説明

ノンハロゲン同軸ケーブル及びこれを用いた多芯ケーブル

【課題】電気特性及び機械的特性が良好で、かつ、ふっ素樹脂を含有しないノンハロゲン同軸ケーブル及びこれを用いた多芯ケーブルを提供するものである。
【解決手段】本発明に係るノンハロゲン同軸ケーブルは、すずめっき軟銅線(又はすずめっき銅合金線)を撚り合わせた内部導体1の外周に、絶縁体2としてPPE樹脂(又はPPO)を主成分とするポリマーを被覆し、その絶縁体2の外周に、すずめっき硬銅線(又はすずめっき銅合金線)を横巻きしたシールド層3を設け、そのシールド層3の外周にジャケット層4を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動による信号伝送に使用される極細同軸ケーブルに係り、特にノンハロゲン同軸ケーブル及びこれを用いた多芯ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイの信号伝送に使用されるケーブルには、EMIやSKEWといった電気特性が要求されるため、極細同軸ケーブルが使用されている(特許文献1参照)。また、信号伝送の高速化に伴い、極細同軸ケーブルよりもEMI特性やSKEWに優れる2心平行同軸ケーブルを使用する機器も増えている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−352640号公報
【特許文献2】特開2003−22718号公報
【特許文献3】特開平5−28838号公報
【特許文献4】特開平5−28839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の極細同軸ケーブルや2心平行同軸ケーブルは、絶縁体にふっ素樹脂が使用されている。従来、特性インピーダンス、静電容量、減衰量などの電気特性、及び肉厚0.1mm以下の薄肉押出を満足させるためには、絶縁体としてふっ素樹脂の使用が不可欠であった。
【0005】
しかしながら、ふっ素が、塩素や臭素などと同様に、環境負荷物質として規制されるおそれがあるため、絶縁体にふっ素樹脂を含有しない極細同軸ケーブルが求められている。
【0006】
そこで本発明の目的は、電気特性及び機械的特性が良好で、かつ、ふっ素樹脂を含有しないノンハロゲン同軸ケーブル及びこれを用いた多芯ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、すずめっき軟銅線又はすずめっき銅合金線を撚り合わせた内部導体の外周に、絶縁体としてPPE樹脂又はPPOを主成分とするポリマーを被覆し、その絶縁体の外周に、すずめっき硬銅線又はすずめっき銅合金線を横巻きしたシールド層を設け、そのシールド層の外周にジャケット層を設けたことを特徴とするノンハロゲン同軸ケーブルである。
【0008】
請求項2の発明は、すずめっき軟銅線又はすずめっき銅合金線を撚り合わせた内部導体の外周に、絶縁体としてPPE樹脂又はPPOを主成分とするポリマーを被覆し、その絶縁体の外周に、すずめっき硬銅線又はすずめっき銅合金線を編組したシールド層を設け、そのシールド層の外周にジャケット層を設けたことを特徴とするノンハロゲン同軸ケーブルである。
【0009】
請求項3の発明は、すずめっき軟銅線又はすずめっき銅合金線を撚り合わせた内部導体の外周に絶縁体としてPPE樹脂又はPPOを主成分とするポリマーを被覆してなるコアを2心、平行に並設し、その2心コアの外周に、すずめっき硬銅線又はすずめっき銅合金線を2重横巻きしたシールド層を設け、そのシールド層の外周にジャケット層を設けたことを特徴とするノンハロゲン同軸ケーブルである。
【0010】
請求項4の発明は、すずめっき軟銅線又はすずめっき銅合金線を撚り合わせた内部導体の外周に絶縁体としてPPE樹脂又はPPOを主成分とするポリマーを被覆してなるコアを2心、平行に並設し、その2心コアの外周に、すずめっき硬銅線又はすずめっき銅合金線を編組したシールド層を設け、そのシールド層の外周にジャケット層を設けたことを特徴とするノンハロゲン同軸ケーブルである。
【0011】
請求項5の発明は、前記ジャケット層をポリエステル樹脂で構成した請求項1〜4いずれか記載のノンハロゲン同軸ケーブルである。
