説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】キャニスタの性能を保ちつつ、燃費も向上させることができるハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】給油口開閉センサ120による燃料タンク221の給油口221aの開口検出により、エンジン12の運転状態をパージ運転状態とし、積算パージ量がパージ終了しきい値以上となった場合に、エンジン12の運転状態を燃費最適運転状態とすることにより、キャニスタ251への蒸発燃料の吸着量が多い場合には、吸気管231の負圧が大きく、キャニスタ251から蒸発燃料が充分にパージされ、キャニスタ251から充分に蒸発燃料がパージされた場合には、エンジン12の燃費を最適とすることができ、キャニスタ251の性能を保ちつつ、燃費も向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源の運転状態を制御するハイブリッド車両の制御装置に関し、特に、蒸発燃料をキャニスタに吸着させるハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関(以下、エンジンという)の燃料として使用されるガソリンは、揮発性があるため、燃料タンク内の圧力や温度等により蒸発する。このように蒸発されたガソリン、いわゆるエバポガス(以下、蒸発燃料という)は、車外に排出されることを防ぐため、キャニスタに吸着される。キャニスタは、燃料タンク内で発生した蒸発燃料を脱離可能に吸着する。
【0003】
ハイブリッド車両は、キャニスタに吸着された蒸発燃料を、エンジンが稼働されたときに、吸気系に循環させ、燃焼させる。すなわち、ハイブリッド車両は、キャニスタに吸着された蒸発燃料を、エンジンの吸気管内に発生する負圧により、吸気管に放出・吸引(以下、パージという)させ、吸入空気とともにエンジンの燃焼室に導入し、燃焼させることにより、蒸発燃料の車外への放出を抑制するようにしている。
【0004】
一方、ハイブリッド車両では、アイドルストップやモータ走行によりエンジンを停止して燃料消費量を抑制するという構成になっているため、キャニスタに吸着された蒸発燃料をパージして燃焼させる頻度が小さくなり、キャニスタに蒸発燃料が溜まって、キャニスタの性能が低下してしまう。
【0005】
これに対し、エンジンの運転時間を延長してパージを行うことにより、キャニスタの性能を維持するハイブリッド車両の制御装置が知られている。このハイブリッド車両の制御装置は、例えば、バッテリの充電のためエンジンを駆動し、バッテリの充電が完了した後も蒸発燃料のパージ量が所定量となるまでエンジンの運転を継続するものである。
【0006】
また、エンジンを停止させたままバッテリからの給電により生じる電気モータの駆動力のみで走行する電気走行モードと、バッテリに充電するための発電用の駆動力および走行用の駆動力の少なくとも一方を発生させるためにエンジンを作動させ得るハイブリッド走行モードと、を選択し得るように構成し、燃費の悪化を低減させるハイブリッド車両の制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
このハイブリッド車両の制御装置においては、電気走行モードとハイブリッド走行モードとを選択し得るように構成し、バッテリの残容量、およびキャニスタの燃料吸着量に基づいて、電気走行モードおよびハイブリッド走行モードのいずれか一方を選択し、ハイブリッド走行モードが選択されている場合に、キャニスタの燃料吸着量に基づいて、エンジンの作動の要否を判断するものである。
【0008】
これにより、バッテリの残容量が多くキャニスタの燃料吸着量が少ない場合には、電気走行モードを選択し、バッテリの残容量が少ない場合や、キャニスタの燃料吸着量が多い場合に、ハイブリッド走行モードを選択する。したがって、電気走行モードでは、エンジンが停止しているので燃費が良好であり、ハイブリッド走行モードでは、エンジンをバッテリへの充電用、または走行のための駆動力発生用に作動させることができるため、キャニスタの燃焼吸着量が多い場合にエンジンを作動させても、燃料を無駄にすることを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−307915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような従来のハイブリッド車両の制御装置においては、エンジンの作動効率を高めるため、エンジンを作動させる際に、エンジン回転数に対してエンジントルクが最大となるように作動させるため、吸気管内の負圧が小さく、キャニスタに吸着された蒸発燃料を充分に排気管内にパージすることができず、キャニスタから蒸発燃料をあまり脱離させられず、キャニスタの性能を充分に復帰させることができないという問題があった。
