説明

ハイブリッドレーザ加工を用いたクラッディング施工方法及び装置

【課題】クラッディング金属を基材金属に固着させる方法を開示する。
【解決手段】加熱装置11を用いてクラッディング金属3と基材金属2の表面を加熱して、基材金属2の溶融基材金属材料上に層をなす溶融クラッディング金属を有する溶融池20を生成させるステップと、溶融池20に照射されるレーザビームを用いて溶融池20の温度勾配を安定させるステップと、溶融池を冷却して固化したクラッディングを基材金属2に固着させるステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の主題は、金属基板表面へのクラッディング金属の接合に関する。
【背景技術】
【0002】
多様な理由から、クラッディングが基板に施される。1種類以上のクラッディングにおいて、基板は金属であり、クラッディング材料は同類又は非同類の金属である。金属基板へのクラッディング金属の接合に通常必要なことは、クラッディング材料と金属基板表面を互いに溶融させて溶融池を形成することと、この溶融池を冷却して固化させることである。クラッディング施工プロセスの結果、クラッディング金属は金属基板に堅固に固着する。
【0003】
クラッディング施工プロセスには、入熱、クラッディング幅、及びクラッディング肉盛速度等の多くの変数が関連する。概して、固着したクラッディングにおいて、非均一性やピッディング形成等の欠陥を防ぐためには、これらの変数を或る一定の範囲内に維持する必要がある。これらの変数の幾つかは互いに対立することがある。例えば、クラッディング肉盛速度を高めるためには、通常は高入熱が必要になるが、高入熱はクラック形成に繋がり得る。欠陥よっては、残念ながら加工のやり直し又は廃棄処分が必要になることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6483077号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、クラッディング施工技術において、固着したクラッディングに欠陥を生じずに、クラッディング肉盛速度を高めることができれば、歓迎されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に従って、クラッディング金属を基材金属に固着させる方法を開示する。この方法は、加熱装置を用いてクラッディング金属と基材金属の表面を加熱して、基材金属の溶融基材金属材料上に層をなす溶融クラッディング金属を有する溶融池を生成させるステップと、溶融池に入射するレーザビームによって溶融池の温度勾配を安定させるステップと、溶融池を冷却して、固化したクラッディング金属を基材金属に固着させるステップとを含む。
【0007】
本発明の別の態様に従って、クラッディング金属を基材金属に施す装置を開示する。この装置は、クラッディング金属と基材金属の表面を加熱して基材金属の溶融基材金属材料上に層をなす溶融クラッディング金属を有する溶融池を生成させるように構成される加熱装置と、溶融池にレーザビームを照射して溶融池の温度勾配を安定させるように構成されるレーザとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】クラッディング金属を基材金属に接合する、加熱装置とレーザを有するハイブリッドレーザヘッドの典型的な一実施形態を示す図である。
【図2】クラッディング金属を基材金属に接合する、加熱装置とレーザを有するハイブリッドレーザヘッドの典型的な一実施形態を示す図である。
【図3】クラッディング施工方向に対して垂直な同一平面に整合するレーザビームとアークトーチを用いて、クラッディング金属を基材金属に接合する態様を示す図である。
【図4】クラッディング施工方向に対して垂直な同一平面に整合するレーザビームとアークトーチを用いて、クラッディング金属を基材金属に接合する態様を示す図である。
【図5】クラッディング施工方向に対して垂直な同一平面に整合するレーザビームとアークトーチを用いて、クラッディング金属を基材金属に接合する態様を示す図である。
【図6】図2に開示した技術を用いて基材金属に接合されたクラッディング金属の態様を示す図である。
【図7】図2に開示した技術を用いて基材金属に接合されたクラッディング金属の態様を示す図である。
【図8】図2に開示した技術を用いて基材金属に接合されたクラッディング金属の態様を示す図である。
【図9】図2に開示した技術を用いて基材金属に接合されたクラッディング金属の態様を示す図である。
