説明

ハイドロタルサイト含有マスターペレット

【課題】大型撹拌設備を用いることなく、たとえば二軸押出機のような比較的簡易な設備であっても充分に高濃度かつ高分散化されたハイドロタルサイト含有マスターペレットを提供する。
【解決手段】ハイドロタルサイト(A)と、ベース樹脂(B)と、分散剤、メルトフロー向上剤または滑剤より選択される1または複数の添加剤(C)とを含むマスターペレットであって、上記ベース樹脂(B)が、ポリオレフィン系樹脂であり、かつ、メルトフローレート(MFR)が0.5〜10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロタルサイト含有マスターペレットに関する。さらに詳しくは、ハイドロタルサイトが高濃度に配合され、かつ、充分に分散したハイドロタルサイト含有マスターペレットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無機フィラーを使用したマスターペレットは種々広範な分野で使用されており、中でもハイドロタルサイトを用いたマスターペレットは、当該ハイドロタルサイトの有する赤外線吸収能、樹脂の酸化劣化防止機能等が着目され、保温性が要求される農業用ポリオレフィンフィルムの分野において好適に利用されている。たとえば、特許文献1には、多くのケイ酸成分やリン酸成分を層間に導入したハイドロタルサイト系化合物が開示されている。当該ハイドロタルサイト系化合物を用いた農業用ポリオレフィンフィルムは保温性や太陽光の透過性に優れる。その他、焼成タイプのハイドロタルサイトや耐水性表面処理の施されたハイドロタルサイトも開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−217912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のハイドロタルサイト系化合物、焼成タイプのハイドロタルサイトや耐水性表面処理の施されたハイドロタルサイトを用いて、それを高濃度で配合するマスターペレットを調製する場合において、一般的にこれらハイドロタルサイトは粒子径が小さく嵩高いため、高濃度に配合すると、ベース樹脂中に均一に分散させることが困難である。そのため、ハイドロタルサイトを高濃度化するためには、バンバリーミキサー等の大型撹拌設備が必要であり、たとえば生産性に優れた二軸押出機などでは充分に分散したマスターペレットが得られないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、バンバリーミキサーなどの大型撹拌設備を用いることなく、たとえば二軸押出機のような比較的簡易な設備であっても充分に高濃度かつ高分散化されたハイドロタルサイト含有マスターペレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイドロタルサイト含有マスターペレットは、
ハイドロタルサイト(A)と、
ベース樹脂(B)と、
分散剤、メルトフロー向上剤または滑剤より選択される1または複数の添加剤(C)とを含むマスターペレットであって、
上記ベース樹脂(B)が、ポリオレフィン系樹脂であり、かつ、メルトフローレート(MFR)が0.5〜10であることを特徴とする。本発明にかかる当該ハイドロタルサイト含有マスターペレットは、バンバリーミキサーなどの大型撹拌設備を用いることなく、たとえば二軸押出機のような比較的簡易な設備であっても充分に高濃度かつ高分散化することが可能である。特に、分散剤が配合されている場合には、ハイドロタルサイトの凝集が有意に抑制される。
【0007】
上記ハイドロタルサイト(A)の配合量が、マスターペレット全体の30質量%以上70質量%以下であることが好ましい。マスターペレット全体のハイドロタルサイト(A)の含有量として70質量%を超える場合、マスターペレット加工時の吐出量が極端に少なくなり生産性に劣る傾向があり、30質量%未満の場合、ハイドロタルサイト(A)の有する諸効果(たとえば赤外線吸収能、フィルム形成時の赤外線吸収効果(保温性付与効果)、ハロゲン捕捉効果、受酸効果など)が得られにくい傾向があるとともに、必要とするマスターペレット量が多くなり、経済的に不利となる傾向がある。
【0008】
上記メルトフロー向上剤は、MFRが50〜50000のポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。当該構成を有することにより、マスターペレット調製時の、特に押出加工時における溶融粘度を有意に低下させることができ、その結果、加工性が改善される。
【0009】
上記ベース樹脂(B)の配合量が、マスターペレット全体の30質量%以上60質量%以下であることが好ましい。当該構成を有することにより、マスターペレット調製時の練りムラや、得られたマスターペレットを用いて形成したフィルムに外観不良が生じることがない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バンバリーミキサーなどの大型撹拌設備を用いることなく、たとえば二軸押出機のような比較的簡易な設備であっても充分に高濃度かつ高分散化されたハイドロタルサイト含有マスターペレットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のハイドロタルサイト含有マスターペレットは、ハイドロタルサイト(A)と、
ベース樹脂(B)と、
分散剤、メルトフロー向上剤または滑剤より選択される1または複数の添加剤(C)とを含むマスターペレットであって、
上記ベース樹脂(B)が、ポリオレフィン系樹脂であり、かつ、メルトフローレート(MFR)が0.5〜10であることを特徴とする。
