説明

ハイソリッドの非水系分散液のクリアコート

a)カルバメート官能性ポリマー、b)ヒドロキシル官能性ポリマー、c)アミノプラスト樹脂及びブロックポリトイソシアネートからなる群から選択される硬化剤、並びにd)弱い非極性溶剤を含有する、ハイソリッドの非水系分散液のクリアコート塗料組成物であって、その際、この塗料は、実質的に澄明及び透明なハイソリッドであり、かつさらに、分散相及び連続相を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイソリッドの、非水系分散液のクリアコートに関する。
【0002】
発明の背景
この段落における説明は、単に本発明に関する背景情報を提供し、かつ先行技術を構成しない。
【0003】
揮発性有機溶剤の放出の調整のために、塗料組成物の揮発性有機含量を低減するための連続的な要求がある。高価でありうる溶剤は、適用及び硬化中に蒸発する。従って、当業者において"ハイソリッド"として公知の塗料は、しばしば、大気に放出された有機溶剤の費用及び量を制限するために使用される。
【0004】
ハイソリッドのレベルは、適用方法を制限する、望ましくない粘度をもたらしうる。好適な粘度のハイソリッド塗料は、時に低分子量溶液のポリマーを使用して達成されうる。しかしながら、前記ハイソリッド塗料に関連する問題は、約50〜60%(固体)のレベルで、塗料が著しい垂れを呈しうることである。一般に工業は、垂れのない約0.06mm(2.5mil)のトップコートの厚さを要求し、かつチキソトロープは、しばしば、垂れのない要求された塗料の厚さを得るために添加される。チキソトロープは、さらに追加の出費があり、かつ望ましくない外観、例えば低い光沢度を有する塗料をもたらしうる。
【0005】
対照的に、ハイソリッドのクリアコートに近い非水系分散液(NAD)は、クリアコートに基づく通常の溶液を上回る利点を提供する。ハイソリッド塗料を、分子量を維持又は増加する間に、非水系分散液によって得ることができる。それというのも、塗料のポリマーが、分散相中にあるからである。例えば、非水系分散液の適用中に、粘度は、ポリマーが分散相中にあるために低い。適用及び溶剤蒸発の後には、分子量を低下しないために高い粘度である。この高い粘度、及びNADの偽可塑性の特徴は、垂れに対する抵抗を提供する。従って、非水系分散液は、良好な塗料の要求される粘度の二群、すなわち適用中の低い粘度及び適用後の高い粘度を壊す。
【0006】
一般に、非水系分散樹脂は、へこみ及び溶剤のはじけに対する優れた抵抗を示すが、環境腐食、及び掻き傷及び擦傷抵抗を改良する追加の要求は残ったままである。環境腐食は、クリアコート上もしくはクリアコート中のしみ又は跡として現れる。クリアコートによって呈された透明性の高い程度は、一般に、かかる欠陥を観察することを簡易化する。一般の外観及び修理の容易さも、産業における重要性として残ったままである。
【0007】
従って、優れた外観、並びに改良させた耐久度、硬さ、可撓性、垂れ下り抵抗、亀裂及び欠け抵抗、掻き傷及び擦傷抵抗、環境腐食に対する抵抗、及び通常のクリアコートと比較した修理の容易さを有するハイソリッドのクリアコート組成物のために永続的に探求が行われている。
【0008】
発明の要約
本発明は、ハイソリッドの非水系分散液のクリアコートに関する。該非水系分散液は、分散相及び連続相を含有する。さらにクリアコート組成物は、カルバメート官能性ポリマー、ヒドロキシル官能性ポリマー、硬化剤、及び弱い非極性溶剤を含む。一般に、弱い非極性溶剤は、連続相の一部として存在する。カルバメート官能性ポリマー及びヒドロキシル官能性ポリマーは、典型的に分散相に位置するが、そうでなくてもよく、又は連続相中に存在してもよい。硬化剤、例えばアミノプラスト及びブロックトイソシアネート硬化剤は、一般に連続相に位置するが、分散相の中に位置していてもよい。
【0009】
本発明のハイソリッドの非水系分散液は、実質的に透明な白であり、かつクリアコート組成物において有用である。本発明の塗料組成物は、垂れに対する良好な抵抗、及び優れた腐食抵抗、外観及び耐久度を示す。従って、この組成物は、クリアコート仕上げの分野における意味のある進歩である。
【0010】
適用性のさらなる分野は、本明細書中で提供された記載から明らかになる。この記載及び特定の実施例は、単に説明を目的とするものであり、本発明の範囲の制限を意図しないことを理解すべきである。
【0011】
