説明

ハイブリッドトップコート用組成物

【課題】耐候特性が向上し、特にUV安定性、光沢特性および耐酸性が向上した、有機−無機ハイブリッドコーティングを調製するための組成物を提供する。
【解決手段】A)1〜3個のアルコキシ基または水酸基を有する珪素原子を含む多官能性オルガノシランに基づく無機結合剤と、B)(半)金属アルコキシドまたはその加水分解生成物/縮合生成物と、C)少なくとも90%が50nm以下の平均粒径を有する粒子形態の、ZnO、CeOおよびこれらの組み合わせから選択される無機UV吸収剤と、D)2以上のヒドロキシル官能価および250g/mol〜10000g/molの数平均分子量を有する有機ポリオールと、E)溶媒とを含むハイブリッド組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機−無機(ハイブリッド)透明トップコート材料の調製のための耐候性混合物に関する。この混合物は、多官能性オルガノシラン、(半)金属アルコキシド、無機UV吸収剤、有機ポリオールおよび1つ以上の溶媒を含む。
【背景技術】
【0002】
有機−無機ハイブリッド材料の合成によって、1つの材料中に有機および無機物質の典型的な特性を組み合わせる試みがなされている。例えば、ガラスは、高い硬度および耐酸性を有することが知られており、一方、有機ポリマーは極めて弾性的な材料を構成する。これまでに、純有機ポリマーより硬いが、純無機材料の脆性を示さない様々な有機−無機ハイブリッド材料が知られるようになっている。
【0003】
有機−無機成分間の相互作用の性質および方法に従って、ハイブリッド材料は、異なるタイプに分類される。これに関する概観は、J. Mater. Chem. 6 (1996) 511に見られる。
【0004】
ハイブリッド材料の1つの種類は、ポリエステルまたはポリアクリレートなどの従来の有機ポリマーと共にポリマーのストランドが相互に貫入する混合物(貫入性ネットワーク)を構成する無機ネットワークの、Si(OEt)4などの(半)金属アルコキシ化合物を加水分解および凝縮して形成することによって得られる。一方のネットワークへの他方のネットワークの共有化学的結合は存在せず、代わりに、存在したとしても弱い相互作用(例えば、ファン・デア・ワールス力または水素結合など)が存在する。この種のハイブリッド材料は、例えば、WO 93/01226およびWO 98/38251に記載されている。
【0005】
WO 98/38251は、透明なハイブリッド材料が少なくとも1つの有機ポリマー、無機粒子、無機−有機結合剤および溶媒の混合物から作成可能であることを教示する。その実施例8〜10では、ハイブリッドコーティングとして、例えば、硬度、光学透明性およびクラックフリーに特徴がある混合物が記載されている。そこに記載した特性と同様に、屋外用途のトップコート仕上げの分野で特に重要な特性は、耐候性、言いかえれば、気候条件に合わせて作用するUV光に対する安定性である。この特性は、WO 98/38251に記載された系によっては十分に達成されない。
【0006】
このように、自動車のトップコート仕上げの分野では、天候およびUV光の影響に対して、トップコートおよびその下に形成される耐色ベースコートによって保護し、長年にわたり耐久性を有するようにすることは、大変重要である。これまで、多数のトップコート系、例えば、この機能を満足し、高い光沢によってさらに特徴付けられるポリウレタンの化学的性質に基づくトップコート系が、この目的のために開発されている。しかし、これらのコーティング系の純粋に有機的な構造のために、この系は、そのようなポリウレタン系での耐引掻き性および耐酸性を同時に改良する分野において、不利である。このように、例えば、イソシアネート成分および水酸基成分の適切な選択により、ネットワーク密度を増加させることによって、耐酸性の改良を達成することが可能であることは知られているが、一方で、この系は、耐引掻き性の低下をもたらす脆性を示す。反対に、より大きな弾性の結果として、ネットワーク密度が減少すると、耐引掻き性が向上するが、一方、耐酸性は実質的に低下する[MO Lackiertechnik、54 Vol. (2000)3]。
【0007】
無機−有機ハイブリッド材料中の無機UV吸収剤として、酸化セリウム粒子を使用する基本的な可能性が、EP-A 465918に記載されている。しかし、開示内容は、特に、光沢特性および耐酸性に関して、この手段によって耐候挙動に影響を及ぼすことが可能な程度に関して何も述べていない。また、EP-A465918は、使用されるCeO2粒子のサイズに関して詳細に述べていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、WO 98/38251に記載された系から出発して、耐候特性が向上し、特にUV安定性、光沢特性および耐酸性が向上した、有機−無機ハイブリッドコーティングを調製するための組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
