説明

ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末

【課題】 本発明は、含塩素樹脂組成物においてハイドロタルサイト型化合物由来の電気絶縁性の低下を抑制でき、且つ、優れた含塩素樹脂の熱安定性、着色性を付与する。
【解決手段】 硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン等の可溶性アニオンの少ないMg−Al系ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末、又はMg−Zn−Al系ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末であり、該ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を含塩素樹脂組成物の安定剤として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含塩素樹脂組成物においてハイドロタルサイト型化合物粒子粉末由来の電気絶縁性の低下を抑制でき、且つ、優れた含塩素樹脂の熱安定性を有し、樹脂の着色を抑制できるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、含塩素樹脂の安定化剤としてPbやSnから、無毒な金属石鹸類とハイドロタルサイト型化合物の組合せに変わりつつあり、含塩素樹脂を用いた材料は、電線被覆、フィルム、建材やパイプなど様々な用途で利用されている。
【0003】
ハイドロタルサイトは一般的に、MgAl(OH)16CO・4HOで示される層状の化合物で、Mg−Alからなる層の層間にCO、HO、OHが挿入されている。構造中のMg2+の一部もしくは全部をNi2+、Zn2+、Sr2+やCa2+等の2価カチオンと置き換えることができ、同様にAl3+の一部もしくは全部をFe3+やCr3+等の3価カチオンと置き換えることができる。さらに、CO2−もSO2−やCl等のアニオンと交換することができる。また、一般的に2価と3価のカチオンのモル比を変えても構造を保持し、モル比が2〜4の範囲で層状構造をとることができる。これら構成元素の組成や2価と3価のカチオンの比率を変えた層状の化合物を一般的にハイドロタルサイト型化合物と呼ぶ。
【0004】
特に電線被覆用途の安定剤では急激にハイドロタルサイト型化合物を含むものに変わりつつある。しかし、電線被覆用途の安定剤にハイドロタルサイト型化合物を用いると電気抵抗が低下する傾向があり、低電圧電線では、なんとか使用できるレベルであるが、高電圧電線では漏電しやすくなるので使用することが出来ず、依然として電気絶縁性の高いPb系の安定剤が使用されている。
【0005】
しかし、環境への配慮から高電圧電線でも脱Pbが求められており、高い電気絶縁性を保持できるハイドロタルサイト型化合物が渇望されている。
【0006】
一般的に水溶液等では溶解したイオンを多く含むほど導電性は高くなり、樹脂中でも同様に導電性のイオンが多いほど樹脂の導電性が高くなる。言い換えれば導電性イオンが多いほど樹脂の電気絶縁性は低下する。
【0007】
ハイドロタルサイト型化合物粒子はその構造中及び表面付近に硫酸イオンやナトリウムイオンの様な微量の不純物イオンを含んでおり、電気絶縁性を低下させる原因となっていると考えられる。また、これらのイオンは樹脂の着色や熱安定性を悪化させる原因ともなっている。
【0008】
これまで塩素含有樹脂の安定剤としてハイドロタルサイト型化合物を用いることが知られており(特許文献1〜3)、ハイドロタルサイト型化合物粒子が含有するナトリウム量が少ないと電気抵抗が向上する傾向があることも知られている(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−290451号公報
【特許文献2】特開2007−106620号公報
【特許文献3】国際公開第2006/043352号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献1乃至3に記載されたハイドロタルサイト型化合物では、樹脂の電気絶縁性が十分とは言い難く、含塩素樹脂組成物の安定剤として優れた機能を有するとは言い難いものであった。
【0011】
そこで、本発明は、溶出する導電性イオンが少ないハイドロタルサイト型化合物を提供し、該ハイドロタルサイト型化合物を含む高い電気絶縁性を持った樹脂を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0013】
即ち、本発明は、可溶性アニオンの合計値が70ppm以下であることを特徴とするMg−Al系又はMg−Zn−Al系ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末である(本発明1)。
【0014】
本発明1記載のハイドロタルサイト型化合物のうち含有するナトリウムが700ppm以下であることを特徴とするMg−Al系又はMg−Zn−Al系ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末である(本発明2)。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る溶出する導電性イオンが少ないハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を用いることにより、樹脂に高い電気絶縁性を持たせることが出来る。また、熱安定性及び着色の抑制効果も改善することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
先ず、本発明に係るハイドロタルサイト型化合物粒子粉末について述べる。
【0017】
本発明に係る溶出する導電性イオンが少ないハイドロタルサイト型化合物粒子粉末において、ハイドロタルサイト型化合物はMg,Al,Znなどから構成されており、俗にMg−Al系やMg−Zn−Al系と表記されるものである。
【0018】
本発明に係るハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の組成は特に限定されるものではないが、例えば、一般に知られているようなMg/Alモル比は1.0〜3.5が好ましく、Mg−Al−Zn系での亜鉛はMg及びAlの合計モル数に対してモル比で0.0010〜0.30が好ましく、Zn/Alのモル比で表すと、0.005〜0.5程度が好ましい。
