説明

ノード装置、ネットワークシステム、故障通知方法、およびコンピュータプログラム

【課題】 多数のノード装置が同時に故障した場合であってもネットワーク内での制御負荷集中を回避することを可能とする。
【解決手段】 ノード装置は、自ノード装置と同一のネットワークシステムに含まれるノード装置のうちの少なくとも2つのノード装置の故障を検出した際、他のノード装置に対して、故障中の前記各ノード装置についての故障通知を異なるタイミングで送信する送信タイミング調整部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノード装置、ネットワークシステム、故障通知方法、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークにおいて、あるノード(例えば、ルータ)に故障が発生した場合、それを検知したノードは、故障ノードについての故障通知を他のノードに送信する。故障通知を受け取った他のノードは、故障ノードを迂回する新しい経路を再計算する。他のノードは、最新経路情報に基づいて、通信を継続させることができる。
【0003】
しかしながら、例えば、ワーム攻撃、設定ミス、バグなどの原因により、多数のノードに同時に故障が発生した場合、ネットワーク内に大量の故障通知が一斉に発生することとなる。すなわち、各ノードに大量の故障通知が同時に通知されることとなる。これにより、各ノードの制御負荷(迂回経路の計算負荷)が増大することが予想される。制御負荷が増すと、CPU(Central Processing Unit)の過負荷やメモリ容量の不足等の危険性が高まり、さらなるノードの故障(例えば、ルータのクラッシュやセッションのリセット)が誘発される虞がある。事実、近年、このような障害が頻繁に発生していることが報告されている。
【0004】
制御負荷の集中を軽減するための技術の一例として、Route Flap Damping(非特許文献1)という技術を挙げることができる。この技術は、経路変更や、故障と復旧を頻繁に繰り返すノードに対して、一定時間が経過するまではその経路もしくはノードについての故障通知を転送させないというペナルティを与える技術である。
【0005】
また、特許文献1は、通信装置に対して実行された措置の記録を参照して措置を決定することで、同一装置に対する同一措置を回避し、システムの処理性能低下を抑える技術について記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−260729号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】C. Villamizar、R. Chandra、 Govindan、「BGP Route Flap Damping」、1998年11月、RFC
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1記載の技術は、ある一つのノードにおける頻繁な故障と復旧による制御負荷集中に対しては有効であるかもしれないが、上述したような多数のノードの一斉故障により発生する制御負荷集中の軽減に対してはあまり効果がないと考えられる。
【0009】
また、特許文献1の技術は、同一装置に対する重複措置の実行については効果があるかもしれない。しかしながら、上述した、ノードの一斉故障に伴う故障通知の大量発生は、あくまで同一装置に対する同一措置ではないので、特許文献1の技術では、この問題を解決することは困難である。
【0010】
本発明は、多数のノード装置が同時に故障した場合であってもネットワーク内での制御負荷集中を回避することが可能な、ノード装置、ネットワークシステム、故障通知方法、およびコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のノード装置は、自ノード装置と同一のネットワークシステムに含まれるノード装置のうちの少なくとも2つのノード装置の故障を検出した際、他のノード装置に対して、故障中の前記各ノード装置についての故障通知を異なるタイミングで送信する送信タイミング調整部を備える。
【0012】
本発明のネットワークシステムは、複数のノード装置を含むネットワークシステムであって、前記ネットワークシステムに含まれるノード装置のうちの少なくとも2つのノード装置の故障が検出された際、前記所定のノード装置から他のノード装置に対して、故障中の前記各ノード装置についての故障通知を異なるタイミングで送信する。
【0013】
本発明の故障通知方法は、複数のノード装置を含むネットワークシステムにおける故障通知方法であって、前記ネットワークシステムに含まれるノード装置のうちの少なくとも2つのノード装置の故障が検出された際、前記所定のノード装置から他のノード装置に対して、故障中の前記各ノード装置についての故障通知を異なるタイミングで送信する。
【0014】
本発明のコンピュータプログラムは、複数のノード装置を含むネットワークシステムにおける所定のノード装置のコンピュータに、前記ネットワークシステムに含まれるノード装置のうちの少なくとも2つのノード装置の故障が検出された際、前記所定のノード装置から他のノード装置に対して、故障中の前記各ノード装置についての故障通知を異なるタイミングで送信する処理を、実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、多数のノード装置が同時に故障した場合であってもネットワーク内での制御負荷集中を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るノード装置の構成例を説明するためのブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るノード装置の構成例を説明するためのブロック図である。
【図3】図2に示すノード装置の動作例(パケット受信時の動作)を説明するためのフローチャートである。
【図4】図3に示すフローチャートの説明を補足するための補足図であり、(a)は、本説明で用いるネットワークの構成図(ノード接続図)であり、(b)は、そのネットワークにおけるノード毎の通信量の変化例を示す表である。
【図5】図2に示すノード装置の動作例(パケット送信時の動作)を説明するためのフローチャートである。
【図6】図5に示すフローチャートの説明を補足するための補足図であり、(a)は、本説明で用いるネットワークの構成図(ノード接続図)であり、(b)は、そのネットワークにおけるノード毎の通信量の変化例を示す表である。
【図7】図2に示すノード装置の動作例(故障発生時の動作)を説明するためのフローチャートである。
【図8】図7を用いて説明した故障発生時の動作に関してのより具体的な説明で使用されるネットワークの構成図(ノード接続図)である。
【図9】第2の実施形態に関し、図8におけるノードn1の隣接ノードの重要度の一例を示す表である。
【図10】図8に示すネットワークにおいて故障が発生した場合の図である。
