説明

ハイブリッド型ステッピングモータ

【課題】回転子鉄心を通過する磁束バランスを均一化し、漏れ磁束を減らして有効磁束を増やして小型でモータ特性を向上させたハイブリッド型ステッピングモータを提供する。
【解決手段】回転子軸を中心に組み付けられた外周面に第1回転子磁極歯が形成された第1回転子鉄心及び外周面に第2回転子極歯が形成された第2回転子鉄心と、第1,第2回転子鉄心との間に軸方向に積層され、第1,第2回転子鉄心より小径な第3回転子鉄心と、第1回転子鉄心及び第2回転子鉄心のうち少なくとも一方の磁極歯の近傍に回転子軸を中心に同芯状に組み付けられた環状の回転子磁石と、を具備し、回転子磁石の磁束が一方の回転子磁極歯から対向する固定子磁極歯を経て他方の回転子磁石の磁極歯、第3回転子磁石を経て一方の回転子磁石に戻る磁気回路が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複写機、プリンタ、監視カメラ、ATM(現金自動預け払い機)等に用いられるハイブリッド型ステッピングモータに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド型ステッピングモータの構成は、回転子として歯形状の鉄心を積層した回転子鉄心51,52を(図6参照)を、円筒状の回転子磁石53を挟んで半ピッチずらして回転子軸54に組み付けられている。回転子磁石53は、軸方向と平行な向きにN・S極に着磁されている。回転子鉄心51,52の外周には、対向する固定子鉄心55の固定子極歯55aに対向するように回転子極歯が形成されている(図6参照)。固定子鉄心55の固定子極歯55aには図示しないコイルが巻き付けられている。
【0003】
図6において、回転子鉄心51がN極に磁化されており、回転子鉄心52がS極に磁化されている。このとき回転子磁石53のN極より発生した磁束は回転子極歯51aより対向する固定子鉄心55を通過して回転子鉄心52の回転子極歯52aを経て回転子鉄心52に入り回転子磁石53のS極に戻る磁気回路が形成される。固定子鉄心55の固定子極歯55aに巻き付けられたコイルに通電することにより、回転子にトルクが発生して回転するようになっている(特許文献1参照)。図7は図6のハイブリッド型ステッピングモータに用いられる回転子磁石の説明図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−289737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハイブリッド型ステッピングモータは、回転子が回転子磁石53を回転子鉄心51,52により挟み込む構造となっているため以下の課題があった。
(1)回転子軸54に磁性体を使用すると、回転子磁石53から回転子鉄心51,52を経て回転子軸54を通過する磁気回路が形成されて固定子鉄心55に流れ込む磁束量が減るため、モータ特性が低下する。そこで、回転子軸54は、非磁性体のステンレス系素材を使用する必要がある。このため、回転子軸54としてより安価な材料である例えば強磁性体の炭素系素材は使用できない。
【0006】
(2)回転子と固定子とのエアギャップから回転子磁石53の外周側と内周側までの距離が等しくないため、回転子鉄心51,52を通過する磁束は、回転子磁石53の近くに集中するため、かかる磁束密度の偏りから回転子極歯51a,52aを通過する磁気バランスが悪く振動が大きいうえに漏れ磁束が多くなるためモータ特性の低下につながる。
【0007】
(3)トルクを大きくするためには、回転子鉄心51,52の積厚に応じた磁束量の調整を行う必要がある。磁束量の調整は、回転子磁石53の断面積(円筒状マグネットの内外径)と磁石の厚みで行っているため、多くの種類の磁石が必要になる。このように多くの種類の磁石を準備することは、製造コストと管理コストを要するため実際は数種類の磁石に限定して多くの機種に使用しているのが実情である。よって、モータに要求される能力以上の磁石を使用する機種が多く製造コストが高くなっていた。
【0008】
