説明

ハイドロゲル及びそれを用いたゼリー状食品

【課題】凝固温度を低くするために低濃度で使用しても、ゼリーとしてのゲル強度を発現できる寒天を含むハイドロゲル、及び容器に無菌充填されて作られた該ハイドロゲルよりなるゼリー状食品を提供する。
【解決手段】テングサ属、オゴノリ属、及びオバクサ属のうち少なくとも1以上を原料とし、1.5重量%における日寒水式のゲル強度が1500g/cm以上、重量平均分子量が600000以上、及び分子量分布(Mw/Mn)が13以下である寒天を0.05〜0.20重量%含み、テクスチャーアナライザーを使用した測定によるゲル強度が20g/cm以上、及びゲルの凝固温度が30℃以下であることを特徴とするハイドロゲルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝固温度を低くするために低濃度で使用しても、ゼリーとしてのゲル強度を発現できる寒天を含むハイドロゲル、及び容器に無菌充填されて作られた該ハイドロゲルよりなるゼリー状食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゼリー状でありながら、ストローで吸ったり、振ってゼリーを壊して飲んだりする飲む形態のゼリー飲料が出てきた(例えば、特許文献1)。これらのゼリー飲料には、容器に充填する前に高温殺菌を必要とする。殺菌の方法としては、超高温殺菌法(UHT)、高温短時間殺菌法(HTST)、及びマイクロ波や通電による加熱殺菌法などが挙げられ、耐熱性の細菌を流通上問題のない菌数まで低く抑えている。したがって、ゼリー飲料には、耐熱性が必要となるため、耐熱性を有するゲル化剤が添加されている。これらのゲル化剤としては、一般には、寒天、ジェランガム、又はカラギナンなどが用いられている。これらに加えて、粘性を上げるために、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアーガム、又はペクチンなどが併用されることもある。
【0003】
ところで、上記ゼリー飲料の容器には、種々のものが使用され、特に成型と充填を同時に行うことができ、無菌充填も行うことができ、リサイクルができるなどの点から紙容器が使用されている。紙容器としては、例えば、屋根型紙容器、テトラ紙容器、紙カート缶、及び紙カップが挙げられる。しかし、紙容器は耐熱性がないという問題がある。そのため、例えば、コーヒー飲料を紙容器に充填する場合は、あらかじめコーヒー飲料をUHT殺菌し、プレートクーラーなどで連続的に常温近くまで冷却し、無菌タンクに収めて、そこでコーヒー飲料を無菌にした紙容器に充填している。コーヒー飲料のように、ゲル化剤を含有しない飲料であれば、このような方法でも、問題なく液体の状態で紙容器に充填することができる。しかし、ゲル化剤を含有するゼリー飲料は、40℃付近で凝固し始めるため、長期間無菌タンクに貯留させるとゲル化が進み、流動性を失うため充填が困難となる。また充填されたとしても一旦形成されたゲルが破壊されるなどで離水が多量に発生し、製品価値が失われてしまうという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するために、ゼリー飲料中に含まれる寒天などのゲル化剤の濃度を下げ、ゼリー飲料の凝固温度を下げることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−261359号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、寒天などのゲル化剤の濃度を下げると、充分なゲル強度が得られず、ゼリーとしての食感を失ってしまうという問題がある。一方、ゼリーとしての食感を得るためにゲル化剤の濃度を上げると、凝固温度が高くなり40℃より低い温度で充填できないという問題がある。そこで本発明は、凝固温度を低くするために低濃度で使用しても、ゼリーとしてのゲル強度を発現できる寒天を含むハイドロゲル、及び容器に無菌充填されて作られた該ハイドロゲルよりなるゼリー状食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の寒天を0.05〜0.20重量%含有させることにより、凝固温度が低く、かつゲル強度が高いハイドロゲルが得られることを見出した。すなわち、本発明は、テングサ属、オゴノリ属、及びオバクサ属のうち少なくとも1以上を原料とし、1.5重量%における日寒水式のゲル強度が1500g/cm以上、重量平均分子量が600000以上、及び分子量分布(Mw/Mn)が13以下である寒天を0.05〜0.20重量%含み、テクスチャーアナライザーを使用した測定によるゲル強度が20g/cm以上、及びゲルの凝固温度が30℃以下であることを特徴とするハイドロゲルである。また、本発明は、容器に無菌充填されて作られた前記ハイドロゲルを含むゼリー状食品である。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、凝固温度を低くするために低濃度で使用しても、ゼリーとしてのゲル強度を発現できる寒天を含むハイドロゲル、及び容器に無菌充填されて作られた該ハイドロゲルよりなるゼリー状食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において用いられる寒天は、テングサ属、オゴノリ属、及びオバクサ属のうち少なくとも1以上の海藻を原料とする。テングサ属、オゴノリ属、及びオバクサ属の海藻は、一般に用いられているものを制限なく用いることができる。
【0010】
本発明において用いられる寒天は、1.5重量%における日寒水式のゲル強度が1500g/cm以上であり、1600g/cm以上であることが好ましく、1700g/cm以上であることがさらに好ましい。
【0011】
本発明において用いられる寒天は、重量平均分子量Mwが600000以上であり、700000以上であることが好ましく、800000以上であることがさらに好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が13以下であり、9以下であることが好ましく、7以下であることがさらに好ましい。本発明においては、特に分子量の分布のうち低分子量成分が少ないことが特長である。
【0012】
分子量分布(Mw/Mn)は、Mwが重量平均分子量、Mnが数平均分子量を表し、次の式で求めることができる。
【0013】
〔式1〕

