説明

ハイドロゲル粒子

【課題】固体粒子及びゲル状成分を含有するハイドロゲル粒子であって、製品の均一性に優れるハイドロゲル粒子を提供すること。
【解決手段】次の(A)成分〜(E)成分:(A)ゾル−ゲルの熱可逆性によってゲル化が生じるゲル化剤、(B)架橋型ポリアクリレート、(C)固体粒子、(D)ゲル状成分、及び(E)水を含む、ハイドロゲル粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイドロゲル粒子に関する。さらに本発明はハイドロゲル粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゾル−ゲルの熱可逆性によってゲル化が生じるゲル化剤を用いて形成される、固体粒子を含有するハイドロゲル粒子としては、以下に挙げるものが知られている。
【0003】
特許文献1では、寒天溶液中で界面活性剤を分散剤として用いて、酸化チタンを攪拌により分散させ、液滴を形成させた後、当該液滴を冷却固化してハイドロゲル粒子を作製している。
【0004】
特許文献2では、直鎖型のスチレンアクリル樹脂を分散剤として用いて、顔料をビーズミルを用いて分散させたものを寒天溶液に加えた後、これを冷却したものを粉砕してハイドロゲル粒子を作製している。
【0005】
特許文献3では、寒天溶液中でアクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体に代表されるような高分子乳化分散剤を用いて、タルク及び油性成分をホモミキサーの攪拌により分散させ、液滴を形成させた後、当該液滴を冷却固化してハイドロゲル粒子を作製している。
【0006】
特許文献4では、寒天溶液中でカルボキシビニルポリマーなどの水溶性粘着剤を用いて、疎水化処理粉体及び油性成分を混合分散させ、型に流し込んで冷却固化している。
【0007】
顔料に代表される固体粒子は、ハイドロゲル粒子の着色及び肌や口腔内に使用した時の感触付与を目的としてハイドロゲル粒子に用いられるものであるが、かかる固体粒子は水より比重が大きいものが多いため、寒天溶液中や分散液中で固体粒子を沈降させずに安定的に分散させることは難しい。ハイドロゲル粒子の実際の生産においては、固体粒子を含む分散液を調製した後、ハイドロゲル粒子化を行うが、分散液は粒子化用装置の容器内等に長時間保持されることになる。そして、この間に固体粒子が沈降してしまうと製品の均一性を保てないばかりか、固体粒子の偏在により粒子化に用いる噴霧ノズル等の閉塞を引き起こしてしまう。
【0008】
しかしながらいずれの文献でも、寒天溶液中や分散液中の固体粒子の分散安定性には言及していない。特許文献1では、本出願の比較例1〜2にあるように、界面活性剤を配合しても固体粒子を沈降させずに安定に保つことは難しい。特許文献2では、顔料を分散させるためにビーズミルの様な特殊機械を使用しなければならず、製造が煩雑となる。特許文献3及び特許文献4ではポリマーを用いているが、顔料の安定分散を意識してかかるポリマーを使用しているのではなく、寒天の強度調整や油性成分の分散の目的で配合している。
【0009】
また、ハイドロゲル粒子にゲル状成分を配合する場合、製品の均一性及び噴霧ノズル等の閉塞の観点から、分散液中でのその沈降や浮遊も問題になるが、ゲル状成分を分散液中で安定に配合する手法は見られない。
【特許文献1】特開2001−187710号公報
【特許文献2】特開2007−77339号公報
【特許文献3】特許3555937号
【特許文献4】特許3242137号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、固体粒子及びゲル状成分を含有するハイドロゲル粒子であって、製品の均一性に優れるハイドロゲル粒子を提供することである。さらに本発明の課題は、固体粒子及びゲル状成分を含有するハイドロゲル粒子の製造方法であって、製造時に噴霧ノズルの閉塞等の生じない効率的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記事情を鑑み、本発明者らが鋭意検討を行った結果、考えられる種々の要因の中から、分散液中での固体粒子の分散安定性を向上させることにより、かかる課題を解決できるのではと推定し、種々の成分について実験を重ねた。その結果、架橋型ポリアクリレートを使用することで、分散液中での固体粒子及びゲル状成分の分散安定性を同時に向上できることを見出した。さらに検討を進めた結果、かかる分散液を用いることにより、製品の均一性が向上し、噴霧ノズル等の閉塞も生じないことが分かり、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕次の(A)成分〜(E)成分:(A)ゾル−ゲルの熱可逆性によってゲル化が生じるゲル化剤、(B)架橋型ポリアクリレート、(C)固体粒子、(D)ゲル状成分、及び(E)水を含むハイドロゲル粒子;並びに
