説明

ハイブリッド材料及びその製造方法

本発明は、無機酸化物ポリマーから成る固体状セルラーモノリスの形の材料に関する。前記モノリスは、4μm〜50μmの平均寸法dAを有するマクロ孔、20〜30Åの平均寸法dEを有するメソ孔及び5〜10Åの平均寸法dIを有するミクロ孔を有し、これらの孔は互いにつながっている。前記の無機酸化物のポリマーは、式−(CH2)n−R1の有機基Rを有し、ここで、0≦n≦5であり、且つR1はチオール基、ピロリル基、アミノ基(これは、置換されていてよいアルキル、アルキルアミノ若しくはアリール置換基を随意に1個以上有していてよい)、アルキル基又はフェニル基(これは、アルキルタイプの置換基を随意に有していてよい)から選択される。開示される材料は、金属触媒用及び液体又は気体状媒体の汚染除去用の基材として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド材料、その製造方法並びに触媒担体として及び/又は液体若しくは気体状媒体の汚染除去のためのその使用に関する。
【0002】
本発明に従うハイブリッド材料は、高い比表面積、及び組織化(序列化、階級化)された構造、即ち複数のタイプの多孔性を示すセルラー構造を有する材料を構成する。
【背景技術】
【0003】
「ハイブリッド」材料とは、無機官能基と有機官能基とを有する材料を意味するものとする。
【0004】
斯かる材料は、不均一触媒反応、固相抽出、濾過、エレクトロニクス、光学又は音響等の多くの分野において用途を見出すことができる。
【0005】
組織化された構造を持つ材料は、仏国特許第2852947号明細書から周知であり、これは無機材料から作られたモノリスの形にある。モノリスとは、少なくとも1mmの平均寸法を有する固体物体を意味するものと理解される。前記無機材料は、無機酸化物のポリマー、例えばテトラエトキシシランSi(OEt)4から得られるポリマーから成る。この材料は、高分散相逆エマルション重合法によって得られ、3つの度合いの多孔性、即ちミクロ孔性、メソ孔性及びマクロ孔性を有する。ある程度の酸性を有する表面シラノール基の存在は、この材料を不均一触媒反応に用いることを可能にするが、しかし酸性触媒反応のみである。
【0006】
また、A. Desforges et al., Adv. Func. Mater., 2005, 15, 1689-1695からも、スチレン及びジビニルベンゼンをベースとし且つ有機基で官能化された多孔質有機マトリックスを含む材料が知られている。これらの材料は、高分散相逆エマルション重合法によってモノリスの形で得られる。このモノリスは、マクロ孔質特徴及びメソ孔質特徴の両方を有する。斯かる材料は、触媒(例えばナノ粒子の形のパラジウム触媒)の担体として、申し分なく用いられる。しかしながら、斯かる材料を用いて触媒反応を実施することができる最高温度は80℃までであり、それを超える温度では有機マトリックスが劣化してそのモノリス特徴が失われる。このような欠点は、これらの材料の使用をかなり制限してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】仏国特許第2852947号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A. Desforges et al., Adv. Func. Mater., 2005, 15, 1689-1695
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、既知の材料を用いて調製される改善された特性を有する新規の材料であって、特に担持された貴金属をベースとする不均一触媒反応の急速に拡大している分野において、触媒担体としての働きをすることができるものを見出すことについて、継続的な要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特殊な有機基で官能化された無機ポリマーから成るモノリスの形の材料を開発することができた。斯かる材料は驚くべきことに、不均一触媒反応の分野において触媒担体として高い性能を示すことが見出された。実際、特にある種の条件下においてパラジウムナノ粒子と組み合わされた時に、この材料は、約200℃までに及び得る温度において、活性炭上のパラジウムをベースとする既知の触媒よりも効果的であることがわかった。さらに、この材料は、他の用途、特に液体又は気体状媒体の汚染除去においても有効である。
【0011】
本発明に従う材料は、無機酸化物のポリマーから成る固体状セルラーモノリスであり、
(a)前記セルラーモノリスが、4μm〜50μmの平均寸法dAを有するマクロ孔、20〜30Åの平均寸法dEを有するメソ孔及び5〜10Åの平均寸法dIを有するミクロ孔を有し、これらの孔が互いにつながっている(連続孔である)こと;
(b)前記の無機酸化物のポリマーが式−(CH2)n−R1に相当する有機基Rを有し、ここで、0≦n≦5であり、且つR1
・チオール基、
・ピロリル基C43N−(これは、窒素によって−(CH2)n−に結合する)、
・アミノ基(これは、随意に置換されたアルキル、アルキルアミノ若しくはアリール置換基を1個以上有することができる)、
・アルキル基(好ましくは1〜5個の炭素原子を有するもの)、又は
・フェニル基(これは、アルキル置換基、特にメチル基を有することができる)
を表わすこと:
を特徴とする。
【0012】
モノリスとは、その最も小さい寸法が1mmより大きい物体を意味するものとする。
【0013】
前記無機酸化物は、1種以上の元素の酸化物であり、これらの元素の少なくとも1種は、アルコキシドを形成することができるタイプのものである。アルコキシドを形成することができる元素の例としては、Si並びにTi、Zr、Th、Nb、Ta、V、W及びAlのような金属を挙げることができる。
【0014】
前記無機酸化物は、単純な酸化物から成ることができ、その場合には上記の元素の内の1種の酸化物から成る。無機酸化物はまた、少なくとも2種の元素の混合酸化物であることもでき、これら元素の内の少なくとも1種は上記の元素から選択され、他の金属は特にB又はSnであることができる。
【0015】
無機ポリマーとしては、ケイ素酸化物又はケイ素の混合酸化物のポリマーから成るものが特に好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1つの実施形態において、前記無機酸化物ポリマーは、単一のタイプのR基を有する。別の実施形態において、前記無機酸化物ポリマーは、少なくとも2つの異なるタイプのR基を有する。
【0017】
特に、前記有機基Rは、
・3−メルカプトプロピル基;
・3−アミノプロピル基;
・3−ピロリルプロピル基;
・N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基;
・3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピル基;
・フェニル若しくはベンジル基;又は
・メチル基:
であることができる。
【0018】
本発明に従う材料は、界面活性剤の水溶液に油性相を添加することによってエマルションを調製し、前記エマルションを調製する前又は調製した後に、前記界面活性剤水溶液に無機酸化物ポリマーの前駆体のテトラアルコキシド(以下、TAMと称する)少なくとも1種を添加し、前記前駆体が縮合するまでこの反応混合物を放置し、次いでこの混合物を乾燥させてモノリスを得ることを含む方法であって、有機基Rを有する前駆体アルコキシド(以下、AMR化合物と称する)少なくとも1種を添加することを特徴とする前記方法によって得ることができる。
【0019】
1つの実施形態においては、前記油性相を添加する前にAMRを前記界面活性剤水溶液中に導入する。
【0020】
別の実施形態においては、AMRを前記油性相中に導入し、次いでこれをTAM水溶液に添加してエマルションを形成させる。
【0021】
第3の実施形態においては、界面活性剤水溶液及びTAMから乾燥後に得られた無機モノリスに、AMRの溶液を含浸させる。
【0022】
第1及び第2の実施形態において、乾燥工程の終わりに得られるハイブリッドモノリスを固める(強固にする)ために、このモノリスを熱処理、好ましくは140℃〜180℃の温度において(例えば2℃/分の昇温速度で6時間)実施される熱処理に付すのが有利であり得る。
【0023】
AMR/TAMの質量比は、20/80より小さいのが好ましい。AMR割合が20%を超えると、モノリスの機械的強度が弱くなる。
【0024】
第1の実施形態を実施した場合には、R基が材料の表面上だけではなくて内部にも統計学的に分布されたハイブリッド材料を得ることが可能である。
【0025】
第2の実施形態を実施した場合には、R基が材料の表面上に統計学的に分布されたハイブリッド材料を得ることが可能である。
【0026】
第3の実施形態を実施した場合には、R基がもっぱら表面上に存在するハイブリッド材料を得ることが可能である。
【0027】
TAMは四価元素のテトラアルコキシド(随意に加水分解され且つ/又は部分的に縮合した形にあるもの)である。ケイ素テトラアルコキシド、特にテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシラン(TEOS)が特に好ましい。また、ケイ酸塩や他の任意の置換オリゴマーを用いることもできる。
【0028】
AMR化合物は、前記の通りのR基を有するトリアルコキシシランから選択するのが有利である。例として、次のものを挙げることができる。
(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、
(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、
N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、
3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
フェニルトリエトキシシラン、及び
メチルトリエトキシシラン。
【0029】
前記油性相は、ドデカン又はシリコーン油から成ることができる。
【0030】
前記界面活性剤化合物は、カチオン性界面活性剤、特にテトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(TTAB)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド又はセチルトリメチルアンモニウムブロミドから選択されるものであることができる。界面活性剤化合物がカチオン性である場合には、反応媒体を3より小さいpH、好ましくは1より小さいpHにする。セチルトリメチルアンモニウムブロミドが特に好ましい。
【0031】
前記界面活性剤化合物はまた、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(AOT)から選択されるアニオン性界面活性剤であることもできる。界面活性剤化合物がアニオン性である場合には、反応性媒体を10より大きいpHにする。
【0032】
前記界面活性剤化合物は最後に、エトキシル化されたヘッドを有する界面活性剤及びノニルフェノールから選択される非イオン性界面活性剤であることもできる。界面活性剤化合物が非イオン性である場合には、反応媒体を10より大きいpH又は3より小さいpH、好ましくは1より小さいpHにする。
【0033】
2つ以上のタイプのR基を有するハイブリッド材料を製造するためには、R基が異なる各種前駆体を同時に反応媒体中に導入してもいいし、2つの連続工程の間に導入してもよい。
【0034】
R基が異なる複数の前駆体を2つの連続工程の間に反応媒体に導入する場合には、第1工程は前記の第1又は第2の態様(実施形態)に従うAMR'化合物を添加することから成ることができ、第2工程はAMR''化合物(前記の第3態様に従う)を次いでグラフトさせることから成ることができる。この場合、R'及びR''はそれぞれ上に与えたRの定義に相当し、R'とR''とは異なるものとする。
【0035】
本発明に従う材料は、Pd、Au又はPt等の金属触媒用の担体として、特に有用である。
【0036】
担持された触媒は、本発明に従うモノリスに触媒金属前駆体の溶液を含浸させ、次いで前駆体を還元することから成る方法によって調製される。
【0037】
前記触媒金属前駆体は、酢酸塩又は塩化物、例えばPd(CH3COO)2、PdCl2、PtCl4又はAuCl4であるのが好ましい。
【0038】
前記前駆体は、フォームを形成するポリマーの親水性/親油性のバランスに従って、溶剤中、例えばTHF、THF/水、アセトン/水又はエタノール/水中の溶液の形で用いられる。
【0039】
担持触媒を酸化性媒体中での反応用に用いることが意図される場合には、ホスフィン、例えばトリフェニルホスフィンの存在下で調製された担持触媒を用いるのが好ましい。
【0040】
本発明に従う担持触媒は、特に鈴木−宮浦反応に有用である。鈴木−宮浦反応は、ヨウ化アリール及びアリールヒドロブロミドからビフェニル化合物を生成させることができる炭素−炭素カップリング反応である。
【化1】