(Mpは重合度Pの分子の分子量で、Npはこれが試料中に含まれる個数)
分子量分布Mw/Mnは、値が大きいものほど分子量分布が広いことを示している。
【0014】
本発明において用いられる寒天は、例えば、テングサ属、オゴノリ属、及びオバクサ属のうち少なくとも1以上の海藻を原料とし、アルカリ処理後水洗し、それを緩衝剤を含む熱水で抽出して濾過した後、濾液を冷却してゲル化させ、そのゲル化物を水に浸漬し、脱水及び乾燥させることにより得ることができる。以下、詳述する。
【0015】
第1に、海藻原料をアルカリ処理する。一般的には、海藻原料を0.5〜20重量%のNaOHやKOHなどの強アルカリ水溶液中に温度20〜100℃にて0.5〜48時間浸漬する。
【0016】
第2に、アルカリ処理により、原料の海藻に付着や浸透したアルカリを、水を用いて洗浄処理し、アルカリを除去する。
【0017】
第3に、寒天成分を熱水抽出する。一般的には、pH7.4〜8.0、温度70〜120℃に調整した熱水を用いて、1〜3時間熱水抽出し寒天成分を抽出する。pHは、抽出開始直後は前記調整したpH範囲であるが、抽出が進むにつれて徐々に低下してpH7.4以下なってしまう。このため、寒天成分の加水分解が生じ、低分子量成分ができる。この低分子量成分により、生成する寒天のゲル強度が下がり、重量平均分子量も小さくなり、さらには分子量分布の幅も広くなる。特に工業生産において大量の海藻から寒天を抽出する場合、pHは抽出釜内で時間差変動があり、均一にコントロールすることは非常に難しい。その手段として、抽出中もpH7.4〜8.0の値に常に維持し安定化するために、熱水にpH変動を小さくする目的で緩衝剤を添加するのが好ましい。緩衝剤としては、弱酸性と強アルカリ性の塩、弱アルカリ性の塩、及びそれらの組合せ、並びに弱アルカリ性の塩と弱酸性の塩との組合せなどが挙げられ、具体的には、第二リン酸ナトリウム、第二リン酸カリウム、リン酸二カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、第一リンナトリウム、第一リン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロピン酸四カリウム、ピロリン酸水素ナトリウム、ピロリン酸水素カリウム、ピロリン酸二水素ナトリウム、及びクエン酸ナトリウム等が挙げられる。緩衝剤は、熱水のpHが変動しないようにできる程度の量を添加すればよい。これにより、従来の強アルカリである水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを使用したpH調整よりも、pHの変動が少なく、アルカリによる着色褐変化が少なくなる。
【0018】
第4に、抽出物を濾過する。濾過は、例えば、フィルタープレス等で加圧濾過を行い、濾液を分離する。
【0019】
第5に、濾液を冷却する。冷却することにより、濾液は、ゲル化する。
【0020】
第6に、ゲル化したゲル化物を水に浸漬(以下、水漬けという場合がある。)する。浸漬時間は12〜48時間であるのが好ましい。水は適当な時間に入れ替えてもよい。ゲル化物を水に浸漬することにより、熱水抽出で生じた低分子量成分を水相に溶出させ、ゲル化物から除去することができる。これにより、分子量分布の狭い寒天を得ることができる。従来、寒天中の低分子量成分を積極的に除去することは、実際の生産スケールの規模では難しく、行われていない。このため、通常の寒天には低分子量成分が多く存在し、褐変、食感低下などの問題が生じている。本発明において用いられる寒天は、ゲル化物を水に浸漬するという生産スケールでも行える方法により、低分子量成分が除去されている。ゲルの水漬けによる低分子量成分の除去が有効なのは、熱水抽出の際に緩衝剤を用いているため、高いゲル強度を有する高分子量のゲル化物となり、水漬けで崩壊や溶解せずゲル状態を維持できるからである。ゲル化物を低濃度にするとゲルの網目構造は大きなマトリックスとなり、水溶性に近い低分子量成分が抜けやすくなる。水漬けの際のゲル化物の濃度は、0.2〜2.0重量%であることが好ましく、0.4〜1.2重量%であることがさらに好ましい。0.2重量%より低いと水漬けにおいてゲルを維持できず、2.0重量%を超えると低分子量成分が抜け難くなる。水漬けの際のゲル化物の濃度は、例えば、熱水抽出後に水を加える等によって調整することができる。
