説明

ハイブリッド車両の内燃機関始動制御装置

【課題】適切なタイミングでエンジンを始動させることができ、走行モードの切り替えをスムーズに行うことができるハイブリッド車両の内燃機関始動制御装置を提供する。
【解決手段】駆動用モータと、内燃機関とを有すると共に、駆動用モータに電力を供給するバッテリの残容量を検出する残容量検出手段51と、内燃機関の排気通路に設けられる空燃比検出器の検出結果に基づいて内燃機関の稼働をフィードバック制御する内燃機関制御手段52とを備え、残容量が所定の第1残容量よりも高い所定の第2残容量以下になると空燃比検出器の予熱を開始し、その後で第1残容量以下となると内燃機関を始動させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動源としてモータとエンジン(内燃機関)とを備えたハイブリッド車両の内燃機関始動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モータとエンジンとを組み合わせて車両の駆動力を得るようにしたハイブリッド車両が開発され、実用化が進んでいる。また近年、モータに給電を行うバッテリが外部の商用電源で充電可能なプラグインハイブリッド車両の開発、実用化も進んでいる。
【0003】
プラグインハイブリッド車両では、モータのみを動力源として駆動輪を駆動させるEV走行モードと、モータを動力源とすると共にエンジンをモータの電力供給源(発電機)として用いるシリーズ走行モード、或いはエンジンとモータとの両方を動力源とするパラレル走行モードと、が運転状況に応じて切り替わるようになっているものがある。これにより、燃料消費量を著しく抑制することができる。
【0004】
このようなハイブリッド車両では、EV走行モード中にバッテリの充電状態(SOC:State of Charge)に応じて、すなわちバッテリの残容量が少なくなると、走行モードがEVモードからHV走行モード(シリーズ走行モード)に切り替わりバッテリの充電が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−083394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、エンジンが排気通路に設けられる空燃比センサ(空燃比検出器)の検出結果に基づいてフィードバック制御されるものである場合、エンジンの冷態始動時には、空燃比センサを暖めて活性化させる時間を確保する必要がある。空燃比センサの温度が低く活性化されていない状態では空燃比を正確に検出することができず、フィードバック制御を実施できないからである。
【0007】
ハイブリッド車両に搭載されているエンジンも同様であり、上述のようにバッテリの残容量が少なくなってエンジンが冷態始動される際にも、空燃比センサを暖めて活性化させる必要がある。
【0008】
しかしながら、ハイブリッド車両におけるEV走行モードからシリーズ走行モード或いはパラレル走行モードへの切り替え時における空燃比センサの活性化は考慮されていないのが現状である。このため、EV走行モードからシリーズ走行モード等への切り替えがスムーズに行われない虞がある。例えば、バッテリの残容量がエンジンを始動すべき所定値まで低下した際に、その時点から空燃比センサの活性化が開始されると、実際にエンジンが始動(フィードバック制御)されるまでにタイムラグが生じてしまうことになる。このようなタイムラグは極力少ないことが好ましく、EV走行モードからシリーズ走行モード等への切り替えはスムーズに行われることが望ましい。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、適切なタイミングでエンジンを始動させることができ、走行モードの切り替えをスムーズに行うことができるハイブリッド車両の内燃機関始動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、駆動用モータと、内燃機関とを有すると共に、前記駆動用モータに電力を供給するバッテリの残容量を検出する残容量検出手段と、前記内燃機関の排気通路に設けられる空燃比検出器の検出結果に基づいて前記内燃機関の稼働をフィードバック制御する内燃機関制御手段とを備えるハイブリッド車両の内燃機関始動制御装置であって、前記残容量が所定の第1残容量よりも高い所定の第2残容量以下になると前記空燃比検出器の予熱を開始し、その後で前記第1残容量以下となると前記内燃機関を始動させることを特徴とするハイブリッド車両の内燃機関始動制御装置にある。