【0011】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、キャニスタから蒸発燃料をパージする際に、吸気管内の負圧を充分に確保し、また、負圧確保を行う期間を限定して、キャニスタの性能を保ちつつ、燃費も向上させることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、上記課題を解決するため、(1)内燃機関および電動機の運転状態を制御する動力源制御手段と、前記内燃機関で燃焼される燃料を貯留する燃料タンクと、前記燃料タンク内で発生した蒸発燃料を脱離可能に吸着するキャニスタと、前記キャニスタに吸着した蒸発燃料の吸着量を推定する吸着推定手段と、前記キャニスタから脱離した蒸発燃料を前記内燃機関の吸気通路に導いて前記蒸発燃料を吸引するパージ通路と、前記キャニスタから脱離して前記吸気通路に吸引された前記蒸発燃料のパージ量を推定するパージ量推定手段と、を備え、前記内燃機機関の運転状態は、前記キャニスタに吸着された前記蒸発燃料を前記吸気通路に負圧を与えて前記パージ通路を介して吸引することにより前記内燃機関で燃焼させるパージ運転状態と、前記パージ運転状態よりも燃費のよい燃費最適運転状態と、を有し、前記動力源制御手段は、前記吸着推定手段により推定された前記蒸発燃料の吸着量が予め定められた吸着量以上と推定された場合に、前記内燃機関の運転状態を前記パージ運転状態とし、前記パージ量推定手段により推定された前記蒸発燃料のパージ量が予め定められたパージ量以上と推定された場合に、前記内燃機関の運転状態を前記燃費最適運転状態とすることを特徴とした構成を有している。
【0013】
この構成により、吸着推定手段により推定されたキャニスタへの蒸発燃料の吸着量が予め定められた吸着量以上と推定された場合に、内燃機関の運転状態をパージ運転状態とし、パージ量推定手段により推定されたキャニスタからの蒸発燃料のパージ量が予め定められたパージ量以上と推定された場合に、内燃機関の運転状態を燃費最適運転状態とするので、蒸発燃料の吸着量が多い場合には、吸気通路の負圧が大きく、キャニスタから蒸発燃料が充分にパージされ、キャニスタから充分に蒸発燃料がパージされた場合には、内燃機関の燃費を最適とすることができ、キャニスタの性能を保ちつつ、燃費も向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、キャニスタから蒸発燃料をパージする際に、吸気通路内の負圧を充分に確保し、また、負圧確保を行う期間を限定して、キャニスタの性能を保ちつつ、燃費も向上させることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態における制御装置を備えたハイブリッド車両を示す概略ブロック構成図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるエンジンの構成を示す概略ブロック構成図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるエンジンの運転状態別のエンジン回転数とエンジントルクとの関係を示したグラフである。
【図4】本発明の実施の形態におけるハイブリッド車両のエンジン運転状態を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
まず、本発明の実施の形態における制御装置を備えたハイブリッド車両の構成について、図1に示すハイブリッド車両の概略ブロック構成図、および、図2に示すエンジンの概略ブロック構成図を参照して、説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態におけるハイブリッド車両11は、内燃機関であるエンジン12と、エンジン12から出力された動力を駆動軸としてのドライブシャフト13を介して駆動輪14L、14Rに伝達する動力伝達装置15と、ハイブリッド車両11全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット100と、を備えている。
【0018】
エンジン12は、ガソリンあるいは軽油等の炭化水素系の燃料と空気との混合気を、後述する燃焼室214(図2参照)内で燃焼させることによって動力を出力する公知の動力装置により構成されている。エンジン12は、燃焼室214内で混合気の吸気、燃焼および排気を断続的に繰り返すことによりシリンダブロック211内のピストン213(図2参照)を往復動させ、ピストン213と動力伝達可能に連結されたクランクシャフト19を回転させることにより、動力伝達装置15にトルクを伝達するようになっている。また、エンジン12は、エンジン12の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)101によって燃料噴射制御や点火制御、吸入空気量調節制御等の運転制御が行われるようになっている。
【0019】
エンジンECU101は、ハイブリッド用電子制御ユニット100と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット100から入力される制御信号によりエンジン12を運転制御するとともに必要に応じてエンジン12の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット100に出力するようになっている。