【0019】
本発明に係るハイドロタルサイト型化合物粒子粉末が含む可溶性アニオン(可溶性硫酸イオン、可溶性硝酸イオン及び可溶性塩化物イオン)の合計値は70ppm以下である。これらの可溶性アニオン量が多いと高い電気絶縁性が得られない。特に、価数が2価の硫酸イオンは1価のイオンに比べて電気絶縁性に対する悪影響が大きい。可溶性アニオンは好ましくは60ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。下限値は5ppm程度である。
【0020】
本発明に係るハイドロタルサイト型化合物粒子粉末が含むナトリウムは700ppm以下が好ましい。含有するナトリウムが少なければ溶解するナトリウムが少なくなる可能性が高くなる。ナトリウムイオンは可溶性アニオンよりも影響が少ないものの、ナトリウムが少ない方がより高い電気絶縁性が得られる。好ましくはナトリウムが600ppm以下であり、更により好ましくは550ppm以下である。下限値は20ppm程度である。
【0021】
本発明に係るハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の比表面積は5〜150m/gである。5m/g未満のハイドロタルサイト型化合物粒子は工業的に得られにくい。150m/gを超えても工業的に得られにくい。好ましくは7〜100m/g、より好ましくは8〜50m/gである。
【0022】
本発明に係るハイドロタルサイト型化合物粒子粉末は、0.01〜5wt%程度のカルシウムを含有しても良い。
【0023】
本発明に係るハイドロタルサイト型化合物粒子粉末は、0.01〜8wt%程度の酸化亜鉛を含有しても良い。
【0024】
本発明に係るハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の平均板面径は0.05〜0.8μmが好ましい。
【0025】
次に、本発明に係るハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の製造法について述べる。
【0026】
本発明に係るハイドロタルサイト型化合物粒子粉末は、ハイドロタルサイト型粒子を生成及び熟成させた後のスラリー又は疎水化表面処理などの処理を行った後のスラリーを、pH9.5〜12に調整した後、洗浄し、乾燥して得られるものであり。
【0027】
本発明におけるハイドロタルサイト型化合物粒子粉末は、アニオンを含有したアルカリ性水溶液とマグネシウム塩水溶液とアルミニウム塩水溶液とを混合し、pH値が10〜14の範囲の混合溶液とした後、該混合溶液を80〜105℃の温度範囲で熟成してMg−Al系ハイドロタルサイト型粒子の芯粒子を生成させ、次いで、該芯粒子を含む水性懸濁液に、該芯粒子の生成時に添加した前記マグネシウムと前記アルミニウムとの合計モル数に対して、合計モル数が0.35以下となる割合でマグネシウム及びアルミニウムを含有するマグネシウム塩水溶液とアルミニウム塩水溶液とを添加した後、pH値が10〜14の範囲、温度が60〜105℃の範囲で熟成してMg−Al系ハイドロタルサイト型粒子粉末を得るような常圧での芯粒子に対する成長反応(特開2002−293535号公報)や、オートクレーブを用いて105〜350℃にて生成されたものを用いることが望ましい。これらは、例えば、Mg,Al,Znについては硫酸塩金属、硝酸塩金属、塩化物塩金属、金属酸化物などの原料と、苛性ソーダや水酸化カリウムなどのアルカリ、炭酸ソーダや塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カリウムなどのアニオン源原料から作製すればよい。
【0028】
可溶性アニオン(可溶性硫酸イオン、可溶性硝酸イオン及び可溶性塩化物イオン)の少ないハイドロタルサイト型化合物粒子を作製するには、目標とするハイドロタルサイト型化合物粒子を生成及び熟成させた後のスラリー、又は疎水化表面処理などの処理を行った後のスラリーを、pH9.5〜12に調節することが好ましく、より好ましいpHは9.8〜11.5である。前記pHの範囲に調整することで硫酸イオン等のアニオンが水洗で低下しやすくなる。ナトリウムは水洗で比較的容易に落ちやすいが、可溶性硫酸イオン、可溶性硝酸イオン及び可溶性塩化物イオンのような可溶性アニオンは単に水洗では低減することが困難である。そこで、水洗時に、まず薄いアルカリ水溶液で洗浄して硫酸イオン等のアニオンを低減させてから、さらに水で水洗することで、より硫酸イオン等のアニオンが低下しやすくなる。前記ハイドロタルサイト型粒子粉末を含有するスラリーのpH調節及び水洗前の洗浄で用いる薄いアルカリ水溶液には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ水溶液を用いればよい。
【0029】
さらに、薄いアルカリ水溶液及び/又は水洗に用いる薄いアルカリ水溶液及び/又は水は冷水よりも30〜90℃の温水を用いることが好ましい。前記温度範囲の薄いアルカリ水溶液及び/又は水を用いるとイオンの拡散速度が向上し、さらに水の粘度が低下して水洗効果が高まる。より好ましくは40〜70℃である。
【0030】
上記のようにして得られたハイドロタルサイト型化合物粒子粉末は、基本的には105〜150℃にて乾燥を行うことが好ましい。105℃未満の乾燥温度では得られるハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の水分が多いので樹脂中で発泡が起きやすく、また乾燥させるために長時間必要となり経済的ではない。150℃を超える場合は、軟質〜半硬質含塩素樹脂組成物の安定剤用途として樹脂に対する劣化抑制の働きが低下する傾向にある。軟質〜半硬質含塩素樹脂組成物の安定剤用途では、乾燥温度は105〜130℃がより好ましい。乾燥時間は乾燥量や乾燥方法によって必要な時間行えばよい。好ましくは3〜24hである。
【0031】
次に、本発明に係る含塩素樹脂安定剤及び含塩素樹脂組成物について述べる。
【0032】
本発明1又は2のハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を含塩素樹脂安定剤として含塩素樹脂組成物に添加して用いることができる。