【図11】中心度の考慮がされない場合における迂回通信トラフィックの例を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係るノード装置の構成例を説明するためのブロック図である。
【図13】図12に示すノード装置の動作例(次数の算出動作)を示すフローチャートである。
【図14】図12に示すノード装置の動作例(故障発生時の動作)を示すフローチャートである。
【図15】第3の実施形態に関し、図8におけるノードn1の隣接ノードの重要度の一例を示す表である。
【図16】第3の実施形態における故障通知の送信順序の決定条件例である。
【図17】第3の実施形態による効果を説明するための図である。
【図18】本発明の第4の実施形態に係るノード装置の構成例を説明するためのブロック図である。
【図19】図18に示すノード装置の動作例(Closeness中心度の算出動作)を示すフローチャートである。
【図20】第4の実施形態に関し、Closeness中心度の計算の説明に用いるためのネットワークの構成例である。
【図21】本発明の第5の実施形態に係るノード装置の構成例を説明するためのブロック図である。
【図22】図21に示すノード装置の動作例(Betweenness中心度の算出動作)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るノード装置10の構成例を説明するためのブロック図である。ノード装置10は、ネットワークシステム(図1においては不図示)内に存在する所定のノード装置である。このネットワークシステムには、ノード装置10以外に少なくとも2つ以上のノード装置が含まれる。ノード装置10は、送信タイミング調整部12を備える。送信タイミング調整部12は、上記ネットワークシステムに含まれるノード装置のうちの少なくとも2つのノード装置の故障を検出した際、他のノード装置(故障中のノード装置以外のノード装置)に対して、故障中の各ノード装置についての故障通知を異なるタイミングで送信する。尚、上記において、故障ノードは、ノード装置10に隣接しているノードであってもよく、隣接していないノード(例えば、2ホップ以上のノード)であってもよく、場合によっては、両者が混在していてもよい。
【0018】
以上説明した第1の実施形態によれば、各故障ノード装置の故障通知は、時間方向に分散されて通知されるので、ワーム攻撃等により多数のノード装置に同時に故障が発生した場合であっても、所定のノード装置に対して大量の故障通知が同時に到達する事態を回避することができる。すなわち、ネットワーク内での制御負荷集中を回避することが可能となるため、さらなるノード装置の故障を阻止し、適切な経路制御を実行することが可能となる。
【0019】
[第2の実施形態]
図2は、本発明の第2の実施形態に係るノード装置20の構成例を説明するためのブロック図である。ノード装置20は、経路制御部22と、パケット転送部24と、ネットワークインタフェース26−1〜26−nと、を少なくとも備える。
【0020】
経路制御部22は、故障検知部100と、故障数判定部102と、リアルタイムクロック104と、故障通知遅延決定部106と、隣接ノード重要度表108と、通信量測定部110と、故障通知部112と、を少なくとも備える。
【0021】
故障検知部100は、OSPF(Open Shortest Path First)やBGP(Border Gateway Protocol)などの経路制御プロトコルを使用して、ネットワークインタフェース26−1〜26−nに繋がっている、各リンク及び隣接ノードの故障を検知する。故障検知部100は、例えば、隣接ノードから一定時間内に制御メッセージを受信しない場合、あるいは下位レイヤからの切断通知により、隣接ノードが故障していると判断する。尚、制御メッセージは、例えば、BGPの場合はKeep Aliveメッセージであり、OSPFの場合はHelloメッセージである。故障を検知した場合、故障検知部100は、故障が発生している隣接ノードについての情報である「故障ノード情報」を、故障数判定部102へ出力する。
【0022】
故障数判定部102は、「故障ノード情報」に基づいて、隣接ノードの故障数を把握する。そして、故障数判定部102は、故障数に基づいて、各故障通知を異なるタイミングで送信するか、一斉に送信(通常の故障通知)するかを判断し、各々に、場合に応じた処理を実行する。具体的には、故障数が所定の閾値と等しいかあるいは超えている場合、故障数判定部102は、リアルタイムクロック104から「故障検知時刻情報」を取得する。そして、故障数判定部102は、「故障ノード情報」および「故障検知時刻情報」を、故障通知遅延決定部106へ出力する。一方、故障数が所定の閾値を下回る場合、故障数判定部102は、「故障ノード情報」を、故障通知部112へ出力する。
【0023】
リアルタイムクロック104は、故障数判定部102のリクエストに応じて時刻情報を提供する。
【0024】
故障通知遅延決定部106は、故障数判定部102から取得した「故障ノード情報」に基づいて、どの隣接ノードが故障しているかを把握し、それぞれの故障ノードの通信量を、隣接ノード重要度表108から取得する。そして、故障通知遅延決定部106は、得られた各故障ノードの通信量に基づいて各故障ノードの故障通知遅延時間を決定する。故障通知遅延決定部106は、少なくとも、「故障通知遅延時間情報」および「故障検知時刻情報」を、故障通知部112へ出力する。
【0025】
隣接ノード重要度表108には、ネットワークに参加している各ノードについての重要度が記憶されている。第2の実施形態において、重要度は、各ノードとそれらに接続する各隣接ノードとの間の各通信量であるものとする。通信量の測定方法については、後述する。
【0026】
通信量測定部110は、隣接ノードとの間の通信を監視し、その監視結果に基づいて、隣接ノード重要度表108の内容を更新する。具体的には、通信量測定部110は、ネットワークインタフェース26−1〜26−nに入ってくるパケット、もしくは、ネットワークインタフェース26−1〜26−nから出ていくパケットを観測し、隣接ノード重要度表108における各隣接ノードとの通信量をインクリメントする。また、通信量測定部110は、例えば、内部にタイマ(図2において不図示)を保持することができる。そして、通信量測定部110は、タイマ値が一定値以上となった場合、隣接ノード重要度表108における、所定の隣接ノードについての通信量を0にリセットすることもできる。
【0027】
故障通知部112は、故障数判定部102からの「故障ノード情報」に基づいて、通常の故障通知(一斉通知)を行う。また、故障通知部112は、故障通知遅延決定部106からの「故障通知遅延時間情報」および「故障検知時刻情報」に基づいて、各故障通知を異なるタイミングで送信する処理を実行する。具体的には、故障通知部112は、上記各情報に基づいて、各故障ノードの故障通知送信時刻を決定する。故障通知部112は、各送信時刻となる度に、その都度、対応する故障通知を送信する。
【0028】
パケット転送部24は、経路表120を備える。経路表120には、ネットワーク内の各宛先ノードへパケットを送信するとき、最初に送信するノードについての情報が記載されている。
