説明

ハイドロゲル

本発明は、液体を吸収ならびに放出することができるゲル製剤に関し、かつ創傷の治療におけるこのようなゲル製剤の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を放出するだけでなく吸収する能力もあるゲル製剤およびこのようなゲル製剤の創傷治療における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
体組織の損傷には様々な原因がある。創傷は、例えば、武器、工具、車両、または他の物体と、人体または動物の体との(機械的な)接触によって引き起こされ得る。更に、皮膚の重篤な損傷は、熱、寒さ、または放射線への曝露によって、ならびに傷害性化学物質との接触によっても引き起こされ得る。勿論、体組織は、例えば微生物またはウィルスによって引き起こされる感染症によっても損傷を受け、破壊される場合がある。
【0003】
一旦体組織の損傷が起こってしまうと、体は、組織修復プロセスの主活動として新しい体組織を作り出すことになろう。しかし、例えば、修復または再生された組織が元の組織と同じ性能特性を示さないならば、新しい体組織の生成は、時として弊害になり得る。
【0004】
再生組織または修復組織が機能するが、醜いまたは美的でないと感じられるために弊害が、単に美容上の問題だけとなり得るときもある。しかし、より重症の例では、組織の必須の機能性が損なわれる場合がある。
【0005】
従って、組織修復は、瘢痕形成をもたらし、美容上の問題を引き起こし得るが、傷んだ体組織の機能を低下させ、例えば、弾力性を低下させる場合もある。この作用は、人体または動物の体の外表皮膚に限ったことではなく、瘢痕組織が、体の内部器官の組織を含めた粘膜または他の体組織の機能性を低下させることにもなりかねない。
【0006】
望ましくない組織修復作用に相当する代表例には、過角化および組織の無秩序増殖が含まれる。
【0007】
疾病、創傷、火傷等の治療におけるこのような作用を制御する必要性が、多大な注目の的になってきている。
【0008】
創傷の療法においては、湿潤創傷治癒環境が、しばしば有益であることが示されている。乾燥環境では細胞の枯死が促進される一方で、湿潤環境では細胞生存率が向上することが知られている。
【0009】
創傷治癒の間に膿漿が形成され、液体環境を確立する働きをする。加えて、膿漿は、アミノ酸、電解質等の、細胞の代謝を支え、従って創傷治癒を増進する成分を含む。
【0010】
組織損傷後の第一段階のうちに、一般に痂皮が形成されて創傷を「ふさぐ」。
【0011】
たとえ痂皮が創傷を外部の影響から保護するにしても、膿漿を吸収するために創傷の乾燥を引き起こしかねず、それ故に創傷治癒のための条件に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0012】
湿潤創傷治癒環境では、痂皮の形成が低減または阻止さえされる。このことが、治癒中の創傷を覆い、保護するための代替手段の必要性を生じ得る。
【0013】
新しい細胞増殖のためのより良い生理的基盤をも提供することが、湿潤創傷治癒環境の更なる利点である。湿潤創傷治癒環境においては、創傷治癒に必要な細胞増殖が活性化され、新しい組織の形成が促進される。このような状況においては、ある程度の膿漿形成が有益である。
【0014】
しかし、創傷環境に過剰な膿漿が含まれる場合には、創傷治癒特性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0015】
特に創傷内の液体量を適当な物質または製剤によって最適化すると、創傷治癒に必要な湿潤創傷治癒環境は改善される。
【0016】
湿潤創傷治癒環境を生み出す代表的な方法は、創傷被覆材の形で局所ゲル、特にハイドロゲルを使用することである。これらのゲル創傷被覆材は、閉鎖創傷被覆材として特に有用である。本明細書に関しては、用語「ゲル」は常にハイドロゲルを含む。
【0017】
既知のゲル/ハイドロゲルは、ゲル基質から液体を放出可能で、従って創傷環境のための適当な液体貯蔵体を形成することができる。一方では、ゲルは、一般に、もしその液体量が更に増加する恐れがある場合、液体、例えば、膿漿を創傷から吸収する能力もあり、この事実によって創傷治癒環境を改善することもできる。
【0018】
「液体」は、普通、ゲル製造者または使用者によって提供される液体(例えば、蒸留水、活性物質溶液、懸濁液および分散液)を含め、かつ創傷によってまたは創傷内で産生された液体(例えば、罹患組織によって産生された)液体も含めた水性液体を意味する。「液体」は、ゲルによって放出される液体および創傷から再吸収される液体(このような放出される液体とは異なってよい)を含む。
【0019】
いかなる特定の理論にもこだわることなく、ハイドロゲルが、ある種の化合物または汚染物質をゲル中に「固着」させ、それ故に創傷からこのような物質を除去することで治癒条件を向上させることによって、湿潤創傷治癒環境に対して更なる有益な効果を及ぼすと考えられる。
【0020】
ゲル、特にハイドロゲルの利用の別の利点は、ゲル層が創傷を(乾燥させることなく)「ふさぐ」ことができ、それ故に、より容易な被覆材の取替えを可能にすることである。例えばもし被覆材が創傷に貼り付くと、被覆材を除去する際に創傷が改めて損傷を受けることになりかねない。もし適当なゲルが創傷を覆っていれば、既に回復した傷口を再び開いたり新たな損傷を引き起こすことなく被覆材を取替えることが可能になる。
【0021】
先行技術においては、いくつかのゲル系創傷治癒製剤が記述されている。これらの製剤に関する限り、様々な種類のゲル形成ポリマーが使用されてきている。これらのゲル形成ポリマーには、例えば、カルボキシメチルセルロース、加工デンプン、およびアルギン酸エステルポリマーが含まれる。
【0022】
これらの先行技術のゲルは、創傷から液体を吸収する限度容量について当技術分野で特に議論されている。
【0023】
