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ハイブリッド車両のエンジン停止制御装置
説明

ハイブリッド車両のエンジン停止制御装置

【課題】エンジン制御系からクランク角情報を入力することなくモータ制御系でエンジンのクランク角を判別可能として、エンジン自動停止の際に走行用モータにより適切なタイミングで制動を加えてエンジンを最適クランク位置で停止でき、もって、その後の自動始動時のエンジン始動性を向上できるハイブリッド車両のエンジン停止制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン2を自動停止する際に、クラッチ4を接続して、エンジン2の燃料供給を中止した後にモータ6を駆動し、回生制御としてモータ6の回転速度を所定の目標値に維持する回転制御を実行する。このときエンジン2のトルク変動に同期して変動するモータ6の回生率を指標として変動波形のピークを特定し、そのピークを起点として、予め最適クランク位置までのクランク角として設定された停止クランク角Δθstopに基づき最適クランク位置を判別する。エンジン2が最適クランク位置に到達した時点でモータトルクを増加させてエンジン2に制動を加えて停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド車両のエンジン停止制御装置に係り、詳しくは所定のエンジン停止条件の成立時に始動に対して最適なクランク位置でエンジンを停止させるエンジン停止制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃費低減およびCO2排出量の抑制などを目的として、信号待ちなどで所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させ、その後に所定の始動条件が成立したときにエンジンを自動始動するアイドルストップスタート機能を備えた車両が普及している(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載された車両では、エンジンの自動始動時にスタータモータを使用せずに、膨張工程で停止中の気筒の筒内に燃料を直接供給して点火・燃焼させることでエンジン始動している。膨張工程気筒で燃料を点火・燃焼させるには適切な圧縮を保持している必要があり、そのためにはエンジン停止時に何れかの気筒のピストンを膨張工程の適切な位置で停止させる必要がある。そこで、エンジン自動停止のために燃料供給を中止したときに、オルタネータの発電電流を制御することにより惰性回転中のエンジンに制動を加えて、上記膨張工程気筒の点火・燃焼を考慮した最適クランク位置でエンジンを停止させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−315202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された車両では、特有のエンジン始動方式を採用している故に最適クランク位置でエンジン停止させる必要があるが、例えばスタータモータでエンジン始動する通常の車両、或いは走行用モータをスタータモータとして機能させてエンジン始動するハイブリッド車両においても最適クランク位置が存在する。即ち、これらの車両では、何れのクランク位置からクランキングを開始するかに応じてエンジンの始動性、ひいては始動所要時間やモータ消費電力が相違する。よって、エンジンを自動停止させる際に、その後の始動性を考慮した最適クランク位置でエンジンを停止させることが望ましく、そのために上記特許文献1の技術を応用することができる。
ハイブリッド車両では走行用モータを搭載しているため、特許文献1のオルタネータの代用として走行用モータを回生制御してエンジンを制動することが考えられる。惰性回転中のエンジンを最適クランク位置で停止させるには、エンジンのクランク角情報を指標として適切なタイミングで走行用モータにより制動を加える必要がある。
【0005】