【0029】
以下、第2の実施形態のノード装置20の動作について説明する。パケット受信時の動作、パケット送信時の動作、および故障発生時の動作について、以下、順番に説明する。
【0030】
図3は、図2に示すノード装置20の動作例(パケット受信時の動作)を説明するためのフローチャートである。
【0031】
まず、通信量測定部110は、ネットワークインタフェース26−1〜26−nのいずれかを介してパケット転送部24がパケットを受信したか否かを判定する(ステップS1)。パケットが受信された場合(ステップS1においてYes判定)、通信量測定部110は、受信したパケットのヘッダ情報を参照し、そのパケットを自分に転送したノードがどのノードであるかを特定する(ステップS2)。そして、通信量測定部110は、隣接ノード重要度表108において、特定したノードの通信量をインクリメントする(ステップS3)。ここで、インクリメントする値はどのような値であってもよい。本実施形態では、+1する場合を例に挙げる。
【0032】
通信量測定部110は、特定したノード(転送元のノード)の通信量をインクリメントした後、一定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS4)。一定時間が経過しない場合(ステップS4においてNo判定)、通信量測定部110は、新たなパケットの受信(ステップS1)あるいはパケット送信の有無(図3では不図示)を判定する。一方、一定時間が経過した場合(ステップS4においてYes判定)、通信量測定部110は、そのノードの通信量に変化が有るか否かを判定する(ステップS5)。通信量に変化がある場合(ステップS5においてYes判定)、図3に示す処理を終了する(再びステップS1の処理あるいはパケット送信の有無判定を行っても良い)。一方、通信量に変化が無い場合(ステップS5においてNo判定)、通信量測定部110は、隣接ノード重要度表108において、そのノードの通信量を0にリセットする(ステップS6)。
【0033】
図4は、図3に示すフローチャートの説明を補足するための補足図であり、具体的には、パケット受信時における通信量の測定について説明するための図である。図4(a)は、本説明で用いるネットワークの構成図(ノード接続図)であり、図4(b)は、そのネットワークにおけるノード毎の通信量の変化例を示す表である。図4(a)を参照し、自己のノードAには、隣接ノードB、Cが接続される。この場合、ノードAは、ノードBからパケットを受信するものとする。ここで、パケットの受信とは、ノードAが最終宛先の場合と、ノードAを中継する場合と、を含む。自己のノードAがノードBからパケットを受信した際、ノードAの通信量測定部110は、隣接ノード重要度表108において、ノードBの通信量を1つインクリメントする。具体的には、図4(b)に示すように、ノードBの通信量は、0(パケット受信前)から1(パケット受信後)へと変化する。
【0034】
図5は、図2に示すノード装置20の動作例(パケット送信時の動作)を説明するためのフローチャートである。
【0035】
まず、通信量測定部110は、パケット転送部24がネットワークインタフェース26−1〜26−nのいずれかにパケットを送信したか否かを判定する(ステップS10)。パケットを送信した場合(ステップS10においてYes判定)、通信量測定部110は、経路表120を参照し、パケットの転送先ノードを特定する(ステップS11)。そして、通信量測定部110は、隣接ノード重要度表108において、特定した転送先ノードの通信量をインクリメントする(ステップS12)。ここで、パケット受信時と同様に、インクリメントする値はどのような値であってもよい。本実施形態では、+1する場合を例に挙げる。
【0036】
通信量測定部110は、所定のノード(転送先のノード)の通信量をインクリメントした後、一定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS13)。一定時間が経過しない場合(ステップS13においてNo判定)、通信量測定部110は、新たなパケットの送信(ステップS10)あるいはパケット受信の有無(図5では不図示)を判定する。一方、一定時間が経過した場合(ステップS13においてYes判定)、通信量測定部110は、そのノードの通信量に変化が有るか否かを判定する(ステップS14)。通信量に変化がある場合(ステップS14においてYes判定)、図5に示す処理を終了する(再びステップS1の処理あるいはパケット受信の有無判定を行っても良い)。一方、通信量に変化が無い場合(ステップS14においてNo判定)、通信量測定部110は、隣接ノード重要度表108において、そのノードの通信量を0にリセットする(ステップS15)。
【0037】
図6は、図5に示すフローチャートの説明を補足するための補足図であり、具体的には、パケット送信時における通信量の測定について説明するための図である。図6(a)は、本説明で用いるネットワークの構成図(ノード接続図)であり、図6(b)は、そのネットワークにおけるノード毎の通信量の変化例を示す表である。図6(a)を参照し、自己のノードAには、隣接ノードB、Cが接続される。この場合、ノードAは、ノードCにパケットを送信するものとする。ここで、パケットの送信とは、ノードCが最終宛先の場合と、ノードCを中継する場合と、を含む。自己のノードAがノードCにパケットを送信した際、ノードAの通信量測定部110は、隣接ノード重要度表108において、ノードCの通信量を1つインクリメントする。具体的には、図6(b)に示すように、ノードCの通信量は、0(パケット送信前)から1(パケット送信後)へと変化する。
【0038】
図7は、図2に示すノード装置20の動作例(故障発生時の動作)を説明するためのフローチャートである。
【0039】
故障検知部100は、隣接ノードの故障を検知する(ステップS20)。この場合、故障検知部100は、例えば、隣接ノードから一定時間内に制御メッセージを受信しない場合に隣接ノードが故障していると判断する。故障を検知した場合、故障検知部100は、故障が発生している隣接ノードについての情報である「故障ノード情報」を、故障数判定部102へ出力する。
【0040】
故障数判定部102は、「故障ノード情報」に基づいて隣接ノードの故障数を把握し、故障数が所定の閾値K以上か否かを判定する(ステップS21)。故障数が閾値K未満の場合(ステップS21においてNo判定)、通常の故障通知(一斉通知)処理が実行される(ステップS22)。具体的には、故障数判定部102は、「故障ノード情報」を、故障通知部112へ出力する。故障通知部112は、「故障ノード情報」における全ての故障ノードに対して、故障通知を一斉に送信する。
【0041】
一方、故障数が閾値K以上の場合(ステップS21においてYes判定)、各故障通知を異なるタイミングで送信する処理が実行される。具体的には、故障数判定部102は、リアルタイムクロック104から「故障検知時刻情報」を取得する。そして、故障数判定部102は、「故障ノード情報」および「故障検知時刻情報」を、故障通知遅延決定部106へ出力する(ステップS23)。