【図10】クラッディング施工方向に整合する平面上でレーザからのレーザビームと加熱装置からのアークが整合する一実施形態を示す図である。
【図11】クラッディング施工方向に整合する平面上でレーザからのレーザビームと加熱装置からのアークが整合する一実施形態を示す図である。
【図12】クラッディング施工方向に加熱装置からのアークがレーザからのレーザビームに先行する一実施形態を示す図である。
【図13】クラッディング施工方向に加熱装置からのアークがレーザからのレーザビームに先行する一実施形態を示す図である。
【図14】U形経路状に行われる、基材金属へのクラッディングの連続施工を示す図である。
【図15】U形経路状に行われる、基材金属へのクラッディングの連続施工を示す図である。
【図16】U形経路状に行われる、基材金属へのクラッディングの連続施工を示す図である。
【図17】レーザビームがアークに先行すると共にクラッディング施工方向に対して横方向にアークからオフセットしているハイブリッドヘッドの一実施形態を示す図である。
【図18】レーザビームがアークに先行すると共にクラッディング施工方向に対して横方向にアークからオフセットしているハイブリッドヘッドの一実施形態を示す図である。
【図19】アークがレーザビームに先行すると共にレーザビームがクラッディング施工方向に対してアークから横方向にオフセットしているハイブリッドヘッドの一実施形態を示す図である。
【図20】アークがレーザビームに先行すると共にレーザビームがクラッディング施工方向に対してアークから横方向にオフセットしているハイブリッドヘッドの一実施形態を示す図である。
【図21】レーザビームがアークに先行すると共にクラッディング施工方向に対して横方向にアークからオフセットしているハイブリッドヘッドを用いた、クラッディングの連続施工の結果を示す図である。
【図22】レーザビームがアークに追随すると共にクラッディング施工方向に対して横方向にアークからオフセットしているハイブリッドヘッドを用いた、クラッディングの連続施工の結果を示す図である。
【図23】基材金属上にクラッディング金属を連続的に施すジグザグ経路を示す図である。
【図24】基材金属上にクラッディング金属を連続的に施すジグザグ経路を示す図である。
【図25】複数の一方向経路を辿って基材金属にクラッディング金属を非連続的に施す方法を示す図である。
【図26】複数の一方向経路を辿って基材金属にクラッディング金属を非連続的に施す方法を示す図である。
【図27】クラッディング金属を基材金属に施すためのアーク及びレーザビームの幾何学的配置を示す図である。
【図28】クラッディング金属を基材金属に施すためのアーク及びレーザビームの幾何学的配置を示す図である。
【図29】レーザに結合されるビームスプリッタと制御装置の典型的な一実施形態を示す図である。
【図30】クラッディング金属を基材金属に施す方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面に対応する下記の記述から、これら及びその他の利点及び特徴がより明らかになるであろう。
【0010】
本明細書の結びの特許請求の範囲において、本発明とみなされる主題を特記し、明確にクレームする。本発明の上記及びその他の特徴及び利点は、同様の要素には同様の符号を付した添付図面に対応する下記の発明を実施するための形態から明らかである。
【0011】
発明を実施するための形態では、図面を参照しながら例示目的において、本発明をその利点及び特徴と併せて説明する。
【0012】
クラッディング金属を金属基板又は基材金属に接合する技術の典型的な実施形態を開示する。これらの技術によって、従来技術の方法よりも高いクラッディング肉盛速度で、基材金属により幅広の帯状クラッディングを施すことが可能になり、欠陥の増加を伴わずに均一なクラッディング表面が得られる。
【0013】
これらの装置と方法とを含む技術は、ハイブリッドヘッドを用いてクラッディング金属と基材金属を溶融させて、クラッディング金属を基材金属に接合するものである。ハイブリッドヘッドは、加熱装置とレーザを含む。溶接用の加熱装置等の加熱装置を用いて、クラッディング金属と基材金属の表面を溶融させ、基材金属の表面上に溶融池を生成させる。この溶融池では、溶融したクラッディング金属が、溶融した基材金属上に層をなす。レーザは、溶融池に入射して溶融金属の温度を安定させるレーザビームを発する。レーザビームの出力は、このレーザビーム周りの温度勾配が安定する(即ち、温度変動が小さくなる)だけの十分な出力である。溶融池の温度を安定させることにより、従来技術のクラッディング加工よりもクラッディング肉盛速度を高めることができる上に、固化時に均一なクラッディング表面を得ることができる。加えて、温度勾配の安定化により、従来技術のクラッディング加工よりも幅広のクラッド層を得ることができる。