【0011】
かかる本発明の第1の態様では、内燃機関(エンジン)を始動させる前に、空燃比検出器(空燃比センサ)の予熱(プリヒート)が実施されるため、エンジンを適切なタイミングで始動させることができ、走行モードの切り替えをスムーズに行うことができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、前記内燃機関の停止時に前記空燃比検出器の予熱要否の判定を行う検出器予熱要否判定手段をさらに備え、前記検出器予熱要否判定手段は、前記内燃機関を冷却する冷却水の温度に基づいて前記空燃比検出器の予熱要否の判定を行うことを特徴とする第1の態様のハイブリッド車両の内燃機関始動制御装置にある。
【0013】
かかる第2の態様では、空燃比検出器の予熱の要否をより正確に判定することができる。
【0014】
本発明の第3の態様は、前記検出器予熱要否判定手段は、前記内燃機関に始動時から与えた供給熱量の積分値に基づいて前記空燃比検出器の予熱要否の判定を行うことを特徴とする第2の態様のハイブリッド車両の内燃機関始動制御装置にある。
【0015】
かかる第3の態様では、空燃比検出器の予熱の要否の判定を更に正確に判定することができる。
【0016】
本発明の第4の態様は、前記内燃機関の稼働により駆動されて発電する発電機と、前記排気通路に設けられる排気浄化触媒と、前記内燃機関の停止時に前記排気浄化触媒の暖機要否の判定を行う触媒暖機要否判定手段と、をさらに備え、前記内燃機関制御手段は、少なくとも前記排気浄化触媒を暖機するために前記内燃機関を稼働させる暖機モードと、該内燃機関の出力にて前記発電機を駆動する発電モードと、により前記内燃機関を制御し、前記触媒暖機要否判定手段の判定結果が要判定である場合には、前記暖機モードで前記内燃機関を始動させた後に前記発電モードで前記内燃機関を稼働させることを特徴とする第1〜3の何れか一つの態様のハイブリッド車両の内燃機関始動制御装置にある。
【0017】
かかる第4の態様では、必要に応じて排気浄化触媒を暖機して活性化させることで、排ガスを良好に浄化することができる。またエンジンの無駄な始動を回避して燃費を向上させることもできる。
【0018】
本発明の第5の態様は、前記触媒暖機要否判定手段は、前記内燃機関を冷却する冷却水の温度、又は前記内燃機関の前回の始動から停止までの間の供給熱量の積分値に基づいて前記排気浄化触媒の暖機要否の判定を行うことを特徴とする第4の態様のハイブリッド車両の内燃機関始動制御装置にある。
【0019】
かかる第5の態様では、排気浄化触媒の暖機の要否を比較的容易且つ正確に判定することができる。
【発明の効果】
【0020】
かかる本発明では、走行モードを切り替える際に、エンジンを適切なタイミングで始動させることができる。したがって、走行モードの切り替えをスムーズに行うことができる。具体的には、モータのみを作動させるEV走行モードと、モータと共にエンジン(内燃機関)を作動させるシリーズ走行モード又はパラレル走行モードとをスムーズに切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】エンジンの始動制御の一例を説明する各種グラフである。
【図4】本発明の一実施形態に係るエンジン制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係るハイブリッド車両(以下、単に「車両」ともいう)10は、いわゆるプラグインハイブリッド車両であり、フロントモータ11及びリアモータ12と、エンジン13とを、走行用の駆動源として備えている。フロントモータ11の駆動力は前駆動伝達機構14を介して前輪15に伝達される。リアモータ12の駆動力は後駆動伝達機構16を介して後輪17に伝達される。フロントモータ11には、フロント(Fr)モータインバータ18を介してバッテリ19が接続されており、リアモータ12には、リア(Re)モータインバータ20を介してバッテリ19が接続されている。そして乗員のペダル操作に応じた電力が、バッテリ19からこれらインバータ18,20を介して各モータ11,12に供給される。
【0024】