詳細な説明
次の記載は、単に例示をする性質のものであって、本発明、その応用、もしくは使用の制限を意図しない。
【0012】
ハイソリッドの、非水系分散液のクリアコート組成物は、極性ポリマー、例えばカルバメート官能性ポリマー及び/又はヒドロキシル官能性ポリマー、1つの又は複数の官能性ポリマーと反応する硬化剤、及び弱い非極性溶剤を含有する。
【0013】
本発明の非水系分散液は、1つ以上の官能性ポリマー(以下で、ポリマー"粒子"とも呼ばれる)を含んでいてよい分散相を含有し、その際、分散相の粒子は、連続相中で安定して分散されている。"安定して"という用語は、分散相が、放置に対して沈降、凝集、又は沈澱しないことを意味する。本発明の非水系分散液の官能性ポリマーは、有利には極性である。ポリマーの極性は、有利には、ポリマーを連続相の溶剤中での溶解から防ぐために十分である。一般に、化合物は、分子の正の又は負の電荷の分布の中心が集中しない場合に、極性である。ポリマー、溶剤又は非水系媒体を記載するために本明細書で使用されている"極性"という用語は、極性基、例えばカルバメート基、ヒドロキシル基、カルボキシル又は他の酸性基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン化炭化水素基、ニトリル基、又は他のかかる極性基を含有する物質を意味する。逆に、"非極性"という用語は、前記で挙げられた物のような極性基を本質的に有しない物質を記述する。
【0014】
非水系分散液を製造するための技術においてあらゆる公知の方法は、本発明のクリアコートのための非水系分散液を形成するために使用されてよい。非水系分散液を、商業上、例えばNuplex Resins社から入手してよい。分散相のポリマーは、弱い非極性溶剤中で実施されたモノマーの非水系分散重合によって製造されてもよい。この重合が非極性溶剤中で実施される場合に、異なった媒体へ前記モノマーを移動させる必要はないが、例えば乾燥及び再分散によって、かかる移動は可能である。移動させた粒子の分散液中でのあらゆる媒体は、安定な分散液を形成し、かつ極性粒子を凝集又は膨潤しないように選択されるべきである。言い換えれば、選択されたあらゆる溶剤が、極性ポリマー粒子を溶解又は膨潤しない物である必要がある。
【0015】
本発明のハイソリッドの非水系分散液のクリアコートは、連続相及び分散相を含む少なくとも2つの不連続の相を含有する。少なくとも1つの官能性ポリマーは、非水系分散液の分散相中に存在しなければならない。有利には、少なくとも1つの官能性ポリマーは、カルバメート官能性ポリマー、ヒドロキシル官能性ポリマー、又はそれらの組合せを含有する。
【0016】
広義で、本発明のポリマーは、分散又は連続相のどちらにも存在し、1つ以上のモノマーの重合によって製造されてよい。モノマーの重合は、付加重合又は縮合重合を含む、当業者に公知のあらゆる手段によって起きてよい。重合されたモノマーが、エチレン性不飽和モノマーを含むことが好ましい。使用される非官能性のエチレン性不飽和モノマーの制限されない例として、アクリル酸、メタクリル酸、及び/又はクロトン酸のアルキルエステル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、並びにドデシルアクリレート及びメタクリレートがある。他の例は、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロオクタン、ビニルシクロヘキセン、ヘキサンジオールジアクリレート、ビニルナフタレン、アルファ−メチルスチレン等を含む。使用されるモノマーは、官能性エチレン性不飽和モノマー、例えばカルバメート官能性又はヒドロキシル官能性アクリレート及びメタクリレートモノマーを含む。本明細書で使用されるように、"官能性エチレン性不飽和モノマー"という用語は、架橋剤、特にアミノプラスト樹脂、例えばメラミンホルムアルデヒド樹脂、及び/又はブロックトイソシアネート官能性架橋剤と反応される官能基を含有するエチレン性不飽和モノマーに言及される。かかる反応性官能基の制限されない例は、第二級及び第一級双方の、ペンダントカルバメート基、並びにヒドロキシル基である。有利には、本発明の重合させた分散相粒子中に含まれる極性基は、極性官能基、例えばカルバメート基、ヒドロキシル基、又はそれらの混合物を含む。
【0017】