(4)回転子磁石53の厚みを厚くすると固定子鉄心55の積厚も厚くする必要があるためモータが軸方向に大型化する。
【0009】
(5)モータ特性は磁束量で決まるが、回転子磁石53を回転子鉄心51,52で挟み込む構造では、回転子鉄心51,52の外径以上に回転子磁石53の断面積を大きくすることができず、モータ特性(トルク)を向上させるためには限界があった。ハイブリッド型ステッピングモータのトルクτは次式で示される。
τ=Kt・I・Sinφ
Kt:トルク定数 I:巻線の電流 Sinφ:トルク角
また、トルク定数Ktは次式で示される。
Kt=n・Nr・Φ
n:巻線の巻数 Nr:回転子の歯数 Φ:磁束数
従って、モータ特性(トルク)を上げるためには磁束数Φを大きくすれば良い事になる。マグネットの磁束数Φは次式で示される。
Φ=Bd×S
Bd:マグネット動作点の磁束密度 S:マグネット断面積
磁石断面積を大きくするとパーミアンス係数が下がりBdが小さくなるが、それ以上に磁束量が増える。即ち、磁束量を多くするためには磁石断面積を大きくすると良い。図6に示す回転子構造では、回転子磁石53の断面積を回転子鉄心51,52の外径以上に大きくすることができず限界があった。このため、残留磁束密度Brの高い高価な回転子磁石を使用するか、或いは多段式の回転子を作りモータ特性の向上を図っていた。
【0010】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、回転子極歯を通過する磁束バランスを均一化し、漏れ磁束を減らして有効磁束を増やして小型でモータ特性を向上させたハイブリッド型ステッピングモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するため、以下の構成を備えたことを特徴とする。
回転子軸に組み付けられ外周面に回転子極歯が形成された回転子鉄心に回転子磁石が組み付けられた回転子と、前記回転子極歯と対向配置されコイルが巻かれた固定子鉄心の固定子極歯との間に磁気回路が形成される固定子とを備え、前記コイルに通電することにより前記回転子極歯と対向する前記固定子極歯との間に発生する回転力により回転するハイブリッド型ステッピングモータであって、前記回転子軸を中心に組み付けられた外周面に第1回転子極歯が形成された第1回転子鉄心と、前記回転子軸を中心に組み付けられた外周面に第2回転子極歯が形成された第2回転子鉄心と、前記第1回転子極歯と第2回転子極歯が半ピッチずらせて組み付けられた前記第1,第2回転子鉄心との間に積層され、前記第1,第2回転子鉄心より小径な第3回転子鉄心と、前記第1回転子鉄心及び第2回転子鉄心のうち少なくとも一方の回転子極歯の近傍に前記回転子軸を中心に同芯状に組み付けられた環状の前記回転子磁石と、を具備し、前記回転子磁石の磁束が一方の回転子極歯から対向する固定子極歯を経て他方の回転子極歯を経て前記第3回転子鉄心、前記一方の回転子鉄心を経て前記回転子磁石に戻る磁気回路が形成されることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、第1回転子鉄心及び第2回転子鉄心のうち少なくとも一方の回転子極歯の近傍に回転子軸を中心に環状の回転子磁石が同芯状に組み付けられているので、回転子磁石から発生した磁束が回転子極歯から固定子極歯に漏れることが少なく有効磁束が多くなり、モータ特性が向上するうえに、回転子と固定子とのエアギャップから回転子磁石までの距離が等しくなるので磁気回路において磁束の偏った集中が起こらないため、磁気バランスが安定し振動や騒音も減少する。
【0013】
また、本発明においては、前記回転子磁石は、外周面と内周面の各々がN極若しくはS極で周方向に同じ極性となるように着磁されているのが好ましく、前記回転子磁石は、環状であってもよい。
これにより、回転子鉄心と固定子鉄心との間に有効断面積が大きく径方向に周回する磁束通路が十分か確保された磁気回路を形成することができる。
【0014】