【0014】
クラッディング施工用の従来の溶接技術を上回るハイブリッドヘッドの利点には、溶融池の溶け込み深さの結果として、クラッディング金属と基材金属の間の歪みと希釈が低減することが含まれる。
【0015】
これらの技術では、ハイブリッドヘッド内において、加熱装置とレーザを様々に配置できるだけでなく、クラッディングを基材上に肉盛りするにあたり、様々な経路を用いることができる。
【0016】
次に、ハイブリッドヘッド10とよばれるクラッディング施工用ハイブリッドヘッド10の典型的な一実施形態を示す図1を参照する。図1にハイブリッドヘッド10と基材金属2との概略図を示し、図2に試作品のハイブリッドヘッド10と基材金属2及びクラッディング金属3を示す。ハイブリッドヘッド10は、加熱装置11とレーザ12を含む。1つ以上の実施形態において、加熱装置11は溶接用トーチヘッドである。溶接用トーチヘッドの非限定的な実施形態には、ティグ(TIG)溶接ともよばれるガスタングステンアーク溶接(GTAW)用、ミグ(MIG)溶接又はマグ(MAG)溶接ともよばれるガスメタルアーク溶接(GMAW)用、サブマージアーク溶接(SAW)用、プラズマアーク溶接(PAW)用、及びフラックスコアアーク溶接(FCAW)用のトーチヘッドが含まれる。溶接用トーチヘッドの場合、クラッディングは概して、溶融池を生成させるアークにより溶融される線材の形態で供給される。1つ以上の実施形態において、レーザ12は、加熱装置11によって生成した溶融池全体の温度勾配を制限できる程度の十分な出力を有するものの、レーザビームが基材金属2に溶融池の深さよりも深いキーホールを生成しないように、過出力ではない工業用レーザである。1つ以上の実施形態において、レーザ12は、クラッディング金属3が基材金属2上に所定の速度で肉盛りされる間、溶融池の表面積を維持可能な程度の十分な出力を有する。明らかなように、クラッディング肉盛速度と溶融池の大きさ及び温度は、レーザ12の所要出力の判定に用いる要因の一部にすぎない。レーザ12の非限定的な実施形態には、溶融池の温度勾配を安定させ得る十分な出力の、Nd:YAGレーザ、CO2レーザ、ディスクレーザ、ファイバレーザ、又はあらゆる種類のレーザ共振器が含まれる。図1を参照すると、レーザ12は、基材金属2上にクラッディング3を肉盛りする際に加熱装置11に先行するように配向可能である。或いは、加熱装置11がクラッディング施工プロセスにおいてレーザ12に先行するように配向可能である。
【0017】
次に、クラッディング施工方向に対して垂直な同一平面に整合するレーザ12からのレーザビームと加熱装置11からのアークを示す、図3〜5を参照する。クラッディング施工プロセス中に基材金属2をハイブリッドヘッド10に対して移動させること又はハイブリッドヘッド10を基材金属2に対して移動させることが可能なことは、わかるであろう。図3に、アークと整合したレーザビームの側面図を示す。図4には、溶融池20の上のレーザビームとアークとの俯瞰図を示す。レーザビームはアークから横方向に或る距離Lだけオフセットする。図5は、レーザビームとアークとの側面図である。図5において、クラッディング施工方向は読者へと向かう方向である。
【0018】
次に、図3〜5に開示した実施形態を用いてレーザビームとアークとの間のオフセットLを異ならせて行ったクラッディング施工の結果を示す、図6〜9を参照する。レーザ12の出力は2キロワットであった。加熱装置11は、トーチに対するクラッディング材料の送り量を300インチ/分に設定し、設定電圧を25VとしたMIG溶接トーチであった。基材2にクラッディング3を施す速度は40インチ/分であった。MIGトーチに使用したガスはAr+2%O2であった。基材金属2は304ステンレス鋼であり、クラッディング金属3は308ステンレス鋼であった。図6において、間隔Lは5.0mmであった。2つの別々のビード状のクラッディング3が得られた。MIGトーチアークとレーザビームとの間にはいかなる相互作用も生じず、その結果としてレーザビーム下で第1の溶融池が、MIGトーチアーク下で第2の溶融池が得られた。レーザビーム下では均一なクラッディングビードが得られたが、MIGトーチアーク下のクラッディングビードは凝集塊状を呈する。図7において、間隔Lは4.0mmであり、1つのクラッディングビードが得られたが、クラッディング3は凝集塊状を呈する。図8では、間隔Lは2.5mmであり、1つのクラッディングビードが得られ、クラッディング3の凝集塊は、Lが4.0mmである場合よりも減少した。図9において、間隔Lは1.0mmであり、結果的に得られたクラッディングビードは、該クラッディングビードのレーザビーム側において均一な表面を有しており、このことから、レーザビームを横方向にのみアークと整合させても均一なクラッド表面を形成させることはできないことがわかる。
