説明

ハイブリッド車における高圧ケーブル用の保護板

【課題】 ハイブリッド車における高圧ケーブル用の保護板を提供する。
【解決手段】 本発明は、車両のパワーエレクトロニクス回路(8)を車両のバッテリに接続する少なくとも1本の高圧ケーブル(10)を備えるハイブリッド車であって、高圧ケーブル(10)が、車両の少なくとも1つの車体部分(7)に沿って敷設され、高圧ケーブル(10)の少なくとも1つの部分領域が、車体部分(7)に固定された保護板(12)によって覆われるハイブリッド車を提案する。この形態により、特に側面衝突時または前面衝突時に車体の脆弱領域内での高圧ケーブルの破損が確実に防止されることが保証される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のパワーエレクトロニクス回路(電気回路、電子回路)を車両のバッテリに接続する少なくとも1本の高圧ケーブルを備えるハイブリッド車に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車における電気駆動システムの電気接続系統において、600V以下の高圧および高電流に適した電力供給線が必要である。これは、特に、自動車、特に乗用車におけるハイブリッド駆動構成で使用される電気機械に関係する。ハイブリッド車では、高圧ケーブルによって車両の高圧バッテリに接続されるパワーエレクトロニクス回路が使用される。パワーエレクトロニクス回路は、特にパワーアクチュエーター、例えば、周波数変換器、電流変換器、および/またはコンバータを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、少なくとも1本の高圧ケーブルがパワーエレクトロニクス回路を車両のバッテリに接続するハイブリッド車において、車体の脆弱領域内での高圧ケーブルの破損が確実に防止されることを保証することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的を解決するために、本発明は、車両のパワーエレクトロニクス回路を車両のバッテリに接続する少なくとも1本の高圧ケーブルを備えるハイブリッド車であって、高圧ケーブルが、車両の少なくとも1つの車体部分に沿って敷設され、高圧ケーブルの少なくとも1つの部分領域が、車体部分に固定された保護板によって覆われるハイブリッド車を提案する。
【0005】
保護板は、保護板の範囲内で高圧ケーブルをさらに保護するものであり、それにより、保護板の範囲内での高圧ケーブルの破損を防止する。
【0006】
特に、車体の脆弱領域内で高圧ケーブルを覆うために複数の保護板が提供される。これらの脆弱領域とは、特に、側面衝突時または前面衝突時に特に損壊を受ける領域である。しかし、基本的には、衝突力を受けなくても破損する危険性が高い高圧ケーブルの領域内にも保護板を提供することができる。このような破損は、例えば、走行中の振動、およびそれに伴う高圧ケーブルと隣接する車体部分との相対運動によるものである。
【0007】
側面衝突時または前面衝突時に高圧ケーブルに及ぶ危険の観点から、保護板は、特に車両乗員用の車内空間をエンジンルームから隔てる前部仕切り壁の領域内で、車体部分に、特に車両のサイドメンバ(サイド構材)に取り付けられる。さらに、保護板は、特にシートクロスメンバの領域内で、車体部分に、特に車両のサイドメンバに取り付けられる。さらに、保護板は、車両乗員用の車内空間を後部車両空間から隔てる後部仕切り壁の領域内で、車体部分に、特に車両のサイドメンバに取り付けられる。後部車両空間は、好ましくはバッテリを収容するために使用される。特に、後部車両空間は、スペアタイヤウェル(スペアタイヤ用のくぼみ)を有するように構成される。スペアタイヤが不要である場合、スペアタイヤウェルにバッテリが収容される。それぞれの保護板は、特に、車体部分、特にサイドメンバに接続される。
【0008】
前部仕切り壁の領域内に保護板を配置するとき、前方からの衝突時に高圧ケーブルの破損が効果的に回避される。後部仕切り壁の領域内に保護板を配置するとき、後方からの衝突時に高圧ケーブルの破損が効果的に防止される。クロスメンバの領域内に保護板を配置するとき、側面衝突時に高圧ケーブルの破損が効果的に防止される。そのような側面衝突は、好ましくはポール衝突によってシミュレートされる。
【0009】
それぞれの保護板は、車体部分の脆弱領域内での高圧ケーブルの破損を防止するのに十分な長さにわたって延びる。特に、保護板の長さは、高圧ケーブルの直径の数倍である。
【0010】
少なくとも1つの保護板によって覆われる車体部分は、特に車両のサイドメンバである。基本的には、他の車体部分、例えば、車両のサイドシルに高圧ケーブルを引き回すことも考えられる。サイドメンバへ引き回す利点は、特に側面衝突の観点から見て高圧ケーブルが保護されて配置される点に見ることができる。これに関して、高圧ケーブルがサイドメンバの車両中央側に敷設されるときに特に有利であるとみられる。
