説明

ハイブリッド幹細胞の治療的再プログラミングおよび成熟

治療的にプログラムされた細胞およびこのような細胞を作製するための方法が、提供される。治療的にプログラムされた細胞とは、刺激因子と接触した後に、さらに分化した状態または分化が少ない状態のうちのいずれかを示すように成熟している、幹細胞である。この治療的に再プログラムされた細胞は、細胞再生治療のために適切であり、そしてさらに分化決定された細胞系列へと分化する能力を有する。さらに、治療的な再プログラミングおよび細胞再生治療のために適切なハイブリッド幹細胞が、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2003年1月16日に出願された米国特許出願第10/346,816号(これは、2002年1月16日に出願された米国仮特許出願第60/348,521号および2002年3月26日に出願された米国仮特許出願第60/367,161号に対する優先権を主張する)の一部継続であり、そして2004年6月8日に出願された米国特許出願第10/864,788号(これは、2003年6月9日に出願された米国仮特許出願第60/477,438号および2004年7月15日に出願された米国仮特許出願第60/588,146号に対する優先権を主張する)の一部継続である。これらの米国特許出願および米国仮特許出願の内容全体は、本明細書において参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、治療的に再プログラミングされた細胞の分野に関する。詳細には、治療的に再プログラミングされた細胞は、老化の過程によって損なわれない場合、免疫適合性(immunocompatible)であり、移植後に機能的な細胞を生じるように適切な出生後細胞環境で機能する。さらに、本発明は、治療的な再プログラミング、移植および治療に適切なハイブリッド幹細胞を提供するための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
幹細胞は、他のタイプの細胞を生じる未発達な細胞である。前駆細胞とも呼ばれ、いくつかの種類の幹細胞が存在する。全能細胞は、身体の「万能(master)」細胞をみなされる。なぜなら、それらは、身体の全ての細胞に加えて、ヒトの胚に栄養を与える胎盤を創出するのに必要な全ての遺伝情報を含むからである。ヒト細胞は、受精卵の最初の数回の分裂の間にのみこの全能性の能力を有する。全能細胞の3〜4回の分裂後、それらは、細胞が徐々に分化する一連の段階に従う。次の段階の分裂では、多能性細胞が生じこれは、高度に汎用性であって、胎盤または子宮の他の支持組織の細胞を除く任意の細胞タイプを生じ得る。次の段階では、細胞は多分化能になり、このことはそれらがいくつかの他の細胞タイプを生じ得るが、それらのタイプは数が限られていることを意味する。多分化能細胞の例は造血細胞(いくつかのタイプの血球に発達し得るが、脳細胞には発達できない血球)である。胚を作製する細胞分裂の長い連鎖の終わりは、「最終分化(terminally differentiated)」細胞(特定の機能に永続的に方向付けられているとみなされる細胞)である。
【0004】
科学者は、分化した細胞は、天然に方向付けられていた方向以外の任意の方向に変更できないし、機能もさせることもできないという見解を長らく抱いていた。しかし、近年の幹細胞の実験では、科学者は、血液幹細胞がニューロン同様に機能することが納得できるとしている。従って、多分化能(multipotent)細胞を多能性(pluripotent)タイプにする方法に研究は集中している(非特許文献1)。
【0005】
幹細胞は、器官の維持および機能に必要な膨大な範囲の細胞組織タイプを生じ得る、珍しい細胞集団である。これらの細胞は、以下の2つの基本的な特徴を有する未分化細胞として規定される;(i)それらは、自己再生(self−renewal)の能力を有する;(ii)それらはまた成熟表現型を有する1つ以上の分化した細胞タイプに分化する能力を有する。幹細胞には3つの主なグループが存在する;(i)全ての出生後の生物体に存在する、成体または体性(出生後)の幹細胞、(ii)前胚性(pre−embryonic)または胚の発達段階に由来し得る胚性幹細胞、および(iii)発達中の胎児から単離され得る胎児性幹細胞(出生前)。幹細胞の各々のグループは、細胞再生治療のために、詳細には、それらの分化能力ならびに適切なまたは標的された細胞環境において移植して新規に機能する能力において、それ自体が利点および不利な点を有する。
【0006】
出生後の動物には、系列の分化決定された前駆幹細胞および系列の方向付けられていない多能性幹細胞である細胞が存在し、出生後生物体は、細胞が継続的な器官または器官系の維持および修復を必要とするならば、この多能性幹細胞は結合組織中に存在する。これらの細胞は、体性幹細胞または成体幹細胞と称され、そして静止期であっても非静止期であってもよい。代表的には、成体幹細胞は2つの特徴を共有する:(i)それらの幹細胞は、長期間にわたってそれ自体の同一のコピーを作成し得る(長期自己再生);そして(ii)それらの幹細胞は、特徴的な形態学および専門的な機能を有する成熟細胞タイプを生じさせ得る。
【0007】
幹細胞の生物学のかなりの理解は、骨髄移植後の造血幹細胞およびそれらの機能に由来している。骨髄のニッチ内の成体幹細胞にはいくつかのタイプがあり、各々が固有の特性およびそれらの細胞環境に関連する種々の分化能力を有する。子宮内で免疫前のヒツジの胎児に移入されたヒト骨髄から単離された体性幹細胞は、複数の組織へ異種移植する能力を有する。骨髄のニッチ内はまた、間葉幹細胞であり、これは、骨、軟骨、脂肪、腱、肺、筋肉、骨髄基質および脳の組織を含む、広範な非造血性の分化能力を有する。さらに、神経幹細胞、膵臓、筋肉、脂肪、卵巣および精原幹細胞が見出されている。体性または出生後の幹細胞の治療有用性は実証されており、骨髄移植の使用を通じて実現されている。しかし、成体の幹細胞が有するゲノムは、加齢(老化)および細胞分裂によって変更されている。加齢によってフリーラジカル損傷の蓄積、または酸化的損傷が生じ、これは細胞が新生物を形成する傾向にし得、細胞分化能力を減じるかまたはアポトーシスを誘導する。細胞分裂の反復は、細胞の機能的な寿命を決定する究極の細胞時計であるテロメア短縮に直接関連する。結果として、成体の体性幹細胞は、胚性および出生前の幹細胞において見出される生理学的な初期状態から十分に分岐されているゲノムを有する。
【0008】
不幸にも、幹細胞を含む、成体の動物の身体における事実上あらゆる体細胞は、時間および繰り返される細胞分裂によって、有するゲノムは破壊されている。従って、これまでのところ、損傷されていないか、または初期状態の生理学的なゲノムを有する幹細胞を得るための唯一の手段は、中絶された胚またはインビトロの受精技術を用いて形成される胚から幹細胞を回収することであった。しかし、科学的かつ倫理的な配慮によって、胚性幹細胞を用いる幹細胞研究の進行は遅れている。胚性幹細胞株の生成は、研究および治療の両方のために胚性幹細胞の再生可能資源を提供することを考えてきたが、近年の報告では、既存の細胞株は免疫原の動物の分子が混入されていることが示されている(非特許文献2)。
【0009】
成体幹細胞を用いることに伴う別の問題は、これらの細胞が免疫学的に特権ではなく、移植後にそれらの免疫学的特権を消失し得るということである。(「免疫学的に特権(immunologically privileged)」という用語は、レシピエントの免疫系が細胞を外来として認識しない状態を指すものとして用いる)。従って、成体の幹細胞を用いるほとんどの場合、自己移植しかできない。従って幹細胞治療の現在最も想定されている形態は、本質的にカスタマイズされた医学的手順であり、従ってこのような手順に伴う経済的要因によって、それらの広範な能力は制限される。現在利用可能な使用に対するさらなる障壁である。
【0010】
さらに、幹細胞は、治療法として有用であることが所望される器官または細胞のタイプへ成熟するように誘導されなければならない。インビボにおいて幹細胞成熟に影響する因子は、理解が十分でなく、エキソビボでさえ十分に理解されていない。従って、現在の成熟技術は、投与する科学者またはレシピエントの制御を大きく超えて偶然の発見および生物学的プロセスに依存する。
【0011】
現在の研究は、細胞再生治療における使用のための、万能性または多能性の免疫学的に特権の細胞の供給源として、胚性幹細胞を発達させることに集中している。しかし、胚性幹細胞自体は、それらが移植後に奇形腫を形成するために直接の移植には適切ではないかもしれないので、胚性幹細胞は、移植に適切であるカスタマイズされた多能性、多分化能または分化決定された細胞に分化され得る「ユニバーサルドナー(universal donor)」として計画されている。さらに、ヒト胚からの胚性幹細胞の単離に伴うモラル上のおよび倫理上の問題が存在する。
【0012】
従って、ほぼ生理学的に初期状態のゲノムを有する生物学的に有用な多能性幹細胞の供給源が必要である。さらに、治療上有用であるのに十分な期間、レシピエントにおいて免疫学的特権を維持する、ほぼ生理学的に初期の状態のゲノムを有する、生物学的に有用な多能性幹細胞の供給源が必要である。さらに、移植された幹細胞が意図される組織に成熟する能力を最大化するためにインビボまたはエキソビボのいずれかで幹細胞移植片を調整する必要がある。
【非特許文献1】Kanatsu−Shinohara M.ら、Generation of pluripotent stem cells from neonatal mouse testis.Cell(2004)119:1001〜12
【非特許文献2】Martin M.ら、Human embryonic stem cells express an immunogenic nonhuma sialic acid.Nature Medicine(2005)11:228〜32
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、酸化的損傷が最小であり、そして損傷のない出生前のまたは胚性の幹細胞のテロメア長と比較して遜色のないテロメア長を有する、生物学的に有用な多能性の治療的に再プログラミングされた細胞を提供する(すなわち、本発明の治療上再プログラミングされた細胞は、ほぼ初期の生理学的状態のゲノムを有する)。さらに、本発明の治療上再プログラミングされた細胞は、免疫学的に特権的であり、従って治療適用に適切である。本発明のさらなる方法は、ハイブリッド幹細胞の生成を提供する。さらに、本発明は、本発明の技術に従って作成された幹細胞を特定の宿主組織へ成熟させるための関連の方法を包含する。
【0014】
本発明のある実施形態では、治療的な再プログラミング方法が提供される。この方法は、幹細胞を単離する工程;治療的に再プログラムされた細胞へのこの幹細胞の発達を誘導する刺激因子を含む培地とこの幹細胞とを接触させる工程;この培地からこの治療的に再プログラミングされた細胞を回収する工程;この治療的に再プログラミングされた細胞、またはそれから成熟した細胞を、治療的に再プログラミングされた細胞を必要とする宿主に移植する工程;を包含する。本発明の教示による治療的な再プログラミングに適切な幹細胞としては、胚性幹細胞、胎児性幹細胞、体性幹細胞、成体多能性前駆細胞、ハイブリッド幹細胞、改変された生殖細胞、脂肪由来幹細胞および始原性細胞が挙げられる。本発明の1実施形態では、始原性細胞は、精原幹細胞である。
【0015】
本発明の別の実施形態では、本発明の治療的な再プログラミング方法において有用な刺激因子としては、化学物質、生化学物質および細胞の抽出物が挙げられる。本発明の化学的な刺激因子は、5−アザ−2’−デオキシシチジン、ヒストンデアセチラーゼインヒビター、n−酪酸およびトリコスタチンAからなる群より選択される。本発明の細胞抽出刺激因子は、細胞全体抽出物、細胞質体抽出物および核質抽出物からなる群より選択される。本発明の治療的な再プログラミング方法において有用な細胞抽出物は、胚性幹細胞、胎児性神経幹細胞、成体多能性前駆細胞、ハイブリッド幹細胞、および始原性細胞を含む幹細胞から単離される。
【0016】
本発明のある実施形態では、治療的に再プログラミングされた細胞を必要とする宿主は、哺乳動物、そしてさらに詳細にはヒトである。本発明の別の実施形態では、幹細胞は、治療的に再プログラミングされた細胞を必要とする宿主から単離される。
【0017】
本発明のさらに別の実施形態では、この治療的に再プログラミングする方法は、さらに、組織特異的な系列に分化決定されるように上記治療的に再プログラミングされた細胞を成熟させる工程;を包含する。
【0018】
本発明のある実施形態では、治療的な再プログラミング方法が提供される。この方法は、精原幹細胞(SSC)を単離する工程;全能細胞へのこのSSCの発達を誘導する刺激因子を含む培地とこのSSCとを接触させる工程;この培地からこの全能細胞を回収する工程;この全能細胞またはそれから成熟した細胞を、治療的に再プログラミングされた細胞を必要とする宿主に移植する工程;を包含する。
【0019】
本発明の別の実施形態では、治療的な再プログラミング方法が提供される。この方法は、ハイブリッド幹細胞を提供する工程;全能細胞へのこのハイブリッド幹細胞の発達を誘導する刺激因子を含む培地とこのハイブリッド幹細胞とを接触させる工程;この培地からこの全能細胞を回収する工程;この全能細胞またはそれから成熟した細胞を、治療的に再プログラミングされた細胞を必要とする宿主に移植する工程;を包含する。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態では、治療的に再プログラミングされた細胞が提供される。この細胞は、刺激因子に対して曝露されているSSCを含み、この刺激因子は、このSSCを全能細胞または多能性細胞へ成熟または分化させた。
【0021】
本発明のある実施形態では、多能性幹細胞を含む治療的に再プログラミングされた細胞が提供される。この細胞は、刺激因子に対して曝露されている多能性幹細胞を含み、この刺激因子は、この多能性幹細胞を、さらに分化決定された細胞系列へ成熟または分化させた。
【0022】
