説明

ハイブリッド自動車の制御装置

【課題】PTO装置の作動終了が指令されてから作動終了が完了するまでの時間を短縮することができるようにしたハイブリッド自動車の制御装置を提供する。
【解決手段】第1及び第2歯車機構を有するデュアルクラッチ式変速機2と、第1歯車機構21Aの第1入力軸に第1主クラッチ3Aを介し第2歯車機構22Aの第2入力軸に第2主クラッチ3Bを介して接続されるエンジン1と、第2入力軸の外周に装備されたモータ4と、PTOクラッチ11を介して第2歯車機構に接続されたPTO装置10と、をそなえ、制御手段100は、PTO指令手段101によりPTO装置10の作動終了が指令された場合に、PTOクラッチ11に接続解除指示をし、このとき、モータ4のトルクを制御してPTOクラッチ11の変速機側に加わるトルクをゼロにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルクラッチ式の自動変速機とパワーテイクオフ装置(PTO)とをそなえたハイブリッド自動車の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジン(内燃機関)及びモータ(電動発電機)の駆動力を任意に駆動輪に伝達可能なパラレル型ハイブリッド自動車が実用化されている。この種のハイブリッド自動車では、エンジンの出力軸にクラッチを介して変速機の入力軸を接続し、変速機の入力軸の外周にモータを装備して、変速機の出力軸に差動装置を介して左右の駆動輪を接続してパワートレインを構成しているものがある。
【0003】
さらに、このようなハイブリッド自動車の変速機に、例えば特許文献1に記載されているような所謂デュアルクラッチ式変速機が適用される場合もある。特許文献1に記載のデュアルクラッチ式変速機は、第1入力軸と出力軸との間に複数の変速段を構成する第1歯車機構を設けると共に、第2入力軸と出力軸との間に複数の変速段を構成する第2歯車機構を設けている。第1歯車機構はエンジンの動力とモータの動力とが伝達可能とされており、第2歯車機構はエンジンの動力が伝達可能とされている。この技術の場合、第1入力軸と第2入力軸とを内外二重に配設される構造としており、モータは外側の入力軸(アウタ入力軸)に結合されている。
【0004】
また、清掃車やコンクリートポンプ車両やタンクローリ車両などのように作業装置を搭載した車両においては、作業装置の作動のために変速機から動力を取り出して作業装置に伝達するようにしたPTO(Power take-off)装置を搭載することが知られている。エンジンの駆動力と電動機の駆動力とをそれぞれ車両の駆動輪に伝達可能とした、いわゆるパラレル型ハイブリッド自動車においても、このPTO装置を搭載する場合がある。
【0005】
例えば特許文献2には、エンジンと、変速機と、エンジンと変速機との間に接続され、エンジンと共に又は単独で変速機に動力を供与し、エンジンの駆動により発電する駆動用モータと、エンジンとモータとの間に設けられ、動力を断接する入力クラッチと、変速機から動力を取り出すPTO装置(パワーテイクオフ)と、PTO装置を介して駆動される油圧ポンプ(作業装置,負荷装置)と、制御部とを有する、パワーテイクオフ付きハイブリッド車両が記載されている。
【0006】
特に、この技術では、制御部は、油圧ポンプの待機モードにおいては、入力クラッチを接続状態にし、エンジンを駆動して駆動モータに発電をさせる。これにより、エンジンとモータとの間には、変速機やPTO装置等の部材が介在していないため、モータは、高効率で発電を実行し、バッテリ充電量を短時間で高めることができ、エンジンの燃費も改善される。また、油圧ポンプの作業モードにおいては、入力クラッチを遮断状態にし、モータを駆動させて、モータから油圧ポンプに動力を供給させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−126318号公報
【特許文献2】特開2010−221946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、例えば図5に示すように、上記のような所謂デュアルクラッチ式変速機が適用されたパラレル型ハイブリッド自動車に、PTO装置10を搭載することが考えられる。図5に示すように、変速機2は、エンジン1と第1クラッチ3Aを介して接続する第1歯車機構21Aと、エンジン1と第2クラッチ3Bを介して接続する第2歯車機構22Aと、をそなえて構成される。なお、変速機2の出力トルクは、プロペラシャフト5に伝達され、デファレンシャル6を介して駆動輪7に伝達される。
【0009】
このようなデュアルクラッチ式の変速機2に、PTO装置10を搭載する場合、モータ4は、第1歯車機構21Aの入力軸(第1入力軸)21と第2歯車機構22Aの入力軸(第2入力軸)22との何れかの外周に装備することになる。第1入力軸21と第2入力軸22とを同軸に配置する場合、例えば、第1入力軸21をインナ軸に第2入力軸22をアウタ軸に配置することができる。この場合、モータ4は、アウタ軸である第2入力軸22の外周に装備することになる。
【0010】
第1,第2歯車機構21A,22Aを構成するためには、第1,第2歯車機構21A,22Aの歯車と歯車対を構成する歯車を支持するカウンタ軸が必要となる。インナ軸である第1入力軸21はアウタ軸である第2入力軸22よりも出力側(図5中、右側)に突出させ露出させることになるので、インナ軸である第1入力軸21の歯車との噛み合い歯車を支持する第1カウンタ軸はアウタ軸として出力側に配置し、アウタ軸である第2入力軸22の噛み合い歯車を支持する第2カウンタ軸はインナ軸として第1カウンタ軸よりも入力側(図5中、左側)に露出させて配置する。
【0011】
この場合、PTO装置10を、PTOクラッチを介して第1カウンタ軸又は第2カウンタ軸に連結することが、装置の配置構成上好ましい。
