説明

ノンリニア編集装置

【課題】本発明は、既存の映像加工装置および編集コントローラに適用しても処理負荷が増大せず、調走に時間がかからないノンリニア編集装置を提供する。
【解決手段】ノンリニア編集装置1は、編集コントローラ3から制御コマンドが入力され、入力された制御コマンドが編集モードの開始を示す予め設定されたコマンドのときに編集モードであると判定する編集モード判定手段42と、編集モードと判定されたときに、制御コマンドで指定された再生速度と再生開始点からの経過時間とに基づいて、映像の再生位置を示す時間情報を算出する時間情報算出手段41と、時間情報を編集コントローラ3に送信する通信手段20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオテープを介さずに、映像の制作や編集を行うノンリニア編集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像制作の現場では、ビデオテープを介さずに、映像の制作や編集を行うテープレス化の流れが進んでいる。このテープレス化を実現すべく、従来からノンリニア編集装置が幾つか提案されている。例えば、非特許文献1には、効率的なワークフローを実現し、ネットワーク環境での映像の制作や編集を可能とするノンリニア制作システムが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ソニー株式会社製マルチプラットフォームノンリニア制作システム「XPRI NSシリーズ」、URL「http://www.sony.jp/products/Professional/c_c/xpri/」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の映像編集システムでは、ビデオテープ(VTR)を用いたリニア編集装置と共に、映像加工装置や編集コントローラが用いられている。ここで、映像加工装置および編集コントローラが高価であることから、ノンリニア編集装置の導入にあわせて、新たに映像加工装置および編集コントローラを導入することが困難である。このため、従来の映像編集システムでは、既存の映像加工装置および編集コントローラを継続して使用しつつノンリニア編集装置を新たに導入したいという、ユーザから強い要望がされている。しかし、従来の映像編集システムでは、以下で述べる理由により、ユーザの要望を満たすことができない。
【0005】
従来のリニア編集装置は、ビデオテープの再生速度をアナログ的(小数点単位)に制御可能である。
【0006】
一方、従来のノンリニア編集装置は、通常、フレーム単位でしか再生速度を制御しない。そして、従来のノンリニア編集装置は、編集コントローラから、1フレーム時間毎に再生位置(時間情報)の問い合わせが行われる。この問い合わせに対して、従来のノンリニア編集装置は、出力を行っている映像に一致する時間情報を、映像と共に編集コントローラに返している。このため、従来のノンリニア編集装置は、リニア編集装置のようにアナログ的な再生速度の制御を行おうとすると、処理の負荷が重くなる。
【0007】
このとき、従来のノンリニア編集装置は、編集モードのときに問い合わせが行われたか、または、編集モード以外のときに問い合わせが行われたかを区別していない。そして、従来のノンリニア編集装置は、編集モードであるか否かに関わらず、1フレーム時間毎に問い合わせに対応するので、処理の負荷がさらに重くなる。
【0008】
このように処理の負荷が重いので、従来のノンリニア編集装置は、処理遅延が蓄積し、調走に時間がかかってしまう。例えば、従来のリニア編集装置では調走が約5秒で終了するのに対し、従来のノンリニア編集装置は、調走に約30秒かかるため、既存の映像加工装置および編集コントローラに適用しても、実用に耐えらない。
【0009】
そこで、本発明は、既存の映像加工装置および編集コントローラに適用しても処理負荷が増大せず、調走に時間がかからないノンリニア編集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するため、本願第1発明に係るノンリニア編集装置は、再生映像を出力する1台以上のノンリニア編集装置と、前記再生映像を含む複数の映像から1の収録映像を生成する映像加工装置と、少なくとも前記ノンリニア編集装置と前記映像加工装置との同期をとる編集コントローラとを備える映像編集システムに用いられる前記ノンリニア編集装置であって、編集モード判定手段と、時間情報算出手段と、通信手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、ノンリニア編集装置は、編集モード判定手段によって、前記編集コントローラから制御コマンドが入力され、入力された当該制御コマンドが予め設定された編集モードの開始を示すコマンドのときに前記編集モードであると判定する。また、ノンリニア編集装置は、時間情報算出手段によって、前記編集モードのときに、前記制御コマンドで指定された再生速度と算出した再生開始点からの経過時間とに基づいて、映像の再生位置を示す時間情報を、前記再生速度が等倍再生を示すときは前記経過時間の値で、前記再生速度が前記等倍再生より遅くなるほど前記経過時間を遅延させた値で、および、前記再生速度が前記等倍再生より速いほど前記経過時間を先に進めた値で算出する。そして、ノンリニア編集装置は、通信手段によって、前記時間情報算出手段が算出した時間情報を、前記編集コントローラに送信する。
【0012】
つまり、ノンリニア編集装置は、映像に付加された時間情報を参照せずに、編集モードのときだけ時間情報を算出する。このように、ノンリニア編集装置は、編集モードのときだけ時間情報を算出することから、編集コントローラにより再生速度の変更が行われた際の時間情報を算出する処理が迅速になる。従って、ノンリニア編集装置は、可変速再生のための映像生成およびバッファ制御処理に伴う演算負荷を低減できる。
【0013】
また、本願第2発明に係るノンリニア編集装置は、全ての前記再生映像毎に独立して設けられ、かつ、当該再生映像をそれぞれ前記映像加工装置に出力する複数の映像出力手段と、前記収録映像が前記映像加工装置から入力される映像入力手段と、をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
ここで、従来のノンリニア編集装置は、高度なエフェクトをソフトウェアで行った場合、その計算処理に長い時間が必要になる。また、従来のリニア編集装置で使用されていた特殊効果機器は、実時間でエフェクトを行うことができる。しかし、従来のノンリニア編集装置は、これら特殊効果機器を使用するため、一旦、映像をビデオテープに出力する必要がある。さらに、この場合、従来のノンリニア編集装置は、編集ソフトウェアにおける任意のトラックのみを編集すると、その手順がさらに煩雑になる。