モノマーの重合は、付加材料、例えば遊離基重合開始剤のような重合開始剤、連鎖移動剤、安定剤、ポリマー分散剤、及び界面活性剤を含んでよい。当業者によく知られている有用な遊離基開始剤は、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジプロピルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエエート、t−ブチルペルオクテート等を含む。非水系分散液は、分散相中での凝固が起こらないように、安定剤又は界面活性剤も必要としてよい。取り込まれた又は内部の安定剤の制限されない例は、脂肪族可溶性メラミンホルムアルデヒド樹脂、及びポリ12−ヒドロキシステアリン酸とグリシジルメタクリレートとの共重合反応生成物、すなわちGMA−PHSAである。分散液は、さらに、粒子の分散に対する安定性を提供するために使用されてよく、かつ複数の非官能性モノマー又はそれらの混合物を含む種々のモノマーから製造されうる。
【0018】
本発明のポリマーは、カルバメート官能性ポリマーを含む。カルバメート官能性樹脂に基づく組成物は、優れた耐久度、硬度、光沢及び外観を有する。カルバメート基は、アミノプラストメチロール基と反応し、ヒドロキシル基とメチロール基との反応によって形成されたエーテル架橋よりも加水分解に影響されないウレタン架橋を形成することができる。本発明のカルバメート官能性ポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合によって製造されたポリマー主鎖を有する構造を含有してよく、そして実質的に炭素−炭素架橋からなってよい。本発明のカルバメート官能性ポリマーは、付加重合によって製造されてよいが、本発明のカルバメート官能性ポリマーが、縮合重合によって製造されてもよいことは評価されるべきである。
【0019】
モノマーのエステル部分におけるカルバメート官能性基を有する1つ以上のアクリルモノマーが使用されてよい。本発明に関連して使用されるような、"カルバメート基"、"カルバメート官能性"等という用語は、式
【化1】

[式中、Rは、H又はヒドロカルビル基であり、有利には、Rは、H又は炭素原子1〜約8個のヒドロカルビル基であり、より有利には、Rは、H又は炭素原子1〜約4個のヒドロカルビル基であり、さらにより有利には、Rは、Hである]で示される構造を有する基を言う。RがHである場合に、カルバメート基は、第一級カルバメート基として本明細書に言及されている。かかるモノマーは、当業者によく知られており、かつ、例えば米国特許番号3,479,328号、3,674,838号、4,126,747号、4,279,833号、及び4,340,497号、並びに米国特許申請番号2004/0087728号において記載されており、参照をもって本明細書に開示されたものとする。
【0020】
1つの合成方法は、ヒドロキシルエステルと尿素との反応を含み、カルバミルオキシカルボキシレート、例えばカルバメート改質アクリルを形成する。他の合成方法は、α,β−不飽和酸又はエステルとヒドロキシカルバメートエステルとが反応し、カルバミルオキシカルボキシレートを形成する。しかし他の技術は、アンモニア、第一級もしくは第二級アミン又はジアミンと環状カルボネート、例えばエチレンカルボネートとの反応によるヒドロキシアルキルカルバメートの形成を含む。そしてヒドロキシアルキルカルバメート上のヒドロキシル基は、アクリル酸又はメタクリル酸との反応によってエステル化され、モノマーを形成する。他のカルバメート改質アクリルモノマーを製造する方法は、当業者に記載されており、かつよく利用されうる。
【0021】
カルバメート官能性基を有するアクリルモノマーは、官能基を有してよい又は有してはならない他のエチレン性不飽和モノマーと共に、望ましくは、当業者によく知られている技術によって重合されうる。
【0022】
