説明

ハイブリッド車両の冷却装置

【課題】機関始動後の暖機をより好適に促進させることのできるハイブリッド車両の冷却装置を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車両は、エンジン1を冷却する機関用冷却水が流れる第1冷却水通路100と、電動機MG2への電力供給を制御する電力制御部80と、電力制御部80を冷却する制御部用冷却水が流れる第2冷却水通路200とを備える。制御装置400は、電動機MG2による車両走行が行われてからエンジン1を始動させるとともに、電力制御部80への通電時に、第1冷却水通路100への制御部用冷却水の導入を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動力源として内燃機関及び電動機を備えるハイブリッド車両が知られている。こうしたハイブリッド車両には、電動機への電力供給を制御する電力制御部が設けられているが、この電力制御部はその稼働中に発熱する。そのため、特許文献1に記載の装置では、電力制御部(パワーコントロールユニット)を冷却水で冷却するようにしている。
【0003】
そして、同文献1に記載の装置では、冷却水へと移動した電力制御部の熱量を有効活用するために、その冷却水を内燃機関にも導入するようにしている。より詳細には、イグニッションがオンにされると、機関始動が開始されるとともに電力制御部への通電が開始される。そして、電力制御部の温度が所定温度以上になると、比較的高温となった電力制御部用の冷却水が内燃機関にも導入され、これにより機関の暖機が促進される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−131848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記文献1に記載の装置では、イグニッションがオンにされると機関始動が開始されるのであるが、その後、電力制御部の温度が所定温度に達するまでは電力制御部で受熱した冷却水が内燃機関に導入されない。従って、機関始動後の暖機初期段階では、機関の暖機が促進されず、例えば排気エミッションなどが悪化するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、機関始動後の暖機をより好適に促進させることのできるハイブリッド車両の冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、動力源として内燃機関及び電動機を備えるハイブリッド車両に適用されて、前記内燃機関を冷却する機関用冷却水が流れる第1冷却水通路と、前記電動機への電力供給を制御する電力制御部と、同電力制御部を冷却する制御部用冷却水が流れる第2冷却水通路とを備え、前記制御部用冷却水を前記第1冷却水通路に導入可能な冷却装置であって、前記電動機による車両走行が行われてから前記内燃機関を始動させるとともに、同内燃機関が始動されるときには前記第1冷却水通路に前記制御部用冷却水が導入されることをその要旨とする。
【0008】
同構成によれば、電動機による車両走行が行われることにより、制御部用冷却水が昇温される。そして、電動機による車両走行を行ってから内燃機関を始動させるとともに、内燃機関が始動されるときには第1冷却水通路に制御部用冷却水が導入されるようにしているため、機関始動時には昇温された制御部用冷却水が内燃機関に流れ込む。従って、機関始動後の暖機初期段階において機関の暖機が促進され、例えば排気エミッションなどの悪化が抑えられる。このように同構成によれば、機関始動後の暖機をより好適に促進させることができるようになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のハイブリッド車両の冷却装置において、前記電力制御部への通電時に、前記第1冷却水通路への前記制御部用冷却水の導入を開始することをその要旨とする。
【0010】
電動機による車両走行が行われるときには、電力制御部への通電が行われるのであるが、同構成では、この電力制御部への通電時に、第1冷却水通路への制御部用冷却水の導入を開始するようにしている。従って、内燃機関が始動される前から、第1冷却水通路には制御部用冷却水が導入されることとなり、機関始動時には自ずと第1冷却水通路に制御部用冷却水が導入されている状態となる。
【0011】
そして、同構成では、電力制御部への通電時に、第1冷却水通路への制御部用冷却水の導入を開始するようにしているため、電力制御部で受熱した冷却水が機関始動前から内燃機関に導入される。従って、機関始動前から内燃機関の昇温を図ることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のハイブリッド車両の冷却装置において、前記内燃機関の始動時に、前記第1冷却水通路への前記制御部用冷却水の導入を開始することをその要旨とする。