【0015】
また、従来のノンリニア編集装置において、ビデオテープを介さずに、編集した映像を直接出力することも考えられるが、映像をそれぞれ独立して出力する機能がない。このため、従来の映像編集システムでは、ノンリニア編集装置とリニア編集装置とを複数台用いる必要がある。
【0016】
かかる構成によれば、ノンリニア編集装置は、映像毎に映像出力手段および映像入力手段を備えるため、全ての再生映像および収録映像をこれ1台で扱うことができる。これによって、ノンリニア編集装置は、従来の映像編集システムにおいて、複数台必要とされていたリニア編集装置の全てを、これ1台で置き換えることが可能となる。
【0017】
また、本願第3発明に係るノンリニア編集装置は、前記映像加工装置から入力された収録映像を記憶する入力バッファと、前記再生映像と同じ映像を編集する映像編集手段によって編集された編集映像又は前記収録映像の何れか一方を記憶する出力バッファと、前記経過時間が前記再生開始点から算出した収録開始点までの間のときに第1区間と判定し、前記経過時間が前記収録開始点から算出した収録終了点までの間のときに第2区間と判定し、前記経過時間が前記収録終了点から所定の停止点までの間のときに第3区間と判定する区間判定手段と、前記第1区間または前記第3区間では前記編集映像を前記出力バッファに書き込み、前記第2区間では前記入力バッファの収録映像を読み出して前記出力バッファに書き込むバッファ制御手段と、前記出力バッファに書き込まれた前記編集映像又は前記収録映像を映像表示手段に出力するバッファ出力手段と、をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
かかる構成によれば、ノンリニア編集装置は、映像の収録を行う際、最終的な編集結果となる映像をモニターに出力することができる。このため、映像の製作者は、その映像が、意図した編集結果になっているかどうかを即時に確認することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
本願第1発明は、映像に付加された時間情報を参照せずに、編集モードのときだけ時間情報を算出するので、既存の映像加工装置および編集コントローラに適用しても処理負荷が増大せず、調走に時間がかからない。これによって、本願第1発明は、既存の映像編集システムを活用しつつ、低コストでテープレス化を実現できる。
本願第2発明は、従来のリニア編集装置の全てを1台のノンリニア編集装置で置き換えられるので、テープレス化をより低コストで実現できる。
本願第3発明は、映像の収録を行う時点で編集結果のプレビューを行うことができるので、制作者が映像制作をより効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係るノンリニア編集装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の映像編集システムで用いられるコマンドの具体例を説明する図である。
【図3】図2の制御コマンドの具体例を説明する図である。
【図4】制御コマンドの送受信がない場合における、図1のノンリニア編集装置と編集コントローラとの動作を示すシーケンス図である。
【図5】制御コマンドの送受信がある場合における、図1のノンリニア編集装置と編集コントローラとの動作を示すシーケンス図である。
【図6】図1のノンリニア編集装置による時間情報の算出を説明する図である。
【図7】図1のノンリニア編集装置が算出した時間情報を示す表であり、(b)は(a)の続きである。
【図8】図1のノンリニア編集装置の変形例を説明する図である。
【図9】図8の一本化と試写との並列処理による作業時間を説明する図である。
【図10】図8一本化と試写との並列処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第2実施形態に係るノンリニア編集装置の構成を示すブロック図である。
【図12】図11の差替手段による差替処理を説明する図であり、(a)は差替データと一本化素材との位置関係を示す図であり、(b)は差し替え後の一本化素材を示す図である。
【図13】図11の映像編集手段による、再生映像1,2に対するトラックの割り当てを説明する図である。
【図14】図11の映像編集手段による、収録映像に対するトラックの割り当てを説明する図である。
【図15】本発明の第3実施形態に係るノンリニア編集装置の構成を示すブロック図である。
【図16】図15のノンリニア編集装置において、各区間と出力する映像との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する手段には同一の符号を付し、説明を省略した。
【0022】
(第1実施形態)
[映像編集システムの概略]
図1を参照して、映像編集システム100の概略について説明する。図1に示すように、映像編集システム100は、映像の編集を行うものであり、ノンリニア編集装置1と、映像加工装置2と、編集コントローラ3と、VTR再生装置4と、VTR収録装置5とを備える。ここで、映像編集システム100は、再生映像1,2および収録映像を、HD−SDI(High Definition Serial Digital Interface)信号として入出力するが、これに限定されない。
【0023】
ノンリニア編集装置1は、入力された再生映像1を後記する記憶手段30にデジタルデータとして書き込む。そして、ノンリニア編集装置1は、このデジタルデータを編集して映像加工装置2に出力する。ここで、ノンリニア編集装置1は、例えば、再生映像1をMPEG2(Moving Picture Experts Group)形式で扱う。なお、ノンリニア編集装置1の詳細は、後記する。
【0024】
映像加工装置2は、ノンリニア編集装置1から再生映像1が入力されると共に、VTR再生装置4から再生映像2が入力される。そして、映像加工装置2は、これら2本の再生映像1,2を1本の収録映像に加工してVTR収録装置5に出力する。なお、映像加工装置2は、従来のものと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0025】
再生映像とは、映像加工装置2に入力される映像であって、映像加工装置2の処理対象となる映像である。ここでは、再生映像の後に連番を付加し、再生映像を区別することとした。