本発明のカルバメート官能性ポリマーを製造するための代替方法は、米国特許番号第4,758,632号において記載されているように、既に形成させたアクリル主鎖ポリマーと他の成分を反応して、主鎖ポリマーに追加されたカルバメート官能性基を形成することであり、参照をもって本明細書に開示されたものとする。カルバメート官能性ポリマーを製造するための1つの技術はヒドロキシル官能性アクリルポリマーの存在下で、熱分解尿素(アンモニア及びHNCOで発生する)を含み、カルバメート官能性ポリマーを形成する。他の技術は、ヒドロキシアルキルカルバメートのヒドロキシル基とイソシアネート官能性アクリル又はビニルモノマーのイソシアネート基との反応を含み、カルバメート官能性アクリルを形成する。イソシアネート官能性アクリルは、当業者に知られており、かつ例えば、米国特許第4,301,257号明細書において記載されており、参照をもって本明細書に開示されたものとする。イソシアネートビニルモノマーは、当業者によく知られており、かつ不飽和m−テトラメチルキシレンイソシアネート(American CyanamidによってTMI(登録商標)の商標化で販売されている)を含む。さらに他の技術は、カルバメート官能性アクリルを形成するために、環状カルボネート官能性アクリル上の環状カルボネート基とアンモニアとを反応することである。環状カルボネート官能性アクリルポリマーは、当業者に公知であり、かつ、例えば、米国特許第2,979,514号明細書において記載されており、参照をもって本明細書に開示されたものとする。他の方法は、ヒドロキシアルキルカルバメートと無水物主鎖とを反応することである。代わりに、カルボキシカルバメートを、エポキシアクリルと反応してもよい。実際、あらゆる縮合反応又はそれらの組合せが、カルバメートに使用されてよく、又はポリマーの主鎖を後伸長する。より難しいが、適したポリマーの製造方法は、アクリルポリマーをヒドロキシアルキルカルバメートでエステル交換することであった。
【0023】
特に制限されない例において、カルバメート官能性ポリマーは、カルバメート当量250〜1500g/モルを有する。他の制限されない例において、カルバメート官能性ポリマーは、カルバメート当量250〜1500g/モルを有するアクリルポリマーである。
【0024】
その組成物は、ヒドロキシル官能性ポリマーを含有してもよい。ヒドロキシル官能性ポリマーは、塗料組成物の脆性を低減するために使用されてよい。有利には、本発明のヒドロキシル官能性ポリマーは、ヒドロキシル含有アクリレートモノマー、ヒドロキシル含有メタクリレートモノマー、又はそれらの混合物の共重合から形成される。ヒドロキシル官能性モノマーがヒドロキシエチルメタクリレートを含有することは特に好ましい。
【0025】
ヒドロキシル官能性ポリマーは、ポリイソシアネート化合物と、1つ以上のヒドロキシル基、又は少なくとも2つのヒドロキシル基及び1つのアミノ基を有する反応性化合物との組合せによって製造されてもよい。一般に、反応性化合物は、ポリイソシアネート上のイソシアネート基と比較して、過剰なヒドロキシル基を有してよい。アミノ基が、ヒドロキシル基よりも非常に早くイソシアネート基と反応することは公知である。アミンとイソシアネートとの反応が、ヒドロキシルとの反応より非常に早いために、反応生成物中で形成された大部分の連鎖は、尿素であってよく、かつ未反応のヒドロキシル基が、ポリマー上で官能性ヒドロキシル基になる。1つのアミノ基を有する反応性化合物に関して、1つのジイソシアネートにつき2つ以上のアミノアルコールを、モノマーのヒドロキシル官能性化合物を提供するために反応してもよい。
【0026】
ヒドロキシル官能性ポリマーは、ポリエステルポリオールポリマーを含有してもよい。ポリエステルポリオールポリマーは、ポリオールと二酸、例えばカルボン酸とのエステル化によって重合されてよい。好適なポリオールの特定の例は、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、及び2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネートを含む。他の好適なグリコールは、水素化ビスフェノールA、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、カプロラクトンを基剤としたジオール、例えばε−カプロラクトンとエチレングリコールとの反応生成物、ヒドロキシアルキル化ビスフェノール、ポリエーテルグルコール、例えばポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、それらの混合物等を含む。
【0027】
ヒドロキシル官能性ポリマーのポリオール成分は、ジオールのみからなってよいが、より高い官能価のポリオールが使用されてもよい。例示的な一実施態様において、ポリマーを製造するために使用されるポリオール成分は、少なくとも1つのジオールと少なくとも1つのより高い官能価のポリール、例えばトリオールとを含有する混合物であろう。より高い官能価のポリオールの例は、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール等を含んでよい。一官能価アルコール、例えばエチルヘキサノールの制限された量を使用してもよい。