【0042】
故障通知遅延決定部106は、各故障ノードの故障通知遅延時間を決定する(ステップS24)。具体的には、故障通知遅延決定部106は、隣接ノード重要度表108から各故障ノードの通信量Xiを取得し、これらの通信量Xiに応じて、それぞれの故障ノードの故障通知遅延時間Diを決定する。そして、故障通知遅延決定部106は、故障通知遅延時間Diおよび故障検知時刻tを、故障通知部112へ出力する(ステップS25)。
【0043】
故障通知部112は、各故障ノードについて、故障通知の送信時刻を決定する(ステップS26)。具体的には、故障通知部112は、各故障検知時刻tに各通知遅延Diを足した時刻を、各故障通知の送信時刻とする。故障通知部112は、各送信時刻となる度に、その都度、対応する故障通知を送信する(ステップS27)。
【0044】
以下、図7を用いて説明した故障発生時の動作に関し、より具体的な例を挙げて説明する。
【0045】
図8は、本説明で用いるネットワークの構成図(ノード接続図)である。図8に示すように、対象ネットワークは、ネットワーク1と、ノードni(i=1〜9)から構成される。図8において、太い矢印は通信トラフィックのフローとその方向を示している。もちろん、本実施形態が適用されるネットワークは、図8に記載されたネットワークに限定されることはない。
【0046】
ここで、ノードn1にとって、ノードn2、ノードn4、ノードn5の通信量が0であり、ノードn3とノードn8の通信量が9であると仮定する。従って、この場合、隣接ノード重要度表108において、自ノードn1の隣接ノードについての重要度は、図9のようになる。
【0047】
図7のステップS21において、閾値K=2とする場合を例に挙げる。もちろん、この値は単なる一例であって、ネットワーク状況や規模に応じて、閾値Kは、どの値に設定してもよい。また、ステップS24において、故障通知遅延時間をDi=100/(Xi+1)[ms]に設定する場合を例に挙げる。ここで、Xiは、故障ノードni(この場合、i=1〜9)の各通信量を示し、Diは、各故障ノードの各故障通知遅延時間を示す。尚、上記計算式はあくまで一例であって、故障通知遅延時間を算出するための計算式は上記に限定されることはない。
【0048】
図10は、図8に示すネットワークにおいて故障が発生した場合の図である。図10では、ノードn2、ノードn3、ノードn4が故障し、ノードn1が、これらの故障を時刻tにおいて検知した場合を例に挙げる。ここで、これらの故障通知を通常の方法にて送信する場合(すなわち、一斉送信する場合)、ノードn1は、ノードn2、ノードn3、ノードn4の故障通知を、ネットワーク内に同時に送信する。従って、ノードn8、ノードn9、およびネットワーク1にある全ノードに、経路再計算のための制御負荷が集中してしまう。しかしながら、第2の実施形態の通知方法(図7に示すフローチャートで示す方法)を適用した場合の動作は次のようになる。
【0049】
以下、図8〜図10に示す具体的な状況を、図7に示すフローチャートに当てはめて説明する。ノードn1の故障検知部100は、ノードn2、n3、n4の故障を検知する(ステップS20)。ノードn1の故障数判定部102は、故障数が所定の閾値K=2以上か否かを判定する(ステップS21)。この場合、故障ノード数は3であり閾値K=2よりも大きい(ステップS21においてYes判定)。従って、ノードn1の故障数判定部102は、故障ノード情報(ノードn2、n3、n4のリスト)および故障検知時刻情報(リアルタイムクロック104から取得した時刻t)を、故障通知遅延決定部106へ出力する(ステップS23)。
【0050】
故障通知遅延決定部106は、隣接ノード重要度表108から、自ノードに接続する隣接ノードのうち各故障ノードn2、n3、n4についての各通信量Xiを取得し、これらの通信量Xiに応じて、それぞれの故障ノードの故障通知遅延時間Diを決定する(ステップS24)。ここで、ノードn2、n3、n4の各通信量は、0、9、0である(図9参照)。一方、上述した通り、故障通知遅延時間Diは、計算式Di=100/(Xi+1)[ms]によって計算される。従って、上記各通信量Xiを該計算式に代入することにより、それぞれの故障ノードn2、n3、n4の各故障通知遅延時間Diは、100ms、 10ms、100msとなる(ステップS25)。
【0051】
ノードn1は、ノードn3の故障通知時刻をt+10msと決定し、ノードn2、n4の故障通知時刻をt+100msと決定する(ステップS26)。ノードn1は、各故障通知を各時刻が到達する度に送信する(ステップS27)。
【0052】
以上説明した第2の実施形態によれば、各故障ノードの故障通知は、時間方向に分散されて通知されるので、ワーム攻撃等により多数のノードに同時に故障が発生した場合であっても、所定のノードに対して大量の故障通知が同時に到達する事態を回避することができる。すなわち、ネットワーク内での制御負荷集中を回避することが可能となるため、さらなるノード故障を阻止し、適切な経路制御を実行することが可能となる。
【0053】
さらに、第2の実施形態の場合、各故障通知の送信タイミングは、ノードの重要度、例えば、通信量に基づいて決定される。従って、例えば、図9に示すノードn3のように、通信量が多いノードの故障通知を真っ先に伝搬させることが可能となる。これにより、重要度が高い経路(換言すれば、通信量の多い経路、あるいは頻繁に使用される経路)の復旧(すなわち、迂回路の再計算)を他の経路に先んじて優先的に実施することが可能となる。
【0054】
さらに、以上説明した第2の実施形態では、故障ノードの数に基づいて、故障通知を異なるタイミングで送信するか、通常の故障通知(すなわち、一斉送信)を行うかを決定している。例えば、システムの規模を鑑みてある程度の数であれば故障通知を同時に送信しても問題ないと判断できる場合(換言すれば、処理負荷上、特に問題が発生しない場合)、故障通知を敢えて遅らせるよりも、できるだけ早く送ったほうがよい場合もあるからである。
【0055】
尚、以上説明した第2の実施形態において、通信量と故障通知遅延時間とは必ずしも反比例(あるいは、通信量や計算式自体の設定によっては比例の場合もある)の関係にあるとは限らない。例えば、故障通知遅延決定部106は、故障ノードの通信量同士を比較し、該比較結果に応じて各故障通知の送信順序のみを決定し、故障通知遅延時間自体は定数(例えば、100ms)とすることも可能である。例えば、故障通知送信の基準時刻をtとした場合、各故障通知を、各時刻t、t+100ms、t+200ms・・・に順次送信すればよい。このような方法でも、制御負荷集中の回避と重要度が高い経路の早期復旧を実現することが可能となる。
【0056】
また、以上説明した図7のステップS21における、故障数と閾値Kとの比較条件は、「以上」に限定されることはない。例えば、故障数と閾値Kとが等しい場合を除外する「より大きい」であってもよい。
【0057】
[第3の実施形態]