全粒子の少なくとも90%が、50nm以下の平均粒径を有するZnOおよびCeO2からなる群から選択された無機UV吸収剤を無機粒子として含む有機および無機高分子の混合物を使用すると、必要な特性を有する無着色の透明コーティングが得られることが見出された。
【0010】
なお、本発明における平均粒径は、H.G. Mueller, Colloid. Polym. Sci., 267, 1113-1116(1989)に従って、超遠心分離機測定によって測定される。
【0011】
したがって、本発明は、
A)いずれの場合にも1〜3個のアルコキシ基または水酸基を有する少なくとも2つの珪素原子を含む多官能性オルガノシランに基づき、前記珪素原子は、いずれの場合にも、少なくとも1つのSiC結合によって、シリコン単位を結合する構造単位に結合されている、1つ以上の無機結合剤と、
B)(半)金属アルコキシド、(半)金属アルコキシドの加水分解生成物、(半)金属アルコキシドの縮合生成物およびこれらの組み合わせと、
C)少なくとも90%が遠心分離機によって測定して50nm以下の平均粒径を有する粒子の形態の、ZnO、CeOおよびZnOとCeOとの組み合わせからなる群から選択される無機UV吸収剤と、
D)2以上のヒドロキシル官能価および250g/mol〜10000g/molの数平均分子量を有する1つ以上の有機ポリオールと、
E)1つ以上の溶媒とを含むハイブリッド組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書で使用され、実施例で使用される場合、または別段明示的に規定されていないなら、用語「約」が明らかに現われなくても、全ての数字は、用語「約」をつけて読まれる。また、本明細書に列挙されたいかなる数字の範囲も、そこに含まれるすべての下位の範囲を含むように意図される。
【0013】
成分A)の無機結合剤は、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの珪素原子を含む多官能性オルガノシランであり、この珪素原子は、いずれの場合にも、1〜3個のアルコキシ基または水酸基を有し、少なくとも1つのSiC結合によって、シリコン単位を結合する構造単位に結合されている。
【0014】
本発明の目的には、構造単位として、直鎖または分岐鎖C1〜C10アルキレン基、C5〜C10シクロアルキレン基、芳香族基、例えば、フェニル、ナフチルまたはビフェニリル、または芳香族基と脂肪族基との組み合わせが例示される。脂肪族および芳香族基は、また、Si、N、O、SまたはFなどのヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0015】
多官能性オルガノシランの例は、下記一般式(I)の化合物である:
【化1】

[式中、
i=2〜4、好ましくはi=4;
n=1〜10、好ましくは、n=2〜4、さらに好ましくは、n=2;
R1=C1-C20-アルキルまたはC6-C20-アリール;
R=C1-C20-アルキルまたはC6-C20-アリール、好ましくは、R=、メチル、エチル、イソプロピル;
R3=C1-C20-アルキルまたはC6-C20-アリール、好ましくは、R3=メチル;
a=1〜3、a=1の場合、Rは水素原子であってもよい。]
【0016】
多官能性オルガノシランのさらなる例は、下記一般式(II)の環式化合物である:
【化2】

[式中、
m=3〜6、好ましくは、m=3または4;
l=2〜10、好ましくは、l=2;
R4=C1-C20-アルキルまたはC6-C20-アリール、好ましくは、R4=メチル、エチル、イソプロピル;
R5=C1-C20-アルキルまたはC6-C20-アリール、好ましくは、R5=メチル;
R6=C1-C6-アルキルまたはC6-C14-アリール、好ましくは、R6=メチル、エチル、より好ましくは、R6=メチル;
b=1〜3、b=1の場合、R4は水素原子であってもよい。]
【0017】
多官能性オルガノシランのさらなる例は、下記一般式(III)の化合物である:
【化3】

[式中、
p=1〜10、好ましくは、p=2〜4、さらに好ましくは、p=2:
R7=C1-C20-アルキルまたはC6-C20-アリール、好ましくは、R7=メチル;
