説明

ハイブリッド車両およびハイブリッド車両の制御方法

【課題】再始動時に内燃機関の制御精度の悪化を抑制する。
【解決手段】ECUは、自動停止制御による停止期間Tsが第1期間Ts(0)以上であって(S100にてYES)、バッテリのSOCがしきい値SOC(1)以上である場合に(S102にてYES)、クランキング制御を実行するステップ(S104)と、第2期間Tcが経過した場合にクランキング制御を終了するステップ(S108)と、エンジンを再始動させる場合に(S110にてYES)、第1始動制御を実行するステップ(S112)と、SOCがしきい値SOC(1)よりも小さい場合であって(S102にてNO)、かつ、エンジンを再始動させる場合に(S114にてYES)、第2始動制御を実行するステップ(S116)と、異常診断を無効化するステップ(S118)とを含む、プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の自動停止制御を実行するハイブリッド車両の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両においては、車両の状態に基づいて内燃機関の自動停止制御が実行される。特開2010−116861号公報(特許文献1)には、内燃機関の自動停止制御を実行する車両において触媒の温度を精度よく推定する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−116861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動停止制御の実行による内燃機関の停止中においては、内燃機関の吸気通路内の温度が上昇する場合がある。特に、吸気通路に熱線式のエアフローメータが設けられる場合には、内燃機関の停止中において吸気温センサ周辺の温度が上昇する場合がある。そのため、内燃機関の再始動時において、吸気温センサの検出値と実際の吸気温とに差が生じて、吸気温センサの検出値に基づく内燃機関の制御(たとえば、燃料噴射制御)の制御精度が悪化する場合がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、再始動時に内燃機関の制御精度の悪化を抑制するハイブリッド車両およびハイブリッド車両の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のある局面に係るハイブリッド車両は、内燃機関と、内燃機関の出力軸を回転させるための回転電機と、内燃機関の自動停止制御を実行するための制御部とを含む。制御部は、自動停止制御による内燃機関の停止期間が第1期間を超える場合に回転電機を用いて出力軸を回転させる。
【0007】
好ましくは、制御部は、内燃機関の吸気通路に設けられた吸気温度検出部によって検出される検出値と関連づけて第1期間を決定する。
【0008】
さらに好ましくは、制御部は、検出値の上昇の程度が大きいときには、小さいときに比べて期間が短くなるように第1期間を決定する。
【0009】
さらに好ましくは、制御部は、検出値が高いときには、低いときに比べて期間が短くなるように第1期間を決定する。
【0010】
さらに好ましくは、制御部は、内燃機関の冷却媒体の温度が高いときには、低いときに比べて期間が短くなるように第1期間を決定する。
【0011】
さらに好ましくは、制御部は、回転電機を用いて出力軸を回転させることができない場合には、内燃機関の再始動時に内燃機関の冷却媒体の温度に基づいて燃料噴射制御を実行する。
【0012】
さらに好ましくは、ハイブリッド車両は、回転電機に電力を供給するための蓄電装置をさらに含む。制御部は、蓄電装置の残容量がしきい値よりも小さい場合を、回転電機を用いて出力軸を回転させることができない場合であるとして、再始動時に冷却媒体の温度に基づいて燃料噴射制御を実行する。
【0013】
さらに好ましくは、制御部は、シフトポジションがパーキングポジションである場合を、回転電機を用いて出力軸を回転させることができない場合であるとして、再始動時に冷却媒体の温度に基づいて燃料噴射制御を実行する。
【0014】
さらに好ましくは、ハイブリッド車両は、内燃機関の吸気通路に設けられた吸気温度検出部をさらに含む。制御部は、再始動時に内燃機関の冷却媒体の温度に基づいて燃料噴射制御を実行する場合には、吸気温度検出部の異常を検出しない。
【0015】
さらに好ましくは、制御部は、回転電機を用いて出力軸を回転させることができる場合には、再始動時に内燃機関の吸気通路に設けられた吸気温度検出部によって検出される検出値に基づいて燃料噴射制御を実行する。
【0016】
さらに好ましくは、内燃機関の吸気通路には、吸気温度検出部と、吸気通路内の空気の流量を検出するための熱線式エアフローメータとが設けられる。熱線式エアフローメータは、自動停止制御による内燃機関の停止中において通電状態が維持される。制御部は、自動停止制御による内燃機関の停止期間が第1期間を超える場合に吸気通路内の空気が流通するように回転電機を用いて出力軸を回転させる。
【0017】
この発明の他の局面に係るハイブリッド車両の制御方法は、内燃機関と、内燃機関の出力軸を回転させるための回転電機とを搭載したハイブリッド車両の制御方法である。この制御方法は、内燃機関の自動停止制御を実行するステップと、自動停止制御による内燃機関の停止期間が第1期間を超える場合に回転電機を用いて出力軸を回転させるステップとを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、自動停止制御による内燃機関の停止期間がしきい値を超える場合に回転電機を用いて内燃機関の出力軸を回転させることによって、内燃機関の吸気通路内の空気を流通させることができる。そのため、吸気温センサ周辺の空気の滞留を抑制することができる。すなわち、吸気温センサ周辺の温度の上昇が抑制される。その結果、内燃機関の再始動時において吸気温センサの検出値と実吸気温とのずれの拡大を抑制することができる。したがって、再始動時に内燃機関の制御精度の悪化を抑制するハイブリッド車両およびハイブリッド車両の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態に係るハイブリッド車両の全体ブロック図である。
【図2】本実施の形態に係るハイリッド車両に搭載されたECUの機能ブロック図である。
【図3】本実施の形態に係るハイブリッド車両に搭載されたECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図4】本実施の形態に係るハイブリッド車両に搭載されたECUの動作を示すタイミングチャートである。
【図5】他のハイブリッド車両の構成例を示す図である。
【図6】ECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートの他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態は、説明される。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返されない。
【0021】