PTO装置を作動させる際には、運転者がPTOスイッチ等を通じてPTOの作動を指示すると、PTOクラッチ11を結合させることになる。
【0012】
このPTOクラッチ11は、例えば図6(a),(b)に示すように、ケーシング110内に、外周に連結用平歯車111aが形成されたPTOシャフト111と、このPTOシャフト111の外周に回転自在に装備され連結用平歯車112aが形成されたPTOギヤ112と、PTOシャフト111の外周に軸方向移動可能に装備され2つの連結用平歯車111a,112aとに同時に噛合可能な内歯113aが形成されたPTOシフトスリーブ113と、PTOシフトスリーブ113の外周溝113bと係合するフォーク先端部114aを有しPTOシフトスリーブ113を軸方向移動させるPTOシフトフォーク114とを備えて構成される。
【0013】
PTOギヤ112には、変速機2側の出力歯車(ハス歯ギヤ)115と噛合する入力歯車(ハス歯ギヤ)112bが形成されており、変速機2側の出力歯車115が回転すればPTOギヤ112に常時回転する。
ケーシング110内には、PTOシャフト111と平行に配置されて軸方向に移動するPTOシフトレール116が装備され、PTOシフトレール116の一端にPTOシフトフォーク114が結合される。PTOシフトレール116が軸方向に移動すると、PTOシフトフォーク114がPTOシャフト111の軸方向に移動し、PTOシフトスリーブ113を軸方向移動させる。
【0014】
PTOシフトスリーブ113は、PTOシフトフォーク114による軸方向移動によって、その内歯113aがPTOシャフト111の連結用平歯車111aのみと噛合し、PTOギヤ112の連結用平歯車112aとは噛合しない動力遮断位置と、その内歯113aがPTOシャフト111の連結用平歯車111aとPTOギヤ112の連結用平歯車112aとの両方に同時に噛合する動力伝達位置とに切り替えられる。
【0015】
したがって、PTOクラッチ11を結合させる場合には、PTOシフトスリーブ113を動力伝達位置に切り替えることになり、PTOクラッチ11を遮断させる場合には、PTOシフトスリーブ113を動力遮断位置に切り替えることになる。
【0016】
なお、このPTOクラッチ11結合時には、ギヤ鳴りやギヤの損傷を防ぐために、変速機側のPTO装置10との接続部分(図5に示す構成の場合、PTOクラッチ11の入力側が結合される第1カウンタ軸)が回転しないように、一度クラッチ(図5に示す構成の場合、第1クラッチ3A)を遮断すると共にモータ4に回転数がゼロとなるよう指示する。そして、変速機側のPTO装置10との接続部分の回転が止まった後に、PTOクラッチ11を接続し、再びクラッチ(図5に示す構成の場合、第1クラッチ3A)を接続することになる。
【0017】
PTOシフトスリーブ113を動力遮断位置から動力伝達位置に切り替えるには、PTOシフトスリーブ113の内歯113aとPTOギヤ112の連結用平歯車112aとの各歯の位相が合致していなくては達成できない。
【0018】
しかしながら、PTOシフトスリーブ113が動力遮断位置にあるときに、PTOシフトスリーブ113の内歯113aとPTOギヤ112の連結用平歯車112aとの各歯の位相が合致しているとは限らず、むしろ各歯の位相は通常合致していない。もちろん、位相のズレはある程度は許容されるが、位相のズレが大きいと、PTOシフトスリーブ113の内歯113aがPTOギヤ112の連結用平歯車112aとなかなか噛合しないため、その分だけPTO装置の作動開始までの時間を要してしまう。
【0019】
また、このPTOクラッチ11の結合を解除する時には、PTOシフトスリーブ113の内歯113aがPTOシャフト111の連結用平歯車111aとPTOギヤ112の連結用平歯車112aとの両方に同時に噛合する状態から、PTOシフトスリーブ113の内歯113aを軸方向移動させて、PTOシフトスリーブ113の内歯113aとPTOギヤ112の連結用平歯車112aとの噛合を解除する。
【0020】
しかし、互いに噛合している内歯113aと連結用平歯車112aとの歯面に、相対的な回転トルクが加わっていると、PTOシフトスリーブ113の内歯113aを軸方向に移動することが容易でない場合があり、また、両歯面に、相対的な回転トルクが加わっていなくても、両歯面の係合摩擦によってPTOシフトスリーブ113の内歯113aを軸方向に移動することが容易でない場合がある。このため、その分だけPTO装置の終了に時間を要してしまう。
【0021】
本発明は、かかる課題に鑑み創案されたもので、PTO装置の作動終了が指令されてから作動終了が完了するまでにかかる時間を短縮することができるようにした、ハイブリッド自動車の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明のハイブリッド自動車の制御装置は、第1及び第2歯車機構を有するデュアルクラッチ式変速機と、前記第1歯車機構の第1入力軸には第1主クラッチを介して前記第2歯車機構の第2入力軸には第2主クラッチを介してそれぞれ接続されるエンジンと、前記第2入力軸の外周に装備され電動機又は発電機として作動するモータと、PTOクラッチを介して前記第1歯車機構又は前記第2歯車機構に接続されたPTO装置と、前記PTO装置の作動及び作動終了を指令するPTO指令手段と、をそなえたパラレル型のハイブリッド自動車の制御装置であって、前記PTOクラッチの前記変速機側に前記モータの動力が伝達可能に構成され、前記PTO装置の作動時に、前記エンジン,前記モータ,前記第1及び第2主クラッチ,前記変速機,前記PTOクラッチを制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記PTO指令手段により前記PTO装置の作動終了が指令された場合に、前記PTOクラッチに接続解除指示をし、このとき、前記モータのトルクを制御して前記PTOクラッチの前記変速機側に加わるトルクをゼロにすることを特徴としている。
