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ハイドロゲル基材の作製方法および細胞集塊の形成方法
説明

ハイドロゲル基材の作製方法および細胞集塊の形成方法

【課題】平板状あるいは微細構造を有するプレート状のアルギン酸ハイドロゲル基材の作製手法において必要であった、特殊な作製装置を不要とし、簡便な操作のみによって微細構造を有するプレート状のアルギン酸ハイドロゲル基材の作製を可能とする新規手法を提供する。
【解決手段】アルギン酸ナトリウムとアルギン酸プロピレングリコールを含む混合水溶液を調製し、前記混合水溶液を鋳型の上に注ぎ、さらに、その上に多価の金属カチオンを含むゲル化剤水溶液を注ぐことによって前記混合水溶液をゲル化し、さらに、ゲル化した前記混合水溶液を鋳型から取り外すことによってプレート状のハイドロゲル基材を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造を有するハイドロゲル基材の作製方法及び、微細構造を有するハイドロゲル基材を利用した細胞集塊の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体外における3次元的な組織や臓器の構築を目的として、これまでに様々な技術が開発されてきた。代表的なものとして、温度応答性培養基板を用いた細胞シートの形成と積層化、ハイドロゲルへの細胞の埋包と培養、スポンジ状のスキャホールド(細胞培養のための足場となる基材)の利用、非接着性表面を用いた細胞集塊の形成、脱細胞化臓器への細胞の再導入など、様々な手法が提案されている。
【0003】
中でもハイドロゲル材料は、生体親和性・保水性・物質透過性などの特徴を有するため、3次元的な細胞培養のために利用される最も一般的な材料のひとつである。ハイドロゲルの材料としては、コラーゲンやアルギン酸などの天然高分子や、末端に反応基を有するPEG分子などが頻繁に用いられている。
【0004】
そしてこれらハイドロゲル材料の中でも、海藻由来の天然高分子であるアルギン酸によって構成されるハイドロゲルは、加熱を必要としない温和なゲル化条件、高い機械的強度、低価格、などの特長を持つため、ハイドロゲルの形状を保ちつつ、内部に細胞を埋包し培養を行うことを可能とする汎用的な材料として、広く利用されている。細胞培養時において利用されるアルギン酸ハイドロゲルの形態としては、直径1〜3ミリメートル程度の粒子状あるいはファイバー状のものが一般的である。
【0005】
一方、ハイドロゲル基材の内部に細胞を埋包した比較的大きな3次元的組織を作製するためには、ハイドロゲル内部に存在する細胞に効率的に酸素や栄養分を供給する必要がある。そのため、表面や内部に微細構造や流路構造を有するハイドロゲル基材を作製する必要がある。
【0006】
内部や表面に微細構造・流路構造を有し、さらに内部に細胞を埋包したアルギン酸カルシウムハイドロゲル基材の作製方法として、非特許文献1に報告されているような、マイクロモールディングによる手法がこれまでに提案されている。この手法は、平板状あるいは微細構造を有する下面基板と、上面の多孔質膜を利用して、プレート状のアルギン酸ハイドロゲル基材を作製するものである。実際には、アルミ製の枠に下面基板を設置し、その上に細胞を含むアルギン酸ナトリウム水溶液を注ぎ、さらにその上に多孔質膜を載せる。そして、その上に塩化カルシウム水溶液を注ぐと、カルシウムイオンが多孔質膜を介してアルギン酸ナトリウム溶液に浸潤することで、アルギン酸がゲル化し、アルギン酸カルシウムハイドロゲルを作製することができる。
【0007】
また、微細構造を有する下面基板を利用することで、片面に微細構造を有するプレート状のアルギン酸カルシウムゲルを作製し、さらに、アルミ製の枠を利用して、平板状のアルギン酸カルシウムゲルと圧力印加によって物理的に接着させることで、内部にマイクロ流路ネットワークを組み込んだアルギン酸カルシウムゲル基材を得ることも可能である。
【0008】
一方、たとえば初代肝細胞のように、体外に取り出し平面状の培養基板において培養すると急速に本来の機能を失ってしまう細胞は、細胞集塊を形成させることで、その機能を長期にわたって維持可能であることが知られている。そのような細胞集塊は、通常は球状であるため、スフェロイドと呼ばれている。スフェロイドは、そのサイズが大きすぎると中心部の細胞は壊死してしまうため、大きさを制御したスフェロイド形成を行うために、これまでに様々な手法が提案されてきた。たとえば、細胞接着性の異なる高分子が表面にパターン化された基材を用いた培養方法、ポリマー基板に形成された微小なウェル構造を用いた培養方法などが報告されている。
【0009】
また、細胞集塊形成のために、非特許文献2に示すように、ハイドロゲル基材の表面上に微細な円柱状のウェル構造を形成し、その円柱状のウェル構造内部において細胞集塊を形成させる手法も提案されている。具体的には、光重合性キトサンの水溶液の上に鋳型として微細な円柱状凸構造を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)基板をのせ、その上から光を照射しゲル化することで、微細な円柱状のウェル構造を有するハイドロゲルが得られる。この光重合性キトサンゲルの表面は、ゲル化直後は細胞接着性が低いため、微細な円柱状ウェル構造内部に細胞を播種し培養すると、細胞同士が凝集し、細胞集塊を形成することが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「ネイチャー・マテリアルズ(Nature Materials)」、6、908−915、2007.
