ハイブリッド車両の制御装置
【課題】エンジンの暖機が完了する前に間欠運転制御を実行する場合であっても、暖房による要因から生じる過充電の発生を抑制するととともに、燃料消費量の増大を抑制することのできるハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置であるパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジン110の冷却水の温度が、エンジン110の暖機が完了したことを示す第1の基準温度よりも低い第2の基準温度以上であるときに、無駄なアイドリング運転を抑制するために間欠運転制御を実行する。パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジン110の暖機が完了するまでの間に暖房による要因だけでエンジン110が運転された場合に、バッテリ200の充電残量が多いときほど点火時期を遅角させるバッテリ充電残量に応じた点火時期可変制御を実行する。
【解決手段】本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置であるパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジン110の冷却水の温度が、エンジン110の暖機が完了したことを示す第1の基準温度よりも低い第2の基準温度以上であるときに、無駄なアイドリング運転を抑制するために間欠運転制御を実行する。パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジン110の暖機が完了するまでの間に暖房による要因だけでエンジン110が運転された場合に、バッテリ200の充電残量が多いときほど点火時期を遅角させるバッテリ充電残量に応じた点火時期可変制御を実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているようにハイブリッド車両にあっては、そのときの状態に応じてエンジンの運転を停止したり再開したりする間欠運転制御を実行するものがある。こうした間欠運転制御を実行することにより、無駄なアイドリング運転を抑制し、燃料消費量を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010‐255504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンの暖機が完了する前であっても、ある程度までエンジンの冷却水の温度が上昇している場合には間欠運転制御を実行するようにして燃費の向上を図るようにすることも考えられる。この場合、暖機完了前の間欠運転制御中における冷却水温は比較的低い温度であるため、暖房によって冷却水の熱が利用されると冷却水温が低下し、冷却水温が間欠運転制御を行うことのできる範囲から外れてしまい、間欠運転制御を通じて停止されていたエンジンが再び運転されるようになることがある。こうして暖房による要因によってエンジンが運転されるようになるとエンジンを停止させておくことのできる機会が少なくなり、燃料消費量が増大してしまう。
【0005】
また、バッテリの充電残量が多いときにこうした暖房の要因によるエンジンの運転が行われるとエンジンの運転に伴ってモータジェネレータが駆動され、それに伴って発電された電力がバッテリに充電されるため、バッテリに過剰な電力が供給されて過充電に陥るおそれがある。
【0006】
この発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的はエンジンの暖機が完了する前に間欠運転制御を実行する場合であっても、暖房による要因から生じる過充電の発生を抑制するととともに、燃料消費量の増大を抑制することのできるハイブリッド車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、エンジンと、同エンジンの冷却水の熱を利用して空気を暖めて暖房に利用するエアコンユニットと、前記エンジンの動力によって発電を行う発電機と、前記発電機によって発電された電力を蓄えるバッテリとを備え、前記エンジンの冷却水の温度が、前記エンジンの暖機が完了したことを示す第1の基準温度よりも低い第2の基準温度以上であるときに、無駄なアイドリング運転を抑制するために前記エンジンの運転を停止させたり再度前記エンジンを運転させたりする間欠運転制御を実行するハイブリッド車両の制御装置であり、前記エンジンの暖機が完了するまでの間に暖房による要因だけで前記エンジンが運転された場合に、前記バッテリの充電残量が多いときほど点火時期を遅角させるバッテリ充電残量に応じた点火時期可変制御を実行するハイブリッド車両の制御装置である。
【0008】
上記構成によれば、エンジンの暖機が完了するまでの間に暖房による要因だけでエンジンが運転された場合に、バッテリの充電残量が多いときほど点火時期が遅角されるようになる。点火時期を遅角させることにより、燃焼室内における混合気の燃焼によって生じるエネルギーのうち、熱として消費するエネルギーの割合が増大するようになる。その結果、エンジンから出力されるパワーが小さくなり、エンジンによってモータジェネレータが駆動されることによって発生する電力も小さくなる。そのため、点火時期を遅角させることにより、エンジンの運転に伴ってバッテリに充電される電力を低減し、バッテリの過充電を抑制することができる。
【0009】
また、燃焼室内における混合気の燃焼によって生じるエネルギーのうち、熱として消費するエネルギーの割合が増大するため、エンジンの冷却水の温度が上昇しやすくなる。その結果、冷却水の熱が暖房に利用されて冷却水温が低下しやすい状況下であっても、冷却水の温度を第2の基準温度以上にまで上昇させて間欠運転制御を実行する機会を確保することができるようになる。すなわち、冷却水温の低下により間欠運転制御を実行する機会が失われてエンジンを停止させておくことのできる機会が少なくなり、燃料消費量が増大してしまうことを抑制することができる。
【0010】
要するに上記請求項1に記載の発明によれば、エンジンの暖機が完了する前に間欠運転制御を実行する場合であっても、暖房による要因から生じる過充電の発生を抑制することができるととともに、燃料消費量の増大を抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明にかかるハイブリッド車両の制御装置であるパワーマネジメントコントロールコンピュータと、その制御対象であるハイブリッドシステムとの関係を示す模式図。
【図2】バッテリ充電残量に応じた点火時期可変制御を実行するか否かを判断する処理の流れを示すフローチャート。
【図3】バッテリ充電残量に応じた点火時期可変制御におけるバッテリ充電残量と点火時期の遅角量との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置をハイブリッドシステムの出力制御を行うパワーマネジメントコントロールコンピュータとして具体化した一実施形態について、図1〜3を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように本実施形態にかかるハイブリッドシステム100は、エンジン110と2つのモータジェネレータ120,150とを動力分割機構130並びにリダクションギア140を介して連結することによって構成されている。
【0014】
なお、第1のモータジェネレータ120及び第2のモータジェネレータ150は、いずれも内部に永久磁石が埋め込まれたロータと三相コイルが巻回されたステータとを備える周知の同期発電電動機である。
【0015】