R8=C1-C20-アルキルまたはC6-C20アリール、好ましくは、R8=メチル、エチル、イソプロピル;
R9=C1-C20-アルキルまたはC6-C20-アリール、好ましくは、R9=メチル
c=1〜3であり、c=1の場合、R8は水素原子であってもよい。]
【0018】
さらに、シラノールまたはアルコキシドの多官能性オルガノシランも例示できる。例えば、
a)Si[(CH22Si(OH)(CH324
b)シクロ-{OSiMe[(CH22Si(OH)Me2]}4
c)シクロ-{OSiMe[(CH22Si(OEt)2Me]}4
d)シクロ-{OSiMe(CH22Si(OMe)Me2]}4
e)シクロ-{OSiMe[(CH22Si(OEt)3]}4
【0019】
オリゴマー、すなわち、上記化合物並びに式(I)、(II)および/または(III)の化合物の加水分解生成物および縮合生成物も同様に使用することができる。
【0020】
成分(A)の無機結合剤は、シクロ-{OSiMe[(CH22Si(OH)Me2]}4および/またはシクロ-{OSiMe[(CH22Si(OEt)2Me]}に基づくことが特に好ましい。
【0021】
成分B)の(半)金属アルコキシドは、下記一般式(IV)で示される化合物であってよい:
【化4】

[式中、
M=Si、Sn、TiまたはZr(x=4、y=1〜4)、若しくはM=BまたはAl(x=3、y=1〜3);
R10、R11=C1-C20-アルキルまたはC6-C20-アリール、好ましくはR10、R11=メチル、エチル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、フェニル基、より好ましくはR10、R11=メチルおよびエチル。]
【0022】
その例としては、Si(OEt)4、Si(OMe)4、H3C-Si(OEt)3、H3C-Si(OMe)3、B(OEt)3、Al(OiPr)3またはZr(OiPr)3である。本発明では、モノマーアルコキシドではなく、それらの加水分解生成物および縮合生成物を使用することもできる。例えば、Si(OEt)4縮合物は、市販されている。
成分B)として、Si(OEt)4およびその縮合生成物および/またはその加水分解生成物を使用することが好ましい。
【0023】
成分C)の無機UV吸収剤は、好ましくは30nm以下の平均粒径を有する。
使用される全粒子の、好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99.5%が、必要な平均粒径を有する。
【0024】
これらの無機UV吸収剤は、そのままで、好ましくは分散体(ゾル)の形態で使用することができる。この場合、使用する溶媒は、水、酸性又は塩基性水溶液だけでなく、有機溶媒、またはそれらの混合物とすることができる。
【0025】
C)において、ZnOおよび/またはCeO2の分散体(ゾル)を使用することが特に好ましく、上述の粒径範囲のCeO2の酸安定化分散体(ゾル)が非常に好ましい。
【0026】
有機ポリオールD)は、ヒドロキシル官能価が2以上で、好ましくは500g/mol〜5000g/molの数平均分子量を有する。本発明では、例えばポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレートまたはポリメタクリレート、並びにそれらの混合物および/または共重合体に基づく、市販されている通常のヒドロキシル官能ポリマーを使用することが好ましい。
【0027】
溶媒E)としては、以下の溶媒が例示できる:メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−ブタノール、1,2-エタンジオールまたはグリセリンなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンまたはブタノンなどのケトン類、酢酸エチルまたは酢酸メトキシプロピルなどのエステル類、トルエンまたはキシレンなどの芳香族化合物類、t-ブチルメチルエーテルなどのエーテル類、および脂肪族炭化水素類。極性溶媒を使用することが好ましく、より好ましくはアルコール類を使用することが好ましい。また、異なる溶媒の混合物を使用することももちろん可能である。50wt%以上、より好ましくは80wt%以上のアルコールおよび/またはエステル分を有する溶媒混合物を使用することが好ましい。
【0028】
溶媒E)の量は、組成物の固形分が、好ましくは5wt%〜75wt%、より好ましくは25wt%〜55wt%となるように選択される。
【0029】
