説明

ノンハロゲン難燃樹脂組成物

【課題】 高い難燃性を示し、かつ、引張強度にも優れており、燃焼時にハロゲンガスの発生がなく、環境に対する安全性に優れたノンハロゲン難燃樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A)カルボン酸無水物基を含有しない1種又は2種以上の熱可塑性樹脂100質量部に対して、(B)カルボン酸無水物基を含有する樹脂0.1〜30質量部、(C)無機系難燃剤40〜300質量部、(D)オルガノポリシロキサン0.1〜100質量部、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い難燃性と引張強度を兼ね備え、しかも、燃焼時にハロゲンガスの発生がないため、環境に対する安全性に優れたノンハロゲン難燃樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は可燃性であるため、難燃性を必要とする用途に適応できるように、様々な難燃化付与の技術が提案されている。難燃化付与の技術としては、従来、難燃性に優れた臭素化合物等のハロゲン系難燃剤を使用し、これと酸化アンチモンを熱可塑性樹脂に配合するハロゲン処方が多く利用されてきた。ハロゲン系難燃剤は、ラジカルトラップ作用や不燃性ガスの発生等により、優れた難燃効果を発揮する。
しかし、ハロゲン系難燃剤は、火災時に有毒なガスを多量に発生するので、最近では、ハロゲン系難燃剤を配合しないノンハロゲン処方の難燃樹脂組成物の出現が強く望まれている。
【0003】
電線やケーブルの絶縁体あるいは各種シートに使用されるポリオレフィン系樹脂に対して、ハロゲン系難燃剤を配合することなく、難燃性を付与する方法として、近年、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤を用いる様々な技術が提案されている。無機系難燃剤は、燃焼時に結晶水を放出することにより、難燃作用を発揮し、発煙量が少なく、毒性・腐食性が低いという長所を有する。
しかし、無機系難燃剤の難燃作用は強力ではなく、例えば、低密度ポリエチレン100質量部に対して、等量の100質量部を配合しても、酸素消費指数は25近辺の値しか示さない。
また、無機系難燃剤を使用する改良技術として、ポリオレフィン系樹脂で表面処理した無機系難燃剤とオルガノポリシロキサンをポリオレフィン系樹脂に添加すると、難燃性の向上が認められ、オルガノボリシロキサン量を多くするほど、難燃効果が高くなることが知られている。
しかし、この改良技術には、オルガノポリシロキサンがオイル又はゴム状であるため、オルガノボリシロキサンの配合量に比例して、樹脂組成物の引張強度が低下するという欠点がある。
【0004】
これまで、本発明に関連した技術としては、以下に挙げるものが提案されている。すなわち、表面処理した無機系難燃剤を使用するもの(特許文献1〜3参照)、無機系難燃剤及びオルガノポリシロキサンを樹脂に配合するもの(特許文献4〜6参照)である。
【0005】
【特許文献1】特開平2−28434号公報
【特許文献2】特開平5−17692号公報
【特許文献3】特開平4−323265号公報
【特許文献4】特開平2−55751号公報
【特許文献5】特開平5―32830号公報
【特許文献6】特開2000−109622号公報
【特許文献7】特開2003−128939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、高い難燃性を示し、かつ、引張強度にも優れており、燃焼時にハロゲンガスの発生がなく、環境に対する安全性に優れたノンハロゲン難燃樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために、種々の樹脂組成物を試作して検討したところ、カルボン酸無水物基を含有しない1種又は2種以上の熱可塑性樹脂に、カルボン酸無水物基を含有する樹脂、無機系難燃剤及びオルガノポリシロキサンを配合すると、難燃性が向上すると共に、従来、オルガノポリシロキサンの添加によって低下してしまう引張強度が極端に向上することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、(A)カルボン酸無水物基を含有しない1種又は2種以上の熱可塑性樹脂100質量部に対して、(B)カルボン酸無水物基を含有する樹脂0.1〜30質量部、(C)無機系難燃剤40〜300質量部、(D)オルガノポリシロキサン0.1〜100質量部、からなることを特徴とするノンハロゲン難燃樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、高い難燃性を示し、かつ、高い引張強度を兼ね備え、燃燃時にハロゲンガスの発生がないため、環境に対する安全性に優れるノンハロゲン難燃樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
前記したように、本発明のノンハロゲン難燃樹脂組成物は、(A)〜(D)成分を必須成分とする組成物である。以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明を構成する(A)成分である、カルボン酸無水物基を含有しない熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸アミド共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、熱可塑性エラストマーとして、アイオノマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの内、特にポリオレフィン系樹脂が好ましい。また、これらは単独使用しても、2種以上を併用しても差し支えない。
【0010】