動力分割機構130は、外歯歯車のサンギア131と、このサンギア131を取り囲む内場歯車を備えるリングギア132と、サンギア131及びリングギア132の双方に噛合する複数のプラネタリギア133とを備える遊星歯車機構である。それぞれのプラネタリギア133はプラネタリキャリア134によって連結され、自転自在且つ公転自在に支持されている。プラネタリキャリア134は図1の右下に示されるようにダンパ112を介してエンジン110のクランクシャフト111に連結されている。サンギア131は第1のモータジェネレータ120に連結されている。リングギア132にはカウンターギア160が噛合されており、リングギア132の動力はこのカウンターギア160とファイナルギア170を介してディファレンシャル180に伝達される。
【0016】
また、図1の左下に示されるようにリングギア132には、リダクションギア140を介して第2のモータジェネレータ150が接続されている。リダクションギア140は動力分割機構130と同様にサンギア141と、複数のプラネタリギア143を備える遊星歯車機構である。しかし、リダクションギア140にあってはプラネタリキャリア144が固定されている。そのため、リダクションギア140のプラネタリギア143は自転自在であるものの公転不能になっている。なお、第2のモータジェネレータ150はサンギア141に連結されている。
【0017】
このように構成されたハイブリッドシステム100にあっては、プラネタリキャリア134から入力されるエンジン110からの動力が動力分割機構130を通じてサンギア131側とリングギア132側に分配されることになる。なお、リングギア132の歯数に対するサンギア131の歯数の比であるプラネタリ比は「ρ」であり、動力はこのプラネタリ比に応じて分配される。
【0018】
リングギア132は、動力分割機構130を通じて入力されるエンジン110の動力と、リダクションギア140を通じて入力される第2のモータジェネレータ150の動力とを統合してディファレンシャル180に伝達する。これにより、ハイブリッドシステム100から出力された動力は、ディファレンシャル180を介して左右の駆動輪190L,190Rに分配される。
【0019】
第1のモータジェネレータ120及び第2のモータジェネレータ150はインバータ210及びコンバータ220を介してバッテリ200に接続されている。インバータ210は第1のモータジェネレータ120と第2のモータジェネレータ150のそれぞれに対して6個の絶縁ゲートバイポーラトランジスタにより3相ブリッジ回路を構成している。これにより、インバータ210では、半導体スイッチング素子として絶縁ゲートバイポーラトランジスタをON・OFFすることにより、直流電流を三相交流電流に変換したり、三相交流電流を直流電流に変換したりすることができる。
【0020】
コンバータ220はリアクトルと2つの絶縁バイポーラトランジスタとにより構成されており、一方の絶縁バイポーラトランジスタをON・OFFすることにより、バッテリ200から供給される電力を昇圧してインバータ210に供給する。また、他方の絶縁バイポーラトランジスタをON・OFFすることにより、インバータ210から供給される電力を降圧してバッテリ200に供給することもできる。
【0021】
これにより、第1のモータジェネレータ120によって発電された交流電流は、インバータ210に伝達されるとともに同インバータ210によって直流電流に変換され、コンバータ220を通じて降圧された後にバッテリ200に充電される。
【0022】
また、エンジン110の始動時には、バッテリ200から供給される直流電流がコンバータ220を通じて昇圧された後にインバータ210によって交流電流に変換されて第1のモータジェネレータ120に供給される。
【0023】
第2のモータジェネレータ150も、第1のモータジェネレータ120と同じくインバータ210及びコンバータ220を介してバッテリ200に接続されている。そして、発進時や低速時、加速時にはバッテリ200から供給される直流電流がコンバータ220で昇圧された後にインバータ210によって交流電流に交換されて第2のモータジェネレータ150に供給される。
【0024】
第1のモータジェネレータ120は、エンジン110の始動時にはエンジン110をクランキングするスタータモータとして機能する一方、エンジン110の運転中にはエンジン110の動力を利用して発電を行う発電機として機能する。
【0025】
また、定常走行時や加速時には、第1のモータジェネレータ120によって発電された交流電流がインバータ210を介して第2のモータジェネレータ150に供給される。こうして供給された電流によって第2のモータジェネレータ150が駆動されると、その動力はリダクションギア140に伝達される。そして、リダクションギア140に伝達された動力がディファレンシャル180を介して駆動輪190L,190Rに伝達される。
【0026】
また、減速時には、駆動輪190L,190Rから伝達される動力により第2のモータジェネレータ150が駆動される。このとき、第2のモータジェネレータ150が発電機として機能し、発電することで、駆動輪190L,190Rから第2のモータジェネレータ150に伝達された動力が電力に変換される。こうして変換された電力は、インバータ210によって交流電流から直流電流に変換され、コンバータ220を通じて降圧された後にバッテリ200に充電される。
【0027】
すなわち、減速時には、運動エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリ200に蓄えることにより、エネルギーを回収するようにしている。
こうしたハイブリッドシステム100の制御は、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500から出力される制御信号に基づいて実行される。パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、ハイブリッドシステム100の各部を制御するための各種演算処理を実施する中央演算処理装置(CPU)、制御用のプログラムやデータが記憶された読み込み専用メモリ(ROM)、演算処理の結果などを一時的に記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)などを備えて構成されている。
【0028】
また、図1に示すように、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500には、バッテリ監視ユニット250、モータ制御ユニット300、エンジン制御ユニット400、エアコン制御ユニット600などが接続されている。
【0029】
バッテリ監視ユニット250には、バッテリ200とコンバータ220との間の電力ラインに設けられた電流センサ230からの電流値信号、バッテリ温度センサ240からのバッテリ温度信号などが入力される。バッテリ監視ユニット250は、こうしたセンサから入力されたバッテリ200の状態に関するデータを必要に応じてパワーマネジメントコントロールコンピュータ500に送信する。なお、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、バッテリ監視ユニット250から送信される電流センサ230の検出値の積算値に基づいてバッテリ200の充電残量を演算する。
【0030】
モータ制御ユニット300は、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500からの出力要求に従い、インバータ210とコンバータ220を制御し、第1のモータジェネレータ120及び第2のモータジェネレータ150を制御する。また、モータ制御ユニット300には第1のモータジェネレータ120の回転数Nm1を検出する回転センサ320と第2のモータジェネレータ150の回転数Nm2を検出する回転センサ350が接続されている。モータ制御ユニット300は、これら回転センサ320,350によって検出された回転数Nm1,Nm2の情報など、車両制御に必要な情報をパワーマネジメントコントロールコンピュータ500に送信する。