収録映像とは、映像加工装置2が出力する映像であって、複数の再生映像1,2から加工された1本の映像である。
【0026】
編集コントローラ3は、ノンリニア編集装置1と、映像加工装置2と、VTR再生装置4と,VTR収録装置5との間で同期をとる。具体的には、編集コントローラ3は、収録映像を基準として、再生映像1,2および収録映像の時間が一致するように、後記するコマンドを用いて同期をとる(調走)。
【0027】
また、編集コントローラ3は、前記した調走の他、映像加工装置2に対して加工のタイミングを指示する。さらに、編集コントローラ3は、ノンリニア編集装置1と、VTR再生装置4と、VTR収録装置5とに対して、再生、収録等を指示する。なお、編集コントローラ3は、従来のものと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0028】
VTR再生装置(リニア編集装置)4は、装填されたビデオテープに記録された映像を読み出し、これを再生映像2として映像加工装置2に出力する。なお、VTR再生装置4は、従来のものと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0029】
VTR収録装置(リニア編集装置)5は、映像加工装置2から収録映像が入力される。そして、VTR収録装置5は、この収録映像を、装填されたビデオテープに記録する。なお、VTR収録装置5は、従来のものと同様であるため、詳細な説明を省略する。
以下の説明において、VTR再生装置4やVTR収録装置5を、リニア編集装置と呼ぶことがある。
【0030】
<コマンドの具体例>
以下、図2を参照し、映像編集システム100で用いられるコマンドの具体例を説明する(適宜図1参照)。
【0031】
「STATUS SENSE」は、編集コントローラ3からノンリニア編集装置1およびリニア編集装置の状態を問い合わせるコマンドである。
【0032】
「STATUS SENSE DATA」は、ノンリニア編集装置1およびリニア編集装置の状態を編集コントローラ3に通知する。
【0033】
「CURRENT TIME SENSE(TC)」は、絶対時間により、ノンリニア編集装置1およびリニア編集装置の再生位置(時間情報)を問い合わせるコマンドである。
【0034】
「CURRENT TIME DATA(TC)」は、絶対時間により、ノンリニア編集装置1およびリニア編集装置の再生位置(時間情報)を編集コントローラ3に通知する。
【0035】
「CURRENT TIME SENSE(CTL)」は、相対時間により、ノンリニア編集装置1およびリニア編集装置の再生位置(時間情報)を問い合わせるコマンドである。
【0036】
「CURRENT TIME DATA(CTL)」は、相対時間により、ノンリニア編集装置1およびリニア編集装置の再生位置(時間情報)を編集コントローラ3に通知する。
【0037】
制御コマンドは、編集コントローラ3がノンリニア編集装置1およびリニア編集装置に対して、映像の再生または停止等を指令するコマンドである。なお、制御コマンドの詳細は、後記する。
【0038】
コマンド応答は、ノンリニア編集装置1およびリニア編集装置が制御コマンドを受信した結果を編集コントローラ3に通知する。具体的には、コマンド応答として、制御コマンドを受け付けた場合は「ACK」を通知し、制御コマンドを受け付けできない場合には「NAK」を通知する。
【0039】
ここで、本来、「CURRENT TIME DATA(TC)」には再生位置(時間情報)が絶対時間で格納され、「CURRENT TIME DATA(CTL)」には再生位置(時間情報)が相対時間で格納される。このとき、編集コントローラ3は、「CURRENT TIME DATA(TC)」の値が不正な場合、どれだけ時間が経過したかを確認するために「CURRENT TIME DATA(CTL)」を参照する。しかし、ノンリニア編集装置1では、この絶対時間が不正な値になることがなく、かつ、編集コントローラ3での時間経過の確認にも問題がないため、これら2個のコマンドに同じ値の時間情報を格納する。
【0040】
<制御コマンドの具体例>
以下、図3を参照し、制御コマンドの具体例について説明する。
「DEVICE TYPE REQUEST」は、機器の種類を問い合わせる制御コマンドである。
【0041】
「COLOR FRAME SELECT」は、カラーフレームを設定する制御コマンドである。
【0042】
「SERVO REFERRENCE SELECT」は、サーボ基準を設定する制御コマンドである。
「HEAD SELECT」は、ヘッドを選択する制御コマンドである。
【0043】
「CUE UP WITH DATA」は、映像の指定位置にジャンプ(頭だし)する制御コマンドである。
「PLAY」は、映像を再生する制御コマンドである。
「VAR FWD」は、調走のために、速度を指定する制御コマンドである。
【0044】
「EDIT ON」は、収録を開始する制御コマンドである。
「EDIT OFF」は、収録を停止する制御コマンドである。
「STOP」は、映像の再生を停止する制御コマンドである。
「ANTI−CLOG TIMER ENABEL」は、ヘッド保護用のタイマーを有効にする制御コマンドである。
【0045】
なお、編集コントローラ3は、ノンリニア編集装置1およびリニア編集装置を区別することなく制御コマンドを送信する。従って、ノンリニア編集装置1は、ビデオテープ(VTR)で固有の制御コマンド(例えば、「HEAD SELECT」等)を受信しても、必ずしも動作を行うとは限らない。
【0046】
[ノンリニア編集装置の構成]
図1に戻り、ノンリニア編集装置1の構成について説明する。図1に示すように、ノンリニア編集装置1は、出力手段10と、通信手段20と、記憶手段30と、演算手段40とを備える。
【0047】
出力手段10は、映像加工装置2に再生映像1を出力するインタフェースである。
通信手段20は、編集コントローラ3との間で、コマンドを送受信するインタフェースである。また、通信手段20は、時間情報算出手段41が算出した時間情報を編集コントローラ3に送信する。
【0048】
記憶手段30は、再生映像1を記憶するハードディスクまたはメモリデバイスである。また、記憶手段30は、後記するプリロール時間、再生/収録開始時間、編集遅延時間等のパラメータを記憶してもよい(不図示)。なお、これらパラメータは、手動で設定される。
【0049】
図1に示すように、演算手段40は、時間情報算出手段41と、編集モード判定手段42と、映像再生制御手段43と、映像編集手段44とを備える。
【0050】