【0013】
同構成によれば、内燃機関の始動時に、電力制御部で受熱した冷却水が内燃機関に導入されるようになる。ここで、機関始動の開始前から制御部用冷却水を内燃機関に導入する場合には、機関から受熱していない低温の機関用冷却水と電力制御部で受熱した制御部用冷却水とが混じり合うため、制御部用冷却水は昇温されつつもその昇温速度は比較的遅くなる。この点、同構成によれば、機関始動の開始前では、制御部用冷却水が第2冷却水通路だけを循環して機関用冷却水とは混じり合わない。そのため、機関始動開始前での制御部用冷却水の昇温速度は比較的速くなる。従って、機関始動時において内燃機関に導入される制御部用冷却水の温度を好適に高めておくことができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の冷却装置において、前記第1冷却水通路への前記制御部用冷却水の導入は、同制御部用冷却水の温度が機関用冷却水の温度よりも高いときに行うことをその要旨とする。
【0015】
同構成によれば、制御部用冷却水の温度が機関用冷却水の温度よりも高いときに、第1冷却水通路への制御部用冷却水の導入が行われるため、制御部用冷却水による機関の暖機を確実に行うことができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のハイブリッド車両の冷却装置において、前記第1冷却水通路への前記制御部用冷却水の導入は、前記機関用冷却水の温度が所定の判定温度よりも低いときに行うことをその要旨とする。
【0017】
制御部用冷却水の温度が機関用冷却水の温度よりも高くても、機関用冷却水の温度がある程度高くなれば、制御部用冷却水を利用しなくても機関の暖機は促進される。そこで、同構成によるように、機関用冷却水の温度が所定の判定温度よりも低いときに、第1冷却水通路への制御部用冷却水の導入を行う、という構成を採用することにより、第1冷却水通路への制御部用冷却水の導入を適切に判定することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の冷却装置において、前記第1冷却水通路及び前記第2冷却水通路は互いに独立した冷却水通路であって、前記第1冷却水通路及び前記第2冷却水通路に接続された連通通路と、同連通通路の途中に設けられて前記第1冷却水通路及び前記第2冷却水通路の連通及び非連通を切り替える切替弁とを有し、前記切替弁によって第1冷却水通路及び前記第2冷却水通路が連通状態にされることで前記第1冷却水通路への前記制御部用冷却水の導入が行われることをその要旨とする。
【0019】
同構成によれば、上記切替弁の切り替えを通じて第1冷却水通路への制御部用冷却水の導入を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかるハイブリッド車両の冷却装置を具体化した第1実施形態について、その冷却装置並び周辺構成を示す概略構成図。
【図2】同実施形態における機関始動処理の手順を示すフローチャート。
【図3】同実施形態における切替弁の切替処理の手順を示すフローチャート。
【図4】同実施形態における機関水温の変化態様を示すタイミングチャート。
【図5】第2実施形態における切替弁の切替処理の手順を示すフローチャート。
【図6】同実施形態における機関水温の変化態様を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、この発明にかかるハイブリッド車両の冷却装置を具体化した第1実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0022】
図1に示すように、この車両には動力源としてエンジン1及び電動機MG2が備えられており、同車両はいわゆるハイブリッド車両となっている。なお、ハイブリッド車両の構造は周知のため、以下では概要のみを説明する。
【0023】
エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの原動機であって、吸入空気量や燃料噴射量、点火時期などの機関運転状態が制御されることにより、その出力トルクが調整される。
【0024】
このエンジン1の出力トルクは、車両の駆動輪と発電機MG1とに分配される。電動機MG2には、発電機MG1で発電された電力や車両走行用のバッテリに蓄えられた電力が供給され、この電動機MG2の出力トルクは車両の駆動輪に伝えられる。