【非特許文献2】「バイオマテリアルズ(Biomaterials)」、27、5259−5267、2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一般的に、アルギン酸ナトリウム水溶液を多価の金属カチオンによってゲル化すると、ゲル化前と比較して体積が劇的に収縮するため、平板状に加工することは困難である。そのため、上記非特許文献1に記載された手法では、表面に微細構造を有する平板状のアルギン酸ハイドロゲル基材を作製するために、ゲル化時の変形を抑えるための多孔質膜とアルミ製の枠を組み合わせた、非常に特殊かつ複雑な装置(金属製の枠・冶具)を使用せねばならなかった。
【0012】
また、内部に流路構造を有するプレート状のアルギン酸ハイドロゲル基材を作製するためには、表面に微細な溝構造を有するアルギン酸ハイドロゲル基材を、平板状のアルギン酸ハイドロゲル基材と接着する操作が必要となる。上記非特許文献1に記載されている手法では、ハイドロゲル基材同士を接着させるためには、金属製の枠を利用して圧力を印加し続けねばならず、装置のセットアップが複雑になり、操作が困難になる。また、比較的大きな三次元的組織の構築においては、酸素や栄養分の供給の観点から、ゲル材料自体を培地に浸して培養することが望ましいが、外部に枠や冶具が存在することによって、そのような操作はほぼ不可能であると言える。
【0013】
さらに、上記したように、細胞の機能を維持する上で細胞集塊を形成する操作は重要であるが、既存の手法では、特殊な表面処理を施した基板やウェルプレートを利用せねばならない、という欠点があった。また、上記非特許文献2に記載されている手法では、光によって重合する特殊な高分子を合成する必要があり、実用化するためにはコストの観点から限界があった。
【0014】
本発明は、従来の技術の有する上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来の、平板状あるいは微細構造を有するプレート状のアルギン酸ハイドロゲル基材の作製手法において必要であった、特殊な作製装置を不要とし、簡便な操作のみによって微細構造を有するプレート状のアルギン酸ハイドロゲル基材の作製を可能とする新規手法を提供しようとするものである。
【0015】
また本発明は、プレート状のアルギン酸ハイドロゲル基材同士を接着するために必要であった、物理的に圧力を印加するための特殊な装置および複雑な操作を不要とし、簡便な操作のみでプレート状のアルギン酸ハイドロゲル基材同士を接着する新規手法を提供しようとするものである。
【0016】
さらに本発明は、本発明によって得られる微細構造を有するアルギン酸ハイドロゲル基材を利用することで、特殊な合成ハイドロゲル材料やパターン化基板を用いることなく、簡便かつ再現性良く細胞集塊を形成することを可能とする新規手法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の一観点に係る発明は、アルギン酸ナトリウムとアルギン酸プロピレングリコールを含む混合水溶液を調製し、前記混合水溶液を鋳型の上に注ぎ、さらに、その上に多価の金属カチオンを含むゲル化剤水溶液を注ぐことによって前記混合水溶液をゲル化し、さらに、ゲル化した前記混合水溶液を鋳型から取り外すことによってプレート状のハイドロゲル基材を得る、ハイドロゲル基材の作製方法である。アルギン酸プロピレングリコールをアルギン酸ナトリウムと混合することにより、ゲル化時の体積収縮を抑制することが可能となるため、特殊な外部装置を用いることなく、鋳型にアルギン酸ナトリウムとアルギン酸プロピレングリコールを含む混合水溶液と、多価の金属カチオンを含むゲル化剤水溶液を順に注ぎ、ゲル化後に取り外す、という簡便な操作および装置構成によって、プレート状のアルギン酸ハイドロゲル基材を作製することが可能となる。
【0018】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記プレート状のハイドロゲル基材をポリカチオン水溶液に浸す、あるいは、前記プレート状のハイドロゲル基材にポリカチオン水溶液を塗布することによって、前記プレート状のハイドロゲル基材の表面をポリカチオンによってコートし、ポリカチオンによってコートされた前記プレート状のハイドロゲル基材と、ポリカチオンによってコートされていない他の前記プレート状のハイドロゲル基材を接触させることで、2枚のプレート状のハイドロゲル基材を接着させる、という操作を行うことが可能である。このようにすることで、圧力によって物理的に接着させるための特殊な外部装置を用いることなく、プレート状のハイドロゲル基材同士を、化学的かつ強固に接着することが可能となる。
【0019】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記鋳型とは、平板状の基板、あるいは、微細加工を施した平板状の基板であり、前記プレート状のハイドロゲル基材は、少なくとも片面が平板状あるいは微細な凹凸を有する平板状であることが好ましい。このようにすることで、プレート状のハイドロゲル基材の作製が可能となるため、ハイドロゲル基材同士の接着や、複数枚のハイドロゲルプレートの積層化が可能となるとともに、内部に流路構造等の微細構造を有するハイドロゲル基材の作製が可能となる。