【0019】
次に、クラッディング施工方向に整合する平面上においてレーザ12からのレーザビームと加熱装置11からのアークとを整合させる実施形態を示す、図10及び11を参照する。図10及び11の実施形態では、レーザ12はクラッディング施工方向に加熱装置11に先行する。図10に、レーザビームがアークよりも縦方向距離Sだけ先行する場合の側面図を示す。図11は、MIGトーチアークによって生成した溶融池20に照射されるレーザビームを示す俯瞰図である。
【0020】
次に図12及び13を参照すると、図10及び11に示す実施形態と同様であるが、加熱装置11からのアークがクラッディング施工方向にレーザ12からのレーザビームに先行する実施形態が示されている。図12は側面図であり、図13は俯瞰図である。
【0021】
次に、上述の2つの場合(レーザ先行及びアーク先行)を実証可能な、U形経路状に基材金属2にクラッディング金属3が施された連続施工を示す、図14及び15を参照する。図14はハイブリッドレーザヘッドのU形の移動経路を示す俯瞰図であり、図15はこの経路の側面図である。図16に、U形経路の一方の区間ではレーザビームを先行させ、経路の他方の区間ではアークを先行させてU形経路状にクラッディング3を施した結果を示す。この結果から、施されたクラッディングの表面が、両区間と区間間のU形移行部分とにおいて均一であることがわかる。図14〜16の実施形態において、レーザ出力は2キロワットであり、MIGトーチ設定は、クラッディング材料送り速度が300インチ/分、設定電圧が25Vであり、基材金属上にクラッディングを施す速度は40インチ/分、MIGガスはAr+2%O2、基材金属2は304ステンレス鋼、そしてクラッディング3は308ステンレス鋼であった。
【0022】
次に、レーザビームが縦方向にMIGアークに先行すると共にクラッディング施工方向に対して横方向にMIGアークからオフセットするハイブリッドヘッド10の実施形態を示す図17及び18を参照する。図17及び18において、レーザビームは縦方向距離SだけMIGアークに先行すると共に、距離Lだけ横方向にオフセットする。図17は側面図であり、図18は俯瞰図である。
【0023】
次に図19及び20を参照すると、図17及び18に示す実施形態と同様であるが、加熱装置11からのアークがクラッディング施工方向にレーザ12からのレーザビームに先行する実施形態が示されている。図19には側面図を示し、図20には俯瞰図を示す。
【0024】
次に、図17〜20に示すハイブリッドヘッド10を用いて縦方向に2.5mmの一定の間隔Sをあけて連続的にクラッディングを施した結果を示す、図21及び22を参照する。図21に示すクラッディング施工は、4.5mmの横方向オフセットLを有するハイブリッドヘッド10を用いて施されたものである。図21のクラッディング施工にはピッディングが見られる。図22に示すクラッディング施工は、2.5mmの横方向オフセットLを有するハイブリッドヘッドを用いて施されたものである。図22のクラッディング施工は、図21に示すピッディングの無い、均一な表面を呈する。図21及び22の各図に示す連続的なクラッディング施工は、U形経路の一方の区間ではレーザビームをアークに先行させ、経路の他方の区間ではアークをレーザビームに先行させて施されたものである。
【0025】