図1を参照して、本実施の形態に係るハイブリッド車両1(以下の説明においては、単に車両1と記載する)の全体ブロック図が説明される。車両1は、エンジン10と、駆動軸16と、第1モータジェネレータ(以下、第1MGと記載する)20と、第2モータジェネレータ(以下、第2MGと記載する)30と、動力分割装置40と、減速機58と、PCU(Power Control Unit)60と、バッテリ70と、充電装置78と、駆動輪80と、スタートスイッチ150と、シフトレバー152と、ECU(Electronic Control Unit)200とを含む。
【0022】
この車両1は、エンジン10および第2MG30の少なくとも一方から出力される駆動力によって走行する。エンジン10が発生する動力は、動力分割装置40によって2経路に分割される。2経路のうちの一方の経路は減速機58を介して駆動輪80へ伝達される経路であり、他方の経路は第1MG20へ伝達される経路である。
【0023】
第1MG20および第2MG30は、たとえば、三相交流回転電機である。第1MG20および第2MG30は、PCU60によって駆動される。
【0024】
第1MG20は、動力分割装置40によって分割されたエンジン10の動力を用いて発電してPCU60を経由してバッテリ70を充電するジェネレータとしての機能を有する。また、第1MG20は、バッテリ70からの電力を受けてエンジン10の出力軸であるクランク軸18を回転させる。これによって、第1MG20は、エンジン10を始動するスタータとしての機能を有する。
【0025】
第2MG30は、バッテリ70に蓄えられた電力および第1MG20により発電された電力の少なくともいずれか一方を用いて駆動輪80に駆動力を与える駆動用モータとしての機能を有する。また、第2MG30は、回生制動によって発電された電力を用いてPCU60を経由してバッテリ70を充電するためのジェネレータとしての機能を有する。
【0026】
エンジン10は、たとえば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。
【0027】
エンジン10は、複数の気筒102と、複数の気筒102の各々に燃料を供給する燃料噴射装置104と、吸気通路106と、エアクリーナ108と、スロットルバルブ110と、スロットルモータ112と、排気通路114と、三元触媒コンバータ116と、インテークマニホールド118と、エキゾーストマニホールド120とを含む。なお、エンジン10の気筒102は、1つ以上あればよい。
【0028】
燃料噴射装置104は、ECU200からの制御信号S1に基づいて、各気筒に対して適切な時期に適切な量の燃料を噴射したり、各気筒に対する燃料の噴射を停止したりする。燃料噴射装置104による燃料噴射量は、噴射時間によって調整される。
【0029】
吸気通路106の一方端は、エアクリーナ108に接続される。吸気通路106の他方端は、エンジン10のインテークマニホールド118に接続される。吸気通路106の途中には、吸気通路106内の空気の流量を調整するためのスロットルバルブ110が設けられる。スロットルバルブ110の開度(以下の説明においてはスロットル開度と記載する)は、スロットルモータ112によって調整される。スロットルモータ112は、ECU200からの制御信号S1に基づいて作動する。
【0030】
吸気通路106の途中であって、スロットルバルブ110よりも上流側には、吸気温センサ162と、エアフローメータ164とが設けられる。
【0031】
吸気温センサ162は、吸気通路106に設けられる吸気温度検出部である。吸気温センサ162は、吸気通路106内の空気の温度(以下の説明においては吸気温と記載する)Tiを検出する。吸気温センサ162は、検出した吸気温Tiを示す信号をECU200に送信する。
【0032】
エアフローメータ164は、吸気通路106内の空気の流量(以下の説明においては吸入空気量と記載する)Qiを検出する。エアフローメータ164は、熱線式エアフローメータである。エアフローメータ164は、検出した吸入空気量Qiを示す信号をECU200に送信する。熱線式エアフローメータは、熱線の電流値の変化量に基づいて吸入空気量Qiを検出するものである。熱線は、空気が通過する際に熱が奪われることによりその抵抗が変化する。
【0033】
また、スロットルモータ112には、スロットルポジションセンサ166が設けられる。スロットルポジションセンサ166は、スロットル開度Thを検出する。スロットルポジションセンサ166は、検出したスロットル開度Thを示す信号をECU200に送信する。
【0034】
さらに、エンジン10には、水温センサ168が設けられる。水温センサ168は、エンジン10の内部を流通する冷却媒体の温度(以下の説明においては、冷却水温と記載する)Twを検出する。水温センサ168は、検出した冷却水温Twを示す信号をECU200に送信する。
【0035】
排気通路114の一方端は、エキゾーストマニホールド120に接続される。また、排気通路114の他方端は、図示しないマフラーに接続される。排気通路114の途中には、三元触媒コンバータ116が設けられる。
【0036】
さらに、エンジン10には、エンジン回転速度センサ11が設けられる。エンジン回転速度センサ11は、エンジン10のクランク軸18の回転速度(以下、エンジン回転数と記載する)Neを検出する。エンジン回転速度センサ11は、検出されたエンジン回転数Neを示す信号をECU200に送信する。
【0037】
動力分割装置40は、駆動輪80を回転させるための駆動軸16、エンジン10のクランク軸18および第1MG20の回転軸の三要素の各々を機械的に連結する。動力分割装置40は、上述の三要素のうちのいずれか一つを反力要素とすることによって、他の2つの要素間での動力の伝達を可能とする。第2MG30の回転軸は、駆動軸16に連結される。
【0038】
動力分割装置40は、サンギヤ50と、ピニオンギヤ52と、キャリア54と、リングギヤ56とを含む遊星歯車機構である。ピニオンギヤ52は、サンギヤ50およびリングギヤ56の各々と噛み合う。キャリア54は、ピニオンギヤ52を自転可能に支持するとともに、エンジン10のクランク軸18に連結される。サンギヤ50は、第1MG20の回転軸に連結される。リングギヤ56は、駆動軸16を介在して第2MG30の回転軸および減速機58に連結される。
【0039】
減速機58は、動力分割装置40や第2MG30からの動力を駆動輪80に伝達する。また、減速機58は、駆動輪80が受けた路面からの反力を動力分割装置40や第2MG30に伝達する。
【0040】
PCU60は、スイッチング素子62を複数個含む。PCU60は、スイッチング素子62のオン・オフ動作を制御することによってバッテリ70に蓄えられた直流電力を第1MG20および第2MG30を駆動するための交流電力に変換する。PCU60は、ECU200からの制御信号S2に基づいて制御されるコンバータおよびインバータ(いずれも図示せず)を含む。コンバータは、バッテリ70から受けた直流電力の電圧を昇圧してインバータに出力する。インバータは、コンバータが出力した直流電力を交流電力に変換して第1MG20および/または第2MG30に出力する。これにより、バッテリ70に蓄えられた電力を用いて第1MG20および/または第2MG30が駆動される。また、インバータは、第1MG20および/または第2MG30によって発電される交流電力を直流電力に変換してコンバータに出力する。コンバータは、インバータが出力した直流電力の電圧を降圧してバッテリ70へ出力する。これにより、第1MG20および/または第2MG30により発電された電力を用いてバッテリ70が充電される。なお、コンバータは、省略してもよい。