本発明を構成する(B)カルボン酸無水物基を含有する樹脂は、無機系難燃剤を多量に配合し、シリコーンにより難燃性を向上させた熱可塑性樹脂組成物の引張強度を向上させる作用がある。(B)成分の樹脂が含有するカルボン酸無水物基としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸等の基を挙げることができる。中でも無水マレイン酸基が反応性に優れるため好ましい。該カルボン酸無水物基は、樹脂の主鎖、側鎖のいずれにあってもよい。また、カルボン酸無水物基の組成比は、上記樹脂の0.1〜30質量%の範囲であることが好適である。
(B)成分のカルボン酸無水物基を含有する樹脂としては、具体例として下記の構造物が挙げられる。すなわち、カルボン酸無水物基を主鎖に含有する樹脂として、スチレン−無水マレイン酸共重合体(化1)、オレフィン−無水マレイン酸共重合体(化2)、及び酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体(化3)、並びにカルボン酸無水物基を側鎖に含有する樹脂として、無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂(化4)を挙げることができる。なお、下記式中のPhはフェニル基、Rは炭素数が1〜6の置換又は非置換の一価炭水素基、nは正の数を表す。また、qは0又は1〜3の正の整数、Xは0又は正の数、m、n、yは正の数を表す。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
(B)成分として、現在入手可能な商品としては、(1)ボンダイン(エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸三元共重合体)、住友化学社製、(2)ナックエースGA002、GA004(側鎖無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂)、日本ユニカー社製、(3)クロバックス400−21S、400−22S(αオレフィン・無水マレイン酸共重合樹脂)、日本化成株式会社製、(4)ダイヤカルナ(αオレフィン・無水マレイン酸共重合体ワックス)、三菱化学株式会社製等がある。
【0016】
本発明を構成する(B)カルボン酸無水物基を含有する樹脂の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜30質量部、好ましくは、1〜10質量部である。(B)成分が0.1質量部未満であると、引張強度の向上が十分に認められず、30質量部を超えると、流動性が低下する恐れがある。
【0017】
本発明を構成する(C)無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、ホウ酸亜鉛、ジルコニウム化合物、モリブデン化合物、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、酸化チタン、ろう石、石英、けいそう土、硫化鉱、硫化焼鉱、黒鉛、ベントナイト、カオリナイト、活性炭、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化鉄、大理石、ポートランドセメント、窒化ホウ素、天然・合成マイカ、ガラスビーズ、セリサイト等の微粉末状物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。(C)成分として、特には、金属水酸化物が本発明の効果を得る上で優れており、中でも水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム及び水酸化カルシウムが好ましい。
【0018】
本発明を構成する(C)無機系難燃剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して、40〜300質量部、好ましくは、50〜150質量部である。(C)成分が40質量部未満であると、難燃効果が不十分であり、300質量部を超えると硬度が高くなるためである。
【0019】
本発明においては、(C)成分の無機系難燃剤は、表面処理されていることが好ましい。該表面処理のための表面処理剤としては、シランカップリング剤、飽和又は不飽和脂肪酸、チタネート系カップリング剤等が好ましい。
【0020】
本発明を構成する(D)成分のオルガノポリシロキサンは、その分子構造は直鎖状、分枝状又は環状のいずれであってもよく、その性状はオイル状、生ゴム状いずれであってもよい。(D)成分として、好ましいものは、下記式1の構造を有するものである。

(式1中、R1は炭素数1〜6の非置換又は置換一価炭化水素基、及び水酸基から選ばれる同種又は異種の置換基であり、n=20〜6,000である。)
【0021】
上記式1において、R1である炭素数1〜6の非置換又は置換一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等の非置換1価炭化水素基、及び、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したトリフロロプロピル基、シアノエチル基等の置換1価炭化水素基から選択される基である。(D)成分のオルガノポリシロキサン全体に含まれるR1はその少なくとも80%がメチル基であることが特性上好ましい。
【0022】
上記式1において、シロキサン単位の繰り返し数であるnの値が20未満では難燃性が低下し、加工性が悪くなる場合があるので、好ましくない。また、nが6,000を超えると、得られるノンハロゲン難燃樹脂組成物が高粘度となりすぎて、製造時の撹拌が困難になるので、nは20〜6,000、好ましくは2,000〜4,000である。
【0023】