第2実施形態において、ノードの重要度は、ノードの通信量のみに基づいている。もちろん、これにより、基本的には、制御負荷集中の回避と重要度が高い経路の早期復旧を実現することが可能となる。しかしながら、故障したノードの通信量自体は少ないが、他の故障ノードの迂回経路の通過点として選択される可能性が非常に高い(中心度が非常に高い)場合を想定すると、通信量のみの考慮では不十分な場合がある。
【0058】
第2の実施形態の場合、例えば、図10において、他ノード(ノードn8、ノードn9、あるいはネットワーク1内のノード)に対して、通信量の少ないノードn4の故障通知は、通信量の多いノードn3の故障通知よりも遅れて到着する。この場合、他ノードは、図11に示すように、故障したノードn3を迂回する新しい経路として、故障したノードn4を経由した経路(すなわち、有効ではない経路)を選択してしまう虞がある。この場合、他ノードは、ノードn3を迂回する更なる別の経路を再計算しなければならないため、効率が低下する可能性がある。
【0059】
そこで、第3の実施形態は、ノードの通信量だけでなくノードの中心度も考慮して、各故障通知の送信を制御する点を特徴とする。第3の実施形態では、中心度を、「自ノードに接続する隣接ノードに接続するノード数(次数)」とする場合を例に挙げる。
【0060】
図12は、本発明の第3の実施形態に係るノード装置50の構成例を説明するためのブロック図である。ノード装置50は、第2の実施形態のノード装置20(図2参照)を基本としており、パケット転送部24とネットワークインタフェース26−1〜26−nは、ノード装置20と同一である。従って、これらについては図12において図2と同一の参照符号を付し、ここでの説明を省略する。
【0061】
また、経路制御部52を構成する要素のうち、故障検知部100と、故障数判定部102と、リアルタイムクロック104と、通信量測定部110と、故障通知部112とは、ノード装置20の経路制御部22におけるそれらと同一である。従って、これらについては図12において図2と同一の参照符号を付し、ここでの説明を省略する。
【0062】
従って、以下、経路制御部52を構成する要素のうち、経路制御部22と機能が異なる構成要素あるいは新規な構成要素、すなわち、隣接ノード重要度表130と、故障通知遅延決定部132と、トポロジ情報交換部134と、中心度計算部136とについてのみ説明する。
【0063】
隣接ノード重要度表130には、ネットワークに参加している各ノードについての重要度が記憶されている。第3の実施形態において、重要度は、「通信量」と「中心度(次数)」を含む。ここで、通信量は、第2の実施形態と同様に、各ノードとそれらに接続する各隣接ノードとの間の各通信量(例えば、受信パケット数および/または送信パケット数)である。一方、中心度は、各隣接ノードに接続するノードの数(以下、これを次数と呼ぶ)である。この場合、次数には、自ノードも含まれる。尚、通信量は、第2の実施形態と同様に、通信量測定部110によって計算(更新)され、次数は、中心度計算部136によって計算(更新)される。
【0064】
故障通知遅延決定部132は、通信量だけでなく、中心度(第3の実施形態の場合は、次数)も考慮して、故障ノードの故障通知の遅延を決定する。遅延決定処理の詳細については、後述する。
【0065】
トポロジ情報交換部134は、隣接ノードからトポロジ情報を受信する。ここで、トポロジ情報とは、例えば、ネットワークの接続形態についての情報である。トポロジ情報交換部134は、新しいトポロジ情報が設定された場合、あるいはネットワークトポロジに変化があった場合、中心度計算部136に対して、トポロジ情報を渡す。
【0066】
中心度計算部136は、トポロジ情報交換部134から得られたトポロジ情報を元に、各隣接ノードの次数を計算し、その結果を隣接ノード重要度表130に登録する。
【0067】
以下、第3の実施形態のノード装置50の動作について説明する。尚、第3の実施形態における、パケット受信時の動作およびパケット送信時の動作は、第2の実施形態の各動作(図3および図5を各々に参照)と同一であるため、省略する。従って、以下、次数の算出動作と故障発生時の動作について、以下、順番に説明する。
【0068】
図13は、図12に示すノード装置の動作例(次数の算出動作)を示すフローチャートである。
【0069】
中心度計算部136は、トポロジ情報交換部118からトポロジ情報を取得する(ステップS30)。中心度計算部136は、各隣接ノードの次数を算出する(ステップS31)。具体的には、中心度計算部136は、得られたトポロジ情報に基づいて、自ノードの各隣接ノードに接続する隣接ノード数を算出し、その値を次数とする。中心度計算部136は、算出された各隣接ノードの次数を隣接ノード重要度表130に登録する(ステップS32)。
【0070】
図14は、図12に示すノード装置の動作例(故障発生時の動作)を示すフローチャートである。尚、図14に示すフローチャートにおける各処理ステップにおいて、図7に示す第2の実施形態のフローチャートと同一の処理ステップには図7と同一のステップ番号を付し、それらの説明については簡略化して説明する。
【0071】
故障検知部100は、隣接ノードの故障を検知する(ステップS20)。故障を検知した場合、故障検知部100は、「故障ノード情報」を、故障数判定部102へ出力する。故障数判定部102は、故障数が所定の閾値K以上か否かを判定する(ステップS21)。故障数が閾値K未満の場合(ステップS21においてNo判定)、通常の故障通知(一斉通知)処理が実行される(ステップS22)。
【0072】
一方、故障数が閾値K以上の場合(ステップS21においてYes判定)、故障数判定部102は、リアルタイムクロック104から「故障検知時刻情報」を取得する。そして、故障数判定部102は、「故障ノード情報」および「故障検知時刻情報」を、故障通知遅延決定部132へ出力する(ステップS43)。
【0073】
故障通知遅延決定部132は、隣接ノード重要度表130から、各故障ノードの通信量および中心度(次数)を取得する(ステップS44)。故障通知遅延決定部132は、、各故障ノードの通信量および中心度(次数)に基づいて、各故障ノードの故障通知を送信する順番を決定する(ステップS45)。故障通知部112は、決定された送信順序に従って、各故障ノードの故障通知を送信する(ステップS46)。
【0074】
以上説明した故障発生時の動作に関し、以下、具体的な例を挙げて説明する。例えば、図8に示すネットワークを例に挙げて説明する。もちろん、本実施形態が適用されるネットワークは、図8に記載されたネットワークに限定されることはない。図9に示すように、自ノードn1にとって、ノードn2、ノードn4、ノードn5の通信量は0であり、ノードn3とノードn8の通信量は9である。ここで、自ノードn1の隣接ノードであるノードn2に接続する隣接ノード数は1つである(すなわち、自ノードn1のみ)。従って、ノードn2の次数は、1となる。また、図8において、自ノードn1に接続する他の隣接ノードn3、ノードn4、ノードn5、ノードn8のそれぞれに接続する隣接ノードの数は各2つであるため、それぞれのノードの次数は、2になる。すなわち、図8に示すネットワーク構成の場合、隣接ノード重要度表130において、自ノードn1に接続する隣接ノードの重要度は、図15のようになる。