【0012】
請求項6の発明は、前記ジャケット層をPPE樹脂又はPPOを主成分とするポリマーで構成した請求項1〜4いずれか記載のノンハロゲン同軸ケーブルである。
【0013】
請求項7の発明は、直径0.018〜0.082mmのすずめっき軟銅線又はすずめっき銅合金線を複数本撚り合わせた内部導体と、PPE樹脂又はPPOを主成分とするポリマーからなり、誘電率が2.4〜3.3で、内部導体の外周に被覆された絶縁体と、すずめっき硬銅線又はすずめっき銅合金線を横巻きしてなり、絶縁体の外周に被覆されたシールド層と、シールド層の外周に被覆されたジャケット層とで構成される同軸ケーブルを、複数本並べてリボン状に設けた多芯ケーブルであって、
前記同軸ケーブルの、静電容量が100〜140pF/m、特性インピーダンスが50±5Ω、及び周波数10MHz時の減衰量が0.15〜1.00dB/mであることを特徴とする多芯ケーブルである。
【0014】
請求項8の発明は、直径0.028〜0.032mmのすずめっき軟銅線又はすずめっき銅合金線を7本撚り合わせた内部導体と、PPE樹脂又はPPOを主成分とするポリマーからなり、誘電率が2.4〜3.3かつ厚さが0.08〜0.14mmで、内部導体の外周に被覆された絶縁体と、すずめっき硬銅線又はすずめっき銅合金線を横巻きしてなり、絶縁体の外周に被覆された厚さが0.025〜0.035mmのシールド層と、シールド層の外周に被覆された外径が0.35〜0.50mmのジャケット層とで構成される第1の同軸ケーブルと、
直径0.048〜0.052mmのすずめっき軟銅線又はすずめっき銅合金線を7本撚り合わせた内部導体と、PPE樹脂又はPPOを主成分とするポリマーからなり、誘電率が2.4〜3.3かつ厚さが0.05〜0.11mmで、内部導体の外周に被覆された絶縁体と、すずめっき硬銅線又はすずめっき銅合金線を横巻きしてなり、絶縁体の外周に被覆された厚さが0.025〜0.050mmのシールド層と、シールド層の外周に被覆された外径が0.35〜0.50mmのジャケット層とで構成される第2の同軸ケーブルと、
を複数本並べてリボン状に設けた多芯ケーブルであって、
前記第1の同軸ケーブル及び前記第2の同軸ケーブルの、静電容量が100〜140pF/m、特性インピーダンスが50±5Ω、及び周波数10MHz時の減衰量が0.15〜1.00dB/mであることを特徴とする多芯ケーブルである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、絶縁体にふっ素樹脂を含有せず、かつ、絶縁体にふっ素樹脂を用いた従来の同軸ケーブルと電気特性及び機械的特性が同等のノンハロゲン同軸ケーブルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明の実施の形態を添付図面により説明する。
【0017】
本発明は、導体の外周にPPE又はPPOを主成分とする絶縁体を有することを最大の特徴とする。
【0018】
本発明の好適一実施の形態に係るノンハロゲン同軸ケーブルの横断面図を図1に示す。
【0019】
図1に示す本実施の形態に係るノンハロゲン同軸ケーブルは、すずめっき軟銅線(又はすずめっき銅合金線)を撚り合わせた内部導体1の外周に、絶縁体2としてPPE樹脂(又はPPO)を主成分とするポリマーを被覆し、その絶縁体2の外周に、すずめっき硬銅線(又はすずめっき銅合金線)で構成される外部導体(シールド層)3を設け、その外部導体3の外周にジャケット層4を設けたものである。
【0020】
内部導体1としては、すずめっき軟銅線(又はすずめっき銅合金線)の撚り線が望ましいが、すずめっき軟銅線(又はすずめっき銅合金線)の単線、銀めっき軟銅線(又は銀めっき銅合金線)の撚り線或いは単線を用いてもよい。また、内部導体1として、銅被鋼線の撚り線或いは単線を用いてもよい。内部導体1の導体サイズは、30AWG(アメリカンワイヤゲージ)以下(断面積が0.05097mm2以下)が望ましく、例えば、内部導体1が7本撚りの撚り線からなる場合、素線外径は0.102mm以下とされる。これは、内部導体1の導体サイズが30AWG超(31AWG〜)だと、絶縁体2として従来から使用されているポリエチレンで被覆成形の対処が十分に可能であるためである。