【0020】
動力伝達装置15は、モータジェネレータMG1と、モータジェネレータMG2と、モータジェネレータMG2のロータシャフト36に接続される変速機17と、エンジン12およびモータジェネレータMG1の間で動力分配を行う動力分配機構18と、を備えている。
【0021】
動力分配機構18は、エンジン12のクランクシャフト19に軸中心を貫通された中空のサンギヤ軸20に結合されたサンギヤ21と、サンギヤ21と中心軸を同一とするリングギヤ22と、サンギヤ21とリングギヤ22との間に配置され、サンギヤ21の外周を自転しながら公転する複数のピニオンギヤ23と、クランクシャフト19の端部にダンパ24を介して結合された入力軸26と、を備えている。また、動力分配機構18は、各ピニオンギヤ23の回転軸を支持するキャリア25を備えており、サンギヤ21、リングギヤ22およびキャリア25を回転要素として差動作用を行う遊星歯車機構を構成している。
【0022】
この動力分配機構18により、モータジェネレータMG1は、発電機および電動機として機能する。すなわち、キャリア25から入力されるエンジン12からの動力を、サンギヤ21側と、リングギヤ22側と、にそのギヤ比に応じて分配するとき、モータジェネレータMG1が発電機として機能するようになっている。また、モータジェネレータMG1が電動機として機能するときには、キャリア25から入力されるエンジン12からの動力と、サンギヤ21から入力されるモータジェネレータMG1からの動力と、を統合してリングギヤ22側に出力するようになっている。
【0023】
また、モータジェネレータMG1は、回転磁界を形成するステータ28と、ステータ28の内部に配置され、複数個の永久磁石が埋め込まれているロータ29と、を備えており、ステータ28は、ステータコアおよびステータコアに巻回される三相コイルを備えている。
【0024】
ロータ29は、動力分配機構18のサンギヤ21と一体的に回転するサンギヤ軸20に結合されており、ステータ28のステータコアは、例えば、電磁鋼板の薄板を積層して形成され、本体ケース51の内周部に固定されている。したがって、モータジェネレータMG1は本体ケース51に収納されている。
【0025】
このように構成されるモータジェネレータMG1は、ロータ29に埋め込まれた永久磁石による磁界と三相コイルによって形成される磁界との相互作用によりロータ29を回転駆動する電動機として動作するようになっている。また、モータジェネレータMG1は、永久磁石による磁界とロータ29の回転との相互作用により三相コイルの両端に起電力を生じさせる発電機としても動作するようになっている。
【0026】
また、モータジェネレータMG2は、回転磁界を形成するステータ32と、ステータ32の内部に配置され複数個の永久磁石が埋め込まれたロータ33と、を備えており、ステータ32は、ステータコアおよびステータコアに巻回される三相コイルを備えている。
【0027】
ロータ33のロータシャフト36は、変速機17に接続されており、ステータ32のステータコアは、例えば、電磁鋼板の薄板を積層して形成され、本体ケース51の内周部に固定されている。したがって、モータジェネレータMG2は本体ケース51に収納されている。
【0028】
モータジェネレータMG2は、永久磁石による磁界とロータ33の回転との相互作用によって三相コイルの両端に起電力を生じさせる発電機としても動作するようになっており、モータジェネレータMG2は、永久磁石による磁界と三相コイルによって形成される磁界との相互作用によりロータ33を回転駆動する電動機として動作するようになっている。
【0029】
また、変速機17は、キャリア38が動力伝達装置15の本体ケース51に固定された構造により変速を行うようになっている。具体的には、変速機17は、ロータシャフト36に結合されたサンギヤ37と、動力分配機構18のリングギヤ22と一体的に回転するリングギヤ39と、リングギヤ39およびサンギヤ37に噛合し、サンギヤ37の回転をリングギヤ39に伝達するピニオンギヤ40と、ピニオンギヤ40を回転自在に支持する支持軸を有するキャリア38と、を備えている。また、変速機17は、サンギヤ37、リングギヤ39およびキャリア38を回転要素として差動作用を行う遊星歯車機構を構成している。
【0030】
さらに、変速機17のリングギヤ39および動力分配機構18のリングギヤ22には、カウンタドライブギヤ52が一体回転するように設けられている。カウンタドライブギヤ52は、ギヤ機構56に接続され、ギヤ機構56は、デファレンシャルギヤ57に接続されている。カウンタドライブギヤ52に出力された動力は、カウンタドライブギヤ52からギヤ機構56を介して、デファレンシャルギヤ57に伝達されるようになっている。
【0031】
デファレンシャルギヤ57は、ドライブシャフト13に接続され、ドライブシャフト13は、駆動輪14L、14Rに接続されている。デファレンシャルギヤ57に伝達された動力は、ドライブシャフト13を介して、駆動輪14L、14Rに出力するようになっている。