【0023】
前記変速機に、前記第1歯車機構と前記第2歯車機構とを連結可能な機構間クラッチが備えられ、前記PTO装置は、前記PTOクラッチを介して前記第1歯車機構に接続され、前記制御手段は、前記エンジンの動力を前記PTO装置に取り出すときには、前記第1主クラッチを接続し、前記PTO指令手段により前記PTO装置の作動終了が指令された場合には、前記機構間クラッチを接続状態として、前記PTOクラッチに接続解除指示をし、前記第1主クラッチに接続解除を指令して、その後、前記第1主クラッチの接続解除が完了するまでは(接続状態が継続されている間は)、前記エンジンのトルクを相殺するように前記モータのトルクを制御し、前記第1主クラッチの接続解除が完了したら、前記モータのトルクをゼロに制御することが好ましい。
【0024】
あるいは、前記PTO装置は、前記PTOクラッチを介して前記第2歯車機構に接続され、前記制御手段は、前記エンジンの動力を前記PTO装置に取り出すときには、前記第2主クラッチを接続し、前記PTO指令手段により前記PTO装置の作動終了が指令された場合には、前記PTOクラッチに接続解除指示をし、前記第2主クラッチに接続解除を指令して、その後、前記第2主クラッチの接続解除が完了するまでは(接続状態が継続されている間は)、前記エンジンのトルクを相殺するように前記モータのトルクを制御し、前記第2主クラッチの接続解除が完了したら、前記モータのトルクをゼロに制御することが好ましい。
【0025】
前記制御手段は、前記PTO指令手段により前記PTO装置の作動終了が指令された場合に、前記PTOクラッチに接続解除指示をし、このとき、前記モータのトルクを制御して前記PTOクラッチの前記変速機側に加わるトルクをゼロにし、その後の所定時間内に前記PTOクラッチの解除が完了しないと、前記モータにより微小トルクを発生させて前記PTOクラッチの前記変速機側に伝達することも好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明のハイブリッド自動車の制御装置によれば、PTO指令手段によりPTO装置の作動終了が指令された場合に、PTOクラッチに接続解除指示をし、このとき、モータのトルクを制御してPTOクラッチの変速機側に加わるトルクをゼロにするので、PTOクラッチの入力側(変速機側)と出力側との強い噛み合い係合を確実に弱めることができ、PTOクラッチが速やかに接続解除される。これにより、PTO装置の作動終了までの時間を短縮させることができる。
【0027】
PTO装置がPTOクラッチを介して第1歯車機構に接続された場合、第1歯車機構と連結された第1主クラッチの接続解除が完了するまでは(接続状態が継続されている間は)、エンジンのトルクを相殺するようにモータのトルクを制御し、第1主クラッチの接続解除が完了したら、モータのトルクをゼロに制御することにより、PTOクラッチの変速機側に加わるトルクをゼロにすることができる。
【0028】
PTO装置がPTOクラッチを介して第2歯車機構に接続された場合、第2歯車機構と連結された第2主クラッチの接続解除が完了するまでは(接続状態が継続されている間は)、エンジンのトルクを相殺するようにモータのトルクを制御し、第2主クラッチの接続解除が完了したら、モータのトルクをゼロに制御することにより、PTOクラッチの変速機側に加わるトルクをゼロにすることができる。
【0029】
また、モータのトルクを制御してPTOクラッチの変速機側に加わるトルクをゼロにし、その後の所定時間内にPTOクラッチの解除が完了しないと、モータにより微小トルクを発生させてPTOクラッチの前記変速機側に伝達することにより、PTOクラッチの入力側(変速機側)と出力側とが強く噛み合い係合してPTOクラッチの変速機側に加わるトルクをゼロにしただけでは係合摩擦によって解除が困難な場合にも、この微小トルクによって、噛み合い係合を弱めることができ、PTOクラッチが速やかに接続解除される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態にかかるパラレル型ハイブリッド自動車の駆動系及びその制御装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるパラレル型ハイブリッド自動車の駆動系の変速機を示すスケルトン図[図2(a)]及び各変速段の設定にかかるシンクロの状態を示す図[図2(b)]である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるパラレル型ハイブリッド自動車の制御装置によるPTO終了時の制御を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態にかかるパラレル型ハイブリッド自動車の制御装置による制御に用いる微小トルクを説明する図である。
【図5】本発明の課題を説明するパラレル型ハイブリッド自動車の駆動系の概略構成図である。
【図6】本発明の課題を説明するPTOクラッチの構成の一例を説明する図であり、(a)はその要部の分解斜視図であり、(b)はその断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面により本発明の実施の形態を説明する。
〔実施形態〕
図1〜図4は本発明の一実施形態にかかるパラレル型ハイブリッド自動車の駆動系及びその制御装置を示す図であり、これらの図に基づいて説明する。また、PTOクラッチの構成については図6を流用して説明する。
【0032】
なお、ここでは、図1,図2(a)中左側である変速機2の入力側を前方(符号F)として、図中右側である変速機2の出力側を後方(符号R)として説明する。
また、本実施形態にかかるPTO装置10は、取り出した動力を、清掃車やコンクリートポンプ車両やタンクローリ車両などに装備される作業装置にその駆動力として供給するものであり、いずれの作業装置にも適用しうる。
