説明

ハイブリダイゼーション器具、ハイブリダイゼーション装置、およびハイブリダイゼーション促進方法

【課題】 ターゲット核酸を含有する溶液が少量で足り、振盪をすることなく加温のみでハイブリダイゼーションさせることができ、溶液の交換が簡便であって液漏れやこぼれを防止でき、それにより溶液の温度を維持することができて、かつ操作が簡単で安価であるハイブリダイゼーション器具を提供する。
【解決手段】 プローブ核酸を固定した支持体を挟持した状態でチューブに嵌着可能であって、略円柱形状の基体11と、この基体の一端部に設けられたメンブレン3を挟持する挟持部12と、基体11を長手方向に貫通してチューブ内圧を調整する貫通孔13とを有することを特徴とするハイブリダイゼーション器具1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリダイゼーション器具、ハイブリダイゼーション装置、およびハイブリダイゼーション促進方法に関し、より詳細には、熱対流を利用したハイブリダイゼーションに用いるハイブリダイゼーション器具、ハイブリダイゼーション装置、およびハイブリダイゼーション促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感染微生物を検出する方法として、感染微生物の抗原を検出するELISA法や、感染微生物のDNAを増幅し電気泳動で検出するPCR法、あるいはRNAを鋳型にして逆転写を行い、生成したcDNAを増幅することにより検出するRT−PCR法、基盤の上にプローブ核酸を高密度に配置し固定したものを用いて、ハイブリダイゼーション反応により検出するマイクロアレイ法、マクロアレイ法等がある。マイクロアレイ法はプローブとして選択した遺伝子が数千から数万種類搭載され、高密度な遺伝子の解析方法として優れているため、医療分野等の様々な分子生物研究の分野で用いられている。一方、マクロアレイ法はメンブレン等の基板上にプローブとして選択した数十から数百種類の遺伝子を自由に組み合わせて配置し搭載することができ、高価な機器を用いずに簡便に検出できる特徴を有している。特に、農業分野における利用が期待されている。
【0003】
マイクロアレイ法およびマクロアレイ法におけるハイブリダイゼーション反応は、一般に、スライドガラスやシリコン、メンブレンシート等の支持体に転写され固定されたプローブ核酸とターゲット核酸とをハイブリダイゼーションさせる反応であり、通常、このプローブ核酸が固定された支持体とターゲット核酸を含有する溶液とを容器に収容し、加温振盪することにより反応させている。
【0004】
従来、ハイブリダイゼーションを行う装置としては、例えば、特開平6−106078号公報には、ハイブリダイゼーションオーブンが開示されている(特許文献1)。このハイブリダイゼーションオーブンは、偏心止孔付きの回転円板と、この回転円板に着脱されて容器を振盪させるアタッチメントを備えている。そして、これらアタッチメントを切り換えることにより、ボトル式容器に対してはローター振盪させてハイブリダイゼーションを行い、またバッグ式容器に対してはシーソー振盪やレシプロ振盪させてハイブリダイゼーションを行わせるようになっている。(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−106078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、ボトル式容器の場合、ターゲット核酸を含有するバッファーの量が、バッグ式容器を用いる場合と比べて大量に必要となるためにコストが嵩んでしまう。また、支持体としてメンブレンシートを用いた場合、ボトル内に筒状に丸めて収容するためにカール状のクセがついてしまい、反応シグナルの確認の際に不都合が生じるという欠点がある。また、ボトル自体が大きな空間を占めるため、一度に実験可能な本数が少ないという欠点もある。さらに、ボトル式容器に収容されたバッファーを交換する場合には、装置からボトル式容器を取り出してそのキャップを外すことにより、収容されたバッファーの交換を行うが、作業に時間を要するため、バッファーの温度が降下してしまうおそれがある。
【0007】
また、バッグ式容器を使用すれば、容器をメンブレンシートに合わせたサイズに加工できることから、ターゲット核酸を含有するバッファーの量はボトル式容器を用いる場合と比べて少量で済む。しかし、単純に振盪させるだけではバッグ内に収容されたバッファーがほとんど流動せず、ターゲット核酸とプローブ核酸との接触機会が少ないため検出感度が悪くなるおそれがある。また、バッグ式容器に収容されたバッファーを交換する場合には、バッグの封を切って交換した後、再封するために熱シールをするという作業をしなければならないが、その場合に液漏れを生じるおそれがある。また、ボトル式容器を用いる場合と同様、作業に時間を要するため、バッファーの温度が降下してしまうおそれがある。
【0008】
