説明

ハイブリッド型車両

【課題】荷室を狭めることなく、メインバッテリと補機バッテリの両方をハイブリッド型の車両に搭載する。
【解決手段】フロアパネル102は、上方に隆起して車両101の車幅方向に延びる隆起部102cと、これから前方方向に延びる前方部102aと、を備える。フロアパネル102の上方には、座部109aを前方部と平行にさせてリアシート109が設けられる。前方部102aとリアシート109の座部109aと隆起部102cとは、メインバッテリ110と補機バッテリ111とを車幅方向に横並びに設置するための収納空間SPを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと電気モータとの両方を動力源として備えるハイブリッド型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンと電気モータとの両方を動力源とするハイブリット型車両は、電気モータに給電するバッテリ(以下、「メインバッテリ」と呼ぶことがある)を搭載している。メインバッテリは、車両室内に配置された場合、乗客や荷物が収納される車内空間を狭めてしまう。
【0003】
特許文献1に記載の車両は、リアシートの下方に蓄電装置の搭載スペースを確保して、蓄電装置によって車両室内の居住性が損なわれることがないようにしている。そして、特許文献1には、第3の実施の形態として、電池パック600だけでなく、別の電池パック2600及びジャンクションボックス800を備え、電池パック2600を隆起部110の上面に設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4225363号明細書(請求項9、段落0061〜0065、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハイブリッド型車両において、低電圧(例えば12V)で動作するECU(エレクトロニックコントロールユニット)等の補機類への電圧供給、或いはメインバッテリの未充電等の不具合に備え、メインバッテリによる電力供給を補助する別のバッテリ(以下、「補機バッテリ」と呼ぶことがある)を搭載することがある。しかしながら、ハイブリット型車両では、車両の前部にあるエンジンコンパートメント内にエンジンとインバータとが搭載されており、エンジンコンパートメント内に補機バッテリを配置するのに十分な空間を確保できない。そこで、補機バッテリの設置箇所が問題となる。
【0006】
一例として、特許文献1にあるように、補機バッテリをリアシートの後方でフロアパネルの隆起部の上面に設置することが考えられる。この場合、リアシートの後方の室内スペースが狭くなる(特許文献1の段落0065参照)。
【0007】
別の一例として、補機バッテリを、リアタイヤのホイルハウスの後方側であってリアパネルに覆われる空間に配置することも考えられる。このようにリアタイヤのホイルハウスの後方に補機バッテリを配置した場合、車両の後方部分が衝突されると補機バッテリが破損するおそれがある。また、このような補機バッテリの配置は、リアオーバーハングが長いセダン型の車両でなければ実現できず、リアオーバーハングの短い小型のハッチバック車に対しては荷室を狭めなければ実現できない。
【0008】
本発明の目的は、電気モータ駆動用のバッテリと予備となる補機バッテリとの両方を、荷室を狭めずにハイブリッド型車両に搭載することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のハイブリッド型車両は、上方に隆起して車両の車幅方向に延びる形状をなす隆起部と、前記隆起部から前記車両の前方方向に延びる前方部と、を備えるフロアパネルと、前記フロアパネルの下方に設けられ、前記車両の動力源となるエンジンで燃焼される液体燃料を貯留する燃料タンクと、乗客の臀部を支持する座部を前記前方部に対向させて、前記フロアパネルの上方に設けられるリアシートと、前記前方部と前記座部と前記隆起部とで囲われる収納空間内に設けられ、前記車両の動力源となる電気モータの駆動電力を蓄積する第1のバッテリを設置するための第1設置部と、前記収納空間内で前記第1設置部に対し前記車両の車幅方向に横並びに設けられ、前記第1のバッテリによる電力供給を補助する第2のバッテリを設置するための第2設置部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リアシートの下に、二つのバッテリを横並びで配置することができる。したがって、メインバッテリと補機バッテリの両方を、荷室を狭めずにハイブリッド型車両に搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第一の実施の形態における、車両の平面図である。
