説明

ハイブリッド基板、測定基板、データ基板、測定装置、再生装置、および測定再生装置

【課題】測定対象者や診断者が測定データを安全に保有することができ、かつ、個人情報を保護することのできるハイブリッド基板を提供する。
【解決手段】試料の測定が可能な測定基板2と、データの記録が可能なデータ基板3と、これら両基板を連結している連結領域4とを備え、データ基板3は、測定基板2にて試料を測定した結果を示す測定データを暗号化した暗号化測定データを記録する暗号化データ記録領域3bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の測定、特に物理的または化学的測定を行うための、ハイブリッド基板、ハイブリッド基板を構成する測定基板、データ基板、測定装置、再生装置、および測定再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、試料を測定するための技術が発展し、測定を行う測定装置の開発が進んでいる。以下には、測定装置の一例として、生体試料の測定を行う測定装置について説明する。生体試料とは、例えばDNA、RNA、タンパク質などである。近年、これら生体試料の測定(アッセイ)を迅速に、効率良く、正確にそして低コストで実施するためにさまざまな測定装置が開発されている。
【0003】
このような生体試料を測定するための測定装置の中には、民生のデジタル情報機器を融合させたものがある。特許文献1には、このような民生のデジタル情報機器を融合させた測定装置に用いられる測定器具の一例として、バイオコンパクトディスクと呼ばれているディスクが開示されている。バイオコンパクトディスクでは、コンパクトディスク(CD)やデジタルビデオディスク(DVD)と同様な形状のディスク基板は、測定を行うアッセイ領域と、プロトコル情報を記録した情報記録領域とに分かれている。また、特許文献1には、バイオコンパクトディスクの情報記録領域に予め記録されているプロトコル情報を、読取り装置によって読取りながら、そのプロトコルを用いてアッセイ前からアッセイ後に至るプロセスを制御する装置が提案されている。
【0004】
特許文献1にて開示されたバイオコンパクトディスクの平面図を図14に示す。図14に示すように、バイオコンパクトディスク80は、円周方向に区分されたアッセイセクタ81およびソフトウェアセクタ82を含んでいる。また、バイオコンパクトディスク80は、直径が20〜200mm、厚さが0.5〜3mmである。このバイオコンパクトディスク80は、従来のCD−ROMまたはDVD読取り装置に装填されて回転される。なお、このような読取り装置に装填するため、バイオコンパクトディスク80には、中央穴83が設けられている。読取り装置にて回転を制御することによって、アッセイセクタ81上の適切な部位に試薬および試料を送り出すことができる。回転速度や回転のタイミング制御などのプロトコルは、ソフトウェアセクタ82に予め記録されている。
【0005】
上記のように、従来、CDまたはDVDを利用することにより、コストの低減と回転することで遠心分離とが可能な装置や、バイオコンパクトディスクが提案されている。そのため、これらにより病院等の治療拠点や家庭において、正確に試料のデジタル測定を行うことができる。
【特許文献1】特表2000−515632公報(平成12年11月21日公表)
【特許文献2】特開2003−66003公報(平成15年3月5日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のバイオコンパクトディスク80では、アッセイされた結果である測定データを安全に使用したり、保管したりする方法が開示されていない。従って、例えば、病院等の治療拠点や家庭で測定した後に、測定データをカルテの一部として測定対象者である例えば患者が安心して保有したり、他の治療拠点に持参して診断や治療に生かしたりすることができない。
【0007】
なお、測定データを保有するには、上記従来のバイオコンパクトディスクにおける読み出し専用のソフトウェアセクタ82を、CD−RやCD−RWにおける記録媒体に置き換えて、記録可能な領域である情報セクタとする方法が、容易に考えられる。
【0008】
しかしながら、記録可能な領域(情報セクタ)に測定データを記録した場合、測定対象者や診断者は、バイオコンパクトディスクに搭載されたアッセイ素子(アッセイセクタ81)を一緒に保管、あるいは携帯することになる。すると、アッセイに使用した試薬や病原菌などによる汚染が生じ、二次的な疾病を引き起こす恐れがある。また、測定対象者本人や診断者がバイオコンパクトディスクを安易に廃棄してしまうと、環境汚染の恐れも生じる。また、測定対象者本人ではなく治療拠点において保管する場合でも、測定データだけを必要に応じて取り出せるように保管すべきであり、アッセイ素子(アッセイセクタ81)は別途厳重に保管しなければ上記と同様な問題が生じる。つまり、従来のバイオコンパクトディスクに測定データを記録するだけでは、測定対象者や診断者などへの二次的な感染や、環境汚染等の問題が生じる。
【0009】
また、従来のバイオコンパクトディスクに情報セクタを設けて測定データを記録する場合には、さらに、第3者によって測定データが改竄されたり、あるいは架空のデータを作成されて、情報セクタに記録される危険性がある。そのため、セキュリティー上、大きな問題が生じる。そこで、測定対象者個人の情報を第3者にデータの内容を知られないように、情報を保護する必要がある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、測定対象者や診断者が測定データを安全に保有することができ、かつ、個人情報を保護することのできるハイブリッド基板、測定基板、データ基板、測定装置、再生装置、および測定再生装置を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るハイブリッド基板は、上記課題を解決するために、試料の測定が可能な測定基板と、データの記録が可能なデータ基板と、これら両基板を連結している連結領域とを備え、データ基板は、測定基板にて試料を測定した結果を示す測定データを暗号化した暗号化測定データを記録する暗号化データ記録領域を有することを特徴としている。
【0012】
上記構成によると、試料の測定が可能な測定基板と、データの記録が可能なデータ基板とを有しているので、測定基板にて試料の測定を行い、その測定結果である測定データを暗号化したデータである暗号化測定データを、データ基板上の暗号化データ記録領域に記録することができる。また、測定基板とデータ基板とが連結領域により連結されているので、データ基板に暗号化測定データを記録した後、不要となった測定基板を、保管が必要なデータ基板に対して連結領域にて切り離すことができる。
【0013】
測定基板が試薬や病原菌などが残った基板である場合には、検査機関などで冷凍保存するなど厳重に保管されてもよいし、あるいは所定の廃棄方法によって安全に廃棄してもよい。データ基板を測定基板から切り離すことにより、測定対象者や診断者等のデータ管理者は、二次感染や汚染の心配をすることなく、保管を要するデータ基板のみを、安全に保管することができる。なお、上記の切り離しは、連結領域が設けられているので容易となる。また、切り離しには、例えば適当な分断装置を使用してもよい。
【0014】
また、測定データは暗号化されているので、測定対象者や診断者以外の第3者には、勝手に測定データの内容を読まれることはない。例えば、暗号化に鍵を用いて、鍵を測定対象者や診断者のみが厳重に保有すれば、暗号化測定データを復号できるのは測定対象者本人や診断者のみとなる。つまり、測定対象者や診断者以外の第3者は、測定データを見ることはできないし、鍵を複製することはまずできないので測定データを測定データの内容を知ることはできない。従って、個人情報の保護が可能である。
【0015】
また、本発明に係るハイブリッド基板は、上記構成に加え、ディスク形状であり、上記データ基板の直径が光ディスクの規格径に設定されていてもよい。
【0016】
上記構成によると、測定データが記録されたデータ基板は、光ディスクの規格径に設定されているので、市販の光ディスク再生装置を利用して暗号を復号することのできる手段を備えるだけで、再生可能となり、利便性が一層向上する。
【0017】
本発明に係る測定装置は、上記課題を解決するために、上記ハイブリッド基板を使用して試料の測定を行う測定装置であって、上記測定基板において試料の測定を行う測定手段と、上記測定手段により測定された結果を示すデータを暗号化して暗号化測定データとするデータ暗号化手段と、上記暗号化データ記録領域に暗号化測定データを記録する記録手段と、を備えることを特徴としている。
【0018】