本発明の組成物は、加水分解および縮合反応を加速する役目をする触媒をさらに含んでもよい。使用することができる触媒は、有機および無機の酸および塩基を含み、また、有機金属化合物、フッ化物または金属アルコキシドを含む。言及できる例としては、下記のものが挙げられる:酢酸、p-トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、アンモニア、ジブチルアミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウムまたはアルミニウムイソプロポキシド。
【0030】
本発明の1つの好ましい態様では、本発明の組成物は、溶媒E)を無視して、以下の成分を含む:
1wt%〜20wt%の無機結合剤A)、
25wt%〜80wt%の(半)金属アルコキシドB)、
0.1wt%〜20wt%の無機UV吸収剤C)、
10wt%〜60wt%の有機ポリオールD)
成分A)〜D)の合計は100wt%。
【0031】
本発明の1つの特に好ましい態様では、本発明の組成物は以下の成分を含む:
5wt%〜15wt%の無機結合剤A)、
40wt%〜65wt%の(半)金属アルコキシドB)、
0.2wt%〜10wt%の無機UV吸収剤C)および
20wt%〜45wt%の有機ポリオールD)
成分A)〜D)の合計は100wt%。
【0032】
本発明の組成物は、典型的には、最初に成分A)およびB)、また、必要に応じて成分E)の一部を導入し、続いて(部分)加水分解を行い、適切な場合には酸を加え、最後に攪拌および所望により冷却しながらC)および、適切な場合、さらに成分E)を加えることにより、調製される。この後、成分D)を添加する。
【0033】
したがって、発明成分のA)および/またはB)へ撹拌混和することによって、無機UV吸収剤C)を本発明の組成物a)に導入するのが好ましい。後にイソシアネート基によって架橋される有機ポリオール成分中に撹拌混和することは、好ましくない。
【0034】
さらに本発明は、少なくとも
a)上述の本発明のハイブリッド組成物の1つおよび
b)OH基と反応する架橋剤。
を含むコーティング材を提供する。
b)としては、ポリイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート混合物を使用することが好ましい。
【0035】
例えば、J. Prakt. Chem. 336 (1994)185-200またはDE-A 1670666、1954093、2414413、2452532、2641380、3700209、3900053 および3928503またはEP-A 336205、339396および798299に記載されるように、この種のポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物は、少なくとも2つのジイソシアネートから合成され、ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を有する、単純な脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族ジイソシアネートを変性することにより調製される所望のポリイソシアネート類も含む。
【0036】
そのようなポリイソシアネートの調製に適しているジイソシアネートは、ホスゲン化反応により、または、例えば熱ウレタン開裂による、ホスゲンを使用しない方法により、得られる任意の所望のジイソシアネート類であり、分子量は140〜400であり、脂肪族的、脂環式的、芳香脂肪族的および/または芳香族的に結合されたイソシアネート基を含む。例えば、1,4-ジイソシアナトブタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-および2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-および1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1-イソシアナト-1-メチル-4(3)イソシアナトメチルシクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン、1,3-および1,4-ビス(2-イソシアナトプロパ-2-イル)ベンゼン(TMXDI)、2,4-および2,6-ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,4'-および4,4'-ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、1,5-ジイソシアナトナフタレンまたはこれらジイソシアネートの所望の混合物である。