【0011】
高圧ケーブルは、好適にはクランプまたはクリップによって、車体部分、特にサイドメンバに固定される。保護板は、高圧ケーブルを覆うので、さらに高圧ケーブルを抑える。しかし、保護板の主要機能は、高圧ケーブルを覆い、ここでは保護することにある。
【0012】
パワーエレクトロニクス回路からバッテリに、互いに並べて配置された複数の高圧ケーブル、特に2本の別個の高圧ケーブル(正の高圧ケーブルと負の高圧ケーブル)を敷設することができる。高圧ケーブルは、それぞれの保護板によって覆われる。
【0013】
それぞれの保護板は、特に、強度の高い材料からなる。好ましくは、この材料は、鋼、特に高強度鋼である。
【0014】
発明のさらなる特徴は、従属請求項、添付図面、および図面に示される好ましい例示的実施形態の説明から明らかになるが、それらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】高圧ケーブルおよび高圧ケーブル用の保護板を備える乗用車の車体の斜視図である。
【図2】車体の前部領域(前部仕切り壁の領域)に関する図1による詳細図である。
【図3】車体の中央領域(シートクロスメンバの領域)に関する図1による詳細図である。
【図4】車体の後部領域(後部仕切り壁の領域)に関する図1による詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
全ての図面は空間座標X、Y、およびZで示されている。X座標は、乗用車の前進方向に対して、後方に向いた車両長手方向軸線に関係し、Y座標は、右側に向いた車両横方向に関係し、Z座標は、上に向いた車両高さ方向に関係する。
【0017】
図1に、前部フェンダ2および後部フェンダ3を備え、さらに窓ガラス用の開口4および4つのドア用の開口5を設けた車体1が示されている。車体1は、車体の両側に設けられたドア用開口5の下にサイドシル6を有し、さらに、それぞれのサイドシル6から車両中央方向に間隔を空けてサイドメンバ7を有する。それぞれのサイドメンバは、屈曲部のあるサイドメンバとして構成される。すなわち、前側と後側に角度が付けられており、サイドメンバ7の中央領域がより低く、前部領域および後部領域がより高くなっている。
【0018】
車両乗員用の車内空間は、前側では、仕切り壁(図示せず)によってエンジンルームから隔てられる。前部仕切り壁は、ほぼ垂直であり、サイドメンバ7が中央領域と前部領域との間で段差を有する領域内に位置する。それに対応して、車両乗員用の車内空間は、後側では、後部仕切り壁(図示せず)によって、車体の後部領域に提供されたトランクから隔てられる。この後部仕切り壁も、ほぼ垂直であり、サイドメンバ7の中央領域からサイドメンバ7の後部領域への段差の領域内に配置される。
【0019】
トランク内にはスペアタイヤウェル(図示せず)が形成され、このスペアタイヤウェルは、車両の高圧バッテリ(やはり図示せず)を収容するために使用される。この車両は、前部エンジンルーム内に内燃機関を収容するだけでなく、電動発電機方式で動作することができる電気機械も収容するハイブリッド車である。さらに、エンジンルーム内にパワーエレクトロニクス回路8(電気回路、電子回路)が収納される。パワーエレクトロニクス回路8は、ボックス9内に収納されたハイブリッド車構成要素であり、パワーエレクトロニクス回路8を収納したボックス9は、エンジンルーム内で車体1の左側に配置され、その位置で固定手段(図示せず)によって車体1に固定される。
【0020】
パワーエレクトロニクス回路8から、互いに密接して敷設された2本の高圧ケーブル10(正の高圧ケーブルおよび負の高圧ケーブル)が、左側のサイドメンバ7の前部領域まで、そのサイドメンバ7の車両中央側で延び、高圧ケーブル10は共に、このサイドメンバ7に沿って、より高い位置に配置されたサイドメンバ7の前部区域からより低い位置に配置されたサイドメンバの中央区域に、さらにそこからより高い位置に配置されたサイドメンバの後部区域に、さらにそこからバッテリまで引き回される。2本の高圧ケーブル10は、高圧ケーブル10の長手方向の長さに沿って適切な間隔で配置された複数のクランプ11によって左側サイドメンバに保持され、その際、それぞれのクランプ11は、両方の高圧ケーブル10を把持し、サイドメンバ7に接続され、特にサイドメンバ7に固着して接続される。当然、この接続は、別の適切な方法で、例えば、クリップによって行うこともできる。
【0021】