上記構成によれば、測定手段によってハイブリッド基板の測定基板において試料の測定を行い、データ暗号化手段によって測定基板にて試料を測定した結果を示す測定データを暗号化して暗号化測定データとする。そして、記録手段によって暗号化測定データをデータ基板の暗号化データ記録領域に記録することができる。測定データを暗号化することができるので、測定対象者や診断者以外の第3者には、勝手に測定データの内容を読まれることはない。例えば、暗号化に鍵を用いて、鍵を測定対象者や診断者のみが厳重に保有すれば、暗号化測定データを復号できるのは測定対象者本人や診断者のみとなる。つまり、測定対象者や診断者以外の第3者は、測定データを見ることはできないし、鍵を複製することはまずできないので測定データの内容を知ることはできない。従って、個人情報の保護が可能である。なお、鍵は測定対象者や診断者(測定データの利用者)が予め用意してもよいし、測定装置のオペレータ(測定者)が用意したり、測定装置内で生成してもよい。
【0019】
本発明に係る再生装置は、上記課題を解決するために、上記何れかのハイブリッド基板のデータ基板に記録されたデータを再生する装置であって、上記暗号化測定データを再生する再生手段と、再生された暗号化測定データを復号するデータ復号化手段と、を備えることを特徴としている。
【0020】
上記構成によれば、ハイブリッド基板のデータ基板に記録された暗号化測定データを復号化することができる。例えば、暗号化に鍵が用いられており、鍵を測定対象者や診断者のみが厳重に保有していれば、暗号化測定データを復号できるのは測定対象者本人や診断者のみとなる。つまり、測定対象者や診断者以外の第3者は、測定データを見ることはできないし、鍵を複製することはまずできないので測定データを測定データの内容を知ることはできない。従って、個人情報の保護が可能である。測定対象者が、例えば、データ基板を他の治療拠点に持参して、診断者により再生することで、復号化された測定データは、診断や治療に生かしたりすることができる。
【0021】
また、本発明に係る測定再生装置は、上記課題を解決するために、上記測定装置と上記再生装置とを備えていてもよい。
【0022】
上記構成によると、上記再生装置および上記測定装置と同様の作用効果を実現することができる。
【0023】
また、本発明に係るハイブリッド基板は、上記構成に加え、上記測定データの暗号化が対称暗号化方式における共通鍵を用いて行われている場合、上記暗号化データ記録領域は、前記共通鍵を非対称暗号化方式の公開鍵で暗号化した暗号化共通鍵を記録してもよい。
【0024】
上記構成によると、共通鍵で暗号化された暗号化測定データと、共通鍵を非対称暗号化方式の公開鍵で暗号化した暗号化共通鍵とを、データ基板上の暗号化データ記録領域に記録する。
【0025】
共通鍵で測定データを暗号化し、その共通鍵を公開鍵で暗号化しているため、上記ハイブリッド基板を用いることで、暗号化と復号化が高速で行うことができる。加えて、公開鍵とペアの秘密鍵を有している、例えば測定対象者や診断者(データ利用者)のみが測定データを復号することができる。そのため、第3者は測定データを復号できず測定データの漏洩を防止できる。
【0026】
例えば、測定する試料が生体試料である場合を例に、具体的に説明する。一般に生体試料(DNAやたんぱく質など)の情報量は非常に多く、容量の多い測定データを非対称暗号化方式で暗号化・復号化するには時間がかかる。そこで、高速の対称暗号化方式によって測定データを暗号化・復号化する。しかし、対照暗号化方式は、共通鍵をデータ利用者本人だけでなく測定者も持ってしまうため、測定データの漏洩など個人情報が保護できない。そこで、共通鍵をさらに非対称暗号化方式を用いて暗号化・復号化すれば、復号化に必要な秘密鍵は測定対象者や診断者(データ利用者)だけ持つことになる。よって、第3者は復号できず測定データの漏洩を防止することができる。
【0027】
本発明の測定装置は、上記ハイブリッド基板を使用して試料の測定を行う測定装置であって、上記測定基板において試料の測定を行う測定手段と、対称暗号化方式の共通鍵を用いて測定データを暗号化して暗号化測定データとするデータ暗号化手段と、非対称暗号化方式の公開鍵を用いて前記共通鍵を暗号化して暗号化共通鍵とする共通鍵暗号化手段と、前記暗号化データ記録領域に暗号化測定データと暗号化共通鍵とを上記暗号化データ記録領域に記録する記録手段と、を備えていてもよい。
【0028】
上記構成によると、データ暗号化手段が共通鍵で測定データを暗号化し、共通鍵暗号化手段が共通鍵を公開鍵で暗号化する。そのため、上記測定装置を用いることで、暗号化を高速で行うことができる。加えて、公開鍵とペアの秘密鍵を有している、例えば測定対象者や診断者(データ利用者)のみが、測定データを復号することができる。そのため、第3者は測定データを復号できず測定データの漏洩を防止できる。なお、共通鍵は、測定対象者や診断者が予め用意してもよいし、測定装置のオペレータが用意したり、測定装置内で生成してもよい。公開鍵は、測定対象者や診断者が予め用意し、測定装置のオペレータに渡したほうがよい。
【0029】
また、本発明の測定装置は、上記構成に加え、上記共通鍵を生成する鍵生成手段を有していてもよい。
【0030】
上記構成によると、より安全な解読されない共通鍵を、用意に作成することができる。
【0031】
本発明の再生装置は、上記ハイブリッド基板のデータ基板に記録されたデータを再生する装置であって、上記暗号化測定データと上記暗号化共通鍵とを再生する再生手段と、非対称暗号化方式における秘密鍵を用いて上記暗号化共通鍵を復号する共通鍵復号化手段と、上記復号化された共通鍵を用いて暗号化測定データを復号するデータ復号手段と、を備えていてもよい。
【0032】
上記構成によると、共通鍵復号化手段が非対称暗号化方式における秘密鍵を用いて暗号化共通鍵を復号し、データ復号手段が復号化された共通鍵により暗号化測定データを復号する。そのため、上記再生装置を用いることで、暗号化測定データの復号化を高速で行うことができる。さらに、公開鍵とペアの秘密鍵を有している、例えば測定対象者や診断者(データ利用者)のみが、測定データを復号することができる。そのため、第3者は測定データを復号できず測定データの漏洩を防止できる。なお、共通鍵は、測定対象者や診断者が予め用意してもよいし、測定装置のオペレータが用意したり、測定装置内で生成してもよい。
【0033】
また、本発明に係る測定再生装置は、上記課題を解決するために、上記測定装置と上記再生装置とを備えていてもよい。
【0034】
上記構成によると、上記再生装置および上記測定装置と同様の作用効果を実現することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係るハイブリッド基板は、上記のように、試料の測定が可能な測定基板と、データの記録が可能なデータ基板と、これら両基板を連結している連結領域とを備え、前記データ基板は、上記測定基板にて試料を測定した結果を示す測定データを暗号化した暗号化測定データを記録する暗号化データ記録領域を有している。
【0036】
上記構成によると、試料の測定が可能な測定基板と、データの記録が可能なデータ基板とを有しているので、測定基板にて試料の測定を行い、その測定結果である測定データを暗号化したデータである暗号化測定データを、データ基板上の暗号化データ記録領域に記録することができる。また、測定基板とデータ基板とが連結領域により連結されているので、データ基板に暗号化測定データを記録した後、不要となった測定基板を、保管が必要なデータ基板に対して連結領域にて切り離すことができる。
【0037】
測定基板が試薬や病原菌などが残った基板である場合には、検査機関などで冷凍保存するなど厳重に保管されてもよいし、あるいは所定の廃棄方法によって安全に廃棄してもよい。データ基板を測定基板から切り離すことにより、測定対象者や診断者等のデータ管理者は、二次感染や汚染の心配をすることなく、保管を要するデータ基板のみを、安全に保管することができる。なお、上記の切り離しは、連結領域が設けられているので容易となる。また、切り離しには、例えば適当な分断装置を使用してもよい。
【0038】
また、測定データは暗号化されているので、測定対象者や診断者以外の第3者には、勝手に測定データの内容を読まれることはない。例えば、暗号化に鍵を用いて、鍵を測定対象者や診断者のみが厳重に保有すれば、暗号化測定データを復号できるのは測定対象者本人や診断者のみとなる。つまり、測定対象者や診断者以外の第3者は、測定データを見ることはできないし、鍵を複製することはまずできないので測定データを測定データの内容を知ることはできない。従って、個人情報の保護が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について、図1〜図9に基づいて以下に説明する。
【0040】
(ハイブリッド基板の構成)
本発明に係るハイブリッド基板の形状は、例えば、プレート形状、ディスク形状、円筒形状など、どのようなものであってもよいが、本実施形態ではディスク形状のハイブリッド基板(以下、測定ディスクと略す)を例に挙げて説明する。測定ディスクは、回転することによって、ディスク上の複数の測定セルや測定流路などを高速で検索しながら測定することが可能なため、今後の普及が期待される基板である。
【0041】