【0025】
発電機MG1、電動機MG2、車両走行用のバッテリや内燃機関の補機用バッテリは、電力制御部80に接続されている。この電力制御部80は、電動機MG2への電力供給などを制御するものであり、コンバータ、インバータ、DC−DCコンバータ等の電力回路で構成されている。そして、車両走行用のバッテリの直流電力は、コンバータでその電圧が高められ、その後インバータで直流電力から交流電力に変換されて電動機MG2に供給される。また、発電機MG1で発電された交流電力は、インバータで直流電力に変換された後、コンバータでその電圧が低下されて車両走行用のバッテリに蓄電される。また、車両走行用のバッテリの電力は、DC−DCコンバータによって低下された後、補機用バッテリに供給される。
【0026】
次に、このハイブリッド車両に設けられている冷却装置について説明する。エンジン1には、機関用冷却水が流れる第1冷却水通路100が設けられており、電力制御部80には、制御部用冷却水が流れる第2冷却水通路200が設けられている。
【0027】
第1冷却水通路100には、熱交換器であるラジエータ120、電動ウォータポンプ121、サーモスタット122が設けられている。
エンジン1の内部に形成されたウォータジャケット123の出口には、出口側冷却水通路124の一端が接続されており、同出口側冷却水通路124の他端は、ラジエータ120の入口に接続されている。ラジエータ120の出口には、入口側冷却水通路125の一端が接続されており、同入口側冷却水通路125の他端は、ウォータジャケット123の入口に接続されている。
【0028】
ウォータジャケット123、出口側冷却水通路124、入口側冷却水通路125、及びラジエータ120は、機関用冷却水で満たされている。ウォータジャケット123を通過する際にエンジン1の熱を受熱した冷却水は、出口側冷却水通路124を介してラジエータ120に導入され、このラジエータ120で熱交換されることにより冷却される。そして、冷却された冷却水は、入口側冷却水通路125を介してウォータジャケット123に戻される。こうした機関用冷却水の循環によってエンジン1の冷却は行われる。
【0029】
入口側冷却水通路125の途中には、電動モータによって駆動される電動ウォータポンプ121が設けられている。そして、バッテリから電動ウォータポンプ121に供給される電力が制御されることでその吐出流量は調整され、第1冷却水通路100内を流れる機関用冷却水の循環量が調整される。
【0030】
電動ウォータポンプ121よりも上流側の入口側冷却水通路125には、バイパス通路126の一端が接続されており、同バイパス通路126の他端は、出口側冷却水通路124に接続されている。また、上記入口側冷却水通路125とバイパス通路126との接続部には、機関用冷却水の温度に応じて弁体が開閉するサーモスタット122が設けられている。そして、機関用冷却水が所定値以下のときには、サーモスタット122の弁体が閉弁状態にされてラジエータ120と入口側冷却水通路125との連通が遮断されるとともに、バイパス通路126と入口側冷却水通路125とが連通される。これにより、ウォータジャケット123から出口側冷却水通路124へ流れ出た冷却水は、ラジエータ120を迂回して再びウォータジャケット123に送られる。こうした冷却水の循環によって同冷却水が徐々に暖められ、エンジン1の暖機が促進される。
【0031】
一方、機関用冷却水が所定値を超えると、サーモスタット122の弁体は開弁状態にされてラジエータ120と入口側冷却水通路125とが連通されるとともに、バイパス通路126と入口側冷却水通路125との連通が遮断される。これにより、ウォータジャケット123から出口側冷却水通路124へ流れ出た冷却水はラジエータ120へ供給され、同ラジエータ120で冷却された後にウォータジャケット123へ送られる。こうした冷却水の循環によってエンジン1は冷却されるとともに、ラジエータ120では冷却水の熱が外部へ放熱されて、同冷却水は冷却される。
【0032】
また、電力制御部80を冷却する第2冷却水通路200は、制御部用冷却水が流れる制御部用冷却水通路210、制御部用冷却水通路210に接続された制御部用ラジエータ220、制御部用冷却水通路210の途中に設けられて制御部用冷却水を循環させる電動ウォータポンプ221等で構成されている。なお、本実施形態では、第2冷却水通路200を使って電動機MG2及び発電機MG1も冷却するようにしている。
【0033】
この第2冷却水通路200では、電力制御部80、電動機MG2及び発電機MG1が制御部用冷却水にて冷却される。そして、電力制御部80、電動機MG2及び発電機MG1からの受熱により昇温された制御部用冷却水は、制御部用ラジエータ220によって冷却される。