【0041】
本発明に従う担持触媒はまた、下記の反応式に従ってPd(0)触媒、塩基及び水の存在下でZ−Ar−BH(NiPr2)とAr−Z'とを反応させてAr−Arを得るのにも有用である。
【化2】

【0042】
触媒を用いる反応媒体に応じてZ又はZ'基を選択することによって、その親水性又は疎水性特徴を調節することができる。例えば、アルキル又はフェニルタイプのZ又はZ'基は、ハイブリッド材料の疎水性特徴を高める。SH基及び/又はNH2基を有する材料は、硫黄及び窒素上の非結合二重項の存在が生成する金属ナノ粒子の電子安定化を可能にするので、金属触媒担体として特に有用である。
【0043】
従来技術の無機ポリマーから成るモノリス(例えば上記の仏国特許第2852947号明細書に記載されたもの)は、このモノリスを構成する無機ポリマーが表面上にシラノール基のみを有し、これは金属ナノ粒子の不均一核形成をもたらすことができないという事実のために、金属触媒担体として用いることができなかった。
【0044】
本発明に従う材料はまた、溝呂木−ヘック(Heck)反応用にも有用であることができ、これはハロゲン化アリール(1)及びスチレン(2)からビフェニル化合物を生成させることができる炭素−炭素カップリング反応である。この反応は、スチルベンのE及びZ異性体混合物を与える。ハロゲンは、Cl、Br及びIから選択される。ヨウ化物についての反応式を下に与える。
【化3】