【0032】
また、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2は、インバータ61およびインバータ62を介してバッテリ63との間で電力のやりとりを行うようになっている。
【0033】
インバータ61およびインバータ62とバッテリ63とを接続する電力ライン64は、インバータ61およびインバータ62が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータジェネレータMG1、MG2の何れかで発電される電力を他のモータジェネレータで消費することができるようになっている。
【0034】
したがって、バッテリ63は、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2の何れかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ63は充放電されない。
【0035】
また、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2は、何れもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)102により駆動制御されるようになっている。
【0036】
モータECU102には、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2を駆動制御するために必要な信号、例えば、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ111および回転位置検出センサ112から入力される信号や図示しない電流センサにより検出されるモータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2に印加される相電流等が入力されており、モータECU102からは、インバータ61およびインバータ62へのスイッチング制御信号が出力されるようになっている。
【0037】
モータECU102は、ハイブリッド用電子制御ユニット100と通信するようになっており、ハイブリッド用電子制御ユニット100から入力される制御信号に応じてインバータ61およびインバータ62を駆動制御することにより、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2を駆動制御する。また、モータECU102は、必要に応じてモータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット100に出力するようになっている。
【0038】
バッテリ63は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)103によって管理されており、バッテリECU103には、バッテリ63を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ63の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧、バッテリ63の出力端子に接続された電力ライン64に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流、バッテリ63に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度等が入力されており、必要に応じてバッテリ63の状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット100に出力するようになっている。なお、バッテリECU103にあっては、バッテリ63を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC:State of charge)も演算している。
【0039】
一方、図1に示すように、ハイブリッド用電子制御ユニット100は、CPU(Central processing unit)100aを中心とするマイクロプロセッサから構成されており、CPU100aの他に処理プログラム等を記憶するROM(Read only memory)100bと、一時的にデータを記憶するRAM(Random access memory)100cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートと、を備え、ハイブリッド車両11の制御を統括するようになっている。
【0040】
ハイブリッド用電子制御ユニット100には、イグニッションスイッチ(IG)113からのイグニッション信号Ig、ドライバーにより手動操作されるシフトレバー91の操作位置を検出するシフトポジションセンサ114からのシフトポジション信号SP、ドライバーにより踏み込まれるアクセルペダル92の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ115からのアクセル開度信号Acc、ブレーキペダル93の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ116からのブレーキペダルポジション信号BP、車速センサ117からの車速信号V等が、それぞれ入力ポートを介して入力されるようになっている。