【0012】
ハイドロタルサイト(A)は、天然に産出する粘土鉱物の一種であり、正に帯電した基本層[Mg1-xAlx(OH)2]x+と負に帯電した中間層[(CO3)x/2・mH2O]x-からなる層状の無機化合物であり、下記一般式(1)の構造を例示することができる。
[M2+1-x3+x(OH)2x+[An-x/n・mH2O]x- (1)
(式中、M2+は、Mg2+、Fe2+、Zn2+、Ca2+、Li2+、Ni2+、Co2+、Cu2+などの2価金属イオンであり、M3+は、Al3+、Fe3+、Mn3+などの3価金属イオンであり、An-は、Cl-、Br-、I-、ClO4-、NO3-、CO32-、SO42-、SiO32-、HPO43-、HBO43-、PO43-、Fe(CN43-、FeCN44-、CH3COO-、C64(OH)COO-、(COO)22-、テレフタル酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオンなどのn価のアニオンであり、xは0<x≦0.33の範囲である)。ハイドロタルサイト(A)としては、このように天然に産出するもののほか、合成により得られる合成ハイドロタルサイト(ハイドロタルサイト様化合物)も使用することができる。合成ハイドロタルサイトとしては特に制限されないが、たとえば2価と3価の混合金属塩水溶液とアルカリ性溶液を混合する共沈法により得られる沈殿物を例示することができる。その際、Mg−Al系合成ハイドロタルサイトを得るには、pHを10程度で合成することが好ましく、Zn系やNi系の合成ハイドロタルサイトを得るには、それよりも低いpHで合成することが好ましい。また、金属塩水溶液の滴下とともにpHが変化するため、水酸化ナトリウム水溶液などを適宜加えてpHを一定に保つことが好ましい。なお、2元系の合成ハイドロタルサイトに限定されず、3元系、4元系のハイドロタルサイトを用いてもよい。さらに、共沈法を応用したテンプレート法を用いて合成してもよい。また、その結晶構造、結晶粒子径、含水率等は、求められる物性に応じて、適宜決定すればよい。また、必要に応じて、ハイドロタルサイトに表面処理を行ってもよい。
【0013】
ハイドロタルサイト(A)の配合量としては、マスターペレット全体の30質量%以上70質量%以下が好ましく、40質量%以上70質量%以下がより好ましい。ハイドロタルサイト(A)の配合量が30質量%未満の場合、マスターペレット中の配合量が少なくなり、ハイドロタルサイト(A)の有する諸効果(たとえば赤外線吸収能、フィルム形成時の赤外線吸収効果(保温性付与効果)、ハロゲン捕捉効果、受酸効果など)が得られにくい傾向がある。一方、70質量%を超えると、バンバリーミキサーを使用してベース樹脂(B)と混錬する場合においてさえ均一な混和が困難となる傾向がある。
【0014】
ベース樹脂(B)は、ハイドロタルサイト(A)を分散する基材となる樹脂である。ベース樹脂(B)は、ポリオレフィン系樹脂から選択される。ポリオレフィン系樹脂としては特に制限されないが、たとえば1種類以上のモノオレフィンを高圧法または低圧法により重合させて得られる樹脂を挙げることができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1を好適に用いることができる。これらのオレフィン系樹脂は、単独重合体、共重合体のいずれであってもよい。オレフィン系樹脂が共重合体である場合に、この共重合体を構成する他のモノマーと共重合可能なモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等の直鎖状α−オレフィン、4−メチルペンテン−1、2−メチルプロペン−1、3−メチルペンテン−1、5−メチルヘキセン−1、4−メチルヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等の分岐状α−オレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等のジカルボン酸やこれらのモノエステル、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート等のアクリル酸若しくはメタクリル酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の飽和カルボン酸のビニルエステル、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸等の酸無水物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン等のジエンモノマー、またはアクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド等を挙げることができる。
【0015】