【0021】
絶縁体2は、PPE(又はPPO)を主成分とするポリマーアロイで構成される。他の成分として、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンなどが含まれる。絶縁体2は特性インピーダンスを約50Ω、単位長さ当たりの静電容量を約100pF/mに調整するため、その肉厚を内部導体1の外径の0.4〜2.0倍とするのが望ましい。
【0022】
外部導体3は、すずめっき硬銅線(又はすずめっき銅合金線)を横巻きしたものや、すずめっき硬銅線(又はすずめっき銅合金線)を編組してなる編組で構成される。すずめっき硬銅線(又はすずめっき銅合金線)の代わりに、銀めっき軟銅線、銀めっき硬銅線(又は銀めっき銅合金線)を用いてもよい。この外部導体3の内層(又は外層)側に、銅蒸着ポリエステルテープなどによる第2のシールド層(図示せず)を設けてもよい。
【0023】
ジャケット層4は、外部導体3の外周に設けられるものであり、ポリエステルやPPE(又はPPO)を主成分とするポリマーアロイで構成され、他の成分として、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンなどが含まれる。
【0024】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0025】
従来の極細同軸ケーブルにおいては、肉厚0.1mm以下の薄肉押出しを行う際、PFA、ETFEといったふっ素樹脂を用いており、ふっ素樹脂以外の樹脂を用いて長尺の押出品を安定製造することは困難であった。そこで、本実施の形態では、ふっ素樹脂を含まない薄肉押出用の絶縁体材料として、エンジニアリングプラスチックであるPPE(又はPPO)を主成分とするポリマーアロイを用いることに特徴がある。これらのPPE(又はPPO)を主成分とするポリマーアロイを使用することによって、肉厚0.1mm以下の薄肉押出しが可能になり、ふっ素樹脂以外の樹脂を用いて長尺の押出品を安定製造することができる。
【0026】
また、これらのポリマーアロイは、ふっ素、塩素、及び臭素などを含まず、ノンハロゲンであるため、環境に与える負荷が少ないという利点がある。
【0027】
さらに、これらのポリマーアロイは、1MHz〜100MHzにかけて誘電率が2.8、誘電正接が0.0005〜0.0006と安定しており、また、同軸ケーブル完成品での電気特性も安定しているという利点がある。つまり、本実施の形態のノンハロゲン同軸ケーブルによれば、従来のふっ素樹脂を用いた極細同軸ケーブルと同等の機械的特性及び電気特性(例えば、EMI特性やSKEW)を実現することができる。
【0028】
次に、本発明の他の実施の形態を添付図面により説明する。
【0029】
本発明の他の好適一実施の形態に係るノンハロゲン同軸ケーブルの横断面図を図2に示す。
【0030】
図1に示したノンハロゲン同軸ケーブルは、内部導体が1心のケーブルであった。これに対して、図2に示す本実施の形態に係るノンハロゲン同軸ケーブルは、内部導体が2心の2心平行同軸ケーブルである。
【0031】
図2に示す本実施の形態に係るノンハロゲン同軸ケーブルは、すずめっき軟銅線(又はすずめっき銅合金線)を撚り合わせた内部導体5の外周に、絶縁体6としてPPE樹脂(又はPPO)を主成分とするポリマーを被覆してなるコア9を2心、平行に並設し、その2心コア10の外周に、すずめっき硬銅線(又はすずめっき銅合金線)で構成される外部導体(シールド層)7を設け、その外部導体7の外周にジャケット層8を設けたものである。
【0032】
内部導体5、絶縁体6、及びジャケット層8の構成材は、図1に示したノンハロゲン同軸ケーブルの内部導体1、絶縁体2、及びジャケット層4の構成材と同じものが適用可能である。
【0033】
外部導体7は、すずめっき硬銅線(又はすずめっき銅合金線)を2重横巻きしたものや、すずめっき硬銅線(又はすずめっき銅合金線)を編組してなる編組で構成される。すずめっき硬銅線(又はすずめっき銅合金線)の代わりに、銀めっき軟銅線、銀めっき硬銅線(又は銀めっき銅合金線)を用いてもよい。この外部導体7の内層(又は外層)側に、銅蒸着ポリエステルテープなどによる第2のシールド層(図示せず)を設けてもよい。