ところが、ハイブリッド車両のエンジン制御系とモータ制御系とは基本的に独立しており、モータ制御系では元々エンジンのクランク角情報が不要なため取り扱っていない。また、情報量が多いクランク角情報をエンジン制御系からモータ制御系に入力するように仕様変更するのは、処理負荷が過大になるため現実的でない。このため、特許文献1の技術をそのまま適用するだけでは、走行用モータの制動タイミングを適切に制御できず、結果として最適クランク位置でエンジンを停止できないことから実施不能であった。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、エンジン制御系からクランク角情報を入力することなくモータ制御系でエンジンのクランク角を判別可能として、エンジン自動停止の際に走行用モータにより適切なタイミングで制動を加えてエンジンを最適クランク位置で停止でき、もって、その後の自動始動時のエンジン始動性を向上することができるハイブリッド車両のエンジン停止制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、車両の駆動源としてのエンジン及びモータの駆動力を変速機を介して駆動輪に伝達するように構成されると共に、所定の停止条件が成立したときにエンジンの燃料供給を中止して自動停止させ、その後に所定の始動条件が成立したときにエンジンを自動始動するアイドルストップスタート制御手段を備え、アイドルストップスタート制御手段によりエンジンが自動停止されるときに、燃料供給を中止した後のエンジンに対してモータの回生制御によるトルクを任意に作用可能なハイブリッド車両の制御装置において、エンジンの自動停止に際して、回生制御としてモータの回転速度を所定の目標値に維持する回転制御を実行する回転制御実行手段と、回転制御実行手段の回転制御によりエンジンのトルク変動に同期して変動する上記モータの回生状態のピークを特定するピーク特定手段と、ピーク特定手段により特定された回生状態のピークを起点として、予め設定された停止クランク角が経過した後の最適クランク位置にエンジンが到達したか否かを判別する最適クランク位置判別手段と、最適クランク位置判別手段によりエンジンが最適クランク位置に到達したと判別されたとき、モータのトルクを増加させてエンジンに制動を加えるトルク増加制御手段とを備えたものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、ピーク特定手段によりモータの回生状態のピークが特定されたときのエンジンの回転速度に基づき、停止クランク角を停止時間に換算する時間換算手段を備え、最適クランク位置判別手段が、特定されたピークから時間換算手段により換算された停止時間が経過したときに、エンジンが最適クランク位置に到達したと判別するものである。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように請求項1の発明のハイブリッド車両のエンジン停止制御装置によれば、エンジンの自動停止時にモータの回生制御として回転制御を実行することにより、エンジントルクの変動に同期してモータの回生状態を変動させ、このときの回生状態の変動のピークを特定し、ピークを起点として所定の停止クランク角が経過した後の最適クランク位置を判別し、エンジンが最適クランク位置に到達した時点でモータトルクを増加させてエンジンに制動を加えて停止させるようにした。
従って、エンジンを制御しているエンジン制御系から情報量が多いクランク角情報を入力することなく、エンジンのクランク角を判別可能となる。よって、惰性回転中のエンジンに最適クランク位置に相当する適切なタイミングでモータにより制動を加えて最適クランク位置近傍で停止させることができ、もって、その後の自動始動時のエンジン始動性を向上することができる。
【0009】
請求項2の発明のハイブリッド車両のエンジン停止制御装置によれば、請求項1に加えて、モータの回生状態のピーク特定時のエンジン回転速度に基づき停止クランク角を停止時間に換算し、その停止時間が経過したときにエンジンが最適クランク位置に到達したと判別するようにした。
ピーク特定時のエンジン回転速度の相違に応じて停止クランク角が同一であっても最適クランク位置は前後するが、停止クランク角を時間換算することにより、ピーク特定時のエンジン回転速度に関係なく常に的確に最適クランク位置を判別できる。よって、自動停止時のエンジンを一層確実に最適クランク位置近傍で停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態のハイブリッド車両のエンジン停止制御装置を示す全体構成図である。
【図2】インバータECUが実行するモータ制動制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】エンジンを自動停止させる際のモータによる制動状態を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化したハイブリッド車両のエンジン停止制御装置の一実施形態を説明する。
図1は本実施形態のハイブリッド車両のエンジン停止制御装置を示す全体構成図である。