時間情報算出手段41は、後記する編集モード判定手段42から編集モードであるか否かを示す判定結果が入力される。そして、時間情報算出手段41は、この判定結果が編集モードであることを示す場合、制御コマンドで指定された再生速度と経過時間とに基づいて、時間情報を算出する。具体的には、時間情報算出手段41は、再生速度が等倍再生を示すときは経過時間の値で時間情報を算出する。また、時間情報算出手段41は、再生速度が等倍再生より遅くなるほど経過時間を遅延させた値で時間情報を算出する。そして、時間情報算出手段41は、再生速度が等倍再生より速いほど経過時間を先に進めた値で時間情報を算出する。
【0051】
また、時間情報算出手段41は、算出した時間情報を、図3の「CURRENT TIME DATA(TC)」および「CURRENT TIME DATA(CTL)」に格納し、通信手段20を介して編集コントローラ3に送信する。なお、時間情報の算出の具体例は、後記する。
【0052】
なお、編集モードでない場合、時間情報算出手段41は、従来のノンリニア編集装置と同様に映像に付加された時間情報を参照して、これを編集コントローラ3に送信してもよい。
【0053】
編集モード判定手段42は、通信手段20を介して、編集コントローラ3から制御コマンドを受信する。そして、編集モード判定手段42は、制御コマンドとして、図3の「SERVO REFERRENCE SELECT」を受信した場合、編集モードであると判定し、その判定結果を時間情報算出手段41および映像編集手段44に出力する。
【0054】
また、編集モード判定手段42は、編集モードと判定した後、制御コマンドとして、図3の「STOP」を受信した場合、編集モードの終了と判定する。そして、編集モード判定手段42は、編集モードでないことを示す判定結果を時間情報算出手段41および映像編集手段44に出力する。
【0055】
映像再生制御手段43は、通信手段20を介して、編集コントローラ3から制御コマンドを受信する。そして、映像再生制御手段43は、この制御コマンドに基づいて、各種制御(映像の再生・停止・指定時間へジャンプ)を行う。例えば、映像再生制御手段43は、「PLAY」を受信した場合、等倍再生を行う。また、例えば、映像再生制御手段43は、「VAR FWD」を受信した場合、この制御コマンドで指定された速度に応じて、低速再生又は高速再生を行う。さらに、映像再生制御手段43は、編集コントローラ3からコマンドに対して、図2の「STATUS SENSE DATA」等のコマンドを返送する。
【0056】
なお、映像再生制御手段43は、時間情報算出手段41と独立して各種制御を行う。また、映像再生制御手段43の機能は、従来のノンリニア編集装置と同様のものであるため、詳細な説明を省略する。
【0057】
映像編集手段44は、編集モード判定手段42から判定結果が入力される。そして、映像編集手段44は、この判定結果が編集モードでないことを示す場合、例えば、下記(1)〜(5)の機能により、映像を編集する。
なお、映像編集手段44は、従来の編集ソフトウェアをノンリニア編集装置1にインストールすることで実現できるため、詳細な説明を省略する。
【0058】
(1)映像を任意の位置から任意の長さで時間軸に沿って並べる機能
(2)映像を再度並べ替え、および、削除する機能
(3)映像を加工(変形、拡大、縮小、ぼかし、色調の変更、フェード、ページめくり等)する機能
(4)映像同士を重ね合わせる機能(完全に上に重ね合わせる、または、ピクチャーインピクチャーではめ込む)
(5)映像に字幕を重ねる(テロップ)機能
【0059】
ここで、前記した判定結果が、編集モードのときは、映像編集システム100として編集を行うことを示し、編集モードでないときは、ノンリニア編集装置1内で編集を行うことを示す。つまり、ノンリニア編集装置1は、編集モードのとき、編集コントローラ3からの制御コマンドに応じて単に映像を再生し、編集モードでないとき、編集コントローラ3から独立して、映像を編集することができる。
【0060】
[ノンリニア編集装置の動作:制御コマンドなし]
以下、図4を参照し、制御コマンドの送受信がない場合におけるノンリニア編集装置1と編集コントローラ3との動作を説明する(適宜図1〜図3参照)。なお、1フレーム時間は、例えば、約33ミリ秒である。
【0061】
編集コントローラ3は、「STATUS SENSE」をノンリニア編集装置1に送信する(ステップS1)。
【0062】
ノンリニア編集装置1は、映像再生制御手段43によって、「STATUS SENSE DATA」を編集コントローラ3に送信する(ステップS2)。
【0063】
編集コントローラ3は、「CURRENT TIME SENSE(TC)」をノンリニア編集装置1に送信する(ステップS3)。
【0064】
ノンリニア編集装置1は、時間情報算出手段41によって、「CURRENT TIME DATA(TC)」に再生位置(時間情報)を格納し、編集コントローラ3に送信する(ステップS4)。
【0065】
編集コントローラ3は、「CURRENT TIME SENSE(CTL)」をノンリニア編集装置1に送信する(ステップS5)。
【0066】
ノンリニア編集装置1は、時間情報算出手段41によって、「CURRENT TIME DATA(CTL)」に再生位置(時間情報)を格納し、編集コントローラ3に送信する(ステップS6)。
【0067】
[ノンリニア編集装置の動作:制御コマンドあり]
以下、図5を参照し、制御コマンドの送受信がある場合におけるノンリニア編集装置1と編集コントローラ3との動作を説明する(適宜図1〜図3参照)。なお、ステップS1〜S6は、図4と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
編集コントローラ3は、制御コマンド(図3参照)をノンリニア編集装置1に送信する(ステップS7)。
ノンリニア編集装置1は、映像再生制御手段43によって、コマンド応答(ACKまたはNAK)を編集コントローラ3に送信する(ステップS8)。
【0069】
以上のように、ノンリニア編集装置1および編集コントローラ3は、制御コマンドの送受信がない場合には図4の動作、または、制御コマンドの送受信がある場合には図6の動作を、1フレーム時間毎に繰り返し行う。
【0070】
<時間情報の算出の具体例>
以下、図6および図7を参照し、ノンリニア編集装置1による時間情報の算出の具体例を説明する(適宜図1参照)。なお、図6および図7では、時間情報は、「時:分:秒:フレーム時間」の形式で表される。このとき、このフレーム時間は、30進法となっている。
【0071】