【0037】
好ましくは、含まれるポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物は、専ら脂肪族的および/または脂環式的に結合されたイソシアネート基を含む記載した種類のものである。
【0038】
HDI、IPDIおよび/または4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンに基づく、ポリイソシアネートおよびイソシアヌレート構造とのポリイソシアネート混合物が、特に好ましい。
【0039】
さらに、いわゆるブロックトポリイソシアネートおよび/またはイソシアネート、好ましくはHDI、IPDIおよび/または4,4'-ジイソシアナトジシクロへキシルメタンに基づくイソシアヌレート構造を有するブロックトポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物も使用することができる。
【0040】
イソシアネート基の一時的保護のための(ポリ)イソシアネートのブロック化は、古くから知られており、例えば、Houben Weyl, Methoden der organischen Chemie XIV/2, 61-70頁に記載される方法である。
【0041】
適切なブロック剤としては、ブロックト(ポリ)イソシアネートが所望により触媒の存在下に加熱される場合に除去することができるすべての化合物が挙げられる。適切なブロック剤の例としては、ジシクロヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、N-t-ブチル-N-ベンジルアミン、カプロラクタム、ブタノンオキシムなどの立体的にバルクなアミン類、様々な可能な置換パターンを有するイミダゾール類、3,5-ジメチルピラゾールなどのピラゾール類、トリアゾール類、テトラゾール類、およびイソプロピルアルコールおよびエタノールなどのアルコール類である。加えて、さらなる反応の間にブロック剤を除去するのではなく、形成された中間物を反応によって消費するように、イソシアネート基をブロック化することができる。これは、特にシクロペンタノン-2-カルボキシエチルエステルを用いる場合であり、この化合物は熱架橋反応の間に反応によって重合体ネットワークに完全に組み入れられ、再び除去されない。
【0042】
ポリイソシアネート類との本発明組成物の反応用触媒として、アルミニウム、錫、亜鉛、チタン、マンガン、鉄、ビスマスあるいはジルコニウムの通常の市販有機金属化合物、例えば、ジブチル錫ラウレート、亜鉛オクテートおよびチタンテトライソプロポキシドなどの触媒を使用することができる。加えて、例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどの第3アミンも適している。
【0043】
さらなる可能性は、20〜200℃で、好ましくは60〜180℃、さらに好ましくは70〜150℃で、この反応を行なうことにより、a)からの本発明の組成物とのb)からのポリイソシアネートの反応を加速することである。
【0044】
この場合、b)に対するa)の比は、a)からの成分D)のOH基に対するb)からの遊離NCO基または任意ブロックトNCO基のNCO/OH比が0.3〜2、好ましくは、0.4〜1.5、より好ましくは、0.5〜1.0となるように調製される。
【0045】
有機または無機顔料、有機光安定剤、ラジカル捕捉剤、塗料添加剤、例えば、分散剤、流れ制御剤、増粘剤、消泡剤および他の助剤など、粘着剤、殺黴剤、殺菌剤、安定剤または禁止剤、さらに触媒のような、コーティング技術において通常の補助剤を有する混合物において、本発明の組成物から出発して、特に、本発明のコーティング材の形態で、自動車構造のための高耐性塗料を調製することが可能である。
【0046】
本発明のコーティング材は、さらに、プラスチックコーティング、床コーティングおよび/または木製家具コーティングの分野で、用途を有する。
【0047】
別途記載しない限り、全てのパーセントは、重量に基づく。
【0048】
シクロ-{OSiMe[(CH22Si(OEt)2Me]}4(D4ジエトキシド)を、WO 98/38251の実施例2に記載されるように調製した。
【0049】
製造されたコーティングの耐引掻き性試験を、DIN 55668に従って行った。耐溶剤性および耐酸性を、次の評価基準で視覚的に評価した:「0」(不変)〜「5」(著しく変化:例えば、膨れ、剥離または分離、軟化など)。
【実施例1】
【0050】
本発明組成物の調製