【図2】車両の左断面図である。
【図3】リアシートよりも下方の各部を示す車両の平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】図3のB−B線断面図である。
【図6】第二の実施の形態における、図3のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の一形態を、図1ないし図5に基づいて説明する。本実施の形態を、説明の便宜上、第一の実施の形態と呼ぶ。図1は、車両101の平面図である。車両101は、エンジン及び電気モータ(いずれも図示せず)を動力源とするハイブリット型のものである。車両101は、前部にエンジンコンパートメント(図示せず)を形成している。そして、車両101は、エンジンコンパートメント内に、エンジン、電気モータ及びこの電気モータに接続されているインバータ(図示せず)を搭載している。
【0013】
車両101は、内部にリアシート109を搭載している。そして、車両101は、リアシート109よりも下方及び後方側に、フロアパネル102、左サイドメンバ103L、右サイドメンバ103R、センタークロスメンバ104、第1リアクロスメンバ105、第2リアクロスメンバ106、左リアタイヤ107L、右リアタイヤ107R、サスペションメンバ108、第1のバッテリとしてのメインバッテリ110、第2のバッテリとしての補機バッテリ111、燃料タンク112及びリアホイルハウス114を備える。
【0014】
フロアパネル102は、車両101の室内の床面を形成する。フロアパネル102は、車両101の前方側に向けて略水平に拡がって延びる前方部102aと、車両101の後方側に延びる後方部102bとを有する。そして、フロアパネル102は、前方部102aと後方部102bとの間に、隆起部102cを有する。隆起部102cは、フロアパネル102から前方部102a及び後方部102bのいずれよりも上方に突出し、車両101の車幅方向に延びる尾根状をなす。隆起部102cの下方には、第1リアクロスメンバ105が位置づけられている。
【0015】
リアシート109は、乗客の臀部を支持する座部109aと、乗客の背中を支持する背凭部109bとを備える。背凭部109bは、座部109aの後端から上方に突出している。リアシート109は、座部109aの下面の後方側の部分を隆起部102cに支持されて、フロアパネル102の上方に位置付けられる。このとき、座部109aは、前方部102aに対して平行に向き、この前方部102aと対向する。
【0016】
リアシート109の後方側の車両101の内部の空間は、荷室113として活用される。リアシート109の背凭部109bは、荷室113の前方壁面をなす。この荷室113の床面は、後方部102bとスペアタイヤ収納部カバー131とによって形成される。すなわち、フロアパネル102の後方部102bには、下方に凹む形状に、スペアタイヤ132を収納するためのスペアタイヤ収納部133が形成されている。そして、スペアタイヤ収納部カバー131は、スペアタイヤ収納部133に収納されたスペアタイヤ132の上方に位置付けられ、スペアタイヤ収納部133を覆い、荷室113の平坦な床面を形成する。
【0017】
リアホイルハウス114は、車両101の左右両側かつ後方であって荷室113の左右両側部に位置し、リアシート109に対し後方側なる位置に配置される。リアホイルハウス114は、フロアパネル102の後方部102bよりも上方に突出する形状をしている。左側のリアホイルハウス114の下方には、回転自在に左リアタイヤ107Lが位置付けられている。右側のリアホイルハウス114の下方には、回転自在に右リアタイヤ107Rが位置付けられている。そして、左右のリアホイルハウス114は、いずれも、車両101の外観を形成するリアパネル(図示せず)に覆われる。
【0018】