【0031】
エンジン制御ユニット400は、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500からの出力要求に従い、エンジン110における燃料噴射制御や、点火時期制御、吸入空気量制御などを行う。エンジン制御ユニット400には、吸入空気量を検出するエアフロメータ410や、クランクシャフト111の回転数であるエンジン回転数Neを検出するクランクポジションセンサ420が接続されている。また、スロットルバルブの開度を検出するスロットルポジションセンサ430や、エンジンの冷却水温であるエンジン水温THWを検出する水温センサ440なども接続されている。エンジン制御ユニット400は、必要に応じてこれらのセンサによって検出された情報をパワーマネジメントコントロールコンピュータ500に送信する。
【0032】
エアコン制御ユニット600は、車室内に温風や冷風を送風するエアコンユニット700を制御する。エアコンユニット700には、温風や冷風を車室内に送風するためのブロワファンと、送風される空気を除湿冷却するためのエバポレータと、エバポレータを通じて除湿冷却された冷風をエンジン110の冷却水の熱を利用して暖めるヒータコアとが設けられている。
【0033】
エアコンユニット700では、バッテリ200から供給される電力によって駆動されるブロワモータによってブロワファンが回転されることにより、外気又は車室内の内気が導入され、その空気がエバポレータ及びヒータコアを通過した後、車室内に送風される。
【0034】
エアコンユニット700のハウジング内におけるエバポレータとヒータコアとの間には、エアミックスダンパが設けられている。エアミックスダンパは、エバポレータを通じて除湿冷却された空気のうち、ヒータコアに導かれる空気の量を調整するようにその開度が制御される。これにより、エバポレータを通じて除湿冷却された空気のうち、ヒータコアに導かれて暖められる空気の比率を変更することができ、車室内に送風する空気の温度を調整することができる。また、ブロワモータの回転速度を変更することにより、車室内への温風又は冷風の送風量を変更することができる。
【0035】
これらエアミックスダンパの開度制御や吸い込み口切り替えダンパの切り替え制御、並びにブロワモータの回転速度制御は、エアコン制御ユニット600によって行われる。エアコン制御ユニット600には、車室内の温度を検出する内気センサ610、外気の温度を検出する外気センサ620、車室内に入射する日射量を検出する日射センサ630などの各種センサが接続されている。
【0036】
また、エアコン制御ユニット600には、エアコンユニット700の稼働を「ON」、「OFF」するエアコンスイッチ640、目標温度を設定する温度設定スイッチ650などが接続されている。
【0037】
エアコン制御ユニット600は、これら各種センサやスイッチから入力される信号に基づいて演算処理を実行する。例えば、車室内の温度を温度設定スイッチ650によって設定された目標温度に一致させるように、エアミックスダンパの開度を制御して車室内に送風する温風又は冷風の温度を調整するとともに、ブロワモータの回転速度を制御して車室内に送風する温風や冷風の風量を自動的に制御する。
【0038】
バッテリ監視ユニット250、モータ制御ユニット300、エンジン制御ユニット400、エアコン制御ユニット600の他にも、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500には、アクセルの操作量を検出するアクセルポジションセンサ510、シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサ520、車速を検出する車速センサ530などが接続されている。
【0039】
パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、アクセルの操作量と車速とに基づいてリングギア132に出力すべき要求トルクを算出し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギア132に出力されるように、エンジン110、第1のモータジェネレータ120、第2のモータジェネレータ150を制御する。
【0040】
例えば、エンジン110が出力する動力の一部を利用して第1のモータジェネレータ120を駆動し、そこで発電された電力を利用して第2のモータジェネレータ150を駆動することによってエンジン110の動力に第2のモータジェネレータ150の動力を加えて駆動輪190L,190Rを駆動する。こうしてエンジン110が出力する動力の一部を第1のモータジェネレータ120に分配するととともに、第2のモータジェネレータ150の動力によって駆動をアシストすることにより、エンジン回転数Neを調整し、エンジン110を効率のよい運転領域で運転させつつ、要求動力が得られるようにする。
【0041】
また、要求動力が大きい加速時などには、バッテリ200から第2のモータジェネレータ150に電力を供給し、第2のモータジェネレータ150によるアシスト量を増大させてより大きな動力を出力する。
【0042】
更に、バッテリ200の充電残量が少ないときには、エンジン110の運転量を増大させ、第1のモータジェネレータ120における発電量を増大させることにより、バッテリ200に電力を供給する。一方で、バッテリ200の充電残量が十分に確保されている場合には、エンジン110の運転を停止して要求動力に見合う動力を第2のモータジェネレータ150のみからリングギア132に出力するモータ運転も可能である。
【0043】
特に、本実施形態のパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジン110の暖機が完了する前であっても、ある程度までエンジン水温THWが上昇している場合には間欠運転制御を実行するようにして燃費の向上を図るようにしている。具体的には、暖機の完了を判定する第1の基準温度が「80℃」に設定されており、エンジン水温THWが「80℃」以上になった場合にはエンジン110の暖機が完了したと判断する。一方で、第1の基準温度よりも低い第2の基準温度として「60℃」を設定しており、エンジン110の暖機が完了する前であっても、エンジン水温THWが「60℃」以上になったときには車両が停止しているときや極めて低車速で走行しているときなどにエンジン110の運転を停止する間欠運転制御を実行する。
【0044】
ところで、暖機完了前の間欠運転制御中におけるエンジン水温THWは暖機完了後のエンジン水温THWと比較して低い温度である。そのため、エアコンユニット700による暖房によって冷却水の熱が利用されるとエンジン水温THWが低下し、エンジン水温THWが「60℃」未満になって間欠運転制御を行うことのできる範囲から外れてしまい、間欠運転制御を通じて停止されていたエンジン110が再び運転されるようになることがある。
【0045】
また、暖房に必要な熱を確保するためにエアコン制御ユニット600からパワーマネジメントコントロールコンピュータ500に対してエンジン110の運転が要求されることもある。こうして暖房による要因によってエンジン110が運転されるようになるとエンジン110を停止させておくことのできる機会が少なくなり、燃料消費量が増大してしまう。
【0046】
また、バッテリ200の充電残量が多いときにこうした暖房要求による運転が行われるとエンジン110の運転に伴って第1のモータジェネレータ120が駆動され、それに伴って発電された電力がバッテリ200に充電されるため、バッテリ200に過剰な電力が供給されて過充電に陥るおそれがある。
【0047】
そこで、本実施形態のパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジン110の暖機が完了するまでの間に暖房による要因のみによってエンジン110が運転された場合には、バッテリ200の充電残量に応じた点火時期可変制御を実行する用にしている。