【0041】
なお、ハイブリッド用電子制御ユニット100は、前述したように、エンジンECU101やモータECU102、バッテリECU103と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU101やモータECU102、バッテリECU103と各種制御信号やデータのやりとりを行うようになっている。
【0042】
次に、エンジン12のシリンダ周辺の詳細な構成について、説明する。
図2に示すように、エンジン12は、複数の気筒からなる燃焼部210と、燃焼部210に燃料を供給する燃料供給部220と、空気等の気体を燃焼部210に供給する吸気部230と、燃焼部210における混合気の燃焼によって生成した排気ガスを車外へ排出する排気部240と、蒸発した燃料を燃焼部210に供給できるように処理する蒸発燃料処理部250と、を備えている。
【0043】
燃焼部210は、シリンダブロック211と、シリンダブロック211の上部に固定されたシリンダヘッド212と、シリンダブロック211とシリンダヘッド212とにより形成された空間に往復動可能に収容されたピストン213と、を備えている。また、シリンダブロック211とシリンダヘッド212とピストン213とによって、燃焼室214が形成されている。
【0044】
シリンダブロック211には、冷却水の流路を形成し、流れている冷却水とシリンダブロック211との温度差を利用してシリンダブロック211を冷却するためのウォータジャケット211wが設けられている。
【0045】
シリンダヘッド212には、空気を燃焼室214へ導入するための吸気弁215と、排気ガスを排気部240へ排出するための排気弁216と、燃焼室214内の混合気に点火するための点火プラグ217と、が設けられている。
【0046】
また、後述する吸気管231には、燃料を噴射するためのインジェクタ218が設けられており、吸気弁215が開かれることにより、上記混合気が燃焼室214内へ導入されるようになっている。
【0047】
ピストン213は、クランクシャフト19に動力伝達可能に連結されており、燃料の燃焼によって往復動し、この往復動をクランクシャフト19に伝達するようになっている。
【0048】
吸気弁215および排気弁216は、クランクシャフト19とタイミングベルトを介して連結しており、クランクシャフト19の回転に伴い、所望のタイミングで開閉を行うようになっている。
【0049】
点火プラグ217は、プラチナやイリジウム合金の電極を有する公知の点火プラグである。点火プラグ217は、エンジンECU101によって所望のタイミングで上記電極に通電されて放電を発生させることにより、燃焼室214内に噴射された燃料に、所望のタイミングで点火するようになっている。
【0050】
インジェクタ218は、図示しないソレノイドコイルおよびニードルバルブを有しており、エンジンECU101によってソレノイドコイルに所望のタイミングで通電されるとニードルバルブを開くように構成されている。インジェクタ218は、ニードルバルブを開くことによって、吸気管231から燃焼室214内に所望のタイミングで燃料を噴射するようになっている。
【0051】
燃焼部210は、図示しない他の3個の燃焼部210を含めて直列4気筒のエンジン12を構成しているが、エンジン12は、直列4気筒のものに限られず、単気筒または任意に気筒配列された多気筒であってもよい。
【0052】
燃料供給部220は、燃料を貯留するための燃料タンク221と、燃料をインジェクタ218に圧送するための燃料ポンプ222と、圧送される燃料の圧力を調整する圧力レギュレータ223と、燃料タンク221とインジェクタ218とを連結させる燃料圧送用の燃料供給管224と、を備えている。
【0053】
燃料タンク221は、ガソリンあるいは軽油等の炭化水素系の燃料を貯留するためのものであり、内部に防錆処理が施された鉄製または樹脂製の公知の燃料タンクである。燃料タンク221は、車外と連通する給油口221aを有しており、給油口221aから燃料の供給を受けるようになっている。なお、燃料タンク221は、燃料に含まれる異物を取り除くための燃料フィルターを内蔵するものであってもよい。
【0054】
また、給油口221aには、給油口開閉センサ120が取り付けられている。この給油口開閉センサ120は、給油口221aの開閉を検出するものであり、給油口221aの開閉検出信号を、ハイブリッド用電子制御ユニット100に出力するようになっている。
【0055】
ここで、本実施の形態においては、給油口221aが開口されることにより、給油が行われ、燃料タンク221内の圧力が上昇し、蒸発燃料(エバポガスともいう)が後述するキャニスタ251に吸着されて、キャニスタ251に所定量の蒸発燃料が吸着されたものとする。したがって、給油口開閉センサ120は、給油口221aの開口を検出することにより、キャニスタ251に吸着した蒸発燃料の吸着量が予め定められた吸着量以上となったと推定するようになっている。
