ハイブリッド車両の制御装置
【課題】システム要求によるエンジン始動シーンにおいて、エンジン始動音により乗員に与える違和感を低減すること。
【解決手段】FFハイブリッド車両の制御装置は、エンジン1と、スターターモーター6と、モーター/ジェネレータ3と、統合コントローラと、を備える。スターターモーター6は、エンジン1を始動させる。モーター/ジェネレータ3は、エンジン1と左右前輪12,12に対しモータートルクが伝達可能である。統合コントローラは、モーター/ジェネレータ3を駆動源とするEVモード選択中、駆動力要求があるとき、スターターモーター6を用いてエンジン始動を行い、システム要求があるとき、モーター/ジェネレータ3を用いてエンジン始動を行う始動モーター使い分け制御を行う。
【解決手段】FFハイブリッド車両の制御装置は、エンジン1と、スターターモーター6と、モーター/ジェネレータ3と、統合コントローラと、を備える。スターターモーター6は、エンジン1を始動させる。モーター/ジェネレータ3は、エンジン1と左右前輪12,12に対しモータートルクが伝達可能である。統合コントローラは、モーター/ジェネレータ3を駆動源とするEVモード選択中、駆動力要求があるとき、スターターモーター6を用いてエンジン始動を行い、システム要求があるとき、モーター/ジェネレータ3を用いてエンジン始動を行う始動モーター使い分け制御を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを始動するスターターモーターを備えたハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動モーターを駆動源とするEVモードでの走行中、常にスターターモーターを用いてエンジンを始動するハイブリッド車両の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−82261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ハイブリッド車両の制御装置にあっては、エンジンを始動する際に常にスターターモーターを用いている。このため、暗騒音(=環境騒音)が小さい走行状態においてのエンジン始動時、スターターモーターの飛び込み音や駆動音が乗員に聞こえる。特に、運転者の意図に反してエンジンを始動するシステム要求によるエンジン始動シーンが発生すると、乗員に違和感を与えてしまう、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、システム要求によるエンジン始動シーンにおいて、エンジン始動音により乗員に与える違和感を低減することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のハイブリッド車両の制御装置は、エンジンと、スターターモーターと、駆動モーターと、始動モーター使い分け制御手段と、を備える手段とした。
前記スターターモーターは、前記エンジンを始動させる。
前記駆動モーターは、前記エンジンと駆動輪に対しモータートルクが伝達可能である。
前記始動モーター使い分け制御手段は、前記駆動モーターを駆動源とするモード選択中、駆動力要求があるとき、前記スターターモーターを用いてエンジン始動を行い、システム要求があるとき、前記駆動モーターを用いてエンジン始動を行う。
【発明の効果】
【0007】
よって、駆動モーターを駆動源とするモード選択中、駆動力要求があるとき、スターターモーターを用いてエンジン始動が行われる。
したがって、暗騒音が小さい状態ではエンジン始動音が運転者に到達するが、運転者による駆動力要求の意図を、アクセル踏み込み操作によりあらわし、アクセル踏み込み操作に対応したエンジン始動音となるため、運転者にとって違和感とならない。そして、駆動力要求があるとき、エンジン始動をスターターモーターに分担させることにより、駆動モーターによるトルクを駆動輪への走行トルクとして使うことができ、駆動モーターを駆動源とするモードによる走行可能領域の拡大が図られる。
一方、駆動モーターを駆動源とするモード選択中、システム要求があるとき、駆動モーターを用いてエンジン始動が行われる。
システム要求によるエンジン始動としては、例えば、バッテリー充電容量の低下、エアコン負荷の増加、駆動力以外の消費電力の増加、等のシーンが想定される。つまり、システム要求によるエンジン始動は、どのタイミングでエンジン始動が行われるのか運転者にとって予測できないものとなる。したがって、システム要求によるエンジン始動の場合は、スターターモーターによるエンジン始動に比べて音振性能が良い駆動モーターによるエンジン始動とすることで、エンジン始動音により乗員に与える違和感が低減される。
この結果、システム要求によるエンジン始動シーンにおいて、エンジン始動音により乗員に与える違和感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の制御装置が適用されたFFハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【図2】実施例1の制御装置が適用されたFFハイブリッド車両の統合コントローラで実行される始動モーター使い分け制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】実施例1の始動モーター使い分け制御処理で用いられるエンジン始動モーターの選択領域の一例(EV-HEV領域マップに重ね合わせて割り付けた例)を示す始動モーター選択領域図である。
【図4】スターターモーターを用いたエンジン始動時と駆動モーターを用いたエンジン始動時とでの音振性能差を示す音振性能比較特性図である。
【図5】実施例1の始動モーター使い分け制御処理でシステム要求によるエンジン始動時における始動モーター領域分けの考え方を示す車速−音圧レベル特性図である。
【図6】実施例1の始動モーター使い分け制御処理によるスターターモーターと駆動モーターの具体的な使い分けパターンを示す使い分けパターン図である。
【図7】実施例1の制御装置が搭載されたFFハイブリッド車両でEV走行中のアクセル踏み込みによる駆動力要求によりエンジン始動するときのアクセル開度・モータートルク・エンジントルク・モーター回転数・プライマリ回転数・エンジン回転数・第1クラッチ油圧・第2クラッチ油圧・車速・駆動力・スターター起動信号の各特性を示すタイムチャートである。
【図8】実施例1の制御装置が搭載されたFFハイブリッド車両でEV走行中の車速上昇による駆動力要求によりエンジン始動するときのアクセル開度・モータートルク・エンジントルク・モーター回転数・プライマリ回転数・エンジン回転数・第1クラッチ油圧・第2クラッチ油圧・車速・駆動力・スターター起動信号の各特性を示すタイムチャートである。
【図9】実施例1の制御装置が搭載されたFFハイブリッド車両でHEV走行中のチェンジオブマインド操作による駆動力要求によりエンジン始動するときのアクセル開度・モータートルク・エンジントルク・モーター回転数・プライマリ回転数・エンジン回転数・第1クラッチ油圧・第2クラッチ油圧・車速・駆動力・スターター起動信号の各特性を示すタイムチャートである。
【図10】実施例1の制御装置が搭載されたFFハイブリッド車両でEV走行中にシステム要求によりエンジン始動するときのアクセル開度・モータートルク・エンジントルク・モーター回転数・プライマリ回転数・エンジン回転数・第1クラッチ油圧・第2クラッチ油圧・車速・駆動力・スターター起動信号の各特性を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1のFFハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)の制御装置の構成を、「全体システム構成」、「始動モーター使い分け制御構成」に分けて説明する。
【0011】
[全体システム構成]
図1は、実施例1の制御装置が適用されたFFハイブリッド車両を示す全体システム図である。以下、図1に基づいて、FFハイブリッド車両の全体システム構成を説明する。
【0012】
FFハイブリッド車両は、図1に示すように、エンジン1と、第1クラッチ2と、モーター/ジェネレータ3(駆動モーター)と、第2クラッチ4と、ベルト式無段変速機5と、スターターモーター6と、低電圧バッテリー7と、始動時リレー回路8と、DC/DCコンバーター9と、高電圧バッテリー10と、インバーター11と、を備える。なお、12,12は、前輪(駆動輪)であり、13,13は、後輪である。
【0013】
前記エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、エンジンコントローラ20からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御やスロットルバルブのバルブ開度制御や燃料カット制御、等が行われる。
【0014】
前記第1クラッチ2は、エンジン1とモーター/ジェネレータ3の間に介装されたクラッチである。CVTコントローラ21からの制御指令に基づき図外の油圧ユニットにより作り出された第1クラッチ油圧(CL1油圧)により、締結〜解放が制御される。
【0015】
前記モーター/ジェネレータ3は、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モーター/ジェネレータである。モーターコントローラ22からの制御指令に基づいて、インバーター11により作り出された三相交流を印加することにより駆動する。モーター/ジェネレータ3は、インバーター11を介して高電圧バッテリー10からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作する(力行)。また、モーター/ジェネレータ3のロータがエンジン1や左右前輪12,12から回転エネルギを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、インバーター11を介して高電圧バッテリー10を充電する(回生)。
【0016】
前記第2クラッチ4は、モーター/ジェネレータ3と左右前輪12,12の間のうち、モーター軸と変速機入力軸の間に介装されたクラッチである。第2クラッチ4は、第1クラッチ2と同様に、CVTコントローラ21からの制御指令に基づき図外の油圧ユニットにより作り出された第2クラッチ油圧(CL2油圧)により、締結・スリップ締結・解放が制御される。
【0017】
前記ベルト式無段変速機5は、第2クラッチ4の下流位置に配置され、車速VSPやアクセル開度APOに応じて目標入力回転数を決め、無段階による変速比を自動的に変更する。このベルト式無段変速機5は、CVTコントローラ21からの制御指令に基づき図外の油圧ユニットにより作り出されたプライマリ油圧とセカンダリ油圧により、2つのプーリーへのベルト巻き付け径比である変速比が制御される。ベルト式無段変速機5の変速機出力軸には、図外のディファレンシャルが連結され、ディファレンシャルから左右のドライブシャフトを介してそれぞれに左右前輪12,12が設けられている。
【0018】
前記スターターモーター6は、エンジン1を始動する専用モーターであり、モーターコントローラ22からの制御指令に基づいて始動時リレー回路8をオンにしたとき、低電圧バッテリー7から電力供給を受けて駆動する直流モーターである。なお、低電圧バッテリー7は、高電圧バッテリー10からの直流高電圧を、DC/DCコンバーター9により直流低電圧に変換することで充電される。