【0020】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記鋳型は、少なくとも部分的に、平板状のシリコンウエハによって形成されている、あるいは、フォトリソグラフィーによって微細加工を施した平板状のシリコンウエハによって形成されていることが好ましい。このようにすることで、平坦性の高い接着表面を有するプレート状ハイドロゲルの作製が可能となり、プレート状ハイドロゲル同士を接着させた場合に高い接着強度を実現できるとともに、精密に設計・作製された微小構造を有するハイドロゲル基材を得ることが可能となる。
【0021】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記混合水溶液のゲル化後の体積は、ゲル化前の体積の60%以上であることが好ましい。このようにすることで、ゲル化時の体積収縮を抑制するとともに、厚みの均一なプレート状のハイドロゲル基材を容易に得ることが可能となるとともに、ハイドロゲル基材への微細構造の正確な転写が可能となる。
【0022】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記混合水溶液に含まれるアルギン酸プロピレングリコールの濃度は、1重量%以上10重量%以下であり、前記混合水溶液に含まれるアルギン酸ナトリウムの濃度は、0.5重量%以上10重量%以下であることが好ましい。このようにすることで、ゲル化時の体積収縮率が低く、かつ物理的強度の高い、プレート状のアルギン酸ハイドロゲル基材の作製が可能となる。
【0023】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記混合水溶液に含まれるアルギン酸プロピレングリコールは、純水に対し1重量%溶解し室温に保った場合に、その粘度が30〜500cPの範囲に存在するものであることが好ましい。このようにすることで、正確かつ操作性の高いハイドロゲル基材の作製が可能となる。
【0024】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記ポリカチオンとは、ポリ-L-リジン、キトサン、ポリエチレンイミン、あるいはこれらの任意の組み合わせであることが好ましい。このようにすることによって、これらの分子は負電荷を有するアルギン酸表面に強固に接着するため、ハイドロゲル基材同士の強固な接着が可能となる。
【0025】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記ポリカチオンの平均分子量は、10万以上であることが好ましい。このようにすることで、ハイドロゲル基材同士のより強固な接着が可能となる。
【0026】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記混合水溶液は必要に応じて細胞を含むようにすることも可能である。このようにすることで、微細構造を有するハイドロゲル基材内部における細胞培養が可能となり、比較的大きな3次元的組織を形成することが可能となる。また、細胞を含むハイドロゲル基材の表面および内部を同時に利用することで、多種の細胞を用いた共培養系の構築も可能となる。
【0027】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記金属カチオンとは、カルシウムイオンであることが好ましい。このようにすることで、バリウムイオンやマグネシウムイオンによってゲル化したアルギン酸ハイドロゲルと比較して、ハイドロゲル基材自体の細胞毒性を抑えることができるほか、バリウム等のアルギン酸とより強く結合する金属カチオンを用いた場合と比較して、ゲル化時の体積収縮をより抑えることが可能となる。
【0028】
また、本発明の一観点に係る発明は、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のハイドロゲル基材の作製方法を用いて作製した微細な凹凸を有するハイドロゲル基材を、凹凸を有する面を上向きにして静置し、細胞を上面に播種し培養することにより、凹凸の形状に応じた細胞集塊を形成するというものである。これにより、細胞接着性の低いハイドロゲル表面を利用することで、細胞をハイドロゲル基材上に形成された凹凸の構造上に播種するだけで、凹凸の形に応じた細胞集塊を正確に形成できるため、従来技術における細胞接着性の異なる表面のパターニング手法、あるいは、特殊な合成ハイドロゲルを利用した手法などと比較して、簡便、正確、かつ安価に細胞集塊を形成することが可能となる。
【0029】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記細胞とは、肝細胞であってもよい。肝細胞は、薬剤のスクリーニングや毒性評価において頻繁に用いられる細胞であるが、生体外で培養すると急速に機能を失う代表的な細胞である。つまりこのようにすることで、肝細胞の細胞集塊を容易に形成することが可能となるため、医学や生化学などの研究分野のみならず、製薬などの産業分野においても有用な手法の提供が可能となる。
【0030】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記微細な凹凸を有するハイドロゲル基材における、微細な凹凸構造は、少なくとも部分的に、幅、深さ、高さ、長さ等のスケールのうち少なくともいずれかが、1ミリメートル以下であることが好ましい。このようにすることで、ハイドロゲル基材表面における、微細な凹凸構造に応じた細胞集塊の形成が可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、以上に述べられたように構成されているため、従来の平板状あるいは微細構造を有するプレート状のアルギン酸ハイドロゲル基材を作製するために必要であった、特殊な作製装置を不要とし、アルギン酸ナトリウムとアルギン酸プロピレングリコールを含む混合水溶液を用いるだけで、平板状あるいは微細構造を有するプレート状のアルギン酸ハイドロゲル基材を簡便に作製することが可能となる。
