説明

ハイブリッド型自動車用の変速装置

【課題】単純でコストのかからない変速装置を提供する
【解決手段】ハイブリッド型自動車用の変速装置は、切断継手38を介して熱機関10に連結された一次変速軸34を有し、一次変速軸34は、車輌の車軸20及び電気機械12に連結された二次変速軸36に保持された少なくとも2つの二次歯車54,56と協働する少なくとも2つの一次歯車50,52を保持し、一の二次歯車54は、一方向継手58を介して二次変速軸36に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド型自動車を駆動する変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のように、この種の車輌は、推進または牽引手段として、一般的には内燃機関である熱機関と、1つまたは2つ以上の蓄電池などの電源に接続された回転電気機械と、を組み合わせている。
【0003】
この組み合わせは、特に、大気に排出される汚染物質を制限して環境を保護しつつ装置全体の燃料消費量を低減することによって、車輌性能の最適化を可能にしている。
【0004】
特許文献1に記載されている例では、この種の車輌は、車輌の駆動輪を制御する被駆動二次ラインとほぼ平行に配置された駆動一次ラインを備えた変速装置を有している。一次ラインは、切断継手を介して熱機関によって回転駆動させられる主駆動軸と、電気モータによって回転駆動させられる、主駆動軸を取り囲む管状の補助駆動軸と、からなる。主駆動軸と補助駆動軸は、噛み合いクラッチによって、回転可能に互いに固定することができる。被駆動歯車が被駆動二次ラインに保持され、かつ、被駆動二次ライン上に回転自由に取り付けられており、各軸は、被駆動歯車とそれぞれ連結された2つの歯車を固定的に保持している。このラインは、被駆動歯車を二次ラインに回転可能に固定するのを可能にする複数の交互隙間滑り歯車も保持している。
【0005】
従って、動作時には、車輌は、電気モータ若しくは熱機関またはその両者によって、様々な速度で駆動される。これは、異なるラインに保持された様々な継手(切断継手及び/または噛み合いクラッチ及び/または滑り歯車)を作動させ、主駆動軸を熱機関に固定し、及び/または主駆動軸を補助駆動軸に固定し、及び/または被駆動歯車の一つを被駆動二次ラインに固定することによって実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】仏国特許発明第2811395号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この変速装置は満足行くものであるが、いくつかの重大な欠点を有している。
【0008】
すなわち、電気モータだけを使用して車輌を駆動するときは、被駆動歯車を二次ラインと連結して、電気モータの回転運動を二次ラインに伝達する必要がある。この場合、基本機能を実現するために装置が複雑化する。
【0009】
また、車輌は、切断継手、噛み合いクラッチ、及び滑り歯車を制御する多数のアクチュエータを備えている必要がある。これらのアクチュエータは、装置の製造コストを増加させ、故障及び/または誤動作の原因となることがある。
【0010】
さらに、これらのアクチュエータは、機関が通常備える計算機などの処理ユニットによって制御しなければならず、計算機の容量の増加が必要となる。
【0011】
最後に、所望の速度を得るために、被駆動歯車など、装置のいくつかの部材を連結したり分離したりする必要がある。このため、歯車を動かすのに必要な時間が長くなり、また、走行中に不快感が生じる。
【0012】
本発明の目的は、単純でコストのかからない変速装置によって前述の欠点を解消することである。また、このような装置は、いずれの機関も独立に使用するのを可能にするとともに、車輌の減速時にエネルギーの回収を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明は、切断継手を介して熱機関に連結された一次変速軸を有し、一次変速軸は、車輌の車軸及び電気機械に連結された二次変速軸に保持された少なくとも2つの二次歯車と協働する少なくとも2つの一次歯車を保持するハイブリッド型自動車用の変速装置において、一の二次歯車は、一方向継手を介して二次変速軸に保持されていることを特徴とする変速装置に関する。
【0014】
他の二次歯車は、二次変速軸に回転自由に取り付けられ、切断継手を介して二次変速軸に連結されることができる。
【0015】
複数の一次歯車と複数の二次歯車は、ギア比が互いに異なる2つの歯車列を形成することができる。
【0016】