バッテリ19には、DC/DCコンバータ21を介して補機類を駆動するサブバッテリ(12Vバッテリ)22が接続されている。またバッテリ19には車載充電器23が接続されており、外部の商用電源を接続することでバッテリ19を充電することができる。
【0025】
エンジン13は、燃料タンク24から供給される燃料が燃焼されることにより駆動される。このエンジン13には出力系25を介してジェネレータ26に接続されている。ジェネレータ26は、ジェネレータインバータ27を介してバッテリ19(及びフロントモータ11)に接続されている。また出力系25は、ジェネレータ26に接続される一方で、クラッチ28を介して前駆動伝達機構14にも接続されている。
【0026】
そして車両10の運転状態に応じてエンジン13が始動されると、エンジン13の駆動力が出力系25を介してまずはジェネレータ26に伝達されるようになっている。ジェネレータ26は、エンジン13の駆動力により作動し、ジェネレータ26で発電された電力が、フロントモータ11及びバッテリ19に適宜供給される。また車両10の運転状態に応じてクラッチ28が接続されると、エンジン13の駆動力が前駆動伝達機構14を介して前輪15にも伝達されるようになっている。
【0027】
また車両10には、各種装置を総括的に制御する制御装置50(図2参照)を備えている。例えば、制御装置50には、エンジン13の運転状態を検出するための各種センサ等が接続されている。本実施形態では、吸気管29には吸気量を測定する吸気量測定手段としての吸気量センサ(エアフローセンサ)30が設けられ、エンジン13には冷却水の温度を検出する水温センサ31が設けられ、排気管32の排気浄化触媒33よりも上流側には、排気の空燃比(酸素濃度)を検出する空燃比センサ(LAFS)34が設けられている。なお空燃比センサ34には、図示しないが、ヒータとそのヒータの抵抗から温度を推定できる検出器が設けられている。そして制御装置50は、これら吸気量センサ30、水温センサ31、空燃比センサ34等の各種センサからの検出信号に基づいてエンジン13の運転状態を制御している。
【0028】
そして、本実施形態に係る車両10は、このような制御装置50によってモータ11,12及びエンジン13が制御されることで、車両10の走行状態に応じて、走行モードが適宜切り替えられるようになっている。本実施形態では、車両10の走行状態に応じて、モータ11,12を駆動源とするEV走行モードと、エンジン13をモータ11,12の電力供給源として用いるシリーズ走行モードとが適宜切り替えられるようになっている。
【0029】
ところでエンジン13は、空燃比センサ34の検出結果に基づいて排気空燃比が目標空燃比となるように、基本的にはフィードバック制御されている。しかしながら、空燃比センサ34が活性化されていない場合には、排気空燃比を正確に検出することができないため、最適なフィードバック制御を実行できないことがある。このことに起因して、エンジン13が停止されているEV走行モードからエンジン13を駆動させるシリーズ走行モードへの切り替えがスムーズに行われない虞がある。
【0030】
そこで本願発明では、バッテリ19の残容量(充電状態:SOC)に基づいて所定のタイミングでエンジン13を始動させると共に、バッテリ19の残容量に基づいて空燃比センサ34を予熱(プリヒート)してエンジン13が停止されている間に活性化させるようにした。これにより、エンジン13の始動後直ちに、空燃比フィードバックを開始することができ、排ガスを悪化させずに、エンジン負荷を変更することが可能となり、EV走行モードからシリーズ走行モードへのスムーズな切り替えを行うことができる。
【0031】
さらに本実施形態では、走行モードがEV走行モードからシリーズ走行モードに切り替わる際に、必要に応じて排気浄化触媒33の暖機を行うようにしている。これにより、エンジン13の始動時の排気ガス悪化を防止している。
【0032】
以下、このような本発明に係るエンジン13の制御について説明する。図2に示すように、本実施形態に係るエンジン始動制御装置(内燃機関始動制御装置)50は、SOC検出手段(残容量検出手段)51と、エンジン制御手段(内燃機関制御手段)52と、検出器予熱手段53と、検出器予熱要否判定手段54と、触媒暖機要否判定手段55と、を備える。
【0033】
SOC検出手段51は、バッテリ19の残容量(SOC)を検出する。バッテリ19には、図示しないが、例えば、電圧センサや電流センサ等であるバッテリセンサが設けられており、SOC検出手段51は、このバッテリセンサからの情報に基づいて、バッテリ19の残容量を検出(演算)する。