【0034】
本実施の形態に係るノンハロゲン同軸ケーブルは、図1に示したノンハロゲン同軸ケーブルよりもEMI特性やSKEWが更に良好であることから、信号伝送の更なる高速化を図ることができる。
【0035】
本実施の形態においては、コア9が2心の場合について説明を行ったが、特にこれに限定するものではなく、コア9は3心以上であってもよい。
【0036】
本発明の別の好適一実施の形態に係るノンハロゲン同軸ケーブルを用いた多芯ケーブルの横断面図を図3に示す。
【0037】
図3に示す本実施の形態に係る多芯ケーブルは、図1に示したノンハロゲン同軸ケーブルを用いた多芯線であり、同軸ケーブル11をn本平行に並設し、その上下面にそれぞれ粘着ラベル13を重ねてリボン状(フラットケーブル状)に設けたものである。隣接する同軸ケーブル11,11の中心間距離(ピッチP)は、例えば、1mm以下とされる。
【0038】
同軸ケーブル11は、例えば、直径0.018〜0.082mmのすずめっき軟銅線(又はすずめっき銅合金線)を7本撚り合わせた内部導体14と、PPE樹脂(又はPPO)を主成分とするポリマーからなり、誘電率が2.4〜3.3で、内部導体14の外周に被覆された絶縁体15と、すずめっき硬銅線(又はすずめっき銅合金線)を横巻きしてなり、絶縁体15の外周に被覆されたシールド層16と、シールド層16の外周に被覆されたジャケット層17とで構成される。この同軸ケーブル11は、単位長さ当たりの静電容量が100〜140pF/m、特性インピーダンスが50±5Ω、及び減衰量が0.15〜1.00dB/mとされる。
【0039】
本発明のまた別の好適一実施の形態に係るノンハロゲン同軸ケーブルを用いた多芯ケーブルの横断面図を図4に示す。なお、図3と同じ部材には同じ符号を付している。
【0040】
図3に示した多芯ケーブルは、内部導体のサイズが全て同じ同軸ケーブルを用いた多芯線であった。これに対して、図4に示す本実施の形態に係る多芯ケーブルは、内部導体のサイズが異なる同軸ケーブルを組み合わせた多芯線である。
【0041】
具体的には、同軸ケーブル21を4本、同軸ケーブル22を(n−4)本平行に並設し、その上下面にそれぞれ粘着ラベル13を重ねてリボン状(フラットケーブル状)に設けたものである。隣接する同軸ケーブル21,21及び22,22のピッチPは、例えば、1mm以下とされる。
【0042】
同軸ケーブル21(第2の同軸ケーブル)は、図3に示した同軸ケーブル11と同じ構造のものであり、例えば、直径0.028〜0.032mmのすずめっき軟銅線(又はすずめっき銅合金線)を7本撚り合わせた内部導体14と、PPE樹脂(又はPPO)を主成分とするポリマーからなり、誘電率が2.4〜3.3かつ厚さが0.05〜0.11mmで、内部導体14の外周に被覆された絶縁体15と、すずめっき硬銅線(又はすずめっき銅合金線)を横巻きしてなり、絶縁体15の外周に被覆された厚さが0.025〜0.050mmのシールド層16と、シールド層16の外周に被覆された外径が0.35〜0.50mmのジャケット層17とで構成される。
【0043】
同軸ケーブル22(第1の同軸ケーブル)は、図3に示した同軸ケーブル11と同じ構造のものであり、例えば、直径0.048〜0.052mmのすずめっき軟銅線(又はすずめっき銅合金線)を7本撚り合わせた内部導体24と、PPE樹脂(又はPPO)を主成分とするポリマーからなり、誘電率が2.4〜3.3かつ厚さが0.08〜0.14mmで、内部導体24の外周に被覆された絶縁体25と、すずめっき硬銅線(又はすずめっき銅合金線)を横巻きしてなり、絶縁体25の外周に被覆された厚さが0.025〜0.035mmのシールド層26と、シールド層26の外周に被覆された外径が0.35〜0.50mmのジャケット層27とで構成される。
【0044】
同軸ケーブル21,22は、ケーブル外径は同じであるものの、同軸ケーブル22の方が、同軸ケーブル21よりも内部導体を構成する心線のサイズ(内部導体の断面積)が大きく、かつ、絶縁体の層厚が薄く構成されている。本実施の形態に係る多芯ケーブルにおいては、例えば、同軸ケーブル22が電力線、同軸ケーブル21が信号線として使用される。
【0045】