図1は本発明の実施の形態における測定ディスク1を示す平面図である。図1に示すように、測定ディスク1は、測定基板2、データ基板3および連結領域4を備えている。連結領域4は細い幅の円環状に形成されており、連結領域4に対して径方向の外側領域は、測定基板2となり、内側領域はデータ基板3となっている。
【0042】
連結領域4は、連結部4aと切欠き部4bとからなる。連結部4aは、測定基板2とデータ基板3とを連結するものであり、連結領域4の円周方向において複数個が分散して形成されている。もちろん、連結部4aの個数は限定されない。これら連結部4aと隣の連結部4aとの間は、切欠き部4b、即ち空間となっている。したがって、測定ディスク1は、切欠き部4bによって測定基板2とデータ基板3とに分離され、連結部4aによって連結されている。連結領域4の構造は、上記したものに限らず、例えば、切り欠き部4bが無く、連結部4aを円周方向に連続して形成し、連結部4aの厚みを測定基板2やデータ基板3の基板厚みよりも薄くすることで、測定基板2とデータ基板3とを切り離しやすくした構造としてもよい。
【0043】
連結部4aは、カッターなどの刃物で容易に切断でき、この切断により、図2に示すように、測定ディスク1を測定基板2とデータ基板3とに切り離すことができる。なお、測定基板2とデータ基板3との切り離しには専用の切断装置を使用することもできる。この場合、連結領域4の構造は上記のものに限定されず、上記切断装置によって切断可能な領域として形成されていればよい。
【0044】
データ基板3には、データを記録可能な記録領域3aが設けられており、この領域内に、後述する暗号化測定データが記録できる暗号化データ記録領域3bが設けられている。記録領域3aは、通常の光記媒体(例えば多層膜構造もの)が成膜され、その他にトラッキング用のグルーブや番地情報などが例えば凹凸形状にて記録されている。記録媒体の材料としては、CD−RやDVD−Rなどに使われている色素材料や、CD−RWやDVD−RWなどに使われている相変化材料などが使用可能である。トラッキングのための凹凸形状として、グルーブ形状を使うことができ、このほかに例えばウォブルピット形状を使用することができる。また、番地情報など消去不可能な情報は、凹凸のピット形状で形成したり、あるいは前記凹凸のグルーブをウォブルさせて形成する。たとえばCDやDVDは前者の例であり、CD−RやDVD−Rは後者の例である。
【0045】
測定基板2は、試料の測定が可能な測定領域2aを備えている。本実施形態では、測定領域2aには、測定用セルが設けられているものとして説明するが、測定領域2aでは、試料の測定が可能になっていれば他のものが設けられていてもよい。測定用セルの種類には、例えば電気泳動やクロマトグラフィーを行うための流路が設けられたものや、DNAハイブリダイゼーションを行うマイクロセルなど色々なものがあるが、限定はされない。本実施形態では、測定用セルとして、マイクロチャネル又はマイクロキャピラリと呼ばれる泳動路5eを流路として用いた電気泳動チップである測定チップ5xを、測定領域2aに設けた例を挙げて説明する。また、本実施形態では、測定領域2aに、測定チップ5xが複数設けられているが、設けられる個数についての限定は無い。マイクロキャピラリを用いた電気泳動チップを使用した電気泳動については後述する。
【0046】
電気泳動チップでは、例えば蛍光分子が結合したDNAやたんぱく質が電気泳動され、励起光を照射することによって泳動の速度を検出し、その質量や電荷を分析することができる。測定基板2で測定された結果を示す測定データは、後述するように暗号化され、上述のデータ基板3の記録領域3a内の暗号化データ記録領域3bに記録される。
【0047】
暗号化された測定データ(暗号化測定データ)がデータ基板3の暗号化測定領域に記録された後、連結領域4にて切断することで、測定基板2とデータ基板3とは切り離される。切断後、測定基板2は試薬や病原菌などが残った基板である場合もあるので、検査機関などで冷凍保存するなど厳重に保管されるのが好ましい。データ基板3には測定データが記録されており、例えば患者である測定対象者や診断者(データ管理者)が保有して測定データを利用してもよい。データ基板3は測定基板2から切り離されているため、測定対象者や診断者は、試薬や病原菌の危険にさらされることが無く、安心してデータ基板3を保有することができる。
【0048】
ここで、悪意のある第3者が、データ基板から測定データを盗もうとしたとする。例えば、測定データが個人のDNAやたんぱく質などの生体に関わる情報であると、個人のプライバシー情報の流出となってしまう。しかしながら、データ基板3に記録された測定データは暗号化されているため、通常は第3者が読み出すことは困難である。そのため、たとえ測定データが盗まれても、個人のプライバシーは保護される。
【0049】
暗号化のための鍵は、測定対象者本人や診断者などのデータ利用者と、測定を行う測定者(オペレータ)等で共有するようになっていればよい。このとき、暗号化のための鍵は、データ利用者や測定者が用意するのがよい。あるいは、測定ディスク1を用いて試料の測定を行う測定再生装置13内に鍵生成回路を備えておいて、例えば測定が完了すると毎回乱数を発生させて鍵を生成してもよい。測定データを暗号化した後は、データ利用者のみが鍵を持ち、その後の診察などで測定データを復号する。
【0050】
なお、本実施形態の測定ディスク1は、上記構成加えて、測定基板2に、測定ディスク毎の固有コード93が描画されていてもよい。固有コード93を目視できるように、例えばアルファベットと数字の組み合わせを、インクによってプリントしてもよい。本実施形態では、図1に示すように、固有コード93として、「FC34P086」を、測定ディスク1に、インクによってプリントしてある。あるいは、固有コード93を、測定ディスク1のディスク基板の成型時に、エンボス加工をすることによって作成してもよい。
【0051】
測定領域2aの測定チップ5xにおいて試料の測定が終了したら、固有コードである「FC34P086」を、たとえば測定者が目視で確認し、測定再生装置13の入力部(例えばキーボード)から「FC34P086」を入力する。入力された固有コードが測定データと共にデータ基板3の記録領域3aに記録される。
【0052】
測定基板2とデータ基板3とが切り離された後、一方のデータ基板3に記録された固有コードを読み出せば、他方の測定基板2に描画された固有コード93と照合することができる。このように、固有コードを使用すると、測定基板2とデータ基板3との照合を容易に行うことができる。
【0053】
さらに固有コード93の代わりに、以下に示すような識別子を使用してもよい。この識別子は、図1に示すように、連結領域4を挟んだ測定基板2とデータ基板3とに跨った領域4cに、目視によって照合可能なようにプリントされる。この領域4cを拡大した図を図3に示す。例として、図3では、上記固有コード「FC34P086」の代わりに、識別子として、バーコード4dが用いられている。バーコードを用いる理由は、バーコードを真ん中で切断した後に、切断されたバー同士を合わせることで、目視で確認しやすい識別子だからである。もちろん、識別子は、バーコードに限定されない。
【0054】
まず、連結部4aによって、測定基板2とデータ基板3とが連結されている状態でバーコード4dを測定基板2とデータ基板3とに跨るように、プリントする。図3に示すように、バーコード4dを形成するそれぞれのバーが、バーの長手方向にて、測定基板2とデータ基板3とを跨ぐようにする。試料の測定が終了し、測定データがデータ基板3に記録された後に、この測定基板2とデータ基板3とを切り離すと、バーコード4dは、連結部4aと切欠き部4bとによってほぼ真ん中で切断される。測定基板2とデータ基板3とを切り離した後、測定基板2とデータ基板3とを照合したい場合は、互いに元のようにバーコードが合わせ、目視によって同一のバーコードであるかどうかを確認することで、照合することができる。このほか、識別子としてアルファベットや数字を、測定基板2とデータ基板3とに跨って記録してもよい。また、これに限らず固有の模様を用いても良い。跨って記録するには、例えばインクジェットなどによってプリントを行えばよい。識別子をプリントすることにより、測定ディスク1の1枚1枚に固有コードを安価で高速に描画することができる。
【0055】
なお、測定ディスク1の全体の直径(測定基板2を含む直径)を、コンパクトディスクやデジタルビデオディスクの規格に準拠したサイズである12cmとし、データ基板3の直径(測定基板2から切り離された後の直径)を同規格の小径サイズである8cmとしておけば、測定データが記録された小径サイズの保存ディスク(データ基板3)を市販のCD−ROM装置やDVD−ROM装置などにて再生でき、利便性が一層向上する。また、保存ディスク(データ基板3)はサイズが小さいため、携帯や保管などにも適している。
【0056】
上記の測定ディスク1を使用した場合、後述する試料の測定が専門の検査機関だけでなく広く一般家庭に普及すれば、たとえば家庭にて測定対象者である測定対象者本人やその介護者自らが測定チップ5xの数分定期的に測定し、定期測定の結果を示すデータが記録された小径ディスクのみを病院に持参して、診断を受けることが可能となる。そのため、測定対象者や介護者の肉体的、心理的負担を大幅に軽減できる。