さらに、ボトル式容器、バッグ式容器のいずれを用いる場合も、特許文献1に開示されているようなハイブリダイゼーションオーブンを必要とするが、ハイブリダイゼーションオーブンは高価であるため、相当な費用を要してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、ターゲット核酸を含有する溶液が少量で足り、加温によってターゲット核酸とプローブ核酸とのハイブリダイゼーションを促進させることができるハイブリダイゼーション器具、ハイブリダイゼーション装置、およびハイブリダイゼーション促進方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るハイブリダイゼーション器具の特徴は、プローブ核酸を固定した支持体を挟持した状態でチューブに嵌着可能なハイブリダイゼーション器具であって、略円柱形状の基体と、この基体の一端部に設けられた前記支持体を挟持する挟持部と、前記基体を長手方向に貫通してチューブ内圧を調整する貫通孔とを有する点にある。
【0011】
本発明において、前記貫通孔が、チューブ内圧を調整する内圧調整部と、これよりも大容量を有し、かつターゲット核酸を含有する溶液の加温による過膨張を抑制する過膨張抑制部とを有する態様としてもよい。
【0012】
また、本発明において、前記貫通孔は、長手方向に縦断面形状を略凸字状または長手方向に略円錐形状に形成される態様としてもよい。
【0013】
さらに、本発明において、前記挟持部が、前記基体を長手方向へ横断面略V字状、横断面略I字状、または横断面略U字状の切れ込みとして形成される態様としてもよい。
【0014】
また、本発明に係るハイブリダイゼーション装置の特徴は、支持体に固定されたプローブ核酸とターゲット核酸とをハイブリダイゼーションさせることを目的とするハイブリダイゼーション装置であって、前記ターゲット核酸を含有する溶液を収容するチューブと、前記プローブ核酸を固定した支持体を挟持した状態で前記チューブに嵌着可能な基体を備え、かつこの基体の一端部に前記支持体を挟持する挟持部を有するとともに、前記基体を長手方向に貫通してチューブ内圧を調整する貫通孔を有する略円柱形状の支持体挟持部材と、前記チューブ内の溶液を加温する加温部とを有しており、前記支持体挟持部材を嵌着した前記チューブを起立させた状態で加温して前記チューブ内の溶液を熱対流させる点にある。
【0015】
本発明において、前記貫通孔が、チューブ内圧を調整する内圧調整部と、これよりも大容量を有し、かつ前記ターゲット核酸を含有する溶液の加温による過膨張を抑制する過膨張抑制部とを有する態様としてもよい。
【0016】
また、本発明において、前記貫通孔は、長手方向に縦断面形状を略凸字状または長手方向に略円錐形状に形成される態様としてもよい。
【0017】
さらに、本発明において、前記支持体狭持部材の挟持部が、前記基体を長手方向へ横断面略V字状、横断面略I字状または横断面略U字状の切れ込みとして形成される態様としてもよい。
【0018】
一方、本発明に係るハイブリダイゼーション促進方法の特徴は、プローブ核酸を固定した支持体を挟持した支持体挟持部材を、ターゲット核酸を含有する溶液を収容したチューブに嵌着して加温することにより前記プローブ核酸と前記ターゲット核酸とのハイブリダイゼーションを促進させる方法であって、前記支持体挟持部材を嵌着した前記チューブを起立させた状態で加温して前記チューブ内の溶液を熱対流させる点にある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ターゲット核酸を含有する溶液が少量で足り、加温によりターゲット核酸とプローブ核酸とのハイブリダイゼーションを促進させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るハイブリダイゼーション器具、ハイブリダイゼーション装置、およびハイブリダイゼーション促進方法の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明に係るハイブリダイゼーション器具の実施形態を示す図であり、図2は、本発明に係るハイブリダイゼーション器具の実施形態の断面図、図3は、本発明に係るハイブリダイゼーション器具にプローブ核酸を固定したメンブレンを挟持させた使用状態図、図4は、本発明に係るハイブリダイゼーション器具にプローブ核酸を固定した支持体を挟持させた状態でマイクロチューブに嵌着させた使用状態図、図5は、本発明に係るハイブリダイゼーション装置の実施形態を示す図である。図7は、本発明に係るハイブリダイゼーション方法を示すフロー図である。
【0021】
本発明におけるハイブリダイゼーション器具は、図1、図3、および図4に示すように、プローブ核酸を固定した支持体を挟持させた状態で、ターゲット核酸を含有する溶液を収容したチューブに嵌着させ、これを起立させたままの状態で加温して、前記プローブ核酸と前記ターゲット核酸とをハイブリダイゼーションさせることを目的として用いられる器具である。
【0022】
また、本発明におけるハイブリダイゼーション装置は、図4および図5に示すように、プローブ核酸を固定した支持体を挟持させた支持体挟持部材と、ターゲット核酸を含有する溶液を収容したチューブとを嵌着させたものを、起立させた状態で保持し、加温することで前記プローブ核酸と前記ターゲット核酸とをハイブリダイゼーションさせることを目的とする装置である。
【0023】