ハイブリッド車両1は所謂パラレル方式のハイブリッド型トラックとして構成されている。ディーゼルエンジン(以下、エンジンという)2の出力軸にはクラッチ4の入力軸が連結されており、クラッチ4の出力軸には例えば永久磁石式同期電動機のように発電も可能な走行用モータ6(以下、モータという)の回転軸を介して自動変速機8の入力軸が連結されている。自動変速機8は一般的な手動変速機をベースとしてクラッチ4の断接操作及び変速段の切換操作を自動化したものである。但し、変速機の形式はこれに限るものではなく任意に変更可能であり、例えば手動式の変速機、或いはトルクコンバータを備えた遊星歯車式の変速機を適用してもよい。
【0012】
変速機8の出力軸はプロペラシャフト10、差動装置12及び駆動軸14を介して左右の駆動輪16に接続されている。従って、クラッチ4の切断時にはモータ6のみが変速機8を介して駆動輪16側と連結され、クラッチ4の接続時にはエンジン2及びモータ6が共に変速機8を介して駆動輪16側と連結される。
モータ6は、走行用バッテリ18に蓄えられた直流電力がインバータ20によって交流電力に変換されて供給されることにより作動し、その駆動トルクが変速機8により適宜変速された後に駆動輪16に伝達されて車両1を走行させる。また、アクセルオフにより車両1が減速する惰行運転時には、モータ6が発電機として作動して交流電力を発電すると共に、回生トルクを発生させて駆動輪16に制動力を作用させながら車両1を減速させる。そして、発電された交流電力はインバータ20によって直流電力に変換された後にバッテリ18に充電され、これにより車両1の減速エネルギが電気エネルギとして回収されて、その後にモータ6による走行に有効利用される。
【0013】
一方、エンジン2の駆動力は、クラッチ4が接続されているときにモータ6の回転軸を経由して変速機8に伝達され、適宜変速された後に駆動輪16に伝達される。従って、エンジン2の駆動力が駆動輪16に伝達されているとき、モータ6の非作動時には、エンジン2の駆動力のみが変速機8を介して駆動輪16に伝達され、モータ6の作動時には、エンジン2及びモータ6の駆動力が共に変速機8を介して駆動輪16に伝達される。
【0014】
また、バッテリ18の残存容量(SOC:State Of Charge)が低下してバッテリ18の充電が必要になると、車両1の走行中であってもモータ6が発電機として作動してエンジン駆動力の一部を用いて発電が行われ、発電された交流電力がインバータ20によって直流電力に変換されてバッテリ18に充電される。
車両ECU22は、車両1やエンジン2及びモータ6の運転状態、エンジンECU24(エンジン制御系に相当)、インバータECU26(モータ制御系に相当)並びにバッテリECU28からの情報に応じて、図示しないアクチュエータを駆動制御してクラッチ4の断接制御及び変速機8の変速制御を行うと共に、これらの制御状態や車両1の発進、加速、減速など様々な運転状態に合わせてエンジン2やモータ6を適切に運転するための統合制御を行う。
【0015】
このような制御を行うために、車両ECU22には、アクセルペダル30の操作量Accを検出するアクセルセンサ32、車両1の速度Vを検出する車速センサ34、モータ6の回転速度Nmを検出するモータ回転速度センサ36、及びブレーキペダル39の踏込操作を検出するブレーキセンサ40などの各種センサ類が接続されている。これらのセンサ類の検出情報に基づき、車両ECU22に車両1の走行に必要な要求トルクを演算し、この要求トルクをエンジン2が発生するトルク及びモータ6が発生するトルクに配分する。
また、これと並行して要求トルク、車両1の走行状態、エンジン2及びモータ6の運転状態、或いはバッテリ18のSOCなどに基づき走行モード(エンジン走行、モータ走行、エンジン・モータ走行)を選択する。そして、選択した走行モードで上記分配した要求トルクを達成するようにエンジンECU24及びインバータECU26にそれぞれ指令を出力すると共に、適宜変速機8の変速制御を実行する。
【0016】
エンジンECU24は、車両ECU22によって設定された走行モード及びエンジントルクを達成すべく、燃料供給量制御や供給時期制御を実行してエンジン2を運転する。各気筒の燃料供給のためにはエンジン2のクランク位置を判別する必要がある。このため、エンジンECU24にはエンジン2のクランク角に応じたパルスを出力するクランク角センサ35、及びカム角に応じたパルスを出力するカム角センサ37が接続されており、これらのクランク角情報及びカム角情報に基づきエンジン2の気筒判別を行った上で、各気筒が目標供給時期に相当するクランク角に到達する毎に燃料供給を実行している。