【0057】
ここで、測定ディスク1の断面構造について図4を用いて説明する。図4に示すように、測定ディスク1の構造は、測定基板2およびデータ基板3どちらも、基本的にプラスチックの基板41にプラスチックのカバー層42を接着剤等で張り合わせた構造である。なお、接着剤の代わりにプラスチック同士の熱溶着によって接着しても良い。例えば、基板41の厚みは1.2mmあるいは0.6mm、カバー層42の厚みは0.1mmである。基板41には、光ビームのフォーカスサーボやトラッキングサーボを行うために、反射光を光ピックアップ7に返すための反射膜44が成膜されている。また、基板41には、記録領域3aにおいて、反射膜44と同一面内に記録媒体60が成膜されている。また、基板41には後述する泳動路5eと液溜5a〜液溜5dとが成型加工されている。この、泳動路5eと液溜5d(どの液溜であってもよいが、ここでは液溜dを用いて説明する)とが形成されている基板41における測定領域2aの断面の斜視図を、図5に示す。なお、同図では、説明の便宜上、測定チップ5xの全体は図示せず、その一部として、泳動路5eと液溜5dとの断面を示している。
【0058】
図5に示すように、基板41には、泳動路5eと液溜5d以外に、泳動路5eにおける測定後のバンドを光ビームaで検出するために、光ビームaを誘引走査するための案内溝(グルーブ)43,43,・・・が形成されている。案内溝43の深さおよび幅は、例えば光ビームaの波長が650nm、光ピックアップ(記録手段、再生手段)7における対物レンズの開口数が0.6の場合、幅が300〜800nm、深さが30〜70nmである。
【0059】
(測定再生装置の構成)
次に、本発明に係る測定再生装置について説明する。本実施形態では、測定ディスク1を用いた測定と測定データの暗号化と、データ基板3に記録された暗号化測定データの再生とを行う測定再生装置について説明するが、測定ディスク1を用いた測定と測定データの暗号化とを行う測定装置と、データ基板3に記録された暗号化測定データを読み出す再生装置とが別々に設けられていてもかまわない。
【0060】
本実施例の測定再生装置13は、ディスク形状の基板を使用する装置であるが、例えば、基板がプレート形状、あるいは円筒形状であれば、それに適した装置構成となる。
【0061】
図4は、本実施形態の測定再生装置13の要部を示すブロック図である。測定再生装置13は、光ピックアップ(記録手段、再生手段、測定手段)7、記録再生回路54、サーボ回路55、コントローラ56、電気泳動電源供給回路59、コネクタ9を備えている。
【0062】
光ピックアップ7は、光ピックアップ要部51と対物レンズ52と対物レンズアクチュエータ53とを備えている。光ピックアップ要部51は、図示しない半導体レーザ、コリメートレンズ、ビームスプリッタおよびフォトディテクタなど、半導体レーザから出射されたレーザビームを、対物レンズ52を介して測定ディスク1に照射するとともに、測定ディスク1からの反射光を、対物レンズ52を介して受光し、再生信号を得るための周知の構成を備えている。
【0063】
光ピックアップ要部51の半導体レーザから出射された光ビームaは、光ピックアップ7内の対物レンズ52によって測定ディスク1に集光される。光ビームaが測定ディスク1において測定基板2の測定領域2aに集光した場合は、集光スポットが反射膜44に焦点を結ぶようにフォーカスサーボが行われる。これにより、上述のトラッキング用の案内溝(グルーブ)に導かれて光ビームaが泳動路5e上の所望の検出位置にアクセスし、走査される。また、反射膜44と泳動路5eの底面がほぼ同一平面であるので、泳動路5eにも焦点を結ぶことができ、高感度の測定検出が可能である。
【0064】
測定ディスク1の記録領域3aにおいては、反射膜44に代わり記録媒体60が成膜されており、光ビームaは記録媒体60にも焦点を結ぶ。そのため、記録領域3a内の暗号化データ記録領域3bに、暗号化した測定データの記録が可能である。この記録領域3aにおいても、上記案内溝と同様な案内溝(図示せず)が形成されている。この案内溝にトラッキングを行いながら、記録再生をする技術は、従来の光ディスクの技術の範疇であり、よく知られているため、説明は省略する。
【0065】
測定ディスク1からの反射光は、光ピックアップ要部51のフォトディテクタにて電気信号に変換される。このフォトディテクタは、よく知られているサーボ用の分割ディテクタと情報読取り用のディテクタとを含んでいる。サーボ用の分割ディステクタの出力信号bはサーボ回路55に送られ、フォーカスサーボやトラッキングサーボを行うために、誤差信号hが対物レンズアクチュエータ53にフィードバックされる。情報読取り用のディテクタの出力信号jは、光ビームaが測定基板2の測定領域2aを走査しているときは電気泳動のバンドの検出光量を変換した電気信号となり、記録再生回路54へ送られて記憶される。また、光ビームaがデータ基板3の記録領域3aを走査している時は、暗号化された測定データ(暗号化測定データ)を読み出した信号となり、記録再生回路54に入力されて、復号化された測定データeがコントローラ56へ送られる。なお、測定データの記録時は、以下に説明するように、記録再生回路54において測定データの暗号化が行われ、記録信号cとして光ピックアップ要部51に送られる。そして、内蔵された半導体レーザから記録レーザパルスがデータ基板3の記録領域3aの暗号化データ記録領域3bに照射され、暗号化データの記録が行われる。
【0066】
コントローラ56は、以下の通り各種の制御を行う。まず、電気泳動電源供給回路59に命令信号fを出力して、電源電圧iをコネクタ9に送り出し、図1に示したように液溜5a〜5dに電源電圧iを供給し、以下で説明する電気泳動のプロセスの制御を行う。また、コントローラ56は、記録再生回路54へ命令信号eを送り、測定基板2からの検出光の測定、測定データの暗号化・復号化、データ基板3への記録・再生を行う。また、暗号化された測定データと一緒に各種管理情報を記録して、これを再生して動作の制御を行う。たとえば、管理情報に未使用の測定チップ5xの番号を記録し、これを読み出して出力する。さらに、管理情報に従って、未使用の測定チップ5xを有効とし、測定を開始する制御手段も兼ねる。また、サーボ回路55へ命令信号gを送り、データ記録領域における適切なトラックへ光ビームaをアクセスさせる。また、測定基板2にデータ基板3が接続されたままであるか、あるいは切り離されてデータ基板3のみであるかを、光ピックアップ7への反射光量信号に基づいて事前に判定する手段も兼ねる。
【0067】
測定データの暗号化・復号化およびデータ基板3への記録・再生は、記録再生回路54にて行われる。図6は、記録再生回路54をさらに詳細に説明する図である。なお、記録再生回路54は、ハードウェアで構成する場合と、CPUやメモリを用いてソフトウェアで構成する場合と、両方が混在する場合があるが、いずれも機能的には同一であるため、本実施形態ではハードウェアで構成する例を示す。また、その他の回路でもソフトウェアや混在の方式を使用してもよい。
【0068】
記録再生回路54は、図6に示すように、記録ブロック21、再生ブロック22、測定回路(測定手段)23、記憶回路24を備えている。
【0069】
初めに、電気泳動における蛍光の測定時には、光ピックアップ7が測定基板2の測定領域2aに移動し、電気泳動のバンドの蛍光量を検出する。光ピックアップ7から送られた検出光量j1は、記録再生回路54における測定回路23において測定される。測定回路23は、たとえば8ビットのA/D変換器であり、コントローラからの指令によって、測定ディスクの回転中に泳動路を横切るタイミングで検出光量j1をサンプリングする。測定データaaは記憶回路24に一時的に記憶される。
【0070】
次に、測定データの記録時は、まず記憶回路24の測定データabを記録ブロック21に送る。記録ブロック21は、測定データ暗号化回路(データ暗号化手段)21aおよび記録回路(記録手段)21cを含んでいる。測定データ暗号化回路21aでは、暗号化のための鍵acを用いて、測定データabを暗号化する。ここで、「検出光量j1」はアナログ値、「測定データaa」はデジタル値、「測定データab」は記憶されていたデジタル値であるため、符号を使い分けている。例えば、暗号化の方式として、対称暗号化方式(共通鍵暗号化方式とも呼ぶ)を使用すると、測定データを高速で暗号化できる。対称暗号化方式における鍵は、共通鍵とも呼ばれるため、以後は暗号化のための鍵acを共通鍵acと呼ぶことにする。共通鍵acは、たとえば測定対象者本人や診断者が用意し、測定者(測定再生装置13のオペレータ)によって入力される。なお、測定者によって入力する代わりに、測定再生装置13内に図示しない共通鍵生成回路を備えてもよい。共通鍵生成回路では、乱数を発生させて共通鍵acを生成する。この場合、暗号化後は、共通鍵acは測定対象者本人や診断者に渡され、後述する暗号化測定データの復号時に使用する。
【0071】