さらに、本発明におけるハイブリダイゼーション促進方法は、図7に示すように、プローブ核酸を固定した支持体を挟持した支持体挟持部材を、ターゲット核酸を含有する溶液を収容したチューブに嵌着して加温することにより前記プローブ核酸と前記ターゲット核酸とのハイブリダイゼーションを促進させる方法である。
【0024】
ここで、本発明において「ハイブリダイゼーション」とは、核酸間の相補結合形成反応をいうのであって、DNA−DNA、DNA−RNA、RNA−RNA間の相補結合等が含まれる。特に、本発明においてはターゲット核酸とプローブ核酸とが相補結合形成反応することを意味するが、「ハイブリダイゼーション」は目的であり、本発明に係るハイブリダイゼーション器具やハイブリダイゼーション装置、ハイブリダイゼーション方法を用いた場合に、必ずしもハイブリダイゼーションがなされるとは限らない。
【0025】
すなわち、本発明において「ターゲット核酸」とは、全長または一部に、ハイブリダイゼーションが可能な核酸プローブの塩基配列と相補的な配列を有し、かつ反応場に滴下または供給等される核酸であって、「プローブ核酸」とは、ターゲット核酸を検出するための検出子として機能し、かつターゲット核酸を検出する際に支持体の検出表面に固定される核酸であり、ターゲット核酸と相補的な塩基配列を有する場合と、有しない場合とがある。前者の場合はターゲット核酸とプローブ核酸とによりハイブリダイゼーションがなされ、所望の検出等が達成されるのであるが、後者の場合はこれらによりハイブリダイゼーションがなされず、所望の検出等が達成されないこととなるのである。
【0026】
ここで、本発明において「核酸」とは、プリンまたはピリミジン塩基と糖がグリコシド結合したヌクレオシドのリン酸エステルまたはその重合体(ヌクレオチド鎖)を意味し、プローブDNAを含むオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、プリンヌクレオチドとピリミジンヌクレオチオドとが重合したDNA(全長あるいはその断片)、逆転写により得られるcDNA(cプローブDNA)、RNA等を広く含む趣旨である。
【0027】
なお、本発明において「相補」または「相補的」という場合は、50%〜100%の範囲で相補的あればよく、好ましくは100%で相補的であることをいう。
【0028】
本発明における「ターゲット核酸」と「プローブ核酸」とは、いずれもその種類や全長、存在状態は特に限定されず、DNAまたはRNAのいずれも用いることができる。DNAとしては、例えば、生体試料由来のDNAや合成DNAを挙げることができ、また、DNAの種類としては、ゲノムDNAやcDNA、抽出精製されたDNA、断片にされたDNA、ベクター中に組み込まれたDNA等を挙げることができる。RNAとしては、例えば、生体試料由来のRNAや合成RNAを挙げることができ、また、RNAの種類としては、mRNAや抽出精製されたRNA、断片にされたRNA等を挙げることができる。なお、従来においては、プローブ核酸とターゲット核酸との定義が本発明に係るプローブ核酸とターゲット核酸との定義と逆の意味で用いられている場合があるが、本発明においては、支持体の検出表面に固定される核酸をプローブ核酸としている。
【0029】
次に、本発明における「支持体」とは、プローブ核酸を固定できるものであれば材質や厚み、大きさ、形状等は特に限定されないが、多孔性メンブレンが好ましく、その材質としては、例えば、ニトロセルロースやナイロン等を挙げることができ、ナイロンがより好ましい。本実施形態においては、ナイロンメンブレンを好適な支持体としている。また、物理的結合をはじめ各種結合方法を選択することができるが、例えば、カルボキシル基や四級アンモニア基等を化学修飾したナイロンメンブレンを挙げることができる。
【0030】
なお、一般に「起立」とは、立ち上がることを意味するが、本発明において「起立」とは、本発明に係るハイブリダイゼーション器具が嵌着した、ターゲット核酸を含有する溶液を収容したチューブが鉛直状に保持されている状態のみならず、斜めに傾いて保持されている状態をも含む趣旨である。なお、水平乃至水平に近い傾斜状態に保持されてもある程度のハイブリダイゼーション効果が得られるため、傾斜角を限定するものではないが、後述するような内圧調整の問題や熱対流を効率的にハイブリダイゼーションへ適用する観点を考慮すれば、水平よりも鉛直に近い傾斜角度で保持される方がより好ましいといえる。
【0031】
以下、各構成部についてより詳細に説明する。図1および図3に示すように、本実施形態におけるハイブリダイゼーション器具1は、略円柱形状の基体11と、この基体11の一端部に設けられた共有結合活性修飾ナイロンメンブレン(以下、「メンブレン」という。)3を挟持する挟持部12と、基体11を長手方向に貫通した貫通孔13とを有している。また、図2に示すように、貫通孔13には内圧調整部14と、これよりも大容量を有する過膨張抑制部15とが形成されている。
【0032】