【0028】
特に制限されない例において、本発明のヒドロキシル官能性ポリマーは、250〜1500g/当量のヒドロキシル当量を有する。他の制限されない例において、該ヒドロキシル官能性ポリマーは、250〜1500g/当量のヒドロキシル当量を有するアクリルポリマーである。
【0029】
本発明の非水系分散液のクリアコートの分散相中に存在する官能性ポリマーが、通常のハイソリッド溶液のポリマー塗料によって利用できるよりもより高い分子量を示してよいことは、さらに評価すべきである。本発明のポリマーの数平均分子量(Mn)は、有利には6000〜100000ダルトン、より有利には10000〜25000ダルトン、及び最も有利には20000〜22000ダルトンである。より高い分子量は、通常のクリアコートと比較して優れた垂れ下り抵抗及び改良された外観(より少ないへこみ及び溶剤のはじけ)を提供する。さらに、より高い分子量の主鎖は、塗料の浸漬耐久性、及び耐内部衝撃性を増加する。
【0030】
付加的な非官能性ポリマーは、本発明の組成物中に含まれてよい。制限されない例は、エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸のあらゆる組合せの重合によって製造されたポリマーである。
【0031】
架橋を提供するために、少なくとも1つの硬化剤又は架橋剤が、重合中にモノマーに含まれてよく、又は重合後に非水系分散液に添加されてよい。硬化剤が連続相、一般に脂肪族又は芳香族の非極性溶剤中にある場合に、該硬化剤は、溶剤にも可溶でなければならない。従って架橋剤が、塗料中に取り込まれる場合に、架橋剤のタイプ及びレベルは、大抵、分散相の粒子中に存在する官能基に基づいて選択される。
【0032】
硬化剤は、分散相と連続相中のポリマーの官能基と反応される少なくとも2つの官能基を含有してよい。本発明の塗料組成物は、1つ以上の架橋剤を含有してよく、その際、同一又は異なる官能基は、同一又は異なる架橋剤上にあってよい。
【0033】
好適な架橋剤の実施例は、例えば、制限されることなく、活性メチロール又はメチルアルコキシ(アミノプラスト(メラミン/アルデヒド又はフェノール/ホルムアルデヒド付加体)に見出される)、ヒドロキシ、イソシアネート、アミン、エポキシ、アクリレート、ビニル、シラン、及びアセトアセテート基を含む官能基を有するそれらの架橋剤である。それらの基を、望ましい硬化条件、一般に高温下で、架橋反応を阻害せず、かつ架橋反応のために利用できる方法で、マスク又はブロックしてよい。好ましい架橋剤は、ヒドロキシル官能基とカルバメート基とを反応させる架橋可能な官能基を有してよい。
【0034】
ブロックトイソシアネート(イソシアヌレートを含む)及び/又はアミノプラスト、例えばメラミン/アルデヒドアミノプラスト樹脂は、本発明の非水系分散液のクリアコート組成物における架橋剤として使用するために最も好ましい。ブロックトイソシアネート化合物は、当業者に公知であり、かつ、典型的に熱硬化性塗料組成物において、該組成物が、阻害剤化合物がブロックされない温度まで加熱されるまで、イソシアネート基が塗料組成物のイソシアネート反応成分と反応しないことが望ましい場合に使用される。
【0035】
アミノプラスト化合物は、アルデヒド、例えばホルムアルデヒドと、アミン又はアミドとの反応から得られる。最も普通のアミンは、メラミン、尿素及びベンゾグアナミンであり、メラミンが好ましい。しかしながら、他のアミンとの凝縮物を使用することができる。使用されるアルデヒドは、しばしばホルムアルデヒドであるが、他のアルデヒド、例えばアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド及びベンゾアルデヒドが、使用されてよい。
【0036】