〔2〕(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分を含む分散液を噴霧ノズルから吐出して液滴を形成させた後、該液滴を冷却固化してハイドロゲル粒子を製造する、前記〔1〕に記載のハイドロゲル粒子の製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のハイドロゲル粒子は、固体粒子を含有するにも関わらず、製品の均一性に優れるという効果を奏するハイドロゲル粒子である。さらに本発明のハイドロゲル粒子の製造方法は、固体粒子を含有する分散液を用いるにも関わらず、製造時に噴霧ノズルの閉塞等の生じない効率的な製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書にいう「ハイドロゲル粒子」とは、ハイドロゲル中に固体粒子とゲル状成分とを分散させた1個または複数個の粒子をいう。なお、ハイドロゲル粒子の概念には、外層である外皮と内層である芯成分とからなる、内層と外層が同心状のカプセルは含まれない。
【0015】
本明細書にいう「ハイドロゲル」とは、水を溶媒としてゲル化剤から得られたゲルをいう。また、本明細書にいう「非架橋型ハイドロゲル」とは、ゲル化がイオン、例えば、カリウムイオンやカルシウムイオン等との反応によって生じるのではなく、ゲル化剤が寒天である場合のようにゾル−ゲルの熱可逆性によってゲル化が生じるものをいう。寒天の水への溶解温度は、一般に75℃以上、その主なものについては75〜90℃であり、寒天を水に溶解させた後、冷却したときのゲル化温度は30〜45℃である。
【0016】
<(A)成分>
(A)成分は、ゾル−ゲルの熱可逆性によってゲル化が生じるゲル化剤である。例えば、寒天、ゼラチン、ジェランガム等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。これらの中では、寒天が好ましい。なお、用いる寒天のゼリー強度としては、使用時の感触の観点から、68.6kPa(700g/cm)以下が好ましく、19.6kPa(200g/cm)〜63.7kPa(650g/cm)がより好ましい。
【0017】
ここで、ゼリー強度は、日寒水式法により求められる。日寒水式法によれば、ゼリー強度は、ゲル化剤の1.5重量%水溶液を調製し、その水溶液を20℃で15時間放置して凝固せしめたゲルに、日寒水式ゼリー強度測定器((株)木屋製作所製)により荷重をかけ、20℃においてゲルが20秒間その荷重に耐えるときの表面積1cmあたりの最大重量[g]である。
【0018】
ハイドロゲル粒子中における(A)成分の含有量は、ハイドロゲル粒子の化粧品や歯磨き剤への配合時の壊れを防止する観点から、0.1〜8.0重量%が好ましく、0.5〜5.0重量%がより好ましい。
【0019】
<(B)成分>
(B)成分は、架橋型ポリアクリレートであり、後述する(C)成分及び(D)成分を分散液中で安定的に分散させるのに必要な分散剤である。本発明のハイドロゲル粒子は、トイレタリー製品に配合される場合、刺激性が低く安全性の高いものが求められる。また、安定的に分散剤としての性能を発揮するためには、架橋構造を分子内に有するポリアクリレートが有効であることを本発明者らは見出した。ハイドロゲル粒子に含有可能な多種多様な成分がある中で、本条件を満たすものとしては、好ましくは例えばアクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体(例えば日光ケミカルズ社製、商品名:PEMULEN等)やカルボキシビニルポリマー(例えば日光ケミカルズ社製、商品名:カーボポール;日本純薬社製、商品名:ジュンロン等)等が挙げられる。さらに(B)成分には、かかるアクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体やカルボキシビニルポリマーの塩も包含される。これらは単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0020】