4lの複数口フラスコに、D4ジエトキシド204.7g、テトラエトキシシラン1054.1g、エタノール309.7g、2-ブタノール929.2gおよびブチルグリコール103.3gを充填し、この初期充填物を均質化し、次いで、まず0.1モル塩酸108.4gを攪拌しながら加えた。30分の攪拌時間の後、さらに0.1モル塩酸111.2gを攪拌しながら加え、続いて60分間攪拌した。その後、二酸化セリウム粒子(Cerium Colloidal 20%、Rhodia GmbH製、フランクフルト/マイン、ドイツ)56.8gを攪拌しながら加え、次いで2.5%酢酸55.1gを加えた。24時間熟成後、低沸点物1132.4gを、40℃の湯浴温度で、80 mbarで回転蒸発器により真空中で除去した。
【0051】
最後に、生じた混合物1593.0gを、93.5 mg KOH/gの水酸価を有するアクリレートポリオール(DesmodurTM、A 665 BA/X(Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、ドイツ)948.0gと混合し、混合物を均質化した。
【0052】
このようにして得られた本発明の混合物は、有機ポリオール成分に基づいて29.6 mg KOH/gの理論水酸価および39.9wt%の固形分を有する。
【実施例2】
【0053】
本発明コーティング材の調製
実施例1で得た混合物83.2wt%を、下記成分と混合した:
0.4wt%の、キシレン中10%濃度のBaysiloneTM OL 17(Borchers GmbH、Langenfeld、ドイツ)、
0.8wt%の、BYKTM-070(BYK-Chemie GmbH、Wesel、ドイツ)、
0.4wt%の、Tinuvin 123(Ciba Spezialitaetenchemie Lampertheim GmbH、Lampertheim、ドイツ)、
0.6wt%の、Tinuvin 384-2(Ciba Spezialitaetenchemie Lampertheim GmbH、Lampertheim、ドイツ)、
5.8wt%の、酢酸l-メトキシプロピルおよびソルベントナフサ100(Kraemer & Martin GmbH、St. Augustin、ドイツ)の1:1混合物。
【0054】
その後、HDIトリマー(DesmodurTM VPLS 2253、Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、ドイツ)に基づくブロックトポリイソシアネート8.8wt%を加え、その直後に、得られた塗布液を、常套のベースコート材料で被覆した金属パネルに、スプレー塗布した。室温で約10分間蒸発させた後、この系を、30分間140℃で乾燥した。これにより、フィルム厚み40〜60μmの透明コーティングを得た。
【実施例3】
【0055】
実施例1で得た混合物88.4wt%を、下記成分と混合した:
0.4wt%の、キシレン中10%濃度のBaysiloneTM OL 17(Borchers GmbH、Langenfeld、ドイツ)、
0.8wt%の、BYKTM-070(BYK-Chemie GmbH、Wesel、ドイツ)、
0.4wt%の、Tinuvin 123 (Ciba Spezialitaetenchemie Lampertheim GmbH、Lampertheim、ドイツ)、
0.6wt%の、Tinuvin 384-2(Ciba Spezialitatenchemie Lampertheim GmbH、Lampertheim、ドイツ)、
4.3wt%の、l-メトキシプロピルアセテートおよびソルベントナフサ100(Kraemer & Martin GmbH、St. Augustin、ドイツ)の1:1混合物。
【0056】
その後、HDIトリマー(DesmodurTM N 3390、Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、ドイツ)に基づくポリイソシアネート5.1wt%を加え、その直後に、得られた塗布液を、常套のベースコート材料で被覆した金属パネルにスプレー塗布した。室温で約10分間蒸発させた後、この系を、30分間140℃で乾燥した。これにより、フィルム厚み40〜60μmの透明コーティングを得た。
【0057】
[比較例1]