【0048】
以下、バッテリ200の充電残量に応じた点火時期可変制御について図2及び図3を参照して説明する。
図2に示される処理は、バッテリ200の充電残量に応じた点火時期可変制御を実行するか否かを判断するための処理であり、この処理はパワーマネジメントコントロールコンピュータ500が稼働しているときに所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0049】
この処理が開始されるとパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、図2に示されるようにまずステップS100においてエンジン110が半暖機過程であるか否かを判定する。具体的には、今回パワーマネジメントコントロールコンピュータ500が稼働されてから少なくとも1度はエンジン水温THWが第2の基準温度である「60℃」以上になっており、現在のエンジン水温THWが第1の基準温度である「80℃」に達していない状態である場合には半暖機過程であると判断する。
【0050】
ステップS100において、エンジン110が半暖機過程であると判断された場合(ステップS100:YES)には、ステップS110へと進み、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は暖房が「ON」になっているか否かを判断する。
【0051】
ステップS110において暖房が「ON」になっている旨の判定がなされた場合(ステップS110:YES)には、ステップS120へと進み、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、暖房によるエンジン運転要求がなされているか否かを判定する。ここで暖房による運転要求がなされている場合とは、駆動要求によるエンジン運転要求やバッテリ200の充電残量の低下によるエンジン運転要求ではなく、暖房による要因だけでエンジン110の運転が必要になっている場合のことである。具体的には、暖房に必要な熱を確保するためにエンジン110の運転要求がなされている場合や、暖房によって熱が利用されることによりエンジン水温THWが「60℃」未満まで低下し、間欠運転制御が実行できなくなってエンジン110が運転される場合のことである。
【0052】
ステップS120において、暖房によるエンジン運転要求がなされている旨の判定がなされた場合(ステップS120:YES)には、ステップS130へと進み、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、バッテリ200の充電残量に応じた点火時期可変制御を実行する。
【0053】
ここでは、バッテリ200の充電残量に応じて点火時期の遅角量を変更し、図3に示されるようにバッテリ200の充電残量が多いときほど遅角量を大きくする。なお、本実施形態のハイブリッド車両では、充電残量が一定量未満の場合、例えば充電残量が60%未満の場合には遅角量を「0」にしている。そして、充電残量が60%以上の場合には充電残量が多いときほど遅角量が大きくなるようにしている。
【0054】
また、ここでは、混合気の燃焼エネルギーが最も効率的にトルクに変換される点火時期を基準として点火時期を遅角させるようにしている。すなわち、遅角量が大きくされるほど最も効率的にトルクが得られる点火時期から実際の点火時期が遠ざかることになる。
【0055】
こうしてステップS130において、バッテリ200の充電残量に応じた点火時期可変制御を実行するとパワーマネジメントコントロールコンピュータ500はこの処理を一旦終了する。
【0056】
一方で、ステップS100、S110、S120のいずれかにおいて否定判定がなされた場合(ステップS110:NO,ステップS110:NO,ステップS120:NO)にはステップS130はスキップされ、バッテリ200の充電残量に応じた点火時期可変制御が実行されずにこの処理はそのまま終了される。
【0057】
(作用)
以下、本実施形態の作用について説明する。
エンジン110の暖機が完了するまでの間に暖房による要因だけでエンジン110が運転された場合には、バッテリ200の充電残量に応じた点火時期可変制御が実行される。そのため、バッテリ200の充電残量が多いときほど点火時期が遅角されるようになる。点火時期を遅角させることにより、燃焼室内における混合気の燃焼によって生じるエネルギーのうち、熱として消費するエネルギーの割合が増大するようになる。そのため、エンジン110の冷却水の温度であるエンジン水温THWが上昇しやすくなる。また、エンジン110から出力されるパワーが小さくなり、エンジン110によって第1のモータジェネレータ120が駆動されることによって発生する電力も小さくなる。
【0058】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)エンジン110の暖機が完了するまでの間に暖房による要因だけでエンジン110が運転された場合に、バッテリ200の充電残量が多いときほど点火時期が遅角されるようになる。点火時期を遅角させることにより、燃焼室内における混合気の燃焼によって生じるエネルギーのうち、熱として消費するエネルギーの割合が増大するようになる。その結果、エンジン110から出力されるパワーが小さくなり、エンジン110によって第1のモータジェネレータ120が駆動されることによって発生する電力も小さくなる。そのため、点火時期を遅角させることにより、エンジン110の運転に伴ってバッテリ200に充電される電力を低減し、バッテリ200の過充電を抑制することができる。
【0059】
(2)燃焼室内における混合気の燃焼によって生じるエネルギーのうち、熱として消費するエネルギーの割合が増大するため、エンジン110の冷却水の温度が上昇しやすくなる。その結果、冷却水の熱が暖房に利用されるためエンジン水温THWが低下しやすい状況下であっても、エンジン水温THWを第2の基準温度以上にまで上昇させて間欠運転制御を実行する機会を確保することができるようになる。すなわち、エンジン水温THWの低下により間欠運転制御を実行する機会が失われてエンジン110を停止させておくことのできる機会が少なくなり、燃料消費量が増大してしまうことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0060】
100…ハイブリッドシステム、110…エンジン、111…クランクシャフト、112…ダンパ、120…第1のモータジェネレータ、130…動力分割機構、131…サンギア、132…リングギア、133…プラネタリギア、134…プラネタリキャリア、140…リダクションギア、141…サンギア、143…プラネタリギア、144…プラネタリキャリア、150…第2のモータジェネレータ、160…カウンターギア、170…ファイナルギア、180…ディファレンシャル、190L,190R…駆動輪、200…バッテリ、210…インバータ、220…コンバータ、230…バッテリ電流センサ、240…バッテリ温度センサ、250…バッテリ監視ユニット、300…モータ制御ユニット、320,350…回転センサ、400…エンジン制御ユニット、410…エアフロメータ、420…クランクポジションセンサ、430…スロットルポジションセンサ、440…水温センサ、500…パワーマネジメントコントロールコンピュータ、510…アクセルポジションセンサ、520…シフトポジションセンサ、530…車速センサ、600…エアコン制御ユニット、610…内気センサ、620…外気センサ、630…日射センサ、640…エアコンスイッチ、650…温度設定スイッチ、700…エアコンユニット。
【技術分野】
【0001】