【0033】
本発明に係る含塩素樹脂組成物は、樹脂100重量部に対して、前記ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を0.01〜10重量部含有することが好ましい。ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の含有量が0.01重量部未満の場合には、安定剤としての効果が低い。10重量部を超える場合には、効果が飽和するため必要以上に添加する意味がない。また、ハイドロタルサイト型粒子粉末を必要以上に多量に添加すると、発泡が起こりやすく、外観不良や初期着色等の悪影響を及ぼす場合がある。
【0034】
また、必要に応じて、樹脂中に可塑剤、その他安定剤及び添加剤を含有してもよい。
【0035】
可塑剤としては、トリオクチルトリメリテート(TOTM)、トリ−n−オクチル−n−デシルトリメリテート等のトリメトリット酸エステル系可塑剤、フタル酸ジイロデシル(DIDP)、ジイソノニル・フタレート(DINP)、ジ−2−エチルヘキシル・フタレート(DOP)等のフタル酸エステル系可塑剤、ポリプロピレン・アジペート、ポリプロピレン・セバケート等のポリエステル系可塑剤等が好ましい。
【0036】
その他安定剤としては、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛等の亜鉛化合物、ジベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、デヒドロ酢酸等のβ−ジケトン類、アルキルアリルフォスフェート、トリアルキルフォスフェート等のフォスファイト類、ジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール系化合物、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸、エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油等のエポキシ系化合物等が好ましい。
【0037】
その他の添加剤としては、フェノール系化合物、アミン系化合物、りん酸系化合物等の酸化防止剤、ポリエステルの末端をOH基に変えたもの、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、メタクリル酸メチルスチレンコポリマー等のゲル化促進剤、炭酸カルシウム、シリカ、ガラスビーズ、マイカ、ガラス繊維等の増量剤、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、ほう酸亜鉛等の無機難燃剤、含臭素有機系難燃剤、含ハロゲンリン酸エステル系難燃剤等の難燃剤、ステアリン酸、ポリエチレンワックス、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム等の滑剤、トリクロサン、オーソサイド、サンアイゾール100、サンアイゾール300等防カビ剤等が使用される。
【0038】
本発明に係るハイドロタルサイト型化合物を含塩素樹脂組成物として用いる場合、該ハイドロタルサイト型化合物に高級脂肪酸やアニオン系界面活性剤、高級脂肪酸リン酸エステル、カップリング剤及び多価アルコールエステル類から選ばれる少なくとも一種の表面処理を施すことが好ましい。表面処理を施すことでより一層の含塩素樹脂組成物の安定性を付与することができる。
【0039】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリル酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸などであり、高級脂肪酸リン酸エステルとしては、例えば、ステアリルエーテルリン酸、オレイルエーテルリン酸、ラウリルエーテルリン酸などであり、多価アルコールエステルとしては、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ステアリン酸モノグリセライドなどが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ひまし油カリウムなどの塩類などが挙げられる。
カップリング剤としては、シラン系、アルミニウム系、チタン系、ジルコニウム系カップリング剤などを使用できる。
【0040】
表面処理剤の処理方法は、特に限定されないが、ハイドロタルサイト型化合物粒子表面に湿式反応によって行ってもよい。あるいは、ハイドロタルサイト型化合物粒子表面に、ヘンシェルミキサー等によって乾式表面処理してもよい。または、単純に該ハイドロタルサイト型化合物粒子と表面処理剤を混合するだけでもよい。
【0041】
本発明に係る含塩素樹脂組成物は、可塑剤が全く含まれない若しくは少量しか含まれない硬質若しくは半硬質材料の場合、下記組成からなる含塩素樹脂組成物において、本発明に係るハイドロタルサイト型化合物を用いれば、ステアリン酸亜鉛0.8重量部では、後述する着色レベルにおいて、レベル3の時間が65分以上、レベル5の時間が100分以上である。
含塩素樹脂(重合度1000)
大洋塩ビ株式会社製 大洋PVC TH1000 100重量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(大八化学製 DOP) 0〜25重量部
ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末 3.5重量部
ステアリン酸亜鉛(一般試薬) 0.6〜0.9重量部
【0042】
また、可塑剤が多く含まれる軟質材料の場合、下記組成からなる含塩素樹脂組成物において、本発明に係るハイドロタルサイト型化合物を用いれば、後述する着色レベルにおいて、レベル3の時間が65分以上で、レベル5の時間が100分以上である。
含塩素樹脂(重合度1000)
大洋塩ビ株式会社製 大洋PVC TH1000 100重量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(大八化学製 DOP) 40〜80重量部
本発明ハイドロタルサイト型化合物 3.0重量部
ステアリン酸亜鉛(一般試薬) 0.6重量部
【0043】