さらに、高圧ケーブル10の特定の部分領域で、したがって高圧ケーブル10の規定の長手方向区域で、高圧ケーブル10が保護板12によって覆われているのを図1から見て取れる。保護板は、高強度鋼からなり、高圧ケーブル10を、高圧ケーブル10の左側サイドメンバ7とは反対の側、およびこの側とサイドメンバ7との間で覆う。したがって、それぞれの保護板12は、ほぼU字形の断面を有する。それぞれの保護板12の側方に接合板13が設けられることが好ましく、これらの接合板13は、保護板12をサイドメンバ7または車体に固定するための固定手段、特にねじを通すことができる、通し穴14を有する。
【0022】
保護板12が車体1、特にサイドメンバ7と固定接続される必要は必ずしもない。当然、保護板12を、車体1には固定せずに両方の高圧ケーブル10の外被として構成することも想定できる。これは、例えば、図3により、車体1のシートクロスメンバ15の領域内への保護板12の配置に関して示される。
【0023】
図2および図4は、前部仕切り壁(図示せず)および後部仕切り壁(図示せず)の領域での車体1および両方の高圧ケーブル10の領域の拡大図である。
【0024】
これらの図から、保護板12が、側面衝突時または前面衝突時に特に損壊を受けやすい車体1の領域内に配置されていることが分かる。
【符号の説明】
【0025】
7 車体部分
8 パワーエレクトロニクス回路
10 高圧ケーブル
12 保護板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のパワーエレクトロニクス回路(8)を前記車両のバッテリに接続する少なくとも1本の高圧ケーブル(10)を備えるハイブリッド車であって、
前記高圧ケーブル(10)が、前記車両の少なくとも1つの車体部分(7)に沿って敷設され、前記高圧ケーブル(10)の少なくとも1つの部分領域が、前記車体部分(7)に固定された保護板(12)によって覆われるハイブリッド車。
【請求項2】
前記車体部分(7)が、前記車両のサイドメンバ(7)である請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記高圧ケーブル(10)が、前記サイドメンバ(7)の車両中央側に敷設される請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記高圧ケーブル(10)が、クランプ(11)またはクリップによって前記車体部分(7)に固定される請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両。
【請求項5】
前記高圧ケーブル(10)を覆うために複数の保護板(12)が提供される請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両。
【請求項6】
前記1つまたは複数の保護板(12)が、側面衝突時または前面衝突時に特に損壊を受けやすい1つまたは複数の領域内に配置される請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両。
【請求項7】
前記保護板(12)が、車両乗員用の車内空間をエンジンルームから隔てる前部仕切り壁の領域内で、前記車体部分(7)、特に前記車両の前記サイドメンバ(7)に取り付けられる請求項6に記載の車両。
【請求項8】
前記保護板(12)が、シートクロスメンバ(15)の領域内で、前記車両部分(7)、特に前記車両の前記サイドメンバ(7)に取り付けられる請求項6または7に記載の車両。
【請求項9】
前記保護板(12)が、車両乗員用の車内空間を後部車両空間から隔てる後部仕切り壁の領域内で、前記車体部分(7)、特に前記車両のサイドメンバ(7)に取り付けられる請求項6〜8のいずれか一項に記載の車両。
【請求項10】
それぞれの前記保護板(12)が、前記車体部分(7)、特に前記サイドメンバに接続されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の車両。
【請求項11】
後部車両空間が、バッテリを収容するために使用され、特に前記後部車両空間が、バッテリを収容するためのスペアタイヤウェルを有する請求項1〜10のいずれか一項に記載の車両。
【請求項12】
2本の高圧ケーブル(10、10)がそれぞれの保護板(12)によって覆われる請求項1〜11のいずれか一項に記載の車両。
【請求項13】
前記保護板(12)が、強度の高い材料、特に鋼からなる請求項1〜12のいずれか一項に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−162180(P2011−162180A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22516(P2011−22516)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】