【0034】
また、第1冷却水通路100に設けられた電動ウォータポンプ121の吸込側近傍の入口側冷却水通路125と、第2冷却水通路200の制御部用冷却水通路210とは、連通通路300を介して接続されている。この連通通路300の途中には、第1冷却水通路100及び第2冷却水通路200の連通と非連通とを切り替える切替弁310が設けられている。
【0035】
この切替弁310が開弁されると、第1冷却水通路100及び第2冷却水通路200が連通状態にされ、これにより第2冷却水通路200内の制御部用冷却水が第1冷却水通路100に導入されることにより、第1冷却水通路100及び第2冷却水通路200の冷却水は共用状態にされる。一方、切替弁310が閉弁されると、第1冷却水通路100及び第2冷却水通路200が非連通状態にされ、これにより第1冷却水通路100への制御部用冷却水の導入が中止されて、第1冷却水通路100及び第2冷却水通路200は独立状態にされる。
【0036】
エンジン1の点火時期制御、燃料噴射制御、及び始動制御や、電力制御部80の電力制御、あるいは電動ウォータポンプ121、221の駆動制御や、切替弁310の開閉制御等は制御装置400によって行われる。この制御装置400は中央処理制御装置(CPU)を備えるマイクロコンピュータを中心として構成されており、各種プログラムやマップ等を予め記憶した読出専用メモリ(ROM)、CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)、入力インターフェース、出力インターフェース等が設けられている。そして、各種センサの出力信号に基づいて上記各制御を適切に行う。
【0037】
制御装置400には、機関用水温センサ31にて検出された機関用冷却水の水温(機関水温)THWや、制御部用水温センサ32にて検出された制御部用冷却水の水温(制御部水温)THIが入力される。
【0038】
次に、制御装置400が実行する各種処理を説明する。
図2に示すように、制御装置400は、エンジン1を始動させるための機関始動処理を所定周期毎に実行する。
【0039】
本処理が開始されるとまず、電動機MG2による車両走行(EV走行)が所定期間Tだけ行われたか否かが判定される(S100)。ここで、電動機MG2による車両走行が行われるときには、電力制御部80への通電が行われることで同電力制御部80は発熱するため、制御部用冷却水は昇温される。こうしたことを鑑み、上記所定期間Tとしては、制御部用冷却水が適切な温度にまで昇温されるのに必要な期間が設定されている。そして、その適切な温度としては、制御部用冷却水をエンジン1に導入することによりエンジン1の暖機が促進される程度の温度が想定されている。
【0040】
そして、EV走行が所定期間行われていないときには(S100:NO)、本処理は一旦終了される。
一方、EV走行が所定期間行われているときには(S100:YES)、電力制御部80への通電によって制御部用冷却水が適切な温度にまで昇温されていると判断される。そして、機関始動が許可される(S110)。
【0041】
次に、機関の始動条件が成立したか否かが判定される(S120)。この始動条件としては、例えば機関水温THWが所定値以上であるという条件や、車両走行用のバッテリの蓄電量が所定値以下であるという条件や、車両運転者が所定値以上の出力トルクを要求しているという条件などが挙げられる。そして、始動条件が成立していないときには(S120:NO)、本処理は一旦終了される。一方、始動条件が成立しているときには(S120:YES)、機関始動が実行されて(S130)、本処理は終了される。
【0042】
この機関始動処理が実行されることにより、電動機MG2による車両走行が行われてからエンジン1の始動が行われる。逆にいえば、電動機MG2による車両走行が所定期間Tだけ行われていないときには、エンジン1の始動が禁止される。
【0043】
次に、図3に示すように、制御装置400は、切替弁310の開閉を制御する切替処理を所定周期毎に実行する。
本処理が開始されるとまず、電力制御部80への通電が行われているか否かが判定される(S200)。そして、通電が行われていないときには切替弁310が閉弁されて(S240)、本処理は一旦終了される。
【0044】
一方、電力制御部80への通電が行われているときには(S200:YES)、機関水温THWが制御部水温THIよりも低いか否かが判定され(S210)、機関水温THWが制御部水温THI以上に高いときには(S210:NO)、切替弁310が閉弁されて(S240)、本処理は一旦終了される。