【0019】
前記インバーター11は、モーターコントローラ22からの制御指令に基づいて、力行時、高電圧バッテリー10からの直流を三相交流に変換してモーター/ジェネレータ3を駆動する。また、回生時、モーター/ジェネレータ3からの三相交流を直流に変換し、高電圧バッテリー10へ充電する。
【0020】
前記FFハイブリッド車両は、駆動形態の違いによる走行モードとして、電気自動車走行モード(以下、「EVモード」という。)と、ハイブリッド車走行モード(以下、「HEVモード」という。)と、を有する。
【0021】
前記「EVモード」は、第1クラッチCL1を解放状態とし、モーター/ジェネレータ3を駆動源として走行するモードであり、モーター走行モード・回生走行モードを有し、何れかのモードにより走行する。この「EVモード」は、駆動力要求が低く、バッテリーSOCが確保されているときに選択される。
【0022】
前記「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態とし、エンジンEngとモーター/ジェネレータ3を駆動源として走行するモードであり、モーターアシスト走行モード・発電走行モード・エンジン走行モードを有し、何れかのモードにより走行する。この「HEVモード」は、駆動力要求が高いとき、あるいは、バッテリーSOCが不足するようなときに選択される。
【0023】
FFハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ20と、CVTコントローラ21と、モーターコントローラ22と、統合コントローラ23と、を有して構成されている。なお、各コントローラ20,21,22と統合コントローラ23とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線24を介して接続されている。
【0024】
前記エンジンコントローラ20は、エンジン回転数センサ27からのエンジン回転数情報と、統合コントローラ23からの目標エンジントルク指令と、その他の必要情報を入力する。そして、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、エンジンEngのスロットルバルブアクチュエータ等へ出力する。
【0025】
前記CVTコントローラ21は、アクセル開度センサ25と、車速センサ26と、他のセンサ類28等からの情報を入力する。そして、Dレンジを選択しての走行時、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる目標入力回転数をシフトマップにより検索し、検索された目標入力回転数(変速比)を得る制御指令を、ベルト式無段変速機5に設けられた図外の油圧ユニットに出力する。この変速比制御に加え、第1クラッチ2と第2クラッチ4のクラッチ油圧制御を行う。
【0026】
前記モーターコントローラ22は、ロータ回転位置情報と、統合コントローラ23からの目標MGトルク指令および目標MG回転数指令と、他の必要情報を入力する。そして、モーター/ジェネレータ3のモーター動作点(Nm,Tm)を制御する指令をインバーター3へ出力する。そして、モーターコントローラ2は、エンジン始動時に始動時リレー回路8に対してスターター起動信号(ON)を出すスターターモーター6の駆動制御も併せて行う。
【0027】
前記統合コントローラ23は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うものである。この統合コントローラ10には、アクセル開度センサ25、車速センサ26、エンジン回転数センサ27、他のセンサ・スイッチ類28からの必要情報が直接、あるいは、CAN通信線24を介して入力される。
【0028】
[始動モーター使い分け制御構成]
図2は、実施例1の制御装置が適用されたFFハイブリッド車両の統合コントローラ23で実行される始動モーター使い分け制御処理の流れを示すフローチャートである(始動モーター使い分け制御手段)。以下、始動モーター使い分け制御構成をあらわす図2の各ステップについて説明する。
【0029】
ステップS1では、「EVモード」を選択しての走行が許可されているか否かを判断する。YES(EV走行許可)の場合はステップS2へ進み、NO(EV走行不許可)の場合はエンドへ進む。
【0030】
ステップS2では、ステップS1でのEV走行許可であるとの判断に続き、システム要求によるエンジン始動要求有りか否かが判断される。YES(システム要求による始動要求有り)の場合はステップS3へ進み、NO(システム要求による始動要求無し)の場合はステップS6へ進む。
ここで、システム要求始動条件を列挙すると、路面勾配、エアコン条件、エンジンフード、エンジン水温、大気圧、ブレーキ負圧、変速機作動油温、CL1フェーシング推定温度、強電バッテリーSOC、強電バッテリー出力可能電力、モーター発生可能トルク、駆動力以外の消費電力、フロントデフォッガースイッチ、リアデフォッガースイッチ、三元触媒の酸素濃度、等がある。
【0031】
ステップS3では、ステップS2でのシステム要求による始動要求有りとの判断に続き、車速センサ26により検出された車速は、閾値以上であるか否かを判断する。YES(車速≧閾値)の場合はステップS4へ進み、NO(車速<閾値)の場合はステップS5へ進む。
ここで、車速の閾値は、図3に示すように、車速の上昇に応じて大きくなる暗騒音に対し、スターターモーター6を用いたエンジン始動時の起動音が目立たないと評価される車速値VSP1に設定される。
【0032】
ステップS4では、ステップS3での車速≧閾値であるとの判断に続き、スターターモーター6を用いてエンジン始動を行い、ステップS9へ進む。
【0033】
ステップS5では、ステップS3での車速<閾値であるとの判断に続き、モーター/ジェネレータ3を用いてエンジン始動を行い、ステップS9へ進む。
【0034】
ステップS6では、ステップS2でのシステム要求による始動要求無しとの判断に続き、アクセル開度センサ25により検出されたアクセル開度APOは、所定値以上であるか否かを判断する。YES(APO≧所定値)の場合はステップS7へ進み、NO(APO<所定値)の場合はステップS8へ進む。
ここで、アクセル開度APOの所定値は、図3に示すように、モーター/ジェネレータ3を駆動源とする「EVモード」可能領域から、エンジン1とモーター/ジェネレータ3を駆動源とする「HEVモード」選択領域への移行を判定するアクセル開度値APO1に設定している。つまり、車速VSPが所定車速VSP2までは一定のアクセル開度値であるが、車速VSPが所定車速VSP2を超えると、車速VSPの上昇にしたがって徐々に小さくなる値にて与えられる。
【0035】
ステップS7では、ステップS6でのAPO≧所定値であるとの判断、つまり、駆動力要求によるエンジン始動であるとの判断に続き、スターターモーター6を用いてエンジン始動を行い、ステップS9へ進む。
【0036】
ステップS8では、ステップS6でのAPO<所定値であるとの判断、つまり、システム始動要求も駆動力始動要求もないとの判断に続き、「EVモード」を選択しての走行を維持し、エンドへ進む。
【0037】
ステップS9では、ステップS4,S5,S7,S14,S15のいずれかによるエンジン始動、あるいは、ステップS10でのEV走行不許可であるとの判断に続き、「HEVモード」を選択しての走行を許可し、ステップS10へ進む。
【0038】
ステップS10では、ステップS9でのHEV走行許可に続き、「EVモード」を選択しての走行が許可されているか否かを判断する。YES(EV走行許可)の場合はステップS11へ進み、NO(EV走行不許可)の場合はステップS9へ戻る。
【0039】
ステップS11では、ステップS10でのEV走行許可であるとの判断に続き、エンジン停止のためのシーケンス制御を実行し、ステップS12へ進む。
【0040】
ステップS12では、ステップS11でのエンジン停止シーケンスに続き、アクセル開度センサ25により検出されたアクセル開度APOは、所定値以上であるか否かを判断する。YES(APO≧所定値)の場合はステップS13へ進み、NO(APO<所定値)の場合はステップS16へ進む。
このステップS12でのアクセル開度APOの所定値は、ステップS6と同様とする。
【0041】
ステップS13では、ステップS12でのAPO≧所定値であるとの判断に続き、エンジン回転数センサ27により検出されたエンジン回転数Neは、Ne>0であるか否かを判断する。YES(Ne>0)の場合はステップS14へ進み、NO(Ne=0:エンジン停止)の場合はステップS15へ進む。
【0042】
ステップS14では、ステップS13でのNe>0であるとの判断に続き、モーター/ジェネレータ3を用いてエンジン始動を行い、ステップS9へ進む。
【0043】
ステップS15では、ステップS13でのNe=0であるとの判断に続き、スターターモーター6を用いてエンジン始動を行い、ステップS9へ進む。
【0044】
ステップS16では、ステップS12でのAPO<所定値であるとの判断に続き、エンジン1を停止し、エンドへ進む。
【0045】
次に、作用を説明する。
まず、「比較例の課題」の説明を行う。続いて、実施例1のFFハイブリッド車両の制御装置における作用を、「エンジン始動モーターの使い分け作用」、「システム要求によるエンジン始動作用」、「駆動力要求によるエンジン始動作用」、「チェンジオブマインドによるエンジン始動作用」、「代表例によるエンジン始動作用」に分けて説明する。
【0046】
[比較例の課題]
ハイブリッド車両において、「EVモード」での走行中にエンジンを始動する際、常にスターターモーターを用いてエンジン始動を行うものを比較例とする。
【0047】
この比較例の場合、暗騒音(=環境騒音)が小さい走行状態においてのエンジン始動時に、スターターモーターの飛び込み音や駆動音が乗員に聞こえる。特に、運転者の意図に反してエンジンを始動するシステム要求によるエンジン始動シーンが発生すると、乗員に違和感を与えてしまう。
【0048】
システム要求によるエンジン始動シーンとしては、例えば、バッテリー充電容量の低下、エアコン負荷の増加、駆動力以外の消費電力の増加、等のシーンが想定される。このようなシステム要求始動シーンであって、アクセルペダルが一定で保たれている条件のときにスターターモーターによりエンジンを始動すると、飛び込み音や駆動音が乗員に聞こえ、違和感を与える。また、上記システム要求始動シーンであって、車外騒音の少ないアイドリング中にスターターモーターによりエンジンを始動すると、同様に乗員に違和感を与える。
【0049】
これらの違和感を解消しようとすると、「EVモード」による走行から「HEVモード」による走行への移行する条件が、例えば、アクセルペダルが一定で保たれていなく、かつ、アイドリング中でないという条件成立時に限定されてしまう。この結果、スターターモーターによるエンジン始動で達成しようとする燃費向上効果が、目論見よりも小さくなってしまう。
【0050】
さらに、常にスターターモーターによりエンジン始動を行うため、スターターモーターの使用頻度が高くなり、車両寿命に達する前のライフ中に耐久回数が設定値を超えてしまい、ライフ中にスターターモーターの交換を強いられてしまう。