この発明はハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているようにハイブリッド車両にあっては、そのときの状態に応じてエンジンの運転を停止したり再開したりする間欠運転制御を実行するものがある。こうした間欠運転制御を実行することにより、無駄なアイドリング運転を抑制し、燃料消費量を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010‐255504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンの暖機が完了する前であっても、ある程度までエンジンの冷却水の温度が上昇している場合には間欠運転制御を実行するようにして燃費の向上を図るようにすることも考えられる。この場合、暖機完了前の間欠運転制御中における冷却水温は比較的低い温度であるため、暖房によって冷却水の熱が利用されると冷却水温が低下し、冷却水温が間欠運転制御を行うことのできる範囲から外れてしまい、間欠運転制御を通じて停止されていたエンジンが再び運転されるようになることがある。こうして暖房による要因によってエンジンが運転されるようになるとエンジンを停止させておくことのできる機会が少なくなり、燃料消費量が増大してしまう。
【0005】
また、バッテリの充電残量が多いときにこうした暖房の要因によるエンジンの運転が行われるとエンジンの運転に伴ってモータジェネレータが駆動され、それに伴って発電された電力がバッテリに充電されるため、バッテリに過剰な電力が供給されて過充電に陥るおそれがある。
【0006】
この発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的はエンジンの暖機が完了する前に間欠運転制御を実行する場合であっても、暖房による要因から生じる過充電の発生を抑制するととともに、燃料消費量の増大を抑制することのできるハイブリッド車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、エンジンと、同エンジンの冷却水の熱を利用して空気を暖めて暖房に利用するエアコンユニットと、前記エンジンの動力によって発電を行う発電機と、前記発電機によって発電された電力を蓄えるバッテリとを備え、前記エンジンの冷却水の温度が、前記エンジンの暖機が完了したことを示す第1の基準温度よりも低い第2の基準温度以上であるときに、無駄なアイドリング運転を抑制するために前記エンジンの運転を停止させたり再度前記エンジンを運転させたりする間欠運転制御を実行するハイブリッド車両の制御装置であり、前記エンジンの暖機が完了するまでの間に暖房による要因だけで前記エンジンが運転された場合に、前記バッテリの充電残量が多いときほど点火時期を遅角させるバッテリ充電残量に応じた点火時期可変制御を実行するハイブリッド車両の制御装置である。
【0008】
上記構成によれば、エンジンの暖機が完了するまでの間に暖房による要因だけでエンジンが運転された場合に、バッテリの充電残量が多いときほど点火時期が遅角されるようになる。点火時期を遅角させることにより、燃焼室内における混合気の燃焼によって生じるエネルギーのうち、熱として消費するエネルギーの割合が増大するようになる。その結果、エンジンから出力されるパワーが小さくなり、エンジンによってモータジェネレータが駆動されることによって発生する電力も小さくなる。そのため、点火時期を遅角させることにより、エンジンの運転に伴ってバッテリに充電される電力を低減し、バッテリの過充電を抑制することができる。
【0009】
また、燃焼室内における混合気の燃焼によって生じるエネルギーのうち、熱として消費するエネルギーの割合が増大するため、エンジンの冷却水の温度が上昇しやすくなる。その結果、冷却水の熱が暖房に利用されて冷却水温が低下しやすい状況下であっても、冷却水の温度を第2の基準温度以上にまで上昇させて間欠運転制御を実行する機会を確保することができるようになる。すなわち、冷却水温の低下により間欠運転制御を実行する機会が失われてエンジンを停止させておくことのできる機会が少なくなり、燃料消費量が増大してしまうことを抑制することができる。
【0010】
要するに上記請求項1に記載の発明によれば、エンジンの暖機が完了する前に間欠運転制御を実行する場合であっても、暖房による要因から生じる過充電の発生を抑制することができるととともに、燃料消費量の増大を抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明にかかるハイブリッド車両の制御装置であるパワーマネジメントコントロールコンピュータと、その制御対象であるハイブリッドシステムとの関係を示す模式図。
【図2】バッテリ充電残量に応じた点火時期可変制御を実行するか否かを判断する処理の流れを示すフローチャート。
【図3】バッテリ充電残量に応じた点火時期可変制御におけるバッテリ充電残量と点火時期の遅角量との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置をハイブリッドシステムの出力制御を行うパワーマネジメントコントロールコンピュータとして具体化した一実施形態について、図1〜3を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように本実施形態にかかるハイブリッドシステム100は、エンジン110と2つのモータジェネレータ120,150とを動力分割機構130並びにリダクションギア140を介して連結することによって構成されている。
【0014】
なお、第1のモータジェネレータ120及び第2のモータジェネレータ150は、いずれも内部に永久磁石が埋め込まれたロータと三相コイルが巻回されたステータとを備える周知の同期発電電動機である。
【0015】
動力分割機構130は、外歯歯車のサンギア131と、このサンギア131を取り囲む内場歯車を備えるリングギア132と、サンギア131及びリングギア132の双方に噛合する複数のプラネタリギア133とを備える遊星歯車機構である。それぞれのプラネタリギア133はプラネタリキャリア134によって連結され、自転自在且つ公転自在に支持されている。プラネタリキャリア134は図1の右下に示されるようにダンパ112を介してエンジン110のクランクシャフト111に連結されている。サンギア131は第1のモータジェネレータ120に連結されている。リングギア132にはカウンターギア160が噛合されており、リングギア132の動力はこのカウンターギア160とファイナルギア170を介してディファレンシャル180に伝達される。
【0016】
また、図1の左下に示されるようにリングギア132には、リダクションギア140を介して第2のモータジェネレータ150が接続されている。リダクションギア140は動力分割機構130と同様にサンギア141と、複数のプラネタリギア143を備える遊星歯車機構である。しかし、リダクションギア140にあってはプラネタリキャリア144が固定されている。そのため、リダクションギア140のプラネタリギア143は自転自在であるものの公転不能になっている。なお、第2のモータジェネレータ150はサンギア141に連結されている。
【0017】
このように構成されたハイブリッドシステム100にあっては、プラネタリキャリア134から入力されるエンジン110からの動力が動力分割機構130を通じてサンギア131側とリングギア132側に分配されることになる。なお、リングギア132の歯数に対するサンギア131の歯数の比であるプラネタリ比は「ρ」であり、動力はこのプラネタリ比に応じて分配される。
【0018】
リングギア132は、動力分割機構130を通じて入力されるエンジン110の動力と、リダクションギア140を通じて入力される第2のモータジェネレータ150の動力とを統合してディファレンシャル180に伝達する。これにより、ハイブリッドシステム100から出力された動力は、ディファレンシャル180を介して左右の駆動輪190L,190Rに分配される。
【0019】