また、本発明においては、前記第3回転子鉄心の外径は、径方向に着磁された前記回転子磁石の径方向の厚みの半分以下に形成されていることが望ましい。
これにより、回転子磁石より発生した磁束が磁気的にショートして漏れ磁束が発生しても問題ないレベルに防ぐことができる。
【0015】
また、本発明においては、前記第1回転子鉄心の前記第1回転子極歯の近傍に環状の第1回転子磁石が、前記第2回転子鉄心の前記第2回転子極歯の近傍に環状の第2回転子磁石が前記第1回転子磁極と径方向に磁極を反転させて前記回転子軸と同芯状に組み付けられていてもよい。
これにより第1回転子鉄心、固定子鉄心、第3回転子鉄心、第2回転子鉄心に形成される磁気回路を通過する磁束量を増やしてモータ特性を向上させることができる。
【0016】
また、本発明においては、前記回転子軸は磁性体が用いられるのが好ましい。これによれば、回転子軸も磁束通路として利用することができるので、より多くの磁束を通過させることができ、更には回転子軸に安価な磁性体を使用できるので、製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
上述したハイブリッド型ステッピングモータを用いれば、回転子極歯を通過する磁束バランスを均一化し、漏れ磁束を減らして有効磁束を増やして小型でモータ特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ハイブリッド型ステッピングモータの断面説明図である。
【図2】本発明のハイブリッド型ステッピングモータに用いられる回転子磁石の説明図である。
【図3】他例に係るハイブリッド型ステッピングモータの断面説明図である。
【図4】回転子の断面説明図である。
【図5】他例に係る回転子の断面説明図である。
【図6】従来のハイブリッド型ステッピングモータの断面説明図である。
【図7】従来のハイブリッド型ステッピングモータに用いられる回転子磁石の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るハイブリッド型ステッピングモータの一例について、添付図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1にハイブリッド型ステッピングモータの断面説明図を示す。
ハイブリッド型ステッピングモータは、回転子軸1に組み付けられ外周面に回転子極歯が形成された回転子鉄心に回転子磁石が組み付けられた回転子2と、回転子極歯と対向配置されコイルが巻かれた固定子鉄心の固定子極歯との間に磁気回路が形成される固定子3とを備えている。上記コイルに通電することにより回転子極歯と対向する固定子極歯との間に回転力が作用して回転するようになっている。以下、具体的に説明する。
【0021】
図1において、先ず回転子2の構造について説明する。
回転子軸1を中心に組み付けられ、外周面に第1回転子極歯4aが周方向に所定ピッチで形成された第1回転子鉄心4と、回転子軸1を中心に組み付けられ、外周面に第2回転子極歯5aが所定ピッチで形成された第2回転子鉄心5が設けられている。
【0022】
また第1回転子鉄心4及び第2回転子鉄心5のうち少なくとも一方、本実施例では第1回転子鉄心4の第1回転子極歯4aの近傍に回転子軸1を中心に環状の回転子磁石6が同芯状に組み付けられている。回転子磁石6の配置位置はできるだけ第1回転子極歯4aの近傍に設置するのが好ましい。回転子磁石6の有効径が大きく取れるため断面積を大きくすることができ、磁束量が稼げる。
【0023】
また、回転子磁石6は、第1回転子鉄心4と第2回転子鉄心5の軸方向の間に配置されていないので、後述する第3回転子鉄心7の軸方向の厚みを一定にすることができる。これにより、軸方向に厚みの厚い回転子磁石を使用している従来のハイブリッド型ステッピングモータの軸方向の長さを短縮化することができ、小型で安価なハイブリッド型ステッピングモータを提供することができる。また、積厚を同じとすると、総磁束を増やす事ができるためモータ特性を向上させることができる。
【0024】