一方向継手はフリーホイールを有しているのが有利である。
【0017】
好ましくは、切断継手は遠心クラッチであってよい。
【0018】
電気機械は、伝動マルチプライアトラックによって車軸に連結されることができる。
【0019】
変速装置は、一次変速軸と二次変速軸との間に配置され、一次及び二次変速軸の歯車と協働する複数の挿入歯車を保持する挿入軸を有していてよい。
【0020】
一の挿入歯車は、一次変速軸の一の歯車と協働し、一方向継手を介して挿入軸に保持されることができる。
【0021】
他の挿入歯車は、一次変速軸の他の歯車と協働することができ、かつ他の挿入歯車は、挿入軸に自由に保持され、切断継手を介して挿入軸に連結されることができる。
【0022】
本発明の他の特徴及び利点は、非制限的な例として与えられる以下の説明を添付の図を参照して読むことによって明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ハイブリッド型自動車を駆動する、本発明による変速装置を示す図である。
【図2】他の動作構成を有する変速装置を示す図である。
【図3】図1の変速装置の変形実施形態を示す図である。
【図4】図1及び2に示す変速装置の他の変形実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示すように、ハイブリッド車輌の駆動システムは、特に内燃機関である熱機関10と、電気モータモードまたは発電機モードで動作可能な電気機械12と、を有している。熱機関10は、熱機関10によって回転が制御されるクランク軸の伸長部から延びる機関駆動軸14を有している。電気機械は、駆動軸16、ここでは電気機械のロータを有し、複数の蓄電池18(または複数のバッテリ)に接続されている。
【0025】
このシステムはまた、車輌の車輪22を直接的にまたは差動ブリッジによって駆動する車軸20を有している。この車軸は、伝動マルチプライアトラック24によって電気機械のロータ16に接続されている。一例では、このトラックは、ロータに取り付けられたプーリ26と、車軸に取り付けられ、プーリ26とは異なる直径を有する他のプーリ28と、2つのプーリを物理的に連結するベルト30と、を有している。もちろん、この伝動トラックは、たとえば歯車のような、ロータと車軸との間で回転運動を伝達する任意の他の部材を有することができる。
【0026】
最後に、このシステムは、以下ではギアボックスと呼ばれ、内燃機関の軸14と車軸20との間に配置された変速装置32を有している。このギアボックスは、機関軸14の伸長部を形成する一次軸34と、一次軸とほぼ平行に配置され、車軸20に回転可能に固定された二次軸36と、を有している。
【0027】
一次軸34は、切断継手38を介して機関軸14に連結されている。一例では、この継手は遠心クラッチである。反応プレート40が一次軸の一方の端部に固定的に保持され、摩擦プレート42が、複数のクラッチシュー44と複数の戻りばね46とによって軸方向に変位制御される。摩擦プレート42は、機関軸14の自由端に固定的に連結されたプレート48に保持されている。従って、機関軸14の回転を契機として、摩擦プレートは、複数のシューの遠心運動の作用によって軸方向に横移動させられ、反応プレート40と接触することによって反応プレート40と連結される。
【0028】
一次軸は、互いに直径が異なる少なくとも2つの歯車を、横移動及び回転を固定して保持している。少なくとも2つの歯車は、ここでは、一次軸の自由端の近くに配置された小さい直径の歯車50(または小歯車)と、反応プレートの近くに配置され歯車50より直径の大きい歯車52(または大歯車)である。説明を簡単にするために、以下の説明では、これらの歯車を一次歯車と呼ぶ。
【0029】
これらの一次歯車は、車軸20に固定された二次軸36に保持され互いに直径が異なる歯車と噛み合う。つまり、大直径歯車54が小歯車50と協働し、小直径歯車56が一次大歯車52と噛み合う。同様に、説明を簡単にするために、これらの歯車を二次歯車と呼ぶ。
【0030】
こうして、歯車50,54を有する第1の歯車列TR1と、歯車52,56を有する第2の歯車列TR2と、の2つの歯車列が形成され、2つの歯車列は互いに異なる歯車比R1,R2を有している。
【0031】
大直径二次歯車54は、歯車の軸受60と二次軸36との間の二次軸36上にフリーホイール58などの一方向継手を介在させることによって、二次軸36に配置される。
【0032】
小直径二次歯車56は、回転自由に軸36に取り付けられ、固定止め部材62によって軸方向に移動不能にされている。この歯車は、切断継手64によってこの軸に回転可能に固定することができる。
【0033】