【0032】
また本発明は、以上に述べられたように構成されているため、従来のプレート状のアルギン酸ハイドロゲル基材同士を接着するために必要であった、圧力を印加するための装置および複雑な操作を不要とし、接着される2枚のプレート状のアルギン酸ハイドロゲル基材のうちの片方にのみポリカチオンコートを行い、未処理のハイドロゲル基材と接触させるだけで、ハイドロゲル基材同士を接着することが可能となる。
【0033】
また本発明は、以上に述べられたように構成されているため、従来は微細構造の作製がほとんど報告されていない、アルギン酸によって構成されたハイドロゲルを用いて、微細構造を有するハイドロゲル基材の作製が可能となるため、強度・コスト・生体適合性の観点で非常に有用な、微細構造を有するハイドロゲル基材を提供することが可能となる。
【0034】
また本発明は、以上に述べられたように構成されているため、これまでにほとんど報告されていないアルギン酸ハイドロゲル基材の接着による積層化を可能とするため、三次元的な細胞培養を可能とするハイドロゲル材料を提供でき、組織工学や再生医療などの分野において非常に有用な材料を提供することが可能となる。
【0035】
さらに本発明は、以上に述べられたように構成されているため、細胞集塊を形成する上で非常に効果的な新規ハイドロゲル材料を提供できるとともに、細胞集塊を形成する新手法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施形態に係る、ハイドロゲル基材の作製方法を示す概略図である。図中の(1)乃至(3)は、それぞれの操作段階を示しており、(1)は鋳型にアルギン酸ナトリウムとアルギン酸プロピレングリコールを含む混合水溶液を注ぐ操作、(2)は多価の金属カチオンを含むゲル化剤水溶液を注ぐ操作、(3)は作製されたハイドロゲル基材を鋳型から取り外す操作である。
【図2】実施形態に係る、プレート状のアルギン酸ハイドロゲル基材の接着による、ハイドロゲル基材の作製方法を示す概略図である。
【図3】実施形態に係る、作製したハイドロゲル基材を用いた細胞集塊の形成方法を示す概略図である。図中の(1)乃至(3)は、それぞれの操作段階を示しており、(1)はウェル構造を有するハイドロゲル基材への細胞懸濁液の滴下操作、(2)は余分な細胞の除去および培養液の添加操作、(3)は細胞集塊の形成のための細胞培養操作である。
【図4】実施例において作製したハイドロゲル基材の概略図および顕微鏡写真を示しており、図4(a)は図4(b)におけるB矢視図であるとともに、ハイドロゲル基材の全体図を表しており、図4(b)は図4(a)におけるA1−A2線における断面図であり、図4(c)は図4(a)における部分Cの顕微鏡写真である。図4(c)において、流路壁面は点線で示されている。
【図5】実施例において作製した円柱状のウェル構造を有するハイドロゲル基材の概略図と顕微鏡写真、および、実施例において作製した肝細胞の細胞集塊の顕微鏡写真である。図5(a)はハイドロゲル基材を表した全体図であり、図5(b)は図5(a)におけるウェル構造部を拡大した概略図であるとともに、図5(c)におけるB矢視図であり、図5(c)は図5(b)におけるA1−A2線におけるハイドロゲル基材の断面図であり、図5(d)はウェル構造部の顕微鏡写真であり、図5(e)は円柱状のウェル内部で形成した細胞集塊の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明に係るハイドロゲル基材の作製方法および細胞集塊の形成方法の最良の形態を詳細に説明するものとする。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例の例示にのみ限定されるものではない。
【0038】
図1には、ハイドロゲル基材の作製方法を示す概略図が示されており、図中の(1)乃至(3)は、それぞれの操作段階を示しており、(1)は鋳型にアルギン酸ナトリウムとアルギン酸プロピレングリコールを含む混合水溶液を注ぐ操作、(2)は多価の金属カチオンを含むゲル化剤水溶液を注ぐ操作、(3)は作製されたハイドロゲル基材を鋳型から取り外す操作である。
【0039】
図1において、鋳型にアルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸プロピレングリコールを含む混合水溶液を注ぐ際には、注いだ混合水溶液がこぼれないように、溶液保持容器の底面に鋳型が設置されていることが望ましい。ただし、必ずしも溶液保持容器を用いる必要はなく、たとえば鋳型と溶液保持容器が一体化されている構造を用いてもよい。
【0040】
鋳型としては、水に溶解しない材質であれば、どのような材質のものを用いても良い。ただし、操作性の観点および、他の平板状のハイドロゲル基材との接着を行う上では、少なくとも部分的に平板状の構造であることが望ましい。また、シリコンウエハに対し、フォトリソグラフィーや機械加工によって構造物を形成したものを用いることで、精密かつ正確な微細構造を有するハイドロゲルプレートを作製することができる。さらに、鋳型として平板状の基材に形成された構造物は、高さが均一なものでも良く、また、高さが部分的に異なっているものでも良い。ただし、その構造物の、幅、深さ、高さ、長さ等のスケールのうち少なくともいずれかは、少なくとも部分的に、1ミリメートル以下であることが望ましい。