【0034】
エンジン制御手段52は、エンジン13の作動を適宜制御する。例えば、SOC検出手段51の検出結果に基づいてエンジン13の始動及び停止を制御している。具体的には、エンジン制御手段52は、SOC検出手段51によってバッテリ19の残容量が所定の第1残容量以下になったことが検出されると、エンジン13を始動させ、走行モードをEV走行モードからシリーズ走行モードに切り替える。またその後バッテリ19の残容量が所定量以上まで回復するとエンジン13を停止させ、走行モードを再びEV走行モードに切り替える。
【0035】
検出器予熱手段53は、SOC検出手段51の検出結果に基づいてエンジン13の停止時に空燃比センサ34の予熱(プリヒート)を行う。すなわち検出器予熱手段53は、走行モードがEV走行モードからシリーズ走行モードに切り替えられる際、EV走行モードでエンジン13が停止している間に空燃比センサ34の予熱を行う。具体的には、SOC検出手段51の検出結果が、上記第1残容量よりも高い所定の第2残容量以下になると、空燃比センサ34に設けられているヒータ(図示なし)に通電して空燃比センサ34の予熱を開始する。そして好ましくは、バッテリ19の残容量が第1の残容量となる前に予熱が完了するようにする。
【0036】
検出器予熱要否判定手段54は、EV走行モード中でエンジン13が停止されている間に、空燃比センサ34の温度に基づいて空燃比センサ34の予熱が必要か否かを判定する。
【0037】
なお空燃比センサ34はセラミック系材料で構成されることが多く、予熱時に被水により破損することが懸念される。このため、本実施形態では、エンジン13に設けられた水温センサ31の検出結果と空燃比センサ34の温度に基づき、被水による空燃比の破損も考慮した上で、空燃比センサ34の予熱可否の判定を行っている。
【0038】
具体的には、水温センサ31の温度(検出結果)が所定温度以上であれば予熱可能と判定され、所定温度よりも低ければ予熱不可と判定される。さらに空燃比センサ34の温度が所定温度以上であれば予熱不要と判定され、所定温度よりも低ければ予熱必要と判定される。そして、この検出器予熱要否判定手段54によって予熱可能且つ予熱必要と判定された場合に、検出器予熱手段53による空燃比センサ34の予熱が行われる。
【0039】
また本実施形態では、水温センサ31の温度に基づいて予熱可否を判定するようにしているが、予熱可否の判定方法は、特に限定されるものではない。例えば、エンジン始動時から停止までに与えた熱量とエンジン停止からの時間とで推定したエンジン13の仮想温度に基づいて予熱可否の判定を行ってもよい。その際、供給熱量計算には、燃料噴射量の積分値や吸入空気量の積分値が使用される。
【0040】
触媒暖機要否判定手段55は、EV走行モードで車両10が走行しておりエンジン13が停止している間に、排気浄化触媒33の暖機が必要か否か(暖機の要否)の判定を行う。この暖機の要否は、例えば、エンジン13に設けられた水温センサ31の検出結果に基づいて判定される。すなわち水温センサ31の検出結果から推定される排気浄化触媒33の温度に基づいて暖機の要否が判定される。
【0041】
触媒暖機要否判定手段55によって暖機が不要と判定された場合には、エンジン制御手段52は、エンジン13を始動後直ちに、任意の回転数及び負荷でエンジンを作動させて発電機を駆動させて発電する(発電モード)。一方、触媒暖機要否判定手段55によって暖機が必要と判定された場合には、エンジン制御手段52が、エンジン13の始動後一定期間、暖機に必要な最低限の回転数及び負荷でエンジン13を作動させる(暖機モード)。これにより排ガスの排出量を抑えつつ早期に排気浄化触媒33を活性化させている。
【0042】
なお本実施形態では、水温センサ31の検出結果に基づいて排気浄化触媒33の暖機要否を判定するようにしているが、暖機要否の判定方法は、特に限定されるものではない。例えば、エンジン13の前回の始動から停止までの間の供給熱量とエンジン停止からの時間とに基づいて暖機要否の判定を行うようにしてもよい。その際、供給熱量演算には、始動時からの燃料噴射量積分値や吸入吸気量積分値を使用できる。
【0043】
例えば、燃料噴射量積分値に基づく場合、例えば、エンジン13の点火タイミングにより燃料噴射量積分値を適宜補正するようにしてもよい。これにより暖機の要否をより正確に判定することができる。