本発明の別の実施形態では、ハイブリッド幹細胞を作製するための方法が提供される。この方法は、二倍体であるドナー細胞を得る工程;宿主細胞を得る工程;この宿主細胞を除核する工程;このドナー細胞、またはその核、およびこの宿主細胞を融合させる工程;このハイブリッド幹細胞を単離する工程;を包含する。本発明の技術に従ってハイブリッド幹細胞を作製するのにおける使用のために適切なドナー細胞は、胚性幹細胞、体細胞、始原性細胞および治療的に再プログラミングされた細胞からなる群より選択される。本発明の別の実施形態では、このドナー細胞はG期にある。
【0023】
本発明のさらに別の実施形態では、本発明の方法に従うハイブリッド幹細胞を作製するのにおける使用のために適切な宿主細胞は、胚性幹細胞、胎児性神経幹細胞および成体多能性前駆細胞からなる群より選択される。
【0024】
本発明のある実施形態では、ハイブリッド幹細胞を作製するための方法は、上記取得する工程の後かつ上記除核する工程の前に上記宿主細胞を4回継代にわたって培養する工程をさらに包含する。
【0025】
本発明の別の実施形態では、ハイブリッド幹細胞を作製するために適切なドナー細胞および宿主細胞は、哺乳動物由来である。本発明のさらに別の実施形態では、ドナー細胞および宿主細胞は、同じ個体由来である。
【0026】
本発明のある実施形態では、ハイブリッド幹細胞を作製するために適切な宿主細胞は、化学的除核、機械的除核、物理的除核、x線照射除核、およびレーザー照射除核からなる群より選択されるプロセスによって除核される。本発明の別の実施形態では、宿主細胞は、サイトカラシンDによって除核される。
【0027】
本発明のさらに別の実施形態では、ハイブリッド幹細胞を作製する方法は、ドナー細胞との融合の前に約3日間、上記除核された宿主細胞を培養する工程をさらに包含する。
【0028】
本発明のある実施形態では、ハイブリッド幹細胞を作製する方法の上記融合する工程は、電気融合、マイクロインジェクション、化学融合またはウイルスに基づく融合からなる群より選択される融合方法を含む。
【0029】
本発明の別の実施形態では、ハイブリッド幹細胞を作製する方法の上記単離する工程は、蛍光標識細胞分取(fluorescence−activated cell sorting)を包含する。本発明のさらに別の実施形態では、ハイブリッド幹細胞を作製するこの方法は、この単離する工程の後にこのハイブリッド幹細胞を培養する工程をさらに包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(用語の定義)
化学修飾:本明細書において用いる場合、「化学修飾」とは、化学的または生化学的にドナー細胞またはその核にゲノム変化を誘導するプロセスのことをいい、宿主細胞の細胞質に対してこのドナー細胞またはその核が、成熟の間に応答性になることそして受容性になることを可能にするプロセスをいう。
【0031】
分化決定された(committed):本明細書において用いる場合、「分化決定された(committed)」とは、特定の機能へ永続的に方向付けられているとみなされる細胞をいう。分化決定された細胞はまた、「最終分化細胞(terminally differentiated cells)」とも呼ばれる。
【0032】
細胞質抽出物の改変:本明細書において用いる場合、「細胞質抽出物の改変(cytoplast extract modification)」とは、細胞の細胞質内容物からなる細胞抽出物を用いてドナー細胞またはその核にゲノム変化を誘導するプロセスのことをいい、これによってこのドナー細胞またはその核が宿主細胞の細胞質に対して成熟の間に応答性になることおよび受容性になることを可能にするプロセスをいう。
【0033】
脱分化:本明細書において用いる場合、「脱分化」とは、形態または機能の分化を失うことをいう。細胞では、脱分化は、分化決定された細胞の減少をもたらす。
【0034】
分化:本明細書において用いる場合、「分化」とは、特定の形態または機能について細胞の適応をいう。細胞では、分化は、分化決定された細胞の増加をもたらす。
【0035】
ドナー細胞:本明細書において用いる場合、「ドナー細胞(donor cell)」とは、前胚性(pre−embryonic)、胚性、胎児性もしくは出生後の多細胞の生物体由来の任意の二倍体(2N)細胞、またはハイブリッド幹細胞に対してその核遺伝物質を与える始原性細胞をいう。ドナー細胞は、最終分化細胞にも、分化の過程にある細胞にも限定されない。本発明の目的に関しては、ドナー細胞とは、細胞全体または核単独の両方を指す。
【0036】
ドナー細胞の調製:本明細書において用いる場合、「ドナー細胞の調製(donor cell preparation)」とは、ドナー細胞またはその核が、成熟するように調製されるか、または宿主細胞の細胞質に対して受容性になり、そして/または出生後環境内で応答性になるように調製されるプロセスをいう。
【0037】
胚:本明細書において用いる場合、「胚」とは、着床および原腸形成で特徴付けられる発達および分化の早期段階の動物であって、それぞれの器官または器官系への胚葉の分化により、3つの胚葉が規定されかつ確立されている動物をいう。この3つの胚葉は、内胚葉、外胚葉および中胚葉である。
【0038】
胚性幹細胞:本明細書において用いる場合、「胚性幹細胞」とは、全能性であって、子宮壁に結合する発生段階に達した発達中の胚に由来する任意の細胞をいう。この文脈では、胚性幹細胞および前胚性幹細胞(pre−embryonic stem cell)は、等価な用語である。胚性幹細胞様(embryonic stem cell−like)(ESC様)細胞は、胚から直接単離されたのではない全能細胞である。ESC様細胞は、本発明の教示に従って分化している始原性細胞に由来し得る。
【0039】
胎児性幹細胞:本明細書において用いる場合、「胎児性幹細胞」とは、多分化能であって、もはや早期または中期の器官形成でない発達中の多細胞の胚に由来する細胞をいう。
【0040】
生殖細胞:本明細書において用いる場合、「生殖細胞(germ cell)」とは、精母細胞または卵母細胞のような生殖性の細胞(reproductive cell)であって、生殖細胞に発達する細胞をいう。
【0041】
宿主細胞:本明細書において用いる場合、「宿主細胞」とは、ハイブリッド幹細胞に対して細胞質を与える、前胚性、胚性、胎児性、または出生後の多細胞生物体由来の任意の多分化能の幹細胞をいう。
【0042】
宿主細胞の調製:本明細書において用いる場合、「宿主細胞の調製(host cell preparation)」とは、宿主細胞が除核されるプロセスをいう。
【0043】
ハイブリッド幹細胞:本明細書において用いる場合、「ハイブリッド幹細胞(hybrid stem cell)」とは、多分化能であり、かつ多細胞生物体の、除核された宿主細胞およびドナー細胞、またはその核に由来する任意の細胞をいう。ハイブリッド幹細胞は、同時係属中の米国特許出願第10/864,788号にさらに開示される。
【0044】
核質抽出物の改変:本明細書において用いる場合、「核質抽出物の改変(karyoplast extract modification)」とは、DNAを欠く細胞の核内容物からなる細胞抽出物を用いてドナー細胞またはその核においてゲノム変化を誘導するプロセスのことをいい、これによってドナー細胞またはその核が宿主細胞の細胞質に対して成熟の間応答性になるかまたは受容性になることを可能にするプロセスをいう。
【0045】
成熟:本明細書において用いる場合、「成熟」とは、分化経路において前向きまたは後ろ向きのいずれかで協調された工程のプロセスをいい、そして分化または脱分化の両方を指し得る。本明細書において用いる場合、成熟とは、本明細書に記載されるプロセスに適用される場合、発達するかまたは発達という用語と同義である。
【0046】
改変された生殖細胞:本明細書において用いる場合、「改変された生殖細胞(modified germ cell)」とは、宿主の除核された卵、および精原細胞、卵原細胞または始原性細胞由来のドナーの核からなる細胞をいう。宿主の除核された卵およびドナーの核は、同じ種由来であっても、異なる種由来であってもよい。改変された生殖細胞はまた、「ハイブリッド生殖細胞(hybrid germ cell)」と呼ばれてもよい。
【0047】
多分化能:本明細書において用いる場合、「多分化能(multipotent)」とは、いくつかの他の細胞タイプを生じ得る細胞であって、ただしそれらの細胞タイプの数が限定されている細胞をいう。多分化能の細胞の例は、造血細胞(血液幹細胞)であり、これはいくつかのタイプの血液細胞には発達できるが、脳細胞には発達できない。
【0048】
成体多能性前駆細胞:本明細書において用いる場合、「成体多能性前駆細胞(multipotent adult progenitor cells)」とは、間葉、内皮および内胚葉の系列の細胞に分化する能力を有する骨髄から単離された多分化能の細胞をいう。
【0049】
前胚:本明細書において用いる場合、「前胚(pre−embryo)」とは、細胞分裂の前の発達の早期段階にある受精した卵をいう。前胚段階の間、卵割の初期段階が生じている。
【0050】
前胚幹細胞(Pre−embryonic Stem Cell):上の「胚性幹細胞」を参照のこと。
【0051】
出生後幹細胞:本明細書において用いる場合、「出生後幹細胞(post−natal stem cell)」とは、多分化能であり、かつ出生後の多細胞の生物体に由来する任意の細胞をいう。
【0052】
多能性:本明細書において用いる場合、「多能性(pluripotent)」とは、胎盤の細胞または子宮の他の支持細胞を除く任意の細胞タイプを生じ得る細胞をいう。
【0053】
始原性細胞:本明細書において用いる場合、「始原性細胞(primordial sex cell)」とは、雄性または雌性の成熟または発達中の生殖腺由来であり、種を繁殖させる細胞を生成し得、そして二倍体のゲノム状態を含む、任意の二倍体細胞をいう。始原性細胞は、静止期であってもまたは活発に分裂していてもよい。これらの細胞としては、雄性の始原生殖細胞、雌性の始原生殖細胞、精原幹細胞、卵巣幹細胞、卵原細胞、A型精原細胞、B型精原細胞が挙げられる。これは生殖細胞系幹細胞としても公知である。
【0054】
始原生殖細胞:本明細書において用いる場合、「始原生殖細胞(primordial germ cell)」とは、生殖細胞になるように運命づけられている初期の胚発生に存在する細胞をいう。
【0055】
再プログラミング:本明細書において用いる場合、「再プログラミング(reprogramming)」とは、細胞が多能性を示し、完全に発達した生物体を生じる能力を有するような細胞の遺伝的プログラムの再設定をいう。
【0056】
応答性:本明細書において用いる場合、「応答性(responsive)」とは、細胞または細胞の群の状態のことをいい、細胞環境に感受性であって、細胞環境内で適宜機能し得る状態をいう。応答性の細胞は、特定の細胞環境、組織、器官および/または器官系に対して応答し得、かつそこで機能し得る。
【0057】
体性幹細胞:本明細書において用いる場合、「体性幹細胞」とは、二倍体の多分化能または多能性の幹細胞をいう。体性幹細胞は、全能性幹細胞ではない。
【0058】
治療的なクローニング:本明細書において用いる場合、「治療的なクローニング(therapeutic cloning)」とは、卵の核を内部細胞塊由来の別の細胞および幹細胞の核で置換する工程を包含する核移入方法を用いる細胞のクローニングをいう。
【0059】
治療的な再プログラミング:本明細書において用いる場合、「治療的な再プログラミング(therapeutic reprogramming)」とは、成熟のプロセスのことをいい、幹細胞が本発明の教示に従う刺激因子に曝されて、多能性細胞、多分化能細胞または組織特異的な分化決定された細胞を生じる成熟のプロセスをいう。治療的に再プログラミングされた細胞は、疾患の、損傷された、欠損したまたは遺伝的に障害のある組織を置換または修復するための宿主への移植のために有用である。本発明のこの治療的に再プログラミングされた細胞は、非ヒトシアル酸残基を保持しない。
【0060】
全能性:本明細書において用いる場合、「全能性」とは、身体の全ての細胞に加えて胎盤を形成するのに必要な遺伝子情報の全てを含む細胞をいう。ヒト細胞は、受精卵の最初の数回の分裂の間のみ全能性である能力を有する。
【0061】
細胞全体抽出物の改変:本明細書において用いる場合、「細胞全体抽出物の改変(whole cell extract modification)」とは、細胞質および細胞の核内容物からなる細胞抽出物を用いて、ドナー細胞またはその核においてゲノム変化を誘導するプロセスのことをいい、これによってこのドナー細胞またはその核が宿主細胞の細胞質に対して成熟の間応答性になり受容性になることを可能にするプロセスをいう。
【0062】
(発明の詳細な説明)
本発明は、酸化的損傷が最小であり、そして損傷のない出生前のまたは胚性の幹細胞のテロメア長と比較して遜色のないテロメア長を有する、生物学的に有用な多能性の治療上再プログラミングされた細胞を提供する(すなわち、本発明の治療上再プログラミングされた細胞は、ほぼ初期の生理学的状態のゲノムを有する)。さらに、本発明の治療上再プログラミングされた細胞は、免疫学的に特権的であり、従って治療適用に適切である。本発明のさらなる方法は、ハイブリッド幹細胞の生成を提供する。さらに、本発明は、本発明の技術に従って作成された幹細胞を特定の宿主組織へ成熟させるための関連の方法を包含する。
【0063】
幹細胞は、他のタイプの細胞を生じる未発達な細胞である。前駆細胞とも呼ばれ、いくつかの種類の幹細胞が存在する。全能細胞は、身体の「万能(master)」細胞とみなされる。なぜなら、それらは、身体の全ての細胞に加えて、ヒトの胚に栄養を与える胎盤を創出するのに必要な全ての遺伝情報を含むからである。ヒト細胞は、受精卵の最初の数回の分裂の間にのみ、この全能性の能力を有する。全能細胞の3〜4回の分裂後、それらは、細胞が徐々に分化する一連の段階に従う。次の段階の分裂では、多能性細胞が生じこれは、高度に汎用性であって、胎盤または子宮の他の支持組織の細胞を除く任意の細胞タイプを生じ得る。次の段階では、細胞は多分化能になり、このことはそれらがいくつかの他の細胞タイプを生じ得るが、それらのタイプは数が限られていることを意味する。多分化能細胞の例は造血細胞(いくつかのタイプの血球に発達し得るが、脳細胞には発達できない血球)である。胚を作製する細胞分裂の長い連鎖の終わりは、「最終分化」細胞(特定の機能に永続的に方向付けられているとみなされる細胞)である。