【0041】
図1における操作(1)として、混合水溶液を注いだ後かつ、ゲル化剤水溶液を注ぐ前に、必要に応じて、混合水溶液を注いだ後に気泡を除く操作を行うことが望ましい。この操作によって、均一なハイドロゲル基材を得ることが可能となる。
【0042】
なお、混合水溶液を単に注ぐだけではなく、少量の混合水溶液を鋳型上に滴下しスピンコートによって薄く延ばす、あるいは、注いだ混合水溶液の大部分を一度除去することによって、鋳型の上により薄い混合水溶液の層を形成することができる。その場合、より薄いハイドロゲル基材の形成が可能となる。
【0043】
混合水溶液に含まれるアルギン酸ナトリウムとしては、どのような性質のものを用いても良いが、得られるハイドロゲルの強度および操作性の観点から、純水に1重量%混合して室温に保持した際の粘度が、30−500cPの範囲にあるものであることが好ましい。また、アルギン酸ナトリウムの濃度としては、濃度が高いほどハイドロゲルの強度が高くなる一方で、混合水溶液の粘度が高くなるため、その値は0.5重量%から10重量%の範囲にあることが好ましい。また、アルギン酸を構成する単位であるウロン酸は、マンヌロン酸およびグルロン酸の2種類が存在するが、グルロン酸の割合が高いアルギン酸を用いた場合には、ゲルの強度が高くなる。必要に応じて、予めこれらの種類および濃度を最適化しておくことが望ましい。
【0044】
混合水溶液に含まれるアルギン酸プロピレングリコールとしては、どのようなものを用いても良いが、エステル化の度合いが高くなるほど、ゲル化時の体積収縮を抑制することが可能となる。また、ゲル化時の体積収縮の抑制および操作性の観点から、純水に1重量%混合して室温に保持した際の粘度が、30〜500cPの範囲にあるものであることが好ましい。また、アルギン酸プロピレングリコールの濃度としては、濃度が高いほどゲル化時の体積収縮を抑制できる一方で、混合水溶液の粘度が高くなる傾向があるため、その値は1重量%から10重量%の範囲にすることが好ましい。
【0045】
混合水溶液を鋳型に注いだ後に、図1における操作(2)として、ゲル化剤水溶液を静かに注ぐことによって、混合水溶液をゲル化させる。ゲル化剤水溶液を注ぐ操作としては、溶液保持容器の内壁を伝って静かに重層することが好ましいが、液滴の滴下あるいは噴霧によって注いでも構わない。
【0046】
ゲル化剤水溶液に含まれる金属カチオンとしては、アルギン酸をゲル化することのできる多価の金属イオンであれば、任意のものを用いることが可能である。ただし、ゲル化時の体積収縮の少なさ、細胞への毒性の少なさ、コスト等の観点から、カルシウムイオンであることが好ましい。また、金属イオンの濃度およびゲル化剤水溶液の液量に関しては、混合水溶液をゲル化させる上で十分な金属イオンを含んでいれば良いが、細胞を埋包したハイドロゲル材料を作製する場合は、その濃度が細胞にダメージを与えないように十分配慮する必要がある。
【0047】
なお、細胞を懸濁させ、必要に応じてイオン濃度を調整した混合水溶液を用い、ハイドロゲル基材を作製することで、内部に細胞を埋包したハイドロゲル基材を作製することが可能となる。その場合は、必要に応じて、各水溶液のイオン強度をあらかじめ調整することで、ハイドロゲル基材の作製時に細胞にダメージを与えないように配慮する必要がある。また、必要に応じて、混合水溶液およびゲル化剤水溶液を予め滅菌しておくことが好ましい。
【0048】
ゲル化時の温度条件としては、室温において保持することで十分にゲル化が進行するため、特に加温・冷却する必要はないが、細胞を埋包する場合は、内部の細胞に影響がでない温度および酸素条件でゲル化することが好ましい。また、静置してゲル化を行うゲル化時間については、混合水溶液の厚みが大きいほど長くする必要がある。
【0049】
最後に、混合水溶液がゲル化した後に、鋳型から取り外すことによって、作製したハイドロゲル基材の回収が可能となる。
【0050】
図2には、表面に微細な溝構造を有するプレート状のアルギン酸ハイドロゲル基材と、平板上のアルギン酸ハイドロゲル基材を接着することによって、内部に流路構造を有するハイドロゲル基材を作製する手法の概略図が示されている。
【0051】
図2に示すように、接着対象となる2枚のプレート状ハイドロゲル基材のうち、片方のみをポリカチオン水溶液によってコートし、それを未処理のハイドロゲル基材と接触させることによって、簡便かつ強固に、ハイドロゲル基材を化学的に接着することが可能となる。ポリカチオンによるコートは、図2に示すように、ポリカチオン水溶液にハイドロゲル基材を少なくとも部分的に浸すことで行っても良く、あるいは、少なくとも部分的にポリカチオン水溶液を塗布あるいは噴霧することで行っても良い。なお、ポリカチオン水溶液によってコートした後に、ポリカチオン水溶液を完全に除去するために、ハイドロゲル基材をコート後に洗浄する、あるいは余分な溶液を拭き取ることが望ましい。
【0052】