【0051】
[エンジン始動モーターの使い分け作用]
エンジン始動モーターとして、スターターモーターと駆動モーターを使い分ける際、2つのモーターをどのような条件で使い分けるかという指標を明確にしておくことが必要である。以下、図3〜図6に基づき、これを反映するエンジン始動モーターの使い分け作用を説明する。
【0052】
まず、スターターモーターによるエンジン始動の場合と、駆動モーターによるエンジン始動の場合と、での音振性能を比較すると、図4に示すように、スターター始動>モーター始動の関係にあり、スターター始動とモーター始動の間には、4dBの差がある。
【0053】
車速の上昇に応じて暗騒音は上昇するが、この暗騒音以下にエンジン始動音を抑えることができれば、エンジン始動の場合においても違和感に対する評点が高くなる。例えば、図5に示すように、評点を違和感が目立たない3.5とした場合、暗騒音が小さい車速がVSP1未満の領域では、評点3.5を達成するにはモーター始動領域にする必要がある。しかし、暗騒音が大きい車速がVSP1以上の領域では、スターター始動領域にしても評点3.5が達成される。
【0054】
まず、図4の音振性能に比較に基づき、意図しないエンジン始動があるシステム要求によるエンジン始動の場合には、違和感を与えないという観点から駆動モーターを使ってのエンジン始動を行う。そして、意図的にエンジン始動する駆動力要求によるエンジン始動の場合には、エンジン始動音が騒音として気にならないという観点から、スターターモーターを使ってのエンジン始動を行う。これを基本的なエンジン始動モーターの使い分け指標とする。
【0055】
そして、システム要求によりエンジン始動する場合には、常に駆動モーターを使ってのエンジン始動を行うのではなく、図5の騒音評価に基づき、低車速域では駆動モーターを使うものの、暗騒音が大きな高車速域ではスターターモーターを使う。このとき、低車速域と高車速域を分ける車速VSPの閾値は、車速の上昇に応じて大きくなる暗騒音に対し、スターターモーター6を用いたエンジン始動時の起動音が目立たないと評価される車速値VSP1に設定する(図3,図5)。
【0056】
また、駆動力要求によりエンジン始動する場合のアクセル開度APOの所定値は、図3に示すように、モーター/ジェネレータ3を駆動源とする「EVモード」可能領域から、エンジン1とモーター/ジェネレータ3を駆動源とする「HEVモード」選択領域への移行を判定するアクセル開度値APO1に設定する。このとき、例えば、モード領域をマップで表す場合、常に駆動モーターによりエンジン始動する場合の「EVモード」可能領域に比べ、「EVモード」可能領域を拡大しておく。その理由は、「EVモード」での駆動源である駆動モーターにおいて、エンジン始動分のモータートルクを残す必要がないことによる。
以下、エンジン始動モーターのシーン毎による具体的な使い分けパターンを、図6により説明する。
【0057】
まず、P,N,Dレンジで停止している場合には、暗騒音が小さい。このため、起動要求であってもシステム要求であっても、駆動モーターを使ってエンジン始動を行う。
【0058】
次に、Dレンジでアクセル足離し走行中のうち、減速(下り・平地・登り)、コースト減速(平地・登り)、コースト加速(下り)、オートアップ変速の場合には、暗騒音が小さい。このため、システム要求であってもEV走行領域からの逸脱(駆動力要求)であっても、駆動モーターを使ってエンジン始動を行う。
【0059】
次に、Dレンジでアクセル開度一定による走行中のうち、一定速(平地・登り)、加速(下り・平地・登り)、オートアップ変速、減速(登り)の場合には、暗騒音が大きい。このため、システム要求であってもEV走行領域からの逸脱(駆動力要求)であっても、スターターモーターを使ってエンジン始動を行う。
【0060】
次に、Dレンジでアクセル開速度小(ΔAPO小)による走行中のうち、加速(平地・登り)、減速(登り)、これらのオートアップ変速の場合には、暗騒音が大きい。このため、システム要求であっても駆動力要求であってもEV走行領域からの逸脱であっても、スターターモーターを使ってエンジン始動を行う。但し、加速(下り)、オートアップ変速の場合には、暗騒音が小さい。このため、システム要求のとき、駆動モーターを使ってエンジン始動を行う。
【0061】
次に、Dレンジでアクセル開速度大(ΔAPO大)による走行中のうち、加速(下り・平地・登り)、オートアップ変速、踏込みダウン変速の場合には、暗騒音が大きい。このため、駆動力要求時にスターターモーターを使ってエンジン始動を行う。
【0062】
[システム要求によるエンジン始動作用]
上記のように、システム要求によりエンジン始動するときは、違和感を抑えることが必要であるため、基本的に駆動モーターによるエンジン始動とされる。以下、図2に基づき、これを反映するシステム要求によるエンジン始動作用を説明する。
【0063】
EV走行許可時であって、システム要求による始動要求があった場合で、車速VSPが閾値以上のときには、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4へと進む。ステップS4では、スターターモーター6を用いてエンジン始動が行われる。
【0064】
一方、EV走行許可時であって、システム要求による始動要求があった場合で、車速VSPが閾値未満のときには、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS5へと進む。ステップS5では、モーター/ジェネレータ3を用いてエンジン始動が行われる。
【0065】
このように、システム要求によるエンジン始動としては、例えば、強電バッテリー10のバッテリーSOCの低下、エアコン負荷の増加、駆動力以外の消費電力の増加、等のシーンが想定される。つまり、システム要求によるエンジン始動は、どのタイミングでエンジン始動が行われるのか運転者にとって予測できないものとなる。
【0066】
したがって、システム要求によるエンジン始動の場合であって、車速VSPが閾値VS1以上のときには、不意にエンジン始動音が発せられても暗騒音が大きく違和感の評点が高くなるため、スターターモーター6によるエンジン始動とされる。
これにより、モーター/ジェネレータ3を駆動源とするEV走行中に、モーター/ジェネレータ3のトルクをエンジン始動に振り分ける必要が無く、エンジン始動による減速感の発生が防止される。
【0067】
一方、システム要求によるエンジン始動の場合であって、車速VSPが閾値VS1未満のときには、暗騒音が小さく不意にエンジン始動音が発せられると違和感の評点が低くなるため、モーター/ジェネレータ3によるエンジン始動とされる。
このように、スターターモーター6によるエンジン始動に比べて音振性能が良いモーター/ジェネレータ3によるエンジン始動とすることで、エンジン始動音により乗員に与える違和感が低減される。
【0068】
[駆動力要求によるエンジン始動作用]
上記のように、駆動力要求によりエンジン始動するときは、違和感の問題が抑えられる状況であるため、基本的にスターターモーターによるエンジン始動とされる。以下、図2に基づき、これを反映する駆動力要求によるエンジン始動作用を説明する。
【0069】
EV走行許可時であって、システム要求による始動要求が無い場合で、アクセル開度APOが所定値以上のときには、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS6→ステップS7へと進む。ステップS7では、スターターモーター6を用いてエンジン始動が行われる。
【0070】
一方、EV走行許可時であって、システム要求による始動要求が無い場合で、アクセル開度APOが所定値未満のときには、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS6→ステップS8へと進む。ステップS8では、EV走行が維持される。
【0071】
このように、駆動力要求によりエンジン始動すると、暗騒音が小さい状態ではエンジン始動音が運転者に到達する。しかし、運転者による駆動力要求の意図を、アクセル踏み込み操作によりあらわし、アクセル踏み込み操作に対応したエンジン始動音となるため、運転者にとって違和感とならない。このため、駆動力要求によりエンジン始動があるときには、スターターモーター6によるエンジン始動とされる。
【0072】
そして、駆動力要求があるとき、エンジン始動をスターターモーター6に分担させることにより、モーター/ジェネレータ3によるトルクを駆動輪である左右前輪12,12への走行トルクとして使うことができる。
【0073】
したがって、駆動力要求によるエンジン始動時は、運転者に違和感を与えることなく、モーター/ジェネレータ3を駆動源とする「EVモード」による走行可能領域の拡大が図られる。
【0074】
[チェンジオブマインドによるエンジン始動作用]
HEV走行中、アクセル戻し操作によりEV可能領域に入ったが直後にアクセル踏み込み操作によりHEV領域に戻るというチェンジオブマインド操作を行った場合にもエンジン始動モーターをうまく使い分けることが必要である。以下、これを反映するチェンジオブマインドによるエンジン始動作用を説明する。
【0075】
HEV走行からEV走行許可直後にアクセル開度APOが所定値以上になり、かつ、エンジン1が回転しているときには、図2のフローチャートにおいて、ステップS9→ステップS10→ステップS11→ステップS12→ステップS13→ステップS14へと進む。ステップS14では、モーター/ジェネレータ3を用いてエンジン始動が行われる。
【0076】
一方、HEV走行からEV走行許可直後にアクセル開度APOが所定値以上になり、かつ、エンジン1が停止しているときには、図2のフローチャートにおいて、ステップS9→ステップS10→ステップS11→ステップS12→ステップS13→ステップS15へと進む。ステップS15では、スターターモーター6を用いてエンジン始動が行われる。
【0077】
なお、HEV走行からEV走行許可してからアクセル開度APOが未満になったときには、図2のフローチャートにおいて、ステップS9→ステップS10→ステップS11→ステップS12→ステップS16→エンドへと進む。ステップS16では、エンジン1が停止される。
【0078】
上記のように、アクセル開度APOが所定値以上であるという駆動力要求によりエンジン始動する場合は、違和感が問題とならないので、スターターモーター6を用いたエンジン始動で良い。しかし、EV走行からEV走行許可直後にアクセル開度APOが所定値以上になり、かつ、エンジン1が回転しているときは、クランキングを要さない。
したがって、チェンジオブマインドによるエンジン回転状態でのエンジン始動時には、スターターモーター6を用いるより、モーター/ジェネレータ3を用いた方が応答良くスムーズにエンジン始動される。
【0079】
[代表例によるエンジン始動作用]
エンジン始動パターンは、図3に示すように、車速VSPとアクセル開度APOによる運転点の変化により様々なパターンが存在する。以下、図7〜図10に基づき、これを反映する代表例によるエンジン始動作用を説明する。
【0080】
実施例1の制御装置が搭載されたFFハイブリッド車両で、図3の(1)に示すように、EV可能領域での走行状態からのアクセル踏み込み操作(=駆動力要求)によりエンジン始動するときは、図7に示すように、スターターモーター6を用いてエンジン始動される。