基体11は、底面の直径が10mmであって高さが30mmの略円柱形状であり、材質をケイ素(シリコン)樹脂としている。ここで、本発明における「基体」は、略円柱形状であって、かつプローブ核酸を固定した支持体を挟持した状態でチューブに嵌着可能であれば、その大きさや形状、材質等は特に限定されず、例えば、天然ゴムや合成ゴム、樹脂、金属、木材、セラミック、またはこれらの複合材料等、任意のチューブに応じて各々適宜選択されるが、チューブに嵌着しやすくて繰り返し使用できるという観点から、材質は樹脂が好ましい。また、同様の観点から合成樹脂(いわゆるプラスチックを含む)がより好ましく、例えばケイ素樹脂のほか、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0033】
また、図1に示すように、ハイブリダイゼーション器具1の基体11の一端部に設けられた、メンブレン3を挟持するための挟持部12は、基体11を長手方向へ横断面略V字状、横断面略I字状、または横断面略U字状の切れ込み16として形成されている。図3に示すように、メンブレン3は基体11に形成されたその切れ込み16に差し込むような形で挟持されるが、切れ込み16が当該横断面略V字状や横断面略U字状に形成されることにより、メンブレン3の長手方向に折り目やわん曲するように保持され、それら折り目やわん曲に対する垂直方向への曲げ強度を増す(いわゆる腰を持たせる)効果を奏する。他方、切れ込み16が当該横断面略I字状に形成されることにより、いわゆる腰を持たせることはできないものの、メンブレン3に折り目やわん曲が形成されないという効果を奏する。つまり、メンブレン3の材質や厚み等によって、挟持部12の態様を適宜選択することができるのである。
【0034】
なお、本実施形態において、挟持部12は切れ込み16として形成され、かつ切れ込み16と貫通孔13とが交差しているが、本発明においてはこれに限定されず、挟持部が切れ込みとして形成される場合であっても、切れ込みと貫通孔とが交差しない態様をとることもできる。
【0035】
また、本発明における「挟持部」は、上述のような切れ込みとして形成される場合に限定されず、支持体を挟持することができる構造を有していればよい。例えば、基体全体をクリップ等の構造とするような態様や、基体にクリップ等を別途配設するような態様を挙げることができる。
【0036】
次に、貫通孔13は、内圧調整部14と、これよりも大容量を有する過膨張抑制部15とを有している。なお、本発明における「貫通孔」は、基体を長手方向に貫通してチューブ内圧を調整することができれば、内圧調整部と過膨張抑制部とに別個分けて形成する必要はなく、基体を長手方向に貫通したものであればよい。また、貫通孔の長手方向横断面形状やその大きさ、数等は特に限定されないが、チューブに収容されたターゲット核酸を含有する溶液の温度を維持できるよう、貫通孔の数は1つであることが好ましく、貫通孔の長手方向横断面の大きさは、例えば長手方向横断面形状を略円形状とした場合にその直径が約0.5〜9mmとなる大きさがより好ましい。
【0037】
本実施形態においては、図2(a)に示すように、基体11の長手方向両側のうちマイクロチューブ4に嵌着させる側に過膨張抑制部15が設けられ、反対側に内圧調整部14が設けられることにより、内圧調整部14と過膨張抑制部15とが隣設して貫通孔13を構成している。そのため貫通孔13の長手方向の縦断面形状が略凸字状を構成しているが、本発明における「貫通孔」は、図2(b)に示すように、内圧調整部と過膨張抑制部とが区別なく一体的に連続して貫通孔を構成した結果、前記貫通孔が長手方向に略円錐形状に形成されてもよい。
【0038】
また、内圧調整部14は、長手方向に垂直な横断面形状が略円形状であって、その直径は1mmに形成している。但し、本発明における「内圧調整部」はチューブ内圧を調整することができれば、その横断面形状やその大きさ、全長等は特に限定されず、例えばその横断面形状を略円形状とした場合、その直径が約0.5〜5mmとなるのがより好ましい。
【0039】
一方、過膨張抑制部15は、長手方向に垂直な横断面形状が略円形状であって、その直径は3mmに形成している。但し、本発明における「過膨張抑制部」はターゲット核酸を含有する溶液の加温による過膨張を抑制し、またはハイブリダイゼーション器具をマイクロチューブに嵌着させた際に余分なマイクロチューブ内の溶液が外部へ溢れ出るのを防ぐことができれば、その横断面形状やその大きさ、全長等は特に限定されず、例えばその横断面形状を略円形状とした場合、その直径が約0.5〜9mmとなるのがより好ましい。
【0040】
次に、図4および図5に示すように、本実施形態におけるハイブリダイゼーション装置2は、ターゲット核酸を含有する溶液を収容するマイクロチューブ4と、支持体挟持部材であるマイクロチューブ4に嵌着可能なハイブリダイゼーション器具1と、マイクロチューブ4内の溶液を加温するためのアルミブロック恒温槽5とを有している。
【0041】
本実施形態においては、マイクロチューブ4といわれる微量試験管または微量遠心管が用いられているが、本発明における「チューブ」は、一端が解放された有底円筒であって、長手方向の縦断面形状が略U字形状、略V字形状あるいは平板形状等に形成されているものであれば特に限定されず、例えばマイクロチューブのほか、試験管、シリンダー、カラム、フラスコ、ビーカー等を挙げることができる。
【0042】