分散性を向上させる観点から、(B)成分をアルカリ性物質にて中和しても良い。アルカリ性物質とは、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、アミノメチルプロパノール、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、β−アラニン、リシン等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。これらの中では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。かかるアルカリ性物質は、(B)成分の塩におけるアルカリ成分を構成するものであってもよい。
【0021】
本明細書における(B)成分のアルカリ性物質による中和とは、アルカリ性物質を分散液等に添加して、分散液のpHの範囲を好ましくは5〜9に、さらに好ましくは6〜8とすることをいう。アルカリ性物質の添加量は、分散液のpHがかかる範囲に達する量であればよい。さらに、アルカリ性物質の添加の時期は特に制限されず、分散液のpHが最終的に所望の値となる時期でアルカリ性物質が添加される。なお、この時の分散液のpHは、80℃のpHとする。
【0022】
(B)成分としては、次の範囲の粘度を示すものが好ましい。例えば固体粒子及びゲル状成分の安定化の観点より、100mPa・s以上のものが好ましく、200mPa・s以上のものがより好ましく、300mPa・s以上のものがさらに好ましい。また、分散液の粘度が高過ぎる場合、(B)成分の配合量を減ずれば良い。なお、本明細書において、(B)成分の粘度とは、25℃、水酸化ナトリウムでpH6.5〜7.5に中和した0.1%水溶液をB型粘度計で測定して得られる値である。
【0023】
ハイドロゲル粒子中における(B)成分の含有量は、0.05〜1.0重量%が好ましく、0.10〜0.5重量%がより好ましい。(C)成分及び(D)成分の分散液中における分散安定性の維持の観点から、0.05重量%以上が好ましく、分散液の増粘抑制の観点から、1.0重量%以下が好ましい。
【0024】
<(C)成分>
(C)成分は固体粒子であり、水に対する比重が1.1〜8.0のものが好ましい。かかる固体粒子は水不溶性であることがさらに好ましく、ここで水不溶性とは、25℃における水への溶解が0.1重量%以下のものを指す。本粒子の粒径は特に制限されないが、0.05〜50μmの範囲が好ましい。具体的には、顔料、化粧料粉末及び天然高分子系粉末からなる群から選択される少なくとも1種の成分が挙げられる。かかる固体粒子としては、ハイドロゲル粒子の着色剤、ハイドロゲル粒子を化粧品に配合したものを肌等に使用した際にさらさら感を向上させる等の感触向上剤、ハイドロゲル粒子を歯磨き剤に配合したものを歯磨き時に使用した際に研磨作用を向上させる等の研磨向上剤として機能し得る。顔料としては、例えば、カーボンブラック、タルク、カオリン、雲母、雲母チタン、酸化鉄(べんがら)、黄酸化鉄、黒酸化鉄、オキシ塩化ビスマス、珪酸マグネシウム、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無機顔料、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色219号、赤色228号、赤色404号、黄色205号、黄色401号、だいだい色401号、青色404号等の有機顔料が挙げられる。化粧料粉末としては、例えばタルク、カオリン、セリサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、無水ケイ酸、酸化チタン、酸化亜鉛、雲母チタン、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、金属石鹸、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末等が挙げられる。天然高分子系粉末としては、例えばセルロール粉末、キトサン粉末、澱粉粉末、シルク粉末、結晶セルロース粉末等が挙げられる。これらの固体粒子としては一種類のみを用いてもよく、複数の種類を組み合わせて用いてもよい。また、上記の各固体粒子の水に対する比重は、いずれも1.1〜8.0の範囲内である。
【0025】
ハイドロゲル粒子中における(C)成分の含有量は、0.1〜30.0重量%が好ましく、0.5〜10.0重量%がより好ましい。
【0026】
<(D)成分>
(D)成分はゲル状成分である。かかるゲル状成分が特定の架橋型ポリアクリレートと併用されることによって、ゲル状成分そのもの及び固体粒子の分散液中での分散性が向上する。
【0027】