本発明を構成する(D)オルガノポリシロキサンの配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜100質量部、好ましくは1〜20質量部、更に好ましくは2〜15質量部である。0.1質量部未満の配合量では十分な難燃性は発揮されず、100質量部を超えると引張強度や伸び等の機械的強度が低下してしまう場合がある。なお、(D)成分は2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明においては、(E)有機過酸化物を配合することにより、架橋による網状の強固な難燃皮膜が形成されるため、難燃性を更に高めることができる。(E)有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパ−オキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。上記の中でも、パーオキシケタール類やジアルキルパーオキサイド類に属する有機過酸化物は、発生する遊離ラジカル量の高いものが多いため、架橋に適している。
【0025】
(E)有機過酸化物の種類は、通常加工時の温度に従い、10時間半減期温度を考慮して選定される。加工温度は樹脂の種類により変わるが、ポリオレフィン系樹脂の場合は、一般に80〜250℃が好ましい。
本発明における(E)成分の有機過酸化物の配合量は、(A)成分の熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましい。0.01質量部未満であると、(E)成分添加による効果が十分に認められず、10質量部を超えると、架橋が進みすぎてゲルとなる恐れがある。
【0026】
本発明のノンハロゲン難燃樹脂組成物には、その特性を阻害しない範囲で、その目的に応じて添加剤を配合することができる。添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、光安定剤、相溶化剤、他種のノンハロゲン難燃剤、滑剤、充填剤、接着助剤、防錆剤を挙げることができる。
本発明において使用可能な酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4'−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネ−ト]、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、4,4−チオビス−(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2−メチレンビス−(6−t−ブチルメチルフェノール)、4,4−メチレンビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレン−ジホスホナイト、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3'−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2,5,7,8−テトラメチル−2(4,8,12−トリメチルデシル)クロマン−2−オール、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジペンチルフェニルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、テトラキス(メチレン)−3−(ドデシルチオプロピオネート)メタン等が挙げられる。
【0027】
本発明において使用可能な安定剤としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛等の各種金属せっけん系安定剤、ラウレート系、マレート系及びメルカプト系の各種有機錫系安定剤、ステアリン酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の各種鉛系安定剤、エポキシ化植物油等のエポキシ化合物、アルキルアリルホスファイト、トリアルキルホスファイト等のホスファイト化合物、ジベンゾイルメタン、デヒドロ酢酸等のβ−ジケトン化合物、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトール等のポリオール、ハイドロタルサイト類やゼオライト類を挙げることができる。
【0028】
本発明において使用可能な光安定剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0029】
本発明において使用可能な相溶化剤としては、アクリルオルガノポリシロキサン共重合体、シリカとオルガノポリシロキサンの部分架橋物、シリコーンパウダー、MQレジン、ポリオレフィングラフト変性オルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
また、本発明において使用可能な接着助剤としては、各種アルコキシシラン等を挙げることができる。
【0030】
本発明において使用可能な、他のノンハロゲン難燃剤としては、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、各種リン系難燃剤、膨脹性黒鉛、シアヌール酸メラミン、スルファミン酸グアニジン、光酸化チタン等を挙げることができる。また、充填剤としては、ケイ酸、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、カオリンクレー、焼成クレー、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム等を挙げることができる。
【0031】