また、同軸ケーブル21は、単位長さ当たりの静電容量が100〜140pF/m、特性インピーダンスが50±5Ω、及び減衰量が0.15〜1.00dB/mとされる。
【0046】
図3及び図4に示した多芯ケーブルは、例えば、ノートパソコンのヒンジ部などの狭いスペースに配線するケーブル、より詳細に言えば、ノートパソコンの本体と液晶画面を、ヒンジ部を通して接続するケーブルとして使用することができる。
【0047】
また、これらの多芯ケーブルは、従来の極細同軸ケーブルを用いた多芯ケーブルと同等の電気特性を有すると共に、従来の多芯ケーブルよりも良好な耐屈曲特性を実現することができる。
【0048】
図3及び図4に示した多芯ケーブルにおいては、同軸ケーブルとして図1に示した1心構造のものを用いた場合を例に挙げて説明を行ったが、同軸ケーブルとして図2に示した2心平行同軸ケーブルを用いてもよい。
【実施例1】
【0049】
銅合金線を7本撚り合わせ、5種類の内部導体(36AWG、38AWG、40AWG、42AWG、44AWG)を作製した。
【0050】
各内部導体の外周に、それぞれ2種類の絶縁体を被覆した。ここで、絶縁体としてPFAを被覆したものを比較例(試料1〜5)とした。また、絶縁体として誘電率が2.8のPPOを主成分とするポリマーを被覆したものを実施例(試料6〜10)とした。
【0051】
各試料1〜10の絶縁体の外周に硬銅線で構成される外部導体(シールド層)を設け、その外部導体の外周にポリエステルテープを巻いてジャケットを設け、同軸ケーブルを作製した。
【0052】
各同軸ケーブルの構造、サイズ、電気特性、及び機械的特性を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1に示すように、絶縁体にPPOを使用した実施例の同軸ケーブル(本発明のノンハロゲン同軸ケーブル)は、絶縁体にPFAを使用した比較例の同軸ケーブル(従来の同軸ケーブル)と同程度の機械的特性及び電気特性を有していた。特に機械的特性(屈曲寿命曲げ)については、比較例の同軸ケーブルよりも実施例の同軸ケーブルの方が若干優れていた。
【実施例2】
【0055】
銅合金線を7本撚り合わせ、5種類の内部導体(36AWG、38AWG、40AWG、42AWG、44AWG)を作製した。
【0056】
各内部導体の外周に、それぞれ2種類の絶縁体を被覆した。ここで、絶縁体としてPFAを被覆したものを比較例(試料11〜15)とした。また、絶縁体として誘電率が2.4のPPEを主成分とするポリマーを被覆したものを実施例(試料16〜20)とした。
【0057】
各試料1〜10の絶縁体の外周に硬銅線で構成される外部導体(シールド層)を設け、その外部導体の外周にポリエステルテープを巻いてジャケットを設け、同軸ケーブルを作製した。
【0058】
各同軸ケーブルの構造、サイズ、電気特性、及び機械的特性を表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
表2に示すように、絶縁体にPPEを使用した実施例の同軸ケーブル(本発明のノンハロゲン同軸ケーブル)は、比較例の同軸ケーブルと同程度の機械的特性及び電気特性を有していた。特に機械的特性(屈曲寿命曲げ)については、比較例の同軸ケーブルよりも実施例の同軸ケーブルの方が若干優れていた。
【0061】
また、静電容量及び減衰量の電気特性については、[実施例1]におけるPPOを使用した同軸ケーブルよりも、[実施例2]におけるPPEを使用した同軸ケーブルの方が若干優れていた。
【実施例3】
【0062】
[実施例2]における試料18の同軸ケーブル(特性インピーダンスが50Ωの40AWG同軸ケーブル)と、その同軸ケーブルと同じ外径で、かつ、誘電率が2.4のPPEを主成分とするポリマーの絶縁体を有する36AWG同軸ケーブルを組み合わせて、図4に示した多芯ケーブルを作製した。
【0063】
同様に、[実施例2]における試料19の同軸ケーブル(特性インピーダンスが50Ωの42AWG同軸ケーブル)と、その同軸ケーブルと同じ外径で、かつ、誘電率が2.4のPPEを主成分とするポリマーの絶縁体を有する38AWG同軸ケーブルを組み合わせて、図4に示した多芯ケーブルを作製した。