【0021】
第7に、ゲル化物を脱水及び乾燥する。脱水する方法としては、ゲル化物を冷凍・解凍して脱水する方法、及びゲル化物を圧搾することにより脱水する方法などが挙げられる。乾燥する方法としては、一般的な乾燥方法が挙げられる。ゲル化物中の水分は、乾燥により、寒天が粉末として安定する平衡水分値(22重量%以下)まで蒸発させるのが好ましい。
【0022】
以上のようにして、本発明において用いられる寒天を得ることができる。得られた寒天は、粉砕機等を使用して粉末状やフレーク状に調整してもよい。
【0023】
本発明において用いられる寒天は、高融点であるため、常圧においては沸騰させても完全溶解しない。完全溶解させるためには、加圧下100℃以上にて溶解する必要がある。これを常圧で溶解できるようにして使いやすくさせるために、特公昭63−005053、特開平6−153873、又は特開平01−153067等に記載の方法により易溶性にすることもできる。特に、常圧下において、80〜100℃の熱水に溶解するように易溶性にすることが好ましい。
【0024】
本発明に係るハイドロゲルは、前記寒天を0.05〜0.20重量%、好ましくは0.05〜0.15重量%、さらに好ましくは0.05〜0.10重量%含む。寒天の量が前記値より少ないと、ゲル化力が弱く好ましくない。寒天の量が前記値より多いと、凝固温度が高くなり好ましくない。
【0025】
本発明に係るハイドロゲルは、本発明に係る効果を妨げない範囲で、寒天以外の他の添加物を含んでいてもよい。添加物としては、糖類、酸味料、香料、多糖類、ビタミン、ミネラル、及びタンパク質等が挙げられる。糖類としては、例えば、ブドウ糖、エリスリトール、ソルビトール、及びフルクトースなどの単糖類、シュクロース、マルトース、及びトレハロースなどの2糖類、並びにオリゴ糖などが挙げられる。酸味料としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、及びフマル酸などが挙げられる。香料としては、一般に食品に使用されているものを用いることができる。多糖類としては、例えば、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、フェヌグリークガム、タマリンドガム、カラギナン、ジェランガム、ネーティブジェランガム、ペクチン、デンプン、及びアルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。ビタミン、及びミネラルとしては、一般に食品に使用されているものを用いることができる。タンパク質としては、例えば、コラーゲン、ゼラチン、及び乳清などが挙げられる。
【0026】
本発明に係るハイドロゲルは、前記寒天を前記所定量配合させることにより、ゲル強度を高く、かつ凝固温度を低くすることができる。本発明に係るハイドロゲルは、10℃におけるゲル強度が、テクスチャーアナライザーでの測定で少なくとも20g/cm以上である。ハイドロゲルの凝固温度は、30℃以下であり、28℃以下であることがより好ましく、27℃以下であるのがさらに好ましい。凝固温度が低いほど製造上扱いが容易になる。
【0027】
本発明においては、凝固温度が低く、かつゲル強度が高い寒天ゲルを得ることができる。従来の寒天においては、このような寒天ゲルを得ることができない。例えば、特許2560027号の記載に基づいて製造される比較的強度の高い伊那寒天M−13(商標)は、日寒水式のゲル強度で、1300g/cmであるが、これを0.1重量%に調整しても、10℃におけるゲル強度が、テクスチャーアナライザーでの測定で8〜12g/cmであり、ゲル強度が低く、ゼリーとしての食感としては不十分である。一方、伊那寒天M−13の含有濃度を上げて、例えば、0.25重量%に調整すれば、ゲル強度が30〜50g/cmとなるが、凝固温度は34℃となって凝固温度が高くなってしまう。通常の強度の寒天、例えば伊那寒天S−7(商標)では、濃度0.3〜0.5重量%で寒天を含有させれば、高いゲル強度をだすことができるが、凝固温度が33〜35℃程度となり、凝固温度が高くなってしまう。また、凝固温度の低い伊那寒天Z−10(商標)で、凝固温度30℃以下である寒天ゲルを作製すると、伊那寒天Z−10の含有濃度は0.3重量%程度となり、そのときのゲル強度は5〜10g/cmと、ゲル強度としては不十分である。