【0033】
〔構成〕
本実施形態にかかるパラレル型ハイブリッド自動車の駆動系は、図1の概略構成図に示すように構成されており、変速機2は、エンジン1と第1主クラッチ(以下、第1クラッチ又は単にクラッチという)3Aを介して接続する第1歯車機構(第1の動力伝達機構)21Aと、エンジン1と第2主クラッチ(以下、第2クラッチ又は単にクラッチという)3Bを介して接続する第2歯車機構(第1の動力伝達機構)22Aと、をそなえて構成される。なお、変速機2の出力トルクは、プロペラシャフト5に伝達され、デファレンシャル6を介して駆動輪7に伝達される。
【0034】
このようなデュアルクラッチ式の変速機2の場合、モータ4を、第1歯車機構21Aの入力軸(第1入力軸)21と第2歯車機構22Aの入力軸(第2入力軸)22との何れかの外周に装備することになる。第1入力軸21と第2入力軸22とを同軸に配置する場合、例えば、第1入力軸21をインナ軸に第2入力軸22をアウタ軸に配置することができる。この場合、モータ4は、アウタ軸である第2入力軸22の外周に装備することになる。
【0035】
図2(a)は、そのデュアルクラッチ式の変速機2の構成をより詳細に示すスケルトン図である。図2(a)に示すように、変速機2には、走行用動力源であるエンジン1がクラッチユニット3を介して接続されている。クラッチユニット3は、内側にインナクラッチである第1クラッチ3Aが、その外側のアウタクラッチである第2クラッチ3Bが互いに同軸に配置されている。各クラッチ3A,3Bの入力側には、エンジン1の出力軸1aが接続され、第1クラッチ3Aの出力側には、インナ軸である変速機2の第1入力軸21が接続され、第2クラッチ3Bの出力側には、アウタ軸である変速機2の第2入力軸22が接続されている。第1入力軸21と第2入力軸22も同軸に配置されている。そして、アウタ軸である第2入力軸22の外周にモータ(電動発電機)4のロータ(回転子)4aが結合されている。なお、モータ4のステータ(固定子)4bはクラッチ3のケーシング側に固定されている。
【0036】
第1歯車機構21Aと第2歯車機構22Aとを構成するために、このような第1入力軸21及び第2入力軸22と平行に、第1カウンタ軸23及び第2カウンタ軸24が配設され、第1入力軸21と第1カウンタ軸23とが歯車対26i,26jで接続され、第2入力軸22と第2カウンタ軸24とが歯車対26a,26bで接続されている。歯車対26i,26jは6速段を達成するために使用される。
【0037】
特に、インナ軸である第1入力軸21は、アウタ軸である第2入力軸22よりも変速機2の後方に突出し露出しており、この露出部に歯車26jが固設されている。また、第1カウンタ軸23はアウタ軸であり、第2カウンタ軸24はインナ軸である。インナ軸である第2カウンタ軸24は、アウタ軸である第1カウンタ軸23よりも変速機2の前方及び後方に突出し露出しており、この前方露出部に歯車26bが固設されている。
【0038】
また、第1入力軸21及び第2入力軸22と同軸上に、出力軸25が配設され、第1カウンタ軸23と出力軸25との間、及び、第2カウンタ軸24と出力軸25との間に、それぞれ各変速段の歯車対が介装されている。
【0039】
第1カウンタ軸23と出力軸25との間には,3速段を達成するための歯車対26e,26fが介装される。また、第2カウンタ軸24と出力軸25との間には,1速段,2速段を達成するための歯車対26c,26dと、4速段を達成するための歯車対26g,26hとが介装され、さらに、後退段(R)を達成するために、歯車26lを介して歯車対26k,26mが介装されている。
【0040】
さらに、出力軸25の入力側の端部における、第1入力軸21に固設された歯車26jと出力軸25に回転可能に軸支された歯車26fとの間の外周には、変速機2から駆動輪7側への出力を遮断する出力クラッチとしてのシンクロナイザ(図中にはそのスリーブを示す、以下、単に、シンクロ、又は、シンクロ1ともいう)27が介装されている。このシンクロ27を図2(a)中に示す中立位置から入力側(矢印F側)に移動すると、第1入力軸21と出力軸25とを直結し、シンクロ27を中立位置から出力側(矢印R側)に移動すると、出力軸25と歯車26fとを接続し、歯車対26e,26fを介して、第1カウンタ軸23と出力軸25とを接続する。
【0041】
また、出力軸25の出力側の端部における、出力軸25に回転可能に軸支された歯車26dと出力軸25に回転可能に軸支された歯車26mとの間の外周には、変速機2から駆動輪7側への出力を遮断する出力クラッチとしてのシンクロナイザ(図中にはそのスリーブを示す、以下、単に、シンクロ、又は、シンクロ3ともいう)29が介装されている。このシンクロ29を図2(a)中に示す中立位置から入力側(矢印F側)に移動すると、出力軸25と歯車26mとを接続し、歯車組26k,26l,26mを介して、第2カウンタ軸24と出力軸25とを接続し、シンクロ29を中立位置から出力側(矢印R側)に移動すると、出力軸25と歯車26dとを接続し、歯車対26c,26dを介して、第2カウンタ軸24と出力軸25とを接続する。このように、シンクロ27,29をいずれも中立位置に設定すると、変速機2から駆動輪7側への出力を遮断することができ、この点からシンクロ27,29を出力クラッチとも呼ぶ。
【0042】
また、第2カウンタ軸24の外周に回転可能に軸支された第1カウンタ軸23の出力側の端部と第2カウンタ軸24の外周に回転可能に軸支された歯車26gとの間の第2カウンタ軸24外周には、第1歯車機構21Aと第2歯車機構22Aとを連結可能なカウンタ軸用クラッチとしてのシンクロナイザ(図中にはそのスリーブを示す、以下、単に、シンクロ、又は、シンクロ2ともいう)28が介装されている。このシンクロ28を図2(a)中に示す中立位置から入力側(矢印F側)に移動すると、第1カウンタ軸23と第2カウンタ軸24とを接続し、中立位置から出力側(矢印R側)に移動すると、歯車26gと第2カウンタ軸24とを接続する。このように、シンクロ28を入力側(矢印F側)に移動すると、第1カウンタ軸23と第2カウンタ軸24とを接続し、第1歯車機構21Aと第2歯車機構22Aとを連結することができるため、シンクロ28を機構間クラッチ或いはカウンタ軸用クラッチとも呼ぶ。