本発明に係る含塩素樹脂組成物は、用途によっても異なるが、体積固有抵抗値が2.0×1014Ω・cm以上であることが好ましい。
【0044】
次に、本発明に係る含塩素樹脂組成物の製造法について述べる。
【0045】
本発明に係る含塩素樹脂組成物は通常の製造法によって得ることができるが、例えば、練り込みシートを得る場合には、樹脂、ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末及び上記各種安定剤、添加剤を所定量混合し、該混合物を熱間ロールで練り込み、練り込みシートを得た後、熱間プレスで加圧処理することによって得られる。熱間ロールの練り込み温度は用いる樹脂や樹脂組成物によって異なるが、140〜300℃が好ましい。熱間プレスのプレス温度は145〜320℃が好ましい。
【0046】
<作用>
本発明に係るハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を用いることにより、樹脂の電気絶縁性を低下することが抑制でき、しかも、熱安定性の向上及び着色の抑制をもたらすことができる。
即ち、本発明に係るハイドロタルサイト型化合物粒子粉末は、電気伝導性のある可溶性硫酸イオン、可溶性硝酸イオン及び可溶性塩化物イオン等の可溶性アニオンの含有量が少ないため、樹脂の安定剤として用いた場合に、高い電気絶縁性を有する樹脂組成物が得られる。しかも、塩による樹脂焼けも抑えることができ、高い熱安定性を有し、着色の抑制された樹脂組成物を得ることができる。また、含有するナトリウムが少ないとより高い効果が得られる。
【実施例】
【0047】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0048】
ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、カルシウム等の元素の含有量は、試料を酸で溶解し、プラズマ発光分光分析装置(サーモエレクトロン株式会社製、iCAP6500)でイットリウムを内部標準として用いて分析して求めた。
【0049】
可溶性アニオンの測定法について以下に述べる。試料5gをエタノール40mlに馴染ませて分散させ、超純水100mlを追加して密封容器で1分間振り混ぜ、そのまま22℃で20時間放置した後、このスラリーを濾過し、超純水を補給しながら濾液を60分間煮沸させてエタノールを蒸発させ、冷却して超純水で液量を100mlに調節した。これをイオンクロマト分析装置(東亜ディーケーケー、ICA−2000)で分析し硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオンの測定をそれぞれ行った。
【0050】
比表面積値は、窒素を用いたB.E.T.法により測定した。
【0051】
樹脂のロール混練は、6インチ2本タイプを用いて、樹脂組成物に合わせて温度を140〜190℃に調整した。混練時間は5分にて行った。
【0052】
上記ロール混練したシートを、200×200×1〜1.5mmの圧縮成型体にした。圧縮成形体を作製する装置は加熱プレスが70トン自動プレス(ラム面積210cm)、冷却プレスが30トン手動プレス(ラム面積180cm)とした。圧縮成型条件は、140〜190℃にて、予熱(無圧)にて3分、加圧(6.3MPa)にて2分、冷却(3.1MPa)にて3分の手順で行った。
【0053】
得られたシートを用いて電気抵抗(電気絶縁性)を測定した。厚さ1.0mmの樹脂プレスシートを作成し、30℃−60%のデシケーターに1日保管し、JIS K6723に準じて、体積固有抵抗値(Ω・cm)を測定した。
【0054】
熱安定性試験はギヤー老化式試験機(株式会社安田精機製作所製、102−SHF−77S)にて行った。上記プレスしたシートを30×30mm角に切り出し、ガラス板上にこの試験片を置いて、190℃で200分間試験をしながら、10分毎に試験片を2枚/1サンプルずつ取り出して、記録紙に貼り付けた。
【0055】
プレスシート及び熱安定性試験片の着色レベルは次のような1〜7のレベルに定義した。
レベル1 ほとんど着色がない
レベル2 淡い褐色
レベル3 褐色
レベル4 一部が炭化・黒化
レベル5 全体が炭化・黒化
【0056】
次に実施の形態を述べる。
【0057】
実施例1
(ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の作製)
酸化マグネシウム26.9gを純水に分散させたスラリーと硫酸アルミニウム8水塩結晶81.0gの水溶液を攪拌しながら混合した。別に、炭酸ソーダ結晶35.7gを純水で溶解し、さらに苛性ソーダ(12N)58.3mlと純水を加えた。このアルカリ溶液を先の酸化マグネシウムと硫酸アルミニウム8水塩を混合したスラリーに投入して80℃に昇温し、80℃にて5時間撹拌した。全量を1Lとし、これをオートクレーブに移して175℃にて4時間撹拌しながらエージングした。
続いて、この反応スラリーを撹拌しながら67℃にして、pHを10.3に調整した。この状態に2.3gのパルミチン酸ソーダを熱湯(80℃)に溶解した溶液を投入した。これを0.7時間エージングした。濾過後、40℃のpH11.5の薄い苛性ソーダの水溶液2Lで水洗し、その後40℃の純水15Lで水洗し、125℃で8h乾燥を行った。得られた試料の比表面積は11.0m/gであった。
【0058】
(含塩素樹脂組成物の作製及び評価)
上記ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を用いて以下の含塩素樹脂組成物とした(軟質組成)。
含塩素樹脂組成物 100phr
DOP 55phr
ステアリン酸亜鉛 0.6phr
上記試料 3.0phr
158℃にて5分ロール混練し、158℃にて圧縮成形プレス処理を行った。得られたシートのレベル3の時間は80min、レベル5の時間は120minであった。
【0059】
実施例2
(ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の作製)
硫酸マグネシウム7水塩結晶141.0g、硫酸亜鉛7水塩結晶41.5g結晶及び硫酸アルミニウム8水塩結晶69.4gを純水に溶解した。別に、炭酸ソーダ結晶30.6gを純水で溶解し、さらに苛性ソーダ(12N)152.4mlと純水を加えた。このアルカリ溶液を先の硫酸マグネシウム7水塩結晶、硫酸亜鉛7水塩結晶及び硫酸アルミニウム8水塩を混合した水溶液に投入して85℃に昇温し、85℃にて6時間撹拌した。全量を1Lとし、これをオートクレーブに移して185℃にて6時間撹拌しながらエージングした。