【0028】
本発明に係るハイドロゲルは、前記寒天を水に前記所定量添加して、公知の方法により製造することができる。
【0029】
本発明に係るゼリー状食品は、前記ハイドロゲルを容器(例えば紙容器)に無菌充填して作ることができる。本発明に係るハイドロゲルは、凝固温度が低いので、充填の際にゲル化することがないため、容易に紙容器などに充填することができる。また、ゲル強度が高いので、ゼリーとしての食感をだすことができる。
【実施例】
【0030】
実施例及び比較例においては、以下の原料を用いた。
伊那寒天S−7:伊那食品工業社製 分子量350000,ゲル強度700g/cm
伊那寒天Z−10:伊那食品工業社製 分子量370000,ゲル強度460g/cm
伊那寒天M−13:伊那食品工業社製 分子量550000,ゲル強度1300g/cm
【0031】
(製造例1:寒天1)
テングサ(日本産)1kgを90℃の5重量%NaOH溶液20kgに2時間浸漬した。NaOH溶液を除去し、水にて充分洗浄しアルカリを除去した。このテングサを水20kgに入れ、さらにそこに緩衝剤として第二リン酸ナトリウムを6g添加し、pHを7.8に調整した後、97℃にて2時間寒天の抽出を行った。この溶液を濾過し、濾液を冷却してゲル化を行った。得られたゲル化物(寒天濃度は0.8重量%)に対し同質量の水を添加し、18時間放置した。その後、ゲル化物を取り出し、圧搾脱水を行った後、90℃にて乾燥し、粉砕して製造例1に係る寒天(寒天1)を得た。得られた寒天の物性測定方法を以下に示し、その結果を表1に示す。
【0032】
(製造例2:寒天2)
オゴノリ(日本産)1kgを90℃の5重量%NaOH溶液20kgに2時間浸漬した。NaOH溶液を除去し、水にて充分洗浄しアルカリを除去した。このオゴノリを水20kgに入れ、さらにそこに緩衝剤として第三リン酸ナトリウム3.5g及び第一リン酸ナトリウム2.5gを添加し、pHを7.5に調整した後、97℃にて2時間寒天の抽出を行った。この溶液を濾過し、濾液を冷却してゲル化を行った。得られたゲル化物(寒天濃度は0.8重量%)に対し同質量の水を添加し、18時間放置した。その後、ゲル化物を取り出し、圧搾脱水を行った後、90℃にて乾燥し、粉砕して製造例2に係る寒天(寒天2)を得た。得られた寒天の物性測定方法を以下に示し、その結果を表1に示す。
【0033】
(製造例3:寒天3)
オバクサ(日本産)1kgを90℃の5重量%KOH溶液20kgに2時間浸漬した。KOH溶液を除去し、水にて充分洗浄しアルカリを除去した。このオバクサを水20kgに入れ、さらにそこに緩衝剤として第二リン酸カリウム5.0g及び第一リン酸カリウム1.0g添加し、pHを7.9に調整した後、95℃にて2時間寒天の抽出を行った。この溶液を濾過し、濾液を冷却してゲル化を行った。得られたゲル化物(寒天濃度は0.8重量%)に対し同質量の水を添加し、18時間放置した。その後、ゲル化物を取り出し、圧搾脱水を行った後、90℃にて乾燥し、粉砕して製造例3に係る寒天(寒天3)を得た。得られた寒天の物性測定方法を以下に示し、その結果を表1に示す。
【0034】
(製造例4:寒天4)
寒天1の5重量%分散液を高圧釜にて115℃で5分間加熱し溶解させ、ドラムドライヤー(楠木機械社製,ドラム表面温度121℃)にて乾燥後、粉砕することにより製造例4に係る寒天(寒天4)を得た。寒天4の1gを水100gに分散し97℃で5分間溶解した。目視により溶解が確認された。得られた寒天の物性測定方法を以下に示し、その結果を表1に示す。
【0035】
ゲル強度:日寒水式(寒天濃度 1.5重量%,溶解条件110℃,10分)に従って測定した。
重量平均分子量(Mw):HPLCによるGPC法に従って測定した。具体的には、寒天0.3gを200mLの蒸留水に溶解(110℃,5分)し、カラム(TOSOH TSK−GEL for HPLC, TSK−GEL GMPWXL)を使用して測定した。
分子量分布(Mw/Mn):重量平均分子量/数平均分子量により求めた。(1に近いほど分子量分布が狭い)なお、Mnも同様にしてHPLC法により求めた。
【0036】
【表1】

