説明

ハイブリッド式乗用芝刈り機

【課題】芝刈り走行における過大負荷に伴う排ガス、騒音、燃費の悪化等を回避して安定した芝刈り走行を確保しつつ、煩雑な操作を要することなく、確実な低燃費化を可能とするハイブリッド式乗用芝刈り機を提供する。
【解決手段】ハイブリッド式乗用芝刈り機は、草地走行しつつ芝刈り可能に構成した機体に、走行および芝刈りの作業機器に動力を供給する内燃式原動機(3)と、その動力による変換電力を蓄電する二次電池(4)と、この二次電池(4)の電力供給によって作業機器を動作可能に構成され、上記内燃式原動機(3)は、作業モードと充電モードの2つの制御モードを切替えて回転制御する制御部(C)を備え、作業モードは定格出力で運転し、充電モードは二次電池(4)の充電を行うための最小燃費範囲で運転し、これら2つの制御モードを作業機器の動作状況に応じて切替えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動機と電動アクチュエータを備えて芝刈走行するハイブリッド式乗用芝刈り機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の芝刈り機の例にように、草地走行可能な機体に内燃式原動機と電動アクチュエータを備えて芝刈走行するハイブリッド式乗用芝刈り機が知られている。すなわち、内燃式原動機の動力に基づく電力によって走行車輪、芝刈機、集草バケット等を駆動するものである。
【0003】
上記芝刈り機は、内燃式原動機を所定の出力条件で運転し、その動力を蓄電する二次電池を介設することにより、作業における一時的な過大負荷に伴う排ガス、騒音、燃費悪化等を回避して環境を配慮しつつ安定した芝刈り作業走行を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−265685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記芝刈り機は、環境に配慮しつつ安定した芝刈り作業走行を可能とする一方で、原動機燃費の点で必ずしも十分な効果を得ることができないという問題があり、煩雑な操作を要することなく、さらなる低燃費化によるエコ指向策が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、芝刈り走行における過大負荷に伴う排ガス、騒音、燃費の悪化等を回避して安定した芝刈り走行を確保しつつ、煩雑な操作を要することなく、確実な低燃費化を可能とするハイブリッド式乗用芝刈り機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、草地走行しつつ芝刈り可能に構成した機体に、走行および芝刈りの作業機器に動力を供給する内燃式原動機と、その動力による変換電力を蓄電する二次電池と、この二次電池の電力供給によって作業機器を動作可能に構成したハイブリッド式乗用芝刈り機において、上記内燃式原動機は、作業モードと充電モードの2つの制御モードを切替えて回転制御する制御部を備え、作業モードは定格出力で回転制御し、充電モードは二次電池の充電を行うための最小燃費範囲で回転制御し、これら2つの制御モードを作業機器の動作状況に応じて切替えることを特徴とする。
【0008】
上記ハイブリッド式乗用芝刈り機は、芝刈作業において内燃式原動機が作業機器の動作状況に応じて作業モードと充電モードの2つの制御モードに切替えられ、作業モードでは定格出力で回転制御され、充電モードでは二次電池の充電に適する最小燃費範囲で回転制御される。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記作業機器は、刈刃によって芝刈を行う芝刈部と、この芝刈部の芝刈動力をオン・オフする電動式の刈刃クラッチと、芝刈部を作業位置と非作業位置に昇降する電動昇降機構とによって構成し、刈刃クラッチがオフであることを条件に、昇降駆動機構を動作させて芝刈部を非作業位置まで上昇させるとともに、前記充電モードに切替えることを特徴とする。
上記ハイブリッド式乗用芝刈り機は、刈刃クラッチがオフになると芝刈部の上昇と充電モードへの切替えが行われる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1の構成において、前記作業機器は、刈刃によって芝刈を行う芝刈部と、この芝刈部の芝刈動力をオン・オフする電動式の刈刃クラッチと、芝刈部を作業位置と非作業位置に昇降する電動昇降機構とによって構成し、刈刃クラッチがオフまたは芝刈部が非作業位置であることを条件に、前記充電モードに切替えることを特徴とする。