一例では、この継手は遠心クラッチであり、機関軸14とギアボックス32の一次軸34との間に配置された遠心クラッチと同様である。より正確には、この継手は、歯車56のシェル68の一部で構成された連結面66と、連結面と向かい合う摩擦プレート70と、を有している。この摩擦プレートは、二次軸36に固定的に連結されたプレート76に保持された一組の複数のクラッチシュー72及び複数のばね74によって、軸方向変位が制御される。従って、軸36の回転時に、シューの遠心運動の作用で、摩擦プレートは、連結面66に接触するまで、シェル68に向かって軸方向移動させられる。従って、これによって、軸36と歯車56との間の回転連結を確立することができる。
【0034】
次に、様々な動作構成について説明する。
【0035】
第1の段階は、ハイブリッド車輌の電気的牽引(または推進)モードであり、電気機械12だけが車輌を駆動する機関として使用される。このモードでは、図1を参照すると分かるように、継手38,64が切断位置にあり、電気モータ12が複数のバッテリ18から電力を供給され、ロータ16を回転させる。ロータは、回転運動を増幅する伝動トラック24を通して、回転運動を車軸20に、従って二次軸36に伝達する。車軸の回転は、直接的または間接的に車輌の車輪22に伝達され、車輌を駆動する。
【0036】
同時に、二次軸36が回転することによって遠心クラッチ64が回転駆動される。遠心クラッチ64は、軸36が回転速度しきい値Nrに達するまで切断位置にある。従って、小直径二次歯車56はこの軸上で回転自由のままであり、大直径一次歯車52を駆動することはない。
【0037】
このことは、前進ギアで車輌が駆動される回転方向である第1の回転方向にロータ16が回転するように電気モータが作動させられるときに当てはまる。この場合、フリーホイール58は滑り方向にあるため、この構成では、大直径歯車54がフリーホイール58によって回転駆動されることはない。従って、ギアボックス32のすべての一次歯車及び二次歯車50,52,54,56は停止させられる。
【0038】
バックギアの場合、電気モータのロータ16が、しきい値Nrより低い回転速度で逆方向に回転制御され、継手38,64は切断位置のままである。そして、大直径二次歯車54は、二次軸36の回転運動を大直径二次歯車54に伝達するフリーホイール58によって回転駆動される。この回転運動は、歯車54が一次小歯車50と噛み合うことによって一次軸34に伝達される。軸34が回転すると、軸36に回転自由に取り付けられた二次歯車56と噛み合う大歯車52が、軸36を回転駆動することなく回転駆動される。また、遠心クラッチ38が切断位置にあることを考慮すれば、内燃機関を駆動する軸14に一次軸34の回転が再伝達されることはない。
【0039】
車輌が前進ギアで駆動され、ロータ16が第1の回転方向に回転する構成においては、図1に点線で示すように、車軸または車軸に連結された二次軸の回転速度がしきい値Nrを超えた直後に二次軸36が小直径二次歯車56と回転連結されることによって、遠心クラッチ64が動作可能になる。
【0040】
この構成では、二次軸36の歯車56は、一次軸34を回転駆動する一次大歯車52と噛み合う。次に、この回転は、大歯車54と噛み合う歯車50に伝達される。歯車列TR1と歯車列TR2の互いに異なる歯車比R1,R2と、フリーホイールの存在と、によって生じる二次軸36と歯車54との回転速度差を考慮すれば、軸36が歯車54によって回転駆動されることはない。これは、二次軸36の回転速度が大歯車54の回転速度より高いためである。
【0041】
このように、車輌を、電気モータの全使用範囲にわたって前進ギアで駆動し、あるいは0を超える回転速度からしきい値Nrより低い二次軸36の回転速度までの範囲のモータの使用範囲にわたって、バックギアで駆動することが可能である。
【0042】
また、車輌減速段階及び/または制動段階の間、電気エネルギーの回収量は最大になる。電気機械12は、複数のバッテリ18を再充電するための電流生成装置として使用される。
【0043】
以下に説明するハイブリッド車輌の熱牽引(または推進)モードでは、内燃機関10が車輌を駆動する機関として使用される。
【0044】
図2に示すように、休止状態では、2つの遠心クラッチ38,64はどちらも動作不能である。
【0045】
図2に点線で示すように、機関軸14の回転速度Nvがしきい値に達した直後に軸14がギアボックス32の一次軸34と物理的に連結されることによって、遠心クラッチ38が動作可能になる。
【0046】