【0075】
また、第2実施形態と同様、図14のステップS41において、閾値K=2とする場合を例に挙げる。もちろん、この値は単なる一例であって、ネットワーク状況や規模に応じて、閾値Kは、どの値に設定してもよい。尚、以下の説明において、複数ノードが故障した際、制御負荷の分散のために、故障ノードの故障通知を複数回(具体的には2回)に分割して、送信する場合を想定する。また、以下の説明において、第2の実施形態と同様に、図10に示す如く、ノードn2、ノードn3、ノードn4が故障し、ノードn1がこれらのノードについての故障通知の送信を制御する場合を例に挙げる。
【0076】
図14のステップS45における故障ノード(ノードn2、n3、n4)の故障通知送信順序の条件の一例として、図16に示す条件(条件1)を挙げる。尚、条件1はあくまで一例であって、送信順序の条件は、この条件1に限定されることはない。
【0077】
すると、故障発生時、ノードn2に関しては、X2(ノードn2の通信量)=0、Y2(ノードn2の中心度(次数))=1である(以上、図15参照)。従って、条件1の式において、X2+10*Y2=10<15となるため、故障ノードn2の故障通知を後で送信すると判断する。
【0078】
一方、ノードn3に関しては、X3(ノードn3の通信量)=9、Y3(ノードn3の中心度(次数))=2である(以上、図15参照)。従って、条件1の式において、X3+10*Y3=29>15となる。さらに、ノードn4に関しては、X4(ノードn4の通信量)=0、Y4(ノードn4の中心度(次数))=2である(以上、図15参照)。従って、条件1の式において、X4+10*Y4=20>15となる。以上から、故障ノードn3および故障ノードn4の故障通知を先に送信すると判断する。
【0079】
図17は、第3の実施形態による効果を説明するための図である。図17に示すように、通信量および中心度(次数)の高い、ノードn3およびノードn4の故障通知を、他のノード(ノードn8、ノードn9、およびネットワーク1にいるノード)に対して、早くかつ同時に到着させることが可能となる。従って、これらの他のノードは、ノードn3とノードn4が同時に故障していることがわかるため、ノードn3を迂回する新しい通信経路を計算する際に、ノードn4を含むことなく他の適切な通信経路(例えば、ノードn5を通過する経路)を選択することが可能となる。
【0080】
以上説明した第3の実施形態の場合、第2の実施形態と同様に、各故障ノードの故障通知は、時間方向に分散されて通知される。従って、ネットワーク内での制御負荷集中を回避することが可能となり、さらなるノード故障を阻止し、適切な経路制御を実行することが可能となる。
【0081】
さらに、第3の実施形態の場合、各故障通知の送信タイミングは、ノードの重要度に基づいて決定される。従って、通信量が多いノードの故障通知を真っ先に伝搬させることが可能となる。
【0082】
しかも、第3の実施形態の場合、通信量と中心度(次数)の両方を考慮して重要度を判断する。従って、例えば、重要度が一定以上の故障ノード(例えば、ノードn3とノードn4)の故障通知を、重要度が一定以下の故障ノード(例えば、ノードn2)の故障通知に先んじて、且つ、重要度が一定以上のもの同士を、同時に送信することが可能となる。従って、これらの故障通知を受信した他のノードは、故障ノードn3の有効な迂回経路を素早く計算することができるばかりでなく、故障ノードn4を避けることができるので、経路計算を1回で済ますことができる。すなわち、第3の実施形態によれば、通信効率の向上と経路計算効率の向上とを同時に達成することが可能となる。
【0083】
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、ノードの通信量だけでなくノードの中心度も考慮して重要度を判断する点は、第3の実施形態と同様である。第4の実施形態の、第3の実施形態に対する差異は、中心度として、「次数」の代わりに「Closeness中心度」を用いる点にある。Closeness中心度とは、あるノードからネットワークに存在する他ノードまでの最短距離(例えば、最小ホップ数)の合計値または各最短距離の平均値に、反比例する値のことである。
【0084】
図18は、第4の実施形態に係るノード装置60の構成例を説明するためのブロック図である。ノード装置60は、第3の実施形態のノード装置50(図12参照)を基本としており、パケット転送部24とネットワークインタフェース26−1〜26−nは、ノード装置50と同一である。従って、これらについては図18において図12と同一の参照符号を付し、ここでの説明を省略する。
【0085】
また、経路制御部62を構成する要素のうち、故障検知部100と、故障数判定部102と、リアルタイムクロック104と、通信量測定部110と、故障通知部112と、トポロジ情報交換部134とは、ノード装置50の経路制御部52におけるそれらと同一である。従って、これらについては図18において図12と同一の参照符号を付し、ここでの説明を省略する。
【0086】
従って、以下、経路制御部62を構成する要素のうち、経路制御部52と機能が異なる構成要素あるいは新規な構成要素、すなわち、隣接ノード重要度表140と、故障通知遅延決定部142と、Closeness中心度計算部144とについてのみ説明する。
【0087】
故障通知遅延決定部142は、通信量だけでなく、中心度(第4の実施形態の場合、Closeness中心度)も考慮して、故障ノードの故障通知の遅延を決定する。尚、故障通知遅延決定部142における遅延決定処理は、参照する情報が、次数とCloseness中心度の違いはあれど、基本的には、第3の実施形態の故障通知遅延決定部132と同じである。
【0088】
隣接ノード重要度表140には、ネットワークに参加している各ノードについての重要度が記憶されている。第4の実施形態において、重要度は、「通信量」と「中心度(Closeness中心度)」を含む。尚、通信量は、第2の実施形態と同様に、通信量測定部110によって計算(更新)され、Closeness中心度は、Closeness中心度計算部144によって計算(更新)される。
【0089】
Closeness中心度計算部144は、各ノードのCloseness中心度を計算し、その結果を隣接ノード重要度表140に登録する。
【0090】
以下、第4の実施形態のノード装置60の動作について説明する。尚、第4の実施形態における、パケット受信時の動作およびパケット送信時の動作は、第2の実施形態の各動作(図3および図5を各々に参照)と同一であるため、省略する。また、第4の実施形態における故障発生時の動作(すなわち、通信量と中心度とを考慮して、各故障通知の送信を制御する動作)については、第3の実施形態(図14参照)と同一であるため、省略する。従って、以下、Closeness中心度の算出動作についてのみ説明する。
【0091】