また、本実施形態においては、アルミブロック恒温槽5が用いられているが、本発明における「加温部」は、ターゲット核酸を含有する溶液を収容するとともに支持体挟持部材を嵌着したチューブを起立させた状態で加温することができるものであれば特に限定されず、例えば、オイルバスやウォーターバス、あるいは支持体挟持部材を嵌着したチューブを起立させるためのチューブラック等をこれらに配設したものや、これらをさらに恒温可能にしたもの等を挙げることができる。
【0043】
次に、図7に示すように、本実施形態におけるハイブリダイゼーション促進方法は、
(i)プローブ核酸を固定したメンブレン3を挟持したハイブリダイゼーション器具1を、ターゲット核酸を含有する溶液を収容したマイクロチューブ4に嵌着する嵌着ステップS1。
(ii)ハイブリダイゼーション器具1を嵌着したマイクロチューブ4を起立させた状態でアルミブロック恒温槽5を用いて加温する加温ステップS2。
(iii)加温によりマイクロチューブ4に収容された溶液を熱対流させる熱対流励起ステップS3。
以上(i)〜(iii)のステップを有している。
【0044】
すなわち、本実施形態におけるハイブリダイゼーション促進方法は、上記(i)〜(iii)のステップを有して、ターゲット核酸とプローブ核酸とのハイブリダイゼーションを促進させることができれば、他の任意のステップを適宜選択して有してもよく、例えば、ハイブリダイゼーション器具1を嵌着したマイクロチューブ4を振盪させるステップ等を有してもよい。
【0045】
ここで、本発明において「熱対流」とは、上層ほど密度の大きな流体が静力学的不安定となって流体の運動が生じる鉛直対流のうち、温度による流体の密度の変化が原因となるものをいう。すなわち、本実施形態においては、ハイブリダイゼーション器具1を起立させた状態でアルミブロック恒温槽5にて加温することにより、マイクロチューブ4内において、温められた当該溶液が上層に移動し、移動した溶液が外気により冷却されてさらに下層へ移動するが、本実施形態における熱対流とは、これを繰り返すことにより生じる対流である。
【0046】
以上のような構成を備えた本実施形態におけるハイブリダイゼーション器具1、ハイブリダイゼーション装置2、およびハイブリダイゼーション促進方法の作用につき、図面を参照しつつ説明する。
【0047】
図3に示すように、まず、プローブ核酸を固定したメンブレン3をハイブリダイゼーション器具1に挟持させる。プローブ核酸を固定した当該メンブレン3の、ハイブリダイゼーション器具1の挟持部12に挟持させる端と反対の端をピンセット等で摘み、挟持させる側を挟持部12に運ぶ。この際、挟持部12の切れ込み16の上部を、人差し指で軽くめくり上げるようにする等して挟持部12を開き、メンブレン3の端を挿入して挟持させる。狭持部12が樹脂等の弾性部材により構成されている場合には、上記狭持操作が容易にできる。
【0048】
図1に示すように、挟持部12が横断面略V字状や横断面略U字状の切れ込み16として形成されている態様においては、挟持されたメンブレン3の端が長手方向にV字に折れ曲がるか、またはU字にわん曲する。これにより、メンブレン3全体が長手方向にV字に折れ曲がるか、メンブレン3全体が長手方向にU字にわん曲することとなり、垂直方向への曲げ強度が増す。一方、挟持部12が横断面略I字状の切れ込み16として形成されている態様においては、メンブレン3の端が折り目やわん曲のないままの状態で挟持部12に挟持されるため、折り目やわん曲のないメンブレン3を使用することができる。
【0049】
次に、図4に示すように、メンブレン3を挟持させたハイブリダイゼーション器具1を、ターゲット核酸を含有する溶液を収容したマイクロチューブ4に嵌着させる。ハイブリダイゼーション器具1とマイクロチューブ4とは、予め嵌着可能な組み合わせを適宜選択しているため、これらを容易に嵌着させることができる。ここで、メンブレン3の全長が長いためにそのままではメンブレン3全体をマイクロチューブ4に収めることができないという場合には、メンブレン3のプローブ核酸を固定していない面を内側に折り返すようにして、メンブレン3全体をマイクロチューブ4に収め、プローブ核酸を固定した面を当該溶液に浸潤させることができる。このとき折り返したメンブレン3の他端を狭持部12に狭持させてループ状にしてもよい。
【0050】
前記ハイブリダイゼーション器具1をターゲット核酸を含有する溶液を収容したマイクロチューブ4に嵌着させた際、余分な当該溶液が外部へ溢れ出るおそれがある。このような場合でも、貫通孔13の過膨張抑制部15が内圧調整部14よりも大容量を有しているため、外部へ溢れ出ようとする当該溶液を収容することができ、ハイブリダイゼーション器具1の外部への液漏れやこぼれを防止することができる。
【0051】
続いて、メンブレン3を挟持させたハイブリダイゼーション器具1と、ターゲット核酸を含有する溶液を収容したマイクロチューブ4とを嵌着させた状態で、アルミブロック恒温槽5にて加温する。アルミブロック恒温槽5は、チューブラックが配設されたアルミブロックとバスとを有しており、このチューブラックに、ハイブリダイゼーション器具1を嵌着させたマイクロチューブ4を差し込むことで、バスに起立させた状態で加温することができる。
【0052】