測定データ暗号化回路21aにより暗号化された測定データである暗号化測定データadは、記録回路21cに送られる。記録回路21cでは、この暗号化測定データadを記録信号cとして光ピックアップ7に出力する。記録信号cに基づいて、光ピックアップ7から光ビームaが、データ基板3の記録領域3aの暗号化データ記録領域3bに照射され、記録が行われる。これで試料の測定とデータの記録は終了する。この後、上述のように測定基板2とデータ基板3は切り離される。
【0072】
次に、暗号化測定データの復号について説明する。データ基板3の記録領域3aの暗号化データ記録領域3bに記録された暗号化測定データは、光ピックアップ7によって読み出され、読み出した信号j2が、記録再生回路54の再生ブロック22に送られる。再生ブロック22には、再生回路(再生手段)22a、測定データ復号回路(データ復号化手段)22cが含まれる。再生回路22aで再生された暗号化測定データajは、測定データ復号回路22cにおいて共通鍵acを用いて復号され、測定データが得られる。なお、この共通鍵acは上述したように、測定対象者本人や診断者が所有しており、例えば、測定者によって入力される。
【0073】
上記のように、測定データは共通鍵acによって暗号化してデータ基板に記録される。共通鍵acは、測定対象者本人や診断者のみが持っておいたほうがよい。復号化時は、測定対象者本人や診断者がこの共通鍵acを使用して、測定データに復号する。したがって、データ基板3への記録は測定者でもできるが、読取りは測定対象者本人や診断者しかできなくなる。つまり測定データは暗号化されており、測定対象者本人や診断者しか見ることができないため、測定対象者本人の個人情報を保護することができる。さらに、測定基板2は、例えば、切り離して廃棄するか、検査機関で厳重に保管する。したがって、測定対象者本人や診断者は、感染や環境汚染の心配のない安全なデータ基板だけを保有し、必要に応じて測定データを使用すればよい。
【0074】
なお、上記の記録再生回路54は、測定回路23、記憶回路24および記録ブロック21からなる測定および記録を行う部材と、再生ブロック22からなる再生を行う部材と、の両方を備えた例を示した。しかし、測定再生装置13を、測定およびデータの記録を行う測定装置と、再生のみを行う再生装置とに分けて使用する場合もある。つまり、検査機関で測定者が測定装置において測定対象者に関する試料の測定を行ってデータの記録を行い、データ基板3を測定基板2から切り離した後に、測定対象者本人に渡す。そして、測定対象者はデータ基板3だけを持参して、別の診察機関の再生装置においてデータを復号し、診断を受けることもできる。例えば、測定対象者である患者は専門の検査機関で検査を行い、データ基板3のみをかかりつけの個人医院等に持ち込み、診察を受けることができる。この場合は、測定装置には上記再生ブロック22は不要であり、上記測定回路23、記憶回路24、および記録ブロック21を備えればよい。逆に、再生装置には上記測定回路23、記憶回路24、および記録ブロック21は不要であり、上記再生ブロック22を備えればよい。
【0075】
なお、上記測定では、測定ディスク1は、ターンテーブルに設置されて回転される。この、ターンテーブル11について説明する。図7は、測定再生装置13における、測定ディスク1を装着した状態のターンテーブル11の要部を示す斜視図である。測定ディスク1は、ターンテーブル11に載せられ、コネクタ9,9,・・・によってターンテーブル11に固定される。コネクタ9は、便宜上3つのみ示しているものの、実際には測定チップ5xと同数の搭載されている。コネクタ9は、測定ディスク1の最外周部に引き出して配線された電極6a〜6dに接続され、電源コード10,10,・・・を介して電源電圧iが供給される。ターンテーブル11はスピンドルモータ12によって所定の回転速度で回転される。なお、再生においては、データ基板3のみがターンテーブル11に配置されることになる。
【0076】
(測定再生装置における測定および記録)
測定再生装置13が行う測定および記録の動作について、図8のフローチャートを用いて説明する。以下の動作はコントローラ56の制御の下に行われる。
【0077】
測定を開始すると(ステップ1、以後S1のように称する)、まず測定基板2へ光ピックアップ7を移動する(S2)。測定基板2が切り離されているか、あるいは切り離されずに存在するかを確認する(S3)。データ基板3のみであること、つまり、測定基板2が切り離されていることを確認すると(S3においてNO)、動作は終了する(S9)。このとき、測定不可の表示を表示部(図示せず)にしてもよい。測定基板2が存在する場合には(S3においてYES)、試料として、たとえばDNAの測定サンプルの注入指示を、表示部(図示せず)に表示する(S4)。なお、注入指示は測定者に対して行うものであり、例えば注入が自動化されている場合には、表示しなくてもよい。試料(測定サンプル)に対して電気泳動を行う(S5)。このとき、電気泳動電源供給回路59から所望の電源電圧iがコネクタ9を介して測定チップ5xに供給され、電気泳動が行われる。
【0078】
電気泳動が終了すると、光ピックアップ7によって泳動パターンのバンドからの蛍光を検出する(S6)。そして、電気泳動の測定結果を示す測定データを記憶し(S7)、測定を終了する(S8)。その後、測定データをデータ基板3に記録する。
【0079】
次に測定データの記録動作(S10)について説明する。データ記録を開始すると(S21)、まず、共通鍵を入力する(S22)。共通鍵は上述の通り、測定再生装置13内で生成してもよい。共通鍵を使用して測定データを暗号化し暗号化測定データとする(S23)。データ基板3の記録領域3aの暗号化データ記録領域3bに光ピックアップ7を移動し(S24)、暗号化測定データを記録する(S25)。測定再生装置13に切断装置が備えられていれば、測定基板とデータ基板を切り離して(S26)、データ記録を終了する(S27)。切断装置がなければS26は必要なく、S27でデータ記録を終了した後に、測定者がカッター等で切り離してもよい。
【0080】
(測定再生装置における再生)
次に、測定再生装置13がデータ基板3から測定データを再生する動作を、図9のフローチャートを用いて説明する。以下の動作はコントローラ56の制御の下で行われる。
【0081】
データ再生を開始すると(S31)、まずデータ基板3を再生における所定位置に装填する(S32)。その後、記録領域3aへ光ピックアップ7を移動する(S33)。そして記録領域3aの暗号化データ記録領域3bに記録された暗号化測定データを再生する(S34)。そして、共通鍵を用いて暗号化測定データを復号し(S35)、データ再生を終了する(S36)。
【0082】
以上によれば、測定基板2の測定領域2aにおいて試料の測定を行い、データ暗号化手段である測定データ暗号化回路21aによって、測定データを暗号化方式における鍵(共通鍵)を用いて暗号化して暗号化測定データとする。そして、記録手段である光ピックアップ7および記録回路21cによって暗号化測定データをデータ基板3の記録領域3aの暗号化データ記録領域3bに記録する。その後、測定基板2とデータ基板3とは連結領域4において切断される。測定基板2は試薬や病原菌などが残った基板である場合もあり、検査機関などで冷凍保存するなど厳重に保管されるのがよい。あるいは安全な方法で廃棄してもよい。データ基板3は暗号化された測定データが記録されており、一般の測定対象者や診断者が保有するが、データのみ記録された基板であるため、2次感染などの危険性がなくなる。なお、共通鍵は一般の測定対象者や診断者(測定データの利用者)が予め用意してもよいし、測定装置のオペレータ(測定者)が用意したり、測定再生装置13内で生成してもよい。
【0083】
次に、再生手段である光ピックアップ7および再生回路22aによって記録領域3aの暗号化データ記録領域3bの暗号化測定データを再生し、データ復号化手段である測定データ復号回路22cにおいて鍵を用いて暗号化測定データを復号する。なお、前記鍵(共通鍵)は上述の通り、一般の測定対象者や診断者が予め用意してもよいし、測定再生装置13内に鍵を生成する鍵生成手段を備えていてもよい。
【0084】
鍵は、一般の測定対象者や診断者のみが厳重に保有する。このため、暗号化測定データを測定データに復号できるのは一般の測定対象者本人や診断者のみとなる。従って、測定者や悪意のある第3者は、測定データを見ることはできないし、もちろん複製しても見ることはできない。つまり個人情報の保護が可能である。
【0085】
以上には、本発明に係るハイブリッド基板、測定再生装置の一例として、測定ディスク1とそれを用いる測定再生装置13を例に挙げて、その主要部と暗号化・復号化方法について説明した。上記測定ディスク1を用いた電気泳動の方法について、以下にその概略を説明する。
【0086】
(測定チップの構造)
図1に示すように、測定基板2の測定領域2aは、測定ディスク1の中心から放射状に配置された複数の測定チップ5x,5x,・・・を備えている。本実施形態では、8つの測定チップ5xが測定基板2に搭載されている。図示しないが、各測定チップ5xには番号が割り当てられ、この番号を参照して測定チップ5xの使用済みのものと未使用のものとを区別できるようになっている。