なお、図6および図7では、時間情報の算出に関係する制御コマンドのみを図示した。ここで、同じ種類の制御コマンドを複数回受信するので、各制御コマンドを区別するため、制御コマンドの後に受信回数を示す数値を付加した。例えば、「VAR FWD2」は、2回目に受信した制御コマンド「VAR FWD」であることを示す。
【0072】
まず、図6の前提条件を説明する。
編集コントローラ3の収録開始点が、10:00:00:00であるとする。このため、編集コントローラ3は、この収録開始点を図3の「CUE UP WITH DATA」に格納し、ノンリニア編集装置1に送信したとする。
【0073】
編集コントローラ3のプリロール時間が、00:00:05:00であるとする。このため、ノンリニア編集装置1は、編集コントローラ3と同じ値のプリロール時間が設定されている。
【0074】
ノンリニア編集装置1は、再生/収録開始時間が00:00:02:00に設定されている。
編集コントローラ3の編集遅延時間(「EDIT ON」および「EDIT OFF」を受信してから実行するまでの時間)が00:00:00:02であるとする。このため、ノンリニア編集装置1は、編集コントローラ3と同じ値の編集遅延時間が設定されている。
【0075】
以下、時間情報の算出を具体的に説明する
時間情報算出手段41は、編集コントローラ3の収録開始点(「CUE UP WITH DATA」に格納されている収録開始点)から、プリロール時間を減算して、再生開始点を算出する。図6の例では、時間情報算出手段41は、下記の式(1)で示すように、再生開始点として、09:59:55:00を算出する。
【0076】
09:59:55:00=10:00:00:00−00:00:05:00
・・・式(1)
【0077】
また、時間情報算出手段41は、再生開始点にプリロール時間を加算してから再生/収録開始時間を減算し、再生開始実行点を算出する。図6の例では、時間情報算出手段41は、下記の式(2)で示すように、再生開始実行点として、09:59:58:00を算出する。
【0078】
09:59:58:00=09:59:55:00+00:00:05:00
−00:00:02:00・・・式(2)
【0079】
また、時間情報算出手段41は、再生開始点にプリロール時間を加算して、収録開始点を算出する。図6の例では、時間情報算出手段41は、下記の式(3)で示すように、収録開始点として、10:00:00:00を算出する。
【0080】
10:00:00:00=09:59:55:00+00:00:05:00
・・・式(3)
【0081】
ここで、再生開始点から時系列に沿って説明する。
まず、この再生開始点で、ノンリニア編集装置1が「PLAY1」を受信したとする。すると、時間情報算出手段41は、フレーム時間単位でカウントを開始し、再生開始点を基準とした経過時間を算出する。この「PLAY1」が等倍再生を意味することから、図7(a)に示すように、時間情報算出手段41は、経過時間を遅らせる、または、経過時間を先に進めることはせずに、経過時間の値をそのまま時間情報として用いる。
【0082】
その後、ノンリニア編集装置1が「VAR FWD1」を受信したとする。この「VAR FWD1」は、再生速度が0.88倍(低速再生)で指定されている。ここで、時間情報算出手段41は、再生速度が遅いほど、経過時間を遅延させた値で時間情報を算出する。具体的には、時間情報算出手段41は、09:59:55:16という同一の時間情報を2回算出し、その後、09:59:56:00という同一の時間情報を2回算出する(図7の太字部分)。言い換えると、時間情報算出手段41は、この「VAR FWD1」に応じて、時間情報を、経過時間を2フレーム時間だけ遅延させた値とする。なお、再生速度が1未満のときに低速再生となり、1を越えたときに高速再生となる。
【0083】
その後、ノンリニア編集装置1が「VAR FWD2」を受信したとする。この「VAR FWD2」は、再生速度が1.08倍(高速再生)で指定されている。ここで、時間情報算出手段41は、再生速度が速いほど、経過時間を先に進ませた値で時間情報を算出する。具体的には、時間情報算出手段41は、時間情報として、09:59:56:03を飛ばして09:59:56:04を算出し、09:59:57:00を飛ばして09:59:57:01を算出し、09:59:57:14を飛ばして09:59:57:15を算出する(図7の太字部分)。言い換えると、時間情報算出手段41は、この「VAR FWD2」に応じて、時間情報を、経過時間を3フレーム時間だけ先に進めた値とする。
【0084】
その後、ノンリニア編集装置1が「PLAY2」を受信したとする。すると、時間情報算出手段41は、「PLAY1」と同様に時間情報を算出する。
【0085】
ここで、10:00:09:28のときに「EDIT OFF」を受信したとする。この場合、時間情報算出手段41は、この「EDIT OFF」を受信した時間に編集遅延時間を加算して、収録終了点を算出する。図6の例では、時間情報算出手段41は、下記の式(4)で示すように、収録終了点として、10:00:10:00を算出する。
【0086】
10:00:10:00=10:00:09:28+00:00:00:02
・・・式(4)
【0087】
さらに、10:00:12:00のときに「STOP」を受信したとする。すると、時間情報算出手段41は、この「STOP」を受信したときを停止点とし、時間情報の算出を終了する。
【0088】
ここで、ノンリニア編集装置1とVTR再生装置4とVTR収録装置5との同期について、簡単に補足する。まず、ノンリニア編集装置1は、映像再生制御手段43によって、「PLAY1」を受信した映像を等倍再生し、「VAR FWD1」を受信したら映像を低速再生する。そして、ノンリニア編集装置1は、映像再生制御手段43によって、「VAR FWD2」を受信したら映像を高速再生し、「PLAY2」を受信したら映像を等倍再生する。この間、VTR再生装置4およびVTR収録装置5は、編集コントローラ3からの制御コマンドに応じて、再生開始点から再生開始実行点までの間で、再生速度を変えながらビデオテープの位置を合わせておく。
【0089】
つまり、映像編集システム100は、再生開始実行点までに、ノンリニア編集装置1、VTR再生装置4およびVTR収録装置5を同期させておき、収録可能な状態にしておく。そして、映像編集システム100は、再生開始実行点以後、ノンリニア編集装置1およびVTR再生装置4が映像を等倍再生しながら、VTR収録装置5が収録を行う。従って、図6に示すように、映像編集システム100は、各装置の間で、再生開始点、収録開始点、収録終了点および停止点のそれぞれが同じ位置になる。
【0090】