70℃前後に設定したバスのチューブラックに当該マイクロチューブ4を挿入後、30分以上インキュベート(加温・保温)する。これにより、マイクロチューブ4内の溶液を熱対流させることができる。図6に示すように、熱対流によって溶液中のターゲット核酸が溶液中にまんべんなく行き渡るため、マイクロチューブ4を振盪させることなく、メンブレン3に固定されたプローブ核酸と溶液中のターゲット核酸とのハイブリダイゼーションを促進させることができる。
【0053】
インキュベートの際、マイクロチューブ4内の温度が室温から70℃前後まで上昇するため、マイクロチューブ4内の気圧は高くなるが、ターゲット核酸を含有する溶液を収容したマイクロチューブ4を起立させていることから、内圧調整部14を有する貫通孔13を通じて外気圧との調整が可能となり、マイクロチューブ4内の気圧を安定させることができ、マイクロチューブ4に嵌着したハイブリダイゼーション器具1が外れることを防ぐことができる。
【0054】
さらに、インキュベートの際、前述のとおりマイクロチューブ4内の気圧は高くなることから、マイクロチューブ4に収容された溶液が膨張することがあり、当該溶液が過膨張となってハイブリダイゼーション器具1に形成された貫通孔13を通じ外部へ噴出しそうになるおそれがある。このような場合でも、貫通孔13の過膨張抑制部15が内圧調整部14よりも大容量を有しているため、外部へ噴出しそうになる当該溶液を収容することができ、ハイブリダイゼーション器具1の外部への液漏れやこぼれを防止することができる。
【0055】
次に、前述した本実施形態におけるハイブリダイゼーション器具1、ハイブリダイゼーション装置2、およびハイブリダイゼーション促進方法の効果を実施例により説明する。
【実施例1】
【0056】
<ボトル式容器を用いてハイブリダイゼーションさせた場合とのシグナル強度の比較>
ボトル式容器とともにハイブリダイゼーションオーブンを用いた場合との検出度合いの比較を行った。キュウリモザイクウイルス(CMV)、ユリモットルウイルス(LMoV)、ユリ潜在ウイルス(LSV)の各プラスミドクローンを鋳型として増幅して得たPCR産物をDNAプローブ(プローブ核酸)として、各々25ng/μL濃度に調製した。当該調製したcDNAプローブはHYDRA-HTS(Robbins)により、ナイロンメンブレン(Biodine plus;Pall)3に0.2μLずつ、各ウイルスにつき2スポットずつ分注した。スポット17のレイアウトは、上段からCMV、LMoV、LSVの順であった。cDNAプローブをメンブレン3に固定するため、cDNAをスポットした後のメンブレン3は濾紙に挟んだ状態で、ハイブリダイゼーションオーブンを用いて120℃の条件下で30分間処理した後、UVcross-linker(UVP)にて120mJ/cmのUV照射を行った。ボトル式容器にハイブリダイゼーションバッファー(Perfect Hyb;東洋紡績)5ml、マイクロチューブ4に1.8mL入れ、メンブレン3をセットした後、各々ハイブリダイゼーションオーブンとアルミブロック恒温槽5を用いて、69℃の条件下で1時間インキュベートすることでプレハイブリダイゼーションを行った。In vitro transcription法を利用して市販のユリから抽出したtotal RNAのうち、ウイルスRNAのみを増幅して得られたビオチン標識cRNAを、ターゲット核酸としてハイブリダイゼーションバッファーに加え、69℃で14時間ハイブリダイゼーションを行った。2×SSC、0.1%SDS洗浄液で69℃10分間の洗浄を3回行い、さらに、0.1×SSC、0.1%SDS洗浄液で69℃5分間の洗浄を3回行った後、Phototope-Star detection kit(New England Biolabs)と、基質としてNBT/BCIP(Roche)とを用いて、化学発色により検出した。
【0057】
その結果を図8に示す。図8において、ハイブリダイゼーションによりプローブ核酸と反応したターゲット核酸が黒色で検出されており、黒色が濃いほどシグナル強度が高いことを示している。これらを比較すると、本実施形態におけるハイブリダイゼーション器具1、ハイブリダイゼーション装置2、およびハイブリダイゼーション方法を用いた場合のスポット17は、ボトル式容器とハイブリダイゼーションオーブンを用いた場合のスポットと比較して、同等の強いシグナルが検出された。
【実施例2】
【0058】
<バッグ式容器を用いてハイブリダイゼーションさせた場合とのシグナル強度の比較>
バッグ式容器とともにハイブリダイゼーションオーブンを用いた場合との検出度合いの比較を行った。4×4個のスポットからなるスポット群が縦方向に2段と、4×2個のスポットからなるスポット群が縦方向に1段との計3群で形成されたメンブレン3(Biodyne Plus;PALL)に、λファージDNA(タカラバイオ)をcDNAプローブ(プローブ核酸)として25ng/μLの濃度に調製し、常法にてメンブレン3に固定したものと、3×1個のスポットからなるスポット群が縦方向に2段(計2群)形成されたメンブレン3(Biodyne Plus;PALL)に、キュウリモザイクウイルス(CMV)、ユリモットルウイルス(LMoV)、ユリ潜在ウイルス(LSV)の各プラスミドクローンを鋳型として増幅して得たPCR産物をDNAプローブ(プローブ核酸)として、各々25ng/μL濃度に調製し、常法にてメンブレン3に固定したものとを用意した。
【0059】