【0037】
(実施例1〜4,比較例1〜6)
表2に示した条件にて、水100gに寒天を分散させ、表2に示した加熱条件で加熱溶解させた。この寒天溶液のゲル化開始温度(凝固温度)及びゲル強度を下記のように測定した。結果を表2に示す。
【0038】
凝固温度(℃):寒天溶液を複数の試験管に4mL入れ、徐々に温度を下げ、試験管を傾斜させて寒天溶液がスムーズに流動しなくなった温度を凝固点とした。
ゲル強度(g/cm):寒天溶液を直径40mm、高さ20mmの円形容器に充填し、10℃に冷却後、テクスチャーアナライザー(TAXT−Plus,英弘精機社製、プランジャー:1cm円柱状、進入速度20mm/分、測定温度10℃)にて測定した。本発明のハイドロゲルは低強度であるため、低強度でも正確にゲル強度が測定できるテクスチャーアナライザーを使用した。
【0039】
【表2】

【0040】
表2より、本発明に係るハイドロゲルは、凝固温度が低く、かつゲル強度が高いことが分かる。
【0041】
(実施例5〜6,比較例7〜13)
表3乃至5に示した配合にて、ハイドロゲルを作製した。具体的には、熱水に寒天を97℃で10分間加熱(伊那寒天M−13を用いた場合に限り、オートクレーブを使用して加圧下において110℃で5分間加熱)して溶解させ、80℃に冷却後、砂糖、クエン酸、及びクエン酸Naを添加してpHを3.8に調整した。この溶液をUHT(フランシュールジャパン社製)にて処理(90℃、5分)後、28℃に冷却し、プラスチックカップに無菌充填した。これを10℃に冷却してハイドロゲルを得た。ハイドロゲルの状態をパネラーにより確認した。また、ゲル強度をテクスチャーアナライザー(TAXT−Plus,英弘精機社製、プランジャー:1cm円柱状、進入速度20mm/分、測定温度10℃)にて測定した。結果を表3乃至5に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
(実施例7〜9,比較例14〜16)
表6に示す寒天を0.05重量%となるように精製水に分散させた。分散液は、全部で500gとなるようにした。この分散液を115℃で5分間加熱して溶解させ寒天溶液を得た。ゲル強度と凝固温度を実施例1と同様に測定した。結果を表6に示す。
【0046】
【表6】