【0064】
また、[実施例2]における試料20の同軸ケーブル(特性インピーダンスが50Ωの44AWG同軸ケーブル)と、その同軸ケーブルと同じ外径で、かつ、誘電率が2.4のPPEを主成分とするポリマーの絶縁体を有する40AWG同軸ケーブルを組み合わせて、図4に示した多芯ケーブルを作製した。
【0065】
40AWG、42AWG、44AWGの各同軸ケーブルが信号線として用いられ、36AWG、38AWG、40AWGの各同軸ケーブルが電力線として用いられる。電力線としては、信号線よりも内部導体の断面積が大きいものが使用される。また、電力線は信号線と共に端末加工(皮むき)を行うため、その外径寸法は信号線と同じとされる。
【0066】
各多芯ケーブルにおける同軸ケーブルの構造、サイズ、電気特性、及び機械的特性を表3に示す。ここで、電力線については、静電容量、減衰量、及び特性インピーダンスを考慮していないため、これらの値についての測定は行わなかった。
【0067】
【表3】

【実施例4】
【0068】
[実施例1]における試料8の同軸ケーブル(特性インピーダンスが50Ωの40AWG同軸ケーブル)と、その同軸ケーブルと同じ外径で、かつ、誘電率が2.8のPPOを主成分とするポリマーの絶縁体を有する36AWG同軸ケーブルを組み合わせて、図4に示した多芯ケーブルを作製した。
【0069】
同様に、[実施例1]における試料9の同軸ケーブル(特性インピーダンスが50Ωの42AWG同軸ケーブル)と、その同軸ケーブルと同じ外径で、かつ、誘電率が2.8のPPOを主成分とするポリマーの絶縁体を有する38AWG同軸ケーブルを組み合わせて、図4に示した多芯ケーブルを作製した。
【0070】
また、[実施例1]における試料10の同軸ケーブル(特性インピーダンスが50Ωの44AWG同軸ケーブル)と、その同軸ケーブルと同じ外径で、かつ、誘電率が2.8のPPOを主成分とするポリマーの絶縁体を有する40AWG同軸ケーブルを組み合わせて、図4に示した多芯ケーブルを作製した。
【0071】
40AWG、42AWG、44AWGの各同軸ケーブルが信号線として用いられ、36AWG、38AWG、40AWGの各同軸ケーブルが電力線として用いられる。電力線としては、信号線よりも内部導体の断面積が大きいものが使用される。また、電力線は信号線と共に端末加工(皮むき)を行うため、その外径寸法は信号線と同じとされる。
【0072】
各多芯ケーブルにおける同軸ケーブルの構造、サイズ、電気特性、及び機械的特性を表4に示す。ここで、電力線については、静電容量、減衰量、及び特性インピーダンスを考慮していないため、これらの値についての測定は行わなかった。
【0073】
【表4】

【0074】
[実施例3]及び[実施例4]の多芯ケーブルによれば、従来の極細同軸ケーブルを用いた多芯ケーブルと同等の電気特性が得られ、また、従来の多芯ケーブルよりも良好な耐屈曲特性が得られた。
【0075】
また、静電容量及び減衰量の電気特性については、[実施例4]におけるPPOを使用した多芯ケーブルよりも、[実施例3]におけるPPEを使用した多芯ケーブルの方が若干優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の好適一実施の形態に係るノンハロゲン同軸ケーブルの横断面図である。
【図2】本発明の他の好適一実施の形態に係るノンハロゲン同軸ケーブルの横断面図である。
【図3】本発明の別の好適一実施の形態に係るノンハロゲン同軸ケーブルを用いた多芯ケーブルの横断面図である。
【図4】本発明のまた別の好適一実施の形態に係るノンハロゲン同軸ケーブルを用いた多芯ケーブルの横断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 内部導体
2 絶縁体
3 シールド層
4 ジャケット層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
すずめっき軟銅線又はすずめっき銅合金線を撚り合わせた内部導体の外周に、絶縁体としてポリフェニレンエーテル(以下、PPEという)樹脂又はポリフェニレンオキサイド(以下、PPOという)を主成分とするポリマーを被覆し、その絶縁体の外周に、すずめっき硬銅線又はすずめっき銅合金線を横巻きしたシールド層を設け、そのシールド層の外周にジャケット層を設けたことを特徴とするノンハロゲン同軸ケーブル。