【0041】
バッテリ70は、蓄電装置であり、再充電可能な直流電源である。バッテリ70としては、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池が用いられる。バッテリ70の電圧は、たとえば200V程度である。バッテリ70は、上述したように第1MG20および/または第2MG30により発電された電力を用いて充電される他、外部電源(図示せず)から供給される電力を用いて充電されてもよい。なお、バッテリ70は、二次電池に限らず、直流電圧を生成できるもの、たとえば、キャパシタ、太陽電池、燃料電池等であってもよい。
【0042】
バッテリ70は、上述したように第1MG20および/または第2MG30により発電された電力を用いて充電される他、外部電源302から供給される電力を用いて充電装置78によって充電される。
【0043】
バッテリ70には、電池温度センサ156と、電流センサ158と、電圧センサ160とが設けられる。
【0044】
電池温度センサ156は、バッテリ70の電池温度TBを検出する。電池温度センサ156は、電池温度TBを示す信号をECU200に送信する。
【0045】
電流センサ158は、バッテリ70の電流IBを検出する。電流センサ158は、電流IBを示す信号をECU200に送信する。
【0046】
電圧センサ160は、バッテリ70の電圧VBを検出する。電圧センサ160は、電圧VBを示す信号をECU200に送信する。
【0047】
ECU200は、バッテリ70の電流IBと、電圧VBと、電池温度TBとに基づいてバッテリ70の残容量(以下の説明においては、SOC(State of Charge)と記載する)を推定する。ECU200は、たとえば、電流IBと、電圧VBと、電池温度TBとに基づいてOCV(Open Circuit Voltage)を推定し、推定されたOCVと所定のマップとに基づいてバッテリ70のSOCを推定してもよい。あるいは、ECU200は、たとえば、バッテリ70の充電電流と放電電流とを積算することによってバッテリ70のSOCを推定してもよい。
【0048】
シフトレバー152は、運転者が複数のシフトポジションのうちのいずれか一つを選択するため操作部材である。複数のシフトポジションは、たとえば、パーキングポジション(以下、Pポジションと記載する)と、ニュートラルポジションと、前進走行ポジションと、後進走行ポジションとを含む。シフトレバー152は、たとえば、モーメンタリタイプのシフトレバーである。なお、シフトレバー152とは、Pポジションを選択するためのパーキングポジションスイッチが別途設けられていてもよい。
【0049】
シフトレバー152には、シフトレバー152の位置を検出するためのシフトポジションセンサ154が設けられる。シフトポジションセンサ154は、シフトレバー152の位置を示す信号SHTをECU200に送信する。ECU200は、シフトポジションセンサ154から受信した信号SHTに基づいて複数のシフトポジションのうちのいずれのシフトポジションが選択されているかを判定する。
【0050】
ECU200は、たとえば、Pポジションの選択中に、運転者がシフトレバー152の位置を前進走行ポジションに対応する位置に移動させた場合には、Pポジションを解除して、前進走行ポジションを選択する。また、ECU200は、前進走行ポジションの選択中に、運転者がシフトレバー152の位置を後進走行ポジションに対応する位置に移動させた場合には、後進走行ポジションを選択する。なお、ECU200は、たとえば、前進走行ポジションの選択中に、パーキングポジションスイッチが操作された場合には、Pポジションを選択してもよい。
【0051】
スタートスイッチ150は、たとえば、プッシュ式スイッチである。スタートスイッチ150は、キーをキーシリンダに差し込んで所定の位置まで回転させるものであってもよい。スタートスイッチ150は、ECU200に接続される。運転者がスタートスイッチ150を操作することに応じて、スタートスイッチ150は、信号STをECU200に送信する。
【0052】
第1レゾルバ12は、第1MG20に設けられる。第1レゾルバ12は、第1MG20の回転速度Nm1を検出する。第1レゾルバ12は、検出された回転速度Nm1を示す信号をECU200に送信する。
【0053】
第2レゾルバ13は、第2MG30に設けられる。第2レゾルバ13は、第2MG30の回転速度Nm2を検出する。第2レゾルバ13は、検出された回転速度Nm2を示す信号をECU200に送信する。
【0054】
減速機58と駆動輪80とを連結するドライブシャフト82には、車輪速センサ14が設けられる。車輪速センサ14は、駆動輪80の回転速度Nwを検出する。車輪速センサ14は、検出された回転速度Nwを示す信号をECU200に送信する。ECU200は、受信した回転速度Nwに基づいて車速Vを算出する。なお、ECU200は、回転速度Nwに代えて第2MG30の回転速度Nm2に基づいて車速Vを算出するようにしてもよい。
【0055】
充電装置78は、充電プラグ300が車両1に取り付けられることによって外部電源302から供給される電力を用いてバッテリ70を充電する。充電プラグ300は、充電ケーブル304の一方端に接続される。充電ケーブル304の他方端は、外部電源302に接続される。充電装置78の正極端子は、PCU60の正極端子とバッテリ70の正極端子とを接続する電源ラインPLに接続される。充電装置78の負極端子は、PCU60の負極端子とバッテリ70の負極端子とを接続するアースラインNLに接続される。
【0056】
ECU200は、エンジン10を制御するための制御信号S1を生成し、その生成した制御信号S1をエンジン10へ出力する。また、ECU200は、PCU60を制御するための制御信号S2を生成し、その生成した制御信号S2をPCU60へ出力する。
【0057】
ECU200は、エンジン10およびPCU60等を制御することによって車両1が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体、すなわち、バッテリ70の充放電状態、エンジン10、第1MG20および第2MG30の動作状態を制御する。
【0058】
ECU200は、運転席に設けられたアクセルペダル(図示せず)の踏込み量に対応する要求駆動力を算出する。ECU200は、算出された要求駆動力に応じて、第1MG20および第2MG30のトルクと、エンジン10の出力とを制御する。
【0059】
上述したような構成を有する車両1においては、発進時や低速走行時等であってエンジン10の効率が悪い場合には、第2MG30のみによる走行が行なわれる。また、通常走行時には、たとえば動力分割装置40によりエンジン10の動力が2経路の動力に分けられる。一方の動力で駆動輪80が直接的に駆動される。他方の動力で第1MG20を駆動して発電が行なわれる。このとき、ECU200は、発電された電力を用いて第2MG30を駆動させる。このように第2MG30を駆動させることにより駆動輪80の駆動補助が行なわれる。