第1のモータジェネレータ120及び第2のモータジェネレータ150はインバータ210及びコンバータ220を介してバッテリ200に接続されている。インバータ210は第1のモータジェネレータ120と第2のモータジェネレータ150のそれぞれに対して6個の絶縁ゲートバイポーラトランジスタにより3相ブリッジ回路を構成している。これにより、インバータ210では、半導体スイッチング素子として絶縁ゲートバイポーラトランジスタをON・OFFすることにより、直流電流を三相交流電流に変換したり、三相交流電流を直流電流に変換したりすることができる。
【0020】
コンバータ220はリアクトルと2つの絶縁バイポーラトランジスタとにより構成されており、一方の絶縁バイポーラトランジスタをON・OFFすることにより、バッテリ200から供給される電力を昇圧してインバータ210に供給する。また、他方の絶縁バイポーラトランジスタをON・OFFすることにより、インバータ210から供給される電力を降圧してバッテリ200に供給することもできる。
【0021】
これにより、第1のモータジェネレータ120によって発電された交流電流は、インバータ210に伝達されるとともに同インバータ210によって直流電流に変換され、コンバータ220を通じて降圧された後にバッテリ200に充電される。
【0022】
また、エンジン110の始動時には、バッテリ200から供給される直流電流がコンバータ220を通じて昇圧された後にインバータ210によって交流電流に変換されて第1のモータジェネレータ120に供給される。
【0023】
第2のモータジェネレータ150も、第1のモータジェネレータ120と同じくインバータ210及びコンバータ220を介してバッテリ200に接続されている。そして、発進時や低速時、加速時にはバッテリ200から供給される直流電流がコンバータ220で昇圧された後にインバータ210によって交流電流に交換されて第2のモータジェネレータ150に供給される。
【0024】
第1のモータジェネレータ120は、エンジン110の始動時にはエンジン110をクランキングするスタータモータとして機能する一方、エンジン110の運転中にはエンジン110の動力を利用して発電を行う発電機として機能する。
【0025】
また、定常走行時や加速時には、第1のモータジェネレータ120によって発電された交流電流がインバータ210を介して第2のモータジェネレータ150に供給される。こうして供給された電流によって第2のモータジェネレータ150が駆動されると、その動力はリダクションギア140に伝達される。そして、リダクションギア140に伝達された動力がディファレンシャル180を介して駆動輪190L,190Rに伝達される。
【0026】
また、減速時には、駆動輪190L,190Rから伝達される動力により第2のモータジェネレータ150が駆動される。このとき、第2のモータジェネレータ150が発電機として機能し、発電することで、駆動輪190L,190Rから第2のモータジェネレータ150に伝達された動力が電力に変換される。こうして変換された電力は、インバータ210によって交流電流から直流電流に変換され、コンバータ220を通じて降圧された後にバッテリ200に充電される。
【0027】
すなわち、減速時には、運動エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリ200に蓄えることにより、エネルギーを回収するようにしている。
こうしたハイブリッドシステム100の制御は、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500から出力される制御信号に基づいて実行される。パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、ハイブリッドシステム100の各部を制御するための各種演算処理を実施する中央演算処理装置(CPU)、制御用のプログラムやデータが記憶された読み込み専用メモリ(ROM)、演算処理の結果などを一時的に記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)などを備えて構成されている。
【0028】
また、図1に示すように、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500には、バッテリ監視ユニット250、モータ制御ユニット300、エンジン制御ユニット400、エアコン制御ユニット600などが接続されている。
【0029】
バッテリ監視ユニット250には、バッテリ200とコンバータ220との間の電力ラインに設けられた電流センサ230からの電流値信号、バッテリ温度センサ240からのバッテリ温度信号などが入力される。バッテリ監視ユニット250は、こうしたセンサから入力されたバッテリ200の状態に関するデータを必要に応じてパワーマネジメントコントロールコンピュータ500に送信する。なお、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、バッテリ監視ユニット250から送信される電流センサ230の検出値の積算値に基づいてバッテリ200の充電残量を演算する。
【0030】
モータ制御ユニット300は、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500からの出力要求に従い、インバータ210とコンバータ220を制御し、第1のモータジェネレータ120及び第2のモータジェネレータ150を制御する。また、モータ制御ユニット300には第1のモータジェネレータ120の回転数Nm1を検出する回転センサ320と第2のモータジェネレータ150の回転数Nm2を検出する回転センサ350が接続されている。モータ制御ユニット300は、これら回転センサ320,350によって検出された回転数Nm1,Nm2の情報など、車両制御に必要な情報をパワーマネジメントコントロールコンピュータ500に送信する。
【0031】
エンジン制御ユニット400は、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500からの出力要求に従い、エンジン110における燃料噴射制御や、点火時期制御、吸入空気量制御などを行う。エンジン制御ユニット400には、吸入空気量を検出するエアフロメータ410や、クランクシャフト111の回転数であるエンジン回転数Neを検出するクランクポジションセンサ420が接続されている。また、スロットルバルブの開度を検出するスロットルポジションセンサ430や、エンジンの冷却水温であるエンジン水温THWを検出する水温センサ440なども接続されている。エンジン制御ユニット400は、必要に応じてこれらのセンサによって検出された情報をパワーマネジメントコントロールコンピュータ500に送信する。
【0032】
エアコン制御ユニット600は、車室内に温風や冷風を送風するエアコンユニット700を制御する。エアコンユニット700には、温風や冷風を車室内に送風するためのブロワファンと、送風される空気を除湿冷却するためのエバポレータと、エバポレータを通じて除湿冷却された冷風をエンジン110の冷却水の熱を利用して暖めるヒータコアとが設けられている。
【0033】
エアコンユニット700では、バッテリ200から供給される電力によって駆動されるブロワモータによってブロワファンが回転されることにより、外気又は車室内の内気が導入され、その空気がエバポレータ及びヒータコアを通過した後、車室内に送風される。
【0034】
エアコンユニット700のハウジング内におけるエバポレータとヒータコアとの間には、エアミックスダンパが設けられている。エアミックスダンパは、エバポレータを通じて除湿冷却された空気のうち、ヒータコアに導かれる空気の量を調整するようにその開度が制御される。これにより、エバポレータを通じて除湿冷却された空気のうち、ヒータコアに導かれて暖められる空気の比率を変更することができ、車室内に送風する空気の温度を調整することができる。また、ブロワモータの回転速度を変更することにより、車室内への温風又は冷風の送風量を変更することができる。