バッグ式容器とマイクロチューブ4とに、各々ハイブリダイゼーションバッファー(Perfect Hyb;東洋紡績)を1.8mL入れ、メンブレン3をセットした後、各々ハイブリダイゼーションオーブンとアルミブロック恒温槽5を用いて、69℃の条件下、振盪させることなく1時間インキュベートすることでプレハイブリダイゼーションを行った。各々のメンブレン3に、λファージDNAのビオチン標識PCR産物と、in vitro transcription法を利用して市販のユリから抽出したtotal RNAのうち、ウイルスRNAのみを増幅して得られたビオチン標識cRNAとを、ターゲット核酸としてハイブリダイゼーションバッファーに加え、69℃で14時間、ハイブリダイゼーションを行った。2×SSC、0.1%SDS洗浄液で69℃10分間の洗浄を3回行い、さらに、0.1×SSC、0.1%SDS洗浄液で69℃5分間の洗浄を3回行った後、Phototope-Star detection kit(New England Biolabs)と、基質としてNBT/BCIP(Roche)とを用いて、化学発色により検出した。
【0060】
その結果を図9に示す。図9においてこれらを比較すると、本実施形態を用いた場合のスポット17は、ボトル式容器とハイブリダイゼーションオーブンを用いた場合と比較して濃く強いシグナルが検出された。なお、いずれも振盪させずにハイブリダイゼーションを行っていることから、本実施例におけるハイブリダイゼーション器具1、ハイブリダイゼーション装置2、およびハイブリダイゼーション方法においては、チューブ内に生じる熱対流によってハイブリダイゼーションが励起されることが示された。
【実施例3】
【0061】
<アルミブロック恒温槽5を横にしてハイブリダイゼーションさせた場合とのシグナル強度の比較>
熱対流の作用効果を確認するため、アルミブロック恒温槽5を真横にして用いた場合との検出度合いの比較を行った。図10に示すように、アルミブロック恒温槽5を真横にしてインキュベートしたことを除いては、実施例2の本実施形態のλファージDNAを用いた場合と同様の手法で行った。なお、アルミブロック恒温槽5を真横にしてインキュベートした場合、貫通孔13から溶液が流出してしまうため、前記貫通孔13に細いチューブを差し込んで対処した。
【0062】
本実施例3の結果を図11に示す。図11においてこれらを比較すると、本実施形態の場合のスポット17は、アルミブロック恒温槽5を真横にして用いた場合と比較して濃く強いシグナルが検出された。また、アルミブロック恒温槽5を真横にして用いた場合は各スポットにムラが見られた。このことから、ハイブリダイゼーション器具1を嵌着したマイクロチューブ4を、起立させた状態で加温して当該溶液を熱対流させることにより、ハイブリダイゼーションがより促進されることが示された。
【0063】
以上のような実施形態によれば、
1.ターゲット核酸を含有する少量の溶液が少量でハイブリダイゼーションさせることができる。
2.振盪をすることなく加温のみでターゲット核酸とプローブ核酸とをハイブリダイゼーションさせることができる。
3.溶液の交換が簡便であってその漏れやこぼれを防止することができる。
4.溶液の温度を維持することができ、かつ操作が簡単で安価に提供することができる。
【0064】
なお、本発明に係るハイブリダイゼーション器具、ハイブリダイゼーション装置、およびハイブリダイゼーション方法は、前述した実施例に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0065】
例えば、ターゲット核酸を固定したメンブレン3を挟持した支持体挟持部材すなわちハイブリダイゼーション器具1を、プローブ核酸を含有する溶液を収容したマイクロチューブ4に嵌着し、起立させた状態で加温して当該溶液を熱対流させることにより、これらターゲット核酸とプローブ核酸とをハイブリダイゼーションさせるための器具、装置および方法としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係るハイブリダイゼーション器具の実施形態を示す図である。(a)は挟持部をV字状に形成した態様を、(b)は挟持部をU字状に形成した態様を、(c)は挟持部をI字状に形成した態様を示している。
【図2】本発明に係るハイブリダイゼーション器具の実施形態の断面図である。(a)は、長手方向に縦断面形状を略凸字状に形成した態様を示し、(b)は、長手方向に略円錐形状に形成した態様を示している。
【図3】本発明に係るハイブリダイゼーション器具にターゲット核酸を固定した支持体を挟持させた使用状態図である。
【図4】本発明に係るハイブリダイゼーション器具にターゲット核酸を固定した支持体を挟持させた状態で溶液を収容するチューブに嵌着させた使用状態図である。
【図5】本発明に係るハイブリダイゼーション装置の実施形態を示す図である。
【図6】本発明に係るハイブリダイゼーション装置を用いた場合の、チューブ内の熱対流の状態を示した模式図である。
【図7】本発明に係るハイブリダイゼーション方法を示すフロー図である。