また、回転子磁石6は、回転子外周面が全てN極またはS極に周方向で同じ極性となるように着磁されている。図1においては、回転子外周面が全てN極に着磁され、内周面が全てS極に着磁されている。もちろん、それとは逆に回転子外周面が全てS極に着磁され、内周面が全てN極に着磁されていてもよい。PM(permanent magnet)型ステッピングモータでは、回転子外周側の面はN極、S極、N極、S極、・・・と相互に極性が異なる磁石が配置されている。一方、本発明のステッピングモータでは回転子外周面と回転子内周面が周方向に同じ極性に着磁されており、この点でPM型ステッピングモータと大きく異なる。
また、図2は本発明のハイブリッド型ステッピングモータに用いられる回転子磁石の説明図である。
【0025】
ハイブリッドステッピングモータはネオジ焼結磁石を使用するのが一般的であるが、本発明では、最適な磁気回路設計と磁石断面積を大きくできるため、値段の安いネオジボンド磁石を使う事が出来る。ネオジボンド磁石は成形が可能であるため、第1回転子鉄心4は簡単に作る事が出来き、多くの種類の回転子磁石6を準備する必要がない。尚、ネオジボンド磁石に限定するものではなく、モータ特性とコストが満足すればどの種類の磁石を使用しても良い。
【0026】
また、第1,第2回転子鉄心4,5より小径な第3回転子鉄心7が第1,第2回転子鉄心4,5との間に軸方向に積層されて回転子軸1を中心に組み付けられている。第3回転子鉄心7の外径は、径方向にN極S極に着磁された回転子磁石6の径方向の厚みの半分以下に形成されていることが望ましい。これにより、回転子磁石6より発生した磁束が第1回転子鉄心4から第3回転子鉄心7を経て回転子磁石6へ戻る(磁気的にショートする)漏れ磁束が発生しても問題ないレベルに防ぐことができる。尚、第3回転子鉄心7は第1回転子鉄心4と第2回転子鉄心5と一体、または第2回転子鉄心5と一体として作り、第1回転子鉄心4と回転子磁石6を成形又はインサートとして組み立ても良い。
【0027】
また、第3回転子鉄心7は回転子2と固定子3間に形成される磁気回路の全磁束が流れこむ為、その外形は大きければ大きい程良いが、回転子磁石6の径方向の厚みの半分以上となると、上述した磁気ショートが発生する為、径方向厚みの半分以下に設定するのが良い。更に、第3回転子鉄心7に電磁鋼板ではなく磁束密度の高い材料、例えば軟鉄(磁束密度:2.15)やパーメンジュール(Co+Fe 磁束密度:2.45)等を使用して、軸方向の鉄心積厚を厚くすることもできる。
【0028】
図1において、固定子3は第1回転子極歯4a,第2回転子極歯5aと対向配置されコイルが巻かれた固定子鉄心8の固定子極歯8aとの間に磁気回路が形成される。具体的には、コイルに通電することにより、回転子磁石6のN極より発生した磁束が第1回転子極歯4aから対向する固定子極歯8aを経て第2回転子極歯5aを経て第2回転子鉄心5を通過して第3回転子鉄心7及び第1回転子鉄心4を経て回転子磁石6のS極に戻る磁気回路が形成される。
【0029】
上記構成によれば、第1回転子鉄心4及び第2回転子鉄心5のうち少なくとも一方の極歯4aの近傍に回転子軸1を中心に環状の回転子磁石6が同芯状に組み付けられているので、回転子磁石6から発生した磁束の漏れが少なく有効磁束が多くモータ特性が向上するうえに、回転子2と固定子3との隙間に相当するエアギャップから回転子磁石6までの距離が等しく、磁束の偏った集中が起こらないため、磁気バランスが安定し振動や騒音も減少する。
【0030】
また、回転子軸1は磁性体が用いられる。これによれば、回転子軸1も磁束通路として利用することができるので、より多くの磁束を通過させることができ、更には回転子軸1に安価な磁性体(炭素鋼系素材)を使用できるので、製造コストを低減することができる。
【0031】
ここでハイブリッド型ステッピングモータのモータ特性について考察する。
ハイブリッド型ステッピングモータのトルクτは次式で示される。
τ=Kt・I・Sinφ
Kt:トルク定数 I:巻線の電流 Sinφ:トルク角
また、トルク定数Ktは次式で示される。
Kt=n・Nr・Φ