市販され、創傷治癒に利用し得るゲルの例には、IntraSite(登録商標)Gel(Smith & Nephewより市販)、Askina(登録商標)Gel(Braunより市販)、およびVarihesive(登録商標)Gel(ConvaTecより市販)が含まれる。これらのゲルは、優れた液体吸収能力を示す。しかし、それらの液体放出能力は、それらの液体吸収限度容量よりも有意に低い。
【0024】
既知のゲルは、その使用目的に適合させるために様々な追加成分を含有することができる。例えば、これらのゲルのいくつかは、抗炎症特性等をもたらすための活性剤を含有する。
【0025】
外用リポソーム製剤を使用して防腐剤と組み合わせた創傷治癒促進剤の使用は、例えば、欧州特許第0639373号に開示されている。リポソームは、防腐剤、特にポビドンヨードに極めて適した担体で、細胞表面との相互作用によって長期局所活性を提供する。
【0026】
リポソームは、周知の薬物または化合物担体で、それ故に、リポソーム形態での薬剤の利用は、かなりの間研究の対象となっている。皮膚へのリポソーム形態の化合物の投与についての概説は、例えば、総説「リポソームを経由する毛包皮脂腺単位への標的化送達」Lauer等(1996)、Advanced Drug Delivery Reviews、18、311−324によって提供される。この総説は、リポソーム製剤の物理化学的特性解析および毛包皮脂腺単位の治療に向けたそれらの治療への応用を説明している。リポソームによる送達のために研究されてきた化合物には、例えば、抗癌剤、ペプチド、酵素、抗喘息および抗アレルギー化合物、ならびに抗生物質も含まれる。
【0027】
最近、国際公開第99/60998号および国際公開第99/60999号で開示されているように、ポビドンヨードのリポソーム防腐製剤が、上気道および下気道の疾病治療に使用できることが見出された。
【0028】
国際公開第04/073720号、国際公開第04/073682号、および国際公開第04/073683号に記述されているように、リポソーム防腐製剤を、疱疹、にきび、および他の特定の皮膚疾病の治療に使用できる。
【0029】
加えて、国際公開第00/72822号は、機能的および美容的な組織再構築および修復治療のための抗感染および/または抗炎症剤を含むリポソーム製剤の使用を開示している。
【0030】
先行技術では、特にゲル製剤の液体吸収特性と液体放出特性を均衡させる際に、創傷内の液体含量を最適化させる願望が未だに残されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
それ故に、創傷治癒特性の向上した製剤を提供することが、本発明の目的である。
【0032】
創傷への液体放出性の向上を示す製剤を提供することが、本発明の更なる目的である。
【0033】
ハイドロゲルの液体放出能力が、創傷から液体を吸収する能力より大きい製剤を提供することが、本発明の別の目的である。
【0034】
創傷治癒特性、特に液体放出特性の向上した薬剤の生産のために該製剤を使用することが、本発明の更なる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明によれば、これらの目的は、独立請求項の特徴の組合せによって達成される。
【0036】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項で明示されている。
【0037】
本発明による製剤は、創傷治癒を助長するのに適当であると思われる創傷内の水分量を維持する驚くほど高い能力を示すことが見出された。特に、本発明の製剤は、創傷内の適当な水分量を維持するためにゲルから水分または液体を放出することが可能で、この点で、本発明の製剤は、類似の既知の製剤より優れている。
【0038】
好ましい実施形態では、本発明による製剤は、その液体吸収能力より大きな液体放出能力を示す。しかし、本発明の製剤の液体吸収能力は、必要に応じて、創傷からの液体を吸収するのにもなお適当である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の一態様は、活性剤、特に抗炎症剤、微粒子状担体、特にリポソーム、薄膜形成物質、またはそれらの組合せを含むことができるゲル製剤を提供する。
【0040】
第二の態様として、本発明は、活性剤、微粒子状担体、薄膜形成物質、またはそれらの組合せのいずれも含有しないゲル製剤を提供する。
【0041】
好ましい実施形態では、本発明によるこの製剤は、少なくとも1種のゲル形成ポリマーを含む。
【0042】
本発明のゲル形成物質を、例えば、寒天、アルギン酸エステル、アルギン酸、アラビアゴム、ゼラチン、デンプン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、および/またはそれらの組合せからなる群から選択することができる。好ましい実施形態では、アクリル酸ポリマーを利用する。この群からは、Carbopol 908NFまたはCarbomer 940のようなUSP Carbomer 940モノグラフに適合するポリマーが好ましい。
【0043】
とりわけ好ましい実施形態では、ゲル形成物質は、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルアルコール、およびそれらの組合せを含む。ポリアクリル酸が、特に好ましい。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、ゲル形成物質をハイドロゲルの形態で使用する。本発明で使用されるように、ハイドロゲルは、親水性の組成物または化合物を基礎とするゲルであり、ある一定量の液体、特に水を吸収および/または放出することができる。
【0045】
本発明による製剤のpHは、好ましくは一般に3〜7、より好ましくは4〜6.5、更により好ましくは5〜6の範囲であることが好ましい。
【0046】