【0045】
本発明に従うハイブリッド材料のR置換基が低級アルキル(1〜3個の炭素原子)又はフェニル基である場合、このハイブリッド材料はベンゼン、トルエン又はキシレン等の芳香族化合物(以下「BXT化合物群」と称する)の吸着能力が大きい。従ってこの材料は、これらの化合物を含有する液体又は気体状媒体の汚染除去に特に有用である。
【0046】
汚染除去すべき媒体が液体状媒体である場合には、汚染除去すべき液体中に前記ハイブリッド材料を浸漬することによって汚染除去を実施する。
【0047】
汚染除去すべき媒体が気体状媒体である場合には、ハイブリッド材料をチャンバー(例えばカラム)中に入れ、このチャンバー中に汚染除去すべき気体を通す。
【0048】
表面上にシラノール基を有する従来技術のモノリスは、高度の親水性特徴を有し、これは特にベンゼン、キシレン又はトルエン等の疎水性液体によるモノリスの含浸を抑制する。
【0049】
図面の説明
【0050】
図1aは、3−ピロリルプロピル基を含有するSiO2モノリスの全体外観の透過電子顕微鏡(TEM)写真であり、ピロール−SiO−1aと示す。
【0051】
図1b〜1gは、ピロール−SiO−1a、メチル−SiO−1a、DNP−アミノ−SiO−1a、ベンジル−SiO−2a及びメルカプト−SiO−1aモノリスについて、TEMによって得られた写真(cliches)を表わし、これらはそれぞれ3−ピロリルプロピル基(写真1b)、メチル基(写真1c)、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピル基(写真1d)、ベンジル基(写真1e)、又は3−メルカプトプロピル基(写真1f及び1g)を含有する。
【0052】
図2a〜2eは、それぞれピロール−SiO−1a、メチル−SiO−1a、DNP−アミノ−SiO−1a、ベンジル−SiO−2a、メルカプト−SiO−1a又はg−アミノ−SiOモノリスについての、マクロ孔内ウインドウ(intermacropore windows)の直径(横座標、nm)の関数としての差分圧入容積(differential intrusion)(縦座標、ml/g/nm)を表わす。
【0053】
図3a〜3eは、それぞれピロール−SiO−1a、メチル−SiO−1a、DNP−アミノ−SiO−1a、ベンジル−SiO−2a及びメルカプト−SiO−1aモノリスについての、透過電子顕微鏡(TEM)写真であり、図3f〜3jは、それぞれピロール−SiO−1a、メチル−SiO−1a、DNP−アミノ−SiO−1a、ベンジル−SiO−2a及びメルカプト−SiO−1aモノリスについての、SAXS散乱図である。
【0054】
図3kのa及びbは、g−アミノ−SiO及びg−メルカプト−SiOモノリスについてのSAXS散乱図である。
【0055】
図4a〜4eは、DFT(Differential Functional Theory)法によって測定した細孔分布を表わす。結果は、それぞれピロール−SiO−1a、メチル−SiO−1a、DNP−アミノ−SiO−1a、ベンジル−SiO−2a、メルカプト−SiO−1a、g−アミノ−SiO及びg−メルカプト−SiOモノリスについて、図4a〜4eに示す。横座標には孔の幅(Å)を示し、縦座標には差分表面積(m2/g)を示す。
【0056】
図5は、上から下までの順で、メチル−SiO−1a、メルカプト−SiO−1a、ベンジル−SiO−1a、ピロール−SiO−1a及びDNP−アミノ−1aモノリスのNMRスペクトルを表わす。
【0057】
図6は、それぞれN−(3−プロピル)ピロール基(1360cm-1及び1650cm-1、図6a)、メチル基(2856cm-1及び2932cm-1、図6b)、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピル基(1338cm-1及び1622cm-1、図6c)、ベンジル基(1450〜1650cm-1の間の4つのバンド、図6d)並びに3−メルカプトプロピル基(690cm-1、図6e)に対応する信号を示すIRスペクトルを表わす。
【0058】
図7a〜7fは、それぞれPd@g−AE−アミノ−SiO、Pd@g−アミノ−SiO、@−メルカプト−SiO、Pd@g−メルカプト−SiO、Pd@メルカプト−SiO−1a、Pd@g−DNP−アミノ−SiO及びPd@g−ピロール−SiO系についての、モノリス及びパラジウムから成る触媒系についてのTEM写真を表わす。
【0059】
図8a及び8bは、不均一核形成によって生成されたN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピル基及びPd粒子を有するモノリスのXPS図を表わす。図8bは、パラジウムに対して特異的なX線放出バンドの拡大図である。
【0060】
図9は、不均一核形成によって生成されたN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピル基及びPd粒子を有するPd@g−アミノ−SiOモノリスのXPS図を表わす。
【0061】
図10a〜10fは、次の触媒系:Pd@g−AE−アミノ−SiO(10a)、Pd@g−メルカプト−SiO(10b)、Pd@g−メルカプト−SiO(10c)、Pd@g−ピロール−SiO(10d)、Pd@g−AE−アミノ−SiO(10e)及びPd@g−アミノ−SiO(10f)のそれぞれを用いた鈴木−宮浦反応において得られた転化度を示す。
【0062】
図11は、活性炭上の従来技術のPd触媒を用いた同じ鈴木−宮浦反応について得られた転化度を示す。
【0063】
図12に、触媒Pd@g−アミノ−SiO(四角□で示したカーブ)、Pd@g−メルカプト−SiO(黒丸●で示したカーブ)、Pd@メルカプト−SiO(三角Δで示したカーブ)及びPd@g−アミノ−SiO(丸○で示したカーブ)について、触媒を溝呂木−ヘック反応において連続サイクルで用いた場合の時間T(分)の間の転化度の変化(%)を示す。
【0064】
図13は、時間(分)(横座標として示す)の関数としてのモノリスの含浸率(%)(縦座標)を示すカーブである。
【実施例】
【0065】
以下、具体的な実施例によって本発明を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
例A1〜A3は本発明に従うハイブリッド材料の調製に関し、例A4には得られた材料の特徴付けを記載し、例B1〜B2には本発明に従う材料からの担持触媒の調製を記載し、例C1及びC2には触媒試験を記載し、そして例D1及びD2には汚染除去処理試験を記載する。
【0067】
例A1
【0068】
R基を有するSiO2モノリス(R=ベンジル)の調製
【0069】
この例は、方法の第1の態様を例示する。
【0070】
テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(TTAB)の35重量%水溶液16.01gに、4.05gのテトラエトキシシラン (TEOS)及び1gのベンジルトリエトキシシランを添加した。次いで5.87gの37%HClを添加した。油性相を添加する前に化合物の加水分解を可能にするために、こうして調製された溶液を5分間撹拌した。次いで、40.06gのドデカンから成る油性相を滴下し、次いで乳鉢を用いて手で系を乳化させた。こうして調製されたエマルションを密閉プラスチック容器中に入れて、前駆体を縮合させた。縮合工程を1週間かけて進行させた。次いで化合物をTHF/アセトン溶剤(容量比80/20)中に24時間浸漬することによって油性相を抽出した。この洗浄工程を3回繰り返した後に、浸漬させた化合物をアセトン溶液中に1時間放置した。次いでこの化合物を、洗浄用溶剤の激しすぎる又は急速な蒸発(これはこうして調製されるモノリス中に亀裂帯域の形成をもたらしてしまう)を防止するために、非気密性の蓋をしたビーカー中で空気中に放置することによって乾燥させた。最後に、この化合物を、僅かに焼結させてその機械的強度を改善するために、(2℃/分の昇温速度で)180℃において6時間処理した。
【0071】
他のR基を有するSiO2モノリスの調製
【0072】
他のトリアルコキシシランもまた、本発明に従う方法の第1の態様に従って上記と同じ操作方法に従うことによって、SiO2ハイブリッドモノリスの調製のために用いることができた。これらは、次のAMR化合物から成る:メチルトリエトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、3−(2,4− ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール。
【0073】
第1表に、それぞれの調製についてのテトラエトキシシラン(TEOS)、AMR化合物、TTAB、ドデカン及びHClの使用重量(g)を与える。
【0074】
【表1】