すなわち、アクセル開度APOが所定値APO1以上になると、スターター起動信号がOFF→ONとされ、スターターモーター6によりエンジン1をクランキングして始動する。
【0081】
実施例1の制御装置が搭載されたFFハイブリッド車両で、図3の(1)'に示すように、EV走行可能領域からの車速上昇(=駆動力要求)によりエンジン始動するときは、図8に示すように、スターターモーター6を用いてエンジン始動される。
すなわち、車速VSPの上昇によりアクセル開度APOが一定であっても、所定値APO1以上になり、HEV領域に入ると、スターター起動信号がOFF→ONとされ、スターターモーター6によりエンジン1をクランキングして始動する。
【0082】
実施例1の制御装置が搭載されたFFハイブリッド車両で、図3の(2)に示すように、HEV走行中にチェンジオブマインド操作(=駆動力要求)によりエンジン始動するときは、図9に示すように、モーター/ジェネレータ3を用いてエンジン始動される。
すなわち、HEV走行中にチェンジオブマインド操作によりエンジン始動するときであって、エンジン1が回転しているときは、モーター/ジェネレータ3のモータートルクを負トルク(減速回生)から正トルクとし、エンジン1の回転を高めながら始動する。
【0083】
実施例1の制御装置が搭載されたFFハイブリッド車両で、図3の(3),(3)'に示すように、EV走行中にシステム要求によりエンジン始動するときは、図10に示すように、モーター/ジェネレータ3を用いてエンジン始動される。
すなわち、(3)EV走行中のシステム要求であり車速VSPが閾値VSP1未満のとき、あるいは、(3)'EV走行中のシステム要求でありコースト減速のときには、モーター/ジェネレータ3のモータートルクと第1クラッチ2の制御により、静かにエンジン1が始動される。
【0084】
次に、効果を説明する。
実施例1のFFハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0085】
(1) エンジン1と、
前記エンジン1を始動させるスターターモーター6と、
前記エンジン1と駆動輪(左右前輪12,12)に対しモータートルクが伝達可能である駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)と、
前記駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を駆動源とするモード選択中(EVモード選択中)、駆動力要求があるとき、前記スターターモーター6を用いてエンジン始動を行い、システム要求があるとき、前記駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を用いてエンジン始動を行う始動モーター使い分け制御手段(図2)と、
を備える。
このため、システム要求によるエンジン始動シーンにおいて、エンジン始動音により乗員に与える違和感を低減することができる。
【0086】
(2) 前記始動モーター使い分け制御手段(図2)は、システム要求によるエンジン始動であって車速VSPが閾値VSP1未満のとき前記駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を用いてエンジン始動を行い、システム要求によるエンジン始動であって車速VSPが閾値VSP1以上のとき前記スターターモーター6を用いてエンジン始動を行う(ステップS1〜ステップS5)。
このため、(1)の効果に加え、システム要求によるエンジン始動時であって、車速VSPが閾値VS1未満のとき、エンジン始動音により乗員に与える違和感を低減でき、車速VSPが閾値VS1以上のとき、駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を用いたエンジン始動による減速感の発生を防止できる。
【0087】
(3) 前記始動モーター使い分け制御手段(図2)は、車速VSPの閾値VSP1を、車速の上昇に応じて大きくなる暗騒音に対し、前記スターターモーター6を用いたエンジン始動時の起動音が目立たないと評価される車速値に設定した(ステップS3)。
このため、(2)の効果に加え、システム要求によるエンジン始動時にスターターモーター6を用いたエンジン始動としても、乗員へ与える違和感を抑制することができる。
【0088】
(4) 前記始動モーター使い分け制御手段(図2)は、前記駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を駆動源とするモード選択での走行中(EVモード走行中)、アクセル開度APOが所定値APO1以上であるとき、前記スターターモーター6を用いてエンジン始動を行う(ステップS6,ステップS7)。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、運転者の駆動力要求の大小を、アクセル開度APOの大きさで判定することができる。
【0089】
(5) 前記始動モーター使い分け制御手段(図2)は、前記エンジン1と前記駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を駆動源とするモード(HEVモード)から前記駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を駆動源とするモード(EVモード)への移行中、アクセル開度APOが所定値APO1以上になったとき、前記エンジン1が回転しているとき前記駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を用いてエンジン始動を行い、前記エンジン1が停止しているとき前記スターターモーター6を用いてエンジン始動を行う(ステップS9〜ステップS15)。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、チェンジオブマインドによるエンジン回転状態でのエンジン始動時、エンジン始動音を抑えながら応答良くスムーズにエンジン始動することができる。
【0090】
(6) 前記始動モーター使い分け制御手段(図2)は、アクセル開度APOの所定値APO1を、前記駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を駆動源とするモード(EVモード)から前記エンジン1と前記駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を駆動源とするモード(HEVモード)への移行を判定するアクセル開度値に設定した(ステップS6,ステップS12)。
このため、(4)又は(5)の効果に加え、駆動力要求によるエンジン始動時、モード(EVモード、HEVモード)の使い分けと、始動モーター(モーター/ジェネレータ3、スターターモーター6)の使い分けを一致させることができる。
【0091】
以上、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0092】
実施例1では、始動モーター使い分け制御手段として、システム要求によるエンジン始動時、車速VSPの大きさによりモーター/ジェネレータ3とスターターモーター6を使い分ける例を示した。しかし、システム要求によるエンジン始動時には、車速の大きさにかかわらず駆動モーター(モーター/ジェネレータ)を用いてエンジン始動する例としても良い。
【0093】
実施例1では、始動モーター使い分け制御手段として、駆動力要求によるエンジン始動要求を、アクセル開度APOが所定値APO1以上であることにより判定する例を示した。しかし、駆動力要求判定閾値である所定値としては、固定値ではなく、アクセル開速度ΔAPO(=アクセル踏み込み速度)や路面勾配やウインカーレバー作動、等により可変値により与えるようにしても良い。アクセル開速度ΔAPOにより可変値で与える場合は、車両のレスポンスが最適となる始動モーターの使い分け選択ができる。路面勾配により可変値で与える場合は、アクセル開度に対する駆動力割付を可変にすることができる。ウインカーレバー作動により可変値で与える場合は、右折時や左折時にレスポンス重視のエンジン始動が可能となる。
【0094】
実施例1では、本発明のハイブリッド車両の制御装置を、1モーター2クラッチによるFFハイブリッド車両に適用する例を示した。しかし、本発明のハイブリッド車両の制御装置は、第1クラッチ2や第2クラッチ4やベルト式無段変速機5等を駆動系に備えていないFFやFRのハイブリッド車両に対しても適用することができる。要するに、エンジンのスターターモーターと、エンジン始動モーターを兼用する駆動モーターと、を備えたハイブリッド車両の制御装置であれば適用できる。
【符号の説明】
【0095】
1 エンジン
2 第1クラッチ
3 モーター/ジェネレータ(駆動モーター)
4 第2クラッチ
5 ベルト式無段変速機
6 スターターモーター
7 低電圧バッテリー
8 始動時リレー回路
9 DC/DCコンバーター
10 高電圧バッテリー
11 インバーター
12,12 前輪(駆動輪)
13,13 後輪
20 エンジンコントローラ
21 CVTコントローラ
22 モーターコントローラ
23 統合コントローラ
24 CAN通信線
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを始動するスターターモーターを備えたハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動モーターを駆動源とするEVモードでの走行中、常にスターターモーターを用いてエンジンを始動するハイブリッド車両の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−82261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ハイブリッド車両の制御装置にあっては、エンジンを始動する際に常にスターターモーターを用いている。このため、暗騒音(=環境騒音)が小さい走行状態においてのエンジン始動時、スターターモーターの飛び込み音や駆動音が乗員に聞こえる。特に、運転者の意図に反してエンジンを始動するシステム要求によるエンジン始動シーンが発生すると、乗員に違和感を与えてしまう、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、システム要求によるエンジン始動シーンにおいて、エンジン始動音により乗員に与える違和感を低減することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のハイブリッド車両の制御装置は、エンジンと、スターターモーターと、駆動モーターと、始動モーター使い分け制御手段と、を備える手段とした。
前記スターターモーターは、前記エンジンを始動させる。
前記駆動モーターは、前記エンジンと駆動輪に対しモータートルクが伝達可能である。
前記始動モーター使い分け制御手段は、前記駆動モーターを駆動源とするモード選択中、駆動力要求があるとき、前記スターターモーターを用いてエンジン始動を行い、システム要求があるとき、前記駆動モーターを用いてエンジン始動を行う。
【発明の効果】
【0007】