かかるゲル状成分は水不溶性であることが好ましく、ここで水不溶性とは、25℃における水への溶解が1重量%以下のものを指す。ゲル状成分としては、例えば特開2008−24651号公報に記載されている、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種のポリマー(ポリマーAと称する)とカテキン類との複合体、アルギン酸塩・カラギーナン・ペクチン等がカルシウム等の2価の金属イオンと形成する架橋型ハイドロゲル、寒天・ジェランガム等が形成する非架橋型ハイドロゲル及び変性たんぱく質等が挙げられる。非架橋型ハイドロゲルを用いる場合、分散液の温度は、当該ハイドロゲルが溶解しない温度(例えば75℃以下)に設定すると共に、寒天水溶液自身がゲル化しない温度(例えば45℃以上)に設定することが好ましい。
【0028】
本発明において、カテキン類としては、非重合性カテキン類であって、例えばカテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類;エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類などが挙げられる。これらの各成分は単独でカテキン類として用いてもよく、二種以上の混合物をカテキン類として用いてもよい。カテキン類は、茶葉から熱水もしくは水溶性有機溶媒により抽出された緑茶抽出物を濃縮、精製等を行うことによって得ることができる。また、市販の三井農林社「ポリフェノン」、伊藤園社「テアフラン」、太陽化学社「サンフェノン」などの緑茶抽出物の濃縮物又は必要に応じて成分調整を行ったものを、カテキン類の含有量を測定した上で、濃縮物等の状態で用いてもよい。
【0029】
なお、カテキン類とポリマーAとにより形成される複合体とは、カテキン類の水溶液とポリマーAの水溶液とを混合した際に不溶物として水中から析出する物質のことである。かかる複合体の析出は、混合液の濁り、あるいは、混合液をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定した際に水不溶性複合体由来のピークが存在することによって確認することができる。
【0030】
ポリマーAの重量平均分子量としては、例えば6000〜3000000の範囲が好ましく、60000〜2000000の範囲がより好ましい。カテキン類の酸化及び/又は重合を効果的に抑制する観点から、6000以上が好ましく、60000以上がより好ましく、400000以上が更に好ましく、1300000以上が特に好ましい。また、複合体が塊状の凝集物となること抑制する観点から、3000000以下が好ましく、2000000以下がより好ましい。
【0031】
本発明において、ポリマーAの重量平均分子量は、一般的な重量平均分子量測定法である粘度法、あるいは、光散乱法等によって測定された値である。尚、ポリマーAがポリビニルピロリドンである場合は、粘度の測定値からFikentscherの公式に基づいて計算されたK−値によって重量平均分子量を決定する。
【0032】
ハイドロゲル粒子中における(D)成分の含有量は、0.1〜12.0重量%が好ましく、0.2〜6.0重量%がより好ましく、0.3〜3.0重量%がより好ましい。
【0033】
(D)成分における、カテキン類とポリマーAとの重量比率(カテキン類/ポリマーA)としては、カテキン類の酸化及び/又は重合を効果的に抑制する観点から、1/1〜1/4の範囲内であることが好ましく、1/1.2〜1/2.2の範囲内であることがより好ましい。
【0034】
<(E)成分>
ハイドロゲル粒子中における(E)成分の水の含有量は、50〜95重量%が好ましく、70〜90重量%がより好ましい。
【0035】
<その他の成分>
本発明のハイドロゲル粒子には、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分以外にも、必要に応じ他の物質が含まれていても良い。例えば、固型、半固型及び液体の香料、油脂類、ロウ類、炭化水素類、高級脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、油性薬効成分、シリコーン油類等の油性成分、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等の界面活性剤、糖類、多価アルコール、防腐剤、水溶性着色剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0036】
<ハイドロゲル粒子の製造方法>