【図8】本発明に係るハイブリダイゼーション装置を用いた場合と、ボトル式容器とハイブリダイゼーションオーブンとを用いた場合との、検出度合いを比較した比較図である。左2枚のメンブレンは本発明に係るハイブリダイゼーション装置を用いた場合であり、右2枚のメンブレンはボトル式容器とハイブリダイゼーションオーブンとを用いた場合である。左右のメンブレンは同じユリA,Bサンプルについて検出したものであり、上から順にCMV、LMoV、LSVについてである。
【図9】本発明に係るハイブリダイゼーション装置を用いた場合と、バッグ式容器とハイブリダイゼーションオーブンとを用いた場合との、検出度合いを比較した比較図である。左2枚のメンブレンは本発明に係るハイブリダイゼーション装置を用いた場合であり、右2枚のメンブレンはバッグ式容器とハイブリダイゼーションオーブンとを用いた場合である。各々左のメンブレン(KF記載有り)がλDNAについて、右のメンブレン(KF記載なし)がCMV、LMoV、LSVについてである。
【図10】インキュベーターを横にて用いた場合の状態図である。
【図11】発明に係るハイブリダイゼーション装置と、インキュベーターを真横にして用いた場合との検出度合いを比較した比較図である。左のメンブレンは本発明に係るハイブリダイゼーション装置を用いた場合であり、右のメンブレンはアルミブロック恒温槽を真横にしてインキュベートした場合である。
【符号の説明】
【0067】
1 ハイブリダイゼーション器具
2 ハイブリダイゼーション装置
3 メンブレン
4 マイクロチューブ
5 アルミブロック恒温槽
11 基体
12 挟持部
13 貫通孔
14 内圧調整部
15 過膨張抑制部
16 切れ込み
17 スポット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ核酸を固定した支持体を挟持した状態でチューブに嵌着可能なハイブリダイゼーション器具であって、
略円柱形状の基体と、この基体の一端部に設けられた前記支持体を挟持する挟持部と、前記基体を長手方向に貫通してチューブ内圧を調整する貫通孔とを有することを特徴とするハイブリダイゼーション器具。
【請求項2】
請求項1において、前記貫通孔が、チューブ内圧を調整する内圧調整部と、これよりも大容量を有し、かつターゲット核酸を含有する溶液の加温による過膨張を抑制する過膨張抑制部とを有することを特徴とするハイブリダイゼーション器具。
【請求項3】
請求項2において、前記貫通孔は、長手方向に縦断面形状が略凸字状に、または長手方向に略円錐形状に形成されていることを特徴とするハイブリダイゼーション器具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかにおいて、前記挟持部が、前記基体を長手方向へ横断面略V字状、横断面略I字状、または横断面略U字状の切れ込みとして形成されていることを特徴とするハイブリダイゼーション器具。
【請求項5】
支持体に固定されたプローブ核酸とターゲット核酸とをハイブリダイゼーションさせることを目的とするハイブリダイゼーション装置であって、
前記ターゲット核酸を含有する溶液を収容するチューブと、
前記プローブ核酸を固定した支持体を挟持した状態で前記チューブに嵌着可能な基体を備え、かつこの基体の一端部に前記支持体を挟持する挟持部を有するとともに、前記基体を長手方向に貫通してチューブ内圧を調整する貫通孔を有する略円柱形状の支持体挟持部材と、
前記チューブ内の溶液を加温する加温部とを有しており、
前記支持体挟持部材を嵌着した前記チューブを起立させた状態で加温して前記チューブ内の溶液を熱対流させることを特徴とするハイブリダイゼーション装置。
【請求項6】
請求項5において、前記貫通孔が、チューブ内圧を調整する内圧調整部と、これよりも大容量を有し、かつ前記ターゲット核酸を含有する溶液の加温による過膨張を抑制する過膨張抑制部とを有することを特徴とするハイブリダイゼーション装置。
【請求項7】
請求項6において、前記貫通孔は、長手方向に縦断面形状が略凸字状に、または長手方向に略円錐形状に形成されていることを特徴とするハイブリダイゼーション装置。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれかにおいて、前記支持体狭持部材の挟持部が、前記基体を長手方向へ横断面略V字状、横断面略I字状、または横断面略U字状の切れ込みとして形成されていることを有することを特徴とするハイブリダイゼーション装置。
【請求項9】
プローブ核酸を固定した支持体を挟持した支持体挟持部材を、ターゲット核酸を含有する溶液を収容したチューブに嵌着して加温することにより前記プローブ核酸と前記ターゲット核酸とのハイブリダイゼーションを促進させる方法であって、
前記支持体挟持部材を嵌着した前記チューブを起立させた状態で加温して前記チューブ内の溶液を熱対流させることを特徴とするハイブリダイゼーション促進方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−225714(P2009−225714A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74535(P2008−74535)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【出願人】(500141984)株式会社 ラボ (3)
【Fターム(参考)】