よって、駆動モーターを駆動源とするモード選択中、駆動力要求があるとき、スターターモーターを用いてエンジン始動が行われる。
したがって、暗騒音が小さい状態ではエンジン始動音が運転者に到達するが、運転者による駆動力要求の意図を、アクセル踏み込み操作によりあらわし、アクセル踏み込み操作に対応したエンジン始動音となるため、運転者にとって違和感とならない。そして、駆動力要求があるとき、エンジン始動をスターターモーターに分担させることにより、駆動モーターによるトルクを駆動輪への走行トルクとして使うことができ、駆動モーターを駆動源とするモードによる走行可能領域の拡大が図られる。
一方、駆動モーターを駆動源とするモード選択中、システム要求があるとき、駆動モーターを用いてエンジン始動が行われる。
システム要求によるエンジン始動としては、例えば、バッテリー充電容量の低下、エアコン負荷の増加、駆動力以外の消費電力の増加、等のシーンが想定される。つまり、システム要求によるエンジン始動は、どのタイミングでエンジン始動が行われるのか運転者にとって予測できないものとなる。したがって、システム要求によるエンジン始動の場合は、スターターモーターによるエンジン始動に比べて音振性能が良い駆動モーターによるエンジン始動とすることで、エンジン始動音により乗員に与える違和感が低減される。
この結果、システム要求によるエンジン始動シーンにおいて、エンジン始動音により乗員に与える違和感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の制御装置が適用されたFFハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【図2】実施例1の制御装置が適用されたFFハイブリッド車両の統合コントローラで実行される始動モーター使い分け制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】実施例1の始動モーター使い分け制御処理で用いられるエンジン始動モーターの選択領域の一例(EV-HEV領域マップに重ね合わせて割り付けた例)を示す始動モーター選択領域図である。
【図4】スターターモーターを用いたエンジン始動時と駆動モーターを用いたエンジン始動時とでの音振性能差を示す音振性能比較特性図である。
【図5】実施例1の始動モーター使い分け制御処理でシステム要求によるエンジン始動時における始動モーター領域分けの考え方を示す車速−音圧レベル特性図である。
【図6】実施例1の始動モーター使い分け制御処理によるスターターモーターと駆動モーターの具体的な使い分けパターンを示す使い分けパターン図である。
【図7】実施例1の制御装置が搭載されたFFハイブリッド車両でEV走行中のアクセル踏み込みによる駆動力要求によりエンジン始動するときのアクセル開度・モータートルク・エンジントルク・モーター回転数・プライマリ回転数・エンジン回転数・第1クラッチ油圧・第2クラッチ油圧・車速・駆動力・スターター起動信号の各特性を示すタイムチャートである。
【図8】実施例1の制御装置が搭載されたFFハイブリッド車両でEV走行中の車速上昇による駆動力要求によりエンジン始動するときのアクセル開度・モータートルク・エンジントルク・モーター回転数・プライマリ回転数・エンジン回転数・第1クラッチ油圧・第2クラッチ油圧・車速・駆動力・スターター起動信号の各特性を示すタイムチャートである。
【図9】実施例1の制御装置が搭載されたFFハイブリッド車両でHEV走行中のチェンジオブマインド操作による駆動力要求によりエンジン始動するときのアクセル開度・モータートルク・エンジントルク・モーター回転数・プライマリ回転数・エンジン回転数・第1クラッチ油圧・第2クラッチ油圧・車速・駆動力・スターター起動信号の各特性を示すタイムチャートである。
【図10】実施例1の制御装置が搭載されたFFハイブリッド車両でEV走行中にシステム要求によりエンジン始動するときのアクセル開度・モータートルク・エンジントルク・モーター回転数・プライマリ回転数・エンジン回転数・第1クラッチ油圧・第2クラッチ油圧・車速・駆動力・スターター起動信号の各特性を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1のFFハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)の制御装置の構成を、「全体システム構成」、「始動モーター使い分け制御構成」に分けて説明する。
【0011】
[全体システム構成]
図1は、実施例1の制御装置が適用されたFFハイブリッド車両を示す全体システム図である。以下、図1に基づいて、FFハイブリッド車両の全体システム構成を説明する。
【0012】
FFハイブリッド車両は、図1に示すように、エンジン1と、第1クラッチ2と、モーター/ジェネレータ3(駆動モーター)と、第2クラッチ4と、ベルト式無段変速機5と、スターターモーター6と、低電圧バッテリー7と、始動時リレー回路8と、DC/DCコンバーター9と、高電圧バッテリー10と、インバーター11と、を備える。なお、12,12は、前輪(駆動輪)であり、13,13は、後輪である。
【0013】
前記エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、エンジンコントローラ20からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御やスロットルバルブのバルブ開度制御や燃料カット制御、等が行われる。
【0014】
前記第1クラッチ2は、エンジン1とモーター/ジェネレータ3の間に介装されたクラッチである。CVTコントローラ21からの制御指令に基づき図外の油圧ユニットにより作り出された第1クラッチ油圧(CL1油圧)により、締結〜解放が制御される。
【0015】
前記モーター/ジェネレータ3は、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モーター/ジェネレータである。モーターコントローラ22からの制御指令に基づいて、インバーター11により作り出された三相交流を印加することにより駆動する。モーター/ジェネレータ3は、インバーター11を介して高電圧バッテリー10からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作する(力行)。また、モーター/ジェネレータ3のロータがエンジン1や左右前輪12,12から回転エネルギを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、インバーター11を介して高電圧バッテリー10を充電する(回生)。
【0016】
前記第2クラッチ4は、モーター/ジェネレータ3と左右前輪12,12の間のうち、モーター軸と変速機入力軸の間に介装されたクラッチである。第2クラッチ4は、第1クラッチ2と同様に、CVTコントローラ21からの制御指令に基づき図外の油圧ユニットにより作り出された第2クラッチ油圧(CL2油圧)により、締結・スリップ締結・解放が制御される。
【0017】
前記ベルト式無段変速機5は、第2クラッチ4の下流位置に配置され、車速VSPやアクセル開度APOに応じて目標入力回転数を決め、無段階による変速比を自動的に変更する。このベルト式無段変速機5は、CVTコントローラ21からの制御指令に基づき図外の油圧ユニットにより作り出されたプライマリ油圧とセカンダリ油圧により、2つのプーリーへのベルト巻き付け径比である変速比が制御される。ベルト式無段変速機5の変速機出力軸には、図外のディファレンシャルが連結され、ディファレンシャルから左右のドライブシャフトを介してそれぞれに左右前輪12,12が設けられている。
【0018】
前記スターターモーター6は、エンジン1を始動する専用モーターであり、モーターコントローラ22からの制御指令に基づいて始動時リレー回路8をオンにしたとき、低電圧バッテリー7から電力供給を受けて駆動する直流モーターである。なお、低電圧バッテリー7は、高電圧バッテリー10からの直流高電圧を、DC/DCコンバーター9により直流低電圧に変換することで充電される。
【0019】
前記インバーター11は、モーターコントローラ22からの制御指令に基づいて、力行時、高電圧バッテリー10からの直流を三相交流に変換してモーター/ジェネレータ3を駆動する。また、回生時、モーター/ジェネレータ3からの三相交流を直流に変換し、高電圧バッテリー10へ充電する。
【0020】
前記FFハイブリッド車両は、駆動形態の違いによる走行モードとして、電気自動車走行モード(以下、「EVモード」という。)と、ハイブリッド車走行モード(以下、「HEVモード」という。)と、を有する。
【0021】
前記「EVモード」は、第1クラッチCL1を解放状態とし、モーター/ジェネレータ3を駆動源として走行するモードであり、モーター走行モード・回生走行モードを有し、何れかのモードにより走行する。この「EVモード」は、駆動力要求が低く、バッテリーSOCが確保されているときに選択される。
【0022】
前記「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態とし、エンジンEngとモーター/ジェネレータ3を駆動源として走行するモードであり、モーターアシスト走行モード・発電走行モード・エンジン走行モードを有し、何れかのモードにより走行する。この「HEVモード」は、駆動力要求が高いとき、あるいは、バッテリーSOCが不足するようなときに選択される。
【0023】
FFハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ20と、CVTコントローラ21と、モーターコントローラ22と、統合コントローラ23と、を有して構成されている。なお、各コントローラ20,21,22と統合コントローラ23とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線24を介して接続されている。
【0024】
前記エンジンコントローラ20は、エンジン回転数センサ27からのエンジン回転数情報と、統合コントローラ23からの目標エンジントルク指令と、その他の必要情報を入力する。そして、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、エンジンEngのスロットルバルブアクチュエータ等へ出力する。
【0025】
前記CVTコントローラ21は、アクセル開度センサ25と、車速センサ26と、他のセンサ類28等からの情報を入力する。そして、Dレンジを選択しての走行時、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる目標入力回転数をシフトマップにより検索し、検索された目標入力回転数(変速比)を得る制御指令を、ベルト式無段変速機5に設けられた図外の油圧ユニットに出力する。この変速比制御に加え、第1クラッチ2と第2クラッチ4のクラッチ油圧制御を行う。
【0026】
前記モーターコントローラ22は、ロータ回転位置情報と、統合コントローラ23からの目標MGトルク指令および目標MG回転数指令と、他の必要情報を入力する。そして、モーター/ジェネレータ3のモーター動作点(Nm,Tm)を制御する指令をインバーター3へ出力する。そして、モーターコントローラ2は、エンジン始動時に始動時リレー回路8に対してスターター起動信号(ON)を出すスターターモーター6の駆動制御も併せて行う。