続いて、この反応スラリーを撹拌しながら65℃にして、pHを10.1に調整した。この状態に2.5gのステアリン酸ソーダを熱湯(80℃)に溶解した溶液を投入した。これを0.6時間エージングした。濾過後、50℃のpH11の薄い苛性ソーダの水溶液2Lで水洗し、その後50℃の純水15Lで水洗し、125℃で8h乾燥を行った。得られた試料の比表面積は10.0m/gであった。
【0060】
(含塩素樹脂組成物の作製及び評価)
上記ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を用いて以下の含塩素樹脂組成物とした(軟質組成)。
含塩素樹脂組成物 100phr
DOP 55phr
ステアリン酸亜鉛 0.6phr
上記試料 3.0phr
158℃にて5分ロール混練し、158℃にて圧縮成形プレス処理を行った。得られたシートのレベル3の時間は75min、レベル5の時間は115minであった。
【0061】
実施例3
(ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の作製)
硫酸マグネシウム7水塩結晶176.3g及び硫酸アルミニウム8水塩結晶69.4gを純水に溶解した。別に、炭酸ソーダ結晶30.6gを純水で溶解し、さらに苛性ソーダ(12N)152.4mlと純水を加えた。このアルカリ溶液を先の硫酸マグネシウム7水塩結晶及び硫酸アルミニウム8水塩を混合した水溶液に投入して90℃に昇温し、90℃にて10時間撹拌した。全量を1Lとし、これをオートクレーブに移して145℃にて6時間撹拌しながらエージングした。
続いて、この反応スラリーを撹拌しながら65℃にして、pHを11.2に調整した。この状態に1.9gのラウリン酸ソーダを熱湯(80℃)に溶解した溶液を投入した。これを0.8時間エージングした。濾過後、45℃のpH12.5の薄い苛性ソーダの水溶液2Lで水洗し、その後45℃の純水15Lで水洗し、125℃で8h乾燥を行った。得られた試料の比表面積は9.0m/gであった。
【0062】
(含塩素樹脂組成物の作製及び評価)
上記ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を用いて以下の含塩素樹脂組成物とした(半硬質組成)。
含塩素樹脂組成物 100phr
DOP 20phr
ステアリン酸亜鉛 0.8phr
上記試料 3.5phr
178℃にて5分ロール混練し、178℃にて圧縮成形プレス処理を行った。得られたシートのレベル3の時間は75min、レベル5の時間は115minであった。
【0063】
実施例4
(ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の作製)
塩化マグネシウム6水塩結晶101.9g、塩化亜鉛1水塩結晶26.0g結晶及び塩化アルミニウム6水塩結晶80.5gを純水に溶解した。別に、炭酸ソーダ結晶35.7gを純水で溶解し、さらに苛性ソーダ(12N)136.1mlと純水を加えた。このアルカリ溶液を先の塩化マグネシウム6水塩結晶、塩化亜鉛1水塩結晶及び塩化アルミニウム6水塩を混合した水溶液に投入して95℃に昇温し、95℃にて8時間撹拌した。全量を1Lとし、これをオートクレーブに移して165℃にて7時間撹拌しながらエージングした。
続いて、この反応スラリーを撹拌しながら70℃にして、pHを9.9に調整た。この状態に2.5gのパルミチン酸ソーダを熱湯(80℃)に溶解した溶液を投入した。これを0.7時間エージングした。濾過後、45℃のpH11の薄い苛性ソーダの水溶液2Lで水洗し、その後45℃の純水16Lで水洗し、125℃で8h乾燥を行った。得られた試料の比表面積は10.2m/gであった。
【0064】
(含塩素樹脂組成物の作製及び評価)
上記ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を用いて以下の含塩素樹脂組成物とした(軟質組成)。
含塩素樹脂組成物 100phr
DOP 55phr
ステアリン酸亜鉛 0.6phr
上記試料 3.0phr
158℃にて5分ロール混練し、158℃にて圧縮成形プレス処理を行った。得られたシートのレベル3の時間は75min、レベル5の時間は120minであった。
【0065】
実施例5
(ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の作製)
塩化マグネシウム6水塩結晶141.0g及び塩化アルミニウム6水塩結晶74.3gを純水に溶解した。別に、炭酸ソーダ結晶32.9gを純水で溶解し、さらに苛性ソーダ(12N)163.5mlと純水を加えた。このアルカリ溶液を先の塩化マグネシウム6水塩結晶及び塩化アルミニウム6水塩を混合した水溶液に投入して75℃に昇温し、75℃にて15時間撹拌した。全量を1Lとし、これをオートクレーブに移して170℃にて9時間撹拌しながらエージングした。
続いて、この反応スラリーを撹拌しながら70℃にして、pHを10.9に調整した。この状態に2.0gのラウリン酸ソーダを熱湯(80℃)に溶解した溶液を投入した。これを0.9時間エージングした。濾過後、40℃のpH12の薄い苛性ソーダの水溶液2Lで水洗し、その後40℃の純水15Lで水洗し、125℃で8h乾燥を行った。得られた試料の比表面積は10.4m/gであった。
【0066】
(含塩素樹脂組成物の作製及び評価)
上記ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を用いて以下の含塩素樹脂組成物とした(軟質組成)。
含塩素樹脂組成物 100phr
DOP 55phr
ステアリン酸亜鉛 0.6phr
上記試料 3.0phr
158℃にて5分ロール混練し、158℃にて圧縮成形プレス処理を行った。得られたシートのレベル3の時間は90min、レベル5の時間は110minであった。
【0067】
実施例6
(ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の作製)