【0035】
これらエアミックスダンパの開度制御や吸い込み口切り替えダンパの切り替え制御、並びにブロワモータの回転速度制御は、エアコン制御ユニット600によって行われる。エアコン制御ユニット600には、車室内の温度を検出する内気センサ610、外気の温度を検出する外気センサ620、車室内に入射する日射量を検出する日射センサ630などの各種センサが接続されている。
【0036】
また、エアコン制御ユニット600には、エアコンユニット700の稼働を「ON」、「OFF」するエアコンスイッチ640、目標温度を設定する温度設定スイッチ650などが接続されている。
【0037】
エアコン制御ユニット600は、これら各種センサやスイッチから入力される信号に基づいて演算処理を実行する。例えば、車室内の温度を温度設定スイッチ650によって設定された目標温度に一致させるように、エアミックスダンパの開度を制御して車室内に送風する温風又は冷風の温度を調整するとともに、ブロワモータの回転速度を制御して車室内に送風する温風や冷風の風量を自動的に制御する。
【0038】
バッテリ監視ユニット250、モータ制御ユニット300、エンジン制御ユニット400、エアコン制御ユニット600の他にも、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500には、アクセルの操作量を検出するアクセルポジションセンサ510、シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサ520、車速を検出する車速センサ530などが接続されている。
【0039】
パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、アクセルの操作量と車速とに基づいてリングギア132に出力すべき要求トルクを算出し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギア132に出力されるように、エンジン110、第1のモータジェネレータ120、第2のモータジェネレータ150を制御する。
【0040】
例えば、エンジン110が出力する動力の一部を利用して第1のモータジェネレータ120を駆動し、そこで発電された電力を利用して第2のモータジェネレータ150を駆動することによってエンジン110の動力に第2のモータジェネレータ150の動力を加えて駆動輪190L,190Rを駆動する。こうしてエンジン110が出力する動力の一部を第1のモータジェネレータ120に分配するととともに、第2のモータジェネレータ150の動力によって駆動をアシストすることにより、エンジン回転数Neを調整し、エンジン110を効率のよい運転領域で運転させつつ、要求動力が得られるようにする。
【0041】
また、要求動力が大きい加速時などには、バッテリ200から第2のモータジェネレータ150に電力を供給し、第2のモータジェネレータ150によるアシスト量を増大させてより大きな動力を出力する。
【0042】
更に、バッテリ200の充電残量が少ないときには、エンジン110の運転量を増大させ、第1のモータジェネレータ120における発電量を増大させることにより、バッテリ200に電力を供給する。一方で、バッテリ200の充電残量が十分に確保されている場合には、エンジン110の運転を停止して要求動力に見合う動力を第2のモータジェネレータ150のみからリングギア132に出力するモータ運転も可能である。
【0043】
特に、本実施形態のパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジン110の暖機が完了する前であっても、ある程度までエンジン水温THWが上昇している場合には間欠運転制御を実行するようにして燃費の向上を図るようにしている。具体的には、暖機の完了を判定する第1の基準温度が「80℃」に設定されており、エンジン水温THWが「80℃」以上になった場合にはエンジン110の暖機が完了したと判断する。一方で、第1の基準温度よりも低い第2の基準温度として「60℃」を設定しており、エンジン110の暖機が完了する前であっても、エンジン水温THWが「60℃」以上になったときには車両が停止しているときや極めて低車速で走行しているときなどにエンジン110の運転を停止する間欠運転制御を実行する。
【0044】
ところで、暖機完了前の間欠運転制御中におけるエンジン水温THWは暖機完了後のエンジン水温THWと比較して低い温度である。そのため、エアコンユニット700による暖房によって冷却水の熱が利用されるとエンジン水温THWが低下し、エンジン水温THWが「60℃」未満になって間欠運転制御を行うことのできる範囲から外れてしまい、間欠運転制御を通じて停止されていたエンジン110が再び運転されるようになることがある。
【0045】
また、暖房に必要な熱を確保するためにエアコン制御ユニット600からパワーマネジメントコントロールコンピュータ500に対してエンジン110の運転が要求されることもある。こうして暖房による要因によってエンジン110が運転されるようになるとエンジン110を停止させておくことのできる機会が少なくなり、燃料消費量が増大してしまう。
【0046】
また、バッテリ200の充電残量が多いときにこうした暖房要求による運転が行われるとエンジン110の運転に伴って第1のモータジェネレータ120が駆動され、それに伴って発電された電力がバッテリ200に充電されるため、バッテリ200に過剰な電力が供給されて過充電に陥るおそれがある。
【0047】
そこで、本実施形態のパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジン110の暖機が完了するまでの間に暖房による要因のみによってエンジン110が運転された場合には、バッテリ200の充電残量に応じた点火時期可変制御を実行する用にしている。
【0048】
以下、バッテリ200の充電残量に応じた点火時期可変制御について図2及び図3を参照して説明する。
図2に示される処理は、バッテリ200の充電残量に応じた点火時期可変制御を実行するか否かを判断するための処理であり、この処理はパワーマネジメントコントロールコンピュータ500が稼働しているときに所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0049】
この処理が開始されるとパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、図2に示されるようにまずステップS100においてエンジン110が半暖機過程であるか否かを判定する。具体的には、今回パワーマネジメントコントロールコンピュータ500が稼働されてから少なくとも1度はエンジン水温THWが第2の基準温度である「60℃」以上になっており、現在のエンジン水温THWが第1の基準温度である「80℃」に達していない状態である場合には半暖機過程であると判断する。
【0050】
ステップS100において、エンジン110が半暖機過程であると判断された場合(ステップS100:YES)には、ステップS110へと進み、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は暖房が「ON」になっているか否かを判断する。
【0051】
ステップS110において暖房が「ON」になっている旨の判定がなされた場合(ステップS110:YES)には、ステップS120へと進み、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、暖房によるエンジン運転要求がなされているか否かを判定する。ここで暖房による運転要求がなされている場合とは、駆動要求によるエンジン運転要求やバッテリ200の充電残量の低下によるエンジン運転要求ではなく、暖房による要因だけでエンジン110の運転が必要になっている場合のことである。具体的には、暖房に必要な熱を確保するためにエンジン110の運転要求がなされている場合や、暖房によって熱が利用されることによりエンジン水温THWが「60℃」未満まで低下し、間欠運転制御が実行できなくなってエンジン110が運転される場合のことである。