ゲル形成物質は、本発明による製剤中に約0.1%と約10%との間、好ましくは約0.5%と約5%との間、より好ましくは約1.0%と約3.0%との間の濃度で存在する。これらのすべての百分率は、製剤全体の重量を基準とする重量%である。
【0047】
好ましい実施形態では、本発明による製剤は、更にリポソームを含む。これは、しばしば創傷治療に有益な作用を有する。
【0048】
しかし、リポソームの添加は液体放出能力のある程度の減損を引き起こし得るので、リポソームおよび/または他の微粒子担体材料の添加なしに本発明の製剤を提供することが、他の実施形態では好ましい。
【0049】
リポソーム膜を形成するものとして先行技術において一般に知られている両親媒性物質は、それらが目的の用途に対して薬剤的に許容可能である限り、本発明に関して用いることができる。今のところ、レシチンを含むリポソーム形成系が好ましい。このような系は、コレステロールおよびコハク酸二ナトリウム六水和物等に加えて、水素化大豆レシチンを含むことができる。通常は、リポソーム形成材料が他のいずれの成分とも意図せぬいかなる反応性も示さないことを、確認することになろう。本発明による製剤が、例えば、元素状ヨウ素を含む場合に備えて、二重結合等の反応性基を有する化合物の高含量、例えば、高コレステロール含量を通常は避ける。今のところ、唯一の膜形成剤として水素化大豆レシチンを使用することが、とりわけ好ましい。Phospholipon(登録商標)90H等の市販の製品が、好ましい。
【0050】
Lauer A.C.等1995(上記参照)の総説から引用し得るように、活性物質を担って皮膚中に届けるリポソームを製造するために、一般にリン脂質系リポソームを使用することもできる。この総説によれば、ホスファチジルコリンで形成することができる非イオン性リポソームの使用も選択可能である。ミセルを形成するために使用できる他の構成要素も当業者には既知であり、本発明による製剤の製造に使用できる。
【0051】
リポソーム構造を形成するための既知の先行技術による方法を、本発明に関連して一般に使用できる。概略的に言えば、これらの方法は、膜形成物質および水または水溶液を含有する適当な混合物の機械的撹拌を含む。実質的に均一な寸法のリポソームを形成するために、適当な膜を通して濾過することが好ましい。
【0052】
本発明によるリポソームの平均寸法は、一般に約1μm〜約150μmの広範囲にわたって変わり得る。約1μm〜70μmの範囲の寸法を有するリポソームまたは微粒子担体が好ましい。一般にリポソームの寸法は、皮膚への良好な透過性が請合える程のものを選択すべきである。それ故、本発明の特に好ましい実施形態は、約10〜30μmの間の寸法を有するリポソームを含む。
【0053】
加えて、これらの製剤は、約1μmと30μmとの間、好ましくは約10μmと30μmとの間、より好ましくは20μmと30μmとの間、最も好ましくは約25μmの寸法を有するリポソーム等のかなり大きい寸法のリポソームを含むことが好ましい。ハイドロゲルとしての剤形が好ましい。
【0054】
一般に、かなり小さな平均寸法を有するリポソームは、溶液、分散液、および懸濁液の製造により適している。このようなかなり小さな寸法は、概して約1μm〜10μmの寸法を含み、溶液の場合にはより一層小さい。対照的に、ゲルまたは軟膏剤形は、最大で50μmまでの寸法のリポソームを含むことができる。
【0055】
本発明の製剤におけるリポソームの使用を考察しているとは言え、当業者には公知の更なる微粒子担体材料も同様に使用できると思われる。これらの代替材料は、例えば、微小球、ナノ粒子、または大型多孔質粒子でよい。
【0056】
好ましい実施形態では、本発明の製剤は、更に少なくとも1層の薄膜形成物質を含む。
【0057】
いくつかの事例では、薄膜形成物質を添加すると、増加する含水率によってゲルがその時提供する利点を上回って、液体放出能力のある程度の減損を引き起こす場合がある。それ故、いくつかの実施形態では、薄膜形成物質を添加することなく本発明の製剤を提供することが好ましい。
【0058】
特に好ましい実施形態では、本発明の薄膜形成物質は、ヒエテロース(hyetellose)、ヒプロメロース、ヒアルロン酸エステル、ポリビニルアルコール、またはポリビニルピロリドンである。とりわけ好ましい薄膜形成物質は、ポリビニルピロリドン(PVP)である。
【0059】
今のところ、薄膜形成物質はリポソームまたはリポソーム構造に組み込まれ得ると同時にリポソームの表面または近辺に存在し得ると考えられている。
【0060】
本発明に利用される薄膜形成物質は、製剤全体の重量を基準として0.1%と10%との間、好ましくは0.5%と7%との間、より好ましくは1%と5%との間、最も好ましくは2%と4%との間の範囲で存在する。
【0061】
他の本発明の好ましい実施形態では、製剤が、活性剤、特に抗炎症剤を更に含む。
【0062】
本発明に従う抗炎症剤には、抗菌性および抗ウィルス製剤を広範に含み、より具体的には、防腐剤、抗生物質、コルチコステロイド等を含む。防腐剤が好ましい。
【0063】
本発明に関して、防腐剤には、薬剤的に許容可能で目的とする治療に適している殺菌剤を含むと理解される。
【0064】
好ましい防腐剤は、酸素およびハロゲン放出性の化合物で、好ましくはヨウ素およびヨウ素錯体、および/または金属化合物で、好ましくは銀および水銀化合物を含む。
【0065】
更なる防腐化合物は、ホルムアルデヒド放出性化合物、アルキルおよびアリールフェノール化合物を含むフェノール化合物、キノリンおよびアクリジン、ヘキサヒドロピリミジン、第四級アンモニウム化合物、イミンおよびそれらの塩、ならびにグアニジンを含んだ有機殺菌剤を含む。
【0066】