非水系分散液の弱い非極性溶剤は、1つ以上の弱い非極性溶剤、例えば脂肪族又は芳香族の溶剤を含んでよく、非水素化溶剤が好ましい。溶剤の溶剤和濃度は、溶剤の溶解パラメータによって特徴付けられる。ASTM D−3132によって、溶剤の溶解パラメータは、単位体積当たりの、凝集エネルギー密度、又は蒸発のエネルギーの平方根として定義される。塗料産業において、ハンセン系(the Hansen system)が、一般に溶解度を示すために使用されることを理解するべきである。この系は、全ての溶解パラメータδに関する3つの溶解パラメータを、式:δ=√(δD2+δP2+δH2)によって定義し、その際、δDは、分散の又は"非極性の"パラメータであり、δPは、極性パラメータであり、かつδHは、水素結合パラメータである。当該明細書において使用される"弱い"という用語は、溶剤が、10ヒルデブランド又は√(カロリー/cm3)未満、及び有利には9ヒルデブランド未満の溶解パラメータδを有することを意味する。
【0037】
弱い非極性溶剤の制限のない例は、Varnish Makers&Painters(VM&P)ナフサ(登録商標)(石油蒸留物からの蒸留留分)、ミネラルスピリット、Isopar(登録商標)I、G、H及びK、Varsol(登録商標)溶剤、Stoddard(登録商標)溶剤、ヘキサン、並びにヘプタンを含む。この技術において普通であるのは、改質溶剤及び希釈液、例えば芳香薬、エステル又はケトンを、前記の溶剤に添加し、所望の性質、例えば固有の溶解度及び蒸発の特徴を提供することである。
【0038】
非水系分散液中の連続相として存在してよい溶剤の他の例は、エステルもしくはケトン溶剤、又はそれらの混合物;特にエチルアセテートもしくはエチルアセテートと他の好適なエステル溶剤の混合物、n−ブチルアセテート、n−ヘキシルアセテート、n−ペンチルプロピオネート、Exxate800もしくは1000等、及びそれらの混合物;エーテル、例えばプロピレングリコール等のモノエチル、モノブチル及びモノヘキシルエーテル;ケトン溶剤、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、ジイソブチルケトン等、及びそれらの混合物;エステルとケトン溶剤との混合物;並びに芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、Solvesso SC−100、Solvesso SC−150等、及びそれらの混合物である。
【0039】
連続相は、官能性又は非官能性ポリマーを含んでもよい。少なくとも1つの硬化剤は、どちらかの相に存在してよく、その際、該硬化剤は、有利にはアミノプラスト樹脂、ブロックトポリイソシアネート又はそれらの組合せである。特に、ブロックトイソシアネートが、分散相中に含まれてよい。好ましい一実施態様においては、硬化剤は、連続相中に存在する。
【0040】
本発明の塗料組成物は、さらに、1つ又は双方の相中で、追加の添加剤及び成分、例えば均染剤、流れ調節剤、酸触媒、粘着改質剤、UV吸収剤、HALS化合物、酸化防止剤、湿潤剤、可塑剤等を含有してよい。好適な添加剤又は化合物は、本発明の塗料組成物の澄明な及び透明な性質に硬化後に著しい影響を及ぼすべきでないことを評価するべきである。
【0041】
本発明の極性ポリマー粒子は、コロイドの大きさ、すなわち、平均で、直径約0.01〜約2ミクロン(100〜20000オングストローム)、有利には直径約0.05〜約0.5ミクロン(500〜5000オングストローム)であってよい。その粒子サイズは、通常の及びよく知られた光散乱又は他の技術によって測定されてよい。
【0042】
本発明のハイソリッド分散液は、典型的に、固体含量が、57質量%より大きく、より有利には62質量%より大きく、及び最も有利には67質量%より大きいように製造される。一実施例において、本発明のハイソリッド塗料は、まだ優れた処理及び性能の特徴を示す間に、1ガロンの塗料当たり約2.75ポンド(揮発性)に等しい約67質量%(固体)を有することが観測されている。本発明の重要な特徴は、塗料のハイソリッド含量が、適用に適した粘度が保たれている間に、例えば噴霧によって達成されることである。
【0043】
本発明のクリアコート組成物は、実質的に澄明及び透明であり、かつ自動車の塗料組成物としての使用に特に好適である。例えば、本発明の塗料組成物は、電着プライマー、プライマーサーフェーサー及び/又はベースコートの層の上に適用された自動車のクリアコート塗料として使用されてよい。
【0044】
本発明の塗料組成物は、当業者によく知られているあらゆる多くの技術によって物品に適用することができる。前記技術は、例えば、スプレー塗装、浸漬塗装、ロール塗装、カーテン塗装等を含む。物品、例えば自動車の車体板のために、スプレー塗装が好ましい。本発明のハイソリッドの非水系分散液の塗料を用いると、高分子量ポリマーは、スプレー塗装されてよく、かつ得られた被覆の垂れ下り抵抗は、優れている。
