエリクセンで7mmまで押し出し加工した部分にテープを貼り、テープ剥離性を同様に評価した。
碁盤目+エリクセン7mm:
試験板の1mmの碁盤目100個のカットを入れた部分をエリクセンで7mmまで押し出し加工し、加工部分にテープを貼り、テープ剥離性を同様に評価した。評価基準は下記のものとした。
【0064】
10点:剥離なし
9点:塗膜残存率が90%以上100%未満
8点:塗膜残存率が80%以上90%未満
7点:塗膜残存率が70%以上80%未満
6点:塗膜残存率が60%以上70%未満
5点:塗膜残存率が50%以上60%未満
4点:塗膜残存率が40%以上50%未満
3点:塗膜残存率が30%以上40%未満
2点:塗膜残存率が20%以上30%未満
1点:塗膜残存率が10%以上20%未満
0点:塗膜残存率が0以上10%未満
【0065】
(c)二次密着試験
上塗り密着試験板を沸騰水中に30分浸漬した後、先の一次試験と同様の試験及び評価を実施した。
【0066】
〔貯蔵安定性〕
ノンクロメート水性金属表面処理剤を40℃の恒温装置内に3ヶ月貯蔵した後のゲル化、沈殿の状態を観察し、次の基準に従って評価した。
○:ゲル化及び沈殿が認められない。
×:ゲル化又は沈殿が認められる。
【0067】
【表1】
Er;エリクセン
【0068】
表1の結果から、本発明のノンクロメート水性金属表面処理剤は、処理した金属に優れた耐食性を付与することができ、上塗り密着性に優れ、防食性と加工性に優れた表面処理鋼材及び塗装鋼材を得ることができ、しかも、貯蔵安定性に優れていることがわかった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
[I](A)下記一般式(1)
YR1mSiR23-m (1)
(式中、R1は炭素数1〜8の窒素原子を含まない置換又は非置換の一価炭化水素基、R2は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、Yは窒素含有有機基であり、mは0又は1である。)
で表される窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物100質量部と、
(B)下記一般式(2)
R1nR33-nSi−(CH2)a−SiR1nR33-n (2)
(式中、R1は上記と同じ、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、nは0又は1、aは1〜10の整数である。)
で表される加水分解性シラン又はその部分加水分解物5〜200質量部と
を加水分解することにより得られる有機ケイ素化合物、及び
[II]水
を含有してなることを特徴とするノンクロメート水性金属表面処理剤。
【請求項2】
式(1)の加水分解性シランが、H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)3又はH2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3であることを特徴とする請求項1記載のノンクロメート水性金属表面処理剤。
【請求項3】
式(2)の加水分解性シランが、(H3CO)3Si(CH2)2Si(OCH3)3又は(H3CH2CO)3Si(CH2)2Si(OCH2CH3)3であることを特徴とする請求項1又は2記載のノンクロメート水性金属表面処理剤。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載のノンクロメート水性金属表面処理剤で表面処理されてなることを特徴とする表面処理鋼材。
【請求項5】
請求項4記載の表面処理鋼材表面に、更に上層被膜層が塗布形成されてなることを特徴とする塗装鋼材。
【請求項6】
請求項1、2又は3記載のノンクロメート水性金属表面処理剤で鋼材を表面処理することを特徴とする鋼材の金属表面処理方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法で鋼材表面を処理した後、更に、上層被膜層を塗布形成することを特徴とする塗装鋼材の製造方法。
【請求項1】
[I](A)下記一般式(1)
YR1mSiR23-m (1)
(式中、R1は炭素数1〜8の窒素原子を含まない置換又は非置換の一価炭化水素基、R2は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、Yは窒素含有有機基であり、mは0又は1である。)
で表される窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物100質量部と、
(B)下記一般式(2)
R1nR33-nSi−(CH2)a−SiR1nR33-n (2)
(式中、R1は上記と同じ、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、nは0又は1、aは1〜10の整数である。)
で表される加水分解性シラン又はその部分加水分解物5〜200質量部と
を加水分解することにより得られる有機ケイ素化合物、及び
[II]水
を含有してなることを特徴とするノンクロメート水性金属表面処理剤。
【請求項2】
式(1)の加水分解性シランが、H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)3又はH2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3であることを特徴とする請求項1記載のノンクロメート水性金属表面処理剤。
【請求項3】
式(2)の加水分解性シランが、(H3CO)3Si(CH2)2Si(OCH3)3又は(H3CH2CO)3Si(CH2)2Si(OCH2CH3)3であることを特徴とする請求項1又は2記載のノンクロメート水性金属表面処理剤。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載のノンクロメート水性金属表面処理剤で表面処理されてなることを特徴とする表面処理鋼材。
【請求項5】
請求項4記載の表面処理鋼材表面に、更に上層被膜層が塗布形成されてなることを特徴とする塗装鋼材。
【請求項6】
請求項1、2又は3記載のノンクロメート水性金属表面処理剤で鋼材を表面処理することを特徴とする鋼材の金属表面処理方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法で鋼材表面を処理した後、更に、上層被膜層を塗布形成することを特徴とする塗装鋼材の製造方法。
【公開番号】特開2007−277584(P2007−277584A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76450(P2006−76450)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
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