【0060】
車両1の減速時には、駆動輪80の回転に従動する第2MG30がジェネレータとして機能して回生制動が行なわれる。回生制動によって回収した電力は、バッテリ70に蓄えられる。なお、ECU200は、バッテリ70のSOCが低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン10の出力を増加させて第1MG20による発電量を増加させる。これにより、バッテリ70のSOCが増加させられる。また、ECU200は、低速走行時でも必要に応じてエンジン10からの駆動力を増加させる制御を行なう場合もある。たとえば、上述のようにバッテリ70の充電が必要な場合や、エアコン等の補機が駆動される場合や、エンジン10の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合等である。
【0061】
さらに、図1に示すような車両1においては、ECU200は、エンジン10に対して自動停止制御を実行する。ECU200は、車両1の運転状態やバッテリ70の状態によっては、燃費を向上させるために、エンジン10を自動的に停止させる。そして、ECU200は、エンジン10を停止させた後も車両1の運転状態やバッテリ70の状態によっては、エンジン10を再始動させる。
【0062】
具体的には、ECU200は、車両1の状態についての自動停止許可条件が成立した場合にエンジン10の自動停止制御の実行を許可する。ECU200は、自動停止許可条件が成立しない場合に自動停止制御の実行を禁止する。
【0063】
自動停止許可条件は、たとえば、バッテリ70の電池温度TB、バッテリ70のSOC、バッテリ70の劣化の有無、エンジン10の冷却媒体の温度(以下、冷却水温と記載する)Tw、エンジン10の三元触媒コンバータ116の温度、車両1の速度、および、空調装置の作動要求の有無のうちの少なくともいずれか一つについての条件を含む。
【0064】
バッテリ70の電池温度TBについての条件とは、たとえば、電池温度TBがしきい値TB(0)よりも高いという条件である。バッテリ70のSOCについての条件とは、たとえば、SOCがしきい値SOC(0)よりも高いという条件である。エンジン10の冷却水温についての条件とは、たとえば、冷却水温Twがしきい値Tw(0)よりも高い暖機完了状態であるという条件である。
【0065】
エンジン10の三元触媒コンバータ116の温度についての条件とは、三元触媒コンバータ116の温度がしきい値よりも高い暖機完了状態であるという条件である。なお、三元触媒コンバータ116の温度は、センサを用いて直接検出してもよいし、排気温あるいは吸入空気量Qiに基づいて推定してもよい。
【0066】
車両1の速度についての条件とは、車両1の速度Vが第1MG20の過回転を防止するためのしきい値V(0)よりも低いという条件である。空調装置の作動要求の有無についての条件とは、たとえば、ヒータの作動要求がないという条件である。
【0067】
上記した各条件で用いられるしきい値の各々は、エンジン10を停止させた状態で、車両1を第2MG30のみでの走行(以下、EV走行ともいう)が可能となる電力と、第1MG20を用いてエンジン10を始動させることが可能となる電力とを確保するという観点、あるいは、バッテリ70の劣化の促進を抑制するという観点等に基づいて設定される。
【0068】
なお、上述した条件は、一例であり、自動停止許可条件としては、上述の条件に限定されるものではない。自動許可条件は、上述の条件以外の条件を含むものであってもよい。
【0069】
ECU200は、上述した自動停止条件が成立した場合に自動停止制御を許可する。すなわち、ECU200は、エンジン10が作動中である場合には、エンジン10を停止させる。ECU200は、たとえば、エンジン10に対する燃料噴射を停止させてエンジン10の作動を停止させる。ECU200は、エンジン10が停止中である場合には、エンジン10の停止状態を維持する。
【0070】
一方、ECU200は、上述した自動停止条件が成立しない場合に自動停止制御を禁止する。すなわち、ECU200は、エンジン10が作動中である場合には、エンジン10作動状態を維持し、エンジン10を停止させない。ECU200は、エンジン10が停止中である場合には、エンジン10を始動する。ECU200は、たとえば、第1MG20を用いてクランキングさせ、スロットルバルブ110の開度制御、燃料噴射制御および点火制御を実行して、エンジン10を作動させる。
【0071】
ところで、自動停止制御の実行によるエンジン10の停止中においては、エンジン10の吸気通路106内の温度が上昇する場合がある。特に、吸気通路106内に熱線式のエアフローメータ164が設けられる場合には、エンジン10の停止中において通電状態が維持される場合がある。そのため、エンジン10の停止中において吸気温センサ162の周辺の温度が上昇する場合がある。その結果、エンジン10の再始動時において、吸気温センサ162の検出値と実際の吸気温とに差が生じて、吸気温センサ162の検出値に基づくエンジン10の制御(たとえば、燃料噴射制御)の制御精度が悪化する場合がある。
【0072】
そこで、本実施の形態においては、ECU200は、自動停止制御によるエンジン10の停止期間Tsが第1期間Ts(0)以上となる場合に第1MG20を用いてエンジン10のクランク軸18を回転させる点に特徴を有する。
【0073】
また、ECU200は、エンジン10の吸気通路106に設けられる吸気温センサ162によって検出される吸気温度Tiの検出値と関連づけて第1期間Ts(0)を決定する。具体的には、ECU200は、吸気温センサ162によって検出される吸気温度Tiの検出値の上昇の程度が大きいときには、小さいときに比べて期間が短くなるように第1期間Ts(0)を決定する。
【0074】
さらに、ECU200は、第1MG20を用いてクランク軸18を回転させることができない場合には、エンジン10の再始動時に冷却水温Twに基づいて燃料噴射制御を実行する。このとき、ECU200は、吸気温センサ162の異常を検出しない。
【0075】
本実施の形態においては、ECU200は、バッテリ70のSOCがしきい値SOC(1)よりも小さい場合を、第1MG20を用いてクランク軸18を回転させることができない場合であるとして、エンジン10の再始動時に冷却水温Twに基づいて燃料噴射制御を実行する。
【0076】
一方、ECU200は、第1MG20を用いてクランク軸18を回転させることができる場合には、再始動時にエンジン10の吸気温Tiに基づいて燃料噴射制御を実行する。
【0077】
図2に、本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の機能ブロック図を示す。ECU200は、停止期間判定部202と、SOC判定部204と、MG制御部206と、再始動判定部208と、始動制御部210と、異常診断部212とを含む。
【0078】