【0043】
これらの各軸及び歯車の組み合わせにより第1歯車機構21Aと第2歯車機構22Aとが構成される。
以下、各変速段の設定について説明する。
【0044】
図2(b)に示すように、1速段(図2中、「1」で示す)達成するには、シンクロ1を中立(N)に、シンクロ2を前方(F)に(第1カウンタ軸23と第2カウンタ軸24との結合)、シンクロ3を後方(R)に(歯車26dと出力軸25との結合)、それぞれ設定する。エンジン1の駆動トルクを使用する場合には、第1クラッチ3Aを接続状態にし、第2クラッチ3Bを遮断状態にする。
【0045】
2速段(図2中、「2」で示す)を達成するには、シンクロ1を中立(N)に、シンクロ2を中立(N)に、シンクロ3を後方(R)に(歯車26dと出力軸25との結合)、それぞれ設定する。エンジン1の駆動トルクを使用する場合には、第1クラッチ3Aを遮断状態にし、第2クラッチ3Bを接続状態にする。
【0046】
3速段(図2中、「3」で示す)を達成するには、シンクロ1を後方(R)に(歯車26fと出力軸25との結合)、シンクロ2を中立(N)に、シンクロ3を中立(N)に、それぞれ設定する。エンジン1の駆動トルクを使用する場合には、第1クラッチ3Aを接続状態にし、第2クラッチ3Bを遮断状態にする。
【0047】
4速段(図2中、「4」で示す)を達成するには、シンクロ1を中立(N)に、シンクロ2を後方(R)に(第2カウンタ軸24と歯車26gとの結合)、シンクロ3を中立(N)に、それぞれ設定する。エンジン1の駆動トルクを使用する場合には、第1クラッチ3Aを遮断状態にし、第2クラッチ3Bを接続状態にする。
【0048】
5速段(図2中、「5」で示す)を達成するには、シンクロ1を前方(F)に(第1入力軸21と出力軸25との結合、直結)、シンクロ2を中立(N)に、シンクロ3を中立(N)に、それぞれ設定する。エンジン1の駆動トルクを使用する場合には、第1クラッチ3Aを接続状態にし、第2クラッチ3Bを遮断状態にする。
【0049】
6速段(図2中、「6」で示す)を達成するには、シンクロ1を前方(F)に(第1入力軸21と出力軸25との結合)、シンクロ2を前方(F)に(第1カウンタ軸23と第2カウンタ軸24との結合)、シンクロ3を中立(N)に、それぞれ設定する。エンジン1の駆動トルクを使用する場合には、第1クラッチ3Aを遮断状態にし、第2クラッチ3Bを接続状態にする。
【0050】
後退段(図2中、「R」で示す)を達成するには、シンクロ1を中立(N)に、シンクロ2を中立(N)に、シンクロ3を前方(F)に(歯車26mと出力軸25との結合)、それぞれ設定する。エンジン1の駆動トルクを使用する場合には、第1クラッチ3Aを遮断状態にし、第2クラッチ3Bを接続状態にする。
【0051】
このような変速機2の後退段にかかる歯車26lには、歯車26nが噛合しており、歯車26nの回転軸に、PTOクラッチ11を介してPTO装置10が接続される。
【0052】
PTOクラッチ11には、公知のものを適用でき、例えば図6(a),(b)に示すように、ケーシング110内に、外周に連結用平歯車111aが形成されたPTOシャフト111と、このPTOシャフト111の外周に回転自在に装備され連結用平歯車112aが形成されたPTOギヤ112と、PTOシャフト111の外周に軸方向移動可能に装備され2つの連結用平歯車111a,112aに同時に噛合可能な内歯113aが形成されたPTOシフトスリーブ113と、PTOシフトスリーブ113の外周溝113bと係合するフォーク先端部114aを有しPTOシフトスリーブ113を軸方向移動させるPTOシフトフォーク114とを備えて構成される。
【0053】
PTOギヤ112には、変速機2側の出力歯車(ハス歯ギヤ)115と噛合する入力歯車(ハス歯ギヤ)112bが形成されており、変速機2側の出力歯車115が回転すればPTOギヤ112に常時回転する。
【0054】
ケーシング110内には、PTOシャフト111と平行に配置されて軸方向に移動するPTOシフトレール116が装備され、PTOシフトレール116の一端にPTOシフトフォーク114が結合される。電気信号によりPTO作動リレーを操作し、アクチュエータによって、PTOシフトレール116が軸方向に移動すると、PTOシフトフォーク114がPTOシャフト111の軸方向に移動し、PTOシフトスリーブ113を軸方向移動させる。
【0055】
PTOシフトスリーブ113は、PTOシフトフォーク114による軸方向移動によって、その内歯113aがPTOシャフト111の連結用平歯車111aのみと噛合し、PTOギヤ112の連結用平歯車112aとは噛合しない動力遮断位置と、その内歯113aがPTOシャフト111の連結用平歯車111aとPTOギヤ112の連結用平歯車112aとの両方に同時に噛合する動力伝達位置とに切り替えられる。
【0056】
したがって、PTOクラッチ11を結合させる場合には、PTOシフトスリーブ113を動力伝達位置に切り替えることになり、PTOクラッチ11を遮断させる場合には、PTOシフトスリーブ113を動力遮断位置に切り替えることになる。
【0057】
さらに、図1に示すように、車両の全体を制御するために、車両ECU(車両用電子制御ユニット,制御手段)100が備えられている。この車両ECU100は、メモリ(ROM,RAM)及びCPU等で構成されるコンピュータであり、タイマが内蔵される。車両ECU100は、PTO作動に際し、PTOクラッチ11及びエンジン1,クラッチユニット3,変速機2,モータ4をそれぞれ制御する。