硝酸マグネシウム6水塩結晶149.8g、硝酸亜鉛6水塩結晶25.0g結晶及び硝酸アルミニウム9水塩結晶125.0gを純水に溶解した。別に、炭酸ソーダ結晶35.7gを純水で溶解し、さらに苛性ソーダ(12N)126.4mlと純水を加えた。このアルカリ溶液を先の硝酸マグネシウム6水塩結晶、硝酸亜鉛6水塩結晶及び硝酸アルミニウム9水塩を混合した水溶液に投入して90℃に昇温し、90℃にて10時間撹拌した。全量を1Lとし、これをオートクレーブに移して175℃にて8時間撹拌しながらエージングした。
続いて、この反応スラリーを撹拌しながら62℃にして、pHを10.0に調整した。この状態に2.5gのステアリン酸ソーダを熱湯(80℃)に溶解した溶液を投入した。これを0.6時間エージングした。濾過後、45℃のpH11.5の薄い苛性ソーダの水溶液2Lで水洗し、その後45℃の純水15Lで水洗し、125℃で8h乾燥を行った。得られた試料の比表面積は9.8m/gであった。
【0068】
(含塩素樹脂組成物の作製及び評価)
上記ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を用いて以下の含塩素樹脂組成物とした(軟質組成)。
含塩素樹脂組成物 100phr
TOTM 60phr
ステアリン酸亜鉛 0.7phr
上記試料 3.3phr
162℃にて5分ロール混練し、162℃にて圧縮成形プレス処理を行った。得られたシートのレベル3の時間は80min、レベル5の時間は110minであった。
【0069】
実施例7
(ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の作製)
硝酸マグネシウム6水塩結晶171.2g及び硝酸アルミニウム9水塩結晶125.0gを純水に溶解した。別に、炭酸ソーダ結晶35.7gを純水で溶解し、さらに苛性ソーダ(12N)126.4mlと純水を加えた。このアルカリ溶液を先の硝酸マグネシウム6水塩結晶及び硝酸アルミニウム9水塩を混合した水溶液に投入して90℃に昇温し、90℃にて10時間撹拌した。全量を1Lとし、これをオートクレーブに移して130℃にて5時間撹拌しながらエージングした。
続いて、この反応スラリーを撹拌しながら62℃にして、pHを10.0に調整した。この状態に2.5gのステアリン酸ソーダを熱湯(80℃)に溶解した溶液を投入した。これを0.6時間エージングした。濾過後、60℃のpH11の薄い苛性ソーダの水溶液3Lで水洗し、その後60℃の純水25Lで水洗し、125℃で8h乾燥を行った。得られた試料の比表面積は19.2m/gであった。
【0070】
(含塩素樹脂組成物の作製及び評価)
上記ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を用いて以下の含塩素樹脂組成物とした(軟質組成)。
含塩素樹脂組成物 100phr
DOP 55phr
ステアリン酸亜鉛 0.6phr
上記試料 3.0phr
158℃にて5分ロール混練し、158℃にて圧縮成形プレス処理を行った。得られたシートのレベル3の時間は80min、レベル5の時間は115minであった。
【0071】
実施例8
(ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の作製)
硫酸マグネシウム7水塩結晶176.3g及び硫酸アルミニウム8水塩結晶69.4gを純水に溶解した。別に、炭酸ソーダ結晶30.6gを純水で溶解し、さらに苛性ソーダ(12N)152.4mlと純水を加えた。このアルカリ溶液を先の硫酸マグネシウム7水塩結晶及び硫酸アルミニウム8水塩を混合した水溶液に投入して90℃に昇温し、90℃にて10時間撹拌した。全量を1Lとし、これをオートクレーブに移して145℃にて6時間撹拌しながらエージングした。
続いて、この反応スラリーを撹拌しながら65℃にして、pHを11.9に調整した。この状態に1.9gのラウリン酸ソーダを熱湯(80℃)に溶解した溶液を投入した。これを0.8時間エージングした。濾過後、40℃のpH13の薄い苛性ソーダの水溶液2Lで水洗し、その後45℃の純水15Lで水洗し、125℃で8h乾燥を行った。得られた試料の比表面積は9.3m/gであった。
【0072】
(含塩素樹脂組成物の作製及び評価)
上記ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を用いて以下の含塩素樹脂組成物とした(半硬質組成)。
含塩素樹脂組成物 100phr
DOP 20phr
ステアリン酸亜鉛 0.8phr
上記試料 3.5phr
178℃にて5分ロール混練し、178℃にて圧縮成形プレス処理を行った。得られたシートのレベル3の時間は75min、レベル5の時間は110minであった。
【0073】
実施例9
(ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の作製)
塩化マグネシウム6水塩結晶101.9g、塩化亜鉛1水塩結晶26.0g結晶及び塩化アルミニウム6水塩結晶80.5gを純水に溶解した。別に、炭酸ソーダ結晶35.7gを純水で溶解し、さらに苛性ソーダ(12N)136.1mlと純水を加えた。このアルカリ溶液を先の塩化マグネシウム6水塩結晶、塩化亜鉛1水塩結晶及び塩化アルミニウム6水塩を混合した水溶液に投入して95℃に昇温し、95℃にて8時間撹拌した。全量を1Lとし、これをオートクレーブに移して165℃にて7時間撹拌しながらエージングした。
続いて、この反応スラリーを撹拌しながら70℃にして、pHを11.7に調整した。この状態に2.5gのパルミチン酸ソーダを熱湯(80℃)に溶解した溶液を投入した。これを0.7時間エージングした。濾過後、55℃のpH13の薄い苛性ソーダの水溶液2Lで水洗し、その後45℃の純水16Lで水洗し、125℃で8h乾燥を行った。得られた試料の比表面積は10.1m/gであった。
【0074】
(含塩素樹脂組成物の作製及び評価)
上記ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を用いて以下の含塩素樹脂組成物とした(軟質組成)。
含塩素樹脂組成物 100phr
DOP 55phr
ステアリン酸亜鉛 0.6phr
上記試料 3.0phr
158℃にて5分ロール混練し、158℃にて圧縮成形プレス処理を行った。得られたシートのレベル3の時間は75min、レベル5の時間は110minであった。
【0075】
実施例10
(ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の作製)
塩化マグネシウム6水塩結晶141.0g及び塩化アルミニウム6水塩結晶74.3gを純水に溶解した。別に、炭酸ソーダ結晶32.9gを純水で溶解し、さらに苛性ソーダ(12N)203.5mlと純水を加えた。このアルカリ溶液を先の塩化マグネシウム6水塩結晶及び塩化アルミニウム6水塩を混合した水溶液に投入し、その後、塩化カルシウム2水塩結晶4.50gを溶解した水溶液を投入し、75℃に昇温した。75℃にて15時間撹拌した。全量を1Lとし、これをオートクレーブに移して170℃にて9時間撹拌しながらエージングした。
続いて、この反応スラリーを撹拌しながら70℃にして、pHを10.9に調整した。この状態に2.0gのラウリン酸ソーダを熱湯(80℃)に溶解した溶液を投入した。これを0.9時間エージングした。濾過後、40℃のpH12の薄い苛性ソーダの水溶液2Lで水洗し、その後40℃の純水15Lで水洗し、125℃で8h乾燥を行った。得られた試料の比表面積は10.0m/gであった。Mg/Ca/Alのモル比は2.40/0.10/1.00であった。
【0076】
(含塩素樹脂組成物の作製及び評価)
上記ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を用いて以下の含塩素樹脂組成物とした(軟質組成)。
含塩素樹脂組成物 100phr
DOP 55phr
ステアリン酸亜鉛 0.6phr
上記試料 3.0phr
158℃にて5分ロール混練し、158℃にて圧縮成形プレス処理を行った。得られたシートのレベル3の時間は90min、レベル5の時間は110minであった。
【0077】
実施例11
(ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の作製)
塩化マグネシウム6水塩結晶101.9g、塩化亜鉛1水塩結晶23.4g結晶及び塩化アルミニウム6水塩結晶80.5gを純水に溶解した。別に、炭酸ソーダ結晶35.7gを純水で溶解し、さらに苛性ソーダ(12N)136.1mlと純水を加えた。このアルカリ溶液を先の塩化マグネシウム6水塩結晶、塩化亜鉛1水塩結晶及び塩化アルミニウム6水塩を混合した水溶液に投入して95℃に昇温し、95℃にて8時間撹拌した。全量を1Lとし、これをオートクレーブに移して165℃にて7時間撹拌しながらエージングした。この後、酸化亜鉛を1.4g添加し、混合した。
続いて、この反応スラリーを撹拌しながら70℃にして、pHを11.7に調整した。この状態に2.5gのパルミチン酸ソーダを熱湯(80℃)に溶解した溶液を投入した。これを0.7時間エージングした。濾過後、45℃のpH12.5の薄い苛性ソーダの水溶液2Lで水洗し、その後45℃の純水16Lで水洗し、125℃で8h乾燥を行った。得られた試料の比表面積は10.7m/gであった。
【0078】
(含塩素樹脂組成物の作製及び評価)
上記ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を用いて以下の含塩素樹脂組成物とした(軟質組成)。
含塩素樹脂組成物 100phr
DOP 55phr
ステアリン酸亜鉛 0.6phr
上記試料 3.0phr
158℃にて5分ロール混練し、158℃にて圧縮成形プレス処理を行った。得られたシートのレベル3の時間は80min、レベル5の時間は110minであった。
【0079】
比較例1
(ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の作製)
酸化マグネシウム26.9gを純水に分散させたスラリーと硫酸アルミニウム8水塩結晶81.0gの水溶液を攪拌しながら混合した。別に、炭酸ソーダ結晶35.7gを純水で溶解し、さらに苛性ソーダ(12N)58.3mlと純水を加えた。このアルカリ溶液を先の酸化マグネシウムと硫酸アルミニウム8水塩を混合したスラリーに投入して80℃に昇温し、80℃にて5時間撹拌した。全量を1Lとし、これをオートクレーブに移して175℃にて4時間撹拌しながらエージングした。
続いて、この反応スラリーを撹拌しながら72℃にして、pHを8.9に調整した。この状態に2.3gのパルミチン酸ソーダを熱湯(80℃)に溶解した溶液を投入した。これを0.7時間エージングした。濾過後、40℃の純水15Lで水洗し、125℃で8h乾燥を行った。得られた試料の比表面積は11.3m/gであった。
【0080】
(含塩素樹脂組成物の作製及び評価)
上記ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を用いて以下の含塩素樹脂組成物とした(軟質組成)。
含塩素樹脂組成物 100phr
DOP 55phr
ステアリン酸亜鉛 0.6phr
上記試料 3.0phr
158℃にて5分ロール混練し、158℃にて圧縮成形プレス処理を行った。得られたシートのレベル3の時間は50min、レベル5の時間は90minであった。
【0081】
比較例2
(ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の作製)
硫酸マグネシウム7水塩結晶176.3g及び硫酸アルミニウム8水塩結晶69.4gを純水に溶解した。別に、炭酸ソーダ結晶30.6gを純水で溶解し、さらに苛性ソーダ(12N)152.4mlと純水を加えた。このアルカリ溶液を先の硫酸マグネシウム7水塩結晶及び硫酸アルミニウム8水塩を混合した水溶液に投入して90℃に昇温し、90℃にて10時間撹拌した。全量を1Lとし、これをオートクレーブに移して145℃にて6時間撹拌しながらエージングした。
続いて、この反応スラリーを撹拌しながら65℃にして、pHを9.0に調整した。この状態に1.9gのラウリン酸ソーダを熱湯(80℃)に溶解した溶液を投入した。これを0.8時間エージングした。濾過後、45℃の純水15Lで水洗し、125℃で8h乾燥を行った。得られた試料の比表面積は9.5m/gであった。
【0082】
(含塩素樹脂組成物の作製及び評価)
上記ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を用いて以下の含塩素樹脂組成物とした(半硬質組成)。
含塩素樹脂組成物 100phr
DOP 20phr
ステアリン酸亜鉛 0.8phr
上記試料 3.5phr