【0075】
例A2
【0076】
R基を有するSiO2モノリス(R=3−メルカプトプロピル)の調製
【0077】
この例は、本方法の第2の態様を例示する。
【0078】
テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(TTAB)の35重量%水溶液16.01gに、4.02gのTEOSを添加した。次いで5.87gの37%塩酸を添加した。油性相を添加する前にTEOSが加水分解できるようにするために、こうして調製された溶液を3分間撹拌する。40.06gのドデカンに1.02gの(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシランを含有させて成る油性相を滴下し、次いで乳鉢を用いて手で系を乳化させた。こうして調製されたエマルションを密閉プラスチック容器中に入れて、前駆体を縮合させた。縮合工程を1週間かけて進行させた。次いで化合物をTHF/アセトン溶剤(容量比80/20)中に24時間浸漬することによって油性相を抽出した。この洗浄工程を3回繰り返した後に、浸漬させた化合物をアセトン溶液中に1時間放置した。次いでこの化合物を非気密性の蓋をしたビーカー中で空気中に放置することによって乾燥させた。この化合物を次いで、僅かに焼結させてその機械的強度を改善するために、(2℃/分の昇温速度で)180℃において6時間処理した。
【0079】
他のR基を有するSiO2モノリスの調製
【0080】
他のトリアルコキシシランもまた、本発明に従う方法の第2の態様に従った上記と同じ操作方法に従うことによって、SiO2ハイブリッドモノリスの調製のために用いた。これらは、次のAMR化合物から成る:メチルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール。
【0081】
第2表に、それぞれの調製についてのテトラエトキシシラン(TEOS)、AMR化合物、TTAB、ドデカン及びHClの使用重量(g)を与える。
【0082】
【表2】

【0083】
例A3
【0084】
R基を有するSiO2モノリス(R=3−ピロリルプロピル)の調製
【0085】
この例は、本方法の第3の態様を例示する。
【0086】
最初にSiO2モノリスを製造した。この目的で、35重量%TTAB溶液16.07g中に塩酸6.1gを導入した。次いで5.01gのTEOS及び40.02gのデカンを滴下し、乳鉢を用いて手で乳化させた。前駆体の縮合工程を1週間進行させ、次いで得られたモノリスをTHF中に24時間浸漬することによって油性相を抽出した。この工程を3回繰り返した。次いでこのモノリスを、THFの蒸発が激しすぎるものにならないように注意しながら、乾燥させた。次いでこのモノリスを、僅かに焼結させて(TTABのミセルによってもたらされる)メソ孔を解放するために、空気中で600℃において6時間焼成した。こうして得られたモノリスを構成する材料を、以下においては「ネイティブシリカ(silice native)」と称する。
【0087】
第2工程において、第1工程で合成したSiO2モノリス上に3−ピロリルプロピル基を次のようにしてグラフトさせた:3.1gのN−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロールを150.40gのクロロホルム中に導入した。次いでこの溶液に前記SiO2モノリス1.2gを浸漬した。拡散速度を高めるために、この溶液及びモノリスを含有させたビーカーを、モノリスがビーカーの底に落ちるまで、真空下のチャンバー中に入れた。こうして、モノリスが反応媒体で完全に含浸されるのを確保できた。この工程は、5〜10分間続けた。次いでビーカーを真空チャンバーから取り出し、次いで閉じて24時間放置した。得られた化合物を次いで、アセトンを含有させたビーカー中に1時間入れた。このモノリスを次いで非気密性の蓋をしたビーカー中で空気中で乾燥させた。
【0088】
SiO2モノリス上の他の化合物のグラフト
【0089】
他のトリアルコキシシランもまた、本発明に従う方法の第1の態様に従って上記と同じ操作方法に従うことによって、ハイブリッドSiO2モノリスの調製のために用いた。これらは、次の化合物から成る:メチルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン及びN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン。
【0090】
第3表に、それぞれの調製についてのSiO2モノリス, トリアルコキシシラン(AMR)及びクロロホルムの使用重量(g)を与える。
【0091】
【表3】