また、インバータECU26は、車両ECU22によって設定された走行モード及びモータトルクを達成すべく、インバータ20を駆動制御してモータ6を運転する。
【0017】
また、バッテリECU28は、バッテリ18の温度、バッテリ18の電圧、インバータ20とバッテリ18との間に流れる電流などを検出すると共に、これらの検出結果からバッテリ18のSOCを求め、求めたSOCを検出結果と共に車両ECU22に出力する。
一方、車両ECU22は、エンジン走行中或いはエンジン・モータ走行中において、信号待ちなどで所定の停止条件が成立したときにエンジン2を自動停止させ、その後に所定の始動条件が成立したときにエンジン2を自動始動するアイドルストップスタート制御を実行する(アイドルストップスタート制御手段)。
エンジン停止条件及び始動条件は種々の文献に開示されているため、概略のみを説明する。例えばエンジン停止条件としては、アクセル操作の中止(Acc=0)、車速Vが0まで低下、シフトレバーがNレンジ、及びブレーキ操作中であることの各条件が設定されている。これらの全ての条件が満たされたときに車両ECU22はエンジン停止条件が成立したと見なし、エンジンECU24にエンジン停止の指令を出力し、その指令に基づきエンジンECU24がエンジン2の燃料供給を中止して自動停止させる。
【0018】
また、エンジン始動条件としてはブレーキ操作の中止が設定されている。この条件が満たされたときに車両ECU22はエンジン始動条件が成立したと見なし、クラッチ4を接続すると共に、エンジンECU24及びインバータECU26にエンジン始動の指令を出力する。その指令に基づきインバータECU26がモータ6を駆動してエンジン2をクランキングすると共に、エンジンECU24がエンジン2の燃料供給を開始して自動始動させて、車両1を発進可能とする。
なお、以上のエンジン停止条件及び始動条件は一例であり、これに限るものではなく任意に変更可能である。
【0019】
そして、エンジン停止時のクランク位置に応じて、その後の自動始動時のエンジン始動性、ひいては始動所要時間やモータ消費電力が相違する。例えば、何れかの気筒の圧縮上死点の直後に相当するクランク位置でエンジン2を停止させれば、自動始動の際にモータトルクによりエンジン2のクランキングを円滑に開始できることから始動性が向上し、少ないモータ消費電力で迅速に始動を完了可能となる。よって、このようなクランク位置が最適クランク位置と見なせる。
なお、これは最適クランク位置の一例であり、他の観点に基づき最適クランク位置を設定してもよい。例えば、何れかの気筒の圧縮上死点の直前に相当するクランク位置でエンジン2を停止させれば、ごく僅かのクランキングにより直ちにエンジン2が初爆に至って一層迅速に始動完了できるため、このクランク位置を最適クランク位置としてもよい。
【0020】
以上の最適クランク位置でエンジン2を停止させるべく、本実施形態では自動停止時にクラッチ4を接続してモータ6を回生制御し、惰性回転中のエンジン2に負側のトルク(制動)を作用させて停止させるが、制動を加えるタイミングを判別するにはエンジン2のクランク角情報を指標とする必要がある。ところが、上記のようにクランク角情報はエンジンECU24側で取り扱われる情報であり、モータ6を制御するインバータECU26側では元々エンジン2のクランク角情報が不要なため取り扱っておらず、これを指標とすることができない。
【0021】
このような問題を鑑みて本発明者は、以下の知見に基づく指標を用いれば、自動停止時のエンジン2を最適クランク位置で停止可能なことを見出した。
まず、エンジン2は通常、停止動作の1つである燃料供給停止によって惰性回転を経て停止に至るが、本発明では燃料供給停止後にエンジン2を所定の回転速度になるようモータ6によって回生制御する。一方、モータ6の回生制御は、モータ回転速度Nmを所定の目標値に維持しながらトルクをフィードバックして回生発電する回転制御、及びモータトルクを所定の目標値に維持しながら回転速度をフィードバックして回生発電するトルク制御に大別できる。そして、モータ6によりエンジン2を駆動して回生制御として回転制御を実行すれば、その間には各気筒の行程に応じたトルク変動を生じていることから、回転維持の結果、必然的にモータ6の回生状態、例えば回生率はエンジン2のトルク変動に同期して変動することになる。よって、このときの回生率などのようなモータ6の回生状態は、エンジン2のクランク角情報に代わる指標として利用できる。
【0022】
以上の知見に基づき本実施形態では、エンジン停止条件の成立により自動停止させるときに、インバータECU26によりモータ6の回生率を指標としてモータ6でエンジン2に制動を加えて最適クランク位置で停止させており、以下、当該制御について詳述する。