【0087】
本実施形態では、測定チップ5xの一例として、測定チップ5xが電気泳動チップである場合を説明する。図1に示すように、測定チップ5xは、液溜5a〜5dと泳動路5eとを備えている。この電気泳動チップの構造は、一般に使われている構造であり、例えば特許文献2に測定例と共に開示されている。
【0088】
泳動路5eは、溝状に形成され、測定ディスク1の径方向に延びる第1泳動路とこれに直交する方向に延びる第2泳動路とからなり、これら2つの経路が十字形をなすように配置されている。液溜5a〜5dは、泳動路5eの4つの端部に泳動路5eと連通するようにそれぞれ1つ配置されている。
【0089】
泳動路5eの幅および深さは数μm〜数百μmであり、液溜5a〜5dの直径は数百μm〜数mmである。このように細い泳動路5eは一般にマイクロキャピラリと呼ばれている。泳動路5eは、上述したようにカバー層によって密閉されている。一方、液溜5a〜5dは、バッファ溶液やサンプル溶液が注入されるため、測定ディスク1の表面に露出している。
【0090】
また、本実施形態では、液溜5a〜5dに接続された電極(電源接続配線)6a〜6dが記録領域の最外周部(測定ディスク1の最外周部)に引き出して形成されている。それら電極端部に上記測定再生装置13からコネクタ9を介して電気泳動用の電源が供給される。具体的には、液溜5aに電極6a、液溜5bに電極6b、液溜5cに電極6c、液溜5dに電極6dがそれぞれ接続されている。
【0091】
ここで、図5に示すように、泳動路5eの下部には金属の反射膜44を成膜しない。なぜならば、電気泳動のための電界が金属の反射膜44によって生じにくくなるからである。なお、金属を使わない反射膜の場合はこの限りではない。この反射膜44の有無は、以下の通り、測定基板2の有無の判断として利用できる。反射光は、反射膜44によって反射されれば強く、反射されなければ弱くなる。したがって、反射膜44がある案内溝43の領域と、反射膜44が無い泳動路5eの領域とには、反射光の相対的な差が生じる。よって反射光を上記記録再生回路54にて検出すれば、測定基板2の有無を知ることができる。つまり、測定ディスク1において、測定基板2が存在する場合には反射膜44の有無によって高いレベルの反射光量と低いレベルの反射光とが検出され、測定基板2が切り離されていて存在せずデータ基板3のみとなっている場合には、低いレベルの反射光量のみが検出されることにより、測定基板2の有無を判断できる。なお、上記に限らず、例えば、データ基板3の記録領域3aに、測定基板2の有無の情報を記録しておけば、測定基板2の有無情報を読み出すことによって、測定基板2の有無を知ることもできる。
【0092】
以上の通り、測定チップ5xのすべてを使用した後に切り離された測定ディスク1であるか、あるいは未使用の測定チップ5xが残っている測定ディスク1であるかを判別することができる。これにより、測定再生装置13が、測定チップ5xを使い切った測定ディスク1に誤って測定操作を行うこと、あるいは測定が未終了の測定ディスク1に誤って測定操作を拒否することなどの誤動作を防止することができる。
【0093】
なお、本実施の形態では、測定基板2が有する測定チップ5xとして電気泳動チップの例を用いているが、これに限らず測定チップ5xとしては、その他に例えば、インキュベーションや、カラムクロマトグラフィーなどの他のチップが用いられてもかまわない。
【0094】
(測定チップにおける電気泳動)
測定チップ5xにおける測定のプロセスを図1および図7を用いて説明する。初めに、バッファ溶液を気泡が入らないように図1に示す液溜5a〜5dに注入し、その後サンプル溶液(測定を行う試料を溶解した溶液)を液溜5aに注入する。なおバッファ溶液やサンプル溶液の注入は測定者が行ってもよいし、自動化されており、コントローラ56による制御の下で行ってもよい。そして、図7に示す電源コード10およびコネクタ9から電極6aに+電圧電源(数十〜数百ボルト)を接続し、電極6cをグランドに接続する。この時、電極6bおよび電極6dは開放しておく。これにより、液溜5aに+電圧(数十〜数百ボルト)が印加され、液溜5cにゼロボルトが印加され、注入されたサンプル(試料、たとえばDNA)は、泳動路5e(マイクロキャピラリ)の中を液溜5aから液溜5cに向かって泳動する。
【0095】
次に、サンプル溶液に含まれるサンプルが泳動路5eにおける十文字の交点に到達したら、電極6bを+電圧電源(数十〜数キロボルト)に接続し、電極6dをグランドに接続する。また、電極6a及び電極6cは開放する。従って、電気泳動用の電極を、電極6a及び電極6cから、電極6b及び電極6dに切り替えることになる。これにより、液溜5bに+電圧(数十〜数キロボルト)が印加され、液溜5dにゼロボルトが印加され、注入されたサンプルは泳動路5eの中を液溜5bから液溜5dに向かって泳動する。このようなマイクロキャピラリを用いた電気泳動測定の原理は良く知られているため、詳細な説明は省略する。なお、電圧の印加はコントローラ56による制御の下で行われるものとする。
【0096】
〔実施の形態2〕
本発明の測定記録装置に関する他の実施形態について、図10〜図12に基づいて以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施の形態1にて説明した構成と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0097】
本実施形態の測定記録装置は、実施の形態1における測定記録装置と比較して、記録再生回路の構成が異なっている。本実施形態の図10の記録再生回路54’は、図6に示した記録再生回路54の別の例である。なお、本実施形態では、実施の形態1と同様に、記録再生回路54’をハードウェアで構成する例を示すが、ソフトウェアや、混在方式を使用してもよい。
【0098】
(記録再生回路)
記録再生回路54’は、図10に示すように、記録ブロック21’、再生ブロック22’、測定回路23、記憶回路24を備えている。
【0099】
まず、試料の測定時には、光ピックアップ7が測定基板2の測定領域2aに移動し、電気泳動のバンドの蛍光量を検出する。
【0100】
検出光量j1は、記録再生回路54’における測定回路23において測定される。測定回路23は、たとえば8ビットのA/D変換器であり、コントローラからの指令によって、測定ディスクの回転中に泳動路を横切るタイミングで検出光量j1をサンプリングする。測定データaaは記憶回路24に一時的に記憶される。
【0101】
次に、測定データの記録時は、まず記憶回路24の測定データabを記録ブロック21’に送る。記録ブロック21’は、測定データ暗号化回路21aおよび記録回路21cに加えて、さらに共通鍵生成回路21dおよび共通鍵暗号化回路21bを備えている。共通鍵生成回路21dでは、擬似乱数を発生して、共通鍵acを生成する。測定データ暗号化回路21aでは、生成した共通鍵acを用いて、測定データabを暗号化する。本実施例でも、暗号化の方式として、対称暗号化方式を使用し、高速で測定データを暗号化する。共通鍵acは、たとえば測定対象者本人や診断者が用意し、測定者(測定再生装置のオペレータ)によって入力してもよいが、本実施例では共通鍵生成回路21dを使用する。
【0102】
本実施形態では、共通鍵acは、別途、共通鍵暗号化回路21bにおいて、非対称暗号化方式(公開鍵方式とも呼ぶ)の公開鍵agを用いて暗号化される。公開鍵agは、たとえば測定対象者本人や診断者が用意し、測定者によって入力されるものとする。非対称暗号化方式の特徴は、暗号化に使用する公開鍵agと、復号化に使用する秘密鍵ahとが異なるため、測定者には公開鍵agのみを渡し、測定対象者本人や診断者のみが秘密鍵ahを所有すれば、暗号化された共通鍵が第3者によって復号されることは無く、測定データの復号の危険性はない。
【0103】
暗号化された測定データである暗号化測定データadと暗号化された共通鍵である暗号化共通鍵afとは、記録回路21cに送られる。記録回路21cでは、この暗号化測定データadと暗号化共通鍵afとを記録信号cとして出力する。この記録信号cに基づいて、光ピックアップ7から光ビームaが、データ基板3の記録領域3aの暗号化データ記録領域3bに照射され、記録が行われる。この後、上述のように測定基板2とデータ基板3は切り離される。これで測定とデータの記録は終了する。
【0104】
次に、測定データの復号について説明する。データ基板3の記録領域3aと暗号化データ記録領域3bとに記録された暗号化測定データと暗号化共通鍵とは、光ピックアップ7によって読み出され、読み出した信号j2が再生ブロック22’に送られる。再生ブロック22’には、再生回路22a、測定データ復号回路22cに加えて、共通鍵復号回路22bが含まれる。再生回路22aで再生された暗号化共通鍵aiは、共通鍵復号回路22bにおいて秘密鍵ahによって復号され、共通鍵akが測定データ復号回路22cに送られる。測定データ復号回路22cでは、再生回路22aで再生された暗号化測定データajを、共通鍵acを用いて復号し、測定データを得る。