これらの他のモノマーと共重合可能なモノマーは単独で用いてもよいが、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、共重合体は、ランダム型、ブロック型、グラフト型、またはこれらの混合型等のいずれもあってもよい。共重合体に占めるこれらのモノマーの割合は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。オレフィン系樹脂として用いられる好ましい共重合体としては、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、ブテン−1−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルメタクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−n−ブチルアクリレート共重合体等を挙げることができる。本実施の形態では、ポリエチレンの単独重合体を使用している。これらの中でも、マスターバッチ加工特性の観点から、ポリエチレン系樹脂またはエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(以下、EVAという)から選択される1または複数の樹脂であることが好ましい。また、当該オレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は0.5〜10である。オレフィン系樹脂のMFRが0.5未満の場合、ハイドロタルサイト(A)と混和した際に均一な分散が困難となる傾向がある。一方、オレフィン系樹脂のMFRが10を超える場合、ハイドロタルサイト(A)が経時的に沈降するなど、分散安定性が劣る傾向がある。
【0016】
ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン低密度ポリエチレン(EPPE)などが挙げられ、その中でも、マスターバッチ生産時の加工性が良好である観点からLDPEまたはEPPEが好ましい。特に、EPPEを使用する場合、EPPEはMFR特性と比較して混練時の押出負荷が小さく、低樹脂圧着となる。その結果、押出加工時のマスターペレットの溶融粘度が低下し、ハイドロタルサイト(A)の凝集が抑制される傾向がある。さらに、マスターペレットの着色が防止される、生産ラインにおけるフィルターの目詰まりが防止される、モータへの負荷が低減される、低温加工が容易となる、などの諸効果が得られ、消費電力も低下し、生産性が向上する。上記ベース樹脂(B)の配合量は、マスターペレット全体の30質量%以上60質量%以下であることが好ましい。当該配合量の範囲であれば、マスターペレット調製時の練りムラや、得られたマスターペレットを用いて形成したフィルムに外観不良が生じることがなく特に好ましい。また、当該配合量の範囲内であれば、ベース樹脂(B)のMFRが0.5〜10の範囲内となる。
【0017】
ここで、フィルム調製時は、マスターペレットが樹脂により希釈されるため、ハイドロタルサイトをはじめとする無機物の凝集は生じにくい。しかしながら、マスターペレット調製時にはハイドロタルサイト(A)が高濃度で配合されているため凝集を生じやすいという問題がある。そこで、かかる凝集を防止する目的で添加剤(C)が添加される。添加剤(C)としては、分散剤、メルトフロー向上剤または滑剤が単独または併用される。
【0018】
上記分散剤としては、脂肪酸エステルまたは顔料親和性基を有するコポリマーを例示することができる。脂肪酸エステルとしては特に制限されないが、たとえば炭素数5〜30の脂肪酸のメチルエステル、エチルエステル、モノグリセリンエステル、ジグリセリンエステル、およびトリグリセリンエステルなどを挙げることができ、それらのいずれか1種、または2種以上の混合物という形態で用いることができる。上記脂肪酸エステルの混合物としては、たとえば大豆油、菜種油、オリーブオイル、胡麻油、コーン油、べに油、綿実油、牛脂などの天然に産するものがある。炭素数5〜30の脂肪酸としては特に制限されないが、たとえばオレイン酸、リノール酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、リノレン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、カプリン酸、およびカプロン酸などが挙げられる。
【0019】
グリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、たとえばモノステアリン酸グリセリンエステル、モノオレイン酸グリセリンエステル、モノラウリン酸グリセリンエステル等が挙げられる。なお、グリセリン脂肪酸エステルのHLBは5〜20であることが好ましく、特に10〜20であることが分散安定性の観点からさらに好ましい。
【0020】
顔料親和性基を有するコポリマーとしては、たとえばポリエステル系骨格またはアクリル系骨格またはウレタン系骨格等に有機系反応基または無機系反応基を導入したものが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル系骨格にアミン系反応基またはカルボン酸系反応基が導入されたものが好ましい。
【0021】
分散剤の配合量としては特に限定されないが、たとえばマスターペレット全体の0.5質量%以上10質量%以下が挙げられる。かかる配合量の範囲内であれば、フィルムの機能を阻害することなく、分散剤のブリードによるフィルムの透明性低下が防止され、防曇性が劣ることもなく、ハイドロタルサイト(A)とベース樹脂(B)との濡れ性が改善され、得られるマスターペレットにおいて特にハイドロタルサイト(A)の凝集が抑制される。
【0022】
上記メルトフロー向上剤としては、MFRが50〜50000のポリオレフィン系樹脂を用いることができる、当該ポリオレフィン系樹脂としては、前述のもののうち、MFRが50〜50000のものを1種または複数用いることができ、具体的には、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、LDPE、MDPEを用いることができる。当該構成を有することにより、マスターペレット調製時の押出加工における溶融粘度を有意に低下させることができ、その結果、加工性が改善される。
【0023】
上記滑剤としては特に限定されないが、たとえば脂肪酸、脂肪酸エステル、金属石鹸類、脂肪酸アミドなど挙げることができる。
【0024】