【0045】
一方、機関水温THWが制御部水温THIよりも低いときには(S210:YES)、機関水温THWが閾値αよりも低いか否かが判定され(S220)。この閾値αとしては、エンジン1の暖機が完了しているか否かを判定可能な温度が設定されている。そして、機関水温THWが閾値α以上に高いときには(S220:NO)、切替弁310が閉弁されて(S240)、本処理は一旦終了される。
【0046】
一方、機関水温THWが閾値αよりも低いときには(S220:YES)、切替弁310が開弁されて(S230)、本処理は一旦終了される。
図4に、上記機関始動処理及び切替処理が実行されるときの機関水温THWの変化等を示す。この図4に示すように、時刻t1において電力制御部80への通電が開始され、車両の走行が開始されると、電力制御部80の発熱により制御部水温THIは徐々に高くなっていく。ここで、EV走行が所定期間Tだけ行われる前では、機関始動が禁止されるため、エンジンは停止状態に維持される。従って、制御部水温THIは機関水温THWよりも高い状態に維持されるとともに、機関水温THWは閾値α以下であるため、切替弁310は開弁状態にされる。このように、切替弁310が開弁状態にされると、電力制御部80で受熱した制御部用冷却水は第1冷却水通路100に導入されるため、その制御部用冷却水によってエンジン1が暖められ、機関水温THWも徐々に高くなっていく。
【0047】
時刻t2において、EV走行が所定期間Tだけ行われたことにより機関始動が行われると、電力制御部80の発熱とエンジン1の発熱とによってエンジン1に導入される冷却水の温度は急速に上昇し始める。
【0048】
そして、時刻t3において、機関水温THWが閾値αを超えると、切替弁310が閉弁状態にされ、これにより第1冷却水通路100への制御部用冷却水の導入が中止される。 次に、本実施形態の作用を説明する。
【0049】
上述したように、電動機MG2による車両走行が行われることにより、制御部用冷却水が昇温される。そして、電動機MG2による車両走行を行ってからエンジン1を始動させるとともに、エンジン1が始動されるときには第1冷却水通路100に制御部用冷却水を導入するようにしている。
【0050】
より詳細には、電力制御部80への通電時に、第1冷却水通路100への制御部用冷却水の導入を開始することで、エンジン1が始動される前から、第1冷却水通路100には制御部用冷却水を導入するようにしており、機関始動時には自ずと第1冷却水通路100に制御部用冷却水が導入されている状態となっている。そのため、機関始動時には昇温された制御部用冷却水がエンジン1に流れ込む。従って、機関始動後の暖機初期段階において機関の暖機が促進され、例えば排気エミッションなどの悪化が抑えられる。
【0051】
また、電力制御部80で受熱した制御部用冷却水が機関始動前からエンジン1に導入される(図4の時刻t1〜時刻t2)。従って、機関始動前からエンジン1の昇温が図られる。
【0052】
また、制御部水温THIが機関水温THWよりも高いときに、第1冷却水通路100への制御部用冷却水の導入が行われるため、制御部用冷却水による機関の暖機が確実に行われる。
【0053】
他方、制御部水温THIが機関水温THWよりも高くても、機関用冷却水の温度がある程度高くなれば、制御部用冷却水を利用しなくても機関の暖機は促進される。そこで、機関水温THWが所定の閾値αよりも低いときに、第1冷却水通路100への制御部用冷却水の導入を行うようにしており、これにより第1冷却水通路100への制御部用冷却水の導入が適切に判定される。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)エンジン1を冷却する機関用冷却水が流れる第1冷却水通路100と、電動機MG2への電力供給を制御する電力制御部80と、電力制御部80を冷却する制御部用冷却水が流れる第2冷却水通路200とを備えるようにしている。そして、電動機MG2による車両走行が行われてからエンジン1を始動させるとともに、エンジン1が始動されるときには第1冷却水通路100に制御部用冷却水が導入されるようにしている。そのため、機関始動後の暖機初期段階において機関の暖機が促進され、例えば排気エミッションなどの悪化が抑えられるようになる。
【0055】
(2)電力制御部80への通電時に、第1冷却水通路100への制御部用冷却水の導入を開始するようにしている。従って、電力制御部80で受熱した制御部冷却水を機関始動前からエンジン1に導入させることができ、これにより機関始動前からエンジン1の昇温を図ることができる。
【0056】