本発明のハイドロゲル粒子の製造方法は特に限定されないが、例えば、先ず、(A)成分〜(E)成分及び必要に応じてその他の物質を含有してなる液(「分散液」と称する)を調製し、次いで当該分散液を一般的な滴下法、噴霧法又は攪拌法に付して液滴を形成させた後、当該液滴を冷却固化してハイドロゲル粒子を製造する。
【0037】
分散液の粘度はB型粘度計で測定することができる。分散液の粘度は、特に限定されないが、その吐出時、噴霧時又は投入時の温度において、0.1〜1000mPa・sが好ましく、1.0〜800mPa・sがより好ましい。
【0038】
より具体的には、例えば次のようにして分散液を調製する。例えば、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を(E)成分に添加し、攪拌しながら加熱して(A)成分を溶解させた混合液を得た後、(D)成分をこの混合液に添加して混合することで、(C)成分及び(D)成分が安定的に分散した分散液を得ることができる。
【0039】
(D)成分はハイドロゲル粒子内でゲル状成分として含まれていればよいため、上記の混合液にゲル状成分が形成された(D)成分を添加してもよく、又は上記の混合液中でゲル状成分が形成されるように、ゲル状成分を構成する成分を混合液に添加してもよい。例えば、(D)成分がポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーとカテキン類とにより形成される複合体の場合、ポリマー水溶液とカテキン類水溶液を分けて用意し、(B)成分の存在下でこれらを混合することが、(D)成分がより微細かつ分散液中で安定して分散する分散物を得ることができる。
【0040】
滴下法は、吐出された分散液がその表面張力又は界面張力によって液滴になる性質を利用する方法であり、孔から分散液を吐出させて液滴を得、その液滴を空気等の気相中又は液相中で冷却固化させてハイドロゲル粒子を形成する方法である。なお、粒径の均一なハイドロゲル粒子を形成する観点から、孔から吐出される分散液に振動を与えることが好ましい。
【0041】
噴霧法は、噴霧ノズルを用い、噴霧ノズルから分散液を気相に吐出(噴霧)させると共に、その表面張力によって液滴を形成させ、その液滴を気相で冷却させて固化させてハイドロゲル粒子を形成する方法である。
【0042】
攪拌法は、攪拌による剪断力により分散液を微粒化し、界面張力によって液滴になる性質を利用する方法であり、分散液と実質的に混じり合わない性状を有しかつ(A)成分のゲル化温度以上の温度に調製した液に分散液を投入し、その液滴を分散液と実質的に混じり合わない液中で冷却固化させてハイドロゲル粒子を形成する方法である。
【0043】
この中では、ハイドロゲル粒子の作製が簡便な噴霧法が好ましい。滴下法、噴霧法及び攪拌法のいずれの場合も、吐出時、噴霧時又は投入時の分散液の温度を、(A)成分のゲル化温度以上でかつ100℃以下の温度とすることが好ましい。また、美観に優れた球状のハイドロゲル粒子を容易に製造できるという観点からは、分散液の温度を、(A)成分のゲル化温度+10℃以上とすることが好ましく、ゲル化温度+20℃以上とすることがより好ましい。なお、分散液の温度の上限は、水の沸点である100℃である。具体的には、分散液の温度としては、60〜90の範囲が好ましく、70〜80の範囲がより好ましい。
【0044】
本発明の製造方法においては、分散液を構成するほぼ全ての成分がそのままハイドロゲル粒子を構成することになるので、分散液中の各成分の含有量をハイドロゲル粒子中の各成分の含有量とみなすことができる。
【0045】
以上のようにして形成されたハイドロゲル粒子を必要に応じてさらに粉砕等により、微細なハイドロゲル粒子にしてもよい。
【0046】
<ハイドロゲル粒子>
本発明のハイドロゲル粒子中において、カテキン類とポリマーAとの複合体は(A)成分、(B)成分及び水を含む連続相中に分散して内包されている。かかるハイドロゲル粒子の構造は、例えばハイドロゲル粒子のSEM写真を分析することにより確認することができる。
【0047】
本発明のハイドロゲル粒子の形状は特に限定されないが、曲面で構成された回転体の形状を有することが好ましい。ここで、「曲面で構成された回転体」とは、仮想軸及び連続的な曲線で構成された閉じた図を仮想軸で回転させたものをいい、三角錐や円柱等の平面を有する形状は含まない。ハイドロゲル粒子の形状は、美観の観点から、球状又は楕円状であることがより好ましい。
【0048】