【0064】
科学者は、分化した細胞は、天然に方向付けられている方向以外の任意の方向に変更できないし、機能もさせることもできないという見解を長らく抱いていた。しかし、近年の幹細胞の実験では、科学者は、血液幹細胞がニューロン同様に機能することが納得できるとしている。従って、多分化能(multipotent)細胞を多能性(pluripotent)タイプにする方法に研究は集中している(Kanatsu−Shinohara M.ら、Generation of pluripotent stem cells from neonatal mouse testis.Cell 119:1001〜12,2004)。
【0065】
哺乳動物の発生の本体論によって、幹細胞の中心的な役割が得られる。胚発生の初期には、生殖細胞(始原生殖細胞)になるように運命づけられた近位胚盤葉上層由来の細胞は、生殖隆起にそって移動する。これらの細胞は、高レベルのアルカリホスファターゼを発現し、同様に転写因子Oct4を発現する。生殖隆起の移動およびコロニー形成の際に、始原生殖細胞は、雄性または雌性の生殖細胞前駆体(始原性細胞)への分化を受ける。本開示の目的に関して、雄性の始原性細胞(PSC)のみが考察されるが、雄性および雌性の始原性細胞の量および特性は、等価であり、制限は意味しない。雄性の始原性細胞発達の間、始原幹細胞は、輸精索の形成の開始をもたらす前駆セルトリ細胞と緊密に会合する。始原生殖細胞が、輸精索に囲まれる場合、それらは、分裂期に静止状態である始原生殖細胞に分化する。これらの原生殖細胞は、数日間に分裂し、続いて細胞周期のG/G期で停止する。マウスおよびラットでは、これらの原生殖細胞は、出生後2〜3日内に分裂を再開して精原幹細胞を生成し、最終的には精子形成に関連する分化および減数分裂を受ける。
【0066】
始原性細胞は、受精に必要な細胞の生成を、そして最終的には新規な生物体を生成するための胚発生の新しいラウンドを直接担っている。始原性細胞は、死ぬようにはプログラムされておらず、胚の状態の質に匹敵する質の細胞である。
【0067】
胚性幹細胞は、着床前の胚盤胞段階の胚の内部細胞塊由来の細胞であって、最大の分化能を有し、胚本体の3つの胚葉の全てに見出される細胞を生じ得る。実用的な見地からは、胚性幹細胞は、細胞培養物の人為的結果である。なぜなら、それらの天然の胚盤葉上層環境では、それらは胚発生の間に一時的に存在するだけであるからである。インビトロでの胚性幹細胞の操作は、心筋細胞、造血性細胞、内皮細胞、神経、骨格筋、軟骨細胞、脂肪細胞、肝臓および膵島を含む広範な細胞タイプの生成および分化をもたらしている。成熟細胞との同時培養における胚性幹細胞増殖は、胚性幹細胞の特定の系列への分化に影響してこれを開始し得る。
【0068】
この考察の目的に関して、胚および胎児は、器官形成に関する発達段階に基づいて識別される。前胚段階とは、前胚が卵割の初期段階を受けている期間をいう。初期の胚発生は、着床および原腸形成によって特徴付けられ、ここで3つの胚葉が規定されて確立される。後期の胚発生は、それぞれの器官および器官系の形成への胚葉の誘導の分化によって規定される。胚から胎児への移行は、ほとんどの主要な器官および器官系の発達、それに続く急速な胎児の成長によって規定される。
【0069】
胚発生とは、精子によって受精された卵母細胞が分裂を始め、そして卵割および胞胚形成を生じる初回の胚形成を受ける発生過程である。2回目の間には、着床、原腸形成および初期の胚形成が生じる。3回目は、胚形成によって特徴付けられ、そして胚がもはや胚と呼ばれず胎児と呼ばれる最終回の胚形成は、胎児が成長し発達が生じる時である。
【0070】
胚発生の間、卵割後桑実胚および胚細胞緊密化から生じる最初の2つの組織系列は、栄養外胚葉および原始内胚葉であり、これは胎盤および胚体外の卵黄嚢に大きく寄与する。胚細胞緊密化の直後でかつ着床の前に胚盤葉上層および原始外胚葉は発達しはじめる。
【0071】
胚盤葉上層は、胚本体を生じる細胞を提供する。胞胚形成は、多能性細胞が収容されており発生の間に種々の発生の課題を行うように指向される、胚盤葉上層幹細胞ニッチの発達の際に完了し、この時点で胚は透明帯から現れて、子宮壁へ着床する。
【0072】
着床の後には、原腸形成および初期の器官形成が続く。初回の器官形成の終わりまでに、3つの胚葉の全て:外胚葉、中胚葉および最終的な内胚葉が形成されており、そして基本的な身体の計画および器官の原基が確立される。初期の器官形成後、胚形成は、過度の器官発達が著しく、その時点で完了は、胎児の成長および最終回の器官発達によって特徴付けられる発達中の胎児への発達中の胚の形質転換が特徴である。一旦、胚形成が完了すれば、妊娠期間は出生によって終わり、この時点で生物体は、正常に機能して出生後に生存するのに必要な全ての器官、組織および細胞ニッチを有する。
【0073】
胚形成の過程を用いて、胚の発達が生じるように胚発達の全体的な過程を描写するが、細胞レベルの胚発生は、細胞増殖によって記載され、そして/または実証され得る。
【0074】
胎児性幹細胞は、胎児の骨髄(造血幹細胞)、胎児の脳(神経幹細胞)および羊水(多能性羊膜幹細胞)から単離されている。さらに、幹細胞は、成体の雄性および雌性の組織の両方において記載されている。胎児性幹細胞は、胚形成および胎児の発達の過程の間いくつかの多様な役割を果たし、そして最終的には体性幹細胞の貯蔵部分になる。
【0075】
成熟とは、分化経路における前向きまたは後ろ向きのいずれかの協調された工程の過程であって、分化および/または脱分化の両方を指し得る。成熟過程の1例では、細胞または細胞の群は、胚形成および器官形成の間、その細胞環境と相互作用する。成熟の進行につれて、細胞はニッチを形成し始め、そしてこれらのニッチまたは微小環境は、器官形成を指向して調節する幹細胞を内蔵する。出生の時点で、成熟は進行しており、その結果細胞および適切な細胞のニッチが器官に存在して、出生後に機能して生存する。発生過程は、種々の種のなかで高度に保存されており、これによって1つの哺乳動物種からの成熟または分化の系を、実験室において他の哺乳動物種に拡張することが可能になる。
【0076】
ある生物体の一生涯の間、この器官および器官系の細胞組成は、細胞損傷およびゲノム損傷を誘発する広範な内因性および外因性の因子に曝露される。紫外光は、正常な皮膚細胞に影響を有するだけでなく、皮膚幹細胞集団にも影響を有する。ガンを処置するために用いられる化学療法薬物は、造血幹細胞に対して破壊的な影響を有する。細胞代謝の副産物である反応性酸素種は、細胞のゲノム完全性を損なう内因性の因子である。全ての器官または器官系において、細胞は幹細胞集団で継続して置き換えられている。しかし、生物体の年齢につれて、細胞損傷はこれらの幹細胞集団に蓄積する。損傷が、ゲノム変異のように遺伝性であるならば、全ての子孫が影響され、従って損なわれる。単独の幹細胞クローンは、1年より長くにわたってリンパ系および骨髄球性細胞のような系列の生成に寄与し得、従って幹細胞が損傷された場合、変異を伝播する能力を有する。身体は、アポトーシスを誘発し、それによって損なわれた幹細胞をプールから取り除くことおよび潜在的に機能不全または腫瘍化の特性を妨げることによって、このような損なわれた幹細胞に応答する。アポトーシスは、この集団から損なわれた細胞を取り除くが、また将来にわたって利用可能な幹細胞の数を減らしもする。従って、ある生物体が老化するにつれて、幹細胞の数は減少する。幹細胞プールの損失に加えて、加齢は、幹細胞の帰巣の機序の効率を低下させるという証拠がある。テロメアは、高度に保存された直列で繰り返されるDNA配列を含む染色体の物理的な末端である。テロメアは、直鎖状DNA分子の複製および安定性に関与し、そして細胞におけるカウント機構として機能する;細胞分裂の各々の回で、テロメアの長さは短くなり、所定の閾値では、シグナルが活性化されて細胞の老化が始まる。幹細胞および体細胞は、テロメラーゼを産生し、これがテロメアの短縮を阻害するが、それらのテロメアはやはり、加齢および細胞のストレスの間に徐々に短くなる。
【0077】
種々の疾患の処置のために細胞治療の歴史が存在するが、ほとんどの使用は、悪性腫瘍を含む造血性の障害のための骨髄移植にある。骨髄移植では、個体の免疫系が、別の個体から移植された骨髄で復元される。この復元は長らく骨髄における造血幹細胞の作用に帰するとされている。
【0078】
幹細胞は、インビトロで特定の細胞タイプに分化されるという証拠が増えており、そして種々の組織に移植することによって多分化性であり、胚葉を横切る能力を有することが示されており、従って細胞治療のための多くの研究の主題である。従来のタイプの移植と同様に、免疫拒絶は、細胞治療の限定的な要因である。レシピエントの個々の表現型およびドナーの表現型は、細胞または器官の移植片が耐容性であるか、または免疫系によって拒絶されるかを決定する。
【0079】
従って、本発明は、細胞の再生/修復治療のための機能的な免疫適合性幹細胞を提供するための方法および組成物を提供する。
【0080】
本発明のある実施形態では、治療的に再プログラミングされた細胞が提供される。治療的な再プログラミングとは、幹細胞が本発明の技術に従う刺激因子に曝露されて、多能性、多分化能または組織特異的な分化決定された細胞が生じる成熟過程をいう。この治療的な再プログラミングの過程は、限定はしないが、治療的にクローニングされた細胞、ハイブリッド幹細胞、胚性幹細胞、胎児性幹細胞、成体多能性前駆細胞、脂肪由来幹細胞(ADSC)および始原性細胞を含む種々の幹細胞で行われ得る。
【0081】
治療的な再プログラミングは、特定の幹細胞が精原幹細胞および脂肪由来幹細胞のような特定の幹細胞を得るのに比較的容易であり、そして刺激因子に対する曝露によって、これらの細胞を後成的に再プログラミングするという事実を利用する。これらの治療的に再プログラミングされた細胞は、さらに分化決定された細胞系列または方向付けの弱い細胞系列のいずれかに対してそれらの成熟状態を変化させた。従って、治療的に再プログラミングされた細胞は、疾患の、損傷された、欠損したまたは遺伝的に障害のある組織を修復または再生し得る。
【0082】
治療的な再プログラミングは、限定はしないが、化学物質、生化学物質および細胞の抽出物を含む刺激因子を用いて、細胞の後成的なプログラミングを変化させる。これらの刺激因子は、他の結果のなかでも、ドナーDNAにおけるゲノムメチル化変化を誘導する。本発明の実施形態は、細胞全体、細胞質体、および核質から細胞抽出物を調製するための方法を包含するが、他のタイプの細胞抽出物も、本発明の範囲内であると意図される。非限定的な例では、本発明の細胞抽出物は、幹細胞、特に胚性幹細胞から調製される。ドナー細胞は、所定の期間、非限定的な例では、約1〜約2時間にわたって、化学物質、生化学物質および細胞の抽出物とともにインキュベートされ、そしてOct4のような胚性幹細胞マーカーを発現する再プログラミングされた細胞は、培養期間後に、次に、移植、凍結保存またはさらなる成熟のために準備されている。
【0083】
本発明の1つの特定の実施形態では、始原性細胞(PSC)が治療的に再プログラミングされる。始原性細胞は、精巣の精細管の裏層および卵巣の裏層(それぞれ、精原細胞および卵原細胞)に存在し、加齢および細胞分裂の影響によって顕著に損傷されない二倍体(2N)ゲノムを保有することが決定されている。従って、PSCは、ゲノムをほぼ生理学的に初期の状態で保有する。本発明の実施形態において特に有用なPSCの非限定的な例は、精原幹細胞である。本明細書の教示に従って、治療上再プログラミングされたPSC細胞は、発達中の胚および胚形成および器官形成中の胎児に存在する幹細胞によって経験されるのと同様の方法を用いて成熟過程のために準備される。
【0084】
本発明の教示に従って作成される治療的に再プログラミングされた細胞は、そのままで治療目的のために用いられてもよく、それらは、将来の使用のために凍結保存されてもよいし、または以下の環境においてさらに分化決定された細胞系列へとさらに成熟されてもよい:(1)発達中の胚において(2)発達中の胎児において、(3)発達中の全器官培養物において、または(4)胚形成および器官形成のインビトロ細胞環境と同様のインビトロ細胞環境において。
【0085】
本発明の実施形態は、出生後の環境において治療的に再プログラミングされた細胞、幹細胞および始原性細胞をさらに分化決定された細胞系列へとさらに成熟または分化させて、細胞の再生/修復的な治療における使用のためにさらに分化決定された細胞を提供するための方法を提供する。さらに、成熟および分化の過程によって、出生前および出生後の器官において損傷された細胞を処置するかまたは置き換えるために用いられ得る治療的な細胞が得られる。
【0086】
本発明はまた、哺乳動物の始原性細胞、またはその核であって、除核された卵母細胞に移入された核を含む改変された生殖細胞(MGC)と命名された組成物を提供し、ここでPSCおよび卵母細胞は、同じ種の動物もしくは哺乳動物に由来するか、または異なる動物もしくは哺乳動物に由来する。哺乳動物のPSCは、限定はしないが、マウス、ラット、ヒト、非ヒト霊長類、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、ウシおよびヒツジを含む任意の動物に由来してもよい。1実施形態では、PSCは、哺乳動物の精原細胞またはその核である。別の実施形態では、PSCは、哺乳動物の卵母細胞またはその核である。除核および核移入の別の方法は、機械的方法および電気的刺激を利用する方法を含む、本発明の範囲内であるものとする。精原細胞または卵原細胞由来の任意の二倍体前駆細胞由来の核を用いてもよい。
【0087】
本発明のMGCは、全能性、多能性、多分化能または二機能性である。すなわち、MGCは、少なくとも1つのタイプの組織を形成し得、そしてさらに詳細にはMGCは、2つ以上のタイプの組織を形成し得る。
【0088】