【0056】
燃料ポンプ222は、ポンプケース内に設けたインペラの回転によって燃料を圧送する公知の電動ポンプである。燃料ポンプ222は、この構成により、インジェクタ218に対して予め定められた圧力で燃料を圧送するように構成されており、エンジンECU101によって制御されるようになっている。なお、燃料ポンプ222は、燃料タンク221の内部に収納されるものであってもよい。
【0057】
圧力レギュレータ223は、燃料ポンプ222によりインジェクタ218に圧送される燃料の圧力を、所望の圧力に調整するようになっている。これにより、インジェクタ218は、燃料ポンプ222によって所望の燃料の圧力がかけられているので、エンジンECU101に制御されることによって開弁すると、開弁時間に応じた体積の燃料を吸気管231から燃焼室214に噴射することができる。
【0058】
吸気部230は、図示しないエアクリーナを通過して車外から流入した空気を燃焼室214に導入するための吸気通路である吸気管231と、空気の流量を調整するためのスロットルバルブ232と、を備えている。
【0059】
スロットルバルブ232は、薄い円板状の弁体の中央にシャフトを備えて構成されており、このシャフトが図示しないスロットルバルブアクチュエータによって回動させられることによって弁体が回動し、吸気管231における空気の流量を変更するようなっている。
【0060】
また、スロットルバルブ232の開度は、スロットルバルブ開度センサ121によって検出され、スロットルバルブ232の開度を表す検出信号がスロットルバルブ開度センサ121によってエンジンECU101に入力されるようになっている。なお、スロットルバルブ232の開度は、エンジンECU101により、アクセルペダルポジションセンサ115からのアクセル開度信号Accに基づいて、予め記憶されたスロットル開度制御マップにより求められたスロットル開度θthとなるように制御される。また、スロットル開度制御マップは、運転状態によって切り替えられる。
【0061】
排気部240は、排気弁216を介して燃焼室214と連通する排気管241と、排気管241に設けられ、排気ガスを浄化処理するための触媒コンバータ242と、を備えている。
【0062】
触媒コンバータ242は、排気ガスに含まれる未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)および窒素酸化物(NOx)といった有害物質を効率的に除去することができる三元触媒を備えたものであり、好ましくはNOx含有率の高い排気ガスからでも、NOxを効率的に除去する機能を有するものが用いられる。
【0063】
蒸発燃料処理部250は、燃料タンク221内の蒸発燃料を吸着させるためのキャニスタ251と、キャニスタ251と燃料タンク221とを連通するタンク側通路252と、キャニスタ251と吸気管231とを連通するパージ通路253と、パージ通路253に設けられたパージバルブ254と、を備えている。
【0064】
キャニスタ251は、大気と連通する大気開放管255を有し、蒸発燃料を一時的に吸着させるための活性炭等の吸着材が充填されている。パージバルブ254は、エンジンECU101の制御信号にしたがって、パージ通路253をキャニスタ251および吸気管231の連通状態または非連通状態に切り替えるようになっている。
【0065】
蒸発燃料処理部250は、このような構成により、燃料タンク221内の燃料が使用されると、大気開放管255からタンク側通路252を介して燃料タンク221内の空気が供給され、燃料タンク221内の圧力が低下することを防止している。また、燃料タンク221内の蒸発燃料は、給油等により所定の圧力を超えると、タンク側通路252を介してキャニスタ251に導入され、吸着材に吸着される。
【0066】
キャニスタ251の吸着材に吸着された蒸発燃料は、パージバルブ254が開弁され、吸気管231内の圧力が負圧となると、キャニスタ251からパージ通路253を介して吸気管231に供給される。吸気管231に供給される蒸発燃料の流量は、パージバルブ254の開度等によって定まる。また、吸気管231内の負圧は、エンジン12におけるピストン213の往復動、吸気弁215の開閉タイミング、スロットルバルブ232の開度等によって発生する。
【0067】
ここで、吸気管231内の負圧発生について、説明する。図3は、エンジンの運転状態におけるエンジン回転数とエンジントルクとの関係を示したグラフである。
【0068】
図3に示すように、エンジン12は、燃費最適運転状態で作動させると、実線に示す燃費最適動作線のようにエンジン回転数に対して、最もエンジントルクが高くなるように動作する。一方、エンジン12は、パージ運転状態で作動させると、破線に示す負圧確保動作線のようにエンジン回転数に対して、燃費最適動作線よりもエンジントルクが低くなるように動作する。ここで、負圧確保動作線で動作している方が、燃費最適動作線で動作している場合よりも、吸気管231内の負圧は大きくなる。