【0044】
次に、図3のグラフを参照して、本実施形態に係るエンジン始動制御装置50によるエンジン13の始動制御の一例、特に、走行モードの切り替え時におけるエンジン13の始動制御の一例について説明する。
【0045】
図3に示すように、時間T0で車両の走行が開始され、車両がEV走行モードで走行しておりエンジン13の回転数が0であると、バッテリ19の残容量は徐々に減少する(T0〜T2)。バッテリ19の残容量が第1残容量(SOC1)以下になると(T2)、エンジン13が始動されて走行モードがEV走行モードからシリーズ走行モードに切り替わる。またバッテリ19の残容量が第1残容量(SOC1)よりも小さくなるまでの間に(T0〜T2)、排気浄化触媒33の温度に基づいて排気浄化触媒33の暖機(ウォームアップ)が必要と判定されると、排気浄化触媒33の暖機を行う暖機モードでエンジン13が一定期間作動され(T2〜T3)、暖機モードから発電モードに切り替えられる。
【0046】
その後、車両10がシリーズ走行モード(発電モード)で走行することで、バッテリ19の残容量は徐々に増加し、バッテリ19の残容量が第2残容量(SOC2)よりも大きい第3の残容量(SOC3)に達した時点でエンジン13が停止される(T4)。すなわちこの時点で走行モードがシリーズ走行モードからEV走行モードに切り替わる。
【0047】
車両10が再びEV走行モードで走行することで、バッテリ19の残容量は徐々に減少する(T4〜T6)。その間にバッテリ19の残容量が第2残容量(SOC2)よりも少なくなると(T5)、必要に応じて空燃比センサ34のプリヒートが実施される(T5〜T6)。具体的には、バッテリ19の残容量が第2残容量(SOC2)よりも小さくなるまでの間に(T4〜T5)、水温センサ31の検出結果及び空燃比センサ34の温度に基づいて空燃比センサ34の予熱が可能且つ必要と判定されると、その後のエンジン13が停止している間に空燃比センサ34のプリヒートが実施されることになる(T5〜T6)。
【0048】
なおT1〜T2の期間においても、空燃比センサ34の温度に基づいて空燃比センサ4の予熱は必要と判定されるが、予熱不可と判定されるため、その後の期間(T2〜T3)で空燃比センサ34のプリヒートは実施されていない。この時点(T2)では、車両の走行が開始されてからエンジン13が一度も始動されていないからである。すなわち、エンジン13が冷えた状態で空燃比センサ34だけ暖めてしまうと、空燃比センサ34に水滴等が付着して破損する虞があるからである。
【0049】
またバッテリ19の残容量が第1残容量(SOC1)よりも小さくなるまでの間に(T4〜T6)、排気浄化触媒33の温度に基づいて排気浄化触媒33の暖機が不要と判定されると、エンジン13は、始動後直ちに発電モードで作動される(T6〜)。例えば、前回のエンジン13の停止から今回のエンジン13の始動までの期間が短い場合などは、排気浄化触媒33の温度は比較的高く維持されているため、暖機は不要と判断される。
【0050】
このように走行モードの切り替え時におけるエンジン13の始動を適宜制御することで、排ガス排出量悪化を抑制した上で、EV走行モードからシリーズ走行モードへの切り替えをスムーズに行うことができる。
【0051】
次に図4のフローチャートを参照して、本実施形態のエンジン始動制御装置50によるエンジン13の始動制御の一例についてさらに説明する。
【0052】
車両10がEV走行モードで走行中、つまりエンジン13が停止している間に、検出器予熱要否判定手段54によって空燃比センサ34の予熱(プリヒート)の要否判定が行われる(ステップS1)。プリヒートが可能且つ必要と判定された場合にはプリヒート判定フラグが設定され(Fa=1)、プリヒートが不可又は不要と判定された場合にはプリヒート判定フラグは設定されない(Fa=0)。
【0053】
また触媒暖機要否判定手段55によって排気浄化触媒33の暖機(ウォーミングアップ)が必要であるか否か(暖機の要否)が判定される(ステップS2)。排気浄化触媒33の温度が低くウォーミングアップが必要と判定された場合には暖機判定フラグが設定され(Fb=1)、ウォーミングアップが不要と判定された場合には暖機判定フラグは設定されない(Fb=0)。
【0054】