一次歯車50,52は、軸14と同じ速度で回転駆動される。従って、一次小歯車50が大直径二次歯車54と噛み合い、大直径二次歯車54が、フリーホイール58を介して、二次軸36及び車軸20を回転駆動させる。一次大歯車52は小直径二次歯車56と噛み合って協働する。
【0047】
歯車列TR1によって回転駆動される二次軸36の速度が前述の速度Nrより低い場合、遠心クラッチ64は切断位置のままとなる。従って、小直径歯車56は軸36上で回転自由のままであり、大歯車52との噛み合いによる回転は軸36に何ら作用を及ぼさない。従って、歯車列TR1を通して、熱機関と車軸との間に第1の歯車比が得られる。
【0048】
図2に点線で示すように、軸36の回転速度がしきい値Nrを超えた直後に小直径歯車56が軸36に連結されることによって、遠心クラッチ64が動作可能になる。従って、二次軸36及び車軸20は、歯車列TR2によって、ある回転速度で駆動される。
【0049】
この位置では、歯車列TR1は軸36に何ら作用を及ぼさない。なぜなら、大直径歯車54と小直径歯車56によって駆動される二次軸36との回転速度差と、フリーホイール58の存在とを考慮すれば、二次軸36が歯車54によって回転駆動されることはないからである。その理由は、二次軸の回転速度が大歯車54の速度より速いためである。従って、この別の構成では、車輌は、歯車列TR2によって得られる第2の歯車比に従って駆動される。
【0050】
どちらの構成でも、電気機械12を発電装置として使用して車輌の複数のバッテリ18を再充電することが常に可能であることに留意されたい。同様に、この電気機械を複数のバッテリの発電装置として使用して、車輌減速段階または制動段階の間に、すべてのまたは一部のエネルギーを回収することができる。
【0051】
車輌が熱機関10によって駆動され、かつ減速段階にある間は、フリーホイール58が二次軸36及び車軸20から熱機関10を切り離すため、第1の歯車列TR1のみを介してすべてのエネルギーを回収できることに留意されたい。
【0052】
第2の歯車列TR2が使用されているときは、熱機関は常に車軸に連結され、車輌減速段階の間に一部のエネルギーを回収することができる。これは、熱機関の「機関制動」にエネルギーの他の一部が使用されるからである。
【0053】
熱牽引モードでは、熱機関と電気モータとを組み合わせて使用し、両方の出力を合わせて車輌を駆動することができることにも留意されたい。
【0054】
図3の変形実施形態は、以下の点で、図1と異なっている。(1)一次大歯車52’が、回転自由に、ハブ78で一次軸34に取り付けられているが、軸方向移動が固定されている。(2)遠心クラッチ(ここでは64’)が、図1の場合は軸36に配置されているのに対し、本実施形態では大歯車のハブに配置されており、それによって、大歯車52’の回転速度が前述の回転速度Nrより速くなった時点から、この大歯車が、一次軸に保持されているプレート80を介して軸34に固定される。(3)小直径二次歯車56’が二次軸36に固定的に取り付けられている。
【0055】
この変形実施形態では、図1及び2に関連して説明する変形実施形態と同じ速度構成を得ることができる。
【0056】
従って、機関軸14及び一次軸34の回転速度が速度Nvより高くなると、歯車50,54によって第1の歯車比が得られ、歯車52’の回転速度が回転速度Nr’に達して遠心クラッチ64’を作動させることが可能になると、歯車52’,56’によって第2の歯車比が得られる。
【0057】
図1及び2の変形実施形態である図4の場合、一次軸34と二次軸36との間に、これらの軸と平行に挿入伝動軸82が設けられ、3つ以上の歯車比を有する変速装置が得られる。
【0058】
この挿入軸は、4つの挿入歯車、すなわち、一次軸の歯車50,52と協働し相応の直径を有する2つの歯車84,86と、二次軸36の歯車54,56と協働し同じく相応の直径を有する2つの歯車88,90と、を保持している。
【0059】
有利なことに、一次小直径歯車50と協働する大直径挿入歯車84が、フリーホイール92などの一方向継手を挿入することによって、挿入軸に取り付けられている。歯車84と比べて小さい直径の挿入歯車86が、挿入軸82に回転自由に取り付けられ、固定止め部材92によって、軸上で軸方向に移動不能にされている。図4に示すように、挿入歯車86は、挿入軸の回転速度が速度Nsに達したときに、切断継手94によって挿入軸に回転可能に固定されることができる。好ましくは、この継手94は、二次軸36と二次歯車56との間に配置されたクラッチ64と同様の遠心クラッチであり、従って、同じ部材を有している。
【0060】
挿入軸の他の2つの歯車は、この軸に固定された大直径歯車88と、同じくこの軸に固定的に取り付けられた小直径歯車90である。この2つの歯車は、すでに図1,2に関連して説明したように、それぞれ小直径二次歯車54及び大直径二次歯車56と協働する。