以上のように、本発明の第1実施形態に係るノンリニア編集装置1は、編集モードの場合だけ、制御コマンド(「PLAY」および「VAR FWD」)で指定された再生速度と経過時間とに基づいて時間情報を算出する。このように、ノンリニア編集装置1は、映像に付加された時間情報を参照しないので、可変速再生のための映像生成およびバッファ制御処理に伴う演算負荷を低減しながら、正確性が高い時間情報を算出することができる。これによって、ノンリニア編集装置1は、調走を高速化でき、既存の映像加工装置2および編集コントローラ3に適用することができる。
【0091】
なお、第1実施形態では、ノンリニア編集装置1を1台として説明したが、これに限定されない。例えば、映像編集システム100は、さらに、VTR再生装置4をノンリニア編集装置1で置き換えてもよい。また、リニア編集装置の全てを1台のノンリニア編集装置1で置き換えてもよい。
【0092】
[変形例:一本化と試写との並行処理]
以下、図8〜図10を参照し、図1のノンリニア編集装置1の変形例を説明する(適宜図1参照)。図8に示すように、ノンリニア編集装置1Bでの編集結果は、素材ファイルA〜Cを順番に並べたような、編集情報となっている。当然、この編集情報をそのまま放送することはできないため、ノンリニア編集装置1Bは、1本の一本化素材(放送用素材ファイル)となるように出力する。このような作業が一本化と呼ばれる。そして、この一本化素材を放送するとき、これが正しく記憶されているか、および、この内容に問題がないかを確認するため、一本化素材を試写する必要がある。
【0093】
なお、素材ファイルとは、ノンリニア編集装置1内にある物理的なファイルである。
また、一本化素材とは、これら複数の素材ファイルを結合して生成した1個のファイルである。
【0094】
ここで、従来のノンリニア編集装置は、一本化の際、素材ファイルと同じ時間か、それ以上の時間が必要になる。また、従来のノンリニア編集装置は、試写の際、一本化素材を再生するため、素材ファイルと同じ時間が必要になる。つまり、図9(a)に示すように、従来のノンリニア編集装置は、一本化および試写の作業を終了するまでに、素材ファイルの2倍以上の時間が必要になる。そこで、図9(b)に示すように、ノンリニア編集装置1Bは、一本化と試写とを並行して行い、これら試写が終了する時間が早くなるようにした。
【0095】
以下、図10を参照し、一本化と試写との並行処理について説明する。なお、図10では、素材ファイルAが一本化素材と同じフォーマットであり、素材ファイルBが一本化素材と違うフォーマットであり、素材ファイルCには効果が付加されている。また、図10では、一本化素材に書き込まれた部分をハッチングして図示した。
【0096】
ノンリニア編集装置1Bは、素材ファイルAを読み込んだ後、一本化素材として、そのまま書き込む(ステップS11)。このとき、ノンリニア編集装置1Bは、一本化素材として書き込まれた部分(図10の斜線部)を読み出して(ステップS12)、これをデコードし、(ステップS13)、試写する(ステップS14)。
【0097】
また、ノンリニア編集装置1Bは、素材ファイルAの試写に並行して、素材ファイルBをデコードする(ステップS15)。そして、ノンリニア編集装置1Bは、デコードした素材ファイルBを一本化素材と同じフォーマットでエンコードして、一本化素材に書き込む(ステップS16)。
【0098】
また、ノンリニア編集装置1Bは、素材ファイルCをデコードする(ステップS17)。そして、ノンリニア編集装置1Bは、この素材ファイルCに効果を付加する(ステップS18:レンダリング)。さらに、ノンリニア編集装置1Bは、効果を付加した素材ファイルCを一本化素材と同じフォーマットでエンコードして、一本化素材に書き込む(ステップS19)。
【0099】
以上のように、本発明の変形例に係るノンリニア編集装置1Bは、素材ファイルA〜Cが、先頭から順次一本化素材に書き込まれる。そこで、ノンリニア編集装置1Bは、一本化素材の全部分が書き込まれるのを待つことなく、一本化素材に書き込まれ部分を順次読み込みて、これの試写を開始する。このように、ノンリニア編集装置1Bは、一本化と試写とを並行して行うことができる。
【0100】
(第2実施形態)
図11を参照して、映像編集システム101について、第1実施形態と異なる点を主に説明する。図11に示すように、映像編集システム101は、図1のノンリニア編集装置1とVTR再生装置4とVTR収録装置5とを1台のノンリニア編集装置1Cに置き換えたものであり、ノンリニア編集装置1Cと、映像加工装置2Cと、編集コントローラ3Cとを備える。
【0101】
映像加工装置2Cは、再生映像1と再生映像2とがノンリニア編集装置1Cから入力される。そして、映像加工装置2Cは、これら2本の再生映像1,2を1本の収録映像に加工してノンリニア編集装置1Cに出力する。なお、映像加工装置2Cは、図1と同様のものであるため、詳細な説明を省略する。
【0102】
編集コントローラ3Cは、再生映像1,2および収録映像を同期させるように、制御コマンドをノンリニア編集装置1Cに出力する。なお、編集コントローラ3Cは、図1と同様のものであるため、詳細な説明を省略する。
【0103】
図11に示すように、ノンリニア編集装置1Cは、再生映像1出力手段(映像出力手段)11と、再生映像2出力手段(映像出力手段)12と、収録映像入力手段(映像入力手段)13と、通信手段20と、記憶手段30Cと、演算手段40Cとを備える。なお、通信手段20は、図1と同様のものであるため、詳細な説明を省略する。
【0104】
再生映像1出力手段11は、映像加工装置2に再生映像1を出力するインタフェースである。
再生映像2出力手段12は、映像加工装置2に再生映像2を出力するインタフェースである。
収録映像入力手段13は、映像加工装置2から収録映像が入力されるインタフェースであり、入力された収録映像を記憶手段30に書き込む。
つまり、ノンリニア編集装置1Cは、再生映像1,2および収録映像のそれぞれに専用のインタフェースを備える。なお、この専用のインタフェースの詳細は、後記する。
【0105】
記憶手段30Cは、再生映像1,2および収録映像を記憶するハードディスクまたはメモリデバイスである。また、記憶手段30Cは、差替データおよび各種パラメータを記憶してもよい。なお、差替データとは、収録映像における修正部分の映像である
【0106】
図11に示すように、演算手段40Cは、時間情報算出手段41Cと、編集モード判定手段42と、映像再生制御手段43と、映像編集手段44Cと、差替手段45とを備える。なお、編集モード判定手段42および映像再生制御手段43は、図1の各手段と同様のものであるため、詳細な説明を省略する。