【0027】
前記統合コントローラ23は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うものである。この統合コントローラ10には、アクセル開度センサ25、車速センサ26、エンジン回転数センサ27、他のセンサ・スイッチ類28からの必要情報が直接、あるいは、CAN通信線24を介して入力される。
【0028】
[始動モーター使い分け制御構成]
図2は、実施例1の制御装置が適用されたFFハイブリッド車両の統合コントローラ23で実行される始動モーター使い分け制御処理の流れを示すフローチャートである(始動モーター使い分け制御手段)。以下、始動モーター使い分け制御構成をあらわす図2の各ステップについて説明する。
【0029】
ステップS1では、「EVモード」を選択しての走行が許可されているか否かを判断する。YES(EV走行許可)の場合はステップS2へ進み、NO(EV走行不許可)の場合はエンドへ進む。
【0030】
ステップS2では、ステップS1でのEV走行許可であるとの判断に続き、システム要求によるエンジン始動要求有りか否かが判断される。YES(システム要求による始動要求有り)の場合はステップS3へ進み、NO(システム要求による始動要求無し)の場合はステップS6へ進む。
ここで、システム要求始動条件を列挙すると、路面勾配、エアコン条件、エンジンフード、エンジン水温、大気圧、ブレーキ負圧、変速機作動油温、CL1フェーシング推定温度、強電バッテリーSOC、強電バッテリー出力可能電力、モーター発生可能トルク、駆動力以外の消費電力、フロントデフォッガースイッチ、リアデフォッガースイッチ、三元触媒の酸素濃度、等がある。
【0031】
ステップS3では、ステップS2でのシステム要求による始動要求有りとの判断に続き、車速センサ26により検出された車速は、閾値以上であるか否かを判断する。YES(車速≧閾値)の場合はステップS4へ進み、NO(車速<閾値)の場合はステップS5へ進む。
ここで、車速の閾値は、図3に示すように、車速の上昇に応じて大きくなる暗騒音に対し、スターターモーター6を用いたエンジン始動時の起動音が目立たないと評価される車速値VSP1に設定される。
【0032】
ステップS4では、ステップS3での車速≧閾値であるとの判断に続き、スターターモーター6を用いてエンジン始動を行い、ステップS9へ進む。
【0033】
ステップS5では、ステップS3での車速<閾値であるとの判断に続き、モーター/ジェネレータ3を用いてエンジン始動を行い、ステップS9へ進む。
【0034】
ステップS6では、ステップS2でのシステム要求による始動要求無しとの判断に続き、アクセル開度センサ25により検出されたアクセル開度APOは、所定値以上であるか否かを判断する。YES(APO≧所定値)の場合はステップS7へ進み、NO(APO<所定値)の場合はステップS8へ進む。
ここで、アクセル開度APOの所定値は、図3に示すように、モーター/ジェネレータ3を駆動源とする「EVモード」可能領域から、エンジン1とモーター/ジェネレータ3を駆動源とする「HEVモード」選択領域への移行を判定するアクセル開度値APO1に設定している。つまり、車速VSPが所定車速VSP2までは一定のアクセル開度値であるが、車速VSPが所定車速VSP2を超えると、車速VSPの上昇にしたがって徐々に小さくなる値にて与えられる。
【0035】
ステップS7では、ステップS6でのAPO≧所定値であるとの判断、つまり、駆動力要求によるエンジン始動であるとの判断に続き、スターターモーター6を用いてエンジン始動を行い、ステップS9へ進む。
【0036】
ステップS8では、ステップS6でのAPO<所定値であるとの判断、つまり、システム始動要求も駆動力始動要求もないとの判断に続き、「EVモード」を選択しての走行を維持し、エンドへ進む。
【0037】
ステップS9では、ステップS4,S5,S7,S14,S15のいずれかによるエンジン始動、あるいは、ステップS10でのEV走行不許可であるとの判断に続き、「HEVモード」を選択しての走行を許可し、ステップS10へ進む。
【0038】
ステップS10では、ステップS9でのHEV走行許可に続き、「EVモード」を選択しての走行が許可されているか否かを判断する。YES(EV走行許可)の場合はステップS11へ進み、NO(EV走行不許可)の場合はステップS9へ戻る。
【0039】
ステップS11では、ステップS10でのEV走行許可であるとの判断に続き、エンジン停止のためのシーケンス制御を実行し、ステップS12へ進む。
【0040】
ステップS12では、ステップS11でのエンジン停止シーケンスに続き、アクセル開度センサ25により検出されたアクセル開度APOは、所定値以上であるか否かを判断する。YES(APO≧所定値)の場合はステップS13へ進み、NO(APO<所定値)の場合はステップS16へ進む。
このステップS12でのアクセル開度APOの所定値は、ステップS6と同様とする。
【0041】
ステップS13では、ステップS12でのAPO≧所定値であるとの判断に続き、エンジン回転数センサ27により検出されたエンジン回転数Neは、Ne>0であるか否かを判断する。YES(Ne>0)の場合はステップS14へ進み、NO(Ne=0:エンジン停止)の場合はステップS15へ進む。
【0042】
ステップS14では、ステップS13でのNe>0であるとの判断に続き、モーター/ジェネレータ3を用いてエンジン始動を行い、ステップS9へ進む。
【0043】
ステップS15では、ステップS13でのNe=0であるとの判断に続き、スターターモーター6を用いてエンジン始動を行い、ステップS9へ進む。
【0044】
ステップS16では、ステップS12でのAPO<所定値であるとの判断に続き、エンジン1を停止し、エンドへ進む。
【0045】
次に、作用を説明する。
まず、「比較例の課題」の説明を行う。続いて、実施例1のFFハイブリッド車両の制御装置における作用を、「エンジン始動モーターの使い分け作用」、「システム要求によるエンジン始動作用」、「駆動力要求によるエンジン始動作用」、「チェンジオブマインドによるエンジン始動作用」、「代表例によるエンジン始動作用」に分けて説明する。
【0046】
[比較例の課題]
ハイブリッド車両において、「EVモード」での走行中にエンジンを始動する際、常にスターターモーターを用いてエンジン始動を行うものを比較例とする。
【0047】
この比較例の場合、暗騒音(=環境騒音)が小さい走行状態においてのエンジン始動時に、スターターモーターの飛び込み音や駆動音が乗員に聞こえる。特に、運転者の意図に反してエンジンを始動するシステム要求によるエンジン始動シーンが発生すると、乗員に違和感を与えてしまう。
【0048】
システム要求によるエンジン始動シーンとしては、例えば、バッテリー充電容量の低下、エアコン負荷の増加、駆動力以外の消費電力の増加、等のシーンが想定される。このようなシステム要求始動シーンであって、アクセルペダルが一定で保たれている条件のときにスターターモーターによりエンジンを始動すると、飛び込み音や駆動音が乗員に聞こえ、違和感を与える。また、上記システム要求始動シーンであって、車外騒音の少ないアイドリング中にスターターモーターによりエンジンを始動すると、同様に乗員に違和感を与える。
【0049】
これらの違和感を解消しようとすると、「EVモード」による走行から「HEVモード」による走行への移行する条件が、例えば、アクセルペダルが一定で保たれていなく、かつ、アイドリング中でないという条件成立時に限定されてしまう。この結果、スターターモーターによるエンジン始動で達成しようとする燃費向上効果が、目論見よりも小さくなってしまう。
【0050】
さらに、常にスターターモーターによりエンジン始動を行うため、スターターモーターの使用頻度が高くなり、車両寿命に達する前のライフ中に耐久回数が設定値を超えてしまい、ライフ中にスターターモーターの交換を強いられてしまう。
【0051】
[エンジン始動モーターの使い分け作用]
エンジン始動モーターとして、スターターモーターと駆動モーターを使い分ける際、2つのモーターをどのような条件で使い分けるかという指標を明確にしておくことが必要である。以下、図3〜図6に基づき、これを反映するエンジン始動モーターの使い分け作用を説明する。
【0052】
まず、スターターモーターによるエンジン始動の場合と、駆動モーターによるエンジン始動の場合と、での音振性能を比較すると、図4に示すように、スターター始動>モーター始動の関係にあり、スターター始動とモーター始動の間には、4dBの差がある。
【0053】
車速の上昇に応じて暗騒音は上昇するが、この暗騒音以下にエンジン始動音を抑えることができれば、エンジン始動の場合においても違和感に対する評点が高くなる。例えば、図5に示すように、評点を違和感が目立たない3.5とした場合、暗騒音が小さい車速がVSP1未満の領域では、評点3.5を達成するにはモーター始動領域にする必要がある。しかし、暗騒音が大きい車速がVSP1以上の領域では、スターター始動領域にしても評点3.5が達成される。
【0054】
まず、図4の音振性能に比較に基づき、意図しないエンジン始動があるシステム要求によるエンジン始動の場合には、違和感を与えないという観点から駆動モーターを使ってのエンジン始動を行う。そして、意図的にエンジン始動する駆動力要求によるエンジン始動の場合には、エンジン始動音が騒音として気にならないという観点から、スターターモーターを使ってのエンジン始動を行う。これを基本的なエンジン始動モーターの使い分け指標とする。
【0055】
そして、システム要求によりエンジン始動する場合には、常に駆動モーターを使ってのエンジン始動を行うのではなく、図5の騒音評価に基づき、低車速域では駆動モーターを使うものの、暗騒音が大きな高車速域ではスターターモーターを使う。このとき、低車速域と高車速域を分ける車速VSPの閾値は、車速の上昇に応じて大きくなる暗騒音に対し、スターターモーター6を用いたエンジン始動時の起動音が目立たないと評価される車速値VSP1に設定する(図3,図5)。
【0056】
また、駆動力要求によりエンジン始動する場合のアクセル開度APOの所定値は、図3に示すように、モーター/ジェネレータ3を駆動源とする「EVモード」可能領域から、エンジン1とモーター/ジェネレータ3を駆動源とする「HEVモード」選択領域への移行を判定するアクセル開度値APO1に設定する。このとき、例えば、モード領域をマップで表す場合、常に駆動モーターによりエンジン始動する場合の「EVモード」可能領域に比べ、「EVモード」可能領域を拡大しておく。その理由は、「EVモード」での駆動源である駆動モーターにおいて、エンジン始動分のモータートルクを残す必要がないことによる。
以下、エンジン始動モーターのシーン毎による具体的な使い分けパターンを、図6により説明する。
【0057】
まず、P,N,Dレンジで停止している場合には、暗騒音が小さい。このため、起動要求であってもシステム要求であっても、駆動モーターを使ってエンジン始動を行う。
【0058】
次に、Dレンジでアクセル足離し走行中のうち、減速(下り・平地・登り)、コースト減速(平地・登り)、コースト加速(下り)、オートアップ変速の場合には、暗騒音が小さい。このため、システム要求であってもEV走行領域からの逸脱(駆動力要求)であっても、駆動モーターを使ってエンジン始動を行う。