n:巻線の巻数 Nr:回転子の歯数 Φ:磁束数
従って、回転子磁石6を何処に配置しても磁束量が同じあればモータ特性が同じである。
但し、鉄心には飽和現象があり、通常の電磁鋼板を用いたモータでは1.7(T)の以上の磁束密度では磁束漏れが発生し、時には特性に悪影響を及ぼす事がある。
【0032】
また、回転子磁石の有効径をC、鉄心厚み(磁石長さ)をB、歯幅をA、歯数をNrとすると、磁石の全磁束量Φは
Φ=Bd・πC・B (但し、Bdはマグネットの動作点の磁束密度)
また、鉄心極歯の全磁束Φは
Φ=Bt・A・B・Nr(但し、Bt鉄心歯部の磁束密度)
回転子磁石で発生した全磁束が極歯を通過する磁束と同じとする、即ち漏れ磁束が発生しない、一番効率の良い磁気回路設計をすると、
Bd・πC・B=Bt・A・B・Nr
Bt=(Bd・πC)/(A・Nr)
となる。Bd、C、A、Nrは夫々、設計段階で決まってしまう数字である。
【0033】
上式より、鉄心厚みとマグネット長さを同じとすると、鉄心積厚Bに関係なく極歯の磁束密度が決定される。従って、極歯磁束密度が最も効率の良い磁束密度になる様に磁気回路を設計すると、積厚に関係なく最も効率の良いモータを設計する事が出来る。モータのトルクは上述の通り、磁束量Φに比例するので、必要特性を確保するためには積厚で決定すれば良いことになり、設計が簡単になるだけでなく、無駄がなく最も効率の良いステッピングモータを提供することができる。
【0034】
回転子磁石の磁束量は磁石断面積をSとすると次式で示される。
Φ=Bd・S
従って、磁束量を増やすには、磁石動作点の磁束密度Bdを上げる磁気回路設計(パーミアンス係数を大きくする)をするか、残留磁束密度Brの高いハイレベルな磁石を使用するか、磁石断面積を大きくするかのいずれかである。
従来のハイブリッド型ステッピングモータでは、磁石外径を鉄心の外径以上に広げる事が出来ないため、磁石断面積を大きくするには限界があった。このため、残留磁束密度Brの高い磁石を使用したり、多段式の回転子を使用したりしていた。しかし、本構造にすると、積厚方向に長くしてやると磁石断面積が大きく取れるため、残留磁束密度Brの小さな安価な磁石を使用してもモータ特性を確保できるし、同じグレードの磁石を使用すればモータ特性を向上させることができる。しかし、積厚を無限大に長くできるかと言うとそうではない。発生磁束は鉄心Cを通過する為、鉄心Cが飽和状態になると、回転子の内部鉄心で磁束漏れが発生して特性は向上しない、最適な積厚が存在することになる。従って、これ以上の特性を要求される場合は多段式の回転子が必要となる。
【0035】
また、ハイブリッド型ステッピングモータの他例について図3に示す。同一部材については同一番号を付して説明を援用するものとする。
図3において、第1回転子鉄心4の第1極歯4aの近傍に回転子軸1と同芯状に組み付けられた第1回転子磁石6aと、第2回転子鉄心5の第2極歯5aの近傍に回転子軸1と同芯状に組み付けられた第2回転子磁石6bとが組み付けられていてもよい。環状の第1回転子磁石6aと第2回転子磁石6bは、径方向に着磁されており、第1回転子磁石6aと第2回転子磁石6bの極性は反転した極性になるように着磁されている。
【0036】
また、第3回転子鉄心7は回転子2と固定子3間に形成される磁気回路の全磁束が流れこむ為、その外形は大きければ大きい程良いが、回転子磁石6の径方向の厚みの半分以上となると、磁気ショートが発生する為、径方向厚みの半分以下に設定するのが良い。
【0037】
図3において、固定子3は第1回転子極歯4a,第2回転子極歯5aと対向配置されコイルが巻かれた固定子鉄心8の固定子極歯8aとの間に磁気回路が形成される。具体的には、コイルに通電することにより、第1回転子磁石6aのN極から発生した磁束が第1回転子極歯4aから対向する固定子極歯8a、第2回転子極歯5aを経て第2回転子磁石6bのS極に戻り、第2回転子磁石6bのN極から発生した磁束は、第2回転子鉄心5、第3回転子鉄心7、第1回転子鉄心4を経て第1回転子磁石6aのS極に戻る磁気回路が形成される。
【0038】