【0069】
ここで、ハイブリッド車両11のハイブリッド用電子制御ユニット100は、エンジン12とモータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2とを協調して動作させるので、常に燃費最適運転状態とすることができるが、意図的にパージ運転状態とすることにより、吸気管231内の負圧を大きくすることができる。
【0070】
以下、本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両11の特徴的な構成について説明する。
【0071】
燃料タンク221は、エンジン12の燃焼室214で燃焼される燃料を貯留するようになっている。キャニスタ251は、燃料タンク221内で発生した蒸発燃料を脱離可能に吸着するようになっている。パージ通路253は、キャニスタ251から脱離した蒸発燃料を吸気管231に導いて蒸発燃料を吸引するようになっている。
【0072】
給油口開閉センサ120は、キャニスタ251に吸着した蒸発燃料の吸着量を推定するようになっている。すなわち、給油口開閉センサ120は、本発明における吸着推定手段を構成している。
【0073】
ハイブリッド用電子制御ユニット100は、エンジンECU101を制御して、エンジン12を複数の運転状態から運転状態を選択して、作動させるようになっている。エンジン12の運転状態には、吸気管231に負圧を与え、キャニスタ251に吸着された蒸発燃料を、パージ通路253を介して吸引してエンジン12の燃焼室214で燃焼させるパージ運転状態と、パージ運転状態よりも燃費のよい燃費最適運転状態と、を有している。
【0074】
また、ハイブリッド用電子制御ユニット100は、キャニスタ251から脱離して吸気管231に吸引された蒸発燃料のパージ量を推定するようになっている。すなわち、ハイブリッド用電子制御ユニット100は、パージ量推定手段を構成している。
【0075】
また、ハイブリッド用電子制御ユニット100は、エンジン12、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2の運転状態を制御するようになっている。さらに、ハイブリッド用電子制御ユニット100は、給油口開閉センサ120により推定された蒸発燃料の吸着量が予め定められた吸着量以上と推定された場合に、エンジン12の運転状態をパージ運転状態とし、推定した蒸発燃料のパージ量が予め定められたパージ終了しきい値以上と推定した場合に、エンジン12の運転状態を燃費最適運転状態とするようになっている。すなわち、ハイブリッド用電子制御ユニット100は、動力源制御手段を構成している。
【0076】
次に、図4に本発明の実施の形態におけるハイブリッド車両のエンジン運転状態のタイミングチャートを示し、動作について説明する。
【0077】
図4に示すように、ハイブリッド用電子制御ユニット100のCPU100aは、給油口開閉センサ120により、給油口221aの開口が検出されると、キャニスタ251に所定量の蒸発燃料が吸着されたものと判定する。ハイブリッド用電子制御ユニット100のCPU100aは、このキャニスタ251に所定量の蒸発燃料が吸着されたものと判定すること(以下、キャニスタ付着判定という)により、エンジンECU101を制御してエンジン12の運転状態をパージ運転状態とする。また、ハイブリッド用電子制御ユニット100のCPU100aは、キャニスタ付着判定により、パージ量の積算値(以下、積算パージ量という)を、クリア(積算パージ量を0)する。
【0078】
次いで、ハイブリッド用電子制御ユニット100のCPU100aは、エンジン12のパージ運転状態を継続し、積算パージ量を監視する。この積算パージ量は、パージ流量を積算していくことにより求める。パージ流量は、パージバルブ254の開度、エンジン回転数およびスロットル開度から推定する。
【0079】
ハイブリッド用電子制御ユニット100のCPU100aは、積算パージ量が予め定められたパージ終了しきい値以上となった場合に、エンジンECU101を制御して、エンジン12の運転状態を燃費最適運転状態とする。
【0080】
以後、ハイブリッド用電子制御ユニット100のCPU100aは、給油口開閉センサ120により、給油口221aの開口が検出されるまで、エンジン12の運転状態を燃費最適運転状態で動作させる。
【0081】
ハイブリッド用電子制御ユニット100のCPU100aは、給油口開閉センサ120により、給油口221aの開口が検出されると、キャニスタ251に所定量の蒸発燃料が吸着されたものと判定し、エンジンECU101を制御してエンジン12の運転状態をパージ運転状態として、上記処理を繰り返す。
【0082】