殺菌剤および防腐剤等の活性物質を先行技術の場合より低含有量で含むことは有利な場合がある。本発明の製剤の液体濃度の調節、制御性能が抗感染態様よりも重要な場合には、有利には、例えば、欧州特許第0639373号明細書に記載された匹敵する製剤から知られる濃度のたった90%以下、たった75%以下、時にはたった50%以下、いくつかの好ましい実施形態ではたった25%以下の濃度で活性物質を提供することができる(これらすべての事例では、濃度はゼロではなく、好ましくは少なくとも5%、より多くの場合、欧州特許第0639373号明細書から知られるそれらの少なくとも10%であるが)。これはリポソームを含有する本発明の製剤に適用できるが、リポソーム(または他の微粒子担体材料)を含有しないような本発明の製剤にも適用できる。
【0067】
欧州特許第0639373号明細書は、好ましい活性剤としてPVPヨウ素を使用するのであるが、本発明の特定の好ましい実施形態では、PVPヨウ素以外の他の活性剤を使用する。
【0068】
もしこの製剤がリポソームを含むならば、活性剤、好ましくは防腐剤は、リポソームに付随することが多い。
【0069】
しかし、いくつかの事例では、微粒子担体、薄膜形成物質、活性剤、またはそれらの組合せが液体放出能力のある程度の減損を引き起こす場合があるので、他の実施形態では、微粒子担体、薄膜形成物質、活性剤、またはそれらの組合せというこれらの成分のいずれか1つを除外することが、とりわけ好ましい。
【0070】
とりわけ好ましい実施形態は、リポソームを含有しない本発明による製剤を提供する。いくつかのとりわけ好ましい実施形態では、本発明の製剤は、微粒子担体を含まない。
【0071】
本発明の特に好ましい実施形態では、活性剤としてヨウ素を含有しない。別の好ましい実施形態では、製剤は防腐剤を含まない。更に別の好ましい実施形態では、本発明による製剤は、抗炎症剤を含まない。更にまた別の好ましい実施形態では、本発明の製剤は活性剤を含まない。
【0072】
別の好ましい実施形態では、本発明による製剤は薄膜形成物質を含まない。
【0073】
本発明に関して防腐剤を含まないということは、この製剤が、酸素およびハロゲン放出性の化合物、好ましくはヨウ素およびヨウ素錯体、および/または金属化合物、好ましくは銀および水銀化合物、ホルムアルデヒド放出性化合物を含んだ有機殺菌剤、アルキルおよびアリールフェノール化合物を含んだフェノール性化合物、キノリンおよびアクリジン、ヘキサヒドロピリミジン、第四級アンモニウム化合物、イミンおよびそれらの塩、ならびにグアニジンを含まないことを意味する。
【0074】
抗炎症剤を含まないとは、本発明の製剤が、抗菌性および抗ウィルス製剤、抗生物質、またはコルチコステロイドを含まないことを意味する。
【0075】
本発明に関して、医薬品としての活性剤を含まないとは、本発明の製剤が、いかなる医薬品としての活性剤も含有しないことを意味する。ハイドロゲルそれ自身は、医薬品としての活性剤という用語に包含されない。
【0076】
微粒子担体を含まないとは、本発明の製剤が、特にリポソーム、微小球、ナノ粒子、または大型多孔質粒子等の微粒子担体を含有しないことを意味する。
【0077】
薄膜形成物質を含まないとは、本発明の製剤が、特にヒエテロース、ヒプロメロース、ヒアルロン酸エステル、ポリビニルアルコール、またはポリビニルピロリドン等の薄膜形成物質を含有しないことを意味する。
【0078】
本発明による製剤は、保存剤、酸化防止剤、粘稠剤、またはpH調整剤等の更なる添加剤および補助剤を含むことができる。
【0079】
本発明による製剤は、任意選択で創傷治癒剤を含むことができる。適当な創傷治癒剤は、例えば、デクスパンテノール、アラントイン、アズレン、タンニン、ビタミン(好ましくはビタミンB)、およびそれらの誘導体を含む。
【0080】
本発明による製剤は、創傷治癒を助長するほどまでに創傷内で水分/液体の濃度を維持する能力がある。
【0081】
一般に、本発明の製剤が創傷内で維持することが可能な水分濃度を、一定量の液体を吸収し、あるいは基質および/または創傷に液体を放出することのできる能力によって測定することができる。本発明による製剤の液体放出特性は、本発明に関連して特に関心を呼ぶ。
【0082】
ハイドロゲルのいわゆる「液体親和性」を定量するための標準的な手順が当業者には知られている。好ましい試験は、欧州統一規格EN 13726−1:2002に従う。これによって、ハイドロゲル、特に非晶質ハイドロゲルがゼラチンに液体を放出しまたは寒天から液体を吸収する能力を測定する。もし必要ならば、試験の条件を目的の用途に適合させる。
【0083】
ハイドロゲル被覆材の液体親和性は、それぞれゲル重量の増加または減少によって定量される液体の吸収または放出の能力の百分率として明示する。
【0084】
本発明による製剤は、試験基質だけでなく創傷へも液体または水分を放出するのに特に適当であると証明されている。好ましい実施形態では、この製剤は、EN 13726−1:2002の試験条件下で、試験基質からの液体の少なくとも8%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも12%、少なくとも14%、少なくとも16%、少なくとも18%、少なくとも20%、または最も好ましくは少なくとも25%を放出する。
【0085】
好ましい実施形態では、ゲルの重量増加で測定する液体吸収は、15%未満、好ましくは12%未満、より好ましくは10%未満、8%未満、6%未満、5%未満、および最も好ましくは4%未満である。
【0086】
本発明による製剤は、液体の吸収および放出特性を変化させるように設計することができ、この目的のために、上記の範囲に示したあらゆる値の組合せを選択することができることは明らかである。
【0087】
ハイドロゲル被覆材の液体親和性を、液体を吸収または放出する百分率によって分類することができる。
【0088】
寒天(Agar)からその重量の0〜10%を吸収する創傷被覆材は、「1型」に、10超〜20%は「2型」に、20超〜30%は「3型」に、30超〜40%は「4型」に、および40超〜50%は「5型」に、それぞれ分類される。
【0089】
ゲル重量の減少で測定する、ゼラチンへの液体放出に関する液体親和性は、次のように分類される:0〜5%の範囲の液体放出は「a型」、5%超〜10%は「b型」、10%超〜15%は「c型」、15%超〜20%は「d型」、20%超〜25%は「e型」である。