図19は、図18に示すノード装置の動作例(Closeness中心度の算出動作)を示すフローチャートである。
【0092】
Closeness中心度計算部144は、トポロジ情報交換部134からトポロジ情報を取得する(ステップS50)。Closeness中心度計算部144は、以下の(式1)により、Closeness中心度を計算する(ステップS51)。


【0093】
(式1)
(式1)において、Closeness(i)はノードiのCloseness中心度を示し、Nはネットワーク内に存在するノード数を示し、Gはネットワーク内のノード集合を示し、dijはノードiからノードjまでの最短距離(例えば、最小ホップ数)を示す。
【0094】
Closeness中心度計算部144は、トポロジ情報に基づいて、ノードjをネットワーク中の全ノード集合Gに属する変数とするとともに、ネットワーク内における全ノード数Nを求める。Closeness中心度計算部144は、ノードiをルートとする最短経路(例えば、最小ホップ数)パスツリーを計算する。Closeness中心度計算部144は、全てのノードjに対して、ノードiからノードjまでの最短距離(例えば、最小ホップ数)dijを計算する。Closeness中心度計算部144は、全てのノードjに対してCloseness(i)を計算し、これらを隣接ノード重要度表140に登録する(ステップS52)。
【0095】
以上説明したCloseness中心度の算出動作に関し、以下、具体的な例を挙げて説明する。例えば、図20に示すネットワークを例に挙げて説明する。もちろん、本実施形態が適用されるネットワークは、図20に記載されたネットワークに限定されることはない。
【0096】
図20において、ネットワーク内に存在するノード数N=6であり、ネットワーク内のノード集合G=[A、B、C、D、E、F]である。ここで、ノードCから各ノード(A、B、F、D、E)までの最短距離(この場合、最小ホップ数)は、それぞれ、2、1、1、1、2となる。従って、ノードCのCloseness(C)は、(式1)により、(6−1)/(2+1+1+1+2)=5/7となる。
【0097】
また、ノードAのCloseness(A)を計算する場合、ノードAから各ノード(B、C、D、E、F)までの最短距離(この場合、最小ホップ数)は、それぞれ、1、2、3、4、3であるため、Closeness(A)は、(式1)により、(6−1)/(1+2+3+4+3)=5/13となる。
【0098】
尚、Closeness中心度の計算に用いる最短距離(例えば、最小ホップ数)は、経路表120の情報から直接求めるか、もしくは、トポロジ情報やグラフ情報を元に、Dijkstra法などのアルゴリズムを用いることで計算することができる。
【0099】
また、第4の実施形態において、最短距離の例として最小ホップ数を挙げたが、最短距離はこれに限定されず、例えば、通信遅延(時間として表される距離情報)を用いてもよい。
【0100】
[第5の実施形態]
第5の実施形態は、ノードの通信量だけでなくノードの中心度も考慮して重要度を判断する点は、第3および第4の実施形態と同様である。第5の実施形態の、第4の実施形態に対する差異は、中心度として、「Closeness中心度」の代わりに「Betweenness中心度」を用いる点にある。Betweenness中心度とは、あるノードを通過する最短路の数、またはその数に比例する値のことである。
【0101】
図21は、第5の実施形態に係るノード装置70の構成例を説明するためのブロック図である。ノード装置70は、第4の実施形態のノード装置60(図18参照)を基本としており、パケット転送部24とネットワークインタフェース26−1〜26−nは、ノード装置60と同一である。従って、これらについては図21において図18と同一の参照符号を付し、ここでの説明を省略する。
【0102】
また、経路制御部72を構成する要素のうち、故障検知部100と、故障数判定部102と、リアルタイムクロック104と、通信量測定部110と、故障通知部112と、トポロジ情報交換部134とは、ノード装置60の経路制御部62におけるそれらと同一である。従って、これらについては図21において図18と同一の参照符号を付し、ここでの説明を省略する。
【0103】
従って、以下、経路制御部72を構成する要素のうち、経路制御部62と機能が異なる構成要素あるいは新規な構成要素、すなわち、隣接ノード重要度表150と、故障通知遅延決定部152と、Betweenness中心度計算部154とについてのみ説明する。
【0104】
故障通知遅延決定部152は、通信量だけでなく、中心度(第5の実施形態の場合、Betweenness中心度)も考慮して、故障ノードの故障通知の遅延を決定する。尚、故障通知遅延決定部152における遅延決定処理は、参照する情報が、次数とBetweenness中心度の違いはあれど、基本的には、第3の実施形態の故障通知遅延決定部132と同じである。
【0105】
隣接ノード重要度表150には、ネットワークに参加している各ノードについての重要度が記憶されている。第5の実施形態において、重要度は、「通信量」と「中心度(Betweenness中心度)」を含む。尚、通信量は、第2の実施形態と同様に、通信量測定部110によって計算(更新)され、Betweenness中心度は、Betweenness中心度計算部154によって計算(更新)される。
【0106】
Betweenness中心度計算部154は、各ノードのBetweenness中心度を計算し、その結果を隣接ノード重要度表150に登録する。
【0107】
以下、第5の実施形態のノード装置70の動作について説明する。尚、第5の実施形態における、パケット受信時の動作およびパケット送信時の動作は、第2の実施形態の各動作(図3および図5を各々に参照)と同一であるため、省略する。また、第5の実施形態における故障発生時の動作(すなわち、通信量と中心度とを考慮して、各故障通知の送信を制御する動作)については、第3の実施形態(図14参照)と同一であるため、省略する。従って、以下、Betweenness中心度の算出動作についてのみ説明する。
【0108】
図22は、図21に示すノード装置70の動作例(Betweenness中心度の算出動作)を示すフローチャートである。
【0109】
Betweenness中心度計算部154は、トポロジ情報交換部134からトポロジ情報を取得する(ステップS60)。Betweenness中心度計算部154は、以下の(式2)により、Betweenness中心度を計算する(ステップS61)。


【0110】
(式2)
(式2)において、Betweenness(i)はノードiのBetweenness中心度を示し、Nはネットワーク内に存在するノード数を示し、Gはネットワーク内のノード集合を示し、njkはノードjとノードkの間を繋ぐ最短路の数を示す。また、(式2)において、njk(i)は、ノードjを通過点とする、ノードjとノードkの間を繋ぐ最短路の数を示す。
【0111】