上記ハイブリッド式乗用芝刈り機は、刈刃クラッチがオフまたは芝刈部が非作業位置の場合に充電モードに切替えられる。
【発明の効果】
【0011】
上記ハイブリッド式乗用芝刈り機は、芝刈作業において内燃式原動機が作業機器の動作に応じて作業モードと充電モードの2つの制御モードに切替えられ、作業モードでは定格出力で運転され、充電モードでは二次電池の充電に適する最小燃費範囲で運転されることから、芝刈り走行における過大負荷に伴う排ガス、騒音、燃費の悪化等を回避して安定した芝刈り走行を確保しつつ、作業機器についての設定条件に応じて、煩雑な操作を要することなく、自動切替えによって低燃費化が可能となる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1の効果に加え、上記刈刃クラッチがオフになると芝刈部の上昇と充電モードへの切替えが行われることから、作業者が芝刈部の刈刃を停止した際に、煩雑な操作を要することなく、芝刈部の一連の自動動作とともに低燃費化が可能となる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1の効果に加え、上記刈刃クラッチがオフまたは芝刈部が非作業位置の場合に充電モードに切替えられることから、刈刃の停止や芝刈部の上昇の操作によって芝刈りを停止した際に、煩雑な操作を要することなく、自動的に低燃費化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】芝刈り機の側面図
【図2】作業機器の動力系統図
【図3】制御システムのブロック図
【図4】作業モード(a)と充電モード(b)の制御特性図
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明のハイブリッド式乗用芝刈り機1は、その側面図を図1に示すように、草地走行可能に機体を支持する前後輪による走行部2と、走行、芝刈り、その他の作業動力を供給する内燃式原動機(以下、エンジンと略記する)3と、その動力を受ける発電機4aによる変換電力を蓄電する二次電池4と、昇降動作可能に芝刈りする芝刈部5と、排出動作可能に刈草を収容するバケット6と、各種機器操作用のスイッチやレバーを配置した操作部7とを備えて芝刈走行可能に構成される。
【0016】
作業機器の動力供給は、その一例を図2の動力系統図に示すように、エンジン3から芝刈部5を駆動するとともに、発電機4aの電力を二次電池4に蓄電し、その電力供給を受ける電動アクチュエータである走行電動機2aを介して走行部2を駆動するほか、作業機器別に設けた電動アクチュエータを介して制御部Cにより一括制御可能に構成する。
【0017】
機器制御のシステム構成は、図3のブロック図に示すように、制御部Cによる制御対象機器として、走行電動機2a、芝刈部5の稼動を電動制御する刈刃クラッチ11、芝刈部5を昇降駆動する電動シリンダ12、バケット6を集草位置と排出位置とに昇降駆動する電動シリンダ6a、エンジン3のスロットルの電動操作により回転を制御するリレー3aを制御可能に構成する。
【0018】
また、上記機器の制御のために、自動制御の適用を選択する自動制御スイッチ7a、刈刃クラッチを介して芝刈部5の刈刃動作を操作する刈刃クラッチスイッチ11b、電動シリンダ12を介して芝刈部5の昇降を操作する刈刃昇降スイッチ12b、電動シリンダ6aを介してバケット6の排出を操作するバケット昇降スイッチ6b、走行電動機2aを介して走行速度を調節する走行ペダルセンサ2b、および機器動作監視用のそれぞれの動作センサーの信号を入力可能に構成する。そのほか、自動制御スイッチ7aがオフの場合にエンジン3の回転を制御するためのスロットルレバー等の手動操作具(不図示)を備える。
【0019】
(制御モード)
制御部Cによる自動制御については、エンジン3の回転制御について、図4の制御特性図に示すように、作業モード(a)と充電モード(b)の2つの制御モードを選択切替え可能に構成する。作業モードは定格出力の回転数N0で運転し、充電モードは二次電池の充電を行うための最小燃費範囲として設定した燃費効率の良い上下限の回転数N1、N2の範囲内で運転するようにアクセルリレー3aを制御し、以下のように、条件に応じて2つの制御モードを切替えることにより、煩雑な操作を要することなく、芝刈り作業の低燃費化を可能とする。
【0020】
(芝刈停止)