一旦、MGCが生成されれば、本明細書に記載の種々の方法によってMGCを操作して、細胞の修復的/再生的な治療が可能な機能細胞を生成することができる。例えば、MGCを段階的な方式で、成熟幹細胞に代表的な特定の発達段階まで成熟させてもよい。
【0089】
本明細書に記載される段階的な方法では、MGCは、ほぼ6細胞の段階まで展開される。MGCは、6細胞の段階よりも展開されてもよいが、10細胞段階をこえれば、生殖細胞は、前駆細胞(progenitor cell)または前駆細胞(precursor cell)に分化し始める。次いで、6細胞段階のMGCは、種々の妊娠〜出生後段階から単離された細胞から単離された細胞由来の合図を用いて段階的方式で成熟される。妊娠〜出生後のドナー由来の細胞の少なくとも1つの群を用いて、MGCの成熟を促進する。しかし、所望の成熟状態に達するためにはMGCには細胞の2つ以上の群が必要であり得る。成熟MGCは、プライムされたMGCと呼ばれる。プライムされたMGCは、十分な段階特異的なレセプターを有し、その結果、宿主の動物または組織への移植の際に、インビボまたはインビトロで、このプライムされたMGCは、成熟幹細胞と同様に機能する。MGCの表面上で発現されたレセプターの一群を決定するために、MGCをスクリーニングするための方法は当該分野で周知である。
【0090】
さらに、MGCおよび前胚の、胚の、胎児のまたは出生後の幹細胞(すなわち、精原幹細胞)は、MGCまたは幹細胞の意図される使用に適切な成熟および分化のシグナルを含む細胞環境においてインビボで細胞を培養することによって成熟され得る。例えば、そして限定するつもりはないが、胚性幹細胞は、発達中の骨髄ニッチにおいて胚中で成熟する。造血と呼ばれる血球の発達は、骨髄における補填の前に発達中の胚において特定の組織における別個の段階を通過し、これは成人期を通じて続く。発達中の胚では、造血性幹細胞前駆体は、最初に卵黄嚢そして大動脈・性腺・中腎と呼ばれる領域で発達する。胚形成および器官形成の経過中、造血性幹細胞前駆体は、肝臓に、そして後には脾臓に遊走し、その後最終的に、出生の前には骨髄に定着する。従って、造血性、間充織幹細胞および成体多能性前駆細胞(MAPC)は、MGCおよび出生後生物体から単離され得る幹細胞から生成され得る。インビボの成熟の潜在的な部位としては、限定はしないが、胚盤胞、胎盤、卵黄嚢、傍大動脈内臓包葉、大動脈・性腺・中腎、子宮静脈または胎児肝臓を含む発達中の胚または発達中の胎児内の部位が挙げられる。
【0091】
本発明の1実施形態は、任意の動物によって生成されたMGCを提供し、そして宿主動物へプライムされたMGCを注入する工程を包含する治療に寄与するためにMGCを用いる方法を提供する。MGCは、同じ種由来の細胞または異なる種由来の細胞に由来してもよい。さらに、プライムされたMGCは、構成細胞と同じまたは異なる種の宿主に移植されてもよい。プライムされたMGCは、組織を修復して疾患を処置するために用いられ得る。
【0092】
本発明の別の実施形態では、細胞の再生/修復治療のために用いられ得るハイブリッド幹細胞が提供される。本発明のハイブリッド幹細胞は、多能性であって、意図されるレシピエントにカスタマイズされ、その結果、それらはこのレシピエントと免疫学的に適合性である。ハイブリッド幹細胞は、ドナー細胞、またはその核と宿主細胞との間の融合産物である。代表的には、この融合は、ドナーの核と除核された宿主細胞との間で生じる。このドナー細胞は、限定はしないが前胚由来の細胞、胚、胎児および出生後生物体を含む、任意の二倍体細胞であってもよい。さらに詳細には、ドナー細胞は、始原性細胞であってもよく、これには、限定はしないが、卵原細胞または分化したもしくは未分化の精原細胞、または胚性幹細胞が挙げられる。ドナー細胞の他の非限定的な例は、治療的に再プログラミングされた細胞、胚性幹細胞、胎児性幹細胞および成体多能性前駆細胞である。好ましくは、ドナー細胞は、意図されるレシピエントの表現型を有する。宿主細胞は、前胚、胚、胎児および出生後生物体を含むがこれに限定されない組織から単離されてもよく、そしてさらに詳細には、限定はしないが、胚性幹細胞、胎児性幹細胞、成体多能性前駆細胞および脂肪由来幹細胞が挙げられ得る。非限定的な実施例では、培養された細胞株は、ドナー細胞として用いられ得る。ドナーおよび宿主の細胞は、同じ個体由来であっても、または異なる個体由来であってもよい。
【0093】
本発明の1実施形態では、リンパ球は、ドナー細胞として用いられ、そして2工程方法を用いて、ドナー細胞を精製する。組織が解離された後、接着工程を行って、潜在的な混入している接着細胞を取り除き、その後に密度勾配精製工程を行う。ほとんどのリンパ球は静止期であり(G期にある)、従って再プログラミングのためにより大きい可塑性を与えるよりもメチル化状態を有し得る。
【0094】
本発明の実施形態においてドナー細胞として有用な多分化能または多能性の幹細胞または細胞株は、限定はしないが脂肪生成性、神経発生性、骨形成性、軟骨形成性および心臓発生の細胞タイプを含む種々の細胞タイプへの分化を受ける能力によって幹細胞として機能的に規定される。図2は、これらの5つの細胞タイプへのADSCの分化を示す。本発明の1実施形態では、ADSCは、それらが4回継代の前に分化した場合、最大の分化能力を示した。
【0095】
本発明の教示に従うハイブリッド幹細胞の生成のための宿主細胞除核は、種々の手段を用いて実施され得る。非限定的な例では、ADSCは、フィブロネクチンをコーティングした組織培養スライド上にプレートして、サイトカラシンDまたはサイトカラシンBのいずれかを用いて細胞とともに処理した。処理後、この細胞は、トリプシン処理して、再プレートしてもよく、そして除核後約72時間生きている。図3は、本発明の教示に従って作成した除核したADSCを示す。
【0096】
宿主細胞およびドナーの核は、限定はしないが電気融合、マイクロインジェクション、化学融合またはウイルスベースの融合を含む、当業者に公知の多数の融合方法のうちの1つを用いて融合されてもよく、そして細胞融合の全ての方法は、本発明の範囲内であることが想定される。図4〜6は、融合2〜6週間後、本発明の教示に従って作成されたハイブリッド幹細胞を示し、ここでは、培養の時間の増大とともに、ドナー細胞として同定された細胞の数が減少し、大型のハイブリッド幹細胞がみられることが実証されている。図7および図8は、蛍光標識細胞分取(FACS)(図7)および緑色蛍光タンパク質(GFP)発現についてのポリメラーゼ連鎖反応(図8)によるハイブリッド幹細胞の分析を示す。
【0097】
本発明の教示に従って作成されたハイブリッド幹細胞は、除核された宿主細胞由来の表面抗原およびレセプターを保有するが、発生上より若い細胞由来の核を有する。結果として、本発明のハイブリッド幹細胞は、サイトカイン、ケモカインおよび他の細胞シグナル伝達因子に対して受容性であり、さらに加齢に関連するDNA損傷のない核を保有する。
【0098】
本発明の教示に従って作成されたハイブリッド幹細胞は、種々の細胞タイプへ分化するように誘導され得る。1例であって、本発明のハイブリッド幹細胞の分化能に限定する意図はないが、ハイブリッド幹細胞は、脂肪生成細胞、骨形成細胞、軟骨形成細胞、神経発生細胞および心臓発生細胞に分化されてもよい。分化は、市販のキットを用いて、または当業者に公知の方法に従って行われ得る。本発明の教示に従って作成されたハイブリッド幹細胞から生成された分化細胞の非限定的な例は、図9(脂肪生成分化)、図10(骨形成分化)、図11(軟骨形成性分化)、図12(神経性分化)、および図13(心臓発生分化)に示される。
【0099】
本発明の教示に従って作成された治療的に再プログラミングされた細胞およびハイブリッド幹細胞は、細胞の再生/修復治療のための広範な治療適用に有用である。例えば、限定の意図ではないが、本発明の治療的に再プログラミングされた細胞およびハイブリッド幹細胞は、動物であってその天然の幹細胞が年齢に起因して枯渇されている動物中の幹細胞を補充するため、またはガンの放射線療法および化学療法のようなアブレーション治療のために用いられ得る。別の非限定的な実施例では、本発明の治療的に再プログラミングされた細胞およびハイブリッド幹細胞は、器官再生および組織修復において有用である。本発明の1実施形態では、治療的に再プログラミングされた細胞およびハイブリッド幹細胞は、ジストロフィーの筋および心筋梗塞のような虚血事象によって損傷された筋肉を含む損傷された筋組織を再活性化するために用いられ得る。本発明の別の実施形態では、本明細書に開示されるこの治療的に再プログラミングされた細胞およびハイブリッド幹細胞は、外傷的な損傷または手術の後、ヒトを含む動物において瘢痕を寛解させるために用いられ得る。本実施形態では、本発明の治療的に再プログラミングされた細胞およびハイブリッド幹細胞は、全身に、例えば、静脈内に投与され、そして損傷された細胞によって分泌されるサイトカインを循環することによって補充された、新しく外傷を与えられた組織の部位に遊走する。本発明の別の実施形態では、治療的に再プログラミングされた細胞およびハイブリッド幹細胞は修復または再生を必要とする処置部位に対して局所投与され得る。
【0100】
幹細胞は、本発明の成熟プロセスに対して不変的には感受性ではない。従って、本発明者らは、治療的な再プログラミングプロセスであって、これによって幹細胞はそれらが成熟因子に対して感受性である状態に誘導されるプロセスを開発する。この治療的な再プログラミングプロセスは、適切な条件下で、かつドナー細胞を成熟に感受性であるようにさせるのに十分な時間、刺激因子とともにインキュベーションすることによって達成され得る。
【0101】
本発明の方法に従って生成されたMGCおよびハイブリッド幹細胞はまた、本発明のプロセスを用いる治療的な再プログラミングおよび成熟に適切である。この得られた成熟されたまたは分化したMGC、ハイブリッド幹細胞および治療的に再プログラミングされた細胞は、細胞の再生/修復的な治療のために機能的な免疫適合性の幹細胞を提供する。
【0102】
胚性幹細胞(ESC)が成熟に用いられる場合、細胞は、ESCを成熟に応答性であるようにさせるための準備段階を必要とし得る。ESCにおける準備段階の非限定的な例は、成熟プロセスへの曝露の前の胚様体または造血幹細胞様状態へのESCの誘導である。胚様体は、分化を受け得る胚性幹細胞の球状の凝集体である。この準備段階はまた、特定の発達期間において機能的であるようにドナーのゲノム状態に影響する化学的物質または細胞抽出物の使用によって誘導され得る。
【0103】
以下の実施例は、本発明の1つ以上の実施形態を図示することを意味しており、以下に記載されるものに本発明を限定する意味ではない。
【実施例】
【0104】
(実施例1)
(成熟−前胚、胚、着床)
129/SvJ株のマウス由来の胚性幹細胞(ESC)を、受精3.5日後のC57BL/6J胚盤胞に注入した。胚盤胞内は、胚盤葉上層を含む内部細胞塊ニッチであり、これは胚葉の確立および最終的には胚の全ての細胞に関連する。ESC細胞は、このニッチを認識し、胚本体に適宜寄与するように指向されることによって応答する。短い培養期間後に、胚盤胞は、偽妊娠した雌に戻されて、出産まで発達させられた。ESC細胞は、内部細胞塊および細胞環境の指示下で異なる幹細胞に成熟して、胚形成および器官形成の特定の期間の間必要である細胞を支持する。ESC細胞が、胚形成および器官形成の間に存在する成熟因子に応答する能力に依存して、キメラマウスは、異なるレベルのキメラ現象で生まれる。数匹のマウスは極めて高いESC細胞の寄与を有し、数匹は低レベルを有する。ESC細胞は、それぞれの器官、ならびに器官の維持および修復に必要である細胞を供給するニッチに種々の程度まで一体化する。ESC細胞が、生殖腺維持および修復のために必要な細胞が位置する生殖系列のニッチを占めるならば、得られたESC由来精原幹細胞は、配偶子を生成し得る。得られたマウスキメラを交配する場合、3つの可能性のある結果が存在する:100%生殖系列寄与、ここでは全てのF1が129/SvJ起源である;混合生殖系列寄与、ここではF1は129/SvJおよびC57BL/6J起源の両方である;そして0%生殖系列寄与、ここではF1の全てがC57BL/6J起源である。生殖腺にはニッチが存在し、これは配偶子の維持、修復および生成、ならびにF1における混合集団の存在に寄与する細胞を供給することを担っており、これによってこれらのニッチが、幹細胞の2つの別個の集団(129/SvJおよびC57BL/6J)の可能性が同時に存在することを可能にすることが示唆される。ESC細胞が生殖系列のニッチを占めるのと同様に、ESC細胞が、骨髄のような他の幹細胞ニッチを占めることも可能であり、これによって造血細胞、間葉細胞または成体多能性前駆細胞のような幹細胞の単離、およびそれらを治療的に用いることが可能になる。
【0105】
(実施例2)
(発達中の胚における胚性幹細胞の成熟)
本実施例では、胚性幹細胞を、発達中の骨髄ニッチ中で成熟させる。造血と呼ばれる血球の発達は、骨髄における補填の前の発達中の胚において特定の組織における別個の段階を通過し、これは成人期を通じて続く。発達中の胚では、造血性幹細胞前駆体は、最初に卵黄嚢そして大動脈・性腺・中腎(AGM)と呼ばれる領域で発達する。胚形成および器官形成の経過中、造血性幹細胞前駆体は、肝臓に、そして後には脾臓に遊走し、その後最終的に、出生の前には骨髄に定着する。この特定の実施例では、造血性、間充織幹細胞および成体多能性前駆細胞(MAPC)は、出生後生物体から単離され得る幹細胞から生成される。
【0106】
胚性幹細胞(ESC)は、129/SvJ株のマウスに由来し、蛍光レポーター遺伝子(すなわち、GFP)でトランスフェクトされる。宿主のC57BL/6J雌性マウスを交配し、膣栓の発見の日をE0.5と指定する。時限性の妊娠における指定されたポイントでは(E.7.5−E18.0)、マウスを腹腔内ケタミン(1.5mg/kg)およびキシラジン(15mg/kg)を含有する0.9%NaClで麻酔する。テルブタリン(0.5mg/kg)を含有する0.9% NaClを皮下に投与して、子宮収縮を軽減する。次いで限定的な下部正中線開腹術を行って、両方の子宮角を外面化する。
【0107】