【0045】
本発明の組成物で被覆されてよい物品は、プラスチック、金属、木及びそれらの組合せであってよく、その際、プラスチック及び金属が好ましく、かつ金属、例えば鋼、アルミニウムなどが、最も好ましい。かかる下地は、被覆又は未被覆、処理又は未処理、及びそれらの組合せであってよい。最も有利には、本発明の組成物で被覆されるための物品又は下地は、下塗り又は電着、及び有利にはベースコート層で上塗りされてよい。
【0046】
物品を本発明の塗料組成物の1つ以上の適用で被覆した後に、適用された被覆を硬化するための条件を受ける。硬化の種々の方法を使用してよいが、熱硬化が好ましい。一般に、熱硬化は、被覆された物品を本質的に放射熱源によって提供される高温に曝すことによってもたらされる。硬化温度は、硬化剤において使用される特定のブロック基に依存して変化するだろう。しかしながら、硬化温度は、一般に93℃〜177℃の範囲であり、及び有利には121℃〜141℃である。その硬化時間は、使用される特定の成分、及び物理的パラメータ、例えば被覆の厚さに依存して変化するだろう。典型的な硬化時間は、約15〜約60分の範囲であってよい。
【0047】
本発明のハイソリッドの非水系分散液のクリアコートを硬化する好ましい架橋は、ウレタン架橋である。特に、ウレタン架橋は、カルバメート官能性ポリマーとメラミン架橋剤との、及び/又はヒドロキシル官能性ポリマーとブロックトイソシアネート架橋剤との反応によって形成される。ウレタン架橋の量は、本発明のハイソリッドの非水系分散液のクリアコートの硬化中に形成された架橋の、有利には0%より多く、より有利には15%より多く、及び最も有利には30%よりも多い。
【0048】
次の実施例は、特許保護が請求された本発明の説明であって、本発明の範囲の制限を意図しない。
【0049】
実施例
本発明による塗料組成物を、以下の第1表において示されるように、材料を順番に混合し、そして撹拌下で混合することによって製造した。全ての挙げられた製品は、別の指定がない限り、質量部である。
【表1】

【0050】
実施例の硬化可能な塗料組成物を、次に従って評価した。対照は、ミシガン州サウスフィールドのBASF Corporationから入手できるメラミン系の、R10CG060Dの、通常のハイソリッドのカルバメートアクリルであった。試験のために、その組成物を、275゜Fで25分間硬化した。全ての実施例は、許容できる掻き傷及び擦傷抵抗を示した。以下の第2表において示される結果は、実施例1、2及び3の組成物が等しい又は低い粘度を有することを示す一方で、低減されたVOC、並びに改良された垂れ下り抵抗及びはじけ抵抗を示す。特に重要な結果は、実施例によって示された極めて改良された垂れ下り抵抗であった。環境腐食抵抗も、実施例1に関して改良されたことが認められ、その際、値1が最良である。
【表2】

【0051】
従って、本発明のハイソリッドの非水系分散液のクリアコートは、性質の均一性、例えば高い固体率、適用の容易さ、極めて低減させた垂れ下り、環境腐食に対する耐久度及び抵抗、並びに優れた完成した外観を達成する。本発明の塗料は、自動車のクリアコートの分野に対する著しい進歩を提供する。
【0052】
本発明は、好ましい実施態様に関する詳細において記載されている。しかしながら、変更及び修正は、本発明の趣旨及び範囲内にあると解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)カルバメート官能性ポリマー、
b)ヒドロキシル官能性ポリマー、
c)アミノプラスト樹脂及びブロックポリトイソシアネートからなる群から選択される硬化剤、並びに
d)弱い非極性溶剤、
を含有する、ハイソリッドの非水系分散液のクリアコート塗料組成物であって、その際、この塗料は、実質的に澄明及び透明なハイソリッドであり、かつさらに、分散相及び連続相を含有し、その際連続相は溶剤を含有する、クリアコート塗料組成物。
【請求項2】
前記の連続相が、さらに硬化剤を含有する、請求項1に記載のクリアコート組成物。
【請求項3】
前記のカルバメート官能性ポリマーが、分散相中に存在し、かつヒドロキシル官能性ポリマーが、連続相中に存在する、請求項2に記載のクリアコート組成物。
【請求項4】