【0090】
それに対応して、ゲルの原重量を基準として、寒天から約25%の液体を吸収し、ゼラチンに液体をほとんど放出しない(5%未満)創傷被覆材を「3a型」創傷被覆材に分類する。
【0091】
本発明の特に好ましい実施形態では、この製剤は、「1c型」、「1d型」、「1e型」、または「2e型」に分類される。
【0092】
ある好ましい実施形態では、本発明による製剤は、所望の場所で、例えば液体のようなプレゲル(pre−gel)形態で利用できる。液体製剤は、例えば、噴霧の形態で容易に利用できる。
【0093】
このような液体製剤は、水および/または薬剤として許容できるいずれの溶媒をも、または薬剤として許容できる溶媒および水(本明細書の随所で使用される水には、緩衝溶液等のあらゆる種類の水溶液系が含まれる)のいずれの混合物をも含むことができる。薬剤として許容できる溶媒(複数も)は、1種または複数の有機溶媒を含むことが好ましい。揮発性アルコール(複数も)が、特に好ましい。このようなアルコールは、例えば、エタノール、n−プロパノール、i−プロポナール、および/またはブタノール、および前述のものの組合せである。この製剤が意図する場所で適用された後、1種または複数の揮発溶媒の蒸発によって、または体組織による液体成分の吸収によってハイドロゲルを形成する。
【0094】
プレゲル形成製剤の適用に際して、揮発成分の少なくとも1種が、蒸発または吸収されて本発明によるゲル製剤を形成する。
【0095】
適当なプレゲルは、例えば、参照によって本明細書に組み込まれている欧州特許第0704206号明細書に開示されている。
【0096】
概して、本発明の製剤を、ある量の適当な液体、溶剤、好ましくは水にゲル形成ポリマーを分散させることによって調製することができる。本発明による製剤は、100gの製剤当たり約0.1gと約10gとの間、好ましくは焼く0.5gと約5gとの間、より好ましくは約1.0gと約3.0gとの間のゲル形成ポリマーを含む。もし必要ならば、この混合物のpHを、好ましくは溶液の形で適当な酸または塩基を加えて調節することができる。最終の製剤のpHは、約3と約7との間、好ましくは約4と約6.5との間、より好ましくは約5と約6との間である。所望の条件(pH値、その他)が満たされれば、ゲルは然るべき時間の間膨潤することができる。
【0097】
リポソームを更に含む好ましい実施形態では、本発明の製剤を、適当なゲルとリポソームまたはリポソーム製剤とを組み合わせることによって調製することができる。このリポソーム製剤は、当業者には周知のいずれの方法によっても調製することができる。適当な方法は、例えば、欧州特許第0639373号明細書に開示されている。所望ならば、リポソーム製剤の形成を促進するために高温を適用することができる。本発明の好ましい実施形態では、リポソーム製剤は、製剤の全重量を基準にして0.1〜30%の範囲に、好ましくは1%〜20%の範囲に、更により好ましくは2%と20%との間になる。
【0098】
リポソーム製剤およびゲルは、必要であれば組み合わされ、均質化されて本発明による製剤を形成する。
【0099】
当業者ならば、保存剤のような更なる添加剤および補助剤を、目的の用途のための調製を達成する適当な時期に本発明の製剤に加えることができることは、周知である。当業者ならば、医薬製剤を製造するに際して、必要に応じて本発明の製剤を処理する方法も知っている。
【0100】
とりわけ好ましい実施形態である薄膜形成物質を少なくとも1種含む場合では、薄膜形成物質は、100gの製剤を基準にして0.1gと10gとの間、好ましくは0.5gと7gとの間、より好ましくは1gと5gとの間、最も好ましくは2gと4gとの間で残存してよい。
【0101】
この薄膜形成物質は、一般に溶液の形で提供されるが、当業者には公知の他のいかなる適当な形態で提供されてもよい。とりわけ好ましい実施形態では、薄膜形成物質は、最初にリポソーム製剤と組み合わされ、続いて形成されたゲルに加えられる。生じた混合物は必要に応じて更に処理される。
【0102】
いくつかの好ましい実施形態では、活性剤、特に抗炎症剤は、本発明の製剤によって含められる。いくつかの特定の実施形態では、先行技術におけるよりも低い濃度で活性剤を提供することが有利である。しかし、活性剤の濃度は、本製剤の目的の用途に合わせて調節される。本発明のいくつかのとりわけ好ましい実施形態は、PVPヨウ素以外の活性剤を含む。
【0103】
活性剤は、リポソーム製剤と組み合わせるための適当な形態とし得る。一般に、組み合わされた混合物は、続いて形成されたゲルに加えられ、更に処理されて本発明による製剤を形成する。
【0104】
本発明の製剤が、保存料、緩衝液その他のような更なる成分または補助剤を含む場合は、目的の用途のために、当業者は、本発明による製剤にこれらの物質を選択して組み込むことができる。
【0105】
具体的な本発明の剤形は、実施例から明白である。
(実施例)
【0106】
本発明の特徴と利点は、好ましい実施形態の次の記述から更に詳細に明らかになるであろう。活性剤を含む実施形態では、ポビドンヨードが例証され、リポソームが、担体として選択されている。しかし、活性剤、特にいかなる防腐剤も含まない本発明の実施形態を提供するために、ポビドンヨードを除外することもできる。PVPヨウ素を、目的の用途に適した別の活性剤によって置き換えることができるということは、当業者には明白である。同様に、例示された実施形態は、活性物質も微粒子担体材料も含まない本発明の製剤の特徴を、変更すべきは変更して説明するのに役立つ。
【0107】
本発明によれば、例示されたリポソームに代わる「大型多孔質粒子」または他のミセル、ナノ粒子、その他等の微粒子担体は、PVPヨウ素のような活性剤と共に処方される。
【実施例1】
【0108】
Carbopol 980 NF組成物を調製した。表Iに示した量を、分析用組成物またはスケールアップ組成物のいずれかのために使用した。
【0109】
【表1】