ここで、本実施形態では、エンジン2の自動停止時にモータ6を回生制御する必要があるため、エンジン停止条件の成立時には、車両ECU22がエンジン停止の指令をエンジンECU24に出力する一方、インバータECU26に回生制御の開始の指令を出力するようになっている。加えて車両ECU22は、回生制御によるモータ6のトルクをエンジン2に作用させるべく、エンジン停止条件の成立と同時にクラッチ4を接続している。
また、以下に述べるように最適クランク位置は、モータ回生率の変動波形の特定ピークを起点として判別している。そのために、特定のピークから最適クランク位置までのクランク角(以下、停止クランク角Δθstopという)が予め実施した試験により設定されている。
【0023】
図2はインバータECU26が実行するモータ制動制御ルーチンを示すフローチャート、図3はエンジン2を自動停止させる際のモータ6による制動状態を示すタイムチャートである。
インバータECU26は図2のルーチンを所定の制御インターバルで実行しており、まず、ステップS2で車両ECU22から回生制御の開始指令が入力されたか否かを判定する。ステップS2の判定がNo(否定)のときには一旦ルーチンを終了し、判定がYes(肯定)になるとステップS4に移行する。このとき車両ECU22によりクラッチ4が接続されると共に、エンジン停止の指令に基づきエンジンECU22によりエンジン2の燃料供給が中止される。
なお、このようにクラッチ4は接続されるが、変速機8がニュートラル状態のためエンジン2の駆動力がクラッチ4を介して駆動輪16側に伝達されることはない。
【0024】
インバータECU26はステップS4に移行すると、モータ6の回生制御として所定のモータ回転速度Nmを目標値とした回転制御を開始する(回転制御実行手段)。以下に述べるようにエンジン2はモータ6の制動により停止されるが、アイドル回転付近の高い回転域で急に制動を加えると停止ショックが生じる。そこで、本実施形態では停止ショック抑制のために、回転制御の目標値を順次低回転側に設定し直して、エンジン2及びモータ6の回転を次第に低下させている。但し、これに限ることはなく、このときの回転制御の目標値を一定としてもよい。
エンジン2及びモータ6は次第に回転を低下させた結果、モータ6の回生率はエンジン2の各気筒の行程に応じて発生するトルク変動に対して同期しながら変動する。例えばエンジントルクが増加すればモータ回生率も増加し、エンジントルクが低下すればモータ回生率も低下することになる。
【0025】
このようなモータ6の回生率の変動波形をインバータECU26はモニタし、続くステップS6で回生率のピークを特定する(ピーク特定手段)。本実施形態では、モータ6の回生制御を開始してから回生率が低下して最初に最小値に達したときの谷側のピーク(以下、最小ピークという)を特定している。ピークを特定しているのは回生率の変動波形から確実且つ正確に特定できるためであるが、最小ピークに限ることはなく、変動波形の山側のピークである最大ピークを特定してもよい。また、初回のピークに限ることはなく、2回目或いは3回目以降のピークを特定してもよい。
一方、図3から明らかなように、この最小ピークに対して変動周期で1周期分の経過以降の圧縮上死点の直後に最適クランク位置が予め設定され、最小ピークから最適クランク位置までのクランク角が停止クランク角Δθstopとして予め設定されている。最適クランク位置は圧縮上死点との位置関係が特に重要であり、この場合では圧縮上死点の直後であれば、1周期或いは2周期遅延した圧縮上死点の直後に最適クランク位置を設定してもよい。
【0026】
その後、インバータECU26はステップS8に移行してタイマをスタートさせ、続くステップS10で、現在のモータ回転速度Nm(=エンジン回転速度Ne)に基づき停止クランク角Δθstopを停止時間Δtstopに換算する(時間換算手段)。
即ち、回生率の変動波形のピークはエンジン2の気筒間のクランク角(例えば、6気筒では120℃CA)毎に発生し、最小ピークが特定されるタイミングは、クラッチ4が接続されたときのエンジン2側とモータ6側との位相に応じて前後する。また、何らかの要因で最初のピークが特定されないこともあり、この場合には2回目のピークが最小ピークとして特定されるため、ピーク特定のタイミングは遅延する。そして、モータ6の回生制御の開始からエンジン2及びモータ6は回転低下し続けているため、最小ピークが特定されたときのエンジン回転速度Neが相違することになる。