本発明のハイドロゲル粒子の平均粒径は、レーザー回折/散乱式により測定できる。レーザー回折/散乱式は粒度分布測定装置LA−920(堀場製作所(株)製)を用いて測定したメジアン径を平均粒径とする。ハイドロゲル粒子の平均粒径は、5〜10000μmが好ましく、30〜3000μmがより好ましく、50〜1000μmがさらに好ましい。
【実施例】
【0049】
以下の例中で用いられる%は、特記しない限り重量%である。
【0050】
分散液の粘度は80℃の分散液をB型粘度計で測定して得た。分散液のpHは80℃の分散液について測定して得た。ハイドロゲル粒子の平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(堀場製作所(株)製)を用いて測定したメジアン径を平均粒径とした。
【0051】
実施例1〜2及び比較例1〜6
次のようにして溶液A及び溶液Bを調製した。具体的な成分及び配合割合を表1及び表2に示す。溶液Aは、常温でイオン交換水にカテキン類及びアスコルビン酸を所定量溶解させ、さらに80℃に加熱して調製した。溶液Bは、各成分を混合し、pHが6〜8になるように水酸化ナトリウムを添加した後、90℃で加熱溶解して調製した。
【0052】
その後、溶液Bを80℃まで冷却して、溶液Bに溶液Aを加えてゲル状成分を形成させた。次いで、必要に応じてpHが6〜8になるように水酸化ナトリウムを添加して混合液を得た。この混合液を500gに調整し、ホモミキサー(T.K.ロボミクス:プライミクス製)にて、8000r/minで1分間分散させ、分散液を調製した。
【0053】
得られた各分散液を80℃で静置保存し、3時間後までの分散液の状態を観察した。観察結果を表2に示す。
【0054】
その後、分散液の温度を80℃に維持しながら、孔径0.8mmの1流体ノズルを用いて、流量18〜20L/hr、噴霧圧0.45〜0.75MPaにて冷却空気中に各分散液を吐出(噴霧)して、分散液のハイドロゲル粒子化を行った。
【0055】
実施例3
溶液A及び溶液Bを実施例1と同様にして調製した。これらの溶液とは別に、表1及び表2に示される所定量の油性成分を調製し、80℃に加熱した。
【0056】
上記と同様の方法で溶液Bに溶液Aを加えてゲル成分を形成させた後、pHが6〜8になるように水酸化ナトリウムを添加した。次いで、上記の油性成分を加えて混合液を得た。この混合液を500gに調整し、上記ホモミキサーにて、8000r/minで1分間分散させ、分散液を調製した。
【0057】
得られた分散液を80℃で静置保存し、3時間後までの分散液の状態を観察した。観察結果を表2に示す。
【0058】
その後、上記と同じ1流体ノズルを用いて、同じ条件で分散液を噴霧して、分散液のハイドロゲル粒子化を行った。
【0059】
試験例1(分散液の80℃での静置保存の結果)
実施例、比較例の各分散液についての、80℃での静置保存の結果を表2に示す。ここで、分散液中の固体粒子とゲル状成分の分散安定性について、次のように評価した。
××:ホモミキサーの攪拌停止の直後から、固体粒子及びゲル状成分の沈降が見られた。
×:ホモミキサーの攪拌停止の1時間後には、固体粒子及びゲル状成分の沈降が見られた。
○:ホモミキサーの攪拌停止の3時間後であっても、固体粒子及びゲル状成分の沈降が見られなかった。
【0060】
表2に示すように、比較例1、2、3及び5の分散液は固体粒子及びゲル状成分の分散性が著しく悪いことが分かった。また、比較例4及び6の分散液についても、これらの成分の分散性が悪いことが分かった。一方、実施例1〜3の分散液はこれらの成分の分散性が良好であることが分かった。従って、実施例の分散液を用いれば、得られるハイドロゲル粒子の均一性が高いことや、噴霧ノズルの閉塞が生じにくいことが期待できる。
【0061】
試験例2(分散液のハイドロゲル粒子化と作製粒子の外観)
各分散液について1流体ノズルを用いて噴霧したところ、比較例1〜6においては分散液の物性が不均一であり、沈降物が塊となってノズルを閉塞するなど安定な製造ができなかった。しかも製造されたハイドロゲル粒子はべんがらの色が薄く、粒子の色もまだらであった。一方実施例1〜3の分散液においては、ノズルを閉塞することなく安定してハイドロゲル粒子を製造することができた。しかも製造されたハイドロゲル粒子の色は均一であり、その形状はほぼ球状であり、想定通りの濃さの粒子であった。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
実施例等で用いた各成分の物性値等は次のとおりであった。
ベンガラ七宝の比重(対水):5.2