なお、用いるポリカチオンとしては、ポリ-L-リジン、キトサン、ポリエチレンイミン、あるいはこれらの任意の組み合わせを用いることができる。なお、これらのポリカチオンの分子量が高くなるほど、接着強度が高まる傾向にあるため、平均分子量が10万以上であることが好ましい。また、ポリカリオン水溶液の濃度および液量については、どのような値であっても良いが、ハイドロゲル基材の表面を十分にコートする量のポリカチオン分子が存在するように配慮する必要がある。
【0053】
また、3枚以上のプレート状のハイドロゲル基材によって構成される基材を作製する場合は、ポリカチオンによってコートしたハイドロゲル基材と、コートされていないハイドロゲル基材とを、交互に重ねることによって、そのような基材の作製が可能となる。さらにたとえば、それぞれの基板の表面あるいは内部に流路構造を設けることによって、複雑な流路網を内包するハイドロゲル基材の作製が可能となる。
【0054】
図3には、作製したハイドロゲル基材を用いた細胞集塊の形成方法を示す概略図が示されており、図中の(1)乃至(3)はそれぞれの操作段階を示しており、(1)はウェル構造を有するハイドロゲル基材への細胞懸濁液の滴下操作、(2)は余分な細胞の除去および培養液の添加操作、(3)は細胞集塊の形成のための細胞培養操作を示している。
【0055】
一般的に、アルギン酸によって構成されたハイドロゲル表面には、動物細胞は付着しにくい。そのため、アルギン酸ハイドロゲル上で動物細胞を培養すると、その大きさにばらつきが生じるものの、細胞同士が集まって細胞集塊を形成する場合が多い。そのため、微細なウェル構造を有するアルギン酸ハイドロゲル基材を用い、一定量の細胞をウェル内にトラップし培養することによって、細胞集塊の形成に加え、その大きさおよび形状を制御することが可能となる。
【0056】
図3に示すように、まず、作製した微細なウェル構造を有するハイドロゲル基材を、凹凸(ウェル構造)を有する面が上向きになるように静置する。そして、ウェル上に細胞懸濁液を滴下することにより、細胞を播種する。なお、ハイドロゲル基材に含まれるイオンの濃度が細胞にダメージを与えないように、ハイドロゲル基材内部のイオン濃度を予め調整しておく、あるいは、ハイドロゲル基材自体を大量の培養液に予め浸しておくことが好ましい。
【0057】
次に、ウェル部分以外の余分な細胞を取り除くために、ハイドロゲル基材上の余分な細胞懸濁液を吸引する、あるいは、基材上に細胞を含まない溶液を流すことによってウェル部分以外の細胞を洗い流す、等の操作を必要に応じて行うことが好ましい。このような操作を行うことによって、ウェル中に一定量の細胞をトラップすることが可能となる。
【0058】
そして、細胞培養液を必要に応じて添加し、培養を行うことによって、細胞集塊の形成を行う。なお、細胞培養液は、ハイドロゲル基材の上部のみに添加しても良く、あるいは、ウェルに細胞をトラップしたハイドロゲル基材自体を細胞培養液に浸しても良い。
【0059】
なお、一般に細胞集塊を形成する場合には、その形態は球形になることが知られている。そのため、円柱状や四角柱状などのウェル構造を用いた場合には、球形の細胞集塊が形成されるが、径が十分に細く深さが十分に深い柱状のウェル構造を用いる場合には、長細い形態の細胞集塊を形成することが可能であり、また、線状のウェル構造を用いることによっても、短径と長径の異なる長細い細胞集塊を形成することが可能である。
【0060】
細胞集塊を形成する対象となる細胞としては、生体外において集塊を形成することによって機能を維持しやすくなる肝細胞や、胚様体を形成することによって分化を制御できるES細胞・iPS細胞などを用いることが可能である。
【実施例】
【0061】
以下、上記実施形態に係るハイドロゲル基材の作製方法および細胞集塊の形成方法について実際に行うことで、本発明の効果を確認した。以下説明する。
【0062】
図4には、本発明を用いて作製したハイドロゲル基材の概略図および顕微鏡写真が示されており、図4(a)は図4(b)におけるB矢視図であるとともに、ハイドロゲル基材の全体図を表しており、図4(b)は図4(a)におけるA1−A2線における断面図であり、図4(c)は図4(a)における部分Cの顕微鏡写真である。図4(c)において、流路壁面は点線で示されている。
【0063】
図4に示したハイドロゲル基材を作製するために、まず、純水に1重量%で溶解し室温に保持した場合に、ともに粘度が200−300cPとなる、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸プロピレングリコールを用い、混合水溶液を調製した。
【0064】
一例として、混合水溶液中のアルギン酸ナトリウムの濃度は1.0%であり、アルギン酸プロピレングリコールの濃度は2.5%であった。この場合、ゲル化前後の体積収縮率は約20%であり、鋳型に注いでゲル化した後に、鋳型のパターンを正確に転写可能であることが確認されている。なお、混合水溶液中のアルギン酸ナトリウムの濃度を0.5〜4.0%に変化させ、さらにアルギン酸プロピレングリコールの濃度を1.0〜3.5%に変化させた場合にも、鋳型を用いたプレート状のハイドロゲル基材の形成が可能であった。
【0065】
鋳型としては、フォトリソグラフィーによって、シリコンウエハ上にネガ型の圧膜フォトレジストであるSU-8の構造物を形成したもの、および、加工されていない平板状のシリコンウエハをそれぞれ用いた。SU-8のパターン形状としては、図4に示す流路構造の場合は、長さ約3cm、幅200μm、高さ100μmの直線状であったが、これらの形状・値は、任意に設定することが可能である。また、シリコンウエハ以外にも、ガラスや金属等の無機材料、PMMAやPDMS等のポリマー材料などの、少なくとも部分的に平板状の基板を利用することが可能である。なお、作製した鋳型は、溶液保持容器であるポリプロピレン製のディスポーザブルなシャーレ上に設置した。