【0061】
この装置の動作については、継手38を作動させた後、歯車50,84,90,56によって第1の歯車比が確立される。このことは、クラッチ94,64が非作動であり、従って、歯車86,54が作動不能であることによって実現される。
【0062】
この第1の歯車比によって、少なくとも2つの追加的な歯車比を得ることが可能である。
【0063】
まず二次軸36上のクラッチ64を作動させた場合、挿入軸82の回転速度が、歯車50,84,90,56によって生成されるこの二次軸36の速度しきい値Vsより遅くなる。なぜなら、歯車54が歯車88を駆動し、挿入軸と二次軸との回転速度差の作用で、歯車56がこの二次軸から切り離されるからである。従って、歯車50,84,88,54による第2の歯車比が得られる。
【0064】
クラッチ64が作動した後、挿入軸の速度が引き続き増加していくと、この挿入軸の回転速度はしきい値Rsに達し、そこからクラッチ94は閉じていく。この動作は、挿入軸82と一次軸34と二次軸36との間の回転速度差によるフリーホイール92,58の作用で歯車84と歯車56を切り離す作用を有している。従って、歯車52,86,88,54による第3の歯車比が確立される。
【0065】
本発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明に含まれるあらゆる均等実施形態及び変形実施形態を包含する。
【0066】
特に、遠心クラッチの代わりに制御された継手を使用することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 熱機関
12 電気機械
14 機関駆動軸
16 駆動軸
18 バッテリ
20 車軸
22 歯車
24 伝動マルチプライアトラック
26 プーリ
28 他のプーリ
34 一次(変速)軸
36 二次(変速)軸
38,64 切断継手
50,56,56’ 小直径歯車
52,52’,54 大直径歯車
58,92 フリーホイール
64,64’,94 遠心クラッチ
78 ハブ
82 挿入伝動軸
84,86,88,90 歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断継手(38)を介して熱機関(10)に連結された一次変速軸(34)を有し、前記一次変速軸(34)は、車輌の車軸(20)及び電気機械(12)に連結された二次変速軸(36)に保持された少なくとも2つの二次歯車(54,56)と協働する少なくとも2つの一次歯車(50,52)を保持し、一の前記二次歯車(54)は、一方向継手(58)を介して前記二次変速軸(36)に保持されている、ハイブリッド型自動車用の変速装置。
【請求項2】
他の前記二次歯車(56)は、前記二次変速軸(36)に回転自由に取り付けられ、切断継手(64)を介して前記二次変速軸(36)に連結される、請求項1に記載の変速装置。
【請求項3】
複数の前記一次歯車と複数の前記二次歯車は、ギア比(R1,R2)が互いに異なる2つの歯車列(TR1,TR2)を形成している、請求項1または2に記載の変速装置。
【請求項4】
前記一方向継手はフリーホイール(58)である、請求項1に記載の変速装置。
【請求項5】
前記切断継手は遠心クラッチ(38,64)である、請求項2に記載の変速装置。
【請求項6】
前記電気機械は、伝動マルチプライアトラック(24)によって前記車軸に連結されている、請求項1に記載の変速装置。
【請求項7】
前記一次変速軸(34)と前記二次変速軸(36)との間に配置され、前記一次及び二次変速軸の前記歯車と協働する複数の挿入歯車(84,86,88,90)を保持する挿入軸(82)を有する、請求項1に記載の変速装置。
【請求項8】
一の前記挿入歯車(84)は、前記一次変速軸の一の前記歯車(50)と協働し、一方向継手(92)を介して前記挿入軸に保持されている、請求項7に記載の変速装置。
【請求項9】
他の前記挿入歯車(86)は、前記一次変速軸の他の歯車(52)と協働し、かつ前記他の挿入歯車(86)は、前記挿入軸に自由に保持され、切断継手(94)を介して前記挿入軸に連結される、請求項7または8に記載の変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−17097(P2012−17097A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151445(P2011−151445)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】