【0047】
(実施例10〜12,比較例17〜19)
寒天の濃度を0.05重量%とする代わりに0.075重量%とした以外は、実施例7乃至9及び比較例14乃至16と同様にして、寒天溶液を得た。ゲル強度と凝固温度を実施例1と同様に測定した。結果を表7に示す。
【0048】
【表7】

【0049】
(実施例13〜15,比較例20〜22)
寒天の濃度を0.05重量%とする代わりに0.1重量%とした以外は、実施例7乃至9及び比較例14乃至16と同様にして、寒天溶液を得た。ゲル強度と凝固温度を実施例1と同様に測定した。結果を表8に示す。
【0050】
【表8】

【0051】
(実施例16〜18,比較例23〜25)
寒天の濃度を0.05重量%とする代わりに0.125重量%とした以外は、実施例7乃至9及び比較例14乃至16と同様にして、寒天溶液を得た。ゲル強度と凝固温度を実施例1と同様に測定した。結果を表9に示す。
【0052】
【表9】

【0053】
(実施例19〜21,比較例26〜28)
寒天の濃度を0.05重量%とする代わりに0.15重量%とした以外は、実施例7乃至9及び比較例14乃至16と同様にして、寒天溶液を得た。ゲル強度と凝固温度を実施例1と同様に測定した。結果を表10に示す。
【0054】
【表10】

【0055】
(実施例22〜24,比較例29〜31)
寒天の濃度を0.05重量%とする代わりに0.175重量%とした以外は、実施例7乃至9及び比較例14乃至16と同様にして、寒天溶液を得た。ゲル強度と凝固温度を実施例1と同様に測定した。結果を表11に示す。
【0056】
【表11】

【0057】
(実施例25〜27,比較例32〜34)
寒天の濃度を0.05重量%とする代わりに0.2重量%とした以外は、実施例7乃至9及び比較例14乃至16と同様にして、寒天溶液を得た。ゲル強度と凝固温度を実施例1と同様に測定した。結果を表12に示す。
【0058】
【表12】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
テングサ属、オゴノリ属、及びオバクサ属のうち少なくとも1以上を原料とし、1.5重量%における日寒水式のゲル強度が1500g/cm以上、重量平均分子量が600000以上、及び分子量分布(Mw/Mn)が13以下である寒天を0.05〜0.20重量%含み、テクスチャーアナライザーを使用した測定によるゲル強度が20g/cm以上、及びゲルの凝固温度が30℃以下であることを特徴とするハイドロゲル。
【請求項2】
請求項1記載のハイドロゲルを含み、容器に無菌充填されて作られたことを特徴とするゼリー状食品。





【公開番号】特開2011−103819(P2011−103819A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263008(P2009−263008)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000118615)伊那食品工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】