【0066】
次に、調製した前記混合水溶液を、鋳型上に注いで静置した。なお注ぐ前には、必要に応じて混合水溶液に対して遠心分離などを行うことによって、脱気を行った。注ぐ溶液量としては、この場合は例えば5mL程度であり、溶液の厚みは3〜4mm程度であったが、これらの値は必要に応じて任意の値に調節することが可能である。
【0067】
さらに、液面が平坦になったことを確認した上で、ゲル化剤水溶液として濃度0.1M塩化カルシウム水溶液を5mL静かに注ぎ、静置した。ゲル化の時間としては、この場合はオーバーナイト(約12時間)としたが、このゲル化時間は、ハイドロゲルの厚みに応じて最適化することが可能である。
【0068】
ゲル化が完了した後に、ゲル化剤水溶液を取り除き、形成されたハイドロゲル基材を鋳型から取り外した。鋳型として平板状のシリコンウエハを用いて作製した平板状のハイドロゲル基材と、鋳型として微細な直線状の凸構造をパターンしたシリコンウエハを用いて作製した直線状の凹構造を有するハイドロゲル基材を、それぞれ作製した。
【0069】
次に、作製したハイドロゲル基材のうち、平板状のハイドロゲル基材のみをポリカチオンによってコートした。一例として、濃度0.05%、分子量150,000−300,000のポリLリジン水溶液に5分間浸し、洗浄を行った。一方、凹構造を有するハイドロゲル基材には、流路の入口と出口に当たる箇所に、貫通孔をパンチによって2箇所設けた。ポリカチオンによってコートされたハイドロゲル基材と、貫通孔を設けたハイドロゲル基材は、接触させ10分間程度放置する操作によって、強固に接着することが確認され、図4に示すように、内部に流路構造を有するハイドロゲル基材の作製に成功した。なお、コートするハイドロゲル基材は、微細な凹構造を有するものと、平板状のものの、いずれであっても構わない。
【0070】
図4(c)には、作製した、内部に流路構造を有するハイドロゲルに対し、入口から直径5μmの蛍光微粒子を含む水を導入した際の顕微鏡写真が示されている。蛍光粒子は流路内を選択的に流れていることが確認され、接着面から溶液のリークが起こることなく、ハイドロゲル基材の内部に溶液を導入することが可能であることが確認された。この場合の送液方法としては、入口に蛍光微粒子懸濁液を滴下し、出口から吸引することで送液を行ったが、入口にチューブ等を挿入して、加圧によって送液を行うことも可能である。
【0071】
図5には、本発明によって作製した、円柱状のウェル構造を有するハイドロゲル基材の概略図と顕微鏡写真、および、実施例において作製した肝細胞の細胞集塊の顕微鏡写真が示されており、図5(a)はハイドロゲル基材を表した全体図であり、図5(b)は図5(a)におけるウェル構造部を拡大した概略図であるとともに、図5(c)におけるB矢視図であり、図5(c)は図5(b)におけるA1−A2線におけるハイドロゲル基材の断面図であり、図5(d)はウェル構造部の顕微鏡写真であり、図5(e)は円柱状のウェル内部で形成した細胞集塊の顕微鏡写真である。
【0072】
図5に示したハイドロゲル基板は、アルギン酸ナトリウム1.0%、アルギン酸プロピレングリコール2.5%の混合水溶液を、0.1Mの塩化カルシウム水溶液をゲル化剤水溶液として用いて作製したものであり、直径200μm、深さ300μmの円柱状のウェル構造が、等間隔に、縦10列、横30列の計300個配置されている。
【0073】
図5に示したハイドロゲル基材に対し、ラット初代肝細胞を播種し、さらにウェル構造部以外に存在する余分な細胞を除去したところ、各ウェルあたり平均約500個の肝細胞をトラップすることが可能であった。
【0074】
肝細胞のトラップ後に、ハイドロゲル基材自体を培養液に浸し、COインキュベーター内で培養を行ったところ、図5(e)に示すように、2日間の培養後には、球状の細胞集塊が形成されることが確認され、その直径は160±10μm程度であり、大きさのばらつきが非常に少ない細胞集塊を簡便かつ再現性良く形成可能であることが確認された。
【0075】
さらに、イムノアッセイによってアルブミン産生能を評価したところ、細胞集塊を形成した場合には、平面での培養に比較して、単位細胞・単位時間あたりのアルブミン産生量が、約10倍程度高く保持されていることが確認された。
【0076】
また、大きさの異なるウェルを用いた場合(たとえば直径100μm、あるいは直径300μm)であっても、同様に再現性の高い細胞集塊の形成が可能であることが確認され、トラップされる細胞の個数は、ウェルの体積および形状によって制御可能であることが確認された。さらに、増殖能のある培養細胞株を用いた場合も、同様に球状の細胞集塊の形成が可能であった。
【0077】
さらに、円柱状ではなく、幅50〜100μmの直線状のウェル構造を有するハイドロゲル基材において、同様に細胞集塊の形成を試みたところ、長細い形状を有する細胞集塊の形成も可能であり、ウェル構造の形状に依存した細胞集塊形成が可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、以上説明したように構成されているため、アルギン酸をベースとして用いたハイドロゲル基材を作製する上で、既存の手法において不可欠であった特殊な装置を必要としない、という優れた効果を発揮する。そのため、たとえば組織工学や幹細胞工学において有用な、微細な構造を有するアルギン酸のハイドロゲル基材を容易かつ安価に提供可能であるため、有用性が高い。