前記のカルバメート官能性ポリマー及びヒドロキシル官能性ポリマーが、分散相中に存在する、請求項2に記載のクリアコート組成物。
【請求項5】
さらに、連続相中に存在するヒドロキシル官能性ポリマーを含有する、請求項4に記載のクリアコート組成物。
【請求項6】
前記のヒドロキシル官能性ポリマーが、分散相中に存在し、かつカルバメート官能性樹脂が、連続相中に存在する、請求項2に記載のクリアコート組成物。
【請求項7】
前記ポリマーが、数平均分子量6000〜100000ダルトンを有する、請求項2に記載のクリアコート組成物。
【請求項8】
該ポリマーが、数平均分子量10000〜25000ダルトンを有する、請求項2に記載のクリアコート組成物。
【請求項9】
前記の硬化剤が、弱い非極性溶剤中で可溶なメラミン樹脂を含有する、請求項1に記載のクリアコート組成物。
【請求項10】
揮発性有機含量が、塗料組成物の約3.785リットル(1ガロン)当たりの揮発性有機溶剤約1.453キログラム(3.2ポンド)未満を有する、請求項1に記載のクリアコート組成物。
【請求項11】
揮発性有機含量が、塗料組成物の約3.785リットル(1ガロン)当たりの揮発性有機溶剤約1.362キログラム(3.0ポンド)未満を有する、請求項1に記載のクリアコート組成物。
【請求項12】
弱い非極性溶剤が、VM&Pナフサを含有する、請求項1に記載のクリアコート組成物。
【請求項13】
クリアコート組成物が、少なくとも約57質量%の固体含量を有する、請求項1に記載のクリアコート組成物。
【請求項14】
a)第一のカルバメート官能性ポリマー、
b)第二のカルバメート官能性ポリマー、
c)アミノプラスト樹脂及びブロックトポリイソシアネートからなる群から選択される硬化剤、並びに
d)弱い非極性溶剤、
を含有する、ハイソリッドの非水系分散液のクリアコート組成物であって、その際、この塗料は、実質的に澄明及び透明なハイソリッドであり、かつさらに、第一のカルバメートポリマーを含有する分散相を含有し、該分散相は連続相中に分散され、該連続相は、硬化剤、第二のカルバメート官能性ポリマー及び弱い非極性溶剤を含有する、クリアコート組成物。
【請求項15】
a)アミノプラスト樹脂及びブロックトポリイソシアネートからなる群から選択される硬化剤、
b)弱い非水系溶剤、並びに
c)硬化剤と反応するポリマー
を含有する、ハイソリッドの非水系分散液のクリアコート組成物であって、その際、その塗料は、実質的に澄明及び透明なハイソリッドであり、かつ、硬化剤及びポリマーを含有する分散相を含有し、該分散相は連続相中に分散され、該連続相は、弱い非極性分子を含有する、クリアコート組成物。
【請求項16】
前記のポリマーが、カルバメート官能性ポリマーを含有する、請求項15に記載のハイソリッドの非水系分散剤のクリアコート組成物。
【請求項17】
前記の分散相がさらに、ヒドロキシル官能性ポリマーを含有する、請求項16に記載のハイソリッドの非水系分散液のクリアコート組成物。
【請求項18】
前記のポリマーが、ヒドロキシル官能性ポリマーを含有する、請求項15に記載のハイソリッドの非水系分散液のクリアコート組成物。
【請求項19】
a)ヒドロキシル官能性ポリマーを含有する分散相、並びに
b)ブロックトポリイソシアネート硬化剤及び弱い非極性溶剤を含有する連続相、
を含有する、ハイソリッドの非水系分散液のクリアコート組成物であって、その際、この塗料が、実質的に澄明及び透明なハイソリッドである、クリアコート組成物。

【公表番号】特表2009−534505(P2009−534505A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506700(P2009−506700)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/066683
【国際公開番号】WO2007/124290
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(591020700)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (53)
【氏名又は名称原語表記】BASF Corporation
【住所又は居所原語表記】100 Campus Drive, Florham Park, New Jersey 07932, USA
【Fターム(参考)】