停止期間判定部202は、自動停止制御の実行によりエンジン10が停止されてからの停止期間Tsが第1期間Ts(0)以上であるか否かを判定する。なお、停止期間Tsの開始時点は、たとえば、エンジン10の回転が停止した時点(すなわち、エンジン10の回転数が実質的にゼロになった時点)であるが、特にこれに限定されるものではない。たとえば、停止期間Tsの開始時点は、燃料噴射が停止した時点であってもよいし、あるいは、自動停止許可条件が成立した時点であってもよい。
【0079】
停止期間判定部202は、たとえば、吸気温センサ162によって検出される吸気温度Tiの検出値の上昇と関連づけて第1期間Ts(0)を決定する。具体的には、停止期間判定部202は、吸気温センサ162によって検出される吸気温度Tiの検出値の上昇量ΔTiが大きいときは、小さいときに比べて期間が短くなるように第1期間Ts(0)を決定してもよい。第1期間Ts(0)は、所定期間であってもよい。また、停止期間判定部202は、たとえば、吸気温センサ162によって検出される吸気温度Tiの検出値が大きいときは小さいときと比べて期間が短くなるように第1期間Ts(0)を決定してもよい。第1期間Ts(0)は、エンジン10が停止してから通電によってエアフローメータ164の付近の温度上昇を開始する時点までの期間よりも長い時間であって、たとえば、5分程度である。
【0080】
なお、停止期間判定部202は、たとえば、停止期間Tsが第1期間Ts(0)以上となる場合に、期間判定フラグをオン状態にしてもよい。
【0081】
SOC判定部204は、停止期間判定部202によって停止期間Tsが第1期間Ts(0)以上であると判定された場合に、バッテリ70のSOCがしきい値SOC(1)以上であるか否かを判定する。しきい値SOC(1)は、所定時間Tcが経過するまで第1MG20を用いて回転数Ne(0)を維持した状態でエンジン10を回転させても、バッテリ70のSOCが所定の下限値SOC(2)を下回らないように設定される。なお、所定時間Tcおよび回転数Ne(0)については後述する。しきい値SOC(1)は、所定値であってもよい。
【0082】
あるいは、しきい値SOC(1)は、電池温度TBに基づいて設定されてもよい。しきい値SOC(1)は、たとえば、電池温度TBが高いときは、低いときに比べて値が小さくなるように決定されてもよい。
【0083】
また、しきい値SOC(1)は、冷却水温Twに基づいて設定されてもよい。しきい値SOC(1)は、たとえば、冷却水温Twが低いときには、高いときに比べて値が大きくなるように決定されてもよい。これは、冷却水温Twが低いときには、高いときに比べてエンジン10のフリクションが大きくなるためである。
【0084】
なお、SOC判定部204は、たとえば、停止期間判定フラグがオン状態である場合に、バッテリ70のSOCがしきい値SOC(1)以上であるか否かを判定し、バッテリ70のSOCがしきい値SOC(1)以上である場合に、SOC判定フラグをオン状態にしてもよい。
【0085】
MG制御部206は、SOC判定部204によってバッテリ70のSOCがしきい値SOC(1)以上であると判定された場合に、吸気通路106内の空気が流通するように第1MG20を用いてエンジン10のクランク軸を回転させる。MG制御部206は、第1MG20を回転させるための制御信号S2を生成して、PCU60に送信する。以下の説明においては、第1MG20を用いてエンジン10のクランク軸を回転させる制御をクランキング制御とも記載する。
【0086】
MG制御部206は、たとえば、エンジン回転数Neが回転数Ne(0)になるようにクランキング制御を実行する。回転数Ne(0)は、少なくとも吸気通路106内の空気が流通する回転数であることが望ましい。さらに、回転数Ne(0)は、車両1に共振による振動が発生する回転数領域を回避するように設定されることが望ましい。なお、回転数Ne(0)は、所定回転数であってもよいし、あるいは、吸気温センサ162の検出値に基づいて決定されてもよい。回転数Ne(0)は、たとえば、吸気温センサ162の検出値が高いときには、低いときに比べて高い回転数になるように決定されてもよい。
【0087】
MG制御部206は、クランキング制御を開始してから第2期間Tcが経過した場合、あるいは、クランキング制御を開始してから第2期間Tcが経過するまでにエンジン10を再始動する場合にクランキング制御を終了する。なお、MG制御部206は、たとえば、クランキング制御を終了したときに、停止期間Tsを初期値(ゼロ)にリセットしてもよい。さらに、第2期間Tcは、所定期間であってもよいし、あるいは、バッテリ70のSOCによって決定されてもよい。たとえば、SOCが低いときには、高いときに比べて期間が短くなるように第2期間Tcが決定されてもよい。
【0088】
さらに、本実施の形態においては、MG制御部206は、クランキング制御を開始してから第2期間Tcが経過した場合にクランキング制御を終了するとして説明したが、これに加えてまたは代えて吸気温センサ162の検出値が所定値よりも小さい場合、あるいは、吸気温センサ162の検出値と外気温との差の大きさが所定値よりも小さい場合にクランキング制御を終了してもよい。
【0089】
また、MG制御部206は、たとえば、SOC判定フラグがオン状態である場合に、クランキング制御を実行するようにしてもよい。また、クランキング制御の実行時においては、スロットルバルブ110は、下限値にしておくことが望ましい。このようにすると、吸気通路106内の空気の流速を大きくすることができる。
【0090】
再始動判定部208は、エンジン10を再始動させるか否かを判定する。具体的には、再始動判定部208は、上述した自動停止許可条件が成立しない場合に、エンジン10を再始動させると判定する。
【0091】
なお、再始動判定部208は、たとえば、エンジン10を再始動させると判定された場合に、再始動判定フラグをオン状態にしてもよい。
【0092】
始動制御部210は、MG制御部206によって第1MG20を用いてエンジン10のクランク軸を回転させている場合、あるいは、第1MG20の制御が終了している場合には、再始動判定部208によってエンジン10を再始動させると判定されたときに第1始動制御を実行する。
【0093】
始動制御部210は、第1MG20を用いてエンジン10のクランク軸を初爆可能なエンジン回転数Ne(1)まで上昇させた後に、スロットルバルブ110の開度制御、吸気温Tiに基づく燃料噴射制御、および、点火制御を実行する制御を第1始動制御として実行する。なお、回転数Ne(0)と回転数Ne(1)とは、同一の回転数であってもよいし、あるいは、互いに異なる回転数であってもよい。
【0094】
始動制御部210は、吸気温Tiに基づく燃料噴射制御の実行時において、たとえば、吸入空気量Qiと、エンジン回転数Neとに基づいて、基本噴射時間を決定する。始動制御部210は、吸気温Tiに基づいて第1補正噴射時間を決定する。なお、始動制御部210は、吸気温Tiの以外のエンジン10の状態に応じた第2補正噴射時間を決定する。始動制御部210は、決定された基本噴射時間に、第1補正噴射時間と、第2補正噴射時間とを加算することによって最終的な噴射時間(燃料噴射量)を決定する。なお、始動制御部210は、吸気温Tiが低いほど空気密度が高くなるため、吸気温Tiが低いときには、高いときに比べて噴射時間が長くなるように第1補正噴射時間を決定する。第2補正噴射時間には、エンジン10の暖機状態(冷却水温Tw)に基づく補正噴射時間が含まれるものとする。