図16及び21〜22に示すクラッディング施工は、U形経路状に施されたものである。レーザビームがアークに先行又は追随するその他の経路形状を用いて、クラッディング金属3を基材金属2に塗布可能なことが、わかるであろう。1つ以上の実施形態において、経路形状は、平行な区間とこれらの区間間の90度の移行部とを含む。1つ以上の実施形態において、ハイブリッドヘッド10が経路の直線状の平行区間においてクラッディング3を施す間はレーザビームとアークとの間の縦方向距離Sを零とし、区間間の移行部ではレーザビームをアークに先行又は追随させることができる。ハイブリッドヘッド10が、直線状区間及び/又は曲線部においてはクラッディング施工方向に対するレーザビームとアークとの一定の幾何学的配置を維持するように、ハイブリッドヘッド10を構成可能なことがわかるであろう。また、ハイブリッドヘッド10を用いてクラッディング3を管体に施せることも、わかるであろう。クラッディング3を管体に施すためには、一定の線形移動を維持するようにハイブリッドヘッド10を構成すると同時に、管体を一定の速度で回転させてクラッディング金属を管体の外径上に堆積させることができるようにするとよい。
【0026】
図23及び24に、基材金属2上にクラッディング金属3を施すジグザグ経路を示す。図23は側面図であり、図24は俯瞰図である。このジグザグ経路を用いると、クラッディング3を基材金属2上に絶えず施すことができる。
【0027】
図25及び26に、クラッディング金属3を基材金属2上に施す複数の一方向経路を示す。図25は側面図であり、図26は俯瞰図である。これらの複数の一方向経路では、クラッディング施工の頻繁な開始及び停止が必要になる。
【0028】
図27及び28に、基材金属2に対するハイブリッドヘッド10の幾何学的配置を固定した状態に維持する実施形態を示す。このように幾何学的配置を固定した結果として、基材金属2に対して、アーク入射領域とレーザビーム入射領域の幾何学配置が固定された状態に維持される。図27において、第1の区間ではレーザビームがアークに先行する一方で、第2の区間ではアークがレーザビームに先行する。移行部では、アークとレーザビームとの間の縦方向のオフセットが零となる。図28では、アークとレーザビームとの間の縦方向のオフセットが、第1、第2、及び第3の区間において零となる一方で、移行部ではレーザビームがアークに先行する。ハイブリッドヘッド10は、基材金属2に対して旋回又は回転して、ハイブリッドヘッド10の幾何学的配置がクラッディング施工方向に対して(即ち、各々の区間及び移行部に対して)固定された状態に維持されるように構成可能なことは、わかるであろう。
【0029】
上記に、溶融池20に入射する十分な出力のレーザビームを用いることにより溶融池20の温度勾配を安定させて基材金属2上にクラッディング金属3を施す速度を高めることができ、従来のクラッディング施工プロセスと比べてクラッディング施工幅を大きくできることを示した。複数のレーザビームを用いて溶融池20の様々な領域を照射して、温度勾配を更に制限できることは、わかるであろう。複数のビームを得るには、1つのレーザから発せられるレーザビームを分割するか、又は複数のレーザを用いる。レーザ12を発振させて、レーザビームを溶融池20の様々な領域に照射するように、レーザ12を構成できることがわかるであろう。図29に、レーザ12に光結合されると共に、レーザ12から発せられるレーザビームを溶融池20に入射する2つ以上のレーザビームに分割するように構成される、ビームスプリッタ130の典型的な一実施形態を示す。加えて、図29では、レーザ12に結合される制御装置132の典型的な一実施形態を示す。この制御装置は、レーザ12と放射されるレーザビームとを発振させて溶融池20の様々な領域に照射するように構成される、電子機器、センサ、及びサーボ等の部品を含む。
【0030】
図30に、クラッディング金属を基材金属に固着させる方法140の一例を示す。この方法140は、加熱装置を用いて基材金属の表面とクラッディング金属とを加熱して、基材金属の基材金属材料の上に層をなすクラッディング金属の溶融池を生成させるステップ(ステップ141)を含む。更に、方法140は、溶融池に照射されるレーザビームによって溶融池の温度勾配を安定させるステップ(ステップ142)を含む。ステップ142は、レーザビームを加熱装置のアークに対して横方向及び/又は縦方向にオフセットさせるステップを含み得る。更に、方法140は、溶融池を冷却して固化したクラッディングを基材金属に固着させるステップ(ステップ143)を含む。
【0031】
各実施形態の要素が、単数名詞で記述されている。これらの単数名詞では、その要素が1つ以上あることを意図している。「含む」及び「有する」という表現は、包括的であり、列挙した要素以外にも要素が更にあり得ることを意図している。少なくとも2つの項目を羅列して「又は」という接続詞を用いるときは、あらゆる項目又は項目どうしのあらゆる組み合わせを意味することを意図している。「第1」「第2」という表現は、特定の順序を示すためではなく、要素どうしを区別するために用いられている。「結合」という表現は、或る部品が、別の部品に直接結合されていること、或いは、1つ以上の介在部品を介して別の部品に間接的に結合されていることを示す。