【請求項2】
すずめっき軟銅線又はすずめっき銅合金線を撚り合わせた内部導体の外周に、絶縁体としてPPE樹脂又はPPOを主成分とするポリマーを被覆し、その絶縁体の外周に、すずめっき硬銅線又はすずめっき銅合金線を編組したシールド層を設け、そのシールド層の外周にジャケット層を設けたことを特徴とするノンハロゲン同軸ケーブル。
【請求項3】
すずめっき軟銅線又はすずめっき銅合金線を撚り合わせた内部導体の外周に絶縁体としてPPE樹脂又はPPOを主成分とするポリマーを被覆してなるコアを2心、平行に並設し、その2心コアの外周に、すずめっき硬銅線又はすずめっき銅合金線を2重横巻きしたシールド層を設け、そのシールド層の外周にジャケット層を設けたことを特徴とするノンハロゲン同軸ケーブル。
【請求項4】
すずめっき軟銅線又はすずめっき銅合金線を撚り合わせた内部導体の外周に絶縁体としてPPE樹脂又はPPOを主成分とするポリマーを被覆してなるコアを2心、平行に並設し、その2心コアの外周に、すずめっき硬銅線又はすずめっき銅合金線を編組したシールド層を設け、そのシールド層の外周にジャケット層を設けたことを特徴とするノンハロゲン同軸ケーブル。
【請求項5】
前記ジャケット層をポリエステル樹脂で構成した請求項1〜4いずれか記載のノンハロゲン同軸ケーブル。
【請求項6】
前記ジャケット層をPPE樹脂又はPPOを主成分とするポリマーで構成した請求項1〜4いずれか記載のノンハロゲン同軸ケーブル。
【請求項7】
直径0.018〜0.082mmのすずめっき軟銅線又はすずめっき銅合金線を複数本撚り合わせた内部導体と、PPE樹脂又はPPOを主成分とするポリマーからなり、誘電率が2.4〜3.3で、内部導体の外周に被覆された絶縁体と、すずめっき硬銅線又はすずめっき銅合金線を横巻きしてなり、絶縁体の外周に被覆されたシールド層と、シールド層の外周に被覆されたジャケット層とで構成される同軸ケーブルを、複数本並べてリボン状に設けた多芯ケーブルであって、
前記同軸ケーブルの、静電容量が100〜140pF/m、特性インピーダンスが50±5Ω、及び周波数10MHz時の減衰量が0.15〜1.00dB/mであることを特徴とする多芯ケーブル。
【請求項8】
直径0.028〜0.032mmのすずめっき軟銅線又はすずめっき銅合金線を7本撚り合わせた内部導体と、PPE樹脂又はPPOを主成分とするポリマーからなり、誘電率が2.4〜3.3かつ厚さが0.08〜0.14mmで、内部導体の外周に被覆された絶縁体と、すずめっき硬銅線又はすずめっき銅合金線を横巻きしてなり、絶縁体の外周に被覆された厚さが0.025〜0.035mmのシールド層と、シールド層の外周に被覆された外径が0.35〜0.50mmのジャケット層とで構成される第1の同軸ケーブルと、
直径0.048〜0.052mmのすずめっき軟銅線又はすずめっき銅合金線を7本撚り合わせた内部導体と、PPE樹脂又はPPOを主成分とするポリマーからなり、誘電率が2.4〜3.3かつ厚さが0.05〜0.11mmで、内部導体の外周に被覆された絶縁体と、すずめっき硬銅線又はすずめっき銅合金線を横巻きしてなり、絶縁体の外周に被覆された厚さが0.025〜0.050mmのシールド層と、シールド層の外周に被覆された外径が0.35〜0.50mmのジャケット層とで構成される第2の同軸ケーブルと、
を複数本並べてリボン状に設けた多芯ケーブルであって、
前記第1の同軸ケーブル及び前記第2の同軸ケーブルの、静電容量が100〜140pF/m、特性インピーダンスが50±5Ω、及び周波数10MHz時の減衰量が0.15〜1.00dB/mであることを特徴とする多芯ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−280762(P2007−280762A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105454(P2006−105454)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】