左サイドメンバ103L及び右サイドメンバ103Rは、車両101の前後方向に延びる部材であり、フロアパネル102の左右両側の領域に取り付けられる。より詳細には、左サイドメンバ103Lは、左側のリアホイルハウス114の右側部に沿って車両101の前後方向に延びる部分LAと、この部分LAから左側のリアホイルハウス114の前方部分の形状に沿って車両101の外側方向(左側方向)に向けて回りこむ部分LBと、この部分LBから車両101の外側方向に近づきつつ前方に向かう部分LCとを有する。一方、右サイドメンバ103Rは、左サイドメンバ103Lと概ね左右対称の形状を有する。つまり、左サイドメンバ103Lと右サイドメンバ103Rとは、車両101の後方から前方に向かうにつれて車両101の外側方向に拡がるように前後方向に延びている。そして、これらの左サイドメンバ103L及び右サイドメンバ103Rは、いずれも、部分LAではフロアパネル102の後方部102bの下側に位置し、部分LCではフロアパネル102の前方部102aの左右両側部の側面に接して、前方部102aよりも上方に突出している。
【0019】
センタークロスメンバ104、第1リアクロスメンバ105及び第2リアクロスメンバ106は、この順に、車両101の前方から後方に向けて並ぶ。センタークロスメンバ104、第1リアクロスメンバ105及び第2リアクロスメンバ106は、いずれもフロアパネル102の下面に取り付けられ、車幅方向に延びる形状をなして左サイドメンバ103Lと右サイドメンバ103Rとを連結し、車両101の剛性を高めている。センタークロスメンバ104については、図3及び図4に基づいて後述する。第1リアクロスメンバ105は、隆起部102cの下面に設けられる。第2リアクロスメンバ106は、フロアパネル102の後端部の下面に設けられる。
【0020】
サスペションメンバ108は、車両101の懸架装置の構成部品である。サスペションメンバ108は、左トレーリングアーム115Lと、右トレーリングアーム115Rと、中間ビーム116とを含む。左トレーリングアーム115Lの後端は、ショックアブソーバ及びコイルスプリング(いずれも図示せず)を介して、左リアタイヤ107Lに連結する。左トレーリングアーム115Lの前端は、左サイドメンバ103Lに連結する。同様に、右トレーリングアーム115Rの後端はショックアブソーバ及びコイルスプリング(いずれも図示せず)を介して右リアタイヤ107Rに連結し、右トレーリングアーム115Rの前端は右サイドメンバ103Rに連結する。ショックアブソーバ及びコイルスプリングは、車両101が走行する間の左リアタイヤ107L及び右リアタイヤ107Rの振動を吸収する。また、中間ビーム116は、リアシート109の後方かつフロアパネル102の下方に位置し、左トレーリングアーム115Lと右トレーリングアーム115Rとを連結する。
【0021】
図2は、車両101の左断面図である。燃料タンク112は、車両101の動力源となるエンジン(図示せず)で燃焼される液体燃料を貯留する。液体燃料は、一例として、ガソリンやアルコールである。この燃料タンク112は、左端に、後方かつ上方に延びるフィラーチューブ(図示せず)を有する。また、燃料タンク112は、上端に、給油口(図示せず)を有する。燃料タンク112は、隆起部102cの内部に収まるように、フロアパネル102の下方に位置付けられる。そして、燃料タンク112は、左トレーリングアーム115L、右トレーリングアーム115R、ショックアブソーバ、コイルスプリングを避けて、左トレーリングアーム115Lと右トレーリングアーム115Rとの間に位置付けられ、左サイドメンバ103L及び右サイドメンバ103Rに固定される。この燃料タンク112は、第1リアクロスメンバ105及び中間ビーム116に対して前方に位置し、これらとの干渉を避ける形状に形成されている。
【0022】
リアシート109の座部109aと、フロアパネル102の前方部102aと、フロアパネル102の隆起部102cとは、収納空間SPを形成する。収納空間SPには、メインバッテリ110を設置するための第1設置部151と、補機バッテリ111を設置するための第2設置部152とが、車幅方向に横並びに設けられている。メインバッテリ110は第1設置部151に設置されて、補機バッテリ111は第2設置部152に設置されて、それぞれこの収納空間SP内に位置付けられる。
【0023】
収納空間SPの上方と後方と左右両側部分とは、フレーム126で覆われる。フレーム126は、金網で形成され、メインバッテリ110と補機バッテリ111とブロアモータ119を覆う形状に形成されている。フレーム126の後方側の部分は、隆起部102cの一部をなし前方部102aから上方に立ち上がっている壁面102dの前面側に接触する。また、フレーム126の上方側の部分は、メインバッテリ110と補機バッテリ111とブロアモータ119とを覆うとともに、リアシート109の座部109aの下面を支持する。