【0110】
Pos.は、Positionの略である(以下の表IIも参照)。Carbopol 980 NFは、BF GoodrichまたはNoveonから購入した。
【0111】
表IIの列2では、ステップの正確な順序および各ステップのパラメーターを示している。すべてのステップは、別段の指定がある場合を除いて、室温で実施された。すべての物質は、医薬製剤には一般的な純度等級であった。
【0112】
【表2】

【実施例2】
【0113】
(緩衝液およびGermall IIを用いる処方)
Carbopol 980 NF組成物を調製した。表IIIに示した量を、分析用組成物用またはスケールアップ組成物用のいずれかに使用した。
【0114】
【表3】

【0115】
Pos.は、Positionの略である(以下の表IVも参照)。Carbopol 980 NFは、BF Goodrichから購入した。
【0116】
表IV列2では、ステップの正確な順序および各ステップのパラメーターを示した。すべてのステップは、別段の指定がある場合を除いて、室温で実施された。すべての物質は、医薬製剤には一般的な純度等級であった。
【0117】
【表4】

【実施例3】
【0118】
(+Germall II)
リポソームCarbopol 980 NF組成物を調製した。表Vに示した量を、分析向け組成物用またはスケールアップ組成物用のいずれかに使用した。
【0119】
【表5】

【0120】
Pos.は、Positionの略である(以下の表Vも参照)。Carbopol 980 NFは、BF Goodrichから購入した。Phospholipon 90Hは、Rhone Pouleneから購入した。
【0121】
表VI列2では、ステップの正確な順序および各ステップのパラメーターを示した。すべてのステップは、別段の指定がある場合を除いて、室温で実施された。すべての物質は、医薬製剤には一般的な純度等級であった。
【0122】
【表6】

【実施例4】
【0123】
リポソームCarbopol 980 NF組成物を調製した。表VIIに示した量を、分析向け組成物用またはスケールアップ組成物用のいずれかに使用した。
【0124】
【表7】

【0125】
Pos.は、Positionの略である(以下の表VIIIも参照)。Carbopol 980 NFは、BF Goodrichから購入し、Phospholipon 90Hは、Rhone Pouleneから、PVP(Kollidon 30)は、BASFから購入した。
【0126】
表VIII列2では、ステップの正確な順序および各ステップのパラメーターを示した。すべてのステップは、別段の指定がある場合を除いて、室温で実施された。すべての物質は、医薬製剤には一般的な純度等級であった。
【0127】
【表8】

【実施例5】
【0128】
活性剤としてPVPヨウ素を含有するリポソーム組成物を調製した。表IXに示した量を、分析向け組成物用またはスケールアップ組成物用のいずれかに使用した。
【0129】
【表9】

【0130】
Pos.は、Positionの略である(以下の表Xも参照)。Phospholipon(登録商標)90Hは、Aventis(ドイツ)から購入した。Carbopol(登録商標)980 NFは、Noveon Inc.(米国)またはGattefosse(ドイツ)から購入し、PVPヨウ素30/60は、BASF(ドイツ)から購入した。
【0131】
表X列2では、ステップの正確な順序および各ステップのパラメーターを示した。列3は、包括的代替案について検討している。すべてのステップは、別段の指定がある場合を除いて、室温で実施された。すべての物質は、医薬製剤には一般的な純度等級であった。
【0132】
【表10】