(3)制御部水温THIが機関水温THWよりも高いときに、第1冷却水通路100への制御部用冷却水の導入を行うようにしている。そのため、制御部用冷却水による機関の暖機を確実に行うことができるようになる。
【0057】
(4)機関水温THWが所定の閾値αよりも低いときに、第1冷却水通路100への制御部用冷却水の導入を行うようにしている。そのため、第1冷却水通路100への制御部用冷却水の導入を適切に判定することができるようになる。
(第2実施形態)
次に、本実施形態にかかるハイブリッド車両の冷却装置を具体化した第2実施形態について説明する。
【0058】
上記第1実施形態では、電力制御部80への通電時に、第1冷却水通路100への制御部用冷却水の導入を開始することで、エンジン1が始動される前から、第1冷却水通路100には制御部用冷却水を導入されるようにした。
【0059】
一方、本実施形態では、第1冷却水通路100への制御部用冷却水の導入開始を、機関始動時に行うようにしており、上記切替処理の一部のみが異なっている。そこで、以下では、第1実施形態との相異点を中心に、本実施形態にかかる冷却装置を説明する。
【0060】
図5に、本実施形態における切替弁310の切替処理の手順を示す。この図5に示すように、本実施形態の切替処理は、第1実施形態の切替処理におけるステップS100の判定処理に代えて、ステップS300の判定処理を実行するようにしている。
【0061】
このステップS300では、現在、機関運転中であるか否かが判定される。そして、機関運転中ではない、つまりエンジン1が停止されているときには(S300:NO)、切替弁310が閉弁されて(S240)、本処理は一旦終了される。
【0062】
一方、機関運転中であるときには(S300:YES)、上述したステップS210やステップS220での判定処理が行われ、それら各判定処理での結果に応じて上記ステップS230やステップS240の処理が行われる。
【0063】
なお、本切替処理の前回実行時においてステップS300では否定判定されたものの、今回の実行時においてステップS300で肯定判定される場合には、今回の機関運転が機関始動の開始に伴うものである。そのため、本処理では、機関始動によってステップS300にて肯定判定され、ステップS210及びステップS220でもそれぞれ肯定判定されるときには、それまで閉弁されていた切替弁310が、ステップS230の処理により開弁される。従って、機関始動によって第1冷却水通路100への制御部用冷却水の導入が開始される。
【0064】
図6に、上記機関始動処理及び切替処理が実行されるときの機関水温THWの変化等を示す。この図6に示すように、時刻t1において電力制御部80への通電が開始され、車両の走行が開始されると、電力制御部80の発熱により制御部水温THIは徐々に高くなっていく。ここで、EV走行が所定期間Tだけ行われる前では、機関始動が禁止されるため、エンジンは停止状態に維持される。従って、切替弁310は閉弁状態にされる。
【0065】
時刻t2において、EV走行が所定期間Tだけ行われたことにより機関始動が行われると、切替弁310は開弁状態にされることにより、第1冷却水通路100への制御部用冷却水の導入が開始される。この制御部用冷却水の導入により、電力制御部80の発熱とエンジン1の発熱とによってエンジン1に導入される冷却水の温度は急速に上昇し始める。
【0066】
そして、時刻t3において、機関水温THWが閾値αを超えると、切替弁310が閉弁状態にされ、これにより第1冷却水通路100への制御部用冷却水の導入が中止される。
次に、第1実施形態とは異なる本実施形態の作用を説明する。
【0067】
上述したように、本実施形態では、エンジン1の始動時に、電力制御部80で受熱した制御部用冷却水がエンジン1に導入される。ここで、第1実施形態のごとく、機関始動の開始前から制御部用冷却水をエンジン1に導入する場合には、エンジン1から受熱していない低温の機関用冷却水と電力制御部80で受熱した制御部用冷却水とが第1冷却水通路100及び第2冷却水通路200で混じり合うため、制御部用冷却水は昇温されつつもその昇温速度は比較的遅くなる。この点、本実施形態では、機関始動の開始前では、制御部用冷却水が第2冷却水通路200だけを循環し、低温の機関用冷却水とは混じり合わない。そのため、機関始動開始前での制御部用冷却水の昇温速度は比較的速くなる。従って、機関始動時においてエンジン1に導入される制御部用冷却水の温度を、第1実施形態と比較して高くしておくことが可能となる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態によれば、上記(1)、(3)、(4)の効果に加えて、次の効果を得ることができる。