【0107】
時間情報算出手段41Cは、再生映像2および収録映像について、再生映像1と同様の手順で時間情報を個別に算出して編集コントローラ3に送信する(図6参照)。また、時間情報算出手段41Cは、再生映像1,2および収録映像の収録開始点や収録終了点を映像編集手段44Cに出力する。さらに、時間情報算出手段41Cは、差替データの収録開始点や収録終了点を再生映像1と同様の手順で算出し、これを差替手段45に出力する。
【0108】
映像編集手段44Cは、再生映像1と再生映像2と収録映像とのそれぞれにトラックを割り当てた後、編集を行う。ここで、トラックとは、映像や音声のそれぞれを映像編集手段44C内で抽象的に表したものであり、従来の編集ソフトウェアにおけるトラックと同様のものである。
【0109】
差替手段45は、一本化素材(収録映像)に対して、差替データの差し替えを行う。なお、差替手段45としては、例えば、特開2008−124932号公報に記載された発明を用いることができる。
【0110】
<差替処理>
以下、図12を参照し、差替手段45による差替処理の詳細を説明する(適宜図11参照)。なお、図12では、差替データを符号αで示し、一本化素材を符号βで示し、差し替え後の一本化素材を符号β´で示した。
【0111】
前記したように、差替手段45は、差替データα1〜3の収録開始点および収録終了点が、時間情報算出手段41Cから入力される。これによって、差替手段45は、図7(a)に示すように、差替データα1〜3の収録開始点および収録終了点から、差替データα1〜3を一本化素材βのどの位置で差し替えるのかがわかる。そして、図7(b)に示すように、差替手段45は、差替データα1〜3を差し替えて、差し替え後の一本化素材β´を生成する。
【0112】
なお、差替データα1〜3にエフェクトが付加されている場合、または、差替データα1〜3のファイル形式が一本化素材βと異なる場合、差替手段45は、レンダリングを行った後に差替処理を行ってもよい。
【0113】
ここで、映像制作の現場では、ハードディスク、メモリデバイス等のテープレスメディアに収録された編集済みの一本化素材に対して、従来のノンリニア編集装置を用いて一部修正を行う場合がある。このとき、従来のノンリニア編集装置は、一本化素材において、修正された一部映像(差替データ)の差し替え位置を手動で設定する必要があり、差し替え作業に手間がかかる。しかし、ノンリニア編集装置1Cは、差し替え位置を手動で設定する必要がないので、差し替えを高速、かつ、簡易に行うことができる。
【0114】
<専用のインタフェースおよびトラックの割り当て>
以下、図13および図14を参照し、ノンリニア編集装置1Cにおいて、専用のインタフェースおよびトラックの割り当ての詳細を説明する(適宜図11参照)。なお、図13では、映像編集手段44Cは、例えば、映像と同数となる3個のトラック1〜3を有することとする。
【0115】
前記したように、差替手段45は、再生映像1,2および収録映像の収録開始点および収録終了点が、時間情報算出手段41Cから入力される。そして、図13に示すように、映像編集手段44Cは、再生映像1の収録開始点から収録終了点までの位置において再生映像1をトラック2に割り当てる。また、映像編集手段44Cは、再生映像2の収録開始点から収録終了点までの位置において、再生映像2をトラック2に割り当てる。
【0116】
また、収録の際、図14に示すように、映像編集手段44Cは、収録映像の収録開始点および収録終了点の位置において、収録映像をトラック1に割り当てる。なお、映像編集手段44Cは、どのトラックにどの映像を割り当てるか、手動で設定される。
【0117】
以上のように、本発明の第2実施形態に係るノンリニア編集装置1Cは、映像毎に専用のインタフェースを備えると共に、それぞれの映像にトラックを割り当てる。このため、ノンリニア編集装置1Cは、映像加工装置2に対して、再生映像1,2および収録映像を独立して入出力できる。これによって、ノンリニア編集装置1Cは、リニア編集装置の全てを、これ1台で置き換えることができる。
【0118】
(第3実施形態)
図15を参照して、映像編集システム102について、第2実施形態と異なる点を主に説明する。図15に示すように、映像編集システム102は、出力バッファ52に格納した編集映像又は収録映像のプレビューを行うものであり、ノンリニア編集装置1Dと、映像加工装置2Dと、編集コントローラ3Dと、映像モニター(映像表示手段)Mとを備える。なお、映像加工装置2Dおよび編集コントローラ3Dは、図11の各手段と同様のものであるため、詳細な説明を省略する。
【0119】
映像モニターMは、ノンリニア編集装置1Dから出力された映像を表示するモニターである。つまり、映像編集システム102では、制作者が、映像モニターMに表示された映像をプレビューすることができる。
【0120】
図15に示すように、ノンリニア編集装置1Dは、再生映像1出力手段(映像出力手段)11と、再生映像2出力手段(映像出力手段)12と、収録映像入力手段(映像入力手段)13Dと、通信手段20と、記憶手段30Dと、演算手段40Dとを備える。なお、再生映像1出力手段11、再生映像2出力手段12および通信手段20は、図11の各手段と同様のものであるため、詳細な説明を省略する。
【0121】
収録映像入力手段13Dは、映像加工装置2Dから収録映像が入力されると共に、これを記憶手段30Dおよび入力バッファ51に書き込む。
【0122】
記憶手段30Dは、再生映像1,2および収録映像を記憶するハードディスクまたはメモリデバイスである。また、記憶手段30Dは、各種パラメータを記憶してもよい(不図示)。
【0123】
図15に示すように、演算手段40Dは、時間情報算出手段41Dと、編集モード判定手段42と、映像再生制御手段43と、映像編集手段44Dと、区間判定手段46と、バッファ制御手段47とを備える。なお、編集モード判定手段42および映像再生制御手段43は、図1の各手段と同様のものであるため、詳細な説明を省略する。
【0124】
時間情報算出手段41Dは、再生映像2および収録映像について、再生映像1と同様の手順で時間情報を算出して編集コントローラ3に送信する(図6参照)。そして、時間情報算出手段41Dは、算出した再生映像1の再生開始点、収録開始点および収録終了点と、経過時間とを区間判定手段46に出力する。
【0125】
映像編集手段44Dは、再生映像と同じ映像を編集すると共に、後記するバッファ制御手段47からの編集映像出力指令が入力されたときに、編集映像をバッファ制御手段47に出力する。なお、編集映像とは、映像編集手段44Dによって編集された再生映像のことである。