【0105】
上記のように、測定データは共通鍵によって暗号化され、データ基板3に記録される。また、共通鍵はさらに公開鍵によって暗号化され、同様にデータ基板3に記録される。共通鍵は測定再生装置13内で生成し、公開鍵は測定対象者本人や診断者から測定者に渡し、秘密鍵は測定対象者本人や診断者のみが持っておく。測定データ及び共通鍵の復号化は、測定対象者本人や診断者が秘密鍵を入力して共通鍵に復号し、さらに共通鍵を用いて測定データに復号することによって行われる。従って、測定者は暗号化に必要な公開鍵しか入手できず、測定対象者本人や診断者だけが復号化に必要な秘密鍵を持つことになる。つまり測定データは暗号化されており、測定者や第3者は測定データを見ることはできない。すなわち、測定データは測定対象者本人や診断者しか見ることができないため、個人情報を保護することができる。
【0106】
なお、実施の形態1と同様に上記の記録再生回路54’は、測定回路23、記憶回路24、および記録ブロック21’からなる測定およびデータの記録を行う部材と、再生ブロック22’からなる再生を行う部材との両方を備えた例を示したが、測定回路23、記憶回路24、および記録ブロック21’を備えた測定装置と、再生ブロック22’のみを備えた再生装置とに分けても構わない。
【0107】
なお、上記記録再生回路54’の制御はコントローラ56により行われる。つまり、本実施形態では、コントローラ56は、実施の形態1の制御に加え、共通鍵の生成、共通鍵の暗号化・復号化の制御を行う。
【0108】
(測定再生装置における測定および記録)
本実施形態の測定再生装置の測定及び記録の動作を、図11のフローチャートを用いて説明する。以下の動作はコントローラ56の制御の下で行われる。測定の動作は図8に示したS1〜S9と同様であるため説明は省略する。実施の形態1に記載したS10におけるデータの記録が異なっているので、このデータの記録(S10’)について説明する。
【0109】
データ記録を開始すると(S31)、まず、共通鍵を生成する(S32)。ここでは、共通鍵生成回路21dにより生成されるが、共通鍵は上述の通り、測定者が入力してもよい。次に、共通鍵を使用して測定データを暗号化する(S33)。さらに、公開鍵を用いて共通鍵を暗号化する(S34)。そして、データ基板3の記録領域3aの暗号化データ記録領域3bに光ピックアップ7を移動し(S35)、暗号化測定データと暗号化共通鍵を記録する(S36)。測定基板2とデータ基板3とを切り離して(S37)、データ記録を終了する(S38)。本実施形態の測定再生装置に切断装置がなければS37は必要なく、S38でデータ記録を終了した後に、測定者がカッター等で切り離してもよい。
【0110】
(測定再生装置における再生)
本実施形態の測定再生装置が、データ基板3から測定データを再生する動作を、図12のフローチャートを用いて説明する。以下の動作はコントローラ56の制御の下で行われる。
【0111】
データ再生を開始すると(S41)、まずデータ基板3を再生における所定位置に装填する(S42)。その後、記録領域3aへ光ピックアップ7を移動する(S43)。そして記録領域3aの暗号化データ記録領域3bに記録された暗号化測定データと暗号化共通鍵を再生する(S44)。次に、秘密鍵を用いて暗号化共通鍵を復号する(S45)。そして、復号化された共通鍵を用いて暗号化測定データを復号し(S46)、データ再生を終了する(S47)。
【0112】
以上によれば、測定領域2aにおいて試料の測定行い、データ暗号化手段である測定データ暗号化回路21aによって測定データを対称暗号化方式における共通鍵acを用いて暗号化して暗号化測定データとする。そして、共通鍵acを非対称暗号化方式における公開鍵を用いて共通鍵暗号化手段である共通鍵暗号化回路21bにおいて暗号化して暗号化共通鍵とする。そして、記録手段である光ピックアップ7および記録回路21cによって暗号化測定データadと暗号化共通鍵afをデータ基板3の記録領域3aの暗号化データ記録領域に記録する。その後、測定基板2とデータ基板3とは連結領域4において切断される。測定基板2は試薬や病原菌などが残った基板である場合があるので、検査機関などで冷凍保存するなど厳重に保管されるのがよい。あるいは安全な方法で廃棄してもよい。データ基板3には暗号化測定データと暗号化共通鍵が記録されており、一般の測定対象者や診断者が保有するが、データのみが記録された基板であるため、2次感染などの危険性がなくなる。なお、共通鍵は、一般の測定対象者や診断者(測定データの利用者)が予め用意してもよいし、測定再生装置のオペレータ(測定者)が用意したり、測定再生装置内で生成してもよい。公開鍵は、一般の測定対象者や診断者(測定データの利用者)が予め用意し、測定装置のオペレータ(測定者)に渡す。
【0113】
次に、再生手段である光ピックアップ7および再生回路22aによって記録領域3aの暗号化データ記録領域3bの暗号化データと暗号化共通鍵とを再生し、共通鍵復号手段(共通鍵復号化回路22b)によって非対称暗号化方式における秘密鍵ahを用いて暗号化共通鍵aiを復号し、復号された共通鍵akを用いてデータ復号化手段(測定データ復号回路22c)において暗号化測定データajを復号する。測定対象者や診断者が予めに用意する秘密鍵ahは公開鍵agと一緒に生成されるが、秘密鍵ahは一般の測定対象者や診断者(データ利用者)のみが厳重に保有する。このため、暗号化測定データを復号できるのは一般の測定対象者本人や診断者のみとなる。測定者や悪意のある第3者は、測定データを見ることはできないし、もちろん複製しても見ることはできない。したがって、個人情報の保護が可能である。なお、秘密鍵ahと公開鍵agとを、測定対象者や診断者が予めに用意する場合、暗号化方式が決まっていれば、手計算でもできるが、解読されないためには、例えばコンピュータを使って桁数の多い秘密鍵・公開鍵を生成するのがよい。それ以外に、本実施形態の測定再生装置内に鍵生成回路を備えてもかまわない。
【0114】
本実施の形態のように、共通鍵で測定データを暗号化し、さらに共通鍵を公開鍵で暗号化するメリットは、暗号化と復号化が高速で行え、かつ一般の測定対象者や診断者(データ利用者)のみが測定データを復号できる点である。一般に生体試料(DNAやたんぱく質など)の情報量は非常に多く、容量の多い測定データを非対称暗号化方式で暗号化・復号化するには時間がかかる。そこで、高速の対称暗号化方式によって測定データを暗号化・復号化する。しかし、対照暗号化方式は、共通鍵をデータ利用者本人だけでなく測定者も持ってしまうため、測定データの漏洩など個人情報が保護できない。そこで、共通鍵をさらに非対称暗号化方式を用いて暗号化・復号化すれば、復号化に必要な秘密鍵は一般の測定対象者や診断者(データ利用者)本人だけ持つことになるため、測定データの漏洩を防止できる。
【0115】
〔実施の形態3〕
本発明のハイブリッド基板に関する他の実施形態について、図13に基づいて以下に説明する。上述の実施の形態1および2では、図1に示すように測定用セルの一例として電気泳動チップを挙げて説明した。本実施形態では、電気泳動チップの代わりに、他の形状のセルを使用したハイブリッド基板について説明する。
【0116】
図13は、アッセイ用の微小なセル106(たとえば、DNAハイブリダイゼーション用セル)が形成されている、本実施形態のハイブリッド基板101の構造を示す図である。ハイブリッド基板101の形状は、上述のディスク形状ではなく、カード形状となっている。このカード形状のハイブリッド基板(以下、測定カードと称す)101は、測定基板102、データ基板103、および連結領域104からなる。

測定基板102は、試料の測定が可能な測定領域102bを備えている。また、測定領域102bには、上述した泳動路5eの代わりに、アッセイ用のセル106が、多数形成されている。各セル106のサイズは、いずれも、10μm〜1mmである。このセル106の数やサイズは限定されない。セル106の間には、一方向に案内溝が設けられている。また、測定領域102bには、図示しない番地情報が設けられていてもよい。
【0117】
データ基板103は、データの記録が可能な記録領域103aを備えている。記録領域103aは、暗号化したデータを記録可能な暗号化データ記録領域103bを含んでいる。
【0118】
連結領域104は、実施の形態1の連結領域4と同様、測定基板102とデータ基板103とを接続するものであり、連結部104aと切欠き部104bとからなる。連結部104aは、測定基板102とデータ基板103とを連結するものであり、測定基板102とデータ基板103の間において複数個が分散して形成されている。もちろん、連結部104aの個数は限定されない。これら連結部104aと隣の連結部104aとの間は、切欠き部104b、即ち空間となっている。したがって、測定カード101は、切欠き部104bによって測定基板102とデータ基板103とに分離され、連結部104aによって連結されている。
【0119】
なお、本発明に係るハイブリッド基板は、電気泳動に限らず、ハイブリダイゼーション、インキュベーション、およびカラムクロマトグラフィーなどの、他のアッセイにおいても使用可能である。