以上のように、本実施の形態におけるハイブリッド車両の制御装置は、給油口開閉センサ120による燃料タンク221の給油口221aの開口検出により、キャニスタ251への蒸発燃料の吸着量が予め定められた吸着量以上と推定し、エンジン12の運転状態をパージ運転状態とし、積算パージ量がパージ終了しきい値以上となった場合に、エンジン12の運転状態を燃費最適運転状態とするので、キャニスタ251への蒸発燃料の吸着量が多い場合には、吸気管231の負圧が大きく、キャニスタ251から蒸発燃料が充分にパージされ、キャニスタ251から充分に蒸発燃料がパージされた場合には、エンジン12の燃費を最適とすることができ、キャニスタ251の性能を保ちつつ、燃費も向上させることができる。
【0083】
なお、上述した実施の形態においては、キャニスタ251への蒸発燃料の吸着量の推定を、給油口開閉センサ120による燃料タンク221の給油口221aの開口検出のみにより推定するようにしているが、これに限らず、他のセンサの検出値等を考慮に入れるようにしてもよい。例えば、温度センサを設け、燃料タンク221内の燃料の蒸発や蒸発燃料の膨張量を考慮に入れたり、既存の燃料残量センサから残燃料量の検出値から、残燃料量が増加しない場合には、燃料タンク221の給油口221aの開口を検出しても、キャニスタ251への蒸発燃料の吸着量の増加を推定しないようにしてもよい。この場合も上述したハイブリッド車両の制御装置と同様の効果が得られるとともに、検出精度の向上が得られる。
【0084】
また、上述した実施の形態においては、燃料タンク221の給油口221aの開口検出を、給油口開閉センサ120によって検出するようにしているが、これに限らず、運転席にある給油口開口スイッチのオン検出、燃料残量センサから残燃料量の増加検出、あるいは、上記それぞれのセンサを組み合わせて使用するようにしてもよい。この場合も上述したハイブリッド車両の制御装置と同様の効果、または、検出精度の向上が得られる。
【0085】
さらに、上述した実施の形態においては、ハイブリッド用電子制御ユニット100、エンジンECU101、モータECU102およびバッテリECU103をそれぞれ独立した別ECUとして説明したが、これに限らず、1つのECUによって構成されるものであってもよい。
【0086】
以上説明したように、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、キャニスタから蒸発燃料をパージする際に、吸気通路内の負圧を充分に確保し、また、負圧確保を行う期間を限定して、キャニスタの性能を保ちつつ、燃費も向上させることができるという効果を有し、蒸発燃料をキャニスタに吸着させるハイブリッド車両の制御装置等として有用である。
【符号の説明】
【0087】
11 ハイブリッド車両
12 エンジン(内燃機関)
13 ドライブシャフト
14L、14R 駆動輪
19 クランクシャフト
63 バッテリ
100 ハイブリッド用電子制御ユニット(動力源制御手段、パージ量推定手段)
101 エンジンECU
102 モータECU
120 給油口開閉センサ(吸着推定手段)
121 スロットルバルブ開度センサ
210 燃焼部
213 ピストン
214 燃焼室
215 吸気弁
216 排気弁
217 点火プラグ
218 インジェクタ
220 燃料供給部
221 燃料タンク
221a 給油口
222 燃料ポンプ
223 圧力レギュレータ
224 燃料供給管
230 吸気部
231 吸気管(吸気通路)
232 スロットルバルブ
240 排気部
250 蒸発燃料処理部
251 キャニスタ
252 タンク側通路
253 パージ通路
254 パージバルブ
255 大気開放管
MG1、MG2 モータジェネレータ(電動機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関および電動機の運転状態を制御する動力源制御手段と、
前記内燃機関で燃焼される燃料を貯留する燃料タンクと、
前記燃料タンク内で発生した蒸発燃料を脱離可能に吸着するキャニスタと、
前記キャニスタに吸着した蒸発燃料の吸着量を推定する吸着推定手段と、
前記キャニスタから脱離した蒸発燃料を前記内燃機関の吸気通路に導いて前記蒸発燃料を吸引するパージ通路と、
前記キャニスタから脱離して前記吸気通路に吸引された前記蒸発燃料のパージ量を推定するパージ量推定手段と、を備え、
前記内燃機機関の運転状態は、前記キャニスタに吸着された前記蒸発燃料を前記吸気通路に負圧を与えて前記パージ通路を介して吸引することにより前記内燃機関で燃焼させるパージ運転状態と、前記パージ運転状態よりも燃費のよい燃費最適運転状態と、を有し、
前記動力源制御手段は、前記吸着推定手段により推定された前記蒸発燃料の吸着量が予め定められた吸着量以上と推定された場合に、前記内燃機関の運転状態を前記パージ運転状態とし、前記パージ量推定手段により推定された前記蒸発燃料のパージ量が予め定められたパージ量以上と推定された場合に、前記内燃機関の運転状態を前記燃費最適運転状態とすることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−105040(P2011−105040A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259142(P2009−259142)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】