【0024】
ここで、メインバッテリ110、補機バッテリ111及びブロアモータ119について説明する。メインバッテリ110は、細長い略直方体形状の筐体を有し、この筐体の中に、複数の電池セルを直列に接続した電池モジュールをさらに複数直列に接続して形成される二次電池を内部に収納して、電気モータ(図示せず)の駆動電力を蓄積する。メインバッテリ110は、長辺方向を車両101の車幅方向に向けた状態で、収納空間SP内に配置される。メインバッテリ110は、収納空間SPに配置された場合に車両101の左側を向く面に、端子110aを有する。そして、メインバッテリ110において収納空間SPに配置された場合に車両101の右側を向く面からは、パイプ111b(図3参照)が延出する。パイプ111bは、メインバッテリ110で発生する水素を車両101の外部に排出するためのものである。
【0025】
メインバッテリ110は、端子110aに取り付けられた配線117aを介して、エンジンコンパートメント(図示せず)に設けられたインバータ(図示せず)に接続する。この配線117aは、ワイヤハーネス117の一部をなす。メインバッテリ110は、インバータを経由して、電気モータや車両101に搭載された各種のアクセサリ(図示せず)に電力を供給する。また、メインバッテリ110には、モータの駆動により発生した電力が、インバータを介して蓄電される。
【0026】
ブロアモータ119は、収納空間SPに収納され、メインバッテリ110の左側に並べて配置される。ブロアモータ119は、車両101に搭載されるヒーターやエアコン(いずれも図示せず)の駆動源となる他、メインバッテリ110に冷却風を当ててこのメインバッテリ110を冷やす。メインバッテリ110とブロアモータ119とが車両101の車幅方向に占める長さは、リアホイルハウス114間の距離W(図1参照)と略同じである。
【0027】
補機バッテリ111は、略直方体形状の筐体の中に二次電池を収納して構成される。この補機バッテリ111の筐体の一辺の長さは、リアホイルハウス114の車幅方向の長さV(図1参照)と略同じである。補機バッテリ111は、メインバッテリ110による車両101の各部への電力供給を補助する。但し、補機バッテリ111の電力は、車両101の走行には用いられず、低電圧(例えば12V)で動作する不図示のECU(エレクトロニックコントロールユニット)或いはブロアモータ119等の補機類への電圧供給、またはメインバッテリ110が未充電である場合等の車両101の各部の駆動に用いられる。補機バッテリ111は、上面に端子111a(図4参照)を有する。この端子111aには、ワイヤハーネス117の一部をなす別の配線117bが取り付けられる。すなわち、補機バッテリ111は、エンジンコンパートメントに設けられたインバータに対しメインバッテリ110と並列に接続される、なお、メインバッテリ110と補機バッテリ111とは、直列に接続されていてもよい。
【0028】
メインバッテリ110及び補機バッテリ111とインバータとの間には、ジャンクションボックス(図示せず)が電気的に接続されている。ジャンクションボックスは、内部にシステムメインリレーを収納しており、メインバッテリ110及び補機バッテリ111とインバータとの電気的な接続及び遮断を切り替える。また、ワイヤハーネス117の一部をなすさらに別の配線117cがブロアモータ119の端子(図示せず)に接続されていて、ブロアモータ119はメインバッテリ110及び補機バッテリ111から給電を受け駆動する。そして、メインバッテリ110とブロアモータ119とを繋ぐ配線の途中には、リレー(図示せず)が設けられている。
【0029】
車幅方向に並ぶメインバッテリ110及びブロアモータ119は、上記に述べたように距離W(図1参照)だけの幅を占める。このため、メインバッテリ110及びブロアモータ119の設置場所を、例えば、荷室113におけるリアシート109の背凭部109bの近傍に設けることが考えられる。また、補機バッテリ111の筐体の一辺の長さは長さV(図1参照)と略同じであるため、例えば、補機バッテリ111の設置場所を、リアホイルハウス114の後方にあたる箇所に設け、そこに設置された補機バッテリ111をリアパネル(図示せず)で覆い隠すことが考えられる。また、補機バッテリ111の設置場所を、荷室113におけるメインバッテリ110及びブロアモータ119の設置場所に隣接させて設けることも考えられる。