【0059】
次に、Dレンジでアクセル開度一定による走行中のうち、一定速(平地・登り)、加速(下り・平地・登り)、オートアップ変速、減速(登り)の場合には、暗騒音が大きい。このため、システム要求であってもEV走行領域からの逸脱(駆動力要求)であっても、スターターモーターを使ってエンジン始動を行う。
【0060】
次に、Dレンジでアクセル開速度小(ΔAPO小)による走行中のうち、加速(平地・登り)、減速(登り)、これらのオートアップ変速の場合には、暗騒音が大きい。このため、システム要求であっても駆動力要求であってもEV走行領域からの逸脱であっても、スターターモーターを使ってエンジン始動を行う。但し、加速(下り)、オートアップ変速の場合には、暗騒音が小さい。このため、システム要求のとき、駆動モーターを使ってエンジン始動を行う。
【0061】
次に、Dレンジでアクセル開速度大(ΔAPO大)による走行中のうち、加速(下り・平地・登り)、オートアップ変速、踏込みダウン変速の場合には、暗騒音が大きい。このため、駆動力要求時にスターターモーターを使ってエンジン始動を行う。
【0062】
[システム要求によるエンジン始動作用]
上記のように、システム要求によりエンジン始動するときは、違和感を抑えることが必要であるため、基本的に駆動モーターによるエンジン始動とされる。以下、図2に基づき、これを反映するシステム要求によるエンジン始動作用を説明する。
【0063】
EV走行許可時であって、システム要求による始動要求があった場合で、車速VSPが閾値以上のときには、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4へと進む。ステップS4では、スターターモーター6を用いてエンジン始動が行われる。
【0064】
一方、EV走行許可時であって、システム要求による始動要求があった場合で、車速VSPが閾値未満のときには、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS5へと進む。ステップS5では、モーター/ジェネレータ3を用いてエンジン始動が行われる。
【0065】
このように、システム要求によるエンジン始動としては、例えば、強電バッテリー10のバッテリーSOCの低下、エアコン負荷の増加、駆動力以外の消費電力の増加、等のシーンが想定される。つまり、システム要求によるエンジン始動は、どのタイミングでエンジン始動が行われるのか運転者にとって予測できないものとなる。
【0066】
したがって、システム要求によるエンジン始動の場合であって、車速VSPが閾値VS1以上のときには、不意にエンジン始動音が発せられても暗騒音が大きく違和感の評点が高くなるため、スターターモーター6によるエンジン始動とされる。
これにより、モーター/ジェネレータ3を駆動源とするEV走行中に、モーター/ジェネレータ3のトルクをエンジン始動に振り分ける必要が無く、エンジン始動による減速感の発生が防止される。
【0067】
一方、システム要求によるエンジン始動の場合であって、車速VSPが閾値VS1未満のときには、暗騒音が小さく不意にエンジン始動音が発せられると違和感の評点が低くなるため、モーター/ジェネレータ3によるエンジン始動とされる。
このように、スターターモーター6によるエンジン始動に比べて音振性能が良いモーター/ジェネレータ3によるエンジン始動とすることで、エンジン始動音により乗員に与える違和感が低減される。
【0068】
[駆動力要求によるエンジン始動作用]
上記のように、駆動力要求によりエンジン始動するときは、違和感の問題が抑えられる状況であるため、基本的にスターターモーターによるエンジン始動とされる。以下、図2に基づき、これを反映する駆動力要求によるエンジン始動作用を説明する。
【0069】
EV走行許可時であって、システム要求による始動要求が無い場合で、アクセル開度APOが所定値以上のときには、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS6→ステップS7へと進む。ステップS7では、スターターモーター6を用いてエンジン始動が行われる。
【0070】
一方、EV走行許可時であって、システム要求による始動要求が無い場合で、アクセル開度APOが所定値未満のときには、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS6→ステップS8へと進む。ステップS8では、EV走行が維持される。
【0071】
このように、駆動力要求によりエンジン始動すると、暗騒音が小さい状態ではエンジン始動音が運転者に到達する。しかし、運転者による駆動力要求の意図を、アクセル踏み込み操作によりあらわし、アクセル踏み込み操作に対応したエンジン始動音となるため、運転者にとって違和感とならない。このため、駆動力要求によりエンジン始動があるときには、スターターモーター6によるエンジン始動とされる。
【0072】
そして、駆動力要求があるとき、エンジン始動をスターターモーター6に分担させることにより、モーター/ジェネレータ3によるトルクを駆動輪である左右前輪12,12への走行トルクとして使うことができる。
【0073】
したがって、駆動力要求によるエンジン始動時は、運転者に違和感を与えることなく、モーター/ジェネレータ3を駆動源とする「EVモード」による走行可能領域の拡大が図られる。
【0074】
[チェンジオブマインドによるエンジン始動作用]
HEV走行中、アクセル戻し操作によりEV可能領域に入ったが直後にアクセル踏み込み操作によりHEV領域に戻るというチェンジオブマインド操作を行った場合にもエンジン始動モーターをうまく使い分けることが必要である。以下、これを反映するチェンジオブマインドによるエンジン始動作用を説明する。
【0075】
HEV走行からEV走行許可直後にアクセル開度APOが所定値以上になり、かつ、エンジン1が回転しているときには、図2のフローチャートにおいて、ステップS9→ステップS10→ステップS11→ステップS12→ステップS13→ステップS14へと進む。ステップS14では、モーター/ジェネレータ3を用いてエンジン始動が行われる。
【0076】
一方、HEV走行からEV走行許可直後にアクセル開度APOが所定値以上になり、かつ、エンジン1が停止しているときには、図2のフローチャートにおいて、ステップS9→ステップS10→ステップS11→ステップS12→ステップS13→ステップS15へと進む。ステップS15では、スターターモーター6を用いてエンジン始動が行われる。
【0077】
なお、HEV走行からEV走行許可してからアクセル開度APOが未満になったときには、図2のフローチャートにおいて、ステップS9→ステップS10→ステップS11→ステップS12→ステップS16→エンドへと進む。ステップS16では、エンジン1が停止される。
【0078】
上記のように、アクセル開度APOが所定値以上であるという駆動力要求によりエンジン始動する場合は、違和感が問題とならないので、スターターモーター6を用いたエンジン始動で良い。しかし、EV走行からEV走行許可直後にアクセル開度APOが所定値以上になり、かつ、エンジン1が回転しているときは、クランキングを要さない。
したがって、チェンジオブマインドによるエンジン回転状態でのエンジン始動時には、スターターモーター6を用いるより、モーター/ジェネレータ3を用いた方が応答良くスムーズにエンジン始動される。
【0079】
[代表例によるエンジン始動作用]
エンジン始動パターンは、図3に示すように、車速VSPとアクセル開度APOによる運転点の変化により様々なパターンが存在する。以下、図7〜図10に基づき、これを反映する代表例によるエンジン始動作用を説明する。
【0080】
実施例1の制御装置が搭載されたFFハイブリッド車両で、図3の(1)に示すように、EV可能領域での走行状態からのアクセル踏み込み操作(=駆動力要求)によりエンジン始動するときは、図7に示すように、スターターモーター6を用いてエンジン始動される。
すなわち、アクセル開度APOが所定値APO1以上になると、スターター起動信号がOFF→ONとされ、スターターモーター6によりエンジン1をクランキングして始動する。
【0081】
実施例1の制御装置が搭載されたFFハイブリッド車両で、図3の(1)'に示すように、EV走行可能領域からの車速上昇(=駆動力要求)によりエンジン始動するときは、図8に示すように、スターターモーター6を用いてエンジン始動される。
すなわち、車速VSPの上昇によりアクセル開度APOが一定であっても、所定値APO1以上になり、HEV領域に入ると、スターター起動信号がOFF→ONとされ、スターターモーター6によりエンジン1をクランキングして始動する。
【0082】
実施例1の制御装置が搭載されたFFハイブリッド車両で、図3の(2)に示すように、HEV走行中にチェンジオブマインド操作(=駆動力要求)によりエンジン始動するときは、図9に示すように、モーター/ジェネレータ3を用いてエンジン始動される。
すなわち、HEV走行中にチェンジオブマインド操作によりエンジン始動するときであって、エンジン1が回転しているときは、モーター/ジェネレータ3のモータートルクを負トルク(減速回生)から正トルクとし、エンジン1の回転を高めながら始動する。
【0083】
実施例1の制御装置が搭載されたFFハイブリッド車両で、図3の(3),(3)'に示すように、EV走行中にシステム要求によりエンジン始動するときは、図10に示すように、モーター/ジェネレータ3を用いてエンジン始動される。
すなわち、(3)EV走行中のシステム要求であり車速VSPが閾値VSP1未満のとき、あるいは、(3)'EV走行中のシステム要求でありコースト減速のときには、モーター/ジェネレータ3のモータートルクと第1クラッチ2の制御により、静かにエンジン1が始動される。
【0084】
次に、効果を説明する。
実施例1のFFハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0085】
(1) エンジン1と、
前記エンジン1を始動させるスターターモーター6と、
前記エンジン1と駆動輪(左右前輪12,12)に対しモータートルクが伝達可能である駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)と、
前記駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を駆動源とするモード選択中(EVモード選択中)、駆動力要求があるとき、前記スターターモーター6を用いてエンジン始動を行い、システム要求があるとき、前記駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を用いてエンジン始動を行う始動モーター使い分け制御手段(図2)と、
を備える。
このため、システム要求によるエンジン始動シーンにおいて、エンジン始動音により乗員に与える違和感を低減することができる。
【0086】
(2) 前記始動モーター使い分け制御手段(図2)は、システム要求によるエンジン始動であって車速VSPが閾値VSP1未満のとき前記駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を用いてエンジン始動を行い、システム要求によるエンジン始動であって車速VSPが閾値VSP1以上のとき前記スターターモーター6を用いてエンジン始動を行う(ステップS1〜ステップS5)。