上記構成によっても、第1回転子鉄心4、固定子鉄心8、第2回転子鉄心5、第3回転子鉄心7を通過する磁束量を増やしてモータ特性を向上させることができる。
【0039】
また、回転子磁石6には環状磁石を用いていたが波形環状にする(図4(a)(b)参照)、環状磁石を多角形環状にする(図5(a)参照)、環状磁石を星形又は歯形環状にする(図5(b)参照)など様々な形態を採用することができる。
これにより回転子磁石6の径方向断面積Saが増えるので、Φ=Bd・Saであることから有効磁束が増えることになり、モータ特性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 回転子軸
2 回転子
3 固定子
4 第1回転子鉄心
4a 第1回転子極歯
5 第2回転子鉄心
5a 第2回転子極歯
6 回転子磁石
6a 第1回転子磁石
6b 第2回転子磁石
7 第3回転子鉄心
8 固定子鉄心
8a 固定子極歯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子軸に組み付けられ外周面に回転子極歯が形成された回転子鉄心に回転子磁石が組み付けられた回転子と、前記回転子極歯と対向配置されコイルが巻かれた固定子鉄心の固定子極歯との間に磁気回路が形成される固定子とを備え、前記コイルに通電することにより前記回転子極歯と対向する前記固定子極歯との間に発生する回転力により回転するハイブリッド型ステッピングモータであって、
前記回転子軸を中心に組み付けられた外周面に第1回転子極歯が形成された第1回転子鉄心と、
前記回転子軸を中心に組み付けられた外周面に第2回転子極歯が形成された第2回転子鉄心と、
前記第1回転子極歯と第2回転子極歯が半ピッチずらせて組み付けられた前記第1,第2回転子鉄心との間に積層され、前記第1,第2回転子鉄心より小径な第3回転子鉄心と、
前記第1回転子鉄心及び第2回転子鉄心のうち少なくとも一方の回転子極歯の近傍に前記回転子軸を中心に同芯状に組み付けられた前記回転子磁石と、を具備し、
前記回転子磁石の磁束が一方の回転子極歯から対向する固定子極歯を経て他方の回転子極歯を経て前記第3回転子鉄心、前記一方の回転子鉄心を経て前記回転子磁石に戻る磁気回路が形成されることを特徴とするハイブリッド型ステッピングモータ。
【請求項2】
前記回転子磁石は、外周面と内周面の各々がN極若しくはS極に周方向で同じ極性となるように着磁されている請求項1記載のハイブリッド型ステッピングモータ。
【請求項3】
前記回転子磁石は、環状であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のハイブリッド型ステッピングモータ。
【請求項4】
前記第3回転子鉄心の外径は、前記回転子磁石の径方向の厚みの半分以下に形成されている請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のハイブリッド型ステッピングモータ。
【請求項5】
前記第1回転子鉄心の前記第1回転子極歯の近傍に環状の第1回転子磁石が、前記第2回転子鉄心の前記第2回転子極歯の近傍に環状の第2回転子磁石が前記第1回転子磁石と径方向に磁極を反転させて前記回転子軸と同芯状に組み付けられている請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のハイブリッド型ステッピングモータ。
【請求項6】
前記回転子軸は磁性体が用いられる請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のハイブリッド型ステッピングモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−31340(P2013−31340A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167484(P2011−167484)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)