さらにSOC検出手段51によってバッテリ19の残容量(SOC)が、第2残容量(SOC2)よりも少ないか否かが判定される。なお第2残容量(SOC2)は、上述したようにエンジン制御手段52によってエンジン13が始動される第1残容量(SOC1)よりも所定値αだけ大きい値であり、下記式(1)で表される。
SOC2=SOC1+所定値α (1)
【0055】
ここでバッテリ19の残容量が第2残量(SOC2)以上であれば(ステップS3:No)、ステップS1に戻り、バッテリ19の残容量が第2残容量(SOC2)よりも少なくなるまで、ステップS1〜ステップS3が繰り返される。一方、バッテリ19の残容量が第2残容量(SOC2)よりも少ない場合には(ステップS3:Yes)、ステップS4に進む。
【0056】
ステップS4では、ステップS1でプリヒート判定フラグが設定されたか否か、すなわちFa=1であるかFa=0であるかが判定される。Fa=1である場合、つまり検出器予熱要否判定手段54によって空燃比センサ34のプリヒートが可能且つ必要と判定されている場合には(ステップS4:Yes)、ステップS5で検出器予熱手段53によって空燃比センサ34のプリヒートが開始された後、ステップS6に進む。一方、ステップS4でFa=0である場合には(ステップS4:No)、空燃比センサ34のプリヒートが開始されることなくステップS6に進む。
【0057】
そして、SOC検出手段51によってバッテリ19の残容量が第1残容量(SOC1)以下であることが検出されると(ステップS6:Yes)、エンジン制御手段52によってエンジン13が始動される。なお空燃比センサ34のプリヒートはこの時点で終了される。エンジン13の始動手順としては、まずステップS7で、暖機判定フラグが設定されているか否か、つまりFb=1であるかFb=0であるかが判定される。ステップS2で触媒暖機要否判定手段55によって排気浄化触媒33の暖機が必要と判定されてFb=1である場合には(ステップS7:Yes)、ステップS8に進む。ステップS8では、触媒ウォーミングアップ用(暖機モード用)のエンジン回転数、エンジン出力が決定され、その後、この暖機モード用の設定でエンジン13が始動される(ステップS9)。その後、排気浄化触媒33の温度が所定温度を越えると(ステップ10:Yes)、ステップS11で発電モード用のエンジン回転数、エンジン出力が決定されて、発電モードでエンジン13が制御される(ステップS12)。すなわちエンジン13の制御が暖機モードから発電モードに切り替えられて、走行モードの切り替え時におけるエンジン13の始動制御が終了する。
【0058】
このように本実施形態に係るエンジン始動制御装置50によれば、走行モードが切り替わる際、エンジン13が停止されている間に、必要に応じて空燃比センサ34のプリヒートが実施される。したがって、エンジン13を始動後、排ガスの大幅な悪化無しに、任意の運転点に移行させることができ、走行モードの切り替えをスムーズに行うことができる。また本実施形態では、走行モードが切り替わる際、排気浄化触媒33の暖機の要否判定が行われるようにしているため、エンジン13の始動時における排気ガス悪化を防止することができる。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。本発明は、その目的を逸脱しない範囲で適宜変更が可能なものである。
【0060】
例えば、上述の実施形態では、検出器予熱要否判定手段54及び触媒暖機要否判定手段55が、水温センサ31の検出結果に基づいて各要否判定を行っているが、例えば、エンジン13の停止後時間に基づいて各要否判定を行うようにしてもよい。エンジン13の停止後時間からも空燃比センサ34の予熱可否及び排気浄化触媒の暖機要否を判断することができる。このため、エンジン13の停止後時間によっても、空燃比センサの予熱及び排気浄化触媒の暖機の要否を判定することができる。
【0061】
また上述の実施形態では、検出器予熱要否判定手段54によって空燃比センサ34の予熱が可能且つ必要と判定された場合に、検出器予熱手段53によって空燃比センサ34の予熱が行われるようにしたが、検出器予熱要否判定手段54は必ずしも設けられていなくてもよい。例えば、SOC検出手段51によってバッテリ19の残容量が第2残容量(SOC2)以下になると、検出器予熱手段53によって常に空燃比センサ34の暖機が開始されるようにしてもよい。
【0062】