テトラエトキシシラン1021.0gおよびエタノール250gを、0.1N p-トルエンスルホン酸87.5gと混合し、混合物を室温で1時間攪拌した。次いで、SiO2ナノ粒子分散体125g(LevasilTM 200S、HC Starck GmbH & Co. KG. Goslar 、ドイツ)を数滴の濃硫酸により、pH2に調節し、エタノール50gに溶解し、得られた混合物に、攪拌しながらゆっくり加えた。さらに15分の攪拌後に、2-ブタノール1000gを加え、最高オイルバス温度110℃で、低沸点物1210.0gを大気圧下で留去した。続いて、残留物を秤量し、2-ブタノールで1328.0gにした。最後に、生じた加水分解物を濾過し、これにより、半透明溶液を得た。生じた加水分解物581.1gを、アクリレートポリオール(DesmodurTM A 665 BA/X、Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、ドイツ) 252.1gと混合した。
【0058】
[比較例2]
比較例1で得た混合物81.5wt%を、下記成分と混合した:
0.4wt%の、酢酸1-メトキシプロピル(MPA)中10%濃度のBaysiloneTM OL 17(Borchers GmbH、Langenfeld、ドイツ)、
0.8wt%の、BYKTM-070(BYK-Chemie GmbH、Wesel、ドイツ)、
0.4wt%の、Tinuvin 123(Ciba Spezialitaetenchemie Lampertheim GmbH、Lampertheim、ドイツ)、
0.6wt%の、Tinuvin 384-2(Ciba Spezialitaetenchemie Lampertheim GmbH、Lampertheim、ドイツ)。
【0059】
その後、HDIトリマー(DesmodurTM VPLS 2253、Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、ドイツ)に基づくブロックトポリイソシアネート5.8wt%を加え、混合物を15分間攪拌し、24時間室温で放置して熟成した。
【0060】
塗布液を調製するために、得られた混合物を、攪拌しながら、4.7wt%のD4ジエトキシドおよび5.8wt%の0.1Np-トルエンスルホン酸と混合した。2時間の熟成後、得られた塗布液を、常套のベースコート材料で被覆した金属パネルにスプレー塗布した。室温で約10分間蒸発させた後、この系を、30分間140℃で乾燥した。これにより、40〜60μmのフィルム厚みの透明コーティングを得た。
【0061】
[比較例3]
アクリレートポリオール(DesmodurTM A 665 BA/X、Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、ドイツ)54.3wt%を、下記成分と混合した:
0.5wt%の、酢酸1-メトキシプロピル(MPA)中10%濃度のBaysiloneTM OL 17(Borchers GmbH、Langenfeld、ドイツ)、
0.5wt%の、酢酸1-メトキシプロピル(MPA)中1%濃度のModaflow(Monsanto Co., セントルイス、アメリカ)、
1.1wt%の、酢酸1-メトキシプロピル(MPA)中50%濃度のTinuvin 292(Ciba Spezialitaetenchemie Lampertheim GmbH、Lampertheim、ドイツ)、
1.6wt%の、酢酸1-メトキシプロピル(MPA)中50%濃度のTinuvin 384-2(Ciba Spezialitaetenchemie Lampertheim GmbH、Lampertheim、ドイツ)、
21.6wt%の、酢酸l-メトキシプロピルおよびソルベントナフサ100(TKraemer & Martin GmbH,St. Augustin、ドイツ)の1:1混合物。
【0062】
その後、HDIトリマー(DesmodurTM N 3390、Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、ドイツ)に基づくポリイソシアネート20.4wt%を加え、その直後に、得られた塗布液を、常套のベースコート材料で被覆した金属パネルにスプレー塗布した。室温で約10分間蒸発させた後、この系を、30分間140℃で乾燥した。これにより、フィルム厚み40〜60μmの透明コーティングを得た。
【0063】
[比較例4]
アクリレートポリオール(DesmodurTM A 665 BA/X、Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、ドイツ)42.9wt%を、下記成分と混合した:
0.5wt%の、酢酸1-メトキシプロピル(MPA)中10%濃度の、BaysiloneTM OL 17(Borchers GmbH、Langenfeld、ドイツ)、
0.5wt%の、酢酸1-メトキシプロピル(MPA)中1%濃度のModaflow(Monsanto Co., St. Louis、アメリカ)、