従って、停止クランク角Δθstopが同一であっても最適クランク位置に到達するまでの所要時間(停止時間Δtstop)が相違する。そこで、上記のように最小ピークの特定時のモータ回転速度Nmに基づき、停止クランク角Δθstopを停止時間Δtstopに換算しているのである。
【0027】
停止クランク角Δθstopから停止時間Δtstopへの換算手順の一例を以下に説明する。
まず、特定された最小ピークから最適クランク位置までのクランク角は、上記のように一定値の停止クランク角Δθstopとして予め設定されている。一方、モータ回転速度Nmはモータ6の回生制御の開始と同時に加速度aで低下し始め、このときの加速度aは、回転制御の目標値の低下と対応する固有の一定値と見なすことができる。
以下、モータ回転速度Nmをモータ速度と称し、回生制御が開始された時点のエンジンのアイドル運転時のモータ速度をω、最小ピークが特定されたときのモータ速度をω1とする。停止クランク角Δθstopは、以下のように表すことができる。
【0028】
【数1】

【0029】
結果として、上式(1)に従って停止クランク角Δθstop、加速度a、及びモータ速度ω1(モータ回転速度Nm)から停止時間Δtstopを算出可能となる。よって、この場合のインバータECU26は、上記ステップS10で式(1)に従った算出処理を実行することになる。
以上のようにして停止時間Δtstopを算出した後、インバータECU26はステップS12に移行してタイマカウント値が停止時間Δtstopに達したか否かを判定する(最適クランク位置判別手段)。そして、停止時間Δtstopの経過によりステップS12の判定がYesになると、エンジン2が最適クランク位置に到達したと見なしてステップS14でモータトルクを増加させる(トルク増加制御手段)。
【0030】
具体的には、モータ6の回転制御を継続しながら目標値を0に設定すれば、モータ回転速度Nmを0とすべくモータトルクは最大値に制御される。また、モータ6の回生制御をトルク制御に切り換えてエンジン2を停止可能な大きなトルクを目標値として設定してもよく、この場合でも同様の効果が得られる。モータ6の制動によりエンジン回転速度Neが瞬間的に0まで低下し、エンジン2は最適クランク位置近傍で停止する。このときのモータトルクを増加させる期間は、エンジン停止に要すると予測される所要時間よりも十分に長く設定しておけばよい。
モータ2の制動は強力であるためエンジン停止の所要時間は極めて短く、最適クランク位置に対する実際のエンジン停止位置の遅延は無視できる程度に軽微となる。しかしながら、大きな遅延が発生することもあり、このような場合、その後のエンジン始動時に最適クランク位置からクランキングが開始されなくなる可能性がある。そこで、予め遅延分(=トルク増加からエンジン停止までの時間)相当のクランク角を停止クランク角Δθstopから減算して、減算後の停止クランク角Δθstopを停止時間Δtstopの算出に適用することにより、遅延分相当だけモータ6のトルク増加による制動を早期に開始するようにしてもよい。
【0031】
以上のように本実施形態のハイブリッド車両のエンジン停止制御装置では、エンジン2を自動停止する際に、燃料供給の中止により回転中のエンジン2によりモータ6を駆動して回生制御として回転制御を実行している。そして、このときエンジン2のトルク変動に同期して変動するモータ6の回生率を指標としてエンジン2のクランク角を判別し、最適クランク位置でモータトルクを増加させてエンジン2に制動を加えて停止させている。
従って、情報量が多いクランク角情報をエンジンECU24側からインバータECU26側に入力する大がかりな仕様変更を要することなく、インバータECU26側だけでエンジン2のクランク角を判別できる。このため、回転中のエンジン2に最適クランク位置に相当する適切なタイミングでモータ6により制動を加えて最適クランク位置近傍で停止させることができる。よって、その後の自動始動の際のエンジン始動性を向上でき、迅速な始動完了によるフィーリングの向上、或いはモータ消費電力の節減などの種々の効果を実現することができる。
【0032】
また、本実施形態では、最小ピークの特定時のエンジン回転速度Neの相違に応じて、停止クランク角Δθstopが同一であっても最適クランク位置が前後する点を考慮し、ピーク特定時のモータ回転速度Nm(モータ速度ω1)に基づき停止クランク角Δθstopを停止時間Δtstopに換算し、換算後の停止時間Δtstopに基づき最適クランク位置を判別している。従って、最小ピークを特定したときのエンジン回転速度Neに関係なく常に的確に最適クランク位置を判別でき、自動停止時のエンジン2を一層確実に最適クランク位置近傍で停止させることができる。