【0092】
例A4
【0093】
得られたモノリスの特徴付け
【0094】
例A1、A2及びA3に従って(即ち本発明に従う方法の3つの態様に従って)得られたモノリスを、それらのマクロ孔質、メソ孔質及びミクロ孔質特徴を明らかにするために、様々な分析方法によって特徴付けした。本方法の第1態様に従って得られたモノリスは、第2態様に従って得られたものと同じ特性を示した。従って、例A1に従って合成されたモノリスについて下に示したデータは、例A2に従って合成された同じR基を有するモノリスについても有効だった。
【0095】
特徴付けに付したモノリスは、次の通りだった:ピロール−SiO−1a、メチル−SiO−1a、DNP−アミノ−SiO−1a、メルカプト−1a、ベンジル−SiO−2a、メルカプト−SiO−1a、g−アミノ−SiO及びg−メルカプト−SiO。
【0096】
本発明に従うモノリスの全体概観を、図1aの写真に示す。これは、例A1のN−(3−プロピル)ピロール基を含有するSiO2モノリスから成り、ピロール−SiO−1aと示す。
【0097】
マクロ孔質構造
【0098】
図1b〜1fの写真は、透過電子顕微鏡(TEM)によって得られたものである。これらの写真は、ピロール−SiO−1a、メチル−SiO−1a、DNP−アミノ−SiO−1a、ベンジル−SiO−2a、メルカプト−SiO−1aモノリスについて作られ、これらはそれぞれ3−ピロリルプロピル基(写真1b)、メチル基(写真1c)、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピル基(写真1d)、ベンジル基(写真1e)、又は3−メルカプトプロピル基(写真1f)を含有する。
【0099】
図1gの写真は、前記のg−メルカプト−SiOのモノリスから走査電子顕微鏡(SEM)によって得られたものである。
【0100】
これらの写真は、5μm〜30μmの範囲の寸法の巨視的セル(小室)が多分散していることを示している。これらのモノリスの巨視的構造は、(ジニトロフェニルアミノ)プロピル基を有するモノリス(写真1d)だけがそのセル間の壁が完全に無機質化(鉱石化)(mineralisees)したことを除いて、(例A3のネイティブシリカのモノリスのものと同様に)中空球の集合に似ていた。
【0101】
様々なサンプルについて、周囲温度において水銀圧入式マクロ孔多孔度測定を実施した。
【0102】
サンプルを計量し、6×10-6MPaの真空下でガス抜きした後に、測定用セル中に入れた。この測定用セルに次いで3.4×10-3MPaの圧力で水銀を充填し、次いで3.4×10-3MPaから120MPa(これは理論孔直径に対応する)の範囲で連続的に圧力をかけた。それぞれの圧力において、ペネトロメーター(penetrometre)の棒状材によって静電容量を測定し、サンプル中に侵入した水銀の容量の推定を行った。結果を下記の第4表に与える。
【0103】
【表4】

【0104】
水銀圧入式マクロ孔多孔度測定の結果を図2に与えた。これは、各サンプルについて、マクロ孔内ウインドウの直径(横座標、nm)の関数としての差分圧入容積(縦座標、ml/g/nm)を表わす。各モノリスに対応するカーブは、上記の表の最後の欄において言及したものである。
【0105】
これらの測定から、2つの隣接するマクロ孔をつなぐウィンドウが双峰性特徴を有することがわかる。これらのウィンドウ及び関連マクロ孔は、溶剤の吸収及び材料内の溶剤の急速な流れを可能にする特徴的な寸法に相当する(ダーシーの法則)。これらの互いにつながったマクロ孔(孔内ウィンドウ)は、すべてのメソ孔を灌漑することを可能にし、かくして材料の表面積すべてを最適化することを可能にし、これはBXT化合物群による含浸のための重要な特性を構成する。
【0106】
メソ孔質及びミクロ孔質特徴
【0107】
メソ孔質特徴は、小角X線回折測定(SAXS)と関連づけられた透過電子顕微鏡によって研究した。
【0108】
図3a〜3eは、SiO2モノリスについて得られた透過電子顕微鏡(TEM)写真である。図3f〜3jは、同じサンプルについて得られたSAXS散乱図である。波数ベクトルq(Å-1)の関数としての強度を縦座標として与える。
【0109】
図3kのa及びbは、別のサンプルについて得られたSAXS散乱図である。
【0110】
モノリスと図3のカーブとの間の対応関係を、次の表に与える。
【0111】
【表5】

【0112】
すべての材料がメソ孔質特徴を示したことがわかる。これらの図はまた、次のことも示した:
・メチル−SiO−1aモノリス(写真3b及び図3g)並びにメルカプト−SiO−1aモノリス(写真3e及び図3j)については、メソ孔が統計学的態様で分散した;
・ピロール−SiO−1a、DNP−アミノ−SiO−1a及びベンジル−SiO−2aモノリスにおいては、メソ孔が六角形態様で組織化された;
・g−アミノ−SiO及びg−メルカプト−SiOモノリスにおいては、メソ孔が10〜6000nmの範囲で多分散分布を有し、g−アミノ−SiOについては150nm及び700nmを中心とする2つの大きいピークがあり、そしてg−メルカプト−SiOについては60nm及び4000nmを中心とする2つの大きいピークがあった。
【0113】
また、窒素吸着−脱着技術(BET及びBJH法)による比表面積測定も実施した。結果を下記の第5表に与える。
【0114】
【表6】

【0115】
第5表の結果から、モノリスは超ミクロ孔質特徴(10〜20Åの範囲の孔寸法)及びメソ孔質特徴(35Å超の孔寸法)を有すると結論づけることができる。これらの結果から、孔の表面上に有機基をグラフトさせるとネイティブシリカと比較して比表面積及び孔容積が減少することが確認された。
【0116】
BJH法は、本質的に35Å超の寸法を有するメソ孔を与える。BETデータとの差によって、ミクロ多孔度が得られる。微分関数の理論によって得られる孔寸法分布は、15Å(超ミクロ孔)及び25Å(メソ孔)を中心とする孔寸法の双峰性を与える。
【0117】
また、DFT(微分関数理論、differential functional theory)法によっても孔寸法分布を測定した。結果を図4a〜4gに与える。これらの図は、上記のモノリスについての孔の幅(Å)を横座標に示し、差分表面積(m2/g)を縦座標に示す。
【0118】
モノリスと図との間の対応関係を、下記の表に与える。
【0119】
【表7】

【0120】
これらの図からわかる結果はBET及びBJH法によって得られた結果とよく一致しており、すべてのサンプルについて、カーブは10Å付近のピーク(ミクロ孔の存在)及び22Å付近のピーク(メソ孔の存在)による双峰性特徴を示している。
【0121】
また、29Si−NMR測定によっても、モノリスのミクロ孔質特徴を研究した。その結果を図5に与える。
【0122】
スペクトルは、上から下までの順で、メチル−SiO−1a、メルカプト−SiO−1a、ベンジル−SiO−1a、ピロール−SiO−1a及びDNP−アミノ−1aモノリスに対応する。
【0123】
スペクトルのT及びQピークは、第6表中に示したように割り当てられる。
【0124】
【表8】