【0095】
また、始動制御部210は、SOC判定部204によってSOCがしきい値SOC(1)よりも低いと判定された場合には、再始動判定部208によってエンジン10を再始動させると判定されたときに第2始動制御を実行する。
【0096】
始動制御部210は、第1MG20を用いてエンジン10のクランク軸を初爆可能な回転数まで上昇させた後に、スロットルバルブの開度制御、冷却水温Twに基づく燃料噴射制御、および、点火制御を実行する制御を第2始動制御として実行する。
【0097】
始動制御部210は、冷却水温Twに基づく燃料噴射制御の実行時において、上述の第1補正噴射時間を冷却水温Twに基づいて決定する。すなわち、始動制御部210は、冷却水温Twに基づいて吸気温Tiを推定する。始動制御部210は、たとえば、冷却水温Twと、冷却水温Twと吸気温Tiとの関係を示す所定のマップとから吸気温Tiを推定する。始動制御部210は、推定された吸気温Tiに基づいて第1補正噴射時間を決定する。あるいは、始動制御部210は、冷却水温Twと、冷却水温Twと第1補正噴射時間との関係を示す所定のマップとから第1補正噴射時間を決定してもよい。この冷却水温Twに基づく燃料噴射制御は、たとえば、車両1のシステムが停止されるまで(スタートスイッチ150によるIGオフ操作が行われるまで)実行されてもよい。
【0098】
なお、始動制御部210は、エンジン10の回転数がエンジン10の始動が完了したと判定するためのしきい値Ne(2)以上となる場合に第1MG20を用いたクランキングを停止させる。
【0099】
異常診断部212は、第1始動制御の実行後のエンジン10の作動中においては、吸気温センサ162の異常診断を実行する。異常診断部212は、たとえば、所定量ΔTi(0)以上の吸気温の変化が期待できる状況において、吸気温センサ162の変化量がしきい値ΔTi(1)(<ΔTi(0))に満たない場合に吸気温センサ162が異常であると診断する。所定量ΔTiは、たとえば、5℃であり、しきい値ΔTi(1)は、たとえば、1℃である。異常診断部212は、吸気温センサ162が異常であると診断した場合には、車両1の乗員にその旨を通知してもよい。異常診断部212は、たとえば、警告灯の点灯、表示部への表示、音声による通知によって吸気温センサ162が異常である旨を通知してもよい。
【0100】
一方、異常診断部212は、第2始動制御の実行後のエンジン10の作動中においては、異常診断を無効化する。すなわち、異常診断部212は、第2始動制御の実行後のエンジン10の作動中においては、吸気温センサ162の異常を検出しない。異常診断部212は、たとえば、第2始動制御の実行後のエンジン10の作動中において、上述した異常診断を実行しないようにしてもよいし、あるいは、所定量ΔTi(0)以上の吸気温の変化が期待できる状況において、吸気温センサ162の変化量がしきい値ΔTi(1)に満たない場合に吸気温センサ162が異常でないと診断してもよいし、あるいは、異常と診断しても、診断結果に関連した車両1の制御の実行を抑制してもよい。たとえば、異常診断部212は、吸気温センサ162が異常であると診断した場合に、車両1の乗員への通知を抑制したり、吸気温センサ162が異常であることを前提で行われる制御の実行を抑制したりしてもよい。なお、異常診断部212は、たとえば、異常診断の無効化を車両1のシステムが停止されるまで(スタートスイッチ150によるIGオフ操作が行われるまで)実行してもよい。また、異常診断部212は、たとえば、異常診断を無効化する場合には、無効化フラグをオン状態にしてもよい。
【0101】
本実施の形態において、停止期間判定部202と、SOC判定部204と、MG制御部206と、再始動判定部208と、始動制御部210と、異常診断部212とは、いずれもECU200のCPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両1に搭載される。
【0102】
図3を参照して、本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0103】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU200は、エンジン10の停止期間Tsが第1期間Ts(0)以上であるか否かを判定する。エンジン10の停止期間Tsが第1期間Ts(0)以上である場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。もしそうでない場合(S100にてNO)、この処理は終了する。
【0104】
S102にて、ECU200は、バッテリ70のSOCがしきい値SOC(1)以上であるか否かを判定する。バッテリ70のSOCがしきい値SOC(1)以上である場合(S102にてYES)、処理はS104に移される。もしそうでない場合(S102にてNO)、処理はS114に移される。
【0105】
S104にて、ECU200は、エンジン回転数Neを回転数Ne(0)になるようにする第1MG20を用いたクランキング制御を実行する。S106にて、ECU200は、クランキング制御を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過した場合に(S106にてYES)、処理はS108に移される、もしそうでない場合には(S106にてNO)、処理はS110に移される。
【0106】
S110にて、ECU200は、エンジン10を再始動させるか否かを判定する。エンジン10を再始動させる場合(S110にてYES)、処理はS112に移される。もしそうでない場合(110にてNO)、この処理は終了する。
【0107】
S112にて、ECU200は、第1始動制御を実行する。なお、第1始動制御については上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返されない。
【0108】
S114にて、ECU200は、エンジン10を再始動させるか否かを判定する。エンジン10を再始動させる場合(S114にてYES)、処理はS116に移される。もしそうでない場合(S114にてNO)、この処理は終了する。
【0109】
S116にて、ECU200は、第2始動制御を実行する。なお、第2始動制御については上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返されない。S118にて、ECU200は、吸気温センサ162の異常診断を無効化する。
【0110】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の動作について図4を参照して説明する。
【0111】
図4の実線に示すように、たとえば、エンジン10が作動中であって、かつ、バッテリ70のSOCがしきい値SOC(1)よりも大きい場合を想定する。
【0112】