同様に、触媒暖機要否判定手段55は必ずしも設けられていなくてもよく、例えば、SOC検出手段51によってバッテリ19の残容量が第1残容量(SOC1)以下になると、エンジン制御手段52によってエンジン13が常に暖機モードで始動されるようにしてもよい。
【0063】
また例えば、上述の実施形態では、EV走行モードとシリーズ走行モードとの切り替え時を一例として本発明を説明したが、本発明は、EV走行モードとパラレル走行モードとの切り替え時にも、勿論、適用することができるものである。
【0064】
また上述の実施形態では、一つの制御装置50によってモータ11,12とエンジン13とのそれぞれが制御されるようになっているが、制御装置50の構成は特に限定されるものではない。例えば、制御装置50は、モータ11,12を制御するモータ制御部と、エンジン13を制御するエンジン制御部とをそれぞれ独立して備え、これらモータ制御部とエンジン制御部とが相互に通信可能に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 車両
11,12 モータ
13 エンジン
19 バッテリ
29 吸気管
30 吸気量センサ
31 水温センサ
32 排気管
33 排気浄化触媒
34 空燃比センサ
50 エンジン始動制御装置(内燃機関始動制御装置)
51 SOC検出手段(残容量検出手段)
52 エンジン制御手段(内燃機関制御手段)
53 検出器予熱手段
54 検出器予熱要否判定手段
55 触媒暖機要否判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用モータと、内燃機関とを有すると共に、前記駆動用モータに電力を供給するバッテリの残容量を検出する残容量検出手段と、前記内燃機関の排気通路に設けられる空燃比検出器の検出結果に基づいて前記内燃機関の稼働をフィードバック制御する内燃機関制御手段とを備えるハイブリッド車両の内燃機関始動制御装置であって、
前記残容量が所定の第1残容量よりも高い所定の第2残容量以下になると前記空燃比検出器の予熱を開始し、その後で前記第1残容量以下となると前記内燃機関を始動させる
ことを特徴とするハイブリッド車両の内燃機関始動制御装置。
【請求項2】
前記内燃機関の停止時に前記空燃比検出器の予熱要否の判定を行う検出器予熱要否判定手段をさらに備え、
前記検出器予熱要否判定手段は、前記内燃機関を冷却する冷却水の温度に基づいて前記空燃比検出器の予熱要否の判定を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の内燃機関始動制御装置。
【請求項3】
前記検出器予熱要否判定手段は、前記内燃機関に始動時から与えた供給熱量の積分値に基づいて前記空燃比検出器の予熱要否の判定を行う
ことを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の内燃機関始動制御装置。
【請求項4】
前記内燃機関の稼働により駆動されて発電する発電機と、
前記排気通路に設けられる排気浄化触媒と、
前記内燃機関の停止時に前記排気浄化触媒の暖機要否の判定を行う触媒暖機要否判定手段と、をさらに備え、
前記内燃機関制御手段は、少なくとも前記排気浄化触媒を暖機するために前記内燃機関を稼働させる暖機モードと、該内燃機関の出力にて前記発電機を駆動する発電モードと、により前記内燃機関を制御し、
前記触媒暖機要否判定手段の判定結果が要判定である場合には、前記暖機モードで前記内燃機関を始動させた後に前記発電モードで前記内燃機関を稼働させる
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関始動制御装置。
【請求項5】
前記触媒暖機要否判定手段は、前記内燃機関を冷却する冷却水の温度、又は前記内燃機関の前回の始動から停止までの間の供給熱量の積分値に基づいて前記排気浄化触媒の暖機要否の判定を行う
ことを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド車両の内燃機関始動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−131240(P2012−131240A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282383(P2010−282383)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】