【0125】
この方法は、モノリス中に存在する様々なシロキサン基を同定して定量することを可能にする。第7表に、29Si−NMR測定から得られた結果と反応の前駆体(TEOS及びアルコキシシラン基)のモル比から期待される結果との比較を与える。
【0126】
【表9】

【0127】
実験結果(右の2つの欄)は、理論計算値(左の2つの欄)と一致した。これらは用いた合成方法が材料の最終組成をうまくコントロールすることを可能にすることを示している。
【0128】
さらに、180℃において6時間のモノリスの最終処理がR基を損なわなかったことを確認するために、赤外線分光分析測定を行った。
【0129】
得られたスペクトルを図6a〜6eに示す。モノリスと図との間の対応関係を、下記の表に与える。
【0130】
【表10】

【0131】
これらのスペクトルは、それぞれ3−ピロリルプロピル基(1360cm-1及び1650cm-1、図6a)、メチル基(2856cm-1及び2932cm-1、図6b)、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピル基(1338cm-1及び1622cm-1、図6c)、ベンジル基(1450〜1650cm-1の間の4つのバンド、図6d)並びに3−メルカプトプロピル基(690cm-1、図6e)に対応する信号を示す。
【0132】
従って、モノリス中に存在するR基は、熱処理の影響によって損なわれなかった。
【0133】
例B1
【0134】
例A3の方法に従って得られた材料であってそれぞれN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル、3−アミノプロピル、3−メルカプトプロピル、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピル若しくはN−(3−プロピル)ピロール基を有する材料又は例1の方法に従って調製された3−メルカプトプロピル基を有する材料から、担持触媒を調製した。
【0135】
合成
【0136】
例A3の方法に従って得られたハイブリッドモノリスに、THF中のPd(CH3COO)2の5×10-2M溶液を2日間含浸させ、その間にそれぞれ15分間で3回の脱ガスサイクルを実施し、次いで水/THF混合物(50/50)中の0.5MのNaBH4溶液を添加した。この混合物を前記と同じ脱ガスサイクルを用いて1日間放置し、次いでこの材料濾過によって回収し、エタノール/アセトン混合物(容量比80/20)で24時間撹拌しながら洗浄し、開放空気中で乾燥させた。
【0137】
下記の表に、調製された触媒系及び各触媒系から誘導された変性モノリスを示す。
【0138】
【表11】

【0139】
TEMによる特徴付け
【0140】
得られた触媒系を、透過電子顕微鏡によって特徴付けした。得られたTEM写真を図7に示す。各種写真と触媒系との対応関係を、下記の表に与える。
【0141】
【表12】

【0142】
用いたモノリスは、図7dのPD@メルカプト−SiO2モノリスが例1の方法によって獲られたものであることを除いて、例3の方法によって得られたものである。
【0143】
これらの写真は、担持触媒の凝集度についての重要な情報を与える。というのも、凝集度の増大は活性表面積の低減及びその結果として触媒効率の低下に対応するからである。
【0144】
例B2
【0145】
例B1に示したものと同じハイブリッドモノリスから、トリフェニルホスフィンの存在下で、担持触媒を調製した。
【0146】
合成
【0147】
Pd(CH3COO)2(0.33g、1.5ミリモル)をTHF30ミリリットル中に溶解させて5×10-2モル/リットルの濃度にした。次いでトリフェニルホスフィン(2当量、3ミリモル、0.78g)を添加した。この混合物を完全に溶解するまで撹拌した。次いで色の変化を観察し、溶液が茶色から鮮紅色に変化した。ハイブリッド材料0.8gを添加し、それぞれ15分間で3回の脱ガスサイクルを3日間実施して、ハイブリッド材料に完全に含浸させた。
【0148】
前記のハイブリッド材料を含有させた溶液に、ゆっくり撹拌しながら、水/THF混合物(容量比50/50)30ミリリットル中のNaBH4(10当量、0.56g、15ミリモル)の新たに調製した溶液を添加した。この溶液は黒くなった。
【0149】
ハイブリッド材料の塊を濾過によって回収し、撹拌しながらエタノールで2日間洗浄し、次いで開放空気中で乾燥させた。
【0150】
TEMによる特徴付け
【0151】
得られたTEM写真は、例B1に従って調製された材料についてのものと同様だった。
【0152】
XPSによる特徴付け
【0153】
図8a及び8bに、不均一核形成によって生成されたN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピル基及びPd粒子を有するモノリスのXPS図を示す。図8aは拡大エネルギー範囲を示し、上に挙げた化合物内に存在する原子を示す。図8bは、パラジウムに特有のX線放出バンド、特に3d5/2及び3d7/2軌道に関連する電子のピークの拡大図である。3d5/2バンドは335eVを中心とし、3d7/2バンドは340eVを中心としていた。3d5/2及び3d7/2電子に関連した斯かるエネルギーは、原子価0(非酸化)状態における金属パラジウムの特徴である(Brun, M., Berthet, A., Bertolini, J.C.による刊行物XPS, ARS and Auger parameter of Pd and PdO, J. Electron Microsc. Relat. Phenom., 1999, vol.104, p55による)。
【0154】
メルカプト基を有する材料のサンプルについて、パラジウム含有率を元素分析によって測定した。これは3.9重量%だった。
【0155】
例B3
【0156】
例3に従って調製したハイブリッドモノリスから、担持触媒を調製した。
【0157】
合成
【0158】
例A3の方法に従って得られたモノリス1gを、THF30ミリリットル中のPd(CH3COO)2(0.33g、1.5ミリモル)及びトリフェニルホスフィンPPh3(4当量、6ミリモル、1.57g)を含有させた溶液に添加して5×10-2モル/リットルの酢酸塩濃度を得て、暗所中に2日間放置した。
【0159】
このハイブリッド材料を含有させた溶液に、ゆっくり撹拌しながら、水/THF混合物(容量比50/50)30ミリリットル中のNaBH4(10当量、0.56g、15ミリモル)の新たに調製した溶液を添加した。この反応媒体の色は、1時間で黄色から黒に変化した。
【0160】
次いでこのハイブリッド材料のモノリスを濾過によって回収し、無色になるまでエタノールで2日間洗浄し、次いで開放空気中で乾燥させた。
【0161】
こうして、一方でg−アミノ−SiOモノリスを用いて、もう一方でg−メルカプト−SiOモノリスを用いて、担持触媒を調製した。
【0162】
TEMによる特徴付け
【0163】
得られたTEM写真は、例B1に従って調製された材料についてのものと同様だった。
【0164】
XPSによる特徴付け
【0165】
図9は、不均一核形成によって生成されたN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピル基及びPd粒子を有するPd@g−アミノ−SiOモノリスのXPS図を表わす。この図は、335eV及び340.8eVに2つのピークを示し、これらは金属パラジウム粒子の3d5/2及び3d7/2軌道に関連する電子に対応する。
【0166】
同じ方法に従って、不均一核形成によって生成されたメルカプトプロピル基及びPd粒子を有するPd@g−メルカプト−SiOモノリスが獲られた。そのXPS図は、Pd@g−アミノ−SiOモノリスのものと同様だった。
【0167】
元素分析
【0168】
担持触媒のPd含有率を元素分析によって測定した。これは、Pd@g−アミノ−SiOを有するサンプルについては3.9重量%であり、Pd@g−メルカプト−SiO基を有するサンプルについては4.1重量%だった。
【0169】
例C1
【0170】
例B1及びB2に従って得られた各種触媒系の触媒活性を、次の操作手順を用いて鈴木−宮浦反応について試験した。
【0171】
−20℃の凝縮器を備えた50ミリリットルの三つ口フラスコを用いた。
【0172】
このフラスコに、1当量(0.097g)の触媒系、200当量(0.576g)のK2CO3、内部標準及び5ミリリットルのジオキサンを導入した。
【0173】
100当量(0.3905g)のヨードベンゼン、150当量(0.3584g)のフェニルボロン酸及び5ミリリットルのジオキサンの混合物を調製し、この混合物を注射器によって三つ口フラスコ中に導入した。この三つ口フラスコを次いで115℃の油浴中に入れて3日間ジオキサンの還流下に置き、定期的にサンプルを採取して検査した。
【0174】
液相クロマトグラフィーにより、Varian 3300上で温度を6℃/分の昇温速度で50℃から180℃にし、注入器温度220℃、検出器温度200℃、圧力10psi、30mの長さ及び0.25mmの内径を有するDB5カラム並びに厚さ0.1μmの薄膜を用いて、反応の状態評価を行った。
【0175】
それぞれの触媒系を用いて得られた転化度を、時間の関数として、図10及び12に示す。比較として、従来の活性炭上のPd触媒(非常に有効と考えられている)についての時間の関数としての転化度を図11に与える。それぞれの図について、転化度%を縦座標として示し、時間(時間)を横座標として示す。
【0176】
試験した本発明に従う触媒を、対応する図と共に下記の表に示す。
【0177】
【表13】