約10〜50μm未満のチップ直径を有する、熱して引っ張ったガラスのマイクロピペット(Sutter Instrument Co.)を、空気マイクロインフュージョンポンプに接続して、これを用いて約1×10個〜約1×10個のESCを胚の部位に5psiで送達した。成熟のためのESCの注射部位としては、限定はしないが、胎盤、卵黄嚢、傍大動脈内臓包葉、大動脈・性腺・中腎、子宮静脈または胎児肝臓が挙げられる。次いで、子宮を腹部に戻し、これを閉じて雌性マウスを回復させて、妊娠を出産まで進行させる。出生の約3ヵ月後、着床されたESC細胞を含む宿主のマウスを安楽死させて、大腿骨および脛骨を取り出して、氷上でHBSS+(Gibco−BRL)/2%FBS(Hyclone)/10mM HEPES緩衝液(Gibco−BRL)に入れる。骨を筋肉および脂肪組織がなくなるように浄化して、処理が終了するまで氷上に置く。次いで、脛骨および大腿骨を、HBSS+/2%FBS/10mM HEPES緩衝液でフラッシュして、骨髄細胞の懸濁物を得る。次いで骨髄単核球(BMMNC)をFicoll−Hypaque分離によって収集する。BMMNCを、1×10/cmで、フィブロネクチン−(FN;Sigma)でコーティングしたディッシュ上に、MAPC培地(60%DMEM−LG)(Gibco BRL)、40%のMCDB−201(Sigma)、1×インスリン−トランスフェリン−セレニウム、1×リノール酸−ウシ−血清−アルブミン、10−9Mのデキサメタゾン(Sigma)、10−4Mアスコルビン酸2−リン酸(Sigma)、100単位のペニシリン、1000単位のストレプトマイシン(Gibco BRL)、2%ウシ胎仔血清(FCS;Hyclone Laboratories)、10ng/mLのhPDGF−BB(ヒト血小板由来増殖因子−BB、R&D Systems)、10ng/mLのmEGF(マウス上皮増殖因子、Sigma)および1000単位/mLのmLIF(マウス白血病抑制因子、Chemicon))中でプレートする。BMMNC培養物を、5×10/cmで維持して、3〜4週間後に細胞を回収して、マイクロ磁気ビーズセパレーター(Miltenyi Biotec)を用いてCD45/Terr199細胞を枯渇させた。CD45/Terr199画分(約20%)を、FN処理した(10ng/mL)96ウェルプレートの1ウェルあたり10個の細胞でプレートして、0.5〜1.5×10/cmの密度で増殖させた。約1%のウェルが持続的に増殖するMAPC培養物を生じる。MAPCは、CD3、Gr−1、Mac−1、CD19、CD34、CD44、CD45、cKitおよび主要組織適合性複合体(MHC)クラス−Iおよびクラス−IIについて陰性の染色で特徴付けられる。
【0108】
(実施例3)
(治療的なクローニングおよび成熟)
治療的なクローニングにための成熟シグナルに応答性であるヒト始原性細胞(ドナー細胞)の調製を記載する。ある場合には、ドナー細胞は、成熟のために調製するためにさらなる工程を必要とする。ヒトを含む他の哺乳動物から始原性細胞(PSC)を調製するのに関与するプロセスは、特定の種に特異的である培地または化学物質に対する改変をできるだけの除外する以外は本明細書に記載されたプロセスと同様である。
【0109】
卵母細胞を卵巣刺激後に回収して、G1.2培地(Vitro Life,Goteborg,Sweden)中においてインビトロで成熟させる(減数第二分裂中期)。第一極体を有する卵母細胞を除核のために選択する。除核は、10%FBSおよび5μg/mLのサイトカラシンB(Sigma)を補充した、アミノ酸(hCR2aa)を含むHEPES−緩衝化Ca2+なしのCR2培地中で行う。この卵母細胞を、保持ピペットを用いて適所に保持し、微細な針を用いて透明帯上に小さいスリットを作る。第一極体および減数第二分裂中期の染色体を含む細胞質を針で取り出す。Hoechst33342(Sigma)を5分間用いて、除核された卵母細胞を染色することによって除核を確認して、エピ蛍光下で観察する。次いで、除核された卵母細胞を、10%FBSを補充したHEPES−緩衝化TCM−199培地(Life Technologies)中に入れる。ドナー細胞を実施例9に記載のとおり調製する。100μg/mLのフィトヘマグルチニン(植物性血球凝集素)(Sigma)を含有するhCR2aaで処理した除核した卵母細胞の囲卵腔に単一のドナー細胞を入れる。融合培地(0.26Mのマンニトール、0.1mMのMgSO、0.5mMのHEPESおよび0.05%(w/v)BSA)中にドナーPSCおよび除核された卵の組み合わせを配置することによって融合を行い、そしてBTX 453、3.2mmギャップのチャンバ中で3分の平衡後に融合する。この融合は、BTX Electro−cellマニュピュレーター200を用いて2つのDCパルスの1.75〜1.95kV/cmで15秒間誘導する。ドナー細胞核および除核された卵の融合産物はここでは、改変された生殖細胞と呼ばれる。次いで、改変された生殖細胞を融合後2時間培養する。改変された生殖細胞を10μMのカルシウムイオノフォアA23187に対してG1.2培地中で5分間曝露することによって、続いて2.0mMの6−ジメチルアミノプリン(DMAP)でのインキュベーションによって活性化を行い、そしてG1.2培地中で、6%CO、5%O、89%N中で、37℃で4時間インキュベートする。次いで、改変された生殖細胞をG1.2培地中で10回洗浄し、G1.2培地中で48時間培養し、続いてアミノ酸(hmSOFaa)とともにヒト改変合成卵管液(SOF)中で6日間培養する。hmSOFaaに対して10mg/mLのヒト血清アルブミン、および1.5mMのフルクトースを添加することによってhmSOFaaを調製した。0.1%のプロナーゼ(Sigma)での消化によって改変された生殖細胞から透明帯を取り除く。内部細胞塊(ICM)を、免疫手術によって改変された生殖細胞から単離して、このICMを100%の抗ヒト血清抗体(Sigma)とともに20分間インキュベートし、続いてさらに30分、モルモット補体(compliment)(Life Technologies)に5%CO中で、37℃で曝露する。改変された生殖細胞から単離されたICMは、0.1%ゼラチンコーティング4ウェル組織培養皿中で、マイトマイシンC不活性化初代マウス胚性線維芽細胞(PMEF)支持細胞層上で培養する。この段階では、この改変された生殖細胞は、改変胚性幹細胞に成熟する。改変胚性幹細胞は、DMEM/DMEM F12(1:1)(Life Technologies)、0.1mMのβメルカプトエタノール(Sigma Aldrich,Corp)、1%非必須アミノ酸、100単位/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、および4ng/mLの塩基性線維芽増殖因子(bFGF;Life Technologies)中で培養する。さらに、初回の継代までに、2,000単位/mLのヒトLIF(白血病抑制因子,Chemicon)をこの培地に添加する。次いで、細胞上で核型分析を行って、正倍数性である細胞株のみを成熟のために保持する。
【0110】
(実施例4)
(精巣からの始原性細胞の単離)
精巣を切除して被膜剥離する。精巣組織を繊細なハサミを用いて細く切って、1mg/mLのコラゲナーゼI型(Sigma)および0.5mg/mLのDNase(Sigma)を含有する培養培地(DMEM/F12)中に移す。消化は、37℃で10分間、110サイクル/分で作動する振盪水浴中で行う。単位重力で10分間の沈殿によって間質細胞を分離して、DMEM/F12中で洗浄する。
【0111】
精巣組織の基底層成分の最終消化を、コラゲナーゼI型(1mg/mL)、DNase(0.5mg/mL)、およびヒアルロニダーゼ(Sigma;0.5mg/mL)の混合物中で、初回の消化工程についてと同じ条件下で行う。得られた単一細胞懸濁物を培地ならびに1mMのEDTA(Sigma)および0.5%ウシ胎仔血清を含有するPBS中で連続的に洗浄する。白膜の未消化の残滓を、50μmのナイロンメッシュを通じて細胞懸濁液を濾過することによって除去する。この手順を通じて全ての細胞を5℃に保つ。解離された精巣細胞を、0.5%FBSを含有するPBS(PBS/FBS)中に懸濁する(5×10細胞/mL)。次いでこの細胞を氷上で20分間一次抗体とともにインキュベートして、過剰のPBS/FBSで2回洗浄して、FACS分析に用いる。一次抗体は、R−フィコエリトリン(PE)結合体化抗α6−インテグリン、アロフィコシアニン(APC)結合体化抗−c−キットおよびビオチン化抗αv−インテグリンを含む。二次試薬を用いる実験のためには、細胞を、APC結合体化ストレプトアビジンを用いて20分間さらにインキュベートして、ビオチン化抗体を検出する。全ての抗体または二次試薬は5μg/mlで用いる。コントロールの細胞は、抗体では処理しない。最終洗浄後、細胞を、1μg/mLのヨウ化プロピジウム(Sigma)を含有する2mLのPBS/FBS中に再懸濁し(10細胞/mL)、35μmの細孔サイズのナイロンスクリーンを通して試験管中に濾過して、分析まで氷上で暗野に保つ。細胞は抗体染色およびそれらの相対的な粒度または内部の複雑度に基づいて選別する(サイド・スキャッター,SSC)。細胞選別は、488nmのアルゴン(200mW)および633nmのヘリウムネオン(35mW)レーザーを装備したデュアルレーザーFACStar PLUS(Becton Dickinson)によって行う。アルゴンレーザーを用いてPEおよびヨウ化プロピジウムを励起して、放射を、PEについては575 DF 26フィルターで、そしてヨウ化プロピジウムについては610 DF 20フィルターで収集する。ネオンレーザーを用いて、APCを励起し、発光は、675 DF 20フィルターで検出する。死んだ細胞を、データ収集の時点でヨウ化プロピジウム陽性の事象を排除することによって除外する。細胞は、10%FBS(DMEM/FBS)を補充した2mLの氷冷DMEMを含有する5mLのポリエチレンチューブ中に分取する。α6−インテグリンhi/SSClo/c−kit(−)集団をドナー細胞として用いる。
【0112】
(実施例5)
(卵巣からの始原性細胞の単離)
動物を麻酔して卵巣を取り出す。あるいは、始原性細胞(PSC)は、卵巣のパンチ生検から単離され得る。次いで、PSCは顕微鏡の補助で単離する。始原性細胞は、幹細胞形態を有し(すなわち、大きい、丸いおよび平滑)、そして卵巣から機械的に取り出される。
【0113】
(実施例6)
(化学的因子を用いる治療再プログラミング)
本実施例は、化学物質を用いてゲノムのメチル化変化を誘導することによって、成熟の間にPSCが機能的で適切に応答するような、PSCの治療再プログラミングを記載する。
【0114】
始原性細胞を実施例4に記載されるとおりに単離する。α6−インテグリンhi/SSClo/c−kit(−)集団をドナー細胞として用いる。次いで、この細胞またはそこに含まれる核物質を、限定はしないが、5−アザ−2’−デオキシシチジン、ヒストンデアセチラーゼインヒビター、n−酪酸またはトリコスタチンAを含む種々の濃度のDNA脱メチル化因子に曝す。ゲノム改変後、始原性細胞は、成熟プロセスを受けるように準備される。
【0115】
(実施例7)
(細胞全体抽出物因子での治療的再プログラミング)
本実施例は、PSCの治療的再プログラミングであって、その結果PSCが胚性幹細胞由来の細胞全体(角質/細胞質体)を用いたゲノムのメチル化変化を誘導することによって成熟の間に機能的でありかつ適宜応答するような治療的再プログラミングを記載する。
【0116】
始原性細胞を実施例4に記載されるとおりに単離する。α6−インテグリンhi/SSClo/c−kit(−)集団を再プログラミング可能な細胞として用いる。細胞全体の抽出物に対して暴露するまでこれらの細胞を氷上で保管する。
【0117】
胚性幹細胞(ESC)由来の細胞全体抽出物の調製のために、細胞を、氷冷PBSを用いて3回洗浄し、続いて細胞溶解緩衝液(50mM NaCl,5mM MgCl、20mM Hepes,pH8.2および1mMのジチオスレイトール)中で洗浄する。次いで、この細胞を350×gで遠心分離して、プロテアーゼインヒビターを含有する細胞溶解緩衝液の1.5容積中に再懸濁して、氷上で45分間インキュベートする。次いで、この細胞をパルス超音波処理によってホモジナイズして、細胞全体溶解液を16,000×gで、20分間4℃で遠心分離する。次いでこの上清を収集してタンパク質濃度が約6mg/mLであることを確認する。
【0118】
前に単離したPSCを、氷冷PBSを用いて3回洗浄し、続いてHBSS中で2回洗浄する。次いで、この細胞を350×gで5分間、4℃で遠心分離して、14μlの氷冷HBSSあたり10,000個の細胞で再懸濁する。次いで、この細胞を37℃で2分間インキュベートし、続いてストレプトリシンO(SLO;Sigma)を、細胞数次第で最終濃度115ng/mL〜230ng/mLで添加して、細胞が堆積しないように保つために一定に振盪しながら37℃で50分間インキュベートする。次いで、この細胞を500×gで、5分間4℃で遠心分離して、上清を取り除く。次いでPSCを、ATP再生システムおよび各々1mMの4つのヌクレオシド三リン酸(NTP)を含む、50μlの前に調製した胚性幹細胞の細胞全体抽出物とともに、37℃で1〜2時間インキュベートする。次いで細胞を調製培地(1%非必須アミノ酸、1%Lグルタミン、100単位/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、0.1mMのβメルカプトエタノール、3,000単位/mLのLIFを含有するDMEM/20%FBS)に含まれる2mMのCaCl2の溶液中に再懸濁して、マイトマイシンC不活性化初代胚性線維芽細胞(PEF)層を含む0.1%ゼラチンを用いて前処理した48ウェルディッシュのうちの1ウェルに入れる。さらに、マイトマイシンC不活性化PEF層および50%コンフルエントのESCを含む0.1%ゼタチンで前処理した48ウェルのディッシュ中で抽出物処理したPSCを同時培養することも可能である。24時間後、支持細胞層に接着されなかった細胞を取り出して、抽出物曝露手順を、2回目はこの未接着の細胞で繰り返した。再プログラミングされた細胞(接着された細胞)を、培養して、胚性幹細胞特異的マーカー(すなわち、REX1、OCT4)についてアッセイし、成熟プロセスに曝露される前のインビトロの分化能力について試験する。