【0030】
図3は、リアシート109よりも下方の各部を示す車両101の平面図である。なお、図3では、リアシート109の座部109aが取り付けられる位置を一点鎖線で仮想的に示している。また、図3では、フレーム126を省略している。本実施の形態では、メインバッテリ110及び補機バッテリ111は、収納空間SPの内部に収納される。収納空間SPの高さは、前方部102aに対する隆起部102cの高さH(図2参照)であって、燃料タンク112の高さよりも高い。
【0031】
左サイドメンバ103L及び右サイドメンバ103Rは、フロアパネル102の前方部102aの左右両側からこの前方部102aよりも上方に突出しており、収納空間SPの左右の壁面をなしている。すなわち、左サイドメンバ103Lの側面103Laは、収納空間SPの車幅方向の大きさを規定する左壁面となる。また、右サイドメンバ103Rの側面103Raは、収納空間SPの車幅方向の大きさを規定する右壁面となる。そして、左サイドメンバ103L及び右サイドメンバ103Rはいずれも、上面で、リアシート109の座部109aの左右両側部を支持している。
【0032】
収納空間SPの内部であってフロアパネル102の前方部102aの上面には、メインバッテリ110を設置するための第1設置部151と、補機バッテリ111を設置するための第2設置部152とが、車幅方向に横並びに設けられている。第1設置部151は、収納空間SP内で、左サイドメンバ103Lの側面103La側に寄せて設けられる。第2設置部152は、収納空間SP内で、第1設置部151と右サイドメンバ103Rの側面103Raとの間に設けられる。また、フロアパネル102の前方部102aにおいて、第1設置部151と左サイドメンバ103Lの側面103Laとの間の箇所には、ワイヤハーネス117を通す貫通孔120が設けられている。
【0033】
図4は、図3のA−A線断面図である。補機バッテリ111は、第2設置部152に設置され、リアシート109の座部109aの下方かつフロアパネル102の前方部102aの上方に位置付けられる。補機バッテリ111は、位置決め部材118によって第2設置部152に位置付けられ、取付部材(図示せず)によって固定され、車両101の振動によって動かないようになっている。位置決め部材118は、補機バッテリ111を保持する形状を有しており、フロアパネル102の前方部102aの上に固定されている。位置決め部材118は、メインバッテリ110及びブロアモータ119も保持する形状を有し、メインバッテリ110を第1設置部151に位置付ける。
【0034】
図3及び図4を参照する。メインバッテリ110の前方には、収納空間SPの前方側を覆う固定カバー121が位置する。固定カバー121は、リアシート109の前端から垂下し、フロアパネル102の前方部102aに繋がっている。固定カバー121の右端は、第1設置部151に設置されるメインバッテリ110の右端の位置と略一致する。固定カバー121の左端は、左サイドメンバ103Lの側面103Laに繋がっている。
【0035】
固定カバー121の右側には、開口部123が設けられている。この開口部123は、補機バッテリ111の前方に開口している。そして、開口部123の外周は、リアシート109の座部109aの下面、フロアパネル102の前方部102aの上面、固定カバー121の右端辺及び右サイドメンバ103Rの側面103Raによって形成される。着脱カバー122は、この開口部123を開閉する。着脱カバー122は、一例として、ヒンジ124を介して、固定カバー121の右端辺に連結して、車両101の前方に回動自在となっている。また、別の一例として、着脱カバー122は、固定カバー121及び右サイドメンバ103Rの側面103Raに引っかかる爪部(図示せず)を有していて、開口部123を閉じる場合に爪部が固定カバー121及び右サイドメンバ103Rの側面103Raに引っかかり開口部123から外れないようになっていてもよい。
【0036】
図5は、図3のB−B線断面図である。センタークロスメンバ104は、フロアパネル102の下面で、前方部102a及び隆起部102cに跨る箇所に設けられる。センタークロスメンバ104は、車両101の車幅方向に延びる部材で、左サイドメンバ103Lと右サイドメンバ103Rとを連結している。センタークロスメンバ104の断面は、上向に開くコ字形状をなしている。そして、センタークロスメンバ104の前方側の端部104aは、前方部102aの下面に接触している。また、センタークロスメンバ104の後方側の端部104bは、上下方向に延びる隆起部102cの壁面102dに沿って延びている。センタークロスメンバ104は、フロアパネル102の前方部102aを介して第1設置部151に設置されたメインバッテリ110を支持する。