芝刈部5を停止した場合は、刈刃クラッチ11をオフにした時に昇降駆動機構12を非作業高さまで上昇動作させるとともに、エンジン3の制御を充電モードに切替えるように制御部Cを構成することにより、煩雑な操作を要することなく、刈刃クラッチのオフとともに芝刈部5が非作業高さに上昇されるとともに低燃費動作によって二次電池4が充電される。
【0021】
また、刈刃クラッチ11がオフまたは昇降駆動機構12が非作業高さのいずれかの場合は、エンジン3の制御を充電モードに切替えるように制御部Cを構成することにより、芝刈り停止時の低燃費動作が可能となる。
【0022】
(発進操作)
走行発進の際は、停車時において走行ペダル2bの踏込みを検出した場合に、刈刃の下降と回転駆動を一定時間の範囲で待ってから走行モータ2aの駆動を行うことにより、刈り始め地点における刈り残しを防止することができる。
【0023】
(バケット昇降)
刈草排出作業については、バケット6の上昇と下降の動作と対応してエンジン3の制御を作業モードに切替えるように制御部Cを構成することにより、バケット昇降の動作速度を確保することができるので、排出作業を迅速に終了することができる。
【0024】
(停車)
機体の走行を停止した際は、刈刃クラッチ11がオンで、かつ、芝刈部5が下降している場合に一定時間以上の停車を検出すると、刈刃クラッチ11をオフし、芝刈部5を上昇し、エンジン3の制御を充電モードに切替えるように制御部Cを構成することにより、煩雑な操作を要することなく、低燃費化が可能となる。
【0025】
(バケット排出)
また、バケット排出作業に際しては、バケット6が集草位置に無いことを条件に、刈刃クラッチ11をオフし、芝刈部5を上昇とし、エンジン3の制御を充電モードとするように制御部Cを構成することにより、煩雑な操作を要することなく、低燃費化が可能となる。
【符号の説明】
【0026】
1 ハイブリッド式乗用芝刈り機
2 走行部
2a 走行電動機
2b 走行ペダルセンサ
3 内燃式原動機(エンジン)
3a アクセルリレー
4 二次電池
4a 発電機
5 芝刈部
6 バケット
6a 電動シリンダ
6b バケット昇降スイッチ
7 操作部
7a 自動制御スイッチ
11 刈刃クラッチ
11b 刈刃クラッチスイッチ
12 昇降駆動機構(電動シリンダ)
12b 刈刃昇降スイッチ
C 制御部
N0 定格出力回転数
N1 充電用上限回転数
N2 充電用下限回転数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
草地走行しつつ芝刈り可能に構成した機体に、走行および芝刈りの作業機器に動力を供給する内燃式原動機(3)と、その動力による変換電力を蓄電する二次電池(4)と、この二次電池(4)の電力供給によって作業機器を動作可能に構成したハイブリッド式乗用芝刈り機において、
上記内燃式原動機(3)は、作業モードと充電モードの2つの制御モードを切替えて回転制御する制御部(C)を備え、作業モードは定格出力で回転制御し、充電モードは二次電池(4)の充電を行うための最小燃費範囲で回転制御し、これら2つの制御モードを作業機器の動作状況に応じて切替えることを特徴とするハイブリッド式乗用芝刈り機。
【請求項2】
前記作業機器は、刈刃によって芝刈を行う芝刈部(5)と、この芝刈部(5)の芝刈動力をオン・オフする電動式の刈刃クラッチ(11)と、芝刈部(5)を作業位置と非作業位置に昇降する電動昇降機構(12)とによって構成し、刈刃クラッチ(11)がオフであることを条件に、昇降駆動機構(12)を動作させて芝刈部(5)を非作業位置まで上昇させるとともに、前記充電モードに切替えることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド式乗用芝刈り機。
【請求項3】
前記作業機器は、刈刃によって芝刈を行う芝刈部(5)と、この芝刈部(5)の芝刈動力をオン・オフする電動式の刈刃クラッチ(11)と、芝刈部(5)を作業位置と非作業位置に昇降する電動昇降機構(12)とによって構成し、刈刃クラッチ(11)がオフまたは芝刈部(5)が非作業位置であることを条件に、前記充電モードに切替えることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド式乗用芝刈り機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−65570(P2012−65570A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211876(P2010−211876)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】