【0058】
このために、PTOの作動及び作動終了を指令するPTOスイッチ(PTOSW、PTO指令手段)101からのオンオフ信号と、PTOクラッチ11が接続状態であるか接続解除状態であるかを検出するPTOクラッチスイッチ(PTO本体スイッチ、PTOクラッチ断接検出手段)105と、モータ4の回転数(回転速度)Nmを検出するモータ回転数検出手段としてのモータ回転数センサ102からの検出信号と、第1カウンタ軸23の回転数(回転速度)Ncs1を検出する第1カウンタ軸回転数検出手段としての回転数センサ103からの検出信号と、第2カウンタ軸24の回転数(回転速度)Ncs2を検出する第2カウンタ軸回転数検出手段としての回転数センサ104からの検出信号とが、車両ECU100に入力されるようになっている。
【0059】
なお、PTOクラッチスイッチ105は、PTOクラッチ11の接続時にはオンとなり遮断時にはオフとなるスイッチであり、PTOクラッチ11の断接と連動する部材の位置に応じてオンオフするポジションスイッチであってもよい。
【0060】
また、エンジン1の制御は、エンジン制御用のエンジンECUを通じて、また、モータ4の制御は、モータ4のインバータ制御用のインバータECUを通じて、変速機2の制御は、変速機制御用の変速機ECUを通じて、それぞれ行なってもよい。
【0061】
PTOスイッチ101がオン入力される、即ち、PTO装置10の作動が指令されると、PTOクラッチ11の接続要求が発生し、車両ECU100は、PTOクラッチ11の接続指令を発することになるが、これに先立って、第1クラッチ3A及び第2クラッチ3B及び出力クラッチとしてのシンクロ27,29を何れも動力遮断状態とし、機構間クラッチ或いはカウンタ軸用クラッチとしてのシンクロ28を接続状態とする。この場合のシンクロ27,29の動力遮断状態とするとは、シンクロ27,29をいずれも中立位置(N)とすることである。
【0062】
本実施形態では、「カウンタ軸用クラッチとしてのシンクロ28を接続する処理」はPTOクラッチ11を接続するための条件として必須ではないが、アウタ軸である第1のカウンタ軸23と第1のカウンタ軸23内に内装されたインナ軸である第2のカウンタ軸24を連結すると、両者の回転数差によって生じる両カウンタ軸23,24の摺動による磨耗の進行等の不具合を回避できるので、ここでは、両カウンタ軸23,24を連結する。
【0063】
また、シンクロ28を接続すると、第1のカウンタ軸23と第2のカウンタ軸24とが一体に回転するので、第1歯車機構21Aの変速段を用いても、第2歯車機構22Aの変速段を用いても、即ち、1速段〜6速段及び後退段の何れの変速段を用いても、モータ4の出力トルクを、PTO装置10に取り出すことができる。
【0064】
なお、車両ECU100は、PTOスイッチ101がオン入力されPTOクラッチ11の接続要求がなされた場合に、車速Vが一定車速V1(例えば、10km/h)以下の徐行速度であれば、PTOクラッチ11の接続要求を有効とし、車速Vが一定車速V1よりも大きいと、本制御装置による制御が走行に影響しないように、PTOクラッチ11の接続要求を無効とする。
【0065】
車両ECU100は、モータ4及び第1カウンタ軸23,第2カウンタ軸24の各回転数を監視しながら、これらのクラッチ3A,3B及びクラッチ(シンクロ)27,29の断接が完了したら、モータ4の回転数がゼロとなるようにモータ4に停止指示をする。そして、さらにモータ4及び第2カウンタ軸24の各回転数を監視しながら、第2カウンタ軸24の回転数Ncs2がゼロとなったら、PTOクラッチ11に接続指示をする。
【0066】
PTO装置10の作動にエンジン1を使用する場合には、第1クラッチ3Aまたは第2クラッチ3Bを接続し、PTO装置10の作動にエンジン1を使用しない場合には、第1クラッチ3A及び第2クラッチ3Bの接続を解除する。PTO装置10の作動にモータ4を使用する場合には、モータ4に出力トルクを発生させ、PTO装置10の作動にモータ4を使用しない場合には、モータ4に出力トルクをゼロに制御する。
【0067】
一方、PTOスイッチ101がオフとされ、即ち、PTO装置10の作動終了が指令されると、PTOクラッチ11の接続解除要求が発生し、車両ECU100は、このとき、もしも第2クラッチ3Bが接続状態であれば、第2クラッチ3Bを接続解除(遮断)指示し、PTOクラッチ11の接続解除条件の成立を待って、成立したら、PTOクラッチ11に接続解除指示をする。
【0068】
そして、このPTOクラッチ11の接続解除指示後には、車両ECU100は、第2クラッチ3Bの遮断が完了していなければ(接続状態であれば)、第2クラッチ3Bを通じて変速機2に入力されるエンジン1のトルクを相殺するようにモータ4のトルクを制御する。つまり、変速機2に入力されるエンジン1のトルクと大きさが等しく回転方向が逆のトルクをモータ4に発生させて、変速機2の第2のカウンタシャフト24に入力されるエンジン1のトルクを相殺する(カウンタシャフト0トルク制御)。これにより、PTOクラッチ11の変速機側、即ち、第2のカウンタシャフト24に接続されたPTOクラッチ11の入力側(変速機2側の出力歯車115)に加わるトルクをゼロにすることができる。
【0069】
第2クラッチ3Bの遮断が完了していれば、エンジン1のトルクが第2クラッチ3Bを通じて変速機2に入力されることはないので、モータ4のトルクをゼロに制御する(モータ0トルク制御)。これにより、PTOクラッチ11の変速機側、即ち、PTOクラッチ11の入力側(変速機2側の出力歯車115)に加わるトルクをゼロにすることができる。
【0070】
また、PTOクラッチ11の接続解除指示後の所定時間T1内にPTOクラッチ11の接続解除が完了したか否かを判定して、所定時間T2内にPTOクラッチ11の接続が完了しないと、モータ4により微小パルストルク(微小トルク)を発生させてPTOクラッチ11の入力側(変速機2側の出力歯車115)に伝達する。