脂肪酸としては、たとえば炭素数5〜30の脂肪酸としてのオレイン酸、リノール酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、リノレン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、カプリン酸、およびカプロン酸などを挙げることができる。また、脂肪酸エステルとしては、前述のものを使用することができる。金属石鹸類としては、ミリスチン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸リチウム、ステアリン酸リチウム、パルミチン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、ミリスチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、ミリスチン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、12−ヒドロキシステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。脂肪酸アミドとしては、たとえば、ラウリル酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、耐熱性が良好である観点からステアリン酸カルシウム、ステアリン酸モノアミド、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましい。上記滑剤の配合量としては、マスターペレット全体の0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上5質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下が特に好ましい。
【0026】
メルトフロー向上剤の配合量は、特に限定されず、メルトフロー向上剤として選択する添加剤(C)のMFRにより大きく異なる。たとえばMFRが145のLDPEを使用する場合はマスターペレット全体の1質量%以上20質量%以下が好ましく、MFRが約3万のEVAを使用する場合はマスターペレット全体の0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。
【0027】
本発明のハイドロタルサイト含有マスターペレットの調製方法としては特に限定されない。本発明のハイドロタルサイト含有マスターペレットは、ハイドロタルサイト(A)を高濃度に配合し、かつ、高分散化したものであるが、MFRが最適された組成であるため、バンバリーミキサーのような大型撹拌設備によらずとも、たとえば二軸押出機を用いて調製することも可能である。これにより、機器選択の幅が増える。また、量産性に優れ、消費電力が低下し、低コストとなる。
【0028】
なお、本発明においては、マスターペレットを樹脂と混合してシート材料とする際に、必要に応じて、成形用の合成樹脂に通常配合される公知の樹脂添加剤、たとえば、防曇剤、防霧剤、追加の滑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、有機リン酸金属塩、無機物、抗酸化剤、安定化助剤、帯電防止剤、防黴剤、防藻剤および着色剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0029】
シート材料調製時に使用できる樹脂としては、フィルム用途に広く一般に使用されているものを使用することができる。たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、エチレン−メタクリル酸共重合体フィルム、ナイロンフィルムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。たとえば農業用フィルムシートを作成する場合には、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルムを好適に使用することができる。
【0030】
防曇剤としては、樹脂フィルムに通常使用されうる任意のものであることができ、たとえば、非イオン系界面活性剤が好適であり、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のエーテル型のもの、多価アルコールとの脂肪酸の部分エステル化物のエステル型のもの、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシルエチレンエーテル等のエーテルエステル型のものが挙げられる。
【0031】
防霧剤としては、フッ素系界面活性剤が挙げられる。具体的には、通常の界面活性剤の疎水基のCに結合したHのかわりにその一部または全部をFで置換した界面活性剤で、特にパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を含有する界面活性剤である。フッ素系界面活性剤の配合量は、塩化ビニル樹脂100質量部当たり、たとえば0.01質量部以上0.5質量部以下である。
【0032】
その他、光安定剤、有機リン酸金属塩、無機物、抗酸化剤、安定化助剤、帯電防止剤、防黴剤、防藻剤および着色剤等の樹脂添加剤を必要に応じて配合することが可能である。
【0033】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物に各種樹脂添加剤を配合するには、それぞれ必要量秤量し、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、スーパーミキサーその他従来知られている配合機、混合機に仕込み混練すればよい。