【0133】
表IXのPosition EおよびFを、KIO3−およびPVPヨウ素の容器を洗うために使用する(表Xのポイント2および4)。
【0134】
液体親和性の定量
別段の記述がない限り、欧州統一規格EN13726−1:2002、特にドイツ版EN13726−1:2002(D)の手順に従った。
【0135】
本発明の製剤および対照生成物の液体親和性の定量を、25(±2)℃の温度および38%の相対湿度の密閉された試験室内で行った。
【0136】
試験用基質として使用した寒天およびゼラチンは、Merckから購入した。
【0137】
試験は、一次創傷被覆材用の試験手順に従って実施した。
【0138】
次の実施形態を試験した。
a)Carbopol(登録商標)980 NF Gel
b)リポソームCarbopol(登録商標)980 NFゲル
c)リポソームCarbopol(登録商標)980 NFゲルおよびPVP
【0139】
本発明の製剤が試験基質へ液体を吸収または放出する能力を、試料の重量増加または重量減少の百分率で定量した。実施例a)〜c)の結果を表XI〜XIIIに示す。
【0140】
実施例a)〜c)ならびに比較例d)〜g)に関して、液体吸収および液体放出能力の測定が行われた。各実施例(実施例および比較例)内で1〜5を付番された試料でそれぞれ5つの測定が実施された(実施例に関しては表XI〜XIIIを参照し、比較例に関しては表XIV〜XVIを参照)。これらの5つの測定の平均値ならびに標準偏差を定量し、更なる議論で引用された。
【0141】
【表11】

【0142】
本発明のCarbopol(登録商標)980 NFゲル(a)は、液体を非常によく放出し、18%のゲル重量減少を示している。本発明のゲルは、4%の液体吸収を示している。Carbopol(登録商標)980 NFゲルa)は、EN13726−1:2002の基準によれば「1d型」のゲルである。
【0143】
【表12】

【0144】
リポソームCarbopol(登録商標)NF980ゲル(b)は、良好な液体放出特性を明示していて、17%の重量減少は、Carbopol(登録商標)980 NF製剤a)のそれよりわずかに低いだけである。液体吸収能力は、a)(表XI参照)と比較してわずかに増大し、5%の液体吸収を明示している。リポソームゲル製剤b)は、EN13726−1:2002の基準によれば「1d型」に分類することができる。
【0145】
【表13】

【0146】
薄膜形成物質としてPVPを含む本発明のリポソームゲル(c)の液体放出特性は、14%の液体放出値および9%の吸収能力を明示している。PVPを含むリポソームCarbopol(登録商標)980 NFゲルは、EN13726−1:2002の基準によれば「1c型」である。
【0147】
ちなみに、4種の市販のゲル製剤を、それらの液体親和性に関して試験した。
d)Askina(登録商標)Gel(Braunから市販)
e)IntraSite(登録商標)Gel(Smith & Nephewから市販)
f)NU−Gel(Johnson & johnsonから市販)
g)Varihesive(登録商標)Hydrogel(convaTecから市販)
【0148】
比較製剤の液体親和性の結果を表XIV〜XVIIに示す。
【0149】
【表14】

【0150】
Askina(登録商標)Gelは、3%の液体放出を示し、実施例a)〜c)におけるよりも有意に低い(表XI〜XIII参照)。液体吸収は、実施例a)〜c)におけるよりも高い28%である。Askina(登録商標)Gelを、EN13726−1:2002の基準によって「3a型」に分類する。
【0151】
【表15】

【0152】
IntraSite(登録商標)Gelは、試験基質に7%の液体を放出し、16%の液体吸収を示した。IntraSite(登録商標)Gelは、本発明による製剤よりも低い液体放出能力を有する。IntraSite(登録商標)Gelを、EN13726−1:2002の基準によって「2b型」に分類する。
【0153】
【表16】

【0154】
NU−Gelは、2%という非常に低い液体放出しか示さない一方で、その液体吸収は29%と定量されている。NU−Gelを、EN13726−1:2002の基準によって「3a型」に分類する。
【0155】
【表17】