Betweenness中心度計算部154は、トポロジ情報に基づいて、ネットワーク内における全ノード数Nを計算する。また、Betweenness中心度計算部154は、jを自ノードの隣接ノード集合に属する変数とするとともに、kをネットワーク中の全ノード集合に属する変数とする。Betweenness中心度計算部154は、全てのj(j≠i)と全てのk(k≠j、k≠i)に対して、jをルートとする最短経路ツリーを求める。Betweenness中心度計算部154は、jからkまでの総経路数をカウントし、その値をΣnjkとする。Betweenness中心度計算部154は、上記のjとk間の全経路のうち、ノードiを含む経路の数をカウントし、その値をΣnjk(i)とする。Betweenness中心度計算部154は、上記で求めた各値を(式2)に代入することにより、Betweenness(i)を計算し、隣接ノード重要度表150に登録する(ステップS62)。
【0112】
以上説明したBetweenness中心度の算出動作に関し、以下、具体的な例を挙げて説明する。例えば、図20に示すネットワークを例に挙げて説明する。もちろん、本実施形態が適用されるネットワークは、図20に記載されたネットワークに限定されることはない。
【0113】
図20において、ネットワーク内に存在するノード数N=6であり、各ノードj(j≠C)とノードk間(k≠j、k≠C)の総最短経路数njkは、AB、AD、AE、AF、BF、BD、BE、DF、DEの9経路である、そのうちノードCを通過する経路数njk(C)は、AD、AF、AE、BF、BD、BEの6経路である。従って、ノードCのBetweeness中心度は、(式2)により、(6/9)/((6−1)×(6−2))=1/30となる。
【0114】
尚、第5の実施形態における最短路の数の計算は、トポロジ情報やグラフ情報を元に、Dijkstra法などのアルゴリズムを用いることで計算することができる。
【0115】
尚、以上説明した第2〜第5の実施形態において、故障ノードは、自ノード(故障通知を異なるタイミングで送信するノード)に「隣接」するノード(すなわち、自ノード自らが故障を検出したノード)である場合を例に挙げたが、これはあくまで一例であって、故障ノードはこれに限定されない。例えば、故障ノードは、自ノードに隣接しないノード(例えば、2ホップ以上のノードであって、故障通知にて故障を知り得たノード)であってもよい。さらに、故障ノードは、隣接するノードと隣接しないノードとが混在していてもよい。
【0116】
また、以上説明した第1〜第5の実施形態は、制御プログラムに基づいて図示しないコンピュータ回路(例えば、CPU(Central Processing Unit))によって制御され、動作するようにすることができる。その場合、これらの制御プログラムは、例えば、装置またはシステム内部の記憶媒体(例えば、ROM(Read Only Memory)やハードディスク等)、あるいは、外部の記憶媒体(例えば、リムーバブルメディアやリムーバブルディスク等)に記憶され、上記コンピュータ回路によって読み出され実行される。
【符号の説明】
【0117】
10 ノード装置
12 送信タイミング調整部
20、50、60、70 ノード装置
22、52、62、72 経路制御部
24 パケット転送部
26−1〜26−n ネットワークインタフェース
100 故障検知部
102 故障数判定部
104 リアルタイムクロック
106、132、142、152 故障通知遅延決定部
108、130、140、150 隣接ノード重要度表
110 通信量測定部
112 故障通知部
120 経路表
134 トポロジ情報交換部
136 中心度計算部
144 Closeness中心度計算部
154 Betweenness中心度計算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自ノード装置と同一のネットワークシステムに含まれるノード装置のうちの少なくとも2つのノード装置の故障を検出した際、他のノード装置に対して、故障中の前記各ノード装置についての故障通知を異なるタイミングで送信する送信タイミング調整部を備えることを特徴とするノード装置。
【請求項2】
前記送信タイミング調整部は、前記各故障ノード装置の重要度に基づいて、前記各故障通知の送信タイミングを決定することを特徴とする請求項1記載のノード装置。
【請求項3】
前記重要度は、少なくとも、前記各故障ノード装置の通信量を考慮して決定されることを特徴とする請求項2記載のノード装置。
【請求項4】
前記重要度は、少なくとも、前記各故障ノード装置に隣接するノード装置の数を考慮して決定されることを特徴とする請求項2または3記載のノード装置。
【請求項5】
前記重要度は、少なくとも、所定のノード装置からネットワーク内に存在する他のノード装置までの距離を考慮して決定されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のノード装置。
【請求項6】
前記重要度は、少なくとも、ネットワーク内に存在するノード装置のうちで所定のノード装置を除くノード装置間の総最短経路数のうちで前記所定のノード装置を通過する最短経路数を考慮して決定されることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のノード装置。
【請求項7】
前記送信タイミング調整部は、故障中のノード装置の重要度同士を比較し、該比較結果に応じて、各故障通知の送信順序を決定することを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載のノード装置。
【請求項8】
複数のノード装置を含むネットワークシステムであって、
前記ネットワークシステムに含まれるノード装置のうちの少なくとも2つのノード装置の故障が検出された際、前記所定のノード装置から他のノード装置に対して、故障中の前記各ノード装置についての故障通知を異なるタイミングで送信することを特徴とするネットワークシステム。
【請求項9】
複数のノード装置を含むネットワークシステムにおける故障通知方法であって、
前記ネットワークシステムに含まれるノード装置のうちの少なくとも2つのノード装置の故障が検出された際、前記所定のノード装置から他のノード装置に対して、故障中の前記各ノード装置についての故障通知を異なるタイミングで送信することを特徴とする故障通知方法。
【請求項10】
複数のノード装置を含むネットワークシステムにおける所定のノード装置のコンピュータに、
前記ネットワークシステムに含まれるノード装置のうちの少なくとも2つのノード装置の故障が検出された際、前記所定のノード装置から他のノード装置に対して、故障中の前記各ノード装置についての故障通知を異なるタイミングで送信する処理を、
実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−10092(P2012−10092A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144027(P2010−144027)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】