【0032】
限られた数の実施形態のみについて本発明を詳説したが、本発明がこうした開示の実施形態に限定されないことは、容易に理解できよう。寧ろ、本発明を改変して、上記しなかった変形、代替、置換、又は等価の構造を幾つでも組み込むことができ、これらも本発明の概念及び範囲に含まれる。また、本発明の種々の実施形態を記述したが、本発明の態様は、記述した実施形態の一部を含むのみであってもよいことを理解されたい。したがって、本発明は、以上の記述によって限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるとみなされるべきである。
【符号の説明】
【0033】
10 クラッディング施工用ハイブリッドヘッド(ハイブリッドヘッド)
2 基材金属
3 クラッディング金属
11 加熱装置
12 レーザ
20 溶融池
130 ビームスプリッタ
132 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッディング金属(3)を基材金属(2)に固着させる方法であって、
加熱装置(11)を用いてクラッディング金属(3)と基材金属(2)の表面とを加熱して、基材金属(2)の溶融基材金属材料上に層をなす溶融クラッディング金属を有する溶融池(20)を生成させるステップと、
溶融池(20)に照射されるレーザビームによって溶融池(20)の温度勾配を安定させるステップと、
溶融池(20)を冷却してクラッディング金属(3)を基材金属(2)に固着させるステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記加熱装置(11)が、アークを用いて溶融池(20)を生成させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記レーザビームが、クラッディング金属(3)を施す方向に対して平行な方向にアークから距離Sだけ縦方向にオフセットしている、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記レーザビームが、クラッディング金属(3)を施す方向に対して垂直な方向にアークから距離Lだけ横方向にオフセットしている、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記クラッディング金属(3)を基材金属(2)に施す際、レーザビームが、一定の表面積の溶融池(20)を維持可能な程度の十分な出力を有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
クラッディング金属(3)を基材金属(2)に施す装置であって、
クラッディング金属(3)と基材金属(2)の表面を加熱して、基材金属(2)の溶融基材金属材料上に層をなす溶融クラッディング金属(3)を有する溶融池(20)を生成させるように構成される加熱装置(11)と、
レーザビームを溶融池(20)に照射して溶融池(20)の温度勾配を安定させるように構成されるレーザ(12)と
を備える装置。
【請求項7】
前記加熱装置(11)が、アークを形成して溶融池(20)を生成させる、請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記加熱装置(11)とレーザ(12)が、基材金属(2)の配向に対して固定された幾何学的配置を維持するように構成される、請求項6記載の装置。
【請求項9】
前記加熱装置(11)とレーザ(12)が、クラッディング金属(3)を施す方向に対して固定された幾何学的配置を維持するように構成される、請求項6記載の装置。
【請求項10】
前記加熱装置(11)とレーザ(12)が、管体に沿って縦方向に移動するように構成される一方で、管体が回転してクラッディング金属(3)が管体の外面上に螺旋状に肉盛りされる、請求項6記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−192452(P2012−192452A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−51073(P2012−51073)
【出願日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】