【0037】
このように構成された車両101を製造するに際して、燃料タンク112はエンジンに供給される揮発性の高い液体燃料(ガソリン、アルコールなど)を収納するために気密性を有していればよく、この燃料タンク112の形状自体は、比較的自由に形成することが可能である。これに対し、メインバッテリ110及び補機バッテリ111については形状の設計の自由度が乏しい。より詳細には、メインバッテリ110及び補機バッテリ111は、内部に複数の電池セルや電池モジュールを収納しており、これらの複数の電池セルや電池モジュールの形状及び接続位置などにより外形が決まってしまう。このため、メインバッテリ110及び補機バッテリ111については、形状の設計の自由度が乏しい。
【0038】
そこで、本実施の形態の車両101の製造者は、リアシート109の座部109aの下方にメインバッテリ110及び補機バッテリ111の両方を横並びに設置するのに十分な収納空間SPを確保するよう、隆起部102cの壁面102dを後方に寄せて第1リアクロスメンバ105に近づけ、フロアパネル102に隆起部102cを形成して収納空間SPを小さくする。そして、燃料タンク112を、第1リアクロスメンバ105、中間ビーム116、隆起部102cの壁面102dで囲われる空間に収まる形状に形成し、この空間内に配置する。
【0039】
続いて、製造者は、リアシート109の座部109aを取り付ける前に、収納空間SP内の第1設置部151にメインバッテリ110を配置し、第2設置部152に補機バッテリ111を設置する。ここで、収納空間SPには、第1設置部151と第2設置部152とが車幅方向に横並びに設けられているため、製造者は、そこにメインバッテリ110と補機バッテリ111とを配置する。その後、製造者は、メインバッテリ110の端子110aや補機バッテリ111の端子111a、ブロアモータ119の接続端子(図示せず)にワイヤハーネス117の配線117a〜177cを接続し、ワイヤハーネス117を貫通孔120に通す。その後、製造者は、フレーム126を収納空間SPに覆い被せ、フロアパネル102の隆起部102cと左サイドメンバ103Lの上面と右サイドメンバ103Rの上面とにリアシート109を固定取付する。これにより、リアシート109はフロアパネル102の上方に位置付けられる。また、フレーム126は、リアシート109の座部109aの下面に接触し、この座部109aを支持する。
【0040】
このように、本実施の形態では、各種の部品が固定的に設けられ設計の自由度が乏しい車両101の内部構造において、通常は用いられないリアシート109の下方に、メインバッテリ110と補機バッテリ111とを横並びに収納するのに十分な収納空間SPを確保することができる。そして、この収納空間SP内に、メインバッテリ110と補機バッテリ111とが横並びに配置される。その結果、荷室113にメインバッテリ110や補機バッテリ111が配置されることはなく、荷室113が狭まるようなことも無い。また、メインバッテリ110及び補機バッテリ111は、フロアパネル102とリアシート109と固定カバー121と着脱カバー122と左サイドメンバ103Lと右サイドメンバ103Rとに囲われて、防塵や防寒が図られる。また、補機バッテリ111がメインバッテリ110の近傍に配置されるためにワイヤハーネス117の長さを短くすることができ、車両101の重量も製造コストも低減される。また、メインバッテリ110と補機バッテリ111とを繋ぐリレー(図示せず)も簡素化される。加えて、補機バッテリ111は、衝突されやすいリアホイルハウス114の後方に設置されることがない。つまり、本実施の形態のように補機バッテリ111をリアシート109の下方に収納するという構成は、リアオーバーハングの短い小型のハッチバック車に対しても適用でき、従って、車両101の外観デザインの自由度が増す。
【0041】