【0156】
Varihesive(登録商標)Hydrogelは、6%の液体放出値を明示し、本発明の製剤の放出能力よりも有意に低い。液体吸収は32%である。Varihesive(登録商標)Hydrogelを、EN13726−1:2002の基準によって「4b型」に分類する。
【0157】
液体親和性試験は、本発明による製剤の液体放出特性が、先行技術の既知のゲルの放出特性よりも有意に高いということを明らかに実証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に湿潤創傷治癒環境での創傷治療用の薬物を製造する方法であって、製剤がハイドロゲルを含み、前記製剤の液体を放出する能力が、液体を吸収するその能力より大きい方法。
【請求項2】
前記ハイドロゲルが、寒天、アルギン酸エステル、アルギン酸、アラビアゴム、ゼラチン、デンプン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、および/またはそれらの組合せからなる群から選択されるゲル形成物質の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記製剤が、リポソームを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記リポソーム材料がレシチンを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記レシチン成分が水素化大豆レシチンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記リポソーム材料が、コレステロール、コハク酸二ナトリウム六水和物等を更に含む、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記リポソームの平均寸法が、約1μm〜約150μmの範囲内、好ましくは約1μm〜約70μmの範囲内、より好ましくは約1μm〜30μmの範囲内にある、請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記製剤が、薄膜形成物質を更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記薄膜形成物質が、ヒエテロース、ヒプロメロース、ヒアルロン酸エステル、ポリビニルアルコール、またはポリビニルピロリドン(PVP)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記薄膜形成物質が、製剤の全重量を基準にして、0.1%と10%との間、好ましくは0.5%と7%との間、より好ましくは1%と5%との間、最も好ましくは2%と4%との間の範囲で存在する、請求項8から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記薄膜形成物質が、ポリビニルピロリドン(PVP)である、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1種の防腐剤を更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記防腐剤が、酸素およびハロゲン放出性の化合物で、好ましくはヨウ素およびヨウ素錯体、および/または金属化合物で、好ましくは銀および水銀化合物を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記製剤が、ホルムアルデヒド放出性化合物を含む有機殺菌剤、アルキルおよびアリールフェノール化合物を含むフェノール性化合物、キノリンおよびアクリジン、ヘキサヒドロピリミジン、第四級アンモニウム化合物、イミンおよびそれらの塩、ならびにグアニジン等の防腐剤化合物を更に含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記防腐剤が、リポソームに付随している、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記製剤が、保存剤、酸化防止剤、粘稠剤、またはpH調整剤等の添加剤および補助剤を更に含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
創傷治癒促進剤を更に含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
創傷治癒促進剤が、デクスパンテノール、アラントイン、アズレン、タンニン、ビタミン、好ましくはビタミンB、およびそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
薬剤として許容できる適当な媒質を更に含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
EN13726−1:2002に従って試験する時に、前記製剤の液体放出が、試験基質由来の液体の少なくとも8%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも12%、少なくとも14%、少なくとも16%、少なくとも18%、少なくとも20%、または最も好ましくは少なくとも25%である、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
EN13726−1:2002に従って試験する時に、前記ゲルが、15%未満、好ましくは12%未満、より好ましくは10%未満、8%未満、6%未満、5%未満、および最も好ましくは4%未満を吸収する、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ハイドロゲルが、少なくとも1種の揮発成分の蒸発および/または体組織による液体成分の吸収によって所望の場所でプレゲルから形成される、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
特に湿潤創傷治癒環境での創傷治療用の薬物を製造する方法であって、製剤がハイドロゲルを含み、前記製剤の液体を放出する能力が、液体を吸収するその能力より大きく、かつ前記製剤が、リポソームおよびヨウ素を含有しない方法。
【請求項24】
前記製剤が、微粒子担体を含まない、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記製剤が、防腐剤を含まない、請求項23および24に記載の方法。
【請求項26】
前記製剤が、抗炎症剤を含まない、請求項23から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記製剤が、医薬品としての活性剤を含まない、請求項23から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記製剤が、薄膜形成物質を含まない、請求項23から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ハイドロゲルが、寒天、アルギン酸エステル、アルギン酸、アラビアゴム、ゼラチン、デンプン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、および/またはそれらの組合せからなる群から選択されるゲル形成物質の少なくとも1種を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記製剤が、保存剤、酸化防止剤、粘稠剤、またはpH調整剤等の添加剤および補助剤を更に含む、請求項23から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
薬剤として許容できる適当な媒質を更に含む、請求項23から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
EN13726−1:2002に従って試験する時に、前記製剤の液体放出が、試験基質由来の液体の少なくとも8%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも12%、少なくとも14%、少なくとも16%、少なくとも18%、少なくとも20%、または最も好ましくは少なくとも25%である、請求項23から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
EN13726−1:2002に従って試験する時に、前記ゲルが、15%未満、好ましくは12%未満、より好ましくは10%未満、8%未満、6%未満、5%未満、および最も好ましくは4%未満を吸収する、請求項23から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ハイドロゲルが、少なくとも1種の揮発成分の蒸発および/または体組織の液体成分の吸収によって所望の場所でプレゲルから形成される、請求項23から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記製剤の液体を放出する能力が、液体を吸収するその能力より大きく、かつ前記製剤が、リポソームおよびヨウ素を含有しない、ハイドロゲルを含む創傷治癒のための製剤。
【請求項36】
前記製剤が、微粒子担体を含まない、請求項35に記載の製剤。
【請求項37】
前記製剤が、防腐剤を含まない、請求項35および36のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項38】
前記製剤が、抗炎症剤を含まない、請求項35から37のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項39】
前記製剤が、医薬品としての活性剤を含まない、請求項35から38のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項40】
前記製剤が、薄膜形成物質を含まない、請求項35から39のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項41】
前記ハイドロゲルが、寒天、アルギン酸エステル、アルギン酸、アラビアゴム、ゼラチン、デンプン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、および/またはそれらの組合せからなる群から選択されるゲル形成物質の少なくとも1種を含む、請求項35に記載の製剤。
【請求項42】
前記製剤が、保存剤、酸化防止剤、粘稠剤、またはpH調整剤等の添加剤および補助剤を更に含む、請求項35から42のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項43】
薬剤として許容できる適当な媒質を更に含む、請求項37から42のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項44】
EN13726−1:2002に従って試験する時に、前記製剤の液体放出が、試験基質由来の液体の少なくとも8%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも12%、少なくとも14%、少なくとも16%、少なくとも18%、少なくとも20%、または最も好ましくは少なくとも25%である、請求項37から43のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項45】
EN13726−1:2002に従って試験する時に、前記ゲルが、15%未満、好ましくは12%未満、より好ましくは10%未満、8%未満、6%未満、5%未満、および最も好ましくは4%未満を吸収する、請求項37から44のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項46】
請求項1から45のいずれか一項に記載の製剤を含む創傷被覆材。

【公表番号】特表2009−525295(P2009−525295A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552738(P2008−552738)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000824
【国際公開番号】WO2007/088038
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】