178℃にて5分ロール混練し、178℃にて圧縮成形プレス処理を行った。得られたシートのレベル3の時間は55min、レベル5の時間は95minであった。
【0083】
比較例3
(ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の作製)
塩化マグネシウム6水塩結晶101.9g、塩化亜鉛1水塩結晶26.0g結晶及び塩化アルミニウム6水塩結晶80.5gを純水に溶解した。別に、炭酸ソーダ結晶35.7gを純水で溶解し、さらに苛性ソーダ(12N)136.1mlと純水を加えた。このアルカリ溶液を先の塩化マグネシウム6水塩結晶、塩化亜鉛1水塩結晶及び塩化アルミニウム6水塩を混合した水溶液に投入して95℃に昇温し、95℃にて8時間撹拌した。全量を1Lとし、これをオートクレーブに移して165℃にて7時間撹拌しながらエージングした。
続いて、この反応スラリーを撹拌しながら70℃にして、pHを9.1に調整した。この状態に2.5gのパルミチン酸ソーダを熱湯(80℃)に溶解した溶液を投入した。これを0.7時間エージングした。濾過後、45℃の純水16Lで水洗し、125℃で8h乾燥を行った。得られた試料の比表面積は9.5m/gであった。
【0084】
(含塩素樹脂組成物の作製及び評価)
上記ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を用いて以下の含塩素樹脂組成物とした(軟質組成)。
含塩素樹脂組成物 100phr
DOP 55phr
ステアリン酸亜鉛 0.6phr
上記試料 3.0phr
158℃にて5分ロール混練し、158℃にて圧縮成形プレス処理を行った。得られたシートのレベル3の時間は60min、レベル5の時間は95minであった。
【0085】
比較例4
(ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の作製)
硝酸マグネシウム6水塩結晶171.2g及び硝酸アルミニウム9水塩結晶125.0gを純水に溶解した。別に、炭酸ソーダ結晶35.7gを純水で溶解し、さらに苛性ソーダ(12N)126.4mlと純水を加えた。このアルカリ溶液を先の硝酸マグネシウム6水塩結晶及び硝酸アルミニウム9水塩を混合した水溶液に投入して90℃に昇温し、90℃にて10時間撹拌した。全量を1Lとし、これをオートクレーブに移して130℃にて5時間撹拌しながらエージングした。
続いて、この反応スラリーを撹拌しながら62℃にして、pHを8.6に調整した。この状態に2.5gのステアリン酸ソーダを熱湯(80℃)に溶解した溶液を投入した。これを0.6時間エージングした。濾過後、60℃の純水25Lで水洗し、125℃で8h乾燥を行った。得られた試料の比表面積は18.9m/gであった。
【0086】
(含塩素樹脂組成物の作製及び評価)
上記ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を用いて以下の含塩素樹脂組成物とした(軟質組成)。
含塩素樹脂組成物 100phr
DOP 55phr
ステアリン酸亜鉛 0.6phr
上記試料 3.0phr
158℃にて5分ロール混練し、158℃にて圧縮成形プレス処理を行った。得られたシートのレベル3の時間は60min、レベル5の時間は85minであった。
【0087】
比較例5
(ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末の作製)
硫酸マグネシウム7水塩結晶176.3g及び硫酸アルミニウム8水塩結晶69.4gを純水に溶解した。別に、炭酸ソーダ結晶30.6gを純水で溶解し、さらに苛性ソーダ(12N)122.4mlと純水を加えた。このアルカリ溶液を先の硫酸マグネシウム7水塩結晶及び硫酸アルミニウム8水塩を混合した水溶液に投入して90℃に昇温し、90℃にて10時間撹拌した。全量を1Lとし、これをオートクレーブに移して145℃にて6時間撹拌しながらエージングした。
続いて、この反応スラリーを撹拌しながら65℃にして、pHを7.4に調整した。この状態に1.9gのラウリン酸ソーダを熱湯(80℃)に溶解した溶液を投入した。これを0.8時間エージングした。濾過後、45℃の純水15Lで水洗し、125℃で8h乾燥を行った。得られた試料の比表面積は9.7m/gであった。
【0088】
(含塩素樹脂組成物の作製及び評価)
上記ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末を用いて以下の含塩素樹脂組成物とした(半硬質組成)。
含塩素樹脂組成物 100phr
DOP 20phr
ステアリン酸亜鉛 0.8phr
上記試料 3.5phr
178℃にて5分ロール混練し、178℃にて圧縮成形プレス処理を行った。得られたシートのレベル3の時間は60min、レベル5の時間は95minであった。
【0089】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係るハイドロタルサイト粒子粉末を用いることで含塩素樹脂組成物材料において、樹脂組成物の電気絶縁性、着色の抑制効果及び熱安定性を改善させることができる。このため、より多くのアプリケーションへの展開が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性アニオンの合計値が70ppm以下であることを特徴とするMg−Al系又はMg−Zn−Al系ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末。
【請求項2】
請求項1記載のハイドロタルサイト型化合物粒子粉末において、含有するナトリウムが700ppm以下であることを特徴とするMg−Al系又はMg−Zn−Al系ハイドロタルサイト型化合物粒子粉末。


【公開番号】特開2012−92017(P2012−92017A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−21798(P2012−21798)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【分割の表示】特願2009−87788(P2009−87788)の分割
【原出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】