また、本実施の形態では、燃料タンク112は隆起部102c内に収納される。このため、車両101の車高が低くなる。さらに、メインバッテリ110と補機バッテリ111とはリアシート109の下方で車両101の走行面に近い位置に配置され、しかもこれらは収納空間SP内にまとまって配置されるため、車両101の重心位置が低くなり、車両101の安定した走行が実現される。また、メインバッテリ110、補機バッテリ111及び燃料タンク112のいずれも、車両101の中央かつ下方にまとまって配置されているため、特別な補強を施すことなく、衝突等により車両101に加えられた衝撃によって壊されることを防ぐことができる。
【0042】
また、本実施の形態では、センタークロスメンバ104は、左サイドメンバ103Lと右サイドメンバ103Rとを連結して車両101の剛性を高めるのみならず、メインバッテリ110を支持している。このため、メインバッテリ110を設置する際の重さに耐えられるようフロアパネル102を頑丈にする必要がなくなる。
【0043】
また、本実施の形態では、着脱カバー122を開閉することにより、作業員が補機バッテリ111のメンテナンスや交換を容易に行うことができる。
【0044】
次いで、実施の別の一形態を、図6に基づいて説明する。本実施の形態を、説明の便宜上、第二の実施の形態と呼ぶ。本実施の形態において、前述した第一の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明も省略する。
【0045】
図6は、本実施の形態における、図3のA−A線断面図である。本実施の形態では、リアシート109の座部109aの下面であって補機バッテリ111の端子111aの上方にあたる箇所が、上方に窪んでいる。
【0046】
本実施の形態では、作業者は、補機バッテリ111の端子111aとリアシート109の座部109aとの間の空間を活用し、着脱カバー122を開けて補機バッテリ111に対するメンテナンスや交換を行う作業を効率的に進めることができる。さらに、このような作業の効率化は、リアシート109の外観の変更を伴わない。
【符号の説明】
【0047】
101 ハイブリット型車両
102 フロアパネル
102a 前方部
102c 隆起部
104 センタークロスメンバ
112 燃料タンク
109 リアシート
109a 座部
110 メインバッテリ(第1のバッテリ)
111 補機バッテリ(第2のバッテリ)
121 固定カバー
121 着脱カバー
151 第1設置部
152 第2設置部
SP 収納空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に隆起して車両の車幅方向に延びる形状をなす隆起部と、前記隆起部から前記車両の前方方向に延びる前方部と、を備えるフロアパネルと、
前記フロアパネルの下方に設けられ、前記車両の動力源となるエンジンで燃焼される液体燃料を貯留する燃料タンクと、
乗客の臀部を支持する座部を前記前方部に対向させて、前記フロアパネルの上方に設けられるリアシートと、
前記前方部と前記座部と前記隆起部とで囲われる収納空間内に設けられ、前記車両の動力源となる電気モータの駆動電力を蓄積する第1のバッテリを設置するための第1設置部と、
前記収納空間内で前記第1設置部に対し前記車両の車幅方向に横並びに設けられ、前記第1のバッテリによる電力供給を補助する第2のバッテリを設置するための第2設置部と、
を備えるハイブリッド型車両。
【請求項2】
前記車両の前後方向に延び、前記前方部の左右それぞれの側部から上方に突出し、上面で前記リアシートの座部の左右両側部を支持するとともに前記収納空間の車幅方向の側面を規定する左右のサイドメンバを備える、
請求項1記載のハイブリッド型車両。
【請求項3】
前記フロアパネルの下方に設けられ、前記車両の車幅方向に延び、前記フロアパネルを介して前記第1設置部に設置された第1のバッテリを支持するセンタークロスメンバを備える、
請求項1又は2記載のハイブリッド型車両。
【請求項4】
前記第1設置部及び前記第2設置部の前方に設けられ、前記収納空間の前方側を覆うカバーを備える、
請求項1ないし3記載のハイブリッド型車両。
【請求項5】
前記カバーのうち前記第2設置部の前方にあたる部分は、開閉自在となっている、
請求項4記載のハイブリッド型車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−5889(P2011−5889A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148734(P2009−148734)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】