【0119】
(実施例8)
(細胞質抽出物因子を用いた治療的な再プログラミング)
本実施例は、PSCの治療的な再プログラミングであって、その結果PSCが胚性幹細胞由来の細胞質抽出物を用いたゲノムの改変を誘導することによって成熟の間に機能的でありかつ適宜応答するような治療的再プログラミングを記載する。
【0120】
始原性細胞を実施例4に記載されるとおりに単離する。α6−インテグリンhi/SSClo/c−kit(−)集団を再プログラミング可能な細胞として用いる。細胞質体抽出物に対する曝露までこれらの細胞を氷上で保管する。
【0121】
胚性幹細胞の抽出物の調製のために、ESCは、コンフルエンシーまで培養する。ESC細胞質体は、10μg/mLのサイトカラシンBを含有するFicoll−400(30%、25%、22%、18%および15%)の不連続密度勾配を用いて調製する。12.5%のFicoll−400中の1千万個のESCをこの勾配の上に注意深く重ねて、36℃で30分間40,000rpmで遠心分離する。細胞質体を15%および/または18%のレベルから収集する。次いでこの細胞質体を、氷冷PBSを用いて3回洗浄し、続いて細胞溶解緩衝液中で洗浄する。次いで、この細胞質体を350×gで遠心分離して、プロテアーゼインヒビターを含有する1.5体積の細胞溶解緩衝液中で再懸濁して、氷上で45分間インキュベートする。次いで、細胞質体をパルス超音波処理によって均質化し、次いでこの細胞質体を16,000×gで、20分間4℃で遠心分離する。次いでこの上清を収集して、タンパク質濃度が約6mg/mLであることを確認する。
【0122】
前に単離したPSCを、実施例7に示される方法に従って細胞質体抽出物とともにインキュベートする。
【0123】
(実施例9)
(角質抽出因子を用いた治療的な再プログラミング)
本実施例は、PSCの治療的な再プログラミングであって、その結果PSCが胚性幹細胞由来の核(核質)抽出物を用いたゲノムの改変を誘導することによって成熟の間に機能的でありかつ適宜応答するような治療的再プログラミングを記載する。
【0124】
始原性細胞を実施例4に記載されるとおりに単離する。α6−インテグリンhi/SSClo/c−kit(−)集団を再プログラミング可能な細胞として用いる。核抽出物に対する曝露までこれらの細胞を氷上で保管する。
【0125】
胚性幹細胞の核(核質)抽出物の調製のために、ESCは、コンフルエンシーまで培養する。ESC核質は、10μg/mLのサイトカラシンBを含有するFicoll−400(30%、25%、22%、18%および15%)の不連続密度勾配を用いて調製する。12.5%のFicoll−400中に含まれる1千万個のESCをこの勾配の上に注意深く重ねて、36℃で30分間40,000rpmで遠心分離する。核質を30%のレベルから収集する。次いでこの核質を、氷冷PBSを用いて3回洗浄し、続いて細胞溶解緩衝液中で洗浄する。次いで、この核質を350×gで遠心分離して、プロテアーゼインヒビターを含有する1.5体積の細胞溶解緩衝液中で再懸濁して、氷上で45分間インキュベートする。次いで、核質をパルス超音波処理によって均質化し、次いでこの核質を16,000×gで、20分間4℃で遠心分離する。次いでこの上清を収集して、タンパク質濃度が約6mg/mLであることを確認する。
【0126】
前に単離したPSCを、実施例7の方法に従って核質抽出物とともにインキュベートする。
【0127】
(実施例10)
(ハイブリッド幹細胞作成)
本実施例は、ハイブリッド幹細胞の生成を記載する。本実施形態に示されるプロセスを適用して、宿主として任意の除核された(前胚、胚、胎児または出生後)の幹細胞を用い、そしてドナーとしては、ドナー細胞が二倍体(2N)であると限定するだけで、PSCまたは任意の細胞(前胚性、胚性、胎児性または出生後)を用いて、ハイブリッド幹細胞を生成し得る。さらに、ドナー細胞またはその核は、遺伝的な機能不全を補正して、幹細胞ベースの治療を介して補正された遺伝子または導入遺伝子を送達するように遺伝的に改変され得る。ドナー細胞および宿主細胞は、限定はしないが電気的、ウイルス性の、化学的なまたは機械的な融合を含む方法によって融合され得る。さらに宿主細胞は、化学的な、x線照射、レーザー照射または機械的な手段を含むがこれに限定されない方法によって除核され得る。
【0128】
始原幹細胞を実施例4に記載されるとおりに単離する。α6−インテグリンhi/SSClo/c−kit(−)集団をドナー細胞として用いる。除核された胚性幹細胞との融合までこれらの細胞を氷上で保管する。
【0129】
胚性幹細胞の細胞質の調製のために、ESCは、コンフルエンシーまで培養する。次いで、胚性幹細胞の細胞質体を、10μg/mLのサイトカラシンBを含有するFicoll−400(30%、25%、22%、18%および15%)の不連続密度勾配を用いて調製する。12.5%のFicoll−400中に含まれる1千万個のESCをこの勾配の上に注意深く重ねて、36℃で30分間40,000rpmで遠心分離する。細胞質体を15%および/または18%の領域から収集して、細胞融合まで氷上に保管した。
【0130】
ドナー細胞(PSC)またはその核を、サイトパルス融合培地(cytopulse fusion medium)(CytoPulse)中で3回洗浄して、5×10個の細胞または核を含む150μLの氷冷サイトパルス融合培地に再懸濁する。除核された宿主細胞(ESC)をサイトパルス融合培地中で3回洗浄して、1×10個の細胞を含む150μLの氷冷サイトパルス融合培地に再懸濁する。2つの細胞集団を穏やかに混合して、Cytopulse(サイトパルス)融合チャンバに入れて、以下のパラメーターで電気融合する:プレ−サイン、開始電圧:65ボルト、間隔:50ボルト、周波数:0.8kHz、最終ボルト:65ボルト;パルス、振幅:200ボルト、間隔:0.05ミリ秒;そしてポスト−サイン、開始電圧:65ボルト、間隔:50秒、周波数:0.8kHz、最終ボルト:5ボルト。次いで細胞を、チャンバ中に残したままで、37℃で30分間回復させる。融合の15分後、FBSを10%の最終血清濃度に添加して、さらに15分インキュベートする。次いでこの融合された細胞を取り出して、室温で500×gで5分間の遠心分離によってDPBS/20%血清中で1回洗浄して、調製培地中に再懸濁する。次いで、融合した細胞を、マイトマイシンC不活性化PEF層を含む0.1%ゼラチンで前処理した48ウェルのディッシュのウェルに入れる。さらに、マイトマイシンC不活性化PEF層および50%コンフルエントESCを含む0.1%ゼラチンで前処理した48ウェルのディッシュ中でこの幹細胞ハイブリッドを同時培養することも可能である。この融合された細胞を、数継代増殖させてハイブリッド幹細胞安定性およびドナー細胞ゲノム再プログラミングを決定する。次いで、ハイブリッド幹細胞を核型にして、正倍数性である細胞株のみを成熟のために保持する。
【0131】
1つの実験では、脂肪由来幹細胞(ADSC)を、緑色蛍光タンパク質(GFP)を構成的に発現するTgN(GFPU)5Nagyマウスから除核して、細胞質体を電気融合によってR26Rマウス由来のリンパ球に融合した。このマウスの株を、それらの核におけるNeoマーカーの存在に単に起因してこの実験のためのリンパ球の供給源として選択した。宿主細胞におけるGFPの存在によって宿主の核の追跡が可能になる。この融合によって生成されるハイブリッド幹細胞を培養して、GFPの存在(除核された宿主細胞の存在を示すのであって、幹細胞ハイブリッドではない)についてアッセイした。融合後2週内に、推定できる融合産物である、個々のGFP(−)細胞を培養物中にみることができ(図4)、そして4週内にGFP(−)細胞のコロニーが出現した(図5)。これらの細胞を、GFP(−)細胞について保管し(図7)、そして培養物中で増殖させた。
【0132】
本発明の上記の実施形態において生成されるハイブリッド幹細胞を、GFP(宿主核)およびNeo(ドナー核)の存在について蛍光標識細胞分取(FACS)についてさらに特徴付けた。単一細胞ポリメラーゼ連鎖反応分析によって、ハイブリッド幹細胞は、ドナーの核および除核された宿主細胞のハイブリッドであることが確認された(図8)。
【0133】
(実施例11)
(胚様体形成)
以前に単離されたESCを誘導して培養培地からLIFを撤回することによって胚様体を形成する。非接着組織培養皿のフタ上に各々1,200個の細胞の20μLの液滴を置くことによって凝集物を誘導し、次いでこれを滅菌PBSに反転する。この培養培地に線維芽細胞増殖因子2および血管内皮増殖因子A165を補充する。LIFをこの培地から取り出して液滴が形成される日が0日目である。この液滴を37℃および5%COの環境で3〜5日間、培養皿のフタ上に垂らして残す。3〜5日後、この液滴を各々8ウェルのガラス培養スライドのウェルに移す。全ての分析は3回以上の個々の時点で4つ以上の胚様体で行う。
【0134】
(実施例12)
(成熟幹細胞での梗塞した心筋の修復)
以下の例は、出生後の供給源由来の治療的に再プログラミングされたPSCが、異種移植片胎児ヒツジモデルにおいて出生後幹細胞に成熟されて、梗塞した心筋を修復するために細胞ベースの治療に用いられるプロセスを記載する。新鮮に単離されたPSCの使用に加えて、凍結または保存された幹細胞が用いられてもよい。
【0135】
始原性細胞を実施例4に記載されるとおりに単離する。α6−インテグリンhi/SSClo/c−kit(−)集団をドナー細胞として用いる。ドナー細胞またはその核物質は、5−アザ−2’−デオキシシチジン、ヒストンデアセチラーゼインヒビター、n−酪酸またはトリコスタチンAのような種々の濃度のDNA脱メチル化因子に曝すことによって治療的に再プログラミングする。脱メチル化後、治療的に再プログラミングされたPSCは、本実施例の治療的クローニングにおいて、成熟プロセスを受けるように準備される。
【0136】
卵巣刺激の後に卵母細胞を収集して、G1.2培地中で、インビトロで成熟させ(減数第二分裂中期)。第一極体を有する卵母細胞を、除核のために選択する。除核は、10%FBSおよび5μg/mLのサイトカラシンBを補充したhCR2aa中で行う。この卵母細胞を、保持ピペットを用いて適所に保持し、微細な針を用いて透明帯上に小さいスリットを作る。第一極体および減数第二分裂中期の染色体を含む細胞質を針で取り出す。Hoechst33342を5分間用いて、除核された卵母細胞を染色することによって除核を確認して、エピ蛍光下で観察する。次いで、除核された卵母細胞を、10%FBSを補充したHEPES−緩衝化TCM−199培地中に入れる。ドナー細胞を実施例9に前に記載のとおり調製する。100μg/mLのフィトヘマグルチニン(植物性血球凝集素)を含有するhCR2aaで処理した除核した卵母細胞の囲卵腔に単一のドナー細胞を入れる。融合培地(0.26Mのマンニトール、0.1mMのMgSO、0.5mMのHEPESおよび0.05%(w/v)BSA)中にドナーPSCおよび除核された宿主細胞の組み合わせを配置することによって融合を行い、そしてBTX 453、3.2mmギャップのチャンバ中で3分の平衡後に融合する。この融合は、BTX Electro−cellマニュピュレーター200を用いて2つのDCパルスの1.75〜1.85kV/cmで15秒間誘導する。ドナー細胞核および除核された宿主細胞の融合産物はここでは、改変された生殖細胞と呼ばれる。次いで、この改変された生殖細胞を融合後2時間培養する。改変された生殖細胞を10μMのカルシウムイオノフォアA23187に対してG1.2培地中で5分間曝露することによって、続いて2.0mMのDMAPとのインキュベーションによって活性化を行い、そしてG1.2培地中で、6%CO、5%O、89%N中で、37℃で4時間インキュベートする。次いで、この改変された生殖細胞をG1.2培地中で10回洗浄し、G1.2培地中で48時間培養し、続いてアミノ酸(hmSOFaa)とともにヒト改変SOF中で6日間培養する。HmSOFaaに対して10mg/mLのヒト血清アルブミン、および1.5mMのフルクトースを添加することによってhmSOFaaを調製した。0.1%のプロナーゼでの消化によって改変された生殖細胞から透明帯を取り除く。次いで、免疫手術によって改変された生殖細胞からICMを単離して、このICMを、100%の抗ヒト血清抗体とともに20分間インキュベートし、続いてさらに30分、モルモット補体(compliment)に5%CO中で、37℃で曝露する。改変された生殖細胞から単離されたICMは、0.1%ゼラチンコーティング4ウェル組織培養皿中で、マイトマイシンC不活性化PEF支持細胞層上で培養する。この段階では、この改変された生殖細胞は、改変ESCに成熟する。改変ESCは、DMEM/DMEM F12(1:1)、0.1mMのβメルカプトエタノール、1%非必須アミノ酸、100単位/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、および4ng/mLのbFGF中で培養する。さらに、初回の継代までに、2,000単位/mLのヒトLIFをこの培地に添加する。次いで、細胞上で核型分析を行って、正倍数性である細胞株のみを成熟のために保持する。
【0137】
ある場合には、ESCは、成熟の前に分離工程を受けなければならないかもしれない。非限定的な例は、成熟プロセスに対する曝露の前の胚様体または造血幹細胞様の状態に誘導されたESCの場合である。さらに、成熟調製物は、胚性幹細胞またはその核の、限定はしないが、化学物質、生化学物質または細胞抽出物(細胞質体および/または核)曝露を含む手段によって誘導され得る。
【0138】
羊膜気泡手順(amniotic bubble procedure)を用いて免疫前(妊娠の48〜62日)の雌性胎児ヒツジレシピエントに百万個の雄性ESCを注射する。要するに、48時間の絶食期間後、母体雌ヒツジにケタミン(10mg/kg、筋肉内)を注射して、気管内チューブを介した吸入によって0.5〜1.0%のハロタン−酸素混合物を与える。液体および抗生物質(2百万単位のペニシリンおよび400mgのカナマイシン)の投与のために外頸静脈にカニューレを挿入する。正中線切開によって子宮を露出させて、羊膜を完全に残したままで、電気焼灼器で子宮筋層を分割する。羊膜嚢内で胎児を操作して、直接視認しながら、胚性幹細胞を胎児の腹腔に注射する。子宮および母体の体壁を閉じて、胎児を出生させる。