【0033】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態ではトラックのエンジン停止制御装置として具体化したが、ハイブリッド車両であれば車種はこれに限るものではなく、バスや作業車両、或いは乗用車などに適用してもよい。
また、上記実施形態ではエンジン停止条件の成立時に直ちにモータ6の回生制御を開始し、最初に生じた最小ピークを起点として停止クランク角Δθstop後の最適クランク位置を判別したが、これに限ることはない。例えば、上記したように高い回転域でモータ6によりエンジン2に制動を加えると停止ショックを生じることから、停止ショックの抑制の観点からは、エンジン回転速度Neがアイドル回転から大きく低下してからモータ6による制動を加えることが望ましい。そこで、アイドル回転よりも十分に低い回転域の圧縮上死点の直後に最適クランク位置を設定し、その最適クランク位置に応じて最小ピークもより低回転側で特定するようにしてもよい。
よって、この場合にはエンジン停止条件の成立時に直ちにモータ6の回生制御を開始する必要がなくなることから、モータ回転速度Nmが所定の判定値を下回った時点で回生制御を開始して最小ピークを特定することになる。
【0034】
また、上記実施形態では、エンジン2とモータ6との間にクラッチ4を介装しているため、エンジン2の自動停止時にクラッチ4を接続操作した上でモータ6の回生制御を開始しているが、ハイブリッド車両の形式によってはクラッチ4の接続操作が必須の要件ではなくなる。
例えばエンジンの出力軸にモータを設けると共に、その出力軸をクラッチを介して駆動輪16側に連結したハイブリッド車両では、クラッチの断接に関わらずエンジンとモータとが連結されている。よって、クラッチの接続操作を要することなく上記実施形態と同様の処理が実施されることになり、本発明はこのような形式のハイブリッド車両も含むものとする。
【符号の説明】
【0035】
2エンジン
6モータ
16駆動輪
22車両ECU(アイドルストップスタート制御手段)
26インバータECU(回転制御実行手段、ピーク特定手段、
最適クランク位置判別手段、トルク増加手段、時間換算手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源としてのエンジン及びモータの駆動力を変速機を介して駆動輪に伝達するように構成されると共に、所定の停止条件が成立したときに上記エンジンの燃料供給を中止して自動停止させ、その後に所定の始動条件が成立したときに上記エンジンを自動始動するアイドルストップスタート制御手段を備え、該アイドルストップスタート制御手段により上記エンジンが自動停止されるときに、燃料供給を中止した後のエンジンに対して上記モータの回生制御によるトルクを任意に作用可能なハイブリッド車両の制御装置において、
上記エンジンの自動停止に際して、上記回生制御として上記モータの回転速度を所定の目標値に維持する回転制御を実行する回転制御実行手段と、
上記回転制御実行手段の回転制御により上記エンジンのトルク変動に同期して変動する上記モータの回生状態のピークを特定するピーク特定手段と、
上記ピーク特定手段により特定された回生状態のピークを起点として、予め設定された停止クランク角が経過した後の最適クランク位置に上記エンジンが到達したか否かを判別する最適クランク位置判別手段と、
上記最適クランク位置判別手段により上記エンジンが最適クランク位置に到達したと判別されたとき、上記モータのトルクを増加させて上記エンジンに制動を加えるトルク増加制御手段と
を備えたことを特徴とするハイブリッド車両のエンジン停止制御装置。
【請求項2】
上記ピーク特定手段により上記モータの回生状態のピークが特定されたときの上記エンジンの回転速度に基づき、上記停止クランク角を停止時間に換算する時間換算手段を備え、
上記最適クランク位置判別手段は、上記特定されたピークから上記時間換算手段により換算された停止時間が経過したときに、上記エンジンが最適クランク位置に到達したと判別することを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車両のエンジン停止制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−112265(P2013−112265A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262006(P2011−262006)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】