【0052】
ステップS120において、暖房によるエンジン運転要求がなされている旨の判定がなされた場合(ステップS120:YES)には、ステップS130へと進み、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、バッテリ200の充電残量に応じた点火時期可変制御を実行する。
【0053】
ここでは、バッテリ200の充電残量に応じて点火時期の遅角量を変更し、図3に示されるようにバッテリ200の充電残量が多いときほど遅角量を大きくする。なお、本実施形態のハイブリッド車両では、充電残量が一定量未満の場合、例えば充電残量が60%未満の場合には遅角量を「0」にしている。そして、充電残量が60%以上の場合には充電残量が多いときほど遅角量が大きくなるようにしている。
【0054】
また、ここでは、混合気の燃焼エネルギーが最も効率的にトルクに変換される点火時期を基準として点火時期を遅角させるようにしている。すなわち、遅角量が大きくされるほど最も効率的にトルクが得られる点火時期から実際の点火時期が遠ざかることになる。
【0055】
こうしてステップS130において、バッテリ200の充電残量に応じた点火時期可変制御を実行するとパワーマネジメントコントロールコンピュータ500はこの処理を一旦終了する。
【0056】
一方で、ステップS100、S110、S120のいずれかにおいて否定判定がなされた場合(ステップS110:NO,ステップS110:NO,ステップS120:NO)にはステップS130はスキップされ、バッテリ200の充電残量に応じた点火時期可変制御が実行されずにこの処理はそのまま終了される。
【0057】
(作用)
以下、本実施形態の作用について説明する。
エンジン110の暖機が完了するまでの間に暖房による要因だけでエンジン110が運転された場合には、バッテリ200の充電残量に応じた点火時期可変制御が実行される。そのため、バッテリ200の充電残量が多いときほど点火時期が遅角されるようになる。点火時期を遅角させることにより、燃焼室内における混合気の燃焼によって生じるエネルギーのうち、熱として消費するエネルギーの割合が増大するようになる。そのため、エンジン110の冷却水の温度であるエンジン水温THWが上昇しやすくなる。また、エンジン110から出力されるパワーが小さくなり、エンジン110によって第1のモータジェネレータ120が駆動されることによって発生する電力も小さくなる。
【0058】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)エンジン110の暖機が完了するまでの間に暖房による要因だけでエンジン110が運転された場合に、バッテリ200の充電残量が多いときほど点火時期が遅角されるようになる。点火時期を遅角させることにより、燃焼室内における混合気の燃焼によって生じるエネルギーのうち、熱として消費するエネルギーの割合が増大するようになる。その結果、エンジン110から出力されるパワーが小さくなり、エンジン110によって第1のモータジェネレータ120が駆動されることによって発生する電力も小さくなる。そのため、点火時期を遅角させることにより、エンジン110の運転に伴ってバッテリ200に充電される電力を低減し、バッテリ200の過充電を抑制することができる。
【0059】
(2)燃焼室内における混合気の燃焼によって生じるエネルギーのうち、熱として消費するエネルギーの割合が増大するため、エンジン110の冷却水の温度が上昇しやすくなる。その結果、冷却水の熱が暖房に利用されるためエンジン水温THWが低下しやすい状況下であっても、エンジン水温THWを第2の基準温度以上にまで上昇させて間欠運転制御を実行する機会を確保することができるようになる。すなわち、エンジン水温THWの低下により間欠運転制御を実行する機会が失われてエンジン110を停止させておくことのできる機会が少なくなり、燃料消費量が増大してしまうことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0060】
100…ハイブリッドシステム、110…エンジン、111…クランクシャフト、112…ダンパ、120…第1のモータジェネレータ、130…動力分割機構、131…サンギア、132…リングギア、133…プラネタリギア、134…プラネタリキャリア、140…リダクションギア、141…サンギア、143…プラネタリギア、144…プラネタリキャリア、150…第2のモータジェネレータ、160…カウンターギア、170…ファイナルギア、180…ディファレンシャル、190L,190R…駆動輪、200…バッテリ、210…インバータ、220…コンバータ、230…バッテリ電流センサ、240…バッテリ温度センサ、250…バッテリ監視ユニット、300…モータ制御ユニット、320,350…回転センサ、400…エンジン制御ユニット、410…エアフロメータ、420…クランクポジションセンサ、430…スロットルポジションセンサ、440…水温センサ、500…パワーマネジメントコントロールコンピュータ、510…アクセルポジションセンサ、520…シフトポジションセンサ、530…車速センサ、600…エアコン制御ユニット、610…内気センサ、620…外気センサ、630…日射センサ、640…エアコンスイッチ、650…温度設定スイッチ、700…エアコンユニット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、同エンジンの冷却水の熱を利用して空気を暖めて暖房に利用するエアコンユニットと、前記エンジンの動力によって発電を行う発電機と、前記発電機によって発電された電力を蓄えるバッテリとを備え、前記エンジンの冷却水の温度が、前記エンジンの暖機が完了したことを示す第1の基準温度よりも低い第2の基準温度以上であるときに、無駄なアイドリング運転を抑制するために前記エンジンの運転を停止させたり再度前記エンジンを運転させたりする間欠運転制御を実行するハイブリッド車両の制御装置であり、
前記エンジンの暖機が完了するまでの間に暖房による要因だけで前記エンジンが運転された場合に、前記バッテリの充電残量が多いときほど点火時期を遅角させるバッテリ充電残量に応じた点火時期可変制御を実行するハイブリッド車両の制御装置。
【請求項1】
エンジンと、同エンジンの冷却水の熱を利用して空気を暖めて暖房に利用するエアコンユニットと、前記エンジンの動力によって発電を行う発電機と、前記発電機によって発電された電力を蓄えるバッテリとを備え、前記エンジンの冷却水の温度が、前記エンジンの暖機が完了したことを示す第1の基準温度よりも低い第2の基準温度以上であるときに、無駄なアイドリング運転を抑制するために前記エンジンの運転を停止させたり再度前記エンジンを運転させたりする間欠運転制御を実行するハイブリッド車両の制御装置であり、
前記エンジンの暖機が完了するまでの間に暖房による要因だけで前記エンジンが運転された場合に、前記バッテリの充電残量が多いときほど点火時期を遅角させるバッテリ充電残量に応じた点火時期可変制御を実行するハイブリッド車両の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2013−24204(P2013−24204A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162256(P2011−162256)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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