時間T(0)にて、自動停止許可条件が成立した場合に、ECU200は、燃料噴射を停止するなどしてエンジン10を停止させる。時間T(1)にて、エンジン回転数Neが実質的にゼロなった時点から自動停止制御による停止期間の計測が開始される。
【0113】
時間T(2)にて、エンジン10の停止期間Tsが第1期間Ts(0)以上になる場合(S100にてYES)、バッテリ70のSOCがしきい値SOC(1)よりも大きいため(S102にてYES)、第1MG20を用いたクランキング制御が実行される(S104)。そのため、エンジン回転数Neは、回転数Ne(0)まで上昇する。
【0114】
クランキング制御が実行されることによって、エンジン10の気筒102内のピストンが上下運動する。ピストンの上下運動によって吸気通路106内の空気は、排気通路114側に流通する。そのため、吸気温センサ162の周辺の温度は、低下していくこととなる。
【0115】
クランキング制御の実行が開始されてから所定時間Tcが経過する前の(S106にてNO)、時間T(3)にて、自動停止許可条件が不成立となった場合には、エンジン10を再始動させると判定される(S110にてYES)。そのため、第1始動制御が実行される(S112)。このとき、吸気温センサ162の異常診断は行われる。
【0116】
また、クランキング制御の実行が開始されてから所定時間Tcが経過した場合(S106にてYES)、図4の一点鎖線に示すように時間T(4)にて、クランキング制御は終了する(S108)。
【0117】
次に、図4の破線に示すように、エンジン10が作動中であって、かつ、バッテリ70のSOCがしきい値SOC(1)よりも小さい場合を想定する。
【0118】
時間T(0)にて、自動停止許可条件が成立した場合に、ECU200は、燃料噴射を停止するなどしてエンジン10を停止させる。時間T(1)にて、エンジン回転数Neが実質的にゼロになった時点から自動停止制御による停止期間Tsの計測が開始される。
【0119】
時間T(2)にて、エンジン10の停止期間Tsが第1期間Ts(0)以上になっても(S100にてYES)、バッテリ70のSOCがしきい値SOC(1)よりも小さいため(S102にてNO)、クランキング制御は実行されない。
【0120】
時間T(3)にて、自動停止許可条件が不成立となった場合には、エンジン10を再始動させると判定される(S114にてYES)。そのため、第2始動制御が実行される(S116)。このとき、吸気温センサ162の異常診断は無効化される(S118)。
【0121】
以上のようにして、本実施の形態に係る車両によると、自動停止制御によるエンジン10の停止期間Tsが第1期間Ts(0)以上となる場合に第1MG20を用いたクランキング制御を実行することによって、エンジン10の吸気通路106内の空気を流通させることができる。そのため、吸気温センサ162の周辺に空気の滞留を抑制することができる。すなわち、吸気温センサ162の周辺の温度の上昇が抑制される。その結果、エンジン10の再始動時において吸気温センサ162の検出値と実吸気温とのずれの拡大を抑制することができる。したがって、内燃機関の再始動時の内燃機関の制御精度の悪化を抑制するハイブリッド車両およびハイブリッド車両の制御方法を提供することができる。
【0122】
さらに、第1MG20を用いてクランク軸を回転させることができない場合、すなわち、バッテリ70のSOCがしきい値SOC(1)よりも低い場合には、クランキング制御の実行に代えて、冷却水温Twに基づいて燃料噴射制御を実行することによって、吸気温センサの検出値に基づいて燃料噴射制御を実行する場合よりも制御精度の悪化を抑制することができる。
【0123】
さらに、冷却水温Twに基づく燃料噴射制御を実行するとともに、吸気温センサ162の異常診断を無効化することによって、吸気温センサ162の異常の誤検出を抑制することができる。また、上述したような制御を実行することにより、エンジン10の停止中にエアフローメータの熱線の通電を遮断する回路や専用の電源を別途設けることなく、エンジン10適切に制御することができる。そのため、コストの上昇を抑制することができる。
【0124】
なお、本実施の形態においては、吸気温センサ162によって検出される吸気温度Tiの検出値の上昇量ΔTiが大きいときには、小さいときに比べて期間が短くなるように第1期間が決定されるとして説明したが、たとえば、吸気温センサ162によって検出される吸気温度Tiの検出値が高いときには、低いときに比べて期間が短くなるように第1期間が決定されてもよい。あるいは、冷却水温Twが高いときには、低いときに比べて期間が短くなるように第1期間が決定されてもよい。
【0125】
また、外部電源302による充電が可能なハイブリッド車両においては、充電完了後の走行時には、エンジンを停止させた状態で第2MG30を用いた走行が長時間継続する場合がある。すなわち、自動停止制御によるエンジン10の停止期間が長時間継続する場合があるため、このような車両に本発明を適用することによって、再始動時の内燃機関の制御精度の悪化をより有効に抑制することができる。なお、本実施の形態においては、車両1は、充電装置74を含み、外部電源302による充電が可能であるとして説明したが、充電装置74を搭載しない車両にも本発明を適用できる。
【0126】
また、図1では、駆動輪80を前輪とする車両1を一例として示したが、特にこのような駆動方式に限定されるものではない。たとえば、車両1は、後輪を駆動輪とするものであってもよい。または、車両1は、図1の第2MG30が前輪の駆動軸16に代えて、後輪を駆動するための駆動軸に連結される車両であってもよい。また、駆動軸16と減速機58との間あるいは駆動軸16と第2MG30との間に変速機構が設けられてもよい。
【0127】
あるいは、車両1は、図5に示すような構成を有していてもよい。具体的には、図5に示す車両1は、図1の車両1の構成と比較して、第2MG30を有しない点と、第1MG20の回転軸をエンジン10のクランク軸18に直結させている点と、動力分割装置40に代えて、クラッチ22を有する動力伝達装置42を含む点とが異なる。クラッチ22は、第1MG20と駆動輪80とを動力伝達状態と動力遮断状態との間で変化させる。動力伝達装置42は、たとえば、変速機構である。なお、クラッチ22に加えて、エンジン10と第1MG20との間にさらにクラッチ(図5の破線)が設けられるものであってもよい。
【0128】
さらに、本実施の形態においてECU200は、停止期間Tsが第1期間Ts(0)以上であって、バッテリ70のSOCがしきい値SOC(1)以上である場合に第1MG20を用いたクランキング制御を実行するとして説明したが、第1MG20を用いたクランキング制御を実行する条件としては、上述の条件に限定されるものではない。
【0129】
たとえば、ECU200は、ECU200が、停止期間Tsが第1期間Ts(0)以上である場合であって、かつ、バッテリ70のSOCがしきい値SOC(1)以上である場合に加えてまたは代えて、シフトポジションがPポジション以外である場合に、第1MG20を用いたクランキング制御を実行してもよい。すなわち、ECU200は、シフトポジションがPポジションである場合を、第1MG20を用いてクランク軸18を回転させることができない場合であるとして、エンジン10の再始動時に冷却水温Twに基づいて燃料噴射制御を実行してもよい。