【0120】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0121】
本発明のハイブリッド基板は、次のようなハイブッリド測定基板としての構成であってもよい。すなわち、本発明に係るハイブッリド測定基板は、物理的または化学的測定を行う測定基板と、測定データを記録するデータ基板と、これら両基板を連結する連結手段とを備え、前記測定基板は、物理的または化学的測定を行う測定領域を備え、前記
データ基板は、測定データを暗号化した暗号化測定データを記録する記録領域とを備えていてもよい。
【0122】
また、本発明に係る測定装置は、上記ハイブリッド測定基板を使用する測定装置であって、前記測定領域において物理的または化学的測定を行う測定手段と、前記暗号化方式の鍵を用いて測定データを暗号化するデータ暗号化手段と、前記記録領域に暗号化測定データを記録する記録手段と、を備えていてもよい。
【0123】
また、本発明に係る再生装置は、上記ハイブリッド測定基板を使用する再生装置であって、前記記録領域に記録された暗号化測定データを再生する再生手段と、前記鍵を用いて暗号化測定データを復号するデータ復号化手段と、を備えてもよい。
【0124】
また、本発明に係るハイブッリド測定基板は、上記構成に加え、前記暗号化は対称暗号化方式における共通鍵を用いて行い、前記共通鍵を非対称暗号化方式の公開鍵で暗号化した暗号化共通鍵を前記記録領域に記録してもよい。
【0125】
また、本発明に係る測定装置は、上記ハイブリッド測定基板を使用する測定装置であって、前記測定領域において物理的または化学的測定を行う測定手段と、前記対称暗号化方式の共通鍵を用いて測定データを暗号化するデータ暗号化手段と、前記非対称暗号化方式の公開鍵を用いて前記共通鍵を暗号化する共通鍵暗号化手段と、前記記録領域に暗号化測定データと暗号化共通鍵を記録する記録手段と、を備えてもよい。
【0126】
また、本発明に係る再生装置は、上記ハイブリッド測定基板を使用する再生装置であって、前記記録領域に記録された暗号化測定データと暗号化共通鍵を再生する再生手段と、非対称暗号化方式における秘密鍵を用いて暗号化共通鍵を復号する共通鍵復号化手段と、前記復号化された共通鍵を用いて暗号化測定データを復号するデータ復号手段と、を備えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明のハイブリッド基板および測定再生装置は、高精度の診断を容易に安価で行うために、光ディスクの技術と生体測定チップの技術を融合させ、患者である測定対象者の住居の近所にある治療拠点あるいは、患者である測定対象者の居住する家庭内において、身近なデジタル医療測定機器を普及させることに大きく貢献することができる。そのため、本発明は、例えば、医療機器分野、測定装置分野、光ディスク分野等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明に係る実施の一形態の測定ディスクを示す平面図である。
【図2】図1の測定ディスクにおいて、使用済みの測定基板を切り離して、データ基板を保管できることを示す図である。
【図3】図1の測定ディスクにおける連結領域に跨ったバーコードを示す図である。
【図4】図1の測定ディスクを使用する測定再生装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図1の測定ディスクの測定領域における泳動路と液溜との断面を示す斜視図である。
【図6】図3に示した測定再生装置における記録再生回路の構成を示すブロック図である。
【図7】図3に示した測定再生装置における、図1の測定ディスクを装着した状態のターンテーブルを示す斜視図である。
【図8】図3の測定装置における測定および記録動作を示すフローチャートである。
【図9】図3の測定再生装置における再生動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明に係る他の実施形態の記録再生回路の構成を示すブロック図である。
【図11】図10の記録再生回路における測定及び記録動作を示すフローチャートである。
【図12】図10の記録再生回路における再生動作を示すフローチャートである。
【図13】本発明に係る他の実施形態のハイブリッド基板を示す平面図である。
【図14】従来のバイオコンパクトディスクの構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0129】
1 測定ディスク(ハイブリッド基板)
2,102 測定基板
2a,102b 測定領域
3,103 データ基板
3a,103a 記録領域
3b,103b 暗号化データ記録領域
4 連結領域
5a〜5d 液溜
5e 泳動路
5x 測定チップ
6a〜6d 電極
7 光ピックアップ(記録手段、再生手段、測定手段)
13 測定再生装置
21,21’ 記録ブロック
21a 測定データ暗号化回路(データ暗号化手段)
21c 記録回路(記録手段)
21d 共通鍵生成回路(鍵生成手段)
22,22’ 再生ブロック
22a 再生回路(再生手段)
22c 測定データ復号回路(データ復号化手段)
23 測定回路(測定手段)
44 反射膜
54,54’ 記録再生回路
56 コントローラ
101 測定カード(ハイブリッド基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の測定が可能な測定基板と、データの記録が可能なデータ基板と、これら両基板を連結している連結領域とを備え、
前記データ基板は、上記測定基板にて試料を測定した結果を示す測定データを暗号化した暗号化測定データを記録する暗号化データ記録領域を有することを特徴とするハイブリッド基板。
【請求項2】
ディスク形状であり、上記データ基板の直径が光ディスクの規格径に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド基板。
【請求項3】
上記測定データの暗号化が対称暗号化方式における共通鍵を用いて行われている場合、
上記暗号化データ記録領域は、前記共通鍵を非対称暗号化方式の公開鍵で暗号化した暗号化共通鍵を記録することを特徴とする請求項1記載のハイブリッド基板。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のハイブリッド基板を構成する、測定基板。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載のハイブリッド基板を構成する、データ基板。
【請求項6】
請求項1または2に記載のハイブリッド基板を使用して試料の測定を行う測定装置であって、
上記測定基板において試料の測定を行う測定手段と、
上記測定手段により測定された結果を示すデータを暗号化して暗号化測定データとするデータ暗号化手段と、
上記暗号化データ記録領域に暗号化測定データを記録する記録手段と、
を備えることを特徴とする測定装置。
【請求項7】
請求項3に記載のハイブリッド基板を使用して試料の測定を行う測定装置であって、
上記測定基板において試料の測定を行う測定手段と、
対称暗号化方式の共通鍵を用いて測定データを暗号化して暗号化測定データとするデータ暗号化手段と、
非対称暗号化方式の公開鍵を用いて前記共通鍵を暗号化して暗号化共通鍵とする共通鍵暗号化手段と、
前記暗号化データ記録領域に暗号化測定データと暗号化共通鍵とを上記暗号化データ記録領域に記録する記録手段と、
を備えることを特徴とする測定装置。
【請求項8】
上記共通鍵を生成する鍵生成手段を有することを特徴とする請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
請求項1または2に記載のハイブリッド基板のデータ基板に記録されたデータを再生する装置であって、
上記暗号化測定データを再生する再生手段と、
再生された暗号化測定データを復号するデータ復号化手段と、
を備えることを特徴とするデータ再生装置。
【請求項10】
請求項3に記載のハイブリッド基板のデータ基板に記録されたデータを再生する装置であって、
上記暗号化測定データと上記暗号化共通鍵とを再生する再生手段と、
非対称暗号化方式における秘密鍵を用いて上記暗号化共通鍵を復号する共通鍵復号化手段と、
上記復号化された共通鍵を用いて暗号化測定データを復号するデータ復号手段と、
を備えることを特徴とする再生装置。
【請求項11】
請求項6の測定装置と請求項9の再生装置とを備えることを特徴とする測定再生装置。
【請求項12】
請求項7または8の測定装置と請求項10の再生装置とを備えることを特徴とする測定再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−93384(P2007−93384A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283092(P2005−283092)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】