【0034】
以上、本発明のハイドロタルサイト含有マスターペレットによれば、バンバリーミキサーなどの大型撹拌設備を用いることなく、たとえば二軸押出機のような比較的簡易な設備であっても充分に高濃度かつ高分散化されたハイドロタルサイト含有マスターペレットを提供することができる。これにより、機器選択の幅が増え、量産性に優れ、消費電力が低下し、低コストとなる。
【0035】
以下、実施例により本発明のハイドロタルサイト含有マスターペレットを具体的に説明する。
【0036】
使用原料を以下に示す。
ハイドロタルサイト(A)(協和化学工業(株)製、アルカマイザー2、組成:Mg4Al2(OH)12CO3、焼成ハイドロタルサイト)
ベース樹脂(B)
ベース樹脂(B):LDPE(ダウケミカル社製、NUC−8133、MFR:1.5)
ベース樹脂(B):LLDPE((株)プライムポリマー製、0138N、MFR:1.5)
ベース樹脂(B):LLDPE((株)プライムポリマー製、1018G、MFR:8)
ベース樹脂(B):EVA(宇部丸善ポリエチレン(株)製、V115、MFR:0.8)
ベース樹脂(B):EPPE(住友化学(株)製、CB2001、MFR:2)
添加剤(C)
メルトフロー調整剤(C)(ペトロセン353、東ソー(株)製、MFR:145)
メルトフロー調整剤(C)(ウルトラセン7A55A、東ソー(株)製、Mw:約2500、MFR:約3万)
分散剤(C):グリセリン脂肪酸エステル(エレガンN−1000、日油(株)製)
分散剤(C):顔料親和性基をもつコポリマー(P−4102、ビックケミー・ジャパン(株)製)
【0037】
評価方法を以下に示す。
(分散性)
各実施例、比較例により得られたマスターペレットと当該マスターペレット調整時に使用したベース樹脂と対応する樹脂(LLDPEとして0138N、EVAとしてV115)を混合し、総樹脂量100質量部に対してハイドロタルサイト(A)が10質量部となるように希釈する。単層インフレーション機を用いてフィルム厚さが100μmとなるよう製膜する(製膜条件:シリンダ設定温度190℃(LLDPEを用いる場合)または170℃(EVAを用いる場合)、ダイス設定温度180℃)。得られたフィルムについて、5cm×5cm当たりの粒状物の個数を目視により観察する。
(評価基準)
◎ 直径0.1mm以上の粒状物がないこと
○ 直径0.1mm以上の粒状物が5個以下である
△ 直径0.1mm以上の粒状物が6〜10個である
× 直径0.1mm以上の粒状物が11個以上である
【0038】
実施例1〜10、比較例1〜4
表1に示す配合組成により原料を混合し、押出機に投入し、以下の押出条件にて溶融混練した。ダイ出口から出てきた溶融ストランドを水冷後、適宜切断してマスターペレットを得た。得られたマスターペレットについて、分散性評価を行った。結果を表1に示す。
(押出条件)
押出機:二軸押出機(東洋精機(株)製,2D20S型)
シリンダ・ダイ温度:C1/C2/C3/D1=170/200/170/170(℃)
スクリュー回転数:150(rpm)
ホッパーフィード回転数:80(rpm)
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示されるように、添加剤(C)を含まない比較例1〜3で得られたマスターペレットでは、分散性が悪くなった。また、実施例11(ハイドロタルサイト(A)の配合量:70質量%)で得られたマスターペレットにおけるハイドロタルサイト(A)の配合量を超える場合、マスターペレット加工時の吐出量が極端に少なくなり生産性に劣ることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のハイドロタルサイト含有マスターペレットは、ハイドロタルサイトが高濃度に配合され、かつ、充分に分散されており、バンバリーミキサーなどの大型撹拌設備を必要とすることなく、たとえば二軸押出機のような比較的簡易な設備であっても充分に調製可能である。そのため、ハイドロタルサイト含有フィルム、たとえばハイドロタルサイトを配合した農業用フィルム等を調製する分野において好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロタルサイト(A)と、
ベース樹脂(B)と、
分散剤、メルトフロー向上剤または滑剤より選択される1または複数の添加剤(C)とを含むマスターペレットであって、
前記ベース樹脂(B)が、ポリオレフィン系樹脂であり、かつ、メルトフローレート(MFR)が0.5〜10であるハイドロタルサイト含有マスターペレット。
【請求項2】
前記ハイドロタルサイト(A)の配合量が、マスターペレット全体の30質量%以上70質量%以下である請求項1記載のハイドロタルサイト含有マスターペレット。
【請求項3】
前記メルトフロー向上剤は、MFRが50〜50000のポリオレフィン系樹脂である請求項1または2記載のハイドロタルサイト含有マスターペレット。
【請求項4】
前記ベース樹脂(B)の配合量が、マスターペレット全体の30質量%以上60質量%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイドロタルサイト含有マスターペレット。

【公開番号】特開2012−193267(P2012−193267A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57889(P2011−57889)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【Fターム(参考)】