このため、(1)の効果に加え、システム要求によるエンジン始動時であって、車速VSPが閾値VS1未満のとき、エンジン始動音により乗員に与える違和感を低減でき、車速VSPが閾値VS1以上のとき、駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を用いたエンジン始動による減速感の発生を防止できる。
【0087】
(3) 前記始動モーター使い分け制御手段(図2)は、車速VSPの閾値VSP1を、車速の上昇に応じて大きくなる暗騒音に対し、前記スターターモーター6を用いたエンジン始動時の起動音が目立たないと評価される車速値に設定した(ステップS3)。
このため、(2)の効果に加え、システム要求によるエンジン始動時にスターターモーター6を用いたエンジン始動としても、乗員へ与える違和感を抑制することができる。
【0088】
(4) 前記始動モーター使い分け制御手段(図2)は、前記駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を駆動源とするモード選択での走行中(EVモード走行中)、アクセル開度APOが所定値APO1以上であるとき、前記スターターモーター6を用いてエンジン始動を行う(ステップS6,ステップS7)。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、運転者の駆動力要求の大小を、アクセル開度APOの大きさで判定することができる。
【0089】
(5) 前記始動モーター使い分け制御手段(図2)は、前記エンジン1と前記駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を駆動源とするモード(HEVモード)から前記駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を駆動源とするモード(EVモード)への移行中、アクセル開度APOが所定値APO1以上になったとき、前記エンジン1が回転しているとき前記駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を用いてエンジン始動を行い、前記エンジン1が停止しているとき前記スターターモーター6を用いてエンジン始動を行う(ステップS9〜ステップS15)。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、チェンジオブマインドによるエンジン回転状態でのエンジン始動時、エンジン始動音を抑えながら応答良くスムーズにエンジン始動することができる。
【0090】
(6) 前記始動モーター使い分け制御手段(図2)は、アクセル開度APOの所定値APO1を、前記駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を駆動源とするモード(EVモード)から前記エンジン1と前記駆動モーター(モーター/ジェネレータ3)を駆動源とするモード(HEVモード)への移行を判定するアクセル開度値に設定した(ステップS6,ステップS12)。
このため、(4)又は(5)の効果に加え、駆動力要求によるエンジン始動時、モード(EVモード、HEVモード)の使い分けと、始動モーター(モーター/ジェネレータ3、スターターモーター6)の使い分けを一致させることができる。
【0091】
以上、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0092】
実施例1では、始動モーター使い分け制御手段として、システム要求によるエンジン始動時、車速VSPの大きさによりモーター/ジェネレータ3とスターターモーター6を使い分ける例を示した。しかし、システム要求によるエンジン始動時には、車速の大きさにかかわらず駆動モーター(モーター/ジェネレータ)を用いてエンジン始動する例としても良い。
【0093】
実施例1では、始動モーター使い分け制御手段として、駆動力要求によるエンジン始動要求を、アクセル開度APOが所定値APO1以上であることにより判定する例を示した。しかし、駆動力要求判定閾値である所定値としては、固定値ではなく、アクセル開速度ΔAPO(=アクセル踏み込み速度)や路面勾配やウインカーレバー作動、等により可変値により与えるようにしても良い。アクセル開速度ΔAPOにより可変値で与える場合は、車両のレスポンスが最適となる始動モーターの使い分け選択ができる。路面勾配により可変値で与える場合は、アクセル開度に対する駆動力割付を可変にすることができる。ウインカーレバー作動により可変値で与える場合は、右折時や左折時にレスポンス重視のエンジン始動が可能となる。
【0094】
実施例1では、本発明のハイブリッド車両の制御装置を、1モーター2クラッチによるFFハイブリッド車両に適用する例を示した。しかし、本発明のハイブリッド車両の制御装置は、第1クラッチ2や第2クラッチ4やベルト式無段変速機5等を駆動系に備えていないFFやFRのハイブリッド車両に対しても適用することができる。要するに、エンジンのスターターモーターと、エンジン始動モーターを兼用する駆動モーターと、を備えたハイブリッド車両の制御装置であれば適用できる。
【符号の説明】
【0095】
1 エンジン
2 第1クラッチ
3 モーター/ジェネレータ(駆動モーター)
4 第2クラッチ
5 ベルト式無段変速機
6 スターターモーター
7 低電圧バッテリー
8 始動時リレー回路
9 DC/DCコンバーター
10 高電圧バッテリー
11 インバーター
12,12 前輪(駆動輪)
13,13 後輪
20 エンジンコントローラ
21 CVTコントローラ
22 モーターコントローラ
23 統合コントローラ
24 CAN通信線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンを始動させるスターターモーターと、
前記エンジンと駆動輪に対しモータートルクが伝達可能である駆動モーターと、
前記駆動モーターを駆動源とするモード選択中、駆動力要求があるとき、前記スターターモーターを用いてエンジン始動を行い、システム要求があるとき、前記駆動モーターを用いてエンジン始動を行う始動モーター使い分け制御手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記始動モーター使い分け制御手段は、システム要求によるエンジン始動であって車速が閾値未満のとき前記駆動モーターを用いてエンジン始動を行い、システム要求によるエンジン始動であって車速が閾値以上のとき前記スターターモーターを用いてエンジン始動を行う
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記始動モーター使い分け制御手段は、車速の閾値を、車速の上昇に応じて大きくなる暗騒音に対し、前記スターターモーターを用いたエンジン始動時の起動音が目立たないと評価される車速値に設定した
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記始動モーター使い分け制御手段は、前記駆動モーターを駆動源とするモード選択での走行中、アクセル開度が所定値以上であるとき、前記スターターモーターを用いてエンジン始動を行う
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記始動モーター使い分け制御手段は、前記エンジンと前記駆動モーターを駆動源とするモードから前記駆動モーターを駆動源とするモードへの移行中、アクセル開度が所定値以上になったとき、前記エンジンが回転しているとき前記駆動モーターを用いてエンジン始動を行い、前記エンジンが停止しているとき前記スターターモーターを用いてエンジン始動を行う
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記始動モーター使い分け制御手段は、アクセル開度の所定値を、前記駆動モーターを駆動源とするモードから前記エンジンと前記駆動モーターを駆動源とするモードへの移行を判定するアクセル開度値に設定した
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンを始動させるスターターモーターと、
前記エンジンと駆動輪に対しモータートルクが伝達可能である駆動モーターと、
前記駆動モーターを駆動源とするモード選択中、駆動力要求があるとき、前記スターターモーターを用いてエンジン始動を行い、システム要求があるとき、前記駆動モーターを用いてエンジン始動を行う始動モーター使い分け制御手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記始動モーター使い分け制御手段は、システム要求によるエンジン始動であって車速が閾値未満のとき前記駆動モーターを用いてエンジン始動を行い、システム要求によるエンジン始動であって車速が閾値以上のとき前記スターターモーターを用いてエンジン始動を行う
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記始動モーター使い分け制御手段は、車速の閾値を、車速の上昇に応じて大きくなる暗騒音に対し、前記スターターモーターを用いたエンジン始動時の起動音が目立たないと評価される車速値に設定した
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記始動モーター使い分け制御手段は、前記駆動モーターを駆動源とするモード選択での走行中、アクセル開度が所定値以上であるとき、前記スターターモーターを用いてエンジン始動を行う
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記始動モーター使い分け制御手段は、前記エンジンと前記駆動モーターを駆動源とするモードから前記駆動モーターを駆動源とするモードへの移行中、アクセル開度が所定値以上になったとき、前記エンジンが回転しているとき前記駆動モーターを用いてエンジン始動を行い、前記エンジンが停止しているとき前記スターターモーターを用いてエンジン始動を行う
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記始動モーター使い分け制御手段は、アクセル開度の所定値を、前記駆動モーターを駆動源とするモードから前記エンジンと前記駆動モーターを駆動源とするモードへの移行を判定するアクセル開度値に設定した
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−60132(P2013−60132A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200582(P2011−200582)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(507308902)ルノー エス.ア.エス. (281)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(507308902)ルノー エス.ア.エス. (281)
【Fターム(参考)】
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