【0139】
出生の約3ヵ月後、移植された胚性幹細胞を含む宿主のヒツジを安楽死させる。赤血球がHOで溶解される前に、リンパ球分離培地(BioWhittaker)でのFicoll密度分離によって、単核骨髄細胞(BMC)を単離する。雄性細胞を、Y染色体の存在によって選択して、1×10個のBMC/mLをテフロン(登録商標)バッグ(Vuelife,Cell Genix)に入れ、2%熱不活性化自家血漿を補充したX−Vivo 15培地(BioWhittaker)中で培養する。翌日、BMCを回収して、ヘパリン添加生理食塩水を用いて3回洗浄し、その後にヘパリン添加生理食塩水に最終再懸濁する。生存度は約93±3%であると確認される。この細胞をヘパリン処理して、濾過し、冠内の移植の間の細胞の凝固および微少塞栓を防ぐ。一晩の培養後に回収された単核細胞の平均数は2.8×10個であり、これは0.65±0.4%のAC133−陽性細胞および2.1±0.28%のCD34陽性細胞からなる。臨床的に用いた細胞調製物の全ての微生物学的試験によって陰性であることが証明された。生存度および質のエキソビボコントロールとして、H5100培地(Stem Cell Technology)で増殖した1×10個の細胞は、培養物中で間葉細胞を生成し得ることが見出されている。BMC細胞を凍結させて、将来の使用のために細胞バンクに保管する。
【0140】
心梗塞の時点で、凍結保存された細胞を解凍して培養する。急性の梗塞の発現の5〜9日後、細胞を梗塞した領域に直接移植する。これは梗塞に関連する動脈内に配置されたバルーンカテーテルの使用で達成される。前の梗塞血管閉塞の部位でのバルーンの位置決め後、経皮経管冠動脈形成(PTCA)を各々2〜4分間に6〜7回行う。この間に、各々が約1.5〜4×10個の単核細胞を含む2〜3mLの細胞懸濁液の6〜7の分画の高圧注入を用いて、バルーンカテーテルを介した冠動脈内細胞移植を行う。血管形成術によって細胞の逆流を完全に妨げて、同時にバルーン膨張の部位を越えるストップフローを生じて、梗塞領域への細胞の高圧注入を促進する。これによって細胞遊走のための接触時間の延長が可能になる。
【0141】
(実施例13)
(脂肪由来ハイブリッド幹細胞の生成)
以下は、ハイブリッド幹細胞の調製であって、その結果、この幹細胞が細胞ベースの治療において機能的であり、適宜応答するようになるハイブリッド幹細胞の調製のための簡略な説明である。このハイブリッド幹細胞は、除核された脂肪由来の幹細胞(宿主細胞)およびPSC、またはそれら(ドナー細胞)の核に由来する。この脂肪由来幹細胞(ADSC)は、ハイブリッド幹細胞のドナー細胞として機能する前に、必要に応じて治療的に再プログラミングされ得る。
【0142】
脂肪由来幹細胞は、129/SvJマウス由来であった。要するに、胃および腸を囲む内蔵脂肪を取り出して、滅菌したハサミで細かく切った。次いでこの刻んだ脂肪を、等容積のカルシウム/マグネシウムなしのダルベッコのリン酸緩衝化生理食塩水(DPBS−)で3回洗浄して、各々の洗浄工程後に500×gで5分間遠心分離して浮遊している脂肪細胞を取り除く。I型コラゲナーゼ(0.075%,Sigma)をこの刻んだ脂肪組織に加えて、その混合物を、穏やかに撹拌しながら37℃で30分間インキュベートして、10%のFBSを含む等容積のDMEMをこの混合物に添加した。次いでこの混合物を500×gで10分間、遠心分離して、細胞ペレットを、10%FBSを含有するDMEM中に再懸濁した。次いで、この混合物を100μmのナイロンメッシュを通して濾過して、500×gで10分間遠心分離し、10%FBSおよび1×抗生物質/抗真菌剤を含むDMEM(基本培地)中に再懸濁した。次いで、この細胞を4回継代の間培養して、10ng/mLのフィブロネクチンコーティング25×75mm組織培養スライド上にプレートした。ハイブリッド幹細胞作成の日に、2μg/mLのサイトカラシンD(最終濃度)をこの培地に添加して、そのスライドを37℃で120分間インキュベートした。120分のインキュベーション工程後、このスライドをスイングバケット遠心分離機で10,000×gで、基本培地中において1時間遠心分離した。2時間の回復期間後、この細胞をトリプシン処理して、細胞融合物を調製した。
【0143】
始原性細胞は、実施例4に記載されるとおりに調製して、α6−インテグリンhi/SSClo/c−kit(−)集団をドナー細胞として用いた。ドナー細胞またはその核は、サイトパルス融合培地(CytoPulse)中で3回洗浄して、5×10個の細胞を含む150μLの氷冷サイトパルス融合培地に再懸濁する。前に単離された除核された宿主細胞(脂肪由来幹細胞)を、スライドからトリプシン処理して、サイトパルス融合培地中で3回洗浄して、1×10個の細胞を含む150μLの氷冷サイトパルス融合培地に再懸濁する。2つの細胞集団を穏やかに混合して、Cytopulse(サイトパルス)融合チャンバに入れて、以下のパラメーターで電気融合する:プレ−サイン、開始電圧:65ボルト、間隔:50ボルト、周波数:0.8kHz、最終ボルト:65ボルト;パルス:振幅:200ボルト、間隔:0.05ミリ秒;そしてポスト−サイン、開始電圧:65ボルト、間隔:50秒、周波数:0.8kHz、最終ボルト:5ボルト。次いでこの細胞を、チャンバ中に残したままで、37℃で30分間回復させ、融合の15分後、FBSを10%の最終血清濃度に添加して、さらに15分インキュベートする。次いでこの融合された細胞を取り出して、DPBS/20%血清中で1回洗浄して、基本培地中に再懸濁する。
【0144】
(実施例14)
(成体多能性前駆細胞ハイブリッド幹細胞の生成)
以下は、細胞ベースの治療において機能的であり、適切に応答するハイブリッド幹細胞の調製のための簡略な説明である。このハイブリッド幹細胞は、除核された成体多能性前駆細胞(宿主細胞)およびPSC、またはそれら(ドナー細胞)の核に由来する。この成体多能性前駆細胞(MAPC)は、ハイブリッド幹細胞のドナー細胞として機能する前に、必要に応じて治療的に再プログラミングされ得る。
【0145】
骨髄細胞(BMC)を収集して、培養培地に再懸濁して、氷上に保持する。骨髄単核細胞(BMMNC)をFicoll−Hypaque分離によって単離して、フィブロネクチンコーティングしたディッシュ上にMAPC培地中に1×10/cmでプレートする。このBMMNC培養物を、5×10/cmで維持して、3〜4週間後に細胞を回収して、マイクロ磁気ビーズセパレーターを用いてCD45/Terr199細胞を枯渇させた。CD45/Terr199集団(約20%)を、FN処理した96ウェルディッシュの1ウェルあたり10個の細胞でプレートして、0.5〜1.5×10/cmの密度で増殖させた。約1%のウェルが持続的に増殖するMAPC培養物を生じる。次いで、これらの細胞を、フィブロネクチンコーティングした25×75mmの組織培養スライド上にプレートすることによって、除核のために増殖させる。ハイブリッド幹細胞作成の日に、2μg/mLのサイトカラシンD(最終濃度)をこの培地に添加して、そのスライドを37℃で120分間インキュベートする。120分のインキュベーション工程後、このスライドをスイングバケット遠心分離機で10,000×gで、MAPC培地中において1時間遠心分離した。2時間の回復期間後、この細胞をトリプシン処理して、細胞融合物のために調製する。
【0146】
ドナー細胞(PSC)は、実施例4に記載されるとおりに調製して、α6−インテグリンhi/SSClo/c−kit(−)集団をドナー細胞として用いた。ドナー細胞またはその核は、サイトパルス融合培地中で3回洗浄して、5×10個の細胞を含む150μLの氷冷サイトパルス融合培地に再懸濁する。前に単離された除核された宿主細胞(MAPC)を、スライドからトリプシン処理して、サイトパルス融合培地中で3回洗浄して、150μLの氷冷サイトパルス融合培地中で1×10個の細胞に再懸濁する。2つの細胞集団を穏やかに混合して、Cytopulse(サイトパルス)融合チャンバに入れて、以下のパラメーターで電気融合する:プレ−サイン、開始電圧:65ボルト、間隔:50ボルト、周波数:0.8kHz、最終ボルト:65ボルト;パルス:振幅:200ボルト、間隔:0.05ミリ秒;そしてポスト−サイン、開始電圧:65ボルト、間隔:50秒、周波数:0.8kHz、最終ボルト:5ボルト。次いでこの細胞を、チャンバ中に残したままで、37℃で30分間回復させ、融合の15分後、FBSを10%の最終血清濃度に添加して、さらに15分インキュベートする。次いでこの融合された細胞を取り出して、DPBS/20%血清中で1回洗浄して、MAPC培地中に再懸濁する。
【0147】
(実施例15)
(ハイブリッド幹細胞を用いる梗塞された心筋の修復)
以下は、梗塞した心筋を修復するための細胞ベースの治療において、ハイブリッド幹細胞が用いられるプロセスを記載する。本実施例では、この患者は心筋梗塞について高リスクである。ハイブリッド幹細胞は、除核された宿主細胞(骨髄細胞)および出生後ドナー細胞(PSC)由来である。宿主細胞は、患者から、または幹細胞バンクもしくは任意の他の供給源から得ることが可能で、HLAタイプの免疫拒絶には関係ない。なぜなら、この作成されたハイブリッド幹細胞は、患者のPSC由来のゲノム物質を含むからである。
【0148】
出生後ドナー細胞の単離は、実施例4に記載されるとおりであり、α6−インテグリンhi/SSClo/c−kit(−)集団をドナー細胞として用いる。ある場合には、ドナー細胞またはその核は、宿主の細胞質に対してさらに受容性にさせるために、宿主細胞との融合の前に調製工程を受けてもよい。この調製工程はまた、限定はしないが、ドナー細胞のゲノム状態に影響して、宿主の細胞質に対して機能的でありかつ受容性であるようにする化学物質、生化学物質または細胞抽出物による誘導を含み得る。
【0149】
赤血球がHOで溶解される前に、リンパ球分離培地上でFicoll密度分離によって、単核骨髄細胞(BMC)を単離する。一晩の培養のために、1×10個のBMC/mLをテフロン(登録商標)バッグに入れて、2%熱不活性化自家血漿を補充したX−Vivo 15培地中で培養する。翌日、BMCを回収して、ヘパリン添加生理食塩水を用いて3回洗浄し、その後にヘパリン添加生理食塩水に最終再懸濁する。生存度は約93±3%である。ヘパリン処理および濾過を行って、冠内の移植の間の細胞の凝固および微少塞栓を防ぐ。一晩の培養後に回収された単核細胞の平均数は2.8×10個である;これは0.65±0.4%のAC133−陽性細胞および2.1±0.28%のCD34陽性細胞からなる。細胞調製物の微生物学的試験は陰性である。生存度および質のエキソビボコントロールとして、H5100培地で増殖した1×10個の細胞は、培養物中で間葉細胞を生成し得ることが見出されている。
【0150】
次いで、新鮮にまたは前に凍結保存された宿主細胞を培養して、フィブロネクチンコーティングした25×75mmの組織培養スライド上にプレートする。ハイブリッド幹細胞作成の日に、2μg/mLのサイトカラシンD(最終濃度)をこの培地に添加して、そのスライドを37℃で120分間インキュベートする。120分のインキュベーション工程後、このスライドをスイングバケット遠心分離機で、2%の熱不活性化自家血漿または2μgのサイトカラシンDを含むH5100培地を補充したX−Vivo 15培地中で、10,000×gで1時間遠心分離する。2時間の回復期間後、この細胞をトリプシン処理して、細胞融合物のために調製する。この宿主細胞を、スライドからトリプシン処理して、融合のために調製する。ドナー細胞またはその核を、サイトパルス融合培地中で3回洗浄して、5×10個の細胞を含む150μLの氷冷サイトパルス融合培地に再懸濁する。除核された宿主細胞(BMC)を、サイトパルス融合培地中で3回洗浄して、150μLの氷冷サイトパルス融合培地中で1×10個の細胞に再懸濁する。2つの細胞集団を穏やかに混合して、Cytopulse(サイトパルス)融合チャンバに入れて、以下のパラメーターで電気融合する:プレ−サイン、開始電圧:65ボルト、間隔:50ボルト、周波数:0.8kHz、最終ボルト:65ボルト;パルス:振幅:200ボルト、間隔:0.05ミリ秒;そしてポスト−サイン、開始電圧:65ボルト、間隔:50秒、周波数:0.8kHz、最終ボルト:5ボルト。次いでこの細胞を、チャンバ中に残したままで、37℃で30分間回復させ、融合の15分後、FBSを10%の最終血清濃度に添加して、さらに15分インキュベートする。次いでこの融合された細胞を取り出して、DPBS/20%血清中で1回洗浄して、2%熱不活性化自家血漿を補充されたX−Vivo 15培地またはH5100培地中に再懸濁する。この細胞を、培養して、HLAタイプの適合性を試験するために増殖する。次いでこの細胞を凍結させて将来の細胞治療の使用のために細胞バンクに保管する。
【0151】
心筋梗塞の時点で、凍結保存されたハイブリッド幹細胞を解凍して培養する。急性の梗塞の出現の5〜9日後、細胞を梗塞した領域に直接移植する。これは梗塞に関連する動脈内に配置されたバルーンカテーテルの使用で達成される。前の梗塞血管閉塞の部位でのバルーンの正確な位置決め後、経皮経管冠動脈形成(PTCA)を各々2〜4分間に6〜7回行う。この間に、各々が約1.5〜4×10個の細胞を含む2〜3mLの細胞懸濁液の6〜7の分画の高圧注入を用いて、バルーンカテーテルを介した冠動脈内細胞移植を行う。血管形成術によって細胞の逆流を完全に妨げて、同時にバルーン膨張の部位を越えるストップフローを生じて、梗塞領域への細胞の高圧注入を促進する。これによって細胞遊走のための接触時間の延長が可能になる。
【0152】