【0071】
なお、PTOクラッチ11の接続解除時に発生させる微小パルストルクは、PTOクラッチ11の入力側(平歯車112a)と出力側(平歯車111a)との係合面の相互間に圧力変動を与えるものであればよく、例えば図5(a)〜(c)に例示するようなパターンで微小パルストルクを与えることができる.例えば図5(a)に示す例は、トルク0を基準に正転方向のみの微小パルストルク(正のトルク)を所定周期で加えるものであるが、これとは逆に、トルク0を基準に逆転方向のみの微小パルストルク(負のトルク)を所定周期で加えたりしたものでもよい。ただし、図5(b),(c)に示すように、トルク0を基準に正転方向(正のトルク)と逆転方向(負のトルク)との微小パルストルクを所定周期で加えるものが好ましい。例えば図5(b)に示す例は、正転方向と逆転方向とでパルス幅が異なるようにするものであるが、図5(c)に示すようにパルス幅が同一でもよい。
【0072】
〔作用,効果〕
本発明の一実施形態に係るハイブリッド自動車の制御装置は上述のように構成されているので、例えば図3のフローチャートに示すようにPTO装置10の終了時の制御が行なわれる。なお、これらのフローは制御終了まで所定の制御周期で繰り返される。
つまり、PTOスイッチ101がオフ操作される(PTO作動終了の要求がある)と、車両ECU100により、図3のフローチャートに示す処理が開始され、まず、ステップS10でフラグFが0であるか否かを判定する。このフラグFは、PTO装置終了制御の開始時には0とされ、その後、PTOクラッチ11の接続解除操作が行なわれているときには、まず1とされ、さらに、PTOクラッチ11の接続解除操作に時間がかかり、微小パルストルクの発生制御をしている際には2とされる。
【0073】
制御開始当初は、フラグFは0であり、ステップS20に進み、まず、主クラッチ(本実施形態の場合、第2クラッチ3B)の遮断を指示する。次に、ステップS30に進み、PTOクラッチ11の接続解除条件が成立したかを判定する。
接続解除条件が成立したと判定したら、ステップS40に進み、フラグFを1にセットし、ステップS50に進み、タイマをセットして、ステップS60に進んで、PTO作動リレーに対するオフ指示、即ち、PTOクラッチ11の接続解除指令をする。
【0074】
次に、ステップS70に進んで、主クラッチ(第2クラッチ3B)の遮断が完了したかを判定する。主クラッチ(第2クラッチ3B)の遮断が完了していなければ、ステップS80に進み、主クラッチ(第2クラッチ3B)の遮断が完了していれば、ステップS90に進む。
【0075】
ステップS80に進んだ場合には、モータ4に、変速機2に入力されるエンジン1のトルクと大きさが等しく且つ回転方向が逆のトルクを発生させて、変速機2の第2のカウンタシャフト24に入力されるエンジン1のトルクを相殺する、カウンタシャフト0トルク制御を実施する。これにより、PTOクラッチ11の変速機側、即ち、第2のカウンタシャフト24に接続されたPTOクラッチ11の入力側(変速機2側の出力歯車115)に加わるトルクをゼロにすることができる。
【0076】
ステップS90に進んだ場合には、エンジン1のトルクが第2クラッチ3Bを通じて変速機2に入力されることはないので、モータ4のトルクをゼロに制御する、モータ0トルク制御を実施する。これにより、PTOクラッチ11の変速機側、即ち、PTOクラッチ11の入力側(変速機2側の出力歯車115)に加わるトルクをゼロにすることができる。
【0077】
次に、ステップS100に進んで、フラグFが2であるか否かを判定する。PTOクラッチ11の接続指令をした当初は、フラグFは1であり、この場合はステップS110に進み、タイマ値Tが所定時間T1以内かを判定し、タイマ値Tが所定時間T1以内なら、ステップS120に進んで、PTOクラッチスイッチ105がオフとなったか、即ち、PTOクラッチ11の接続解除が完了したかを判定する。
タイマ値Tが所定時間T1に達するまでにPTOクラッチ11の接続解除が完了したら、ステップS150に進み、フラグFを0にセットして制御を終了する。
一方、タイマ値Tが所定時間T1に達するまでにPTOクラッチ11の接続解除が完了しない場合には、ステップS130に進み、フラグFを2にセットして、ステップS140に進み、モータ4により微小パルストルク(微小トルク)を発生させてPTOクラッチ11の入力側に伝達する。
【0078】
したがって、PTO装置10の作動終了指令時に、PTOクラッチ11の入力側(変速機側)と出力側とが強く噛み合い係合して、PTOクラッチ11の入力側(変速機2側の出力歯車115)に加わるトルクをゼロにしても、係合摩擦によって解除が困難な場合にも、この微小パルストルクによって、噛み合い係合を弱めることができ、PTOクラッチ11が速やかに接続解除される。これにより、PTO装置の作動終了までの時間を短縮させることができる。
【0079】
特に、モータ4により発生させる微小パルストルクを、正転方向と逆転方向との両方への微小パルストルクとすれば、微小パルストルクによって、PTOクラッチ11の入力側(変速機側)と出力側との強い噛み合い係合を確実に弱めることができる。
【0080】
〔変形例〕
上記の実施形態では、PTOクラッチ11を第2のカウンタ軸24に接続する構成としているが、PTOクラッチ11を第1のカウンタ軸23に接続する構成としてもよい。
つまり、図2中に二点鎖線で示すように、アウタ軸である第1カウンタ軸23の歯車(例えば、3速段にかかる歯車26e)にPTO装置10´を接続する構成も可能である。
【0081】