【0079】
また本発明は、以上説明したように構成されているため、内部に微細な流路構造を有する積層化されたハイドロゲル基材を作製する上で必須となる、ハイドロゲル基材を簡便かつ再現性良く接着する新規手法を提供できるため、生体外における3次元的組織構築などにおいて幅広く利用可能であると考えられる。
【0080】
さらに本発明は、以上説明したように構成されているため、任意の大きさ・形状を有する細胞集塊を簡便かつ再現性良く形成するための新規手法の提供が可能となる。当手法は、既存の細胞集塊形成手法と比較して、安価な材料を用い、また特殊なパターニング等の操作を必要としないため、有用性が高い。さらに、創薬スクリーニングにおける、細胞を用いた薬剤代謝・毒性評価などにおいて重要な、肝細胞の細胞集塊の形成を容易に可能とするため、医学・生化学等の研究分野のみならず、製薬の現場において重要な新手法を提供できるものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギン酸ナトリウムとアルギン酸プロピレングリコールを含む混合水溶液を調製し、
前記混合水溶液を鋳型の上に注ぎ、
さらに、その上に多価の金属カチオンを含むゲル化剤水溶液を注ぐことによって前記混合水溶液をゲル化し、
さらに、ゲル化した前記混合水溶液を鋳型から取り外すことによってプレート状のハイドロゲル基材を得るハイドロゲル基材の作製方法。
【請求項2】
前記プレート状のハイドロゲル基材をポリカチオン水溶液に浸す、あるいは、前記プレート状のハイドロゲル基材にポリカチオン水溶液を塗布することによって、前記プレート状のハイドロゲル基材の表面をポリカチオンによってコートし、
ポリカチオンによってコートされた前記プレート状のハイドロゲル基材と、ポリカチオンによってコートされていない他の前記プレート状のハイドロゲル基材を接触させることで、2枚のプレート状のハイドロゲル基材を接着させる請求項1に記載のハイドロゲル基材の作製方法。
【請求項3】
前記鋳型とは、平板状の基板、あるいは、微細加工を施した平板状の基板であり、
前記プレート状のハイドロゲル基材は、少なくとも片面が平板状あるいは微細な凹凸を有する平板状である請求項1乃至2のいずれか1項に記載のハイドロゲル基材の作製方法。
【請求項4】
前記鋳型は、少なくとも部分的に、平板状のシリコンウエハによって形成されている、あるいは、フォトリソグラフィーによって微細加工を施した平板状のシリコンウエハによって形成されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のハイドロゲル基材の作製方法。
【請求項5】
前記混合水溶液のゲル化後の体積は、ゲル化前の体積の60%以上である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のハイドロゲル基材の作製方法。
【請求項6】
前記混合水溶液に含まれるアルギン酸プロピレングリコールの濃度は、1重量%以上10重量%以下であり前記混合水溶液に含まれるアルギン酸ナトリウムの濃度は、0.5重量%以上10重量%以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のハイドロゲル基材の作製方法。
【請求項7】
前記混合水溶液に含まれるアルギン酸プロピレングリコールは、純水に対し1重量%溶解し室温に保った場合に、その粘度が30〜500cPの範囲に存在するものである請求項1乃至6のいずれか1項に記載のハイドロゲル基材の作製方法。
【請求項8】
前記ポリカチオンとは、ポリ−L−リジン、キトサン、ポリエチレンイミン、あるいはこれらの任意の組み合わせである請求項1乃至7のいずれか1項に記載のハイドロゲル基材の作製方法。
【請求項9】
前記ポリカチオンの平均分子量は、10万以上である請求項1乃至8のいずれか1項に記載のハイドロゲル基材の作製方法。
【請求項10】
前記混合水溶液は細胞を含む請求項1乃至9のいずれか1項に記載のハイドロゲル基材の作製方法。
【請求項11】
前記多価の金属カチオンとは、カルシウムイオンである請求項1乃至10のいずれか1項に記載のハイドロゲル基材の作製方法。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のハイドロゲル基材の作製方法を用いて作製した微細な凹凸を有するハイドロゲル基材を、凹凸を有する面を上向きにして静置し、細胞を上面に播種し培養することにより、凹凸の形状に応じた細胞集塊を形成する細胞集塊の形成方法。
【請求項13】
前記細胞とは、哺乳動物由来の肝細胞である請求項12に記載の細胞集塊の形成方法。
【請求項14】
前記微細な凹凸を有するハイドロゲル基材における、微細な凹凸構造は、少なくとも部分的に、幅、深さ、高さ、長さ等のスケールのうち少なくともいずれかが、1ミリメートル以下である請求項12乃至13のいずれか1項に記載の細胞集塊の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−172055(P2012−172055A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35262(P2011−35262)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】