【0130】
たとえば、ECU200は、図6に示すフローチャートに基づくプログラムを実行してもよい。なお、図6に示したフローチャートの中で、前述の図3に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについての処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返されない。
【0131】
図6に示すフローチャートにおいては、バッテリ70のSOCがしきい値SOC(1)以上であると判定された場合(S102にてYES)、S200にて、ECU200は、シフトポジションがPポジション以外であるか否かを判定する。シフトポジションがPポジション以外である場合(S200にてYES)、処理はS104に移される。もしそうでない場合(S200にてJNO)、処理はS114に移される。
【0132】
Pポジションが選択されている場合に、第1MGを用いたクランキング制御が行われると、車両1の停車中にエンジン10がクランキングされることとなる。その結果、クランキングにより生じた車両1の振動を運転者が認識する可能性がある。そのため、クランキングをPポジション以外のシフトポジションである場合に実行することによって、クランキング制御により生じた車両1の振動を運転者が認識することを抑制することができる。
【0133】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0134】
1 ハイブリッド車両、10 エンジン、11 エンジン回転速度センサ、12,13 レゾルバ、14 車輪速センサ、16 駆動軸、18 クランク軸、22 クラッチ、40 動力分割装置、42 動力伝達装置、50 サンギヤ、52 ピニオンギヤ、54 キャリア、56 リングギヤ、58 減速機、60 PCU、62 スイッチング素子、70 バッテリ、78 充電装置、80 駆動輪、82 ドライブシャフト、102 気筒、104 燃料噴射装置、106 吸気通路、108 エアクリーナ、110 スロットルバルブ、112 スロットルモータ、114 排気通路、116 三元触媒コンバータ、118 インテークマニホールド、120 エキゾーストマニホールド、150 スタートスイッチ、152 シフトレバー、154 シフトポジションセンサ、156 電池温度センサ、158 電流センサ、160 電圧センサ、162 吸気温センサ、164 エアフローメータ、166 スロットルポジションセンサ、168 水温センサ、200 ECU、202 停止期間判定部、204 SOC判定部、206 MG制御部、208 再始動判定部、210 始動制御部、212 異常診断部、300 充電プラグ、302 外部電源、304 充電ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関の出力軸を回転させるための回転電機と、
前記内燃機関の自動停止制御を実行するための制御部とを含み、
前記制御部は、前記自動停止制御による前記内燃機関の停止期間が第1期間を超える場合に前記回転電機を用いて前記出力軸を回転させる、ハイブリッド車両。
【請求項2】
前記制御部は、前記内燃機関の吸気通路に設けられた吸気温度検出部によって検出される検出値と関連づけて前記第1期間を決定する、請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
前記制御部は、前記検出値の上昇の程度が大きいときには、小さいときに比べて期間が短くなるように前記第1期間を決定する、請求項2に記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記制御部は、前記検出値が高いときには、低いときに比べて期間が短くなるように前記第1期間を決定する、請求項2に記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
前記制御部は、前記内燃機関の冷却媒体の温度が高いときには、低いときに比べて期間が短くなるように前記第1期間を決定する、請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項6】
前記制御部は、前記回転電機を用いて前記出力軸を回転させることができない場合には、前記内燃機関の再始動時に前記内燃機関の冷却媒体の温度に基づいて燃料噴射制御を実行する、請求項1〜5のいずれかに記載のハイブリッド車両。
【請求項7】
前記ハイブリッド車両は、前記回転電機に電力を供給するための蓄電装置をさらに含み、
前記制御部は、前記蓄電装置の残容量がしきい値よりも小さい場合を、前記回転電機を用いて前記出力軸を回転させることができない場合であるとして、前記再始動時に前記冷却媒体の温度に基づいて前記燃料噴射制御を実行する、請求項6に記載のハイブリッド車両。
【請求項8】
前記制御部は、シフトポジションがパーキングポジションである場合を、前記回転電機を用いて前記出力軸を回転させることができない場合であるとして、前記再始動時に前記冷却媒体の温度に基づいて前記燃料噴射制御を実行する、請求項6に記載のハイブリッド車両。
【請求項9】
前記ハイブリッド車両は、前記内燃機関の吸気通路に設けられた吸気温度検出部をさらに含み、
前記制御部は、前記再始動時に前記内燃機関の冷却媒体の温度に基づいて前記燃料噴射制御を実行する場合には、前記吸気温度検出部の異常を検出しない、請求項6〜8のいずれかに記載のハイブリッド車両。
【請求項10】
前記制御部は、前記回転電機を用いて前記出力軸を回転させることができる場合には、前記再始動時に前記内燃機関の吸気通路に設けられた吸気温度検出部によって検出される検出値に基づいて前記燃料噴射制御を実行する、請求項6〜9のいずれかに記載のハイブリッド車両。
【請求項11】
前記内燃機関の吸気通路には、吸気温度検出部と、前記吸気通路内の空気の流量を検出するための熱線式エアフローメータとが設けられ、
前記熱線式エアフローメータは、前記自動停止制御による前記内燃機関の停止中において通電状態が維持され、
前記制御部は、前記自動停止制御による前記内燃機関の前記停止期間が前記第1期間を超える場合に前記吸気通路内の空気が流通するように前記回転電機を用いて前記出力軸を回転させる、請求項1〜10のいずれかに記載のハイブリッド車両。
【請求項12】
内燃機関と、前記内燃機関の出力軸を回転させるための回転電機とを搭載したハイブリッド車両の制御方法であって、
前記内燃機関の自動停止制御を実行するステップと、
前記自動停止制御による前記内燃機関の停止期間が第1期間を超える場合に前記回転電機を用いて前記出力軸を回転させるステップとを含む、ハイブリッド車両の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−32125(P2013−32125A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169969(P2011−169969)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】