【0178】
例B1の方法によって得られた本発明に従う触媒系(ホスフィンなし)は、活性炭上のパラジウムナノ粒子によって得られたものに近い活性を有していることがわかった。しかしながら、これらはモノリスの形にあり、従って触媒された材料について例えば濾過や遠心分離による分離工程を必要としないという利点を有している。従って、試験した材料は満足できる性能を有し、パラジウム/活性炭系等の従来の触媒より容易に用いられた。
【0179】
さらに、B2の方法によって、即ちトリフェニルホスフィンの存在下で得られた本発明に従う材料は、活性炭上のパラジウムナノ粒子によって得られたものより優れた活性を有していることがわかった。
【0180】
例C2
【0181】
例B2及びB3に従って得られた各種材料の触媒活性を、下記の式で示される溝呂木−ヘック反応について試験した。
【化4】

(E及びZはスチルベンの異性体を表わす。)
【0182】
焼結ガラスの栓を備えたガラスフラスコに、10ミリモル(2.04g)のヨードベンゼン(1)、15ミリモル(1.56g)のスチレン(2)、11ミリモル(1.11g)のトリエチルアミン、5ミリモル(0.85g)のドデカン(ガスクロマトグラフィー用標準物質として)及び10ミリリットルのDMF並びに担持触媒を含有させた溶液を入れた。この反応媒体をアルゴンで10分間パージし、次いで反応器を155℃の油浴中に撹拌なしで入れた。サンプルを定期的に取り出し、0℃においてTHFで希釈して転化度を調べた。
【0183】
反応終了後に、アルゴン下で液相を反応器から取り出して焼結ガラスに通し、新たな反応成分混合物を反応器中に導入して新たな反応を実施した。この操作を数回繰り返して、触媒の経時安定性を試験した。
【0184】
上記の操作を、一方でメルカプトプロピル基を有するモノリスを用いて実施し、他方でアミノプロピル基を有するモノリスを用いて実施した。
【0185】
図12に、連続反応サイクルについて次の触媒を用いた場合の転化度の経時変化を示す。
・Pd@g−アミノ−SiO(0.11g):四角□で示したカーブ;
・Pd@g−メルカプト−SiO(0.11g):黒丸●で示したカーブ;
・Pd@メルカプト−SiO(0.11g):三角Δで示したカーブ;
・Pd@−アミノ−SiO(0.055g):丸○で示したカーブ。この触媒の調製については、0.11gではなくて0.055gの担体を用いた。これは、同じ触媒を半分の量で用いたものである。
【0186】
図12は、3時間経過した触媒がそれらの最初の使用の際と同様の転化度を与えること、及びサンプルA1又はA2に従って調製したモノリスから得られたメルカプト基を有する触媒が、アミノ基を有する触媒又は含浸によって得られたメルカプト基を有する触媒よりもその後の使用の際により一層安定な活性を有することを、示している。
【0187】
例D1
【0188】
例A3に記載した方法によって得られたメチル基を含有するSiO2モノリスを、トルエン含有ガス流の汚染除去のために用いた。
【0189】
前記モノリス0.1021gを、1gのヘキサン中に241.8mgのトルエンを含有するガス流を処理するために用いた。これらの割合は、大気中で一般的に遭遇するものに近いトルエンレベル(即ち10μg/m3)に相当する。ヘキサンは、飽和蒸気圧が非常に高いので壁上での凝縮を防ぐという理由、及びUV−可視光線中で透明であるという事実のために、トルエン用のキャリヤーとして用いた。
【0190】
トルエンによるモノリスの含浸率を、UV−可視光線分光分析によって評価した。UV−可視光線中でのトルエンについての吸収バンドは、268.2nmにある。
【0191】
図13は、時間(分)(横座標)の関数としてのトルエンによるモノリスの含浸率(縦座標)を表わすカーブである。
【0192】
ガス流中に含有されるトルエンの80%がモノリスに吸収されること、そしてこの現象が1時間以上同じように続いているので経時的に安定であることが、わかる。
【0193】
この結果は、納得できるものではあるが、測定チャンバーがモノリスで完全には満たされておらず、空間で分離されたモノリス片を含有していたので、最適というわけではないことに留意すべきである。
【0194】
同様の結果が、例A1及びA2の方法に従って合成されたメチル又はフェニル基を含有するハイブリッドモノリスについても、得られた。
【0195】
例D2
【0196】
例A3に記載した方法によって得られたフェニル基を含有するSiO2モノリスを、トルエンから成る液相の汚染除去のために用いた。
【0197】
ハイブリッドモノリスは、トルエン含有液相中に1時間浸漬した後に、乳白色になった。従って、このモノリスは溶解せずに周囲の媒体の屈折率を取り、これはモノリスがトルエンで含浸されたことを示す。この現象は、モノリスの特殊な孔特徴(三重の多孔性)と、フェニル基によってもたらされるその疎水性特徴と、多孔質体系の団結を保証する無機Si−O−Siの連結性とから由来するものである。
【0198】
同様の結果が、例A1及びA2の方法に従って合成されたメチル又はフェニル基を含有するハイブリッドモノリスについても、得られた。
【図1a)】