本発明のノンハロゲン難燃樹脂組成物は、上記した(A)〜(E)成分を、直接2軸押出機、1軸押出機、バンバリーミキサー又は加圧ニーダー中で加熱混合することにより調製してもよいが、好ましくは、あらかじめ(A)、(B)成分以外の(C)〜(E)成分の所定量を上記した混合装置を用いて加熱混合して中間組成物を作製し、しかる後に(A)、(B)成分の所定量を混合するか、又は、(C)成分以外の(A)、(B)、(D)、(E)成分の所定量を上記した混合装置を用いて加熱混合して中間組成物を作製し、しかる後に(C)成分の所定量を混合することにより、本組成物を作製する方が、取り扱い性及び分散性の面で優れている。本発明のノンハロゲン難燃樹脂組成物は、特に、難燃電線、チューブ又は難燃シート成形用材料として優れている。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例、比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、表1の原材料欄の数字は質量部を示す。
表1に示した各種原材料をラボプラストミルR250ミキサー(東洋精機社製、商品名)に入れ、150℃、30rpm、10分の条件で混合後、ペレットとして押出した後、150℃、1分間、1mm厚及び150℃、1分間、3mm厚にプレス成形することにより、試験用シートを作製した。
【0033】
(引張強度、伸び試験)
上記で調製した1mm厚の試験用シートを用いて、JlS K7113に準拠した方法で引張強度及ぴ伸びを測定し、結果を表1に記載した。
(難燃性試験)
上記で調製した3mm厚の試験用シートを用いて、UL94規格のV−0「垂直難燃性試験」に準拠して、その難燃性を評価し、合否を判定した。結果を表1に記載した。
【0034】
【表1】

【0035】
表1に記載した各原料の出所及び商品名等を下記に示す。
(1)EVA(エチレンビニルアセテート)、エバフレックス40LX、三井デュポンポリケミカル社製、商品名
(2)EEA(エチレンエチルアクリレート)、PES220、日本ユニカー社製、商品名
(3)ナックセーフ GA002、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂、日本ユニカー社製、商品名
(4)ファインマグ MO−E、メタクリロキシシラン処理水酸化マグネシウム、TMG社製、商品名
(5)高重合度ジメチルポリシロキサン 25℃における溶解粘度30,000mPa・s(30%キシレンに溶解させた場合の粘度)、推定粘度:約240万mPa・s、信越化学工業社製、商品名
(6)メチルビニルシリコーンオイル 全置換基中のビニル基量10モル%、25℃における粘度700mPa・s、信越化学工業社製
(7)パークミルD40、有機過酸化物、日本油脂社製、商品名
【0036】
[実施例の総括]
表1に記載した比較例2の結果より、熱可塑性樹脂に水酸化マグネシウムのみを配合した場合は、UL94規格のV−0クラスに合格する難燃性は得られるものの、引張強度と伸びが極端に劣り、また、比較例3の結果より、水酸化マグネシウムの配合量を減らすと、不十分ながら引張強度と伸びは向上するが、逆に難燃性試験の結果は不合格となる。
さらに、熱可塑性樹脂と水酸化マグネシウムの配合系にオルガノポリシロキサンを添加した組成物(比較例1、4)は、難燃性、伸びが大きく向上するが、引張強度はエコ電線規格に定められる10Mpaには満たない上、オルガノポリシロキサン無添加組成物(比較例3)よりも低い状態となる。
それに対し、熱可塑性樹脂に、水酸化マグネシウム、オルガノポリシロキサン、及び無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂を配合した組成物(実施例1〜3)は、難燃性が高い上、引張強度は10Mpa以上で、伸びも高い値を示すことが確認され、これによって、本発明の組成物の効果が立証された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボン酸無水物基を含有しない1種又は2種以上の熱可塑性樹脂100質量部に対して、(B)カルボン酸無水物基を含有する樹脂0.1〜30質量部、(C)無機系難燃剤40〜300質量部、(D)オルガノポリシロキサン0.1〜100質量部、からなることを特徴とするノンハロゲン難燃樹脂組成物。
【請求項2】
(E)成分として、(A)成分の熱可塑性樹脂100質量部に対して、有機過酸化物を0.01〜10質量部配合してなる請求項1記載のノンハロゲン難燃樹脂組成物。
【請求項3】
(B)成分の樹脂が、カルボン酸無水物変性ポリオレフィン系樹脂である請求項1又は2に記載のノンハロゲン難燃樹脂組成物。
【請求項4】
(C)成分の無機系難燃剤が、金属水酸化物である請求項1〜3の何れか1項に記載のノンハロゲン難燃樹脂組成物。
【請求項5】
(D)成分のオルガノポリシロキサンが、下記式1の構造を有する請求項1〜4の何れか1項に記載のノンハロゲン難燃樹脂組成物。

(式1中、R1は炭素数1〜6の非置換又は置換一価炭化水素基、及び水酸基から選ばれる同種又は異種の置換基であり、n=20〜6,000である。)
【請求項6】
(A)成分の熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系樹脂、及びポリウレタン系エラストマーから選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜5の何れか1項に記載のノンハロゲン難燃樹脂組成物。


【公開番号】特開2006−8940(P2006−8940A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191529(P2004−191529)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【出願人】(594042527)株式会社長野三洋化成 (6)
【Fターム(参考)】