この場合、第1のカウンタ軸23と歯車によって連結される第1入力軸21には、モータ4は装備されないので、モータ4が装備される第2入力軸22に連結される第2のカウンタ軸24を第1のカウンタ軸23と連結すれば、モータ4によりカウンタシャフト0トルク制御やモータ0トルク制御を実施することができ、モータ4により微小パルストルク(微小トルク)を発生させてPTOクラッチ11の入力側に伝達することができる。また、PTO装置10´を使用する場合には、主クラッチとして第1クラッチ3Aを接続し、PTO装置10´の使用を終える際の本制御時には、第1クラッチ3Aの接続を遮断する。
【0082】
〔その他〕
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はかかる実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、かかる実施の形態を適宜変更して実施しうるものである。
【0083】
例えば、上記実施形態では、前進6速段のデュアルクラッチ式の変速機を例示したが、変速段数はこれに限るものではなく、また、変速機の構成も図2に例示するものに限らない。
【符号の説明】
【0084】
1 エンジン(内燃機関)
2 デュアルクラッチ式変速機
3 クラッチユニット
3A 第1クラッチ
3B 第2クラッチ
4 モータ(電動発電機)
5 プロペラシャフト
6 デファレンシャル
7 駆動輪
10,10´ PTO装置
11 PTOクラッチ
21A 第1歯車機構
21 第1入力軸
22A 第2歯車機構
22 第2入力軸
23 第1カウンタ軸
24 第2カウンタ軸
25 出力軸
26a〜26n 変速用の歯車
27,29 動力断接機構としてのシンクロナイザ(出力クラッチ)
28 動力断接機構としてのシンクロナイザ(機構間クラッチ,カウンタ軸用クラッチ)
100 車両ECU(制御手段)
101 PTO指令手段としてのPTOスイッチ(PTOSW)
105 PTOクラッチ断接検出手段としてのPTOクラッチスイッチ(PTO本体スイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2歯車機構を有するデュアルクラッチ式変速機と、
前記第1歯車機構の第1入力軸には第1主クラッチを介して前記第2歯車機構の第2入力軸には第2主クラッチを介してそれぞれ接続されるエンジンと、
前記第2入力軸の外周に装備され電動機又は発電機として作動するモータと、
PTOクラッチを介して前記第1歯車機構又は前記第2歯車機構に接続されたPTO装置と、
前記PTO装置の作動及び作動終了を指令するPTO指令手段と、
をそなえたパラレル型のハイブリッド自動車の制御装置であって、
前記PTOクラッチの前記変速機側に前記モータの動力が伝達可能に構成され、
前記PTO装置の作動時に、前記エンジン,前記モータ,前記第1及び第2主クラッチ,前記変速機,前記PTOクラッチを制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記PTO指令手段により前記PTO装置の作動終了が指令された場合に、前記PTOクラッチに接続解除指示をし、このとき、前記モータのトルクを制御して前記PTOクラッチの前記変速機側に加わるトルクをゼロにする
ことを特徴とする、ハイブリッド自動車の制御装置。
【請求項2】
前記変速機に、前記第1歯車機構と前記第2歯車機構とを連結可能な機構間クラッチが備えられ、
前記PTO装置は、前記PTOクラッチを介して前記第1歯車機構に接続され、
前記制御手段は、
前記エンジンの動力を前記PTO装置に取り出すときには、前記第1主クラッチを接続し、
前記PTO指令手段により前記PTO装置の作動終了が指令された場合には、前記機構間クラッチを接続状態として、前記PTOクラッチに接続解除指示をし、前記第1主クラッチに接続解除を指令して、その後、前記第1主クラッチの接続解除が完了するまでは、前記エンジンのトルクを相殺するように前記モータのトルクを制御し、前記第1主クラッチの接続解除が完了したら、前記モータのトルクをゼロに制御する
ことを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド自動車の制御装置。
【請求項3】
前記PTO装置は、前記PTOクラッチを介して前記第2歯車機構に接続され、
前記制御手段は、
前記エンジンの動力を前記PTO装置に取り出すときには、前記第2主クラッチを接続し、
前記PTO指令手段により前記PTO装置の作動終了が指令された場合には、前記PTOクラッチに接続解除指示をし、前記第2主クラッチに接続解除を指令して、その後、前記第2主クラッチの接続解除が完了するまでは、前記エンジンのトルクを相殺するように前記モータのトルクを制御し、前記第2主クラッチの接続解除が完了したら、前記モータのトルクをゼロに制御する
ことを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド自動車の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記PTO指令手段により前記PTO装置の作動終了が指令された場合に、前記PTOクラッチに接続解除指示をし、このとき、前記モータのトルクを制御して前記PTOクラッチの前記変速機側に加わるトルクをゼロにし、その後の所定時間内に前記PTOクラッチの解除が完了しないと、前記モータにより微小トルクを発生させて前記PTOクラッチの前記変速機側に伝達する
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のハイブリッド自動車の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−112306(P2013−112306A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262818(P2011−262818)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】