他に示さない限り、本明細書および特許請求の範囲で用いられる、成分、特性、例えば、分子量、反応条件などの量を表している全ての数は、全ての場合に、「約、およそ(about)」という用語によって改変されるものとして理解されるべきである。従って、反対して示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲で示される数値的なパラメーターは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に依存して変化し得る近似である。最低限でも、そして特許請求の範囲と等価な理論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値的なパラメーターは、報告された有効数字の数に照らして、そして通常の四捨五入技術を適用することによって少なくとも構築されるべきである。本発明の広範な範囲を説明している数的な範囲およびパラメーターは近似であるにもかかわらず、特定の実施例に示される数値は、できるだけ正確に報告される。しかし、任意の数値は生得的に、それらのそれぞれの試験測定値に見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含む。
【0153】
本発明の記載の文脈において(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)用いられる「1つの、ある(a)」、および「1つの、ある(an)」、および「この、その(the)」という用語ならびに類似の指示対象は、本明細書に他に示さない限り、または文脈と明確に矛盾しない限り、単数および複数の両方をカバーすると解釈されるべきである。本明細書の値の範囲の列挙は単に、この範囲内におさまる各々の別の値について個々に言及するという簡略な方法として用いるものとする。本明細書において他に示されない限り、各々の個々の値は、あたかもそれが個々に本明細書に言及されているかのように本明細書に援用される。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に他に示さない限り、または文脈と明確に矛盾しない限り、任意の適切な順序で行われてもよい。本明細書に示される任意のかつ全ての実施例、または例示的な言葉(例えば、「〜など、〜のような(such as)」)の使用は、単に本発明を良好に解明するものであり、他に特許請求される本発明の範囲に対して限定を課すことはない。本明細書ではどの言語も、本発明の実施に必須の任意の請求されない構成要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0154】
本明細書に開示される本発明の別の構成要素または実施形態の分類は、限定と解釈されるべきではない。各々の群のメンバーは、個々に、または本明細書で見出される群の他のメンバーもしくは他の構成要素との任意の組み合わせで、言及されて請求されてもよい。ある群の1つ以上のメンバーは、便宜性および/または特許性の理由で、ある群に含まれても、またはそれから欠失されてもよい。任意のこのような包含または欠失が生じる場合、本明細書は、この群を改変として含むものと本明細書においてみなされ、従って、添付の特許請求の範囲で用いられる全てのマーカッシュ(Markush)グループの書面の記載を満たす。
【0155】
本発明の好ましい実施形態は、本明細書に記載され、これは本発明を行うための本発明者らに公知の最適の様式を含む。当然ながら、これらの好ましい実施形態の変異は、前述の説明を読めば、当業者に明白になる。本発明者らは、当業者が、必要に応じてこのような変異を採用すると予想し、そして本発明者らは、本明細書に詳細に記載されるもの以外に本発明が実施されることを意図する。従って、本発明は、適用可能な法律によって認可されるとして本明細書に付加される特許請求で引用される主題の全ての改変および均等物を含む。さらに、上記の構成要素の任意の組み合わせは、その可能な全ての変異が、本明細書に他に示されない限り、または状況によって明確に矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【0156】
さらに、本出願を通じて特許および発行された刊行物に対して多数の引用が行われている。各々の上記の引用文献および発行された刊行物は、その全体が参考として本明細書に個々に援用される。
【0157】
締めくくりに、本明細書に開示される本発明の実施形態は、本発明の原理の例示であることが理解されるべきである。使用され得る他の改変は、本発明の範囲内である。従って、一例としてであって、限定ではないが、本発明の代替的な構成が、本明細書の教示に従って利用され得る。従って、本発明は、正確に示されかつ記載されるものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0158】
本特許または出願書類は、カラーで行った少なくとも1つの図面を含む。カラー図面(単数または複数)を含む本特許または特許出願刊行物のコピーは、要求および必要な費用の支払いがあれば特許庁によって提供される、
【図1】図1は、本発明の教示に従いTgN(GFPU)5Nagyマウスから単離された脂肪由来幹細胞(adipose−derived stem cell)(ADSC)を示す。図1aは、蛍光顕微鏡によって細胞中の緑色蛍光タンパク質(GFP)発現を示す。図1bは、位相差顕微鏡下の図1aと同じ細胞を示す。
【図2】図2は、本発明の教示に従って作成された分化したADSCを示す。脂肪由来幹細胞は、5つの組織タイプ(神経性、脂肪生成、骨形成性、軟骨形成および心臓発生)に分化するように誘導され、そして分化した細胞およびコントロールの細胞は、Oil Red O(脂肪生成)、Von Kossa(骨形成性)およびAlcian Blue(軟骨形成)については組織学によって、そしてネスチン発現(神経性)および心臓トロピニンI(心臓発生)について免疫組織化学によってアッセイする。
【図3】図3は、本発明における教示に従って行われるADSCの除核を示す。図3aは、除核後のサイトカラシンD処理ADSCを示す。図3bは、コントロール細胞を示す。図3cは、処置の3時間後のサイトカラシンD処理ADSCを示す。
【図4】図4は、本発明の教示に従って作成された融合2週後の幹細胞ハイブリッドを示す。
【図5】図5は、本発明の教示に従って作成された融合4週後の幹細胞ハイブリッドを示す。図5aは、幹細胞ハイブリッド培養物におけるGFP陽性染色細胞を示す。図5bは、位相差顕微鏡下で観察された図5aと同じ細胞を示す。
【図6】図6は、本発明の技術に従って行った融合6週後の幹細胞ハイブリッドを示す。図6aは、幹細胞ハイブリッド培養物におけるGFP陽性染色細胞を示す。図6bは、位相差顕微鏡下で観察された図6aと同じ細胞を示す。
【図7】図7は、本発明の技術に従って行ったハイブリッド幹細胞の蛍光標識細胞分取(FACS)分析を示す。コントロール(−)GFPパネルは、GFPを発現しないコントロール細胞を示す;G3.8ハイブリッドのパネルは、G3.8幹細胞ハイブリッドクローンにおけるGFP発現を示し、そしてG3.9ハイブリッドパネルは、G3.9幹細胞ハイブリッドクローンにおけるGFP発現を示す。
【図8】図8は、本発明の教示に従って作成されたハイブリッド幹細胞クローンからの単独の細胞のGFPのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅の結果を示す。
【図9】図9は、本発明の教示に従って作成されたハイブリッド幹細胞の脂肪生成分化を示す。
【図10】図10は、本発明の教示に従って作成されたハイブリッド幹細胞の骨形成分化を示す。
【図11】図11は、本発明の教示に従って作成されたハイブリッド幹細胞の軟骨形成性分化を示す。
【図12】図12は、本発明の教示に従って作成されたハイブリッド幹細胞の神経性分化を示す。
【図13】図13は、本発明の教示に従って作成されたハイブリッド幹細胞の心臓発生分化を示す。
【図1a】

【図1b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療的な再プログラミング方法であって、該方法は、
幹細胞を単離する工程;
該幹細胞を、治療的に再プログラムされた細胞への該幹細胞の発達を誘導する刺激因子を含む培地と接触させる工程;
該培地から該治療的に再プログラミングされた細胞を回収する工程;および
該治療的に再プログラミングされた細胞またはそれから成熟した細胞を、治療的に再プログラミングされた細胞を必要とする宿主に移植する工程;
を包含する、方法。
【請求項2】
前記幹細胞が、胚性幹細胞、胎児性幹細胞、体性幹細胞、成体多能性前駆細胞、ハイブリッド幹細胞、改変された生殖細胞、脂肪由来幹細胞および始原性細胞からなる群より選択される、請求項1に記載の治療的な再プログラミング方法。
【請求項3】
前記始原性細胞が精原幹細胞である、請求項2に記載の治療的な再プログラミング方法。
【請求項4】
前記刺激因子が、化学物質、生化学物質および細胞の抽出物からなる群より選択される、請求項1に記載の治療的な再プログラミング方法。
【請求項5】
前記刺激因子が、5−アザ−2’−デオキシシチジン、ヒストンデアセチラーゼインヒビター、n−酪酸およびトリコスタチンAからなる群より選択される、化学物質である、請求項4に記載の治療的な再プログラミング方法。
【請求項6】
前記刺激因子が、細胞全体抽出物、細胞質体抽出物、および核質抽出物からなる群より選択される細胞抽出物である、請求項4に記載の治療的な再プログラミング方法。
【請求項7】
前記細胞抽出物が、胚性幹細胞、胎児性神経幹細胞、成体多能性前駆細胞、ハイブリッド幹細胞、および始原性細胞からなる群より選択される幹細胞から単離される、請求項6に記載の治療的な再プログラミング方法。
【請求項8】
前記宿主が哺乳動物である、請求項1に記載の治療的な再プログラミング方法。
【請求項9】
前記幹細胞が前記宿主から単離される、請求項1に記載の治療的な再プログラミング方法。
【請求項10】
前記治療的に再プログラミングされた細胞を、組織特異的な系列に分化決定されるように成熟させる工程をさらに包含する、請求項1に記載の治療的な再プログラミング方法。
【請求項11】
治療的な再プログラミング方法であって、該方法は、
精原幹細胞(SSC)を単離する工程;
該SSCを、全能細胞への該SSCの発達を誘導する刺激因子を含む培地と接触させる工程;
該培地から該全能細胞を回収する工程;および
該全能細胞またはそれから成熟した細胞を、治療的に再プログラミングされた細胞を必要とする宿主に移植する工程;
を包含する、方法。
【請求項12】
治療的な再プログラミング方法であって、該方法は、
ハイブリッド幹細胞を提供する工程;
該ハイブリッド幹細胞を、全能細胞への該ハイブリッド幹細胞の発達を誘導する刺激因子を含む培地と接触させる工程;
該培地から該全能細胞を回収する工程;および
該全能細胞またはそれから成熟した細胞を、治療的に再プログラミングされた細胞を必要とする宿主に移植する工程;
を包含する、方法。
【請求項13】
治療的に再プログラミングされた細胞であって、該細胞は、
刺激因子に対して曝露されたSSC
を含み、これにより、該SSCは、全能細胞または多能性細胞へ成熟または分化させられている、細胞。
【請求項14】
治療的に再プログラミングされた細胞であって、該細胞は、
刺激因子に対して曝露された多能性幹細胞
を含み、これにより、該多能性幹細胞は、さらに分化決定された細胞系列へ成熟または分化させられている、細胞。
【請求項15】
ハイブリッド幹細胞を作製するための方法であって、該方法は、
二倍体であるドナー細胞を取得する工程;
宿主細胞を得る工程;
該宿主細胞を除核する工程;
該ドナー細胞またはその核と該宿主細胞とを融合させる工程;および
該ハイブリッド幹細胞を単離する工程;
を包含する、方法。
【請求項16】
前記ドナー細胞が、胚性幹細胞、体細胞、始原性細胞および治療的に再プログラミングされた細胞からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ドナー細胞がGにある、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記宿主細胞が、胚性幹細胞、胎児性神経幹細胞および成体多能性前駆細胞からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記取得する工程の後かつ前記除核する工程の前に、前記宿主細胞を4回継代にわたって培養する工程をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記ドナー細胞および前記宿主細胞が哺乳動物由来である、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記ドナー細胞および前記宿主細胞が同じ個体由来である、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記宿主細胞が、化学的除核、機械的除核、物理的除核、x線照射除核、およびレーザー照射除核からなる群より選択されるプロセスによって除核される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記ドナー細胞との融合の前に約3日間、前記除核された宿主細胞を培養する工程をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記融合する工程が、電気融合、マイクロインジェクション融合、化学融合またはウイルスに基づく融合からなる群より選択される融合方法を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記単離する工程が、蛍光標識細胞分取を包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記単離する工程の後に前記ハイブリッド幹細胞を培養する工程をさらに包含する、請求項15に記載の方法。

【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−501795(P2008−501795A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527196(P2007−527196)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/005052
【国際公開番号】WO2005/123123
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(506396261)プライムジェン バイオテック エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】