1.0wt%の、酢酸1-メトキシプロピル(MPA)中50%濃度のTinuvin 292(Ciba Spezialitaetenchemie Lampertheim GmbH、Lampertheim、ドイツ)、
1.5wt%の、酢酸1-メトキシプロピル(MPA)中50%濃度のTinuvin 384-2(Ciba Spezialitaetenchemie Lampertheim GmbH、Lampertheim、ドイツ)、
2.5wt%の、酢酸1-メトキシプロピル(MPA)中10%濃度のジブチル錫ジラウレート、
21.0wt%の、酢酸1-メトキシプロピルおよびソルベントナフサ100(TKraemer & Martin GmbH, St. Augustin、ドイツ)の1:1混合物。
【0064】
その後、HDIトリマー(DesmodurTM VPLS 2253、Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、ドイツ)に基づくブロックトポリイソシアネート30.1wt%を加え、その直後に、得られた塗布液を、常套のベースコート材料で被覆した金属パネルにスプレー塗布した。室温で約10分間蒸発させた後、この系を、30分間140℃で乾燥した。これにより、フィルム厚み40〜60μmの透明コーティングを得た。
【0065】
【表1】

【0066】
相対残留光沢:
相対残留光沢(%)は、DIN 5668に従って引掻いた後に、引掻く前の光沢との比較で、光沢(20°)がどの程度高いかを示す。この数字が高いほど、耐引掻き性はより良好である。引掻く前の初期光沢は、すべての系で87%〜92%であった。
【0067】
耐酸性:
耐酸性は、℃単位で示される。この目的のために、コーティングに、1%濃度硫酸を振りかけ、傾斜オーブン中で加熱する。コーティングに対する可視ダメージが最初に生じる温度を、表1に示す。この温度が高いほど、コーティングの耐酸性はより良好である。
【0068】
耐候安定性:
コーティングを、促進耐候試験(VDA(Verbang der deutschen Automobilindustrie;ドイツ自動車メーカー協会)621-429によるCAM 180)に付した。亀裂、膨れ(ブリスタ)、曇り、または著しい変色が生じた場合、コーティングは不合格とした。その不合格となるまでの時間および種類を表1に示す。
【0069】
表1から明らかなように、本発明の混合物およびそれから得られるコーティングは、耐酸性、耐引掻き性および耐候安定性の同時改良に関し、著しく改善された塗料特性を達成するために使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)いずれの場合にも1〜3個のアルコキシ基または水酸基を有する少なくとも2つの珪素原子を含む多官能性オルガノシランに基づき、前記珪素原子は、いずれの場合にも、少なくとも1つのSiC結合によって、シリコン単位を結合する構造単位に結合されている、1つ以上の無機結合剤と、
B)(半)金属アルコキシド、(半)金属アルコキシドの加水分解生成物、(半)金属アルコキシドの縮合生成物およびこれらの組み合わせと、
C)少なくとも90%が遠心分離機によって測定して50nm以下の平均粒径を有する粒子の形態の、ZnO、CeOおよびZnOとCeOとの組み合わせからなる群から選択される無機UV吸収剤と、
D)2以上のヒドロキシル官能価および250g/mol〜10000g/molの数平均分子量を有する1つ以上の有機ポリオールと、
E)1つ以上の溶媒とを含むハイブリッド組成物。
【請求項2】
A)における前記無機結合剤は、シクロ-{OSiMe[(CH22Si(OH)Me2]}4および/またはシクロ-{OSiMe[(CH22Si(OEt) 2Me]}に基づく、請求項1に記載のハイブリッド組成物。
【請求項3】
成分C)として、少なくとも98%が30nm以下の平均粒径を有するCeO粒子を使用する、請求項1に記載のハイブリッド組成物。
【請求項4】
a. 請求項1に記載のハイブリッド組成物と、
b. OH基と反応する架橋剤とを含む、コーティング材。
【請求項5】
請求項1のハイブリッド組成物を使用して得ることができるコーティングで被覆された基材。

【公開番号】特開2006−104476(P2006−104476A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293698(P2005−293698)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】