(5)エンジン1の始動時に、第1冷却水通路100への制御部用冷却水の導入を開始するようにしている。そのため、機関始動時においてエンジン1に導入される制御部用冷却水の温度を好適に高めておくことができる。
【0069】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・切替弁310の開度を連続的に変更することができる場合には、第1冷却水通路100に導入する制御部用冷却水の量をエンジン1の暖機要求等に応じて変更するようにしてもよい。
【0070】
・第1及び第2実施形態においてステップS210の処理を省略してもよい。また、ステップS220の処理を省略してもよい。そして、ステップS210及びステップS220の処理をともに省略してもよい。
【0071】
・第1冷却水通路100及び第2冷却水通路200を互いに独立した冷却水通路として設け、第1冷却水通路100及び第2冷却水通路200に連通通路300を接続し、この連通通路300に切替弁310を設けるようにした。この他、切替弁310を省略するなどして、第1冷却水通路100及び第2冷却水通路200の冷却水を常に共用するようにしてもよい。この場合には、エンジン1が始動されるときには第1冷却水通路100に制御部用冷却水が自ずと導入されている状態となるが、少なくとも電動機MG2による車両走行が行われてからエンジン1を始動させることにより、機関始動時には昇温された制御部用冷却水がエンジン1に流れ込むようになる。従って、この変形例であっても、機関始動後の暖機初期段階において機関の暖機が促進され、例えば排気エミッションなどの悪化が抑えられるようになる。
【符号の説明】
【0072】
1…エンジン、31…機関用水温センサ、32…制御部用水温センサ、80…電力制御部、100…第1冷却水通路、120…ラジエータ、121…電動ウォータポンプ、122…サーモスタット、123…ウォータジャケット、124…出口側冷却水通路、125…入口側冷却水通路、126…バイパス通路、200…第2冷却水通路、210…制御部用冷却水通路、220…制御部用ラジエータ、221…電動ウォータポンプ、300…連通通路、310…切替弁、400…制御装置、MG1…発電機、MG2…電動機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源として内燃機関及び電動機を備えるハイブリッド車両に適用されて、前記内燃機関を冷却する機関用冷却水が流れる第1冷却水通路と、前記電動機への電力供給を制御する電力制御部と、同電力制御部を冷却する制御部用冷却水が流れる第2冷却水通路とを備え、前記制御部用冷却水を前記第1冷却水通路に導入可能な冷却装置であって、
前記電動機による車両走行が行われてから前記内燃機関を始動させるとともに、同内燃機関が始動されるときには前記第1冷却水通路に前記制御部用冷却水が導入される
ことを特徴とするハイブリッド車両の冷却装置。
【請求項2】
前記電力制御部への通電時に、前記第1冷却水通路への前記制御部用冷却水の導入を開始する
請求項1に記載のハイブリッド車両の冷却装置。
【請求項3】
前記内燃機関の始動時に、前記第1冷却水通路への前記制御部用冷却水の導入を開始する
請求項1に記載のハイブリッド車両の冷却装置。
【請求項4】
前記第1冷却水通路への前記制御部用冷却水の導入は、同制御部用冷却水の温度が機関用冷却水の温度よりも高いときに行う
請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の冷却装置。
【請求項5】
前記第1冷却水通路への前記制御部用冷却水の導入は、前記機関用冷却水の温度が所定の判定温度よりも低いときに行う
請求項4に記載のハイブリッド車両の冷却装置。
【請求項6】
前記第1冷却水通路及び前記第2冷却水通路は互いに独立した冷却水通路であって、
前記第1冷却水通路及び前記第2冷却水通路に接続された連通通路と、同連通通路の途中に設けられて前記第1冷却水通路及び前記第2冷却水通路の連通及び非連通を切り替える切替弁とを有し、
前記切替弁によって第1冷却水通路及び前記第2冷却水通路が連通状態にされることで前記第1冷却水通路への前記制御部用冷却水の導入が行われる
請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−35504(P2013−35504A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175189(P2011−175189)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】