【図1b)】

【図1c)】

【図1d)】

【図1e)】

【図1f)】

【図1g)】

【図2a】

【図2b】

【図2c】

【図2d】

【図2e】

【図3a−3j】

【図3k】

【図4a】

【図4b】

【図4c】

【図4d】

【図4e】

【図4f】

【図4g】

【図5】

【図6】

【図7a)】

【図7b)】

【図7c)】

【図7d)】

【図7e)】

【図7f)】

【図8a】

【図8b】

【図9】

【図10a】

【図10b】

【図10c】

【図10d】

【図10e】

【図10f】

【図11】

【図12】

【図13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸化物のポリマーから成る固体状セルラーモノリスの形の材料であって、
前記セルラーモノリスが、4μm〜50μmの平均寸法dAを有するマクロ孔、20〜30Åの平均寸法dEを有するメソ孔及び5〜10Åの平均寸法dIを有するミクロ孔を有し、これらの孔が互いにつながっていること;
前記の無機酸化物のポリマーが式−(CH2)n−R1に相当する有機基Rを有し、ここで、0≦n≦5であり、且つR1がチオール基、ピロリル基、アルキル基、アミノ基(これは、置換されていてよいアルキル、アルキルアミノ若しくはアリール置換基を1個以上有することができる)又はフェニル基(これは、アルキル置換基を有することができる)を表わすこと:
を特徴とする、前記材料。
【請求項2】
前記無機酸化物が1種以上の元素の酸化物であって、これらの元素の内の少なくとも1種がアルコキシドを形成することができるタイプのものであることを特徴とする、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記の元素の内の少なくとも1種がSi、Ti、Zr、Th、Nb、Ta、V、W及びAlから選択されることを特徴とする、請求項2に記載の材料。
【請求項4】
前記酸化物がB及びSnを追加的に含有する混合酸化物であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の材料。
【請求項5】
前記無機ポリマーがケイ素酸化物又はケイ素の混合酸化物のポリマーであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の材料。
【請求項6】
1が1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であることを特徴とする、請求項1に記載の材料。
【請求項7】
前記無機酸化物ポリマーが単一のタイプのR基を有することを特徴とする、請求項1に記載の材料。
【請求項8】
前記無機酸化物ポリマーが少なくとも2つの異なるタイプのR基を有することを特徴とする、請求項1に記載の材料。
【請求項9】
前記有機基Rが3−メルカプトプロピル基、3−アミノプロピル基、3−ピロリルプロピル基、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピル基、フェニル基、ベンジル基又はメチル基であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の材料。
【請求項10】
請求項1に記載の材料の製造方法であって、
界面活性剤の水溶液に油性相を添加することによってエマルションを調製し、
前記エマルションを調製する前又は調製した後に、前記界面活性剤水溶液に前記無機酸化物ポリマーのテトラアルコキシド(TAM)前駆体少なくとも1種を添加し、
前記前駆体が縮合するまでこの反応混合物を放置し、
次いでこの混合物を乾燥させてモノリスを得る
ことを含み、有機基Rを有する前駆体アルコキシド(AMR化合物)少なくとも1種を添加することを特徴とする、前記方法。
【請求項11】
前記油性相を添加する前に前記アルコキシドAMRを前記界面活性剤水溶液に導入することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アルコキシドAMRを前記油性相に導入し、次いでこれをTAM水溶液に添加してエマルションを形成させることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記界面活性剤水溶液及びTAMから乾燥後に得られた無機モノリスにAMRの溶液を含浸させることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記乾燥工程の終わりに得られるハイブリッドモノリスを熱処理に付すことを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項15】
(アルコキシドAMR/テトラアルコキシドTAM)の質量比を20/80より小さくすることを特徴とする、請求項10〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
テトラアルコキシドTAMがケイ素のテトラアルコキシドであることを特徴とする、請求項10〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記テトラアルコキシドTAMがテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランであることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アルコキシドAMRが
(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、
(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、
N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、
3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
フェニルトリエトキシシラン、及び
メチルトリエトキシシラン
から選択されるトリアルコキシシランであることを特徴とする、請求項10〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記油性相がドデカン又はシリコーン油から選択されることを特徴とする、請求項10〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記界面活性剤化合物がカチオン性界面活性剤であり、且つ反応媒体を3より小さいpHにすることを特徴とする、請求項10〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記界面活性剤化合物がアニオン性界面活性剤であり、且つ反応媒体を10より大きいpHにすることを特徴とする、請求項10〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記界面活性剤化合物が非イオン性界面活性剤であり、且つ反応媒体を10より大きいpH又は3より小さいpHにすることを特徴とする、請求項10〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
液体又は気体状媒体中に含有されるベンゼン、トルエン又はキシレンを除去するための、請求項1〜9のいずれかに記載の材料の使用。
【請求項24】
担体及び金属触媒から成る触媒系であって、前記担体が請求項1〜9のいずれかに記載の材料であることを特徴とする、前記触媒系。
【請求項25】
前記金属触媒がナノ粒子の形にあることを特徴とする、請求項24に記載の触媒系。
【請求項26】
溝呂木−ヘック反応又は鈴木−宮浦反応に従ってビフェニル化合物を生成させるための炭素−炭素カップリング反応を触媒するための、請求項24に記載の触媒系の使用。

【公表番号】特表2010−518239(P2010−518239A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549443(P2009−549443)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000193
【国際公開番号】WO2008/129151
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(507018539)ユニベルシテ ピエール エ マリー キュリー (10)
【Fターム(参考)】