TITANIX JA−Cの比重(対水):3.9
PVP K30の重量平均分子量:60000
PVP K90の重量平均分子量:1300000
PEMULEN TR−2の粘度:700mPa・s
カーボポール940の粘度:1400mPa・s
ジュンロンPW−110の粘度:400mPa・s
((B)成分の粘度は、25℃、水酸化ナトリウムでpH6.5〜7.5に中和した0.1%水溶液をB型粘度計で測定して得た値である。)
サンフェノン100S:カテキン類の含有量は69重量%
【0065】
さらに表3に、得られたハイドロゲル粒子中の各成分の含有量を示す。
【0066】
【表3】

【0067】
以上のように、比較例においては、分散剤として一般的に用いられている成分(ステアロイルメチルタウリンNa、ショ糖脂肪酸エステル、ポリビニルアルコール、キサンタンガム及び直鎖型ポリアクリル酸)を使用しても、分散液中での(C)成分及び(D)成分の分散性が悪く、安定した製造ができず、しかも得られる粒子が均一ではなかった。一方実施例においては、特定の分散剤である架橋型ポリアクリレートを使用することにより、分散液中での(C)成分及び(D)成分の分散性が良好で、安定した製造ができ、しかも得られる粒子が均一であった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のハイドロゲル粒子は、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品等に適用することができる。さらに本発明のハイドロゲル粒子の製造方法は、均一性に優れた製品の効率的な製造方法に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)成分〜(E)成分:
(A)ゾル−ゲルの熱可逆性によってゲル化が生じるゲル化剤、
(B)架橋型ポリアクリレート、
(C)固体粒子、
(D)ゲル状成分、及び
(E)水、
を含む、ハイドロゲル粒子。
【請求項2】
(A)成分が寒天、ゼラチン及びジェランガムからなる群より選択される1種以上の成分であり、ハイドロゲル粒子中における(A)成分の含有量が0.1〜8.0重量%である、請求項1記載のハイドロゲル粒子。
【請求項3】
(B)成分が、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体及び/又はその塩であり、ハイドロゲル粒子中における(B)成分の含有量が0.05〜1.0重量%である、請求項1又は2記載のハイドロゲル粒子。
【請求項4】
(C)成分の水に対する比重が1.1〜8.0である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイドロゲル粒子。
【請求項5】
(C)成分が、顔料、化粧料粉末及び天然高分子系粉末からなる群から選択される少なくとも1種の成分であり、ハイドロゲル粒子中における(C)成分の含有量が0.1〜30.0重量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイドロゲル粒子。
【請求項6】
(D)成分が、カテキン類と、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーとにより形成される複合体であり、ハイドロゲル粒子中における(D)成分の含有量が0.1〜12.0重量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイドロゲル粒子。
【請求項7】
(D)成分における、カテキン類と、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーとの重量比率(カテキン類/ポリマー)が1/1〜1/4である、請求項6記載のハイドロゲル粒子。
【請求項8】
(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分を含む分散液を噴霧ノズルから吐出して液滴を形成させた後、該液滴を冷却固化してハイドロゲル粒子を製造する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のハイドロゲル粒子の製造方法。

【公開番号】特開2010−131479(P2010−131479A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307540(P2008−307540)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】