【0126】
区間判定手段46は、再生開始点、収録開始点、収録終了点および経過時間が時間情報算出手段41Dから入力される。また、区間判定手段46は、この経過時間が再生開始点から収録開始点までの間のとき、第1区間と判定する。そして、区間判定手段46は、この経過時間が収録開始点から収録終了点までの間のとき、第2区間と判定する。さらに、区間判定手段46は、経過時間が収録終了点から停止点までの間のときに第3区間と判定する。その後、区間判定手段46は、第1区間、第2区間または第3区間の何れであるかを示す判定結果を、バッファ制御手段47に出力する。
【0127】
バッファ制御手段47は、区間判定手段46から判定結果が入力される。判定結果が第1区間または第3区間を示す場合、バッファ制御手段47は、編集映像出力指令を映像編集手段44Dに出力する。すると、映像編集手段44Dから編集映像が入力されるので、バッファ制御手段47は、この編集映像を出力バッファ52に書き込む。
【0128】
一方、判定結果が第2区間を示す場合、バッファ制御手段47は、入力バッファ51に記憶されている収録映像を読み出す。そして、バッファ制御手段47は、この収録映像を出力バッファ52に書き込む。
【0129】
バッファ50は、入力バッファ51と、出力バッファ52とを備える。
入力バッファ51は、収録映像入力手段13Dによって書き込まれた収録映像を記憶するバッファメモリである。
出力バッファ52は、編集映像又は収録映像の何れか一方を記憶するバッファメモリである。
【0130】
バッファ出力手段60は、出力バッファ52に記憶されている編集映像又は収録映像を読み出して、これを映像モニターMに出力する。
【0131】
以下、図16を参照し、区間判定手段46の判定結果と、バッファ出力手段60の出力映像との関係について説明する。第1区間であれば、バッファ出力手段60は、編集映像を映像モニターMに出力する。また、第2区間であれば、バッファ出力手段60は、収録映像を映像モニターMに出力する。さらに、第3区間であれば、バッファ出力手段60は、編集映像を映像モニターMに出力する。
【0132】
以上のように、本発明の第3実施形態に係るノンリニア編集装置1Dは、プレビューを可能とし、制作者が映像の制作をより効率的に行うことが可能となる。
【0133】
なお、前記した各実施形態では、2本の再生映像1,2を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、本発明に係るノンリニア編集装置は、再生映像を3本以上としても良い。
【符号の説明】
【0134】
1,1B,1C,1D ノンリニア編集装置
2,2C,2D 映像加工装置
3,3C,3D 編集コントローラ
4 VTR再生装置(リニア編集装置)
5 VTR収録装置(リニア編集装置)
10 出力手段
11 再生映像1出力手段(映像出力手段)
12 再生映像2出力手段(映像出力手段)
13,13D 収録映像入力手段(映像入力手段)
20 通信手段
30,30C,30D 記憶手段
40,40C,40D 演算手段
41,41C,41D 時間情報算出手段
42 編集モード判定手段
43 映像再生制御手段
44,44C,44D 映像編集手段
45 差替手段
46 区間判定手段
47 バッファ制御手段
50 バッファ
51 入力バッファ
52 出力バッファ
60 バッファ出力手段
100,101,102 映像編集システム
M 映像モニター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生映像を出力する1台以上のノンリニア編集装置と、前記再生映像を含む複数の映像から1の収録映像を生成する映像加工装置と、少なくとも前記ノンリニア編集装置と前記映像加工装置との同期をとる編集コントローラとを備える映像編集システムに用いられる前記ノンリニア編集装置であって、
前記編集コントローラから制御コマンドが入力され、入力された当該制御コマンドが予め設定された編集モードの開始を示すコマンドのときに前記編集モードであると判定する編集モード判定手段と、
前記編集モードのときに、前記制御コマンドで指定された再生速度と算出した再生開始点からの経過時間とに基づいて、映像の再生位置を示す時間情報を、前記再生速度が等倍再生を示すときは前記経過時間の値で、前記再生速度が前記等倍再生より遅くなるほど前記経過時間を遅延させた値で、および、前記再生速度が前記等倍再生より速いほど前記経過時間を先に進めた値で算出する時間情報算出手段と、
前記時間情報算出手段が算出した時間情報を、前記編集コントローラに送信する通信手段と、
を備えることを特徴とするノンリニア編集装置。
【請求項2】
全ての前記再生映像毎に独立して設けられ、かつ、当該再生映像をそれぞれ前記映像加工装置に出力する複数の映像出力手段と、
前記収録映像が前記映像加工装置から入力される映像入力手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のノンリニア編集装置。
【請求項3】
前記映像加工装置から入力された収録映像を記憶する入力バッファと、
前記再生映像と同じ映像を編集する映像編集手段によって編集された編集映像又は前記収録映像の何れか一方を記憶する出力バッファと、
前記経過時間が前記再生開始点から算出した収録開始点までの間のときに第1区間と判定し、前記経過時間が前記収録開始点から算出した収録終了点までの間のときに第2区間と判定し、前記経過時間が前記収録終了点から所定の停止点までの間のときに第3区間と判定する区間判定手段と、
前記第1区間または前記第3区間では前記編集映像を前記出力バッファに書き込み、前記第2区間では前記入力バッファの収録映像を読み出して前記出力バッファに書き込むバッファ制御手段と、
前記出力バッファに書き込まれた前記編集映像又は前記収録映像を映像表示手段に出力するバッファ出力手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のノンリニア編集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−108317(P2011−108317A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261